【実施例】
【0029】
本発明を下記実施例によりさらに説明する。
下記実施例及び比較例において、下記の測定及び評価を行った。
(1)溶融粘度
供試ポリマーを乾燥し、溶融紡糸用押出機の溶融温度に設定されたオリフィス中にセットし、3分間溶融状態に保持したのち、所定水準の荷重下に、押出し、このときの剪断速度と溶融粘度とをプロットした。上記操作を、複数水準の荷重下において繰り返した。
上記データに基いて、剪断速度一溶融粘度関係曲線を作成した。この曲線上において、剪断速度が1000秒
−1のときの溶融粘度を見積る。
(2)溶解度パラメーター(SP値)
溶解度パラメーター(SP値)は、文献に記載された値または計算式に基づいて求められた値である。単位は(cal/cm
3)
1/2。
(3)融点測定
示差走査型熱量計(DSC)を用いて、30℃から300℃まで20℃/minの速度で測定を行い、結晶融解ピーク温度を融点とした。
(4)海島断面形成性
光学顕微鏡を用いて海島状態を観察した。
(5)平均単糸繊維径
海成分溶解除去後の極細繊維の30000倍のTEM観察により、繊維径を求めた。ここで繊維径は膠着していない単糸の繊維径を測定した。ランダムに選択した100本の微細繊維の繊維径データにおいて、平均単糸繊維径rを算出した。
(6)強伸度
海島型複合繊維について、引張試験機により、試料長20cm、速度20cm/分の条件で破断時の強力、および伸度を測定した。測定数は10とし、強力の平均値を平均単糸繊維径から求めた繊度を用いて算出し、強度(cN/dtex)とした。
(7)極細単繊維の分散状態
成型後の繊維強化エラストマー成型品の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
(8)外観
成形により得られた平板の表面を目視にて観察した。
【0030】
[実施例1]
海成分として、融点132℃、280℃1000sec
−1における溶融粘度が1000poise、SP値8.4(cal/cm
3)
1/2である高密度ポリエチレン〔日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HE495」、メルトフローレート20g/10分〕を用い、島成分として融点254℃、280℃1700sec
−1における溶融粘度が900poise、SP値10.7(cal/cm
3)
1/2であるPETを用い、島成分数900、ホール数10の海島型複合用口金を用いて、複合紡糸機にて複合比率を海:島=30:70、紡糸温度280℃、引き取り速度1000m/分で巻き取った。
続いて、得られた未延伸糸を延伸機を用いて、延伸温度80℃、熱セット温度150℃で延伸糸の伸度が25%となるように延伸倍率を合わせて延伸を行い、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。
複合繊維の直径は28μm、物性は強度4.8cN/dtex、伸度23%、島成分の単糸径は840nm、CV%は12%であった。断面形成性、紡糸性および延伸性は非常に良好であった。
得られた複合繊維を1mmにカットし、島成分である極細繊維のアスペクト比が約1200のカットファイバーを作成した。マトリックス成分として、エチレン−プロピレン−ジエン系エラストマー(EPDM、SP値8.0(cal/cm
3)
1/2)に繊維濃度10wt%となるよう複合繊維を14.3wt%添加し、成型温度140℃で混練し、加硫剤を添加して再度混練成形した後に、加硫することで繊維強化エラストマー成型品が得られた。成型品中の極細単繊維の分散状態を観察した結果、およそ900nmのPET繊維が均一に分散され、成型品の表面を観察すると繊維は完全に開繊していて表面は平滑であった。
【0031】
[実施例2]
海成分として、融点132℃、270℃1000sec
−1における溶融粘度が1100poise、SP値8.4(cal/cm
3)
1/2である高密度ポリエチレン〔日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HE495」、メルトフローレート20g/10分〕を用い、島成分として融点223℃、270℃1000sec
−1における溶融粘度が1200poise、SP値11.0(cal/cm
3)
1/2であるNy6を用い、実施例1と同様の方法で、紡糸温度を270℃に変更して、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。
複合繊維の直径は28μm、物性は強度4.3cN/dtex、伸度35%、島成分の単糸径は800nmであった。断面形成性、紡糸性および延伸性は非常に良好であった。
得られた複合繊維を1mmにカットし、島成分である極細繊維のアスペクト比が約1200のカットファイバーを作成した。マトリックス成分として、スチレン−ブタジエンゴム(SBR、SP値8.6(cal/cm
3)
1/2)に繊維濃度1wt%となるよう複合繊維を1.4wt%添加し、成型温度100℃で混練し、加硫剤を添加して再度混練成形した後に、加硫することで繊維強化エラストマー成型品が得られた。成型品中の極細単繊維の分散状態を観察した結果、およそ900nmのNy繊維が均一に分散され、成型品により得られた平板の表面を観察すると繊維は完全に開繊していて表面は平滑であった。
【0032】
[実施例3]
海成分として、融点132℃、280℃1000sec
−1における溶融粘度が1000poise、SP値8.4(cal/cm
3)
1/2である高密度ポリエチレン〔日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HE495」、メルトフローレート20g/10分〕を用い、島成分として融点275℃、290℃1000sec
