(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隔壁の材質が、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、アルミナ、コージェライト及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。
前記ハニカム基材の一方の端面における所定の前記セルの開口部及び前記ハニカム基材の他方の端面における残余の前記セルの開口部、に配設された目封止部を備える請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
(1)ハニカム構造体:
図1、
図2に示すように、本発明のハニカム構造体の一実施形態(ハニカム構造体100)は、「「流体の流路となる複数のセル2」を区画形成する多孔質の隔壁1」を有するハニカム基材4を備えるものである。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」の、「隔壁1に形成された細孔の平均細孔径」に対する比の値が0.05〜0.45である。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1が単層構造(一層構造)である。ハニカム基材4には、外周を取り囲むように外周壁3が配設されている。外周壁3の表面が、ハニカム基材4の側面になる。また、ハニカム基材4において、セル2は、一方端面11及び他方の端面12(両端面)に開口している。更に、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム基材4の一方の端面11における所定のセル2の開口部及びハニカム基材4の他方の端面12における残余のセル2の開口部、に配設された目封止部5を備えるものである。
【0024】
このように、本実施形態のハニカム構造体100は、「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」が、「隔壁1に形成された細孔の平均細孔径」に対して、非常に小さくなっている(上記範囲)。そのため、本発明のハニカム構造体は、粒子状物質の捕集性能に優れるとともに、流体を流通させる際の圧力損失が低いものである。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体100において、「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」は、「細孔の開口部」の平均径(短径の平均値)を意味する。ここで、「細孔の開口部」は、細孔の「隔壁1の表面に開口する部分」のことである。「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」を、「表面開口径」と称することがある。「表面開口径」は、以下の方法で得た値である。まず、隔壁表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真をとる。SEM写真の倍率は、500倍とする。そして、50μm×120μmの範囲の隔壁表面における「細孔の開口部」の短径の平均値を「表面開口径」とする。「細孔の開口部」の短径の測定は、例えば、以下の方法で行うことができる。画像解析ソフト「Image−Pro0.5J」(NVS社製)を用いて、撮像データを二値化し、気孔の輪郭を明確にする。そして、得られたデータより「細孔の開口部」の短径を測定する。「細孔の開口部」の短径とは、「細孔の開口部」の直径の中で、最も短いものである。例えば、円形の場合、直径が短径となる。また、楕円形の場合、短軸の長さが短径となる。また、その他の形状の場合、「当該形状の外周上の2点を結ぶ線分の中で、最も短い線分」の長さが、短径となる。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体100は、「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」の、「隔壁1に形成された細孔の平均細孔径」に対する比の値が、0.05〜0.45である。そして、「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」の、「隔壁1に形成された細孔の平均細孔径」に対する比の値の下限値は、0.20であることが好ましい。「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」の、「隔壁1に形成された細孔の平均細孔径」に対する比の値の上限値は、0.30であることが好ましい。0.05より小さいと、圧力損失が大きくなることがある。0.45より大きいと、粒子状物質の捕集性能が低下することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1が単層構造である。そのため、ハニカム構造体100は、流体を流通させる際の圧力損失が低いものである。ここで、「隔壁が単層である」とは、隔壁全体が一つの層からできていることを意味する。例えば、基材に膜が形成された構造は、2層構造であり、単層構造ではない。本実施形態のハニカム構造体100の隔壁1は、このような2層構造にはなっていないため、本実施形態のハニカム構造体を製造する際の、製造工程の複雑化、多工程化を抑止できる。また、隔壁が、「気孔率が異なる複数の層(例えば、セラミック層など)」や「材質が異なる複数の層」が積層された構造である場合は、複数層の構造であり、「隔壁が単層である」には含まれない。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1表面に開口する細孔の
