(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864275
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】車両用樹脂製窓パネルの射出成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/33 20060101AFI20160204BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20160204BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
B29C45/33
B29C45/16
B29C45/56
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-2405(P2012-2405)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-141770(P2013-141770A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 哲也
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−320548(JP,A)
【文献】
特開2007−030511(JP,A)
【文献】
特開2009−051183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明な第1樹脂(R1)からなるパネル本体(3)と、該パネル本体(3)の外周部裏面側に一体に成形された不透明な第2樹脂(R2)からなる環状の枠体部(5)とを有し、該枠体部(5)の内側が窓部(7)を構成する車両用樹脂製窓パネル(1)の射出成形型(9)であって、
上記窓パネル(1)の表面側を成形する固定型(11)と、
該固定型(11)に対して上記パネル本体(3)の厚さ方向に進退可能に対向配置され、上記窓パネル(1)の裏面側を成形する可動型(13)とを備え、
該可動型(13)は、
上記パネル本体(3)の窓部(7)裏面側を成形する中央型部(23)と、
該中央型部(23)を取り囲むように複数に分割して配置され、当該中央型部(23)及び上記固定型(11)と共に上記パネル本体(3)成形用の第1キャビティ(27)を形成する第1スライド型(25)と、
上記中央型部(23)を取り囲むように配置され、上記第1キャビティ(27)で成形されて上記固定型(11)に保持されたパネル本体(3)と共に上記枠体部(5)成形用の第2キャビティ(33)を形成する第2スライド型(29)とを有し、
上記各第1スライド型(25)は、上記可動型(13)の進退方向と交差する方向に進退可能であって、上記第1キャビティ(27)形成時に進出することで、上記中央型部(23)外周部に当接する一方、上記第2キャビティ(33)形成時に後退することで、上記第2スライド型(29)との干渉を回避し、
上記第2スライド型(29)は、上記可動型(13)の進退方向に進退可能であって、上記第1キャビティ(27)形成時に後退することで、上記第1スライド型(25)の進出動作を許容する一方、上記第2キャビティ(33)形成時に進出することで、上記固定型(11)に保持されたパネル本体(3)の内周縁部及び外周縁部に当接してシール部(29b,29c)を構成するようになっていることを特徴とする車両用樹脂製窓パネルの射出成形型。
【請求項2】
請求項1記載の車両用樹脂製窓パネルの射出成形型において、
上記各第1スライド型(25)は、上記第1キャビティ(27)の外周部に対応する位置に嵌入凹部(25a)を有するスライド型本体(25b)と、該嵌入凹部(25a)に該嵌入凹部(25a)から突出するように付勢手段(25c)により付勢された状態で収容された当接ブロック(25d)とを有し、
該当接ブロック(25d)は、上記可動型(13)の進出による型閉じ状態では、上記固定型(11)に圧接することで該可動型(13)の進退方向に本来のキャビティ容積よりも拡大した第1キャビティ(27)を構成する一方、該可動型(13)の更なる進出による型締め状態では、上記付勢手段(25c)による付勢力に抗して後退して該拡大した第1キャビティ(27)を本来のキャビティ容積まで縮小するように構成されていることを特徴とする車両用樹脂製窓パネルの射出成形型。
【請求項3】
請求項2記載の車両用樹脂製窓パネルの射出成形型において、
