特許第5864305号(P5864305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864305
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】鋳型造型用砂組成物
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/20 20060101AFI20160204BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20160204BHJP
   C08L 71/14 20060101ALI20160204BHJP
   C08G 65/36 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B22C1/20 Z
   C08K3/20
   C08L71/14
   C08G65/36
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-45640(P2012-45640)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-180318(P2013-180318A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亮司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊樹
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−180242(JP,A)
【文献】 特開昭57−72750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/20
C08G 65/36
C08K 3/20
C08L 71/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物及び酸性硬化剤組成物を含有する自硬性鋳物砂組成物であって、
自硬性鋳型造形用粘結剤組成物がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有し、
酸性硬化剤組成物が炭素数1〜3の1価アルコール及び水を含有し、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率(炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物)が0.10〜1.0であり、炭素数1〜3の1価アルコールに対する水の重量比率が0.01〜2.5である、自硬性鋳物砂組成物。
【請求項2】
フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の含有量が、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物中、20重量%以上である、請求項1記載の自硬性鋳物砂組成物。
【請求項3】
炭素数1〜3の1価アルコールがメタノール及びエタノールから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の自硬性鋳物砂組成物。
【請求項4】
フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物が式(1)で示される化合物である、請求項1〜いずれかに記載の自硬性鋳物砂組成物。
【化1】
(Rはフルフリル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、各Rは同一でも異なってもよい。(2n+4)個のRの内、少なくとも1つはフルフリル基である。nは0以上の整数を示す。)
【請求項5】
式(1)の化合物において、nが0〜12である、請求項記載の自硬性鋳物砂組成物。
【請求項6】
自硬性鋳型造形用粘結剤組成物の含有量が、耐火性骨材100重量部に対して、0.4〜5重量部である、請求項1〜いずれかに記載の自硬性鋳物砂組成物。
【請求項7】
酸性硬化剤組成物の含有量が、耐火性骨材100重量部に対して、0.12〜3.5重量部である、請求項1〜いずれかに記載の自硬性鋳物砂組成物。
【請求項8】
耐火性骨材に、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物及び酸性硬化剤組成物を添加して自硬性鋳物砂組成物を得る工程、及び該自硬性鋳物砂組成物を硬化させる工程を有する鋳型の製造方法であって、
自硬性鋳型造形用粘結剤組成物がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有し、
酸性硬化剤組成物が炭素数1〜3の1価アルコール及び水を含有し、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率が0.10〜1.0であり、炭素数1〜3の1価アルコールに対する水の重量比率が0.01〜2.5である、鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型造型用砂組成物、及び鋳型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自硬性鋳型、中でも酸硬化性の自硬性鋳型は、ケイ砂等の耐火性骨材に、酸硬化性樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物と、リン酸、有機スルホン酸、硫酸等を含有する硬化剤組成物とを添加し、これらを混練した後、得られた混練砂を木型等の原型に充填し、酸硬化性樹脂を硬化させて製造される。
【0003】
酸硬化性樹脂には、フラン樹脂やフェノール樹脂等が用いられており、フラン樹脂には、フルフリルアルコール、フルフリルアルコール・尿素・ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール・ホルムアルデヒド樹脂、フルフリルアルコール・フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、その他公知の変性フラン樹脂等が用いられている。
【0004】