平均開口径が、0.5〜10μmであることが好ましい。隔壁1表面に開口する細孔の
平均開口径の上限値は、5.0μmであることが更に好ましく、2.0μmであることが特に好ましい。隔壁1表面に開口する細孔の
平均開口径が、0.5μmより小さいと、初期圧損が上昇することがある。隔壁1表面に開口する細孔の
平均開口径が、10μmより大きいと、粒子状物質の捕集性能が低下することがある。さらに隔壁1表面に開口する細孔の
平均開口径が、10μmより大きいと、粒子状物質が細孔内へ堆積することがあるため、粒子状物質が堆積した際の圧力損失(煤付き圧損)の上昇を「良好に抑制する」ことができないことがある。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁の平均細孔径が、5.0〜30μmであることが好ましい。隔壁の平均細孔径の上限値は、20.0μmであることが更に好ましい。5.0μmより小さいと、圧力損失が大きくなることがある。30.0μmより大きいと、粒子状物質の捕集性能が低下することがある。
【0030】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の表面開口率が、20〜40%であることが好ましい。捕集層の表面の開口率を上記範囲にすることにより煤付き圧損の上昇をより良好に抑制することができる。捕集層の表面の開口率が40%を超えると、粒子状物質の捕集効率が低下し、煤付き圧損の上昇が大きくなることがある。隔壁の表面開口率は以下の方法で測定した値である。隔壁表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真をとり、50×120μmの範囲の隔壁表面における「細孔の開口部」の割合を表面開口率とする。SEM写真の倍率は、500倍とする。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁の材質が、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、アルミナ、コージェライト及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁の材質が、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、及びコージェライトからなる群から選択される少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。珪素−炭化珪素複合材料は、骨材であるSiC同士が、結合材であるSiを介して結合されている材料である。ここで、主成分とは、全体の50質量%以上含有される成分のことである。また、隔壁は、「アスペクト比5〜70の板状原料を14〜100体積%有するセラミック原料」を含有するセラミック成形原料が、成形され、焼成されて形成されたものであることが好ましい。板状原料の含有率の分母であるセラミック原料は、セラミック成形原料から、結合材、造孔剤、バインダ、水、界面活性剤等を除いた無機原料全体である。つまり、得られるハニカム構造体の多孔質の隔壁を形成する骨材の体積を分母としている。例えば、隔壁の材質を珪素−炭化珪素複合材料とする場合、セラミック成形原料は、例えば、Si(結合材)、SiC(骨材)、造孔剤、バインダ、界面活性剤、及び水となる。この場合、「セラミック原料の14〜100体積%が板状原料である」とは、「SiCの合計体積を100としたときに、そのうちの14〜100のSiCが板状原料である」ということを意味する。また、骨材がアルミナの場合のように、セラミック成形原料が結合材を含有しない場合、骨材同士が焼結されて結合される。この場合には、例えば、セラミック成形原料は、アルミナ、造孔剤、バインダ、界面活性剤、及び水となる。この場合、「セラミック原料の14〜100体積%が板状原料である」とは、「アルミナの合計体積を100としたときに、14〜100のアルミナが板状原料である」ということを意味する。板状原料は、炭化珪素、アルミナ、窒化珪素、マイカ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト及びチタニアからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。隔壁の材質が、炭化珪素又は「珪素−炭化珪素複合材料」を主成分とする場合、炭化珪素が板状原料であってもよいし、アルミナ等の他の成分を板状原料として含有してもよい。隔壁1が板状原料を含有することにより、「隔壁1表面に開口する細孔の平均開口径」を、「隔壁1に形成された細孔の平均細孔径」に対して、より効果的に小さくすることができる。
図5に、本実施形態のハニカム構造体100の隔壁30の「セルの延びる方向に直交する断面」を拡大した模式図を示す。
図5に示されるように、板状原料34が隔壁30に含有されることにより、表面31に形成された開口部33が、板状原料34によって、狭められたようになる。これにより、「隔壁表面に開口する細孔の平均開口径」が、「隔壁に形成された細孔の平均細孔径」に対して、より効果的に小さくなっている。一方、
図6に、従来のハニカム構造体の一例として、粒状原料によって隔壁が形成されたハニカム構造体200を示す。
図6は、従来のハニカム構造体200の隔壁30の「セルの延びる方向に直交する断面」を拡大して示す模式図である。
図6に示されるように、粒状原料35によって隔壁30が形成されたハニカム構造体200は、表面31に形成された開口部33が、隔壁30に形成された細孔32と同程度の大きさになっている。