上記当接ブロック(25d)の内周縁部は、上記第1キャビティ(27)における上記パネル本体(3)裏面側の外周縁部に対応するキャビティ部分を構成することを特徴とする車両用樹脂製窓パネルの射出成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形により射出成形される車両用樹脂製窓パネルの射出成形型に関し、特にバリ発生を抑制する対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、透明な板状のパネル本体と、このパネル本体の外周部裏面側に一体に成形された不透明な環状の枠体部とを有する車両用樹脂製窓パネルを成形する射出成形型が開示されている。この射出成形型は、固定型と、固定型に対向配置された中央の第1可動型と、この第1可動型を取り囲むように配置され、第1可動型の進退方向と同じ方向に進出して固定型及び第1可動型と共にパネル本体成形用のキャビティを構成する方形枠状の第2可動型と、この第2可動型と交換されて、固定型に保持されたパネル本体と共に枠体部成形用のキャビティを構成する第3可動型とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−51183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記射出成形型は第2可動型が第1可動型に対して同一方向に相対的に移動する型構造であるため、両者間に必然的にクリアランスが生じる。このクリアランスはパネル本体成形用のキャビティ形成時にこのキャビティと繋がってしまうため、溶融樹脂がクリアランスに流れ込み、成形されたパネル本体にバリが発生してしまうという課題がある。また、この射出成形型では、パネル本体成形後に第2可動型を第3可動型に交換する型替え作業を行わなければならず、手間がかかる。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、型替え作業が不要であり、かつパネル本体のバリ発生を抑制できる車両用樹脂製窓パネルの射出成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、可動型の型構造を工夫したものである。
【0007】
具体的には、本発明は、透明又は半透明な第1樹脂からなるパネル本体と、該パネル本体の外周部裏面側に一体に成形された不透明な第2樹脂からなる環状の枠体部とを有し、該枠体部の内側が窓部を構成する車両用樹脂製窓パネルの射出成形型を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記窓パネルの表面側を成形する固定型と、該固定型に対して
上記パネル本体の厚さ方向に進退可能に対向配置され、上記窓パネルの裏面側を成形する可動型とを備え、該可動型は、上記パネル本体の窓部裏面側を成形する中央型部と、該中央型部を取り囲むように複数に分割して配置され、当該中央型部及び上記固定型と共に上記パネル本体成形用の第1キャビティを形成する第1スライド型と、上記中央型部を取り囲むように配置され、上記第1キャビティで成形されて上記固定型に保持されたパネル本体と共に上記枠体部成形用の第2キャビティを形成する第2スライド型とを有し、上記各第1スライド型は、上記可動型の進退方向と交差する方向に進退可能であって、上記第1キャビティ形成時に進出することで、上記中央型部外周部に当接する一方、上記第2キャビティ形成時に後退することで、上記第2スライド型との干渉を回避し、上記第2スライド型は、上記可動型の進退方向に進退可能であって、上記第1キャビティ形成時に後退することで、上記第1スライド型の進出動作を許容する一方、上記第2キャビティ形成時に進出することで、上記固定型に保持されたパネル本体の内周縁部及び外周縁部に当接してシール部を構成するようになっていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記各第1スライド型は、上記第1キャビティの外周部に対応する位置に嵌入凹部を有するスライド型本体と、該嵌入凹部に該嵌入凹部から突出するように付勢手段により付勢された状態で収容された当接ブロックとを有し、
