特許第5864303号(P5864303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864303
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】画像取得装置および画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20160204BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20160204BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C12M1/34 D
   C12Q1/06
   G06T1/00 295
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-42637(P2012-42637)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-176332(P2013-176332A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】生藤 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 孝志
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−118862(JP,A)
【文献】 特開2007−024576(JP,A)
【文献】 特表2005−506531(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/146474(WO,A1)
【文献】 特開2009−089628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00− 3/10
C12Q 1/00− 3/00
G06T 1/00
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の底部を有する容器内に、少なくとも注入時には液体である培養物質とともに保持された細胞の画像を取得する画像取得装置であって、
前記容器を水平に保持する保持部と、
前記容器に対して光を照射する投光部と、
前記容器内を撮影して画像データを取得する撮像部と、
前記容器を識別するための識別情報と処理の状況を示す追加情報とを、前記容器に付与する情報付与部と、
を備える画像取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像取得装置であって、
前記容器に付与された識別情報を読み取る情報読取部
をさらに備える画像取得装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像取得装置であって、
前記情報読取部により読み取られた識別情報と、前記撮像部により取得された画像データとを、対応付けて記憶する記憶部
をさらに備える画像取得装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像取得装置であって、
前記記憶部は、前記容器内の細胞の培養条件を、前記識別情報と対応づけて記憶する画像取得装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像取得装置であって、
前記記憶部に記憶された複数の培養条件の少なくとも1つを、検索条件として入力する入力手段と、
前記記憶部に記憶された複数の画像データの中から、前記検索条件に合致する画像データを絞り込む検索手段と、
をさらに備える画像取得装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれかに記載の画像取得装置であって、
前記情報付与部、前記情報読取部、および前記撮像部を制御する制御部
をさらに備える画像取得装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像取得装置であって、
前記制御部は、前記情報読取部による識別情報の読み取りと、前記撮像部による画像データの取得とを、一連の動作として行うように、前記情報読取部および前記撮像部を制御する画像取得装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の画像取得装置であって、
前記制御部は、前記撮像部による画像データの取得後に、撮像対象となった前記容器に前記追加情報を付加するように、前記情報付与部を制御する画像取得装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8までのいずれかに記載の画像取得装置であって、