鋳型を製造する上で、重要な条件として、鋳型の生産性と作業環境の改善が挙げられる。自硬性鋳型においては、鋳型の生産性を上げるためには、原型に混練砂を充填した後、鋳型の硬化速度を上げ、原型から鋳型を抜型するまでに要する時間(抜型時間)を短くする必要がある。また、鋳型を操作するためには十分な鋳型強度が必要であり、鋳型強度が低くなると型割れなどが生じ、生産性が悪くなる。
【0005】
鋳型の生産性に関して、例えば、耐火性骨材、酸性硬化剤、およびフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物又はこのものとフルフリルアルコールとの混合物を含有させた鋳物砂組成物が、可視時間と抜型時間のバランスに富む優れた造形性を有し、強度と耐熱性を備えた鋳型の生産が可能であることが開示されている(特許文献1)。
また、耐火性粒状材料、酸硬化性樹脂を含有する粘結剤、酸を含有する硬化剤及びアルコール等の溶剤を含有する酸硬化性鋳型成形用粒状材料組成物が、鋳型強度を向上させることが開示されている(特許文献2)。
また、特定の構造のフルフリルアルコール縮合物及びフルフリルアルコール・ホルムアルデヒド縮合物から選ばれる1種以上の化合物と酸硬化性樹脂とを含有する自硬性鋳型造形用粘結剤組成物が、鋳型強度、及び鋳型の深部硬化性を向上させることが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−142033公報
【特許文献2】国際公開第99/14003号
【特許文献3】特開2011−147999公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、抜型時間を短縮し、鋳型強度を向上させることに関しては不十分であった。
本発明は、鋳型の製造において抜型時間を短縮し、鋳型強度を向上させる鋳物砂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、耐火性骨材、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物及び酸性硬化剤組成物を含有する自硬性鋳物砂組成物であって、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有し、酸性硬化剤組成物が炭素数1〜3の1価アルコールを含有し、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率(炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物)が0.10〜1.0である、自硬性鋳物砂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鋳物砂組成物は、鋳型の製造において抜型時間を短縮し、鋳型強度を向上することできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の自硬性鋳物砂組成物は、耐火性骨材、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物及び酸性硬化剤組成物を含有し、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有し、酸性硬化剤組成物が炭素数1〜3の1価アルコールを含有し、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率(炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物)が0.10〜1.0であることに特徴を有し、鋳型の製造において、抜型時間を短縮し、鋳型強度を向上する効果を奏する。
【0011】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
自硬性鋳型造形用粘結剤組成物がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有し、酸性硬化剤組成物が炭素数1〜3の1価アルコールを含有し、特定の炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の重量比を有するために、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物と酸性硬化剤組成物の相溶性が向上し、硬化剤中の酸がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物と均一に混合され、硬化剤中の酸とフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の接触頻度が高まり硬化速度を向上させる。一方、炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の重量比が小さいと、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物と酸性硬化剤組成物の相溶性が不十分となり、硬化速度の向上が不十分となる。また、該重量比が大きいと硬化剤中の酸とフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の接触頻度が低下し、硬化速度の向上が不十分となる。また、炭素数1〜3の1価アルコールが揮発し、酸の濃度が増すと共に、水の系外への除去も促進される。これらの相乗効果により、硬化速度が向上し、抜型時間が短縮され、鋳型強度が向上する。
【0012】
[自硬性鋳型造形用粘結剤組成物]
本発明で用いられる自硬性鋳型造形用粘結剤組成物は、酸硬化性樹脂として、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有する。
(フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物)
フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物は、下記式(1)で示されるようなオルガノシランもしくはオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
