(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864315
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】幼児補助席
(51)【国際特許分類】
B62J 1/00 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
B62J1/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-57327(P2012-57327)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-189106(P2013-189106A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(72)【発明者】
【氏名】高井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】川端 真澄
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−302228(JP,A)
【文献】
米国特許第3544158(US,A)
【文献】
実開昭51−010760(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第19842294(DE,A1)
【文献】
特開2002−240763(JP,A)
【文献】
特開2012−218529(JP,A)
【文献】
特開2009−298286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00
B62J 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のハンドルバーに取り付ける幼児補助席であって、
幼児が着座する座部と、該座部を保持する保持フレームと、該保持フレームを前記ハンドルバーに固定する固定部と、を具備する幼児補助席において、
前記固定部が一対の掛止フックと、該一対の掛止フックを一体的に連結する連結部と、からなり、
前記固定部をハンドルバーに取り付けたとき、前記連結部がハンドルステムを挟んで前記座部と反対側に位置することを特徴とする幼児補助席。
【請求項2】
前記固定部が、前記保持フレームと着脱可能な着脱部を有し、該着脱部にて前記固定部が前記保持フレームに枢着されてなる請求項1記載の幼児補助席。
【請求項3】
前記着脱部がハンドルバーに沿うボルト孔を有し、前記保持フレームに設けられた一対のボルト孔間に前記着脱部のボルト孔が配置され、ボルトにより前記固定部が前記保持フレームに枢着される請求項2記載の幼児補助席。
【請求項4】
前記着脱部からハンドルステムまでの距離が5mm以下である請求項2または3記載の幼児補助席。
【請求項5】
前記座部の位置が調整可能である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の幼児補助席。
【請求項6】
前記一対の掛止フックの端部と基部とがネジでハンドルバーに対し挟着可能である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の幼児補助席。
【請求項7】
前記保持フレームが、ハンドルステムを把持する把持部を有する請求項1〜6のうちいずれか一項記載の幼児補助席。
【請求項8】
前記一対の掛止フックと前記連結部とが一部品からなる請求項1〜7のうちいずれか一項記載の幼児補助席。
【請求項9】
前記一対の掛止フックと前記連結部とが着脱可能である請求項1〜7のうちいずれか一項記載の幼児補助席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児補助席に関し、詳しくは、自転車のハンドルバーに固定する固定部の強度を向上させ、安全性を改善した幼児補助席に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児を自転車へ同乗させる際に用いられる幼児補助席として、自転車のハンドルのハンドルバーに取り付け、ハンドルバーの後方に装着させるタイプの幼児補助席が知られている。このようなタイプの幼児補助席に関する改良技術としては、例えば、特許文献1〜4開示の技術を挙げることができる。特許文献1〜4で提案されている幼児補助席は、ハンドルへの装着構造として、ハンドルバーに後方から対面するハンドルバー突き当て部と、ハンドルバーに上から嵌合する左右一対のフックと、これらの下方でハンドルステムに後部から嵌合する受け止め手段とを有している。
【0003】
また、特許文献3や4で提案されている幼児補助席は、上下反転させることにより、ハンドルバー突き当て部から前方への突出寸法が大きめのフックと、小さめのフックの2種類のフックを使い分けることができる構造が提案されている。すなわち、ハンドルステムとハンドルバーとの間の距離が近接したハンドル場合では前方突出の小さなフックを、ハンドルステムとハンドルバーとの間の距離がこれより離れたハンドルの場合では前方突出の大きなフックを、というように2種類のフックを使い分けることができる。
【0004】
しかしながら、使用者側でフックの反転がやり難かったり、使い分けの方法が理解されなかったりすることにより、十分に活用されていないということがあった。このような課題に着目して、特許文献5では、幼児補助席を自転車のハンドルバーに吊り掛けるフックの設定および変更を簡単、かつ、確実に行える幼児補助席が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−316680号公報
【特許文献2】特開2002−240763号公報
【特許文献3】特開2002−114182号公報
【特許文献4】実開昭63−100387号公報