前記制御部は、前記情報付与部による識別情報の付与後に、前記情報読取部による前記識別情報の読み取りの可否を判定する画像取得装置。
【請求項10】
容器内に、少なくとも注入時には液体である培養物質とともに保持された細胞の画像を取得する画像取得方法であって、
a)前記容器を識別するための識別情報と処理の状況を示す追加情報とを、前記容器に付与する情報付与工程と、
b)前記容器に付与された識別情報を読み取る情報読取工程と、
c)前記容器内を撮影して画像データを取得する撮像工程と、
d)前記情報読取工程において読み取られた識別情報と、前記撮像工程において取得された画像データとを、対応付けて記憶する記憶工程と、
を含む画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に培養物質とともに保持された細胞の画像を取得する画像取得装置および画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品を研究・開発する過程では、医薬品の候補となる化合物を絞り込むスクリーニングが行われる。スクリーニングにおいては、例えば、細胞を投入した培養液を複数用意し、各培養液に、種々の条件を変更しつつ化合物を添加して、細胞を培養する。そして、細胞の培養状態に基づいて、医薬品の候補となる化合物を絞り込む。
【0003】
このようなスクリーニングにおいては、従来、光学的な測定によって、細胞の培養状態を評価することが、行われていた。具体的には、細胞内の特定の分子(DNA、タンパク質、化学物質など)を蛍光発光させて、蛍光の強さを測定する方法や、細胞内の特定の分子を吸光測定する方法が、用いられていた。しかしながら、これらの光学的な測定には、高価な試薬が必要となる。
【0004】
また、近年では、より生体内に近い環境における医薬品の効用を調べるために、細胞を立体的に培養する三次元培養が行われている。このような三次元培養においては、三次元的に成長した細胞集塊の状態が、重要な観察対象となる。しかしながら、上記の光学的な測定は、細胞集塊の観察には適していない。
【0005】
このため、近年では、試薬を用いることなく、細胞を高解像度で撮影することによって、細胞の培養状態を観察することが試みられている。細胞の画像を取得する従来の技術については、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−350740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したスクリーニングでは、多くの条件下において細胞を培養するため、多数の画像データを取得する必要がある。したがって、多数の画像データを効率よく管理する技術が、求められている。特に、容器の取り違え等によって、容器と画像データとの間に不整合が生じないようにしなければならない。
【0008】
また、上述したスクリーニングでは、同一の容器における細胞の培養状態を、経時的に観察することが重要となる。このため、多くの画像データの中から、同一の容器に対応する画像データを、容易に比較できる技術が求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、複数の画像データを、撮影対象となる容器毎に管理でき、画像データの比較を容易にする画像取得装置および画像取得方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、光透過性の底部を有する容器内に、少なくとも注入時には液体である培養物質とともに保持された細胞の画像を取得する画像取得装置であって、前記容器を水平に保持する保持部と、前記容器に対して光を照射する投光部と、前記容器内を撮影して画像データを取得する撮像部と、前記容器を識別するための識別情報と処理の状況を示す追加情報とを、前記容器に付与する情報付与部と、を備える。
【0011】
本願の第2発明は、第1発明の画像取得装置であって、前記容器に付与された識別情報を読み取る情報読取部をさらに備える。
【0012】
本願の第3発明は、第2発明の画像取得装置であって、前記情報読取部により読み取られた識別情報と、前記撮像部により取得された画像データとを、対応付けて記憶する記憶部をさらに備える。
【0013】
本願の第4発明は、第3発明の画像取得装置であって、前記記憶部は、前記容器内の細胞の培養条件を、前記識別情報と対応づけて記憶する。
【0014】
本願の第5発明は、第4発明の画像取得装置であって、前記記憶部に記憶された複数の培養条件の少なくとも1つを、検索条件として入力する入力手段と、前記記憶部に記憶された複数の画像データの中から、前記検索条件に合致する画像データを絞り込む検索手段と、をさらに備える。