該当接ブロックは、上記可動型の進出による型閉じ状態では、上記固定型に圧接することで該可動型の進退方向に本来のキャビティ容積よりも拡大した第1キャビティを構成する一方、該可動型の更なる進出による型締め状態では、上記付勢手段による付勢力に抗して後退して該拡大した第1キャビティを本来のキャビティ容積まで縮小するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、上記当接ブロックの内周縁部は、上記第1キャビティにおける上記パネル本体裏面側の外周縁部に対応するキャビティ部分を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、中央型部を取り囲むように複数に分割して配置された第1スライド型が可動型の進退方向と交差する方向に進退する。そして、各第1スライド型は、パネル本体成形用の第1キャビティ形成時に進出することでその先端部が中央型部の外周面に当接し、中央型部との間にクリアランスが生じない。従って、第1キャビティ形成時にこの第1キャビティと繋がるクリアランスが形成されないため、第1スライド型と中央型部との間に第1樹脂が流れ込まず、成形されるパネル本体にバリが発生するのを抑制することができる。
【0012】
また、上記第1キャビティ形成時には第2スライド型が後退して各第1スライド型の進出動作を許容した状態で各第1スライド型が進出し、枠体部成形用の第2キャビティ形成時には各第1スライド型が後退して第2スライド型との干渉を回避した状態で第2スライド型が進出するため、パネル本体成形後の型替え作業が不要となる。
【0013】
更に、第2スライド型の内周縁部及び外周縁部にそれぞれ設けられたシール部が第2キャビティ形成時に固定型に保持されたパネル本体に当接することによって第2樹脂が第2スライド型の内側及び外側に回り込むのを防止する。従って、車両用樹脂製窓パネルの枠体部内側及び外側にバリが発生するのを抑制することができる。
【0014】
第2の発明によれば、当接ブロックは、スライド型本体における第1キャビティの外周部に対応する位置に設けられた嵌入凹部に収容されているため、スライド型本体よりも小サイズである。従って、当接ブロックは、金型温度の変動に伴う線膨張による寸法変化の影響が小さいため、この当接ブロックがスムーズに出入り可能に嵌め込まれるスライド型本体との間でクリアランスを最小にできる。よって、当接ブロックと固定型及びスライド型本体との間に溶融した第1樹脂が流れ込まず、成形されるパネル本体の外周部にバリが発生するのを抑制することができる。
【0015】
さらに、第1キャビティ形成時における型閉じ状態で、付勢手段によって付勢された当接ブロックは、スライド型本体よりも先に固定型に圧接し、本来のキャビティ容積よりも拡大した第1キャビティのパネル本体裏面側の外周縁部に対応するキャビティ部分を構成する。この拡大した第1キャビティ内に第1樹脂が射出充填されて型締めされると、第1キャビティ容積が本来のキャビティ容積まで縮小して射出充填された第1樹脂の圧力が上昇するが、当接ブロックは付勢手段によって付勢されて固定型に圧接しているため、当接ブロックと固定型との間に第1樹脂が流れ込むことがない。これによって、第1キャビティで成形されるパネル本体の外周部にバリが発生するのを抑制することができる。
【0016】
第3の発明によれば、パネル本体の外周部にバリが発生するのを抑制できる。すなわち、仮に当接ブロックが第1キャビティの外側に対応する位置にあって第1キャビティ形成時に第1キャビティ外側にある場合、拡大した第1キャビティ内に射出された第1樹脂は、第1キャビティ外側まで充填され、型締め時にスライド型本体と固定型とによって圧縮され、成形されたパネル本体の外周部にバリが発生してしまう。一方、本発明によれば、当接ブロックが第1キャビティの内側まで延びているため、第1樹脂が第1キャビティ外側に回り込むことがない。従って、パネル本体外周部におけるバリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る射出成形型であって第1キャビティ形成状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る射出成形型の固定型を可動型側から視た図である。
【
図3】
図1の状態で可動型を固定型側から視た図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る射出成形型であって第2キャビティ形成状態を示す断面図である。
【
図5】
図4の状態で可動型を固定型側から視た図である。
【
図6】(a)は型開きした射出成形型であって第2スライド型が後退して第1スライド型が進出した状態を示す断面図であり、(b)は(a)の状態から型閉じして第1樹脂を射出した射出成形型を示す断面図である。
【
図7】(a)は
図6(b)の状態から型締めした射出成形型を示す断面図であり、(b)は(a)の状態から型開きした射出成形型であって第1スライド型が後退した状態を示す断面図である。