【0032】
隔壁1は、気孔率が40〜80%であることが好ましい。気孔率の下限値は、52であることが更に好ましい。気孔率の上限値は、70%であることが更に好ましい。気孔率が40%より小さいと、初期圧損が高くなることがある。また、気孔率が80%より大きいと、ハニカム構造体の強度が低くなることがある。本明細書において、気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm
3/g)とアルキメデス法により測定した見掛け密度(単位:g/cm
3)から、算出した値である。気孔率を算出する際には、「気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積}×100」という式を用いる。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム基材4の形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形等」の多角形の筒形状、等が好ましい。
図1、
図2に示すハニカム構造体100においては、円筒形状である。また、
図1、
図2に示すハニカム構造体100は、外周壁3を有しているが、外周壁3を有さなくてもよい。外周壁3は、ハニカム構造体を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁とともに形成されることが好ましい。また、外周壁3は、セラミック材料をハニカム構造に形成された隔壁の外周(例えば、円筒形の側面に相当する部分)に塗工して形成したものであってもよい。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム基材4のセル形状(ハニカム構造体の中心軸方向(セルが延びる方向)に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はない。ハニカム基材4のセル形状としては、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。四角形のなかでも、正方形又は長方形が好ましい。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム基材4のセル密度は、特に制限はないが、16〜96セル/cm
2であることが好ましい。そして、ハニカム基材4のセル密度の下限値は、30セル/cm
2であることが更に好ましい。また、ハニカム基材4のセル密度の上限値は、64セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度が、16セル/cm
2より小さいと、粒子状物質を捕集する隔壁の面積が小さくなり、排ガスを流通させたときに、短時間で圧力損失が大きくなることがある。セル密度が、96セル/cm
2より大きいと、セルの断面積(セルの延びる方向に直交する断面の面積)が小さくなるため、圧力損失が大きくなることがある。
【0036】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム基材4の一方の端面11における所定のセル2の開口部及びハニカム基材4の他方の端面12における残余のセル2の開口部、に配設された目封止部5を備えるものであることが好ましい。これにより、排ガス中の粒子状物質を隔壁によって捕集し易くなる。上記一方の端面11における開口部に目封止部5が形成されたセル2と、上記他方の端面12における開口部に目封止部5が形成されたセル2とは、交互に配置されていることが好ましい。この場合、ハニカム基材4のそれぞれの端面に、セル2の開口部と目封止部5とによって市松模様が形成された状態となる。これにより、排ガス中の粒子状物質を隔壁によって、より捕集し易くなる。
【0037】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態は、成形工程と焼成工程とを有する。成形工程は、アスペクト比が5〜70の板状原料を14〜100体積%有するセラミック原料を含有するセラミック成形原料を押出成形して、ハニカム成形体を形成する工程である。
図3、
図4に示されるように、ハニカム成形体20は、流体の流路となる複数のセル22を区画形成する未焼成隔壁21を備えるものである。
図3、
図4に示されるハニカム成形体20には、外周壁(未焼成の外周壁)23が配設されている。焼成工程は、ハニカム成形体20を焼成してハニカム構造体を作製する工程である。
図3は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態の成形工程において作製されるハニカム成形体20を模式的に示す斜視図である。
図4は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態の成形工程において作製されるハニカム成形体20の、セル22の延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、アスペクト比が5〜70の板状原料を14〜100体積%有するセラミック原料を含有するセラミック成形原料を押出成形して、ハニカム成形体を形成するため、本発明のハニカム構造体を製造することができる。すなわち、押出成形によって、「板状原料が、押し出し方向に配向し、隔壁の表面に開口する細孔の開口部を狭めるように配置される」ため、開口部の直径が小さくなり、「表面開口径」が小さくなる。更に具体的には、板状原料が押し出し方向に配向すると、板状原料が、隔壁表面付近で、「板状原料の表面が、隔壁の表面と略平行になる」ように配置される。そのため、板状原料によって、細孔の開口部の外周付近が一部塞がれたようになる。これによって細孔の開口部の直径が小さくなる。これにより、「表面開口径」の「細孔の平均細孔径」に対する比の値が、小さい値(0.05〜0.45)になる。