【0015】
本願の第6発明は、第2発明から第5発明までのいずれかの画像取得装置であって、前記情報付与部、前記情報読取部、および前記撮像部を制御する制御部をさらに備える。
【0016】
本願の第7発明は、第6発明の画像取得装置であって、前記制御部は、前記情報読取部による識別情報の読み取りと、前記撮像部による画像データの取得とを、一連の動作として行うように、前記情報読取部および前記撮像部を制御する。
【0017】
本願の第8発明は、第6発明または第7発明の画像取得装置であって、前記制御部は、前記撮像部による画像データの取得後に、撮像対象となった前記容器に前記追加情報を付加するように、前記情報付与部を制御する。
【0018】
本願の第9発明は、第6発明から第8発明までのいずれかの画像取得装置であって、前記制御部は、前記情報付与部による識別情報の付与後に、前記情報読取部による前記識別情報の読み取りの可否を判定する。
【0019】
本願の第10発明は、容器内に、少なくとも注入時には液体である培養物質とともに保持された細胞の画像を取得する画像取得方法であって、a)前記容器を識別するための識別情報と処理の状況を示す追加情報とを、前記容器に付与する情報付与工程と、b)前記容器に付与された識別情報を読み取る情報読取工程と、c)前記容器内を撮影して画像データを取得する撮像工程と、d)前記情報読取工程において読み取られた識別情報と、前記撮像工程において取得された画像データとを、対応付けて記憶する記憶工程と、を含む。

【発明の効果】
【0020】
本願の第1発明〜第9発明によれば、撮像部において取得された複数の画像データを、識別情報に基づいて管理できる。したがって、複数の画像データを、容器毎に容易に比較できる。
【0021】
特に、本願の第2発明によれば、識別情報の付与、識別情報の読み取り、および画像の読み取りを、単一の画像取得装置において行うことができる。したがって、画像データの取得および管理が、より容易となる。
【0022】
特に、本願の第3発明によれば、記憶部に記憶された複数の画像データを、識別情報に基づいて呼び出すことができる。
【0023】
特に、本願の第4発明によれば、識別情報および培養条件と対応づけて、複数の画像データを管理できる。
【0024】
特に、本願の第5発明によれば、所望の培養条件に適合する画像データを、容易に検索できる。
【0025】
特に、本願の第6発明によれば、情報付与部、情報読取部、および撮像部の動作を組み合わせて、種々の処理を行うことができる。
【0026】
特に、本願の第7発明によれば、同一の容器に対して、識別情報の読み取りと、画像データの取得とが、一連の動作として行われる。したがって、識別情報と画像データとが、より確実に対応付けられる。
【0027】
特に、本願の第8発明によれば、容器に付与された追加情報に基づいて、当該容器に関する処理の進捗状況を認識できる。
【0028】
特に、本願の第9発明によれば、識別情報の付与ミスを放置したまま、後続の処理が進行することを、防止できる。
【0029】
また、本願の第10発明によれば、撮像工程において取得された複数の画像データを、識別情報に基づいて管理できる。したがって、複数の画像データを、容器毎に容易に比較できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ウエルプレート斜視図である。
図2】画像取得装置の構成を、概念的に示した図である。
図3】第1のテーブルデータの例を示した図である。
図4】第2のテーブルデータの例を示した図である。
図5】表示部に表示されるウインドウの例を示した図である。
図6】二次元バーコードを印刷するときの動作手順を示すフローチャートである。
図7】二次元バーコードの読み取りおよび画像データの取得を行うときの動作手順を示したフローチャートである。
図8】画像データを表示するときの動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
<1.画像取得装置の構成>
図1は、画像取得装置にセットされるウエルプレート90の一例を示す斜視図である。ウエルプレート90は、培養液901および細胞902を保持する略板状の容器である。図1に示すように、ウエルプレート90の上面には、規則的に配列された複数の窪部91が、設けられている。各窪部91は、光透過性の底部92を有する。各窪部91内には、培養液901とともに、観察対象となる細胞902が保持される。また、各窪部91内の培養液901には、濃度や組成の異なる化合物が、それぞれ添加される。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態に係る画像取得装置1の構成を、概念的に示した図である。この画像取得装置1は、ウエルプレート90内で培養される細胞902の画像を取得する装置である。画像取得装置1は、例えば、医薬品の研究開発分野において、医薬品の候補となる化合物を絞り込むスクリーニング工程に、使用される。スクリーニング工程の担当者は、この画像取得装置1を用いて、各ウエルプレート90の画像を取得する。そして、取得された画像に基づいて、各窪部91内における細胞902の培養状態を比較・分析することにより、培養液901に添加された化合物の効用を検証する。