【
図8】(a)は
図7(b)の状態から第2スライド型が進出した射出成形型を示す断面図であり、(b)は(a)の状態から型閉じした後に第2樹脂を射出充填した射出成形型を示す断面図である。
【
図9】
図8(b)の状態から型開きした射出成形型であって窓パネルを脱型した状態を示す断面図である。
【
図10】(a)は
図6(b)のXa部拡大図、(b)は
図7(a)のXb部拡大図である。
【
図11】(a)は
図8(b)のXIa部拡大図、(b)は
図8(b)のXIb部拡大図である。
【
図12】(a)は本実施形態に係る射出成形型によって成形された車両用樹脂製窓パネルの平面図、(b)は(a)のXIIb−XIIb線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図12は、車両用樹脂製窓パネル1を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIIb−XIIb線矢視断面図である。この窓パネル1は、二色成形により成形されたものであって、透明又は半透明な第1樹脂R1(
図6(b)、
図7(a)参照)からなる矩形状のパネル本体3と、このパネル本体3の外周部裏面側に一体に成形された不透明な第2樹脂R2(
図8(b)参照)からなる矩形環状の枠体部5とを有している。この枠体部5の内側は窓パネル1の窓部7を構成している。また、この枠体部5はパネル本体3の外周縁近くまで成形されている。
【0020】
−窓パネルの射出成形型−
この窓パネル1は、
図1乃至
図4に示すような射出成形型9を用いて成形される。射出成形型9は、固定側取付板15を介して固定盤(図示せず)に取り付けられた固定型11と、スペーサブロック17及び可動側取付板19を介して固定盤に対向配置された可動盤(図示せず)に取り付けられた可動型13とを備えている。当該可動盤は、その四隅部に固定盤から延びるタイバー(図示せず)が嵌挿支持されて型締装置の作動によってタイバーに案内されて固定盤に接離する。
【0021】
図2は、可動型13側から視た固定型11を示す図である。固定型11は窓パネル1の表面側を成形するものであって、その可動型13側の面にはパネル本体3成形用の矩形状の成形面11aが形成されている。
【0022】
上記可動型13は、固定型11側に開口する型板凹部21aが形成された型板21を備えている。この型板凹部21aの中央部には直方体状の中央型部23が固定されていて、その固定型11側の面にはパネル本体3の窓部7裏面側を成形する矩形状の成形面23aが形成されている。
【0023】
型板凹部21aの固定型11側端には、4つの第1スライド型25,25,…が中央型部23上部を取り囲むように4つに分割して配置され、各第1スライド型25は型板21に設置されたスライド機構(図示せず)によって可動型13の進退方向と直交する方向に進退するようになっている。各第1スライド型25は、上記固定型11の成形面11a外周部に対応する位置に嵌入凹部25aが形成されたスライド型本体25bを有し、この嵌入凹部25a内には、バネ(付勢手段)25c(
図4参照)によって付勢されて型開き状態で嵌入凹部25aから突出する当接ブロック25dが収容されている。各スライド型本体25a及び当接ブロック25dの各固定型11側の面にはパネル本体3裏面側を成形する成形面25e,25fが形成されていて、成形面25fは上記固定型11の成形面11a外周縁部に対応している。各第1スライド型25が進出して中央型部23外周面に当接した状態で型閉じすると、突出した当接ブロック25dが固定型11に当接してスライド型本体25b、中央型部23及び固定型11と共にパネル本体3成形用の本来の第1キャビティ27よりも拡大した第1キャビティ27を形成する。可動型13が更に進出すると、当接ブロック25dはバネ25cの付勢力に抗して後退して拡大した第1キャビティ27を縮小して本来の第1キャビティ27を形成し、当接ブロック25dの内周縁部は第1キャビティ27におけるパネル本体3裏面側の外周縁部に対応するキャビティ部分を構成する。尚、上記固定型11には、この第1キャビティ27で成形されたパネル本体3を保持する保持ピン(図示せず)が設けられている。
【0024】
また、
図1に示すように、上記各第1スライド型25が進出した状態でこれらに塞がれた型板凹部21a内には、中央型部23を取り囲むように配置された矩形環状の第2スライド型29が収容されている。この第2スライド型29は、型板21及びスペーサブロック17で囲まれた空間に配置されたスライドプレート31にロッド31aで連結されている。このスライドプレート31は、駆動機構(図示せず)で可動型13の進退方向に進退することによって第2スライド型29を進退させるものである。第2スライド型29は、