−1における溶融粘度が900poise、SP値10.7(cal/cm
3)
1/2であるPETを用い、島成分数900、ホール数10の海島型複合用口金を用いて、複合紡糸機にて複合比率を海:島=30:70、紡糸温度290℃、引き取り速度1000m/分で巻き取った。
続いて、得られた未延伸糸を延伸機を用いて、延伸温度80℃、熱セット温度150℃で延伸糸の伸度が25%となるように延伸倍率を合わせて延伸を行い、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。
複合繊維の直径は28μm、物性は強度4.8cN/dtex、伸度23%、島成分の単糸径は840nmであった。断面形成性、紡糸性および延伸性は非常に良好であった。
得られた複合繊維を1mmにカットし、アスペクト比1190のカットファイバーを作成した。マトリックス成分として、エチレン−プロピレン−ジエン系エラストマー(EPDM、SP値8.0(cal/cm
3)
1/2)に繊維濃度10wt%となるよう複合繊維を14.3wt%添加し、140℃で混練し、加硫剤を添加して再度混練成形した後に、加硫することで繊維強化複合エラストマー成形品が得られた。成形品中の極細単繊維の分散状態を観察した結果、およそ900nmのPET繊維が均一に分散され、成形により得られた平板の表面を観察すると繊維は完全に開繊していて表面は平滑であった。
【0033】
[実施例4]
海成分として、融点124℃、280℃1000sec
−1における溶融粘度が1700poiseである直鎖状低密度ポリエチレン〔住友化学(株)製「スミカセンL GA801」、メルトフローレート20g/10分、SP値8.4(cal/cm
3)
1/2〕を用い、島成分として融点275℃、280℃1000sec
−1における溶融粘度が900poiseであるPET〔SP値10.7(cal/cm
3)
1/2〕を用い、実施例1と同様の方法で、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。
複合繊維の直径は28μm、物性は強度4.9cN/dtex、伸度25%、島成分の単糸径は840nmであった。断面形成性、紡糸性および延伸性は非常に良好であった。
得られた複合繊維を1mmにカットし、アスペクト比1190のカットファイバーを作成した。マトリックス成分として、エチレン−プロピレン−ジエン系エラストマー(EPDM、SP値8.0(cal/cm
3)
1/2)に繊維濃度10wt%となるよう複合繊維を14.3wt%添加し、140℃で混練し、加硫剤を添加して再度混練成形した後に、加硫することで繊維強化複合エラストマー成形品が得られた。成形品中の極細単繊維の分散状態を観察した結果、およそ900nmのPET繊維が均一に分散され、成形により得られた平板の表面を観察すると繊維は完全に開繊していて表面は平滑であった。
【0034】
[比較例1]
海成分として、融点223℃、270℃1000sec
−1における溶融粘度が1200poise、SP値11.0(cal/cm
3)
1/2であるNy6を用い、島成分として融点132℃、270℃1000sec
−1における溶融粘度が1100poise、SP値8.4(cal/cm
3)
1/2である高密度ポリエチレン〔日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HE495」、メルトフローレート20g/10分〕を用い、実施例1と同様の方法で、紡糸温度を270℃に変更して、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得た。
複合繊維の直径は28μm、物性は強度4.5cN/dtex、伸度20%、島成分の単糸径は800nmであった。断面形成性、紡糸性および延伸性は良好であった。
得られた複合繊維を1mmにカットし、島成分である極細繊維のアスペクト比が約1200のカットファイバーを作成した。マトリックス成分として、エチレン−プロピレン−ジエン系エラストマー(EPDM、SP値8.0(cal/cm
3)
1/2)に繊維濃度10wt%となるよう複合繊維を14.3wt%添加し、成型温度120℃で混練し、加硫剤を添加して再度混練成形した後に、加硫することで繊維強化エラストマー成型品が得られた。SP値の関係は、前述の関係式を満たさず、島成分の融点が海成分の融点より低く、成型温度に近いことから、混練時に熱によって変形し、極細繊維が均一に分散された成型品を得ることは出来なかった。
【0035】
[比較例2]
海成分として、融点106℃、280℃1000sec
−1における溶融粘度が1300poiseである低密度ポリエチレン〔住友化学(株)製「スミカセン G801」、メルトフローレート20g/10分、SP値8.4(cal/cm
3)
1/2〕を用い、島成分として融点275℃、280℃1000sec
−1における溶融粘度が900poiseであるPET〔SP値10.7(cal/cm
3)
1/2〕を用い、実施例1と同様の方法で、マルチフィラメント延伸糸(複合繊維)を得ようとしたが、海島複合繊維の紡糸工程で単糸同士が融着し、サンプルを採取することが出来なかった。
【0036】
[比較例3]
実施例1において海島型複合繊維の代わりに、PET長繊維〔帝人ファイバー(株)製「P903AL BHT1670T250」、平均繊維径24μm、強度7.2cN/dtex、伸度26%〕を5mmにカットしたものを用い添加量を10wt%とした以外は同様に行った。成形品中の繊維の分散状態を断面にて観察した結果、PET成分の直径は10〜80μmと不均一に分散して存在していた。成形時に、開繊が不十分なため、融着や分割等により繊維径にばらつきがあった。成形品の表面を観察した結果、開繊していない繊維の束が多数見られ、平板表面が荒れていた。