【0034】
図2に示すように、本実施形態の画像取得装置1は、プレート保持部10、投光部20、印刷部30、情報読取部40、撮像部50、コンピュータ60、表示部70、および入力部80を備えている。プレート保持部10、投光部20、印刷部30、情報読取部40、撮像部50、表示部70、および入力部80は、それぞれ、コンピュータ60と電気的に接続されている。
【0035】
プレート保持部10は、ウエルプレート90を保持する載置台である。ウエルプレート90は、底部92が下側となる水平姿勢で、プレート保持部10にセットされる。また、プレート保持部10は、ウエルプレート90を横方向に移動させる移動機構11を有する。移動機構11を駆動させると、ウエルプレート90は、水平姿勢を維持しつつ、印刷部30の下方位置と、情報読取部40の下方位置と、撮像部50の下方位置との間で、移動する。
【0036】
投光部20は、プレート保持部10に保持されたウエルプレート90の下方に、配置されている。本実施形態の投光部20は、第1光源21と第2光源22とを有する。第1光源21は、情報読取部40の下方に位置する。第1光源21は、情報読取部40の動作時に、読み取り対象となるウエルプレート90に対して、底部92側から白色光を照射する。第2光源22は、撮像部50の下方に位置する。第2光源22は、撮像部50の動作時に、撮影対象となるウエルプレート90に対して、底部92側から白色光を照射する。
【0037】
なお、投光部20は、ウエルプレート90に対して光を照射するものであればよい。したがって、第1光源21および第2光源22自体は、ウエルプレート90の下方から外れた位置に配置され、ミラー等の光学系を介して、ウエルプレート90に光が照射される構成であってもよい。また、投光部20がウエルプレート90の上方に配置され、情報読取部40および撮像部50が、ウエルプレート90の下方に配置されていてもよい。また、ウエルプレート90において反射された光が、情報読取部40または撮像部50に入射する構成であってもよい。
【0038】
印刷部30は、ウエルプレート90に対して、二次元バーコード94を印刷する部位(情報付与部)である。印刷部30は、例えば、インクジェット印刷機構により実現される。この画像取得装置1では、コンピュータ60が、ウエルプレート90毎に固有のバーコード情報93を生成する。バーコード情報93は、個々のウエルプレート90を識別するための識別情報となる。印刷部30は、コンピュータ60からバーコード情報93を受信し、当該バーコード情報を表す二次元バーコード94を、ウエルプレート90に印刷する。図1に示すように、二次元バーコード94は、例えば、ウエルプレート90の上面のうち、複数の窪部91の周縁の領域に、印刷される。
【0039】
また、本実施形態の印刷部30は、ウエルプレート90に対して、二次元バーコード94とは別に、他の追加情報95も印刷できる。追加情報95には、例えば、当該ウエルプレート90を撮像した回数を示す記号や文字を、含めることができる。図1の例では、二次元バーコード94の隣に、追加情報95として、3つの丸印が印刷されている。これにより、このウエルプレート90ついて3回の撮像処理が既に実行済みであることが、可視的に認識できるようになっている。
【0040】
情報読取部40は、ウエルプレート90に印刷された二次元バーコード94を読み取る部位である。情報読取部40は、例えば、二次元バーコードリーダにより実現される。二次元バーコード94を読み取るときには、まず、移動機構11が、ウエルプレート90を、情報読取部40の下方位置へ移動させる。そして、第1光源21からウエルプレート90へ向けて光が照射されるとともに、情報読取部40が、ウエルプレート90上の二次元バーコード94を読み取る。これにより、当該二次元バーコード94に含まれるバーコード情報93が、取得される。取得されたバーコード情報93は、コンピュータ60内の記憶部64に記憶される。
【0041】
撮像部50は、ウエルプレート90を撮影して、画像データ96を取得する部位である。撮像部50は、例えば、レンズ等の光学系と、CCDやCMOS等の撮像素子とを有するカメラにより実現される。画像データ96を取得するときには、まず、移動機構11が、ウエルプレート90を、撮像部50の下方位置へ移動させる。そして、第2光源22からウエルプレート90へ向けて光が照射されるとともに、撮像部50がウエルプレート90を撮影する。ここで撮影される画像には、ウエルプレート90の複数の窪部91内に保持された細胞902の画像が、含まれる。