(Rはフルフリル基又は炭素数1〜5のアルキル基であり、各Rは同一でも異なってもよい。(2n+4)個のRの内、少なくとも1つはフルフリル基である。nは0以上の整数を示す。)
【0015】
式1において、Rはフルフリル基又は炭素数1〜5のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の製造が容易である観点から、1〜3がより好ましく、1〜2が更に好ましい。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0016】
フルフリルオキシ変性度、すなわち、すべてのRの数に対するフルフリル基であるRの数の割合は、抜型時間を短縮する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、より更に好ましくは89%以上である。フルフリルオキシ変性度は、後述する実施例に記載されている方法により求めることができる。
【0017】
式1において、nは、炭素数1〜3の1価アルコールとの相溶性を向上させ、抜型時間を短縮する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、0以上であり、3以上がより好ましい。また、粘結剤組成物の粘度を減少させ、取扱いを容易にする観点、炭素数1〜3の1価アルコールとの相溶性を向上させ、抜型時間低減率を小さくする観点及び鋳型強度向上率を高くする観点から、12以下が好ましく、9以下がより好ましく、7以下が更に好ましい。これらの観点を総合すると、nは0〜12が好ましく、0〜9がより好ましく、3〜7が更に好ましい。
【0018】
フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物のSi濃度から換算したSiO濃度(重量%)は、抜型時間を短縮する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、12重量%以上が好ましく、18重量%以上がより好ましい。また、粘結剤組成物の粘度を減少させ、取扱いを容易にする観点、抜型時間低減率を小さくする観点及び鋳型強度向上率を高くする観点から、25重量%以下が好ましく、23重量%以下がより好ましい。これら観点を総合すると、SiO濃度は、12〜25重量%が好ましく、18〜25重量%がより好ましく、18〜23重量%が更に好ましい。SiO濃度は、後述する実施例に記載されている方法で求めることができる。
【0019】
フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の25℃における粘度は、抜型時間を短縮する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、3mPa・S以上が好ましく、25mPa・S以上がより好ましく、50mPa・S以上が更に好ましい。また、炭素数1〜3の1価アルコールとの相溶性を向上させ、抜型時間低減率を小さくする観点、鋳型強度向上率を高くする観点及び取り扱いを容易にする観点から、170mPa・s以下が好ましく、120mPa・Sがより好ましく、70mPa・s以下が更に好ましい。これらの観点を総合すると、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の粘度は、3〜170mPa・sが好ましく、25〜120Pa・sがより好ましく、50〜70mPa・sが更に好ましい。
【0020】
本発明で使用されるフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物は、テトラアルコキシシランまたはテトラアルコキシシロキサンとフルフリルアルコールを触媒存在下反応することにより得られる。
【0021】
この反応触媒としては、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンなどのチタン化合物;ジブチルスズジアセテート、酢酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズなどのスズ化合物;亜鉛−2−エチルヘキソエート、酢酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛などの亜鉛化合物;酢酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物等の金属化合物、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、強塩基性イオン交換樹脂、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの塩基性若しくはアルカリ性化合物などが用いられる。フルフリルアルコールや有機ケイ素化合物の自己縮合などの副反応を制御し、かつ反応性(触媒活性)に優れる観点から、塩基性若しくはアルカリ性化合物が好ましく、比較的安価で取り扱いやすい観点から水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0022】
上記反応条件は、特に制限はなく、原料種及び原料の配合比、触媒種及びその量、反応環境(常圧、減圧)、反応度合(変性度、縮合度)などを必要に応じて適宜選択すればよいが、中でもフルフリルアルコール100重量部に対し、テトラアルコキシシランまたはテトラアルコキシシロキサン50〜70重量部、水酸化ナトリウム0.001〜0.01重量部を混合し、40〜50mmHg減圧下、80〜90℃の温度で1〜5時間反応させるのが好ましい。
【0023】
過剰のフルフリルアルコールは除去してもよいし、除去せずにフルフリルアルコールを含んだまま粘結剤組成物に用いてもよい。
粘結剤組成物中のフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の含有量は、抜型時間を短縮させる観点及び鋳型強度を向上させる観点から、20重量%以上が好ましく、35重量%以上がより好ましく、60重量%以上が更に好ましく、80重量%以上がより更に好ましく90重量%以上がより更に好ましい。
【0024】
(その他酸硬化性樹脂)