【0039】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、工程毎に説明する。
【0040】
(2−1)成形工程;
まず、成形工程において、「「アスペクト比が5〜70の板状原料」を14〜100体積%有するセラミック原料」を含有するセラミック成形原料を押出成形して、ハニカム成形体を形成する。
【0041】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、セラミック成形原料に含有されるセラミック原料が、「アスペクト比が5〜70の板状原料」を14〜100体積%有するものである。そして、セラミック原料は、「アスペクト比が5〜70の板状原料」を20〜50体積%有するものであることが更に好ましい。ここで、「セラミック原料が、「アスペクト比が5〜70の板状原料」を100体積%有する」とは、セラミック原料の全てが、「アスペクト比が5〜70の板状原料」であることを意味する。板状原料のアスペクト比は、レーザー回折法にて測定したメジアン径を、SEM画像から計測した粒子の短径(厚さ)で、割った値である。
【0042】
セラミック原料に含有される「アスペクト比が5〜70の板状原料」が、14体積%未満であると、得られるハニカム構造体の「表面開口径」を小さくする効果が低下するために好ましくない。
【0043】
セラミック原料に含まれる板状原料は、アスペクト比が5〜70であることが好ましい。アスペクト比が5未満であると、得られるハニカム構造体の「表面開口径」を小さくし、表面開口径の平均細孔径に対する比を所望の範囲へ制御する効果が低下するために好ましくない。アスペクト比が70を超えると、成形時に口金の目詰まりの原因となり成形不良を起こすことがあるため好ましくない。
【0044】
板状原料は、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、マイカ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム及びベーマイトからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。板状原料の平均粒子径(長径)の下限値は、10μmが好ましく、15μmが更に好ましい。板状原料の平均粒子径(長径)の上限値は、50μmが好ましく、35μmが更に好ましい。板状原料の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0045】
セラミック原料は、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、及びコージェライト化原料、窒化珪素、ムライト、アルミナからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。そして、セラミック原料は、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、及びコージェライト化原料からなる群から選択される少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の50質量%以上含有される成分のことである。また、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。セラミック原料の平均粒子径の下限値は、5μmが好ましく、10μmが更に好ましい。セラミック原料の平均粒子径の上限値は、100μmが好ましく、40μmが更に好ましい。セラミック原料の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0046】
セラミック原料が、炭化珪素又は「珪素−炭化珪素複合材料」を主成分とする場合、炭化珪素が板状原料であってもよいし、アルミナ等の他の成分を板状原料として含有してもよい。また、セラミック原料が、コージェライト化原料を主成分とする場合、コージェライト化原料の一部が板状原料であってもよいし、他の成分を板状原料として含有しても良い。
【0047】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法において、セラミック成形原料は、上記セラミック原料に、造孔材、バインダ、界面活性剤、水等を混合して調製することが好ましい。
【0048】
造孔材としては、でんぷん、カーボン、発泡樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、吸水性樹脂、又はこれらを組み合わせたものを使用することが好ましい。また、造孔材の平均粒子径は、10〜60μmとすることが好ましい。また、造孔材の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、5〜75質量部が好ましい。尚、造孔材が吸水性樹脂の場合、平均粒子径は、吸水後の値である。
【0049】
板状原料の長径の、造孔材のメジアン径に対する比の値が0.07以上であることが好ましい。造孔材のメジアン径は、レーザー回折法で測定した値である。板状原料の長径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0050】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、2〜10質量部が好ましい。