【0042】
撮像部50により取得された画像データ96は、コンピュータ60内のA/D変換部63においてデジタル化される。そして、デジタル化された画像データ96が、コンピュータ60内の記憶部64に記憶されるとともに、必要に応じて表示部70に表示される。
【0043】
図2に示すように、コンピュータ60は、CPU61、機能切替器62、A/D変換部63、および記憶部64を有する。CPU61は、記憶部64に記憶されたコンピュータプログラム97や、入力部80から入力されるコマンドを参照しつつ、機能切替器62を介して、移動機構11、投光部20、印刷部30、情報読取部40、および撮像部50の各動作を制御する。すなわち、本実施形態では、CPU61を有するコンピュータ60が、制御部として機能している。
【0044】
特に、本実施形態では、印刷部30、情報読取部40、および撮像部50が、同一の画像取得装置1の中に設けられている。そして、これらの印刷部30、情報読取部40、および撮像部50が、同一のコンピュータ60により制御される。このため、二次元バーコード94の印刷、二次元バーコード94の読み取り、および画像データ96の取得を、効率よく行うことができる。また、印刷部30、情報読取部40、および撮像部50の動作を組み合わせて、後述する種々の処理を、一連の動作として行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、記憶部64に対するバーコード情報93の入出力処理、記憶部64に対する画像データ96の入出力処理、および、コンピュータ60から表示部70への画像データ96の出力処理も、CPU61が制御する。
【0046】
記憶部64は、この画像取得装置において扱われる種々のデータを記憶する部位である。記憶部64は、例えば、ハードディスクドライブにより構成される。記憶部64は、図2のように、コンピュータ60を構成するハードウエアの一部であってもよく、あるいは、コンピュータ60に接続された外付けの記憶装置であってもよい。記憶部64には、情報読取部40から読み取られた複数のバーコード情報93、および、撮像部50から取得された複数の画像データ96が、記憶される。また、図2に示すように、記憶部64には、コンピュータプログラム97、第1のテーブルデータ98、および第2のテーブルデータ99が、記憶されている。
【0047】
図3は、第1のテーブルデータ98の例を示した図である。第1のテーブルデータ98は、複数のバーコード情報93と複数の画像データ96との対応関係を、規定している。すなわち、図3の左欄に示された各バーコード情報93と、図3の右欄に示された各画像データ96とが、それぞれ対応付けられている。なお、図3の例では、複数の画像データ96(例えば、10001.JPG〜10003.JPG)が、同一のバーコード情報93(例えば、1234567AA)に対応している。これは、同一のウエルプレート90に対して、複数回の撮像処理が行われるためである。
【0048】
本実施形態の記憶部64は、このような第1のテーブルデータ98を保持することにより、複数のバーコード情報93と、複数の画像データ96とを、対応付けて記憶する。ただし、バーコード情報93と画像データ96とを対応付ける方法は、必ずしもテーブルデータを利用したものでなくてもよい。例えば、バーコード情報93と、当該バーコード情報93に対応する画像データ96とを、同一のフォルダに保存するようにしてもよい。また、各画像データ96の名称に、バーコード情報93を特定する文字列を、含めるようにしてもよい。
【0049】
同一のバーコード情報93に対応する画像データ96は、同一のウエルプレート90の画像データ96である。コンピュータ60は、記憶部64に記憶された多数の画像データ96の中から、同一のウエルプレート90の画像データ96を、バーコード情報93に基づいて読み出し、表示部70に表示させることができる。画像取得装置1のユーザは、表示部70に表示された複数の画像データ96を参照することにより、同一のウエルプレート90における細胞902の培養状態を、容易に比較・解析できる。
【0050】
図4は、第2のテーブルデータ99の例を示した図である。第2のテーブルデータ99は、複数のバーコード情報93と、各バーコード情報93に対応するウエルプレート90の撮影回数と、当該ウエルプレート90における細胞の培養条件との対応関係を、規定している。本実施形態の記憶部64は、このような第2のテーブルデータ99を保持することにより、複数のバーコード情報93と、ウエルプレート90内の細胞902の培養条件とを、対応付けて記憶する。
【0051】