本発明で用いられる粘結剤組成物中には、鋳型の性能を向上させる観点から、その他の酸硬化性樹脂が含まれていてもよい。酸硬化性樹脂としては、例えば、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フェノール類とアルデヒド類の縮合物、メラミンとアルデヒド類の縮合物及び尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるものや、これらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが使用できる。また、前記群から選ばれる2種以上の共縮合物からなるものや、前記群から選ばれる1種以上と前記共縮合物との混合物からなるものも使用できる。このうち、深部硬化性向上の観点から、フルフリルアルコールとフェノール類とアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールとメラミンとアルデヒド類の縮合物、及びフルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるフラン樹脂、あるいはこれらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるフラン樹脂が好ましい。また、造型時のホルムアルデヒドの発生量を低減する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物であることが好ましい。また、粘結剤組成物の粘度を適度な範囲に調整し、取り扱を容易にする観点から、酸硬化性樹脂はフルフリルアルコールを含有することが好ましい。
【0025】
粘結剤組成物中のその他の酸硬化性樹脂の含有量は、抜型時間を短縮する観点から、80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、30重量%以下が更に好ましく、10重量%以下がより更に好ましい。
【0026】
(その他の成分)
粘結剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化促進剤やシランカップリング剤等を含有してもよい。
【0027】
(水)
粘結剤組成物中の水の含有量は、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の加水分解を防ぐ観点から、粘結剤組成物中、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、実質的に0重量%であることが更に好ましい。
【0028】
鋳型造型用砂組成物中の自硬性鋳型造形用粘結剤組成物の含有量は、鋳型の強度を向上させる観点から、耐火性骨材100重量部に対して0.4重量部以上が好ましく、0.6重量部以上がより好ましく、0.8重量部以上が更に好ましい。また、抜型時間を短縮する観点から、5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下が更に好ましい。これらの観点を総合すると、鋳型造型用砂組成物中の自硬性鋳型造形用粘結剤組成物の含有量は、耐火性骨材100重量部に対して、0.4〜5重量部が好ましく、0.6〜3重量部がより好ましく、0.8〜2重量部が更に好ましい。
【0029】
[酸性硬化剤組成物]
本発明において用いられる酸性硬化剤組成物には、硫酸、リン酸などの無機酸や、芳香族スルホン酸等の有機酸など、従来公知のものを、1種以上使用できる。この内、鋳型強度を向上させる観点から、有機酸が好ましく、スルホン酸がより好ましく、芳香族スルホン酸が更に好ましく、パラトルエンスルホン酸がより更に好ましい。
【0030】
また、酸性硬化剤組成物中の酸の含有量は、抜型時間を短縮する観点から、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、また、鋳型強度を向上させる観点、硬化剤組成物の取り扱いを容易にする観点から、60重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、酸性硬化剤組成物中の酸の含有量は、10〜60重量%が好ましく、15〜45重量%がより好ましい。
【0031】
また、酸の含有量は、抜型時間を短縮する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、酸硬化性樹脂100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましく、8〜30重量部が更に好ましい。
【0032】
酸性硬化剤組成物中には溶剤としてアルコールを含有する。
アルコール類としては、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物との相溶性を向上させ、鋳型の抜型時間を短縮する観点及び鋳型強度を向上させる観点から、炭素数3以下の一価アルコールであり、炭素数2以下の一価アルコールがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが挙げられ、メタノール、エタノールが好ましい。
【0033】
酸性硬化剤組成物中のアルコールの含有量は、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物との相溶性を向上させ、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、22重量%以上が好ましく、25%重量以上がより好ましく、30重量%以上が更に好ましく、35重量%以上がより更に好ましい。また、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物との相溶性を向上させ、鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、80重量%以下が好ましく、65重量%以下がより好ましく、55重量%以下が更に好ましく、45重量%以下がより更に好ましい。これらの観点を総合すると、酸性硬化剤組成物中のアルコールの含有量は22〜80重量%が好ましく、25〜65重量%がより好ましく、30〜55重量%がより更に好ましく、35〜45重量%がより更に好ましい。
【0034】