【0051】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、界面活性剤の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、2質量部以下が好ましい。
【0052】
水の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、20〜80質量部が好ましい。
【0053】
セラミック成形原料を成形する際には、まずセラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土を、押出成形により、ハニカム形状に成形することが好ましい。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する方法としては、特に制限はない。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて坏土を押出成形してハニカム成形体を形成することが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難いステンレス鋼、超硬合金、「ステンレス鋼と超硬合金とを組み合わせたもの」等が好ましい。
【0054】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状(
図3を参照)、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の筒形状、等が好ましい。
【0055】
また、上記押出成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0056】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、ハニカム成形体の未焼成隔壁は、単層構造である。つまり、未焼成隔壁には、「粒子状物質を捕集するための付加的な層」が形成されることはなく、未焼成隔壁が、「粒子状物質を捕集するための付加的な層」を含めた2層以上の層構造を持つことはない。「粒子状物質を捕集するための付加的な層」とは、「押出成形で得られた未焼成隔壁が、焼成されて形成された隔壁」(押出成形で得られた隔壁部分)よりも、細孔径の小さい層や、「押出成形で得られた隔壁部分」とは材質が異なる層等を意味する。
【0057】
(2−2)目封止工程;
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、成形工程の後に、目封止工程を有することが好ましい。目封止工程によって、ハニカム基材の一方の端面における「所定のセルの開口部」及びハニカム基材の他方の端面における「残余のセルの開口部」に、目封止材料を充填し、目封止材料を乾燥させて「焼成前目封止部」を形成する。
【0058】
ハニカム成形体に目封止材料を充填する際には、まず、一方の端面側に目封止材料を充填する。一方の端面側に目封止材料を充填する方法としては、マスキング工程と、圧入工程とを有する方法が好ましい。マスキング工程は、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカム成形体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する工程である。目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0059】
目封止材料は、上記セラミック成形原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。目封止材料に含有されるセラミック原料としては、隔壁の原料として用いるセラミック原料と同じ種類の原料(但し、板状である必要はない。)であることが好ましい。
【0060】
ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させる際の条件としては、特に限定されず、公知の条件とすることができる。
【0061】
次に、他方の端面側に目封止材料を充填する。他方の端面側に目封止材料を充填する方法としては、上記一方の端面側に目封止材料を充填する方法と同様の方法で、「一方の端面側に目封止材料が充填されなかったセル」の開口部に目封止材料を充填することが好ましい。
【0062】
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させることが好ましい。
【0063】
尚、目封止材料の乾燥は、「ハニカム基材の一方の端面側と、他方の端面側との両方」に目封止材料を充填した後に、ハニカム基材の両端面に充填された目封止材料に対して同時に行ってもよい。また、ハニカム基材の両端面に同時に目封止材料を充填してもよい。
【0064】
また、一方の端面における開口部に目封止材料(焼成前目封止部)が充填されたセルと、他方の端面における開口部に目封止材料(焼成前目封止部)が充填されたセルとが、交互に配置されていることが好ましい。この場合、ハニカム基材の両端面に、セルの開口部と目封止材料(焼成前目封止部)とによって市松模様が形成された状態となる。
【0065】
(2−3)焼成工程;
次に、ハニカム成形体(好ましくは、焼成前目封止部が配設されたハニカム成形体)を焼成してハニカム構造体を作製する(焼成工程)。
【0066】
ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前に、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法は、特に限定されるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(バインダ(有機バインダ)、界面活性剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0067】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼したハニカム成形体を構成する原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、ハニカム成形体を構成する原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。また、珪素−炭化珪素複合材料を使用している場合には、焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明のハニカム構造体及びその製造方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
セラミック原料として、炭化珪素、金属珪素及び板状アルミナを用いた。炭化珪素と金属珪素とを80:20の比(質量比)で混合し、更に、板状アルミナ、造孔剤及びバインダを混合して、原料混合物を作製した。板状アルミナの含有量は、原料混合物全体に対して45質量%とした。また、セラミック原料中の板状原料の含有率は、44体積%であった。表1における粒状原料は、炭化珪素及び金属珪素である。造孔材としては、吸水性樹脂及びデンプンを用いた。吸水性樹脂の含有量は、原料混合物全体に対して6.0質量%とした。デンプンの含有量は、原料混合物全体に対して6.0質量%とした。バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。ドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、原料混合物全体に対して7.0質量%とした。造孔材のメジアン径は46μmであった。板状アルミナの長径は、15μmであった。板状アルミナのアスペクト比(長径/短径)は、50であった。板状アルミナの長径の、造孔材のメジアン径に対する比の値(板状アルミナ/造孔材)は3.1であった。造孔材のメジアン径、板状アルミナの長径、及び板状アルミナのアスペクト比は、後述する方法で測定した値である。
【0070】
原料混合物に、炭化珪素、金属珪素及び板状アルミナの合計含有量を100質量部としたときに、70質量部の水を添加して、セラミック成形原料を作製した。
【0071】
得られたセラミック成形原料を、ニーダーで45分間混練して可塑性の坏土を作製した。得られた坏土を、真空土練機でシリンダー状に成形した。そして、シリンダー状の坏土を押出成形機に投入して、ハニカム状に成形して成形体を得た。次いで、得られた成形体を、マイクロ波乾燥した後、熱風乾燥(80℃×12時間)で乾燥させ、その後、所定の寸法となるように両端部を切断した。得られたハニカム成形体を、大気中450℃で脱脂し、その後、不活性雰囲気1450℃にて焼成し、ハニカム構造体を得た。
【0072】
得られたハニカム構造体の隔壁の気孔率(開気孔率)は、68.9%であった。また、隔壁の平均細孔径は、10.2μmであった。また、「隔壁表面に開口する細孔の平均開口径」は2.3μmであった。また、「隔壁表面に開口する細孔の平均開口径」の、「隔壁の平均細孔径」に対する比の値(表面開口径の、平均細孔径に対する比の値)は、0.23であった。「隔壁の平均細孔径」、「隔壁の気孔率」及び「隔壁表面に開口する細孔の平均開口径」(表面開口径)は、後述する方法で測定した値である。また、得られたハニカム構造体の隔壁は、単層構造であった。
【0073】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「捕集効率」、「初期圧損」及び「煤付き圧損」の測定を行った。結果を表1に示す。「捕集効率」の欄において、「○」は、捕集効率が90%以上であることを示す。「捕集効率」の欄において、「△」は、捕集効率が80%以上、90%未満であることを示す。「捕集効率」の欄において、「×」は、捕集効率が80%未満であることを示す。「初期圧損」の欄において、「○」は、初期圧損が3.5kPa以下であることを示す。「初期圧損」の欄において、「△」は、初期圧損が3.5kPa超、4.0kPa以下であることを示す。「煤付き圧損」の欄において、「○」は、煤付き圧損が3.0kPa以下であることを示す。「煤付き圧損」の欄において、「△」は、煤付き圧損が3.0kPa超、3.5kPa以下であることを示す。「煤付き圧損」の欄において、「×」は煤付き圧損が3.5kPaより大きいことを示す。また、「総合評価」の欄における「A」は、「捕集効率」、「初期圧損」及び「煤付き圧損」の評価結果すべてにおいて、「○」であることを示す。「A」が最も良好な結果である。「総合評価」の欄における「B」は、「捕集効率」、「初期圧損」及び「煤付き圧損」の評価結果において、「○」が二つ、「△」が一つであることを示す。「B」は、「A」の次に良好な結果である。「総合評価」の欄における「C」は、「捕集効率」、「初期圧損」及び「煤付き圧損」の評価結果において、「○」が一つ、「△」が二つ有ることを示す。「C」は、「B」の次に良好な結果である。「総合評価」の欄における「D」は「×」を少なくとも一つ含むことを示す。「D」は評価結果が悪い結果であったことを示す。
【0074】
(造孔材のメジアン径)
レーザー回折法にて測定する。
【0075】
(板状原料の長径)
レーザー回折法にて測定する。
【0076】
(板状原料のアスペクト比