このようにすれば、複数の画像データ96を、バーコード情報93および培養条件と対応付けて、管理できる。また、培養条件を指定して、それに適合する画像データ96を、複数の画像データ96の中から検索して呼び出すことも可能となる。したがって、培養条件毎に、細胞の状態にどのような傾向があるのかを、把握することが容易となる。
【0052】
表示部70は、画像取得装置1の処理に関わる種々の情報(バーコード情報93、画像データ96、GUI等)を表示するための部位である。表示部70は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置により実現される。
【0053】
図5は、表示部70に表示されるウインドウ71の例を示した図である。図5のウインドウ71には、バーコード情報93と、当該バーコード情報93に対応する2つの画像データ96とが、表示されている。このように、同一のバーコード情報93に対応する複数の画像データ96を、共通のウインドウ71に並べて表示すれば、同一のウエルプレート90の画像を、容易に比較できる。したがって、細胞902の経時的な変化を、容易に観察できる。
【0054】
入力部80は、コンピュータ60に種々のコマンドを入力するための部位である。画像取得装置1のユーザは、表示部70を確認しながら、入力部80を操作して、印刷、読取、撮像、検索等のコマンドを、コンピュータ60に送信できる。入力部80は、例えば、キーボードやマウスにより実現される。なお、表示部70の機能と、入力部80の機能との双方が、タッチパネル式のディスプレイなどの単一のデバイスにより、実現されていてもよい。
【0055】
<2.画像取得装置の動作>
<2−1.情報付与動作>
図6は、ウエルプレート90に二次元バーコード94を印刷するときの動作手順を示すフローチャートである。二次元バーコード94を印刷するときには、まず、画像取得装置1のユーザが、プレート保持部10に、空の(培養液901および細胞902が入っていない)ウエルプレート90をセットする(ステップS11)。次に、ユーザが入力部80を操作して、二次元バーコード94を印刷する旨のコマンドを入力する(ステップS12)。すると、制御部としてのコンピュータ60が、移動機構11、投光部20、印刷部30、および情報読取部40を制御することにより、以下の一連の処理が進行する。
【0056】
まず、移動機構11が動作して、ウエルプレート90を、印刷部30の下方位置へ移動させる(ステップS13)。次に、コンピュータ60が、当該ウエルプレート90を特定するための固有のバーコード情報93を生成する。そして、印刷部30が、コンピュータ60から与えられたバーコード情報93に基づいて、ウエルプレート90に、二次元バーコード94を印刷する(ステップS14)。
【0057】
二次元バーコード94が印刷されると、続いて、移動機構11が動作して、ウエルプレート90を、情報読取部40の下方位置へ移動させる(ステップS15)。そして、情報読取部40が、ウエルプレート90上の二次元バーコード94の読み取りを試みる(ステップS16)。これにより、情報読取部40が、二次元バーコード94を正常に読み取れるか否かを判定する(ステップS17)。
【0058】
情報読取部40が、二次元バーコード94を正常に読み取れた場合(ステップS17においてYes)、コンピュータ60は、二次元バーコード94の印刷が成功したと判断し、表示部70に、印刷成功の旨を表示する(ステップS18)。印刷が成功すると、画像取得装置1のユーザは、プレート保持部10からウエルプレート90を取り出し、当該ウエルプレート90を使用した細胞902の培養を開始する。
【0059】
一方、情報読取部40が、二次元バーコード94を正常に読み取れなかった場合(ステップS17においてNo)、コンピュータ60は、二次元バーコード94の印刷が失敗したと判断し、表示部70に、印刷失敗の旨を表示する(ステップS19)。
【0060】
このように、この画像取得装置1では、ウエルプレート90に二次元バーコード94を印刷するだけではなく、二次元バーコード94の印刷が成功したか否かを、判定する。これにより、細胞902の培養を開始する前に、二次元バーコード94の印刷ミスを知ることができる。特に、この画像取得装置1では、細胞902の培養後に二次元バーコード94を読み取る情報読取部40そのものを利用して、印刷の成否を判断する。したがって、細胞902の培養後に、二次元バーコード94を、より確実に読み取ることができる。
【0061】
なお、二次元バーコード94の印刷は、必ずしも細胞902の培養を開始する前でなくてもよい。例えば、細胞902の培養を開始した後、1回目の画像データ96を取得する前に、印刷部30において、二次元バーコード94を印刷するようにしてもよい。
【0062】