【特許文献5】特開2005−67422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5に記載の幼児補助席は、その幼児補助席を自転車のハンドルバーに吊り掛ける吊り掛け手段が長いため、吊り掛け手段が変形しやすいという問題を有している。すなわち、幼児を乗せて自転車を走行させた場合における走行中のガタツキや、自転車が転倒した場合のように外部から大きな衝撃が加わった場合、吊り掛け手段が変形してしまうおそれがある。このような吊り掛け手段の変形は、安全性に影響を及ぼすものであり、改善が望まれているところであるが、これまでの他の幼児補助席も含め、外部から大きな衝撃が加わった場合に対しては、必ずしも十分な配慮がなされていなかったのが実情である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、自転車のハンドルバーに固定する固定部の強度を向上させ、安全性を改善した幼児補助席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、幼児補助席をハンドルバーに固定する固定部の構造を所定のものとすることにより、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の幼児補助席は、自転車のハンドルバーに取り付ける幼児補助席であって、
幼児が着座する座部と、該座部を保持する保持フレームと、該保持フレームを前記ハンドルバーに固定する固定部と、を具備する幼児補助席において、
前記固定部が一対の掛止フックと、該一対の掛止フックを一体的に連結する連結部と、からなり、
前記固定部をハンドルバーに取り付けたとき、前記連結部がハンドルステムを挟んで前記座部と反対側に位置することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の幼児補助席においては、前記固定部が、前記保持フレームと着脱可能な着脱部を有し、該着脱部にて前記固定部が前記保持フレームに枢着されてなることが好ましい。また、前記着脱部がハンドルバーに沿うボルト孔を有し、前記保持フレームに設けられた一対のボルト孔間に前記着脱部のボルト孔が配置され、ボルトにより前記固定部が前記保持フレームに枢着されることが好ましい。さらに、前記着脱部からハンドルステムまでの距離が5mm以下であることが好ましい。さらにまた、前記座部の位置が調整可能であることが好ましい。また、前記一対の掛止フックの端部と基部とがネジでハンドルバーに対し挟着可能であることが好ましい。さらに、前記保持フレームが、ハンドルステムを把持する把持部を有することが好ましい。さらにまた、本発明の幼児補助席においては、前記一対の掛止フックと前記連結部とが一部品からなるものでもよく、着脱可能な多部品からなるものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自転車のハンドルバーに固定する固定部の強度を向上させ、安全性を改善した幼児補助席を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態に係る固定部の分解図である。
【
図3】本発明の幼児補助席の保持フレームの一好適例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の幼児補助席の固定部の他の好適例を示す分解図である。
【
図5】本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態および自転車のハンドルステム近傍の断面図である。
【
図6】本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態に係る把持部の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態を示す斜視図であり、
図2は、本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態に係る固定部の分解図である。
図1および2に示すように、本発明の幼児補助席10は、自転車のハンドルに取り付けるタイプのものであり、幼児が着座する座部1と、この座部1を保持する保持フレーム2と、保持フレーム2をハンドルバー11に固定する固定部3と、を具備する。本発明の幼児補助席10においては、固定部3が一対の掛止フック3aと、この一対の掛止フック3aを一体的に連結する連結部3bと、からなる。このように、幼児補助席10をハンドルバー11と固定する固定部3の一対の掛止フック3aを連結して一体的に形成することで、従来の幼児補助席のように一対の掛止フックが独立していた場合と比較して、固定部3の強度を向上させることができる。
【0014】
本発明の幼児補助装置10においては保持フレーム2の形状については特に制限はなく、左右独立したタイプであってもよく、
図3に示すように、後方において一体的に形成されたタイプであってもよい。なお、この場合、左右の保持フレーム間に架設される補強版2a、2bを、適宜間隔をあけて設けることが好ましい。この補強版2a,2bにはボルト孔4aを設け、座部1は、ボルトにて固定することができる。幼児補助席10の保持フレーム2を左右別個に独立して作製した場合、製造コストの面からは有利であるが、保持フレーム2が左右独立しているため、
図3に示すように、保持フレーム2が座部後方において一体的に形成されている場合と比べて、座部1に対する保持強度が低いという問題を有している。そこで、本発明の幼児補助席10においては、幼児補助席10をハンドルバー11へ取り付ける固定部3を、上記のように一体的な構成とするとともに、保持フレーム2を座部後方で一体的に形成することにより、幼児補助席の安定性をより向上させることができる。
【0015】
本発明の幼児補助席10においては、固定部3の一対の掛止フック3aと連結部3bとが、一体的に連結されていればよく、その形態については特に制限はない。例えば、固定部3は、
図1および2に一好適例として示すように、一対の掛止フック3aと連結部3bとが1部品として形成されていてもよく、あるいは、
図4に他の好適例として示すように、一対の掛止フック3aと連結部3bとがそれぞれ独立して形成され、これらが一体的に連結されていてもよい。
図4に示す他の好適例においては、一対の掛止フック3aの間に連結部3bが配置され、一対の掛止フック3aと連結部3bとがボルト5aで連結されるが、一対の掛止フック3aを貫通する長ボルトとナットで連結されてもよい。