粘結剤中のフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率(炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物)は、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、0.10〜1.0である。
更に、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点から、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率は、0.12〜0.90が好ましく、0.25〜0.85がより好ましく、0.30〜0.82が更に好ましい。また、鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、0.10〜0.50が好ましく、0.10〜0.35がより好ましく、0.10〜0.30が更に好ましく、0.10〜0.25がより更に好ましい。
更に、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率は、0.12〜0.50が好ましく、0.25〜0.35がより好ましい。
【0035】
粘結剤組成物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率(炭素数1〜3の1価アルコール/粘結剤組成物)は、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、0.10〜0.40が好ましい。更に、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点から、粘結剤組成物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率は、0.22〜0.35が好ましく、0.26〜0.33がより好ましく、0.29〜0.32がより更に好ましい。また、鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、0.10〜0.26が好ましく、0.14〜0.22がより好ましい。
【0036】
酸性硬化剤組成物は、鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、更に水を含有することが好ましい。水により、粘結剤組成物中のフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の一部が加水分解され、生じたフルフリルアルコールにより、反応率が向上し、その結果、鋳型強度が向上し、鋳型強度向上率も向上すると考えられる。なお、本発明において酸性硬化剤組成物中の「水」とは、添加配合した「水」に加えて、酸水和物を使用した場合に該水和物由来の「水」も含むものとする。
【0037】
酸性硬化剤組成物中の水の含有量は、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、55%重量以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、45重量%以下が更に好ましい。また、鋳型の強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、1重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、35重量%以上が更に好ましい。これらの観点を総合すると、酸性硬化剤組成物中の水の含有量は1〜55重量%が好ましく、15〜50重量%がより好ましく、35〜45重量%が更に好ましい。
【0038】
酸性硬化剤組成物中のアルコールと水の合計含有量は、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、40〜90重量%が好ましく、55〜85重量%がより好ましい。
【0039】
酸性硬化剤組成物中のアルコールに対する水の重量比は、抜型時間を短縮し、抜型時間低減率を向上させる観点及び鋳型強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、2.5であり、2.1以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.2以下がより更に好ましい。また、鋳型の強度を向上させ、鋳型強度向上率を向上させる観点から、0.01であり、0.03以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.5以上がより更に好ましく、0.8以上がより更に好ましい。これらの観点を総合すると、酸性硬化剤組成物中のアルコールに対する水の重量比は0.01〜2.5であり、0.03〜2.1が好ましく、0.1〜1.8が更に好ましく、0.3〜1.5がより更に好ましく、0.8〜1.2がより更に好ましい。
【0040】
鋳型造型用砂組成物中の酸性硬化剤組成物は、硬化速度を早くし、抜型時間を短縮する観点から耐火性骨材100重量部に対して0.12重量部以上が好ましく、0.20重量部以上がより好ましく、0.30重量部以上が更に好ましく、0.35重量部以上がより更に好ましい。また、鋳型強度を向上させる観点から3.5重量部以下が好ましく、1.5重量部以下がより好ましく、1.0重量部以下が更に好ましく、0.85重量部以下がより更に好ましい。これらの観点を総合すると、鋳型造型用砂組成物中の酸性硬化剤組成物の含有量は、耐火性骨材100重量部に対して、0.12〜3.5重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましく、0.30〜1.0重量部が更に好ましく、0.35〜0.85重量部がより更に好ましい。
【0041】
鋳型造型用砂組成物中の酸性硬化剤組成物は、硬化速度を早くし、抜型時間を短縮する観点から、粘結剤組成物100重量部に対して、20重量部以上が好ましく、25重量部以上がより好ましく、30重量部以上が更に好ましく、35重量部以上がより更に好ましい。また、鋳型強度を向上させる観点から、100重量部以下が好ましく、90重量部以下がより好ましく、80重量部以下が更に好ましく、70重量部以下がより更に好ましい。これらの観点を総合すると、鋳型造型用砂組成物中の酸性硬化剤組成物の含有量は、粘結剤組成物100重量部に対して、20〜100重量部が好ましく、25〜90重量部がより好ましく、30〜80重量部が更に好ましく、35〜70重量部がより更に好ましい。