<2−2.情報読取および画像取得動作>、
図7は、二次元バーコード94の読み取りおよび画像データ96の取得を行うときの動作手順を示したフローチャートである。二次元バーコード94の読み取りおよび画像データ96の取得を行うときには、まず、画像取得装置1のユーザが、プレート保持部10に、培養液901および細胞902を保持したウエルプレート90をセットする(ステップS21)。次に、ユーザが入力部80を操作して、二次元バーコード94の読み取りおよび画像データ96の取得を行う旨のコマンドを入力する(ステップS22)。すると、制御部としてのコンピュータ60が、移動機構11、投光部20、情報読取部40、および撮像部50を制御することにより、以下の一連の処理が進行する。
【0063】
まず、移動機構11が動作して、ウエルプレート90を、情報読取部40の下方位置へ移動させる(ステップS23)。そして、情報読取部40が、ウエルプレート90上の二次元バーコード94を読み取る(ステップS24)。これにより、当該二次元バーコード94に含まれるバーコード情報93が、取得される。取得されたバーコード情報93は、コンピュータ60内の記憶部64に記憶される。
【0064】
続いて、移動機構11が動作して、ウエルプレート90を、撮像部50の下方位置へ移動させる(ステップS25)。そして、撮像部50が、ウエルプレート90を撮影して、画像データ96を取得する(ステップS26)。取得された画像データ96は、A/D変換部63でデジタル化されて、記憶部64に記憶される。
【0065】
その後、ステップS24において取得されたバーコード情報93と、ステップS26において取得された画像データ96とを、対応付ける(ステップS27)。例えば、図3のような第1のテーブルデータ98に、取得されたバーコード情報93と、取得された画像データ96との対応関係を、書き込む。
【0066】
このようにすれば、多数の画像データ96を、各ウエルプレート90を識別するバーコード情報93と対応付けて、管理できる。したがって、ウエルプレート90ごとの細胞902の経時的な変化を、容易に観察できる。特に、本実施形態では、同一のウエルプレート90に対して、二次元バーコード94の読み取りと、画像データ96の取得とが、一連の動作として行われる。このため、バーコード情報93と画像データ96とが、より確実に対応付けられる。
【0067】
なお、撮像部50による画像データ96の取得後に、撮影対象となったウエルプレート90に、撮影回数等を示す追加情報95を印刷してもよい。具体的には、撮影後のウエルプレート90を、移動機構11により、印刷部30の下方位置へ移動させる。そして、印刷部30が、ウエルプレート90に追加情報95を印刷する。このようにすれば、ウエルプレート90に印刷された追加情報95に基づいて、当該ウエルプレート90関する処理の状況を、可視的に認識できる。
【0068】
<2−3.画像表示動作>
図8は、表示部70に画像データ96を表示するときの動作手順を示すフローチャートである。この画像取得装置1では、バーコード情報93を入力して、対応する画像データ96を読み出すモードと、詳細な検索条件を入力して、それに適合する画像データ96を絞り込み検索するモードとを、選択できる(ステップS31)。
【0069】
バーコード情報93を入力する場合には、ウエルプレート90上の二次元バーコード94を読み取るか、あるいは、ユーザが、入力部80から直接バーコード情報93を入力する(ステップS32)。
【0070】
一方、検索条件を入力する場合には、ユーザが入力部80を操作して、細胞902の種類、培養液901に添加された化合物の種類、培養期間等の検索条件を、少なくとも1つ指定する(ステップS33)。検索条件には、例えば、第2のテーブルデータ99内に含まれる培養条件を、含めることができる。
【0071】
検索条件が入力されると、コンピュータ60は、第2のテーブルデータ99を参照することにより、当該検索条件に合致するバーコード情報93を特定する(ステップS34)。例えば、図4に示された第2のテーブルデータ99の例において、検索条件を「化合物=M123」とした場合、当該検索条件に合致するバーコード情報93は、「1234567AA」、「1234567BB」、「1234567AC」の3つとなる。
【0072】
その後、コンピュータ60は、ステップS32において入力されたバーコード情報93またはステップS34において特定されたバーコード情報93と、第1のテーブルデータ98とを参照することにより、記憶部64に記憶された多数の画像データ96の中から、当該バーコード情報93に対応する画像データ96を読み出す。そして、コンピュータ60は、読み出された画像データ96を、例えば、図5のような態様で、表示部70に表示する(ステップS35)。