図4に示すように、各第1スライド型25が後退して第2スライド型29との干渉を回避する状態で進出する一方、後退して型板凹部21aに収容された状態で各第1スライド型25の進出を許容するようになっている。
図5は、
図4の状態で固定型11側から視た可動型13を示す図である。第2スライド型29の固定型11側の面には枠体部5成形用の成形面29aが形成されていて、第2スライド型29は、固定型11がパネル本体3を保持した状態で型締めされると、このパネル本体3と共に枠体部5成形用の第2キャビティ33を形成するようになっている。上記成形面29aの内周縁部及び外周縁部には、この第2キャビティ33形成時にパネル本体3裏面側に当接するシール部29b,29cが形成されている。
【0025】
尚、上記固定盤の背面側には、上記第1樹脂R1及び第2樹脂R2を供給する射出機(図示せず)が設置されている。固定型11内には第1樹脂R1用のホットランナ及び第2樹脂R2用のホットランナ(図示せず)が別々に設けられ、可動型13の第2スライド型29内には、第2キャビティ33形成時に当該第2樹脂R2用のホットランナと連通するホットランナが設けられている。第1キャビティ27形成時に射出機から供給される第1樹脂R1は、当該第1樹脂R1用のホットランナを通って第1キャビティ27内に射出される。また、第2キャビティ33形成時に射出機から供給される第2樹脂R2は、固定型11内の第2樹脂R2用のホットランナ及び第2スライド型29内のホットランナを通って第2キャビティ33内に射出される。
【0026】
また、上記型板21及びスペーサブロック17で囲まれた空間には、エジェクタピンを有するエジェクタプレート(共に図示せず)が設けられており、このエジェクタプレートは、駆動機構(図示せず)によって固定型11側に進出することで成形された窓パネル1を脱型するようになっている。
【0027】
−窓パネルの成形方法−
次に、射出成形型9を用いて窓パネル1を成形する方法について
図6乃至
図11を参照して説明する。
【0028】
まず、
図6(a)に示すように、射出成形型9を型開きし、第2スライド型29を後退させて各第1スライド型25の進出動作を許容した状態で各第1スライド型25を進出させ、中央型部23の外周面に当接させる。このように、各第1スライド型25は、可動型13の進退方向と直交する方向に進出して中央型部23の外周面に当接するので、中央型部23との間にクリアランスが生じない。
【0029】
次に、射出成形型9を型閉じし、バネ25cによって付勢された当接ブロック25dを固定型11に圧接させて可動型13の進退方向、すなわちパネル本体3の厚さ方向にパネル本体3のキャビティ容積よりも拡大した第1キャビティ27を構成する。
【0030】
続いて、
図6(b)に示すように、この拡大した第1キャビティ27内に第1樹脂R1を所要量射出充填する。このとき、上記のとおり各第1スライド型25と中央型部23との間にクリアランスが生じないため、各第1スライド型25と中央型部23との間に第1樹脂R1が流れ込まない。従って、成形されるパネル本体3裏面側にバリが発生するのを抑制することができる。また、パネル本体3の厚さ方向にキャビティ容積を拡大しているので、流動性の悪い樹脂原料であっても第1キャビティ27内に容易に所要量射出充填することができる。
【0031】
次に、
図7(a)に示すように、可動型13を更に進出させて型締めすると、当接ブロック25dがバネ25cの付勢力に抗して後退して上記拡大した第1キャビティ27を本来のキャビティ容積まで縮小し、充填された第1樹脂R1が圧縮される。
【0032】
これによって、第1キャビティ27内への射出充填時に生じる第1樹脂R1の圧縮応力が均一化され、歪みの無いパネル本体3が成形される。
【0033】
また、このときも各第1スライド型25は、中央型部23の外周面に当接して、中央型部23との間にクリアランスが生じていないため、各第1スライド型25と中央型部23との間に第1樹脂R1が流れ込まない。
【0034】