【0042】
[耐火性骨材]
耐火性骨材としては、石英質を主成分とする珪砂の他、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂や人工ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性骨材を回収したものや再生処理したものなども使用できる。
【0043】
鋳型造型用砂組成物中の耐火性骨材の含有量は、鋳型の耐熱性を高める観点から92.1重量%以上が好ましく、96.0重量%以上がより好ましく、98.0重量%以上が更に好ましい。また、鋳型強度を向上させる観点から99.5重量%以下が好ましく、99.2重量%以下がより好ましく、99.0重量%以下が更に好ましい。これらの観点を総合すると、鋳型造型用砂組成物中の耐火性骨材の含有量は、92.1〜99.5重量%が好ましく、96.0〜99.2重量%がより好ましく、98.0〜99.0重量%が更に好ましい。
【0044】
[鋳型造形用砂組成物の製造方法]
本発明の鋳型造形用砂組成物の製造方法としては、例えば、上記本発明の粘結剤組成物と酸性硬化剤組成物とを耐火性骨材に加え、これらをバッチミキサーや連続ミキサーなどで混練する方法を例示できる。この際、前記酸性硬化剤組成物を耐火性骨材に添加した後、粘結剤組成物を添加することが好ましい。
【0045】
[鋳型の製造方法]
本発明の鋳型造形用砂組成物は、耐火性骨材と、酸硬化性樹脂を含有する粘結剤組成物と、硬化剤とを混合してなる鋳型造形用砂組成物を硬化させる工程を有する鋳型の製造方法に好適である。即ち、本発明の鋳型の製造方法は、鋳型造形用砂組成物として上記本発明の鋳型造形用砂組成物を使用する鋳型の製造方法である。
【0046】
本発明の鋳型造形用砂組成物は、
<1>耐火性骨材、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物及び酸性硬化剤組成物を含有する自硬性鋳物砂組成物であって、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物がフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を含有し、酸性硬化剤組成物が炭素数1〜3の1価アルコールを含有し、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率(炭素数1〜3の1価アルコール/フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物)が0.10〜1.0である自硬性鋳物砂組成物である。
本発明は、更に以下の組成物または製造方法、或いは用途が好ましい。
<2>フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物が式(1)で示される化合物である、前記<1>の自硬性鋳物砂組成物。
【化2】
<3>式(1)の化合物において、nが0〜12であり、好ましくは0〜9、より好ましくは3〜7である、前記<2>の自硬性鋳物砂組成物。
<4>フルフリルオキシ変性度が、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である、前記<2>又は<3>の自硬性鋳物砂組成物。
<5>フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物のSi濃度から換算したSiO濃度が12〜25重量%であり、好ましくは18〜25重量%、より好ましくは18〜23重量%である、前記<1>〜<4>の自硬性鋳物砂組成物。
<6>フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の25℃における粘度が、3〜170mPa・sであり、好ましくは25〜120Pa・s、より好ましくは50〜70mPa・sである、前記<1>〜<5>の自硬性鋳物砂組成物。
<7>フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の含有量が、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物中、20重量%以上であり、好ましくは35重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、より更に好ましくは90重量%以上である、前記<1>〜<6>の自硬性鋳物砂組成物。
<8>自硬性鋳型造形用粘結剤組成物中の水の含有量が、10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは実質的に0重量%である、前記<1>〜<7>の自硬性鋳物砂組成物。
<9>炭素数1〜3の1価アルコールが、メタノール及びエタノールから選ばれる1種以上である、前記<1>〜<8>の自硬性鋳物砂組成物。
<10>酸性硬化剤組成物に含有される酸が、有機酸であり、好ましくはスルホン酸であり、より好ましくは芳香族スルホン酸であり、より好ましくはパラトルエンスルホン酸である、前記<1>〜<9>の自硬性鋳物砂組成物。
<11>フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率が、0.12〜0.50であり、好ましくは0.25〜0.35である、前記<1>〜<10>の自硬性鋳物砂組成物。
<12>粘結剤組成物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率が、0.22〜0.35であり、好ましくは0.26〜0.33であり、より好ましくは0.29〜0.32である、前記<1>〜<11>の自硬性鋳物砂組成物。
<13>粘結剤組成物に対する炭素数1〜3の1価アルコールの重量比率が、0.10〜0.26であり、好ましくは0.14〜0.22である、前記<1>〜<12>の自硬性鋳物砂組成物。
<14>酸性硬化剤組成物が更に水を含有する、前記<1>〜<13>の自硬性鋳物砂組成物。
<15>炭素数1〜3の1価アルコールに対する水の重量比率が、0.01〜2.5であり、好ましくは0.03〜2.1、より好ましくは0.1〜1.8、更に好ましくは0.3〜1.5、より更に好ましくは0.8〜1.2である、前記<1>〜<14>の自硬性鋳物砂組成物。
<16>酸性硬化剤組成物中の酸の含有量が、10〜60重量%であり、好ましくは15〜45重量%である、前記<1>〜<15>の自硬性鋳物砂組成物。
<17>酸性硬化剤組成物中のアルコールの含有量は、22〜80重量%であり、好ましくは25〜65重量%、より好ましく30〜55重量%、更に好ましくは35〜45重量%である、前記<1>〜<16>の自硬性鋳物砂組成物。
<18>酸性硬化剤組成物中の水の含有量が、1〜55重量%であり、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%である、前記<1>〜<17>の自硬性鋳物砂組成物。
<19>酸性硬化剤組成物中のアルコールと水の合計含有量は、40〜90重量%であり、好ましくは55〜85重量%である、前記<1>〜<18>の自硬性鋳物砂組成物。
<20>自硬性鋳型造形用粘結剤組成物の含有量が、耐火性骨材100重量部に対して、0.4〜5重量部であり、好ましくは0.6〜3重量部、より好ましくは0.8〜2重量部である、前記<1>〜<19>の自硬性鋳物砂組成物。
<21>酸性硬化剤組成物の含有量が、耐火性骨材100重量部に対して、0.12〜3.5重量部であり、好ましくは0.2〜1.5重量部、より好ましくは0.25〜0.80重量部、更に好ましくは0.30〜0.60重量部である、前記<1>〜<20>の自硬性鋳物砂組成物。
<22>酸性硬化剤組成物の含有量が、粘結剤組成物100重量部に対して、20〜100重量部であり、好ましくは25〜90重量部、より好ましくは30〜80重量部、更に好ましくは35〜70重量部である、前記<1>〜<21>の自硬性鋳物砂組成物。
<23>鋳型造型用砂組成物中の耐火性骨材の含有量が、92.1〜99.5重量%であり、好ましくは96.0〜99.2重量%、より好ましくは98.0〜99.0重量%である、前記<1>〜<22>の自硬性鋳物砂組成物。
<24>耐火性骨材に、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物及び酸性硬化剤組成物を添加して前記<1>〜<23>の自硬性鋳物砂組成物を得る工程、及び該自硬性鋳物砂組成物を硬化させる工程を有する鋳型の製造方法。
<25>前記<1>〜<23>の自硬性鋳物砂組成物の鋳型製造への使用。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を具体的に示す実施例について説明する。なお、製造例における評価項目は下記のように測定して測定を行った。
【0048】
[フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物のフルフリルオキシ変性度]
重水素化クロロホルムにフルフリルオキシを有する有機ケイ素化合物を溶解した後、内部標準としてテトラメチルシランを加えて測定用試料を調製した。核磁気共鳴分析(1H−NMR)を用いて、この試料を分析した。このNMRスペクトルからケイ素原子と結合したフルフリルオキシ基のメチレンプロトンピーク(δ値約4.7ppm)の面積X、ケイ素と結合したエトキシ基のメチルプロトンピーク(δ値約1.2ppm)の面積Yを積分曲線より求め、変性度=[3X/(3X+2Y)]×100よりフルフリルオキシ変性度(%)を算出した。
【0049】
[フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の遊離フルフリルアルコール量]
(1)と同様に核磁気共鳴分析(1H−NMR)を用いて分析した。このNMRスペクトルからケイ素原子と結合したフルフリルオキシ基のメチレンプロトンピーク(δ値約4.7ppm)の面積X、遊離のフルフリルアルコールのメチレンプロトンピーク(δ値約4.6ppm)の面積Zを積分曲線より求め、遊離フルフリルアルコール量={反応時に加えたフルフリルアルコール量×[Z/(X+Z)]/生成物全量}×100より、遊離フルフリルアルコール量を算出した。
【0050】
[フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物のSiO濃度]
JIS K0116 ICP発光分析法によりSi重量%を測定し、SiO重量%に換算することで求めた。
【0051】
[フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の25℃における粘度]
E型粘度計を用い25℃条件で測定した。
【0052】
製造例1(フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1の製造)
温度計、撹拌機及びアルコール分離器を備えた反応器にエチルシリケート40(商品名、コルコート社製テトラエトキシシリケート、分子中のSi原子の数が平均5のもの)1200g、フルフリルアルコール1920g及び水酸化ナトリウム3.3gを仕込み、次いで反応器内を減圧にすると共に撹拌しながら加熱昇温し、44mmHgの減圧下、85℃にて3時間反応した。更に、90℃に昇温し、エタノールを完全に除去した後、室温まで冷却して、フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1(式(1)において、n=4)を得た。フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1のフルフリルオキシ変性度は90%、遊離フルフリルアルコール量は8重量%、SiO濃度は21.7重量%で、25℃における粘度は62.2mPa・sあった。
【0053】
製造例2(フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物2の製造)
製造例1においてエチルシリケート40に代えてKBE−04(商品名、信越化学工業製テトラエトキシシラン)を277g使用し、また、仕込み量をフルフリルアルコールの523g、水酸化ナトリウム0.6gとする以外は製造例1と同様にしてフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物2を得た。フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物2(式(1)において、n=0)を得た。フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1のフルフリルオキシ変性度は88%、遊離フルフリルアルコール量は10重量%、SiO濃度は14.4重量%で、25℃における粘度は3.6mPa・sあった。