【0016】
図2や
図4においては、固定部3の連結部3bは、一対の掛止フック3aの下端の間に配置されているが、本発明の幼児補助席10においては、連結部3bは一対の掛止フック3aの中央部同士を連結するように連結部3bを配置してもよく、また、一対の掛止フック3aのハンドルバー11に掛止する部位を連結するように連結部3bを設けてもよい。
【0017】
本発明の幼児補助席10においては、固定部3が、保持フレーム2と着脱可能な着脱部3cを有し、この着脱部3cにて固定部3が保持フレーム2に枢着されてなることが好ましい。固定部3を保持フレーム2に枢着させることにより、ハンドルバー11を取り付けるハンドルステム12の上端部の突出し量の異なる車種にも、固定部3の角度を調整することで容易に幼児補助席10を取り付けることができる。
【0018】
かかる構造の好適例としては、例えば、
図2に示すように、固定部3の一対の掛止フック3aに対向する側の連結部縁部を湾曲させて、この湾曲の内側に、両端にボルト孔4bを有する回転軸部材6を配置することで着脱部3cを形成し、この着脱部3cを保持フレーム2の突片7に穿設された一対のボルト孔4c間に同軸上に配置し、2個のボルト5bで回転軸部材6を両端から螺着して、固定部3と保持フレーム2とを枢着する構成を挙げることができる。
【0019】
本発明の幼児補助席10においては、
図1に示すように、固定部3をハンドルバー11に取り付けたとき、連結部3bがハンドルステム12を挟んで座部1と反対側に配置される構造が好ましい。このように連結部3bと保持フレーム2との間にハンドルステム12を配置することにより、幼児補助席10を安定かつ強固に固定することができ、幼児補助席10に着座した幼児が動いた場合であっても、幼児補助席10は動くことはなく、幼児補助席10の安定性を良好に向上させることができる。
【0020】
図5に、上述の本発明の一好適な実施の形態の幼児補助席をハンドルバー11に取り付けた状態におけるハンドルステム12近傍の断面図を示す。本発明の幼児補助席10においては、着脱部3cからハンドルステム11までの距離が5mm以下であることが好ましい(図示例では、着脱部3cとハンドルステム12は接触している)。幼児補助席10に幼児を着座させた場合、幼児補助席10の固定部3には大きな負荷が加わることになる。また、自転車の転倒等によっても外部から大きな衝撃が固定部3に加わる。そこで、本発明の幼児補助席10においては、固定部3における着脱部3cをハンドルステム12の近傍に配置することができる構造とし、上記負荷や衝撃が固定部3に加わっても、これら負荷や衝撃をハンドルステム12と分散して受け止めることができるようにすることが好ましい。このような構造とすることにより、固定部3、特に一対の掛止フック3aの変形や破壊を防ぐことができる。かかる効果を最も良好に得るために、図示するように固定部3の着脱部3cとハンドルステム12とは接触した状態であることが好ましい。なお、幼児補助席10の固定部3における着脱部3cとハンドルステム12との距離が5mm以上となると、上記効果を十分に得ることができないので、好ましくない。
【0021】
本発明の幼児補助席10においては、
図5に示すように、固定部3の着脱部3cの軸方向に直交する方向における断面形状を略円形とすることが好ましい。かかる構造とすることにより、固定部3の角度調整を行っても着脱部3cとハンドルステム12との距離を一定にすることができる他、固定部3の角度調整をスムーズに行うことができる。
【0022】
本発明の幼児補助席10においては、座部1の位置が調整可能であることが好ましい。例えば、
図1〜3に示すように、保持フレーム2の突片7にボルト孔4cを複数対(図示例では3対)穿設することで、座部1の高さを多段階に調整することができる。なお、座部1の高さの調整方法は、図示するように、複数対のボルト孔4cを保持フレーム2に設ける以外にも、ボルト孔を長孔としてもよい。
【0023】
また、本発明の幼児補助席10においては、
図1〜3に示すように、一対の掛止フック3aの端部と基部とがネジ8でハンドルバー11に対し挟着可能であることが好ましい。ハンドルバー11を掛止フック3aで挟着することで、幼児補助席10とハンドルバー11との固定をより強固なものとすることができ、幼児補助席10の安定性をさらに向上させることができる。
【0024】
さらに、本発明の幼児補助席10においては、
図1〜3に示すように、保持フレーム2が、ハンドルステム12を把持する把持部9を有することが好ましい。保持フレーム2をハンドルステム12に把持させることで、さらに幼児補助席の安定性を向上させることができる。
図6に、本発明の幼児補助席の一好適な実施の形態に係る把持部の分解図示すが、例えば、図示するように、一対の保持フレーム2間に架設された下部把持部9aと、上部把持部9bとで、ハンドルステム12を把持し、下部把持部9aに穿設されたボルト孔4dと、上部把持部9bに穿設されたボルト孔4eと、をボルト5cにより固定する。
【0025】
本発明の幼児補助席10は、幼児が着座する座部1と、座部1を保持する保持フレーム2と、保持フレーム2をハンドルバー11に固定する固定部3と、を具備し、固定部3が一対の掛止フック3aと、一対の掛止フック3aを一体的に連結する連結部3bと、からなることが重要であり、それ以外に特に制限はなく、既知の構成を採用することができる。例えば、通常、座部1は保持フレーム2上に載置されるが、座部1の形状や、クッション材の配置の有無、クッション材の形状、材質等については適宜選定することができる。また、本発明の幼児補助席10には、幼児用のハンドル等を設けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 座部
2 保持フレーム
2a 補強版
3 固定部
3a 掛止フック
3b 連結部
3c 着脱部
4a、4b、4c,4d,4e ボルト孔
5a、5b、5c ボルト
6 回転軸部材
7 突片
8 ネジ
9 把持部
9a 下部把持部
9b 上部把持部
10 幼児補助席
11 ハンドルバー
12 ハンドルステム