図10(a),(b)は、この圧縮前後における第1キャビティ27外周縁部の拡大断面図である。このとき、バネ25cによって付勢された当接ブロック25dは、スライド型本体25bよりも先に固定型11に圧接し、本来のキャビティ容積よりも拡大した第1キャビティ27のパネル本体3裏面側の外周縁部に対応するキャビティ部分を構成する。この拡大した第1キャビティ27内に第1樹脂R1が射出充填されて型締めされると、第1キャビティ27容積が本来のキャビティ容積まで縮小して射出充填された第1樹脂R1の圧力が上昇するが、当接ブロック25dはバネ25cによって付勢されて固定型11に圧接しているため、当接ブロック25dと固定型11との間に第1樹脂R1が流れ込むことがない。従って、成形されるパネル本体3の外周部にバリが発生するのを抑制することができる。
【0035】
さらに、当接ブロック25dが第1キャビティ27の内側まで延びているため、第1樹脂R1が第1キャビティ27外側に回り込むことがない。従って、パネル本体3外周部におけるバリの発生を抑制することができる。
【0036】
また、当接ブロック25dは、スライド型本体25bの第1キャビティ27の外周部に対応する位置に設けられた嵌入凹部25aに収容されているため、スライド型本体25bよりも小サイズである。従って、当接ブロック25dは、金型温度の変動に伴う線膨張による寸法変化の影響が小さいため、この当接ブロック25dがスムーズに出入り可能に嵌め込まれるために必要なスライド型本体25bとの間でクリアランスを最小に設定できる。よって、当接ブロック25dと固定型11及びスライド型本体25bとの間に溶融した第1樹脂R1が流れ込まず、成形されるパネル本体3にバリが発生するのを更に抑制することができる。
【0037】
第1樹脂R1が冷却固化すると、成形されたパネル本体3を固定型11に保持した状態で型開きして、
図7(b)に示すように各第1スライド型25を後退させて第2スライド型29との干渉を回避させ、
図8(a)に示すように第2スライド型29を、その固定型11側の面が各第1スライド型25の固定型11側の面と面一になる位置まで進出させる。
【0038】
次に、射出成形型9を型締めして、第2キャビティ33を形成し、固定型11及び第2スライド型29の各ホットランナを連通させて
図8(b)に示すように第2キャビティ33内に第2樹脂R2を射出充填する。これによって、パネル本体3の裏面に枠体部5が成形される。
【0039】
図11は、
図8(b)の一部拡大図であって、(a)はXIa部拡大図であり、(b)はXIb部拡大図である。第2キャビティ33形成時において、第2スライド型29の内周縁部及び外周縁部にそれぞれ設けられたシール部29b,29cは、固定型11に保持されたパネル本体3裏面に当接することによって、射出された第2樹脂R2が第2スライド型29の内側及び外側に回り込むのを防止する。従って、窓パネル1の枠体部5内側及び外側にバリが発生するのを抑制することができる。
【0040】
第2樹脂R2が冷却固化して窓パネル1が成形されると、窓パネル1の固定型11への保持状態を解除した後、射出成形型9を型開きして、
図9に示すように可動型13側に張り付いた窓パネル1をエジェクタピンを進出させて脱型する。
【0041】
尚、上記パネル本体3の成形で、各第1スライド型25と中央型部23との間にクリアランスを無くすように接合させるには、分割して設けられた各第1スライド型25同士の接合部に若干クリアランスが必要になり、パネル本体3裏面側の対応する部位にバリの発生が懸念されるが、この部位に発生するバリは、枠体部5によって覆い隠される。
【0042】
このように、射出成形型9では、第1キャビティ27形成時において第2スライド型29が後退して各第1スライド型25の進出動作を許容した状態で各第1スライド型25が進出し、第2キャビティ33形成時には各第1スライド型25が後退して第2スライド型29との干渉を回避した状態で第2スライド型29が進出するため、パネル本体3成形後の型替え作業が不要となる。
【0043】
なお、上記の実施形態では、第1スライド型25は当接ブロック25dを有していたが、これに限定されず、当接ブロック25dを有していなくてもよい。但し、パネル本体3のバリ発生抑制の観点から当接ブロック25dを有するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、二色成形により射出成形される車両用樹脂製窓パネルの射出成形型について有用であり、特にバリ発生を抑制する射出成形型に適している。
【符号の説明】
【0045】
1 窓パネル
3 パネル本体
5 枠体部
7 窓部
9 射出成形型
11 固定型
13 可動型
23 中央型部
25 第1スライド型
25a 嵌入凹部
25b スライド型本体
25c バネ(付勢手段)
25d 当接ブロック
27 第1キャビティ
29 第2スライド型
29b,29c シール部
33 第2キャビティ