【0054】
製造例3(フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物3の製造)
製造例1においてエチルシリケート40に代えてエチルシリケート48(商品名、コルコール社製テトラエトキシシリケート、分子中のSi原子の数が平均10のもの)を456g使用し、また、仕込み量をフルフリルアルコールの386g、水酸化ナトリウム0.7gとする以外は製造例1と同様にしてフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物3を得た。フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物3(式(1)において、n=9)を得た。フルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1のフルフリルオキシ変性度は90%、遊離フルフリルアルコール量は10重量%、SiO濃度は23.2重量%で、25℃における粘度は165.6mPa・sあった。
【0055】
製造例4(自硬性鋳型造形用粘結剤組成物Aの製造)
フルフリルアルコール100重量部と製造例1で得たフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1 72重量部を25℃で混合し、自硬性鋳型造形用粘結剤組成物Aを得た。
【0056】
製造例5(自硬性鋳型造形用粘結剤組成物Bの製造)
製造例1で製造したフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物1をそのまま用いた。
【0057】
製造例6(自硬性鋳型造形用粘結剤組成物Cの製造)
製造例2で製造したフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物2をそのまま用いた。
【0058】
製造例7(自硬性鋳型造形用粘結剤組成物Dの製造)
製造例3で製造したフルフリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物3をそのまま用いた。
【0059】
製造例8(自硬性鋳型造形用粘結剤組成物Eの製造)
フルフリルアルコール/ホルムアルデヒド/尿素のモル比が2.5/3.6/1であるフルフリルアルコール尿素ホルムアルデヒド樹脂29重量部、フルフリルアルコール61重量部、水分8重量部、f−尿素2重量部、N−β−(アミノエチル)−γ‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン0.1重量部を混合して得た。
【0060】
実施例1〜19、比較例1〜18
表1に示す所定量のパラトルエンスルホン酸1水和物(和光純薬製)、水、アルコールを25℃にて配合し、硬化剤組成物を得た。25℃、50%RHの条件下で、耐火性骨材として珪砂100重量部と表1に示す所定量の硬化剤組成物を40秒間混合した。次に、表1に示す所定量の自硬性鋳型造形用粘結剤組成物を加え80秒間混合し、実施例1〜19及び比較例1〜18の鋳物砂組成物を得た。
【0061】
試験例1(抜型時間)
混練直後の鋳物砂組成物を直径50mm、高さ50mmの円柱形上のテストピース枠に充填し、25℃、50%RHの条件下で所定の時間放置した後、JIS Z 2604−1976に記載された方法で、圧縮強度を測定した。得られた測定値が、放置後はじめて0.8MPaに到達したときの充填直後からの放置時間を抜型時間とした。
比較例1の抜型時間を100とした時の実施例1〜4、比較例2の抜型時間の相対値を抜型時間低減率とした。値が小さいほど、抜型時間が短くなり、優れている。
同様に、比較例7の抜型時間を100とした時の比較例3〜6,8の抜型時間低減率を、比較例10の抜型時間を100とした時の実施例5〜9、比較例9、11,12の抜型時間低減率を、比較例13の抜型時間を100とした時の実施例10の抜型時間低減率を、比較例14の抜型時間を100とした時の実施例11の抜型時間低減率を、比較例15の抜型時間を100とし、実施例12〜15、比較例16の抜型時間低減率をそれぞれ求めた。
さらに、比較例17の抜型時間を100とした時の実施例16、17の抜型時間低減率を、比較例18の抜型時間を100とし、実施例18,19の抜型時間低減率をそれぞれ求めた。
【0062】
試験例2(24時間後の鋳型圧縮強度)
混練直後の鋳物砂組成物を調製後すぐに直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填した。25℃、55%RHの条件下で充填後5時間経過した時に抜型を行い、更に、25℃、55%RHの条件下で抜型後19時間放置した後、JIS Z 2604−1976に記載された方法で鋳型圧縮強度を測定し、得られた測定値を24時間後の鋳型圧縮強度(MPa)とした。24時間後の鋳型圧縮強度が高いほど、最終的な鋳型強度が高いと評価できる。
比較例1の鋳型圧縮強度を100とした時の実施例1〜4、比較例2の鋳型圧縮強度の相対値を鋳型強度向上率とした。値が大きいほど、鋳型圧縮強度が高くなり、優れている。
同様に、比較例7の鋳型圧縮強度を100とした時の比較例3〜6、8の鋳型強度向上率を、比較例10の鋳型圧縮強度を100とした時の実施例5〜9、比較例9、11,12の鋳型強度向上率を、比較例13の鋳型圧縮強度を100とした時の実施例10の鋳型強度向上率を、比較例14の鋳型圧縮強度を100とした時の実施例11の鋳型強度向上率を、比較例15の鋳型圧縮強度を100とし、実施例12〜15、比較例16の鋳型強度向上率をそれぞれ求めた。
さらに、比較例17の鋳型圧縮強度を100とした時の実施例16,17の鋳型強度向上率を、比較例18の鋳型圧縮強度を100とし、実施例18、19の鋳型強度向上率をそれぞれ求めた。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例は、比較例に比べ、抜型時間が短縮されて抜型時間低減率が向上し、また、鋳型圧縮強度が高く鋳型強度向上率が向上していることがわかる。