【0073】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記の実施形態では、二次元バーコード94の読み取りの後に、ウエルプレート90を撮影していたが、二次元バーコード94の読み取りと、ウエルプレート90の撮影との順序は、逆であってもよい。すなわち、図7中のステップS23〜S24と、ステップS25〜S26との順序を、入れ替えてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、移動機構11によりウエルプレート90を移動させていたが、ウエルプレート90の代わりに、投光部20、印刷部30、情報読取部40、および撮像部50が移動する構成であってもよい。培養液901や細胞902の揺動を抑制しつつ撮影を行うことを重視する場合には、ウエルプレート90を静止させておく方が、好ましい。ただし、印刷部30や撮像部50を移動可能な構成にすると、印刷機構や光学系を高精度に維持することが困難となる。したがって、印刷機構や光学系の精度を保つことを重視する場合には、上記の実施形態のように、ウエルプレート90を移動させる方が好ましい。
【0076】
また、ウエルプレート90における二次元バーコード94の印刷位置は、図1とは異なる位置であってもよい。例えば、ウエルプレート90の側面に、二次元バーコード94を印刷してもよい。
【0077】
また、ウエルプレート90に二次元バーコード94を付与する手段は、インクジェット印刷以外の手段であってもよい。例えば、レーザ印刷、スタンプ、機械的加工などであってもよい。また、ウエルプレート90に、二次元バーコード94に代えて、文字、記号、一次元バーコード等を、識別情報として印刷するようにしてもよい。また、識別情報を保持したICタグ等の電子媒体や、識別情報が印刷されたシールラベルを、ウエルプレート90に取り付けるようにしてもよい。すなわち、情報付与部は、ウエルプレート90を識別するための識別情報を、何らかの媒体によって、ウエルプレート90に付与するものであればよい。
【0078】
また、ウエルプレート90の各窪部91の条件(細胞種、培養液の種類、添加した化合物の種類、培養液中の化合物の濃度など)に対して、それぞれ識別情報を付与し、当該識別情報に基づいて、窪部91毎に画像を管理するようにしてもよい。この際、ウエルプレート90の各窪部91の近傍に、窪部91を識別するための識別情報が、印刷等により付与されてもよい。
【0079】
また、バーコード情報93、画像データ96、第1のテーブルデータ98、および第2のテーブルデータ99を、他の装置やシステムとの間で、入出力できるようになっていてもよい。例えば、画像取得装置1にデータ出力手段を付加し、記憶部64に記憶されたデータを、他の装置へ出力できるようにしてもよい。また、画像取得装置1にデータ入力手段を付加し、薬液分注システムや、細胞培養インキュベーションシステムから、第2のテーブルデータ99に含まれる種々の培養条件を、入力できるようにしてもよい。
【0080】
また、ウエルプレート90内に保持される培養物質は、定常的に液相で存在するものであってもよく、時間とともにゲル状に変化するものであってもよい。すなわち、培養物質は、少なくとも注入時に液体であればよい。また、ウエルプレート90内に保持される細胞は、組織を構成しない個々の細胞であってもよく、複数の細胞で構成される菌等の生体物であってもよい。
【0081】
また、ウエルプレート90に含まれる窪部91の数は、図1の例と相違していてもよい。また、本発明の画像取得装置は、ウエルプレート以外の容器を撮影するものであってもよい。
【0082】
また、ウエルプレート90における細胞902の培養方法は、二次元培養および三次元培養のいずれであってもよい。ただし、三次元培養の場合には、三次元的に成長した細胞集塊を観察することが、従来の光学的な測定では困難であるため、本発明が特に有用である。
【0083】
また、画像取得装置の細部の構成については、本願の各図に示された構成と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 画像取得装置
10 プレート保持部
11 移動機構
20 投光部
21 第1光源
22 第2光源
30 印刷部
40 情報読取部
50 撮像部
60 コンピュータ
61 CPU
62 機能切替器
63 A/D変換部
64 記憶部
70 表示部
71 ウインドウ
80 入力部
90 ウエルプレート
91 窪部
92 底部
93 バーコード情報
94 二次元バーコード
95 追加情報
96 画像データ
97 コンピュータプログラム
98 第1のテーブルデータ
99 第2のテーブルデータ
901 培養液
902 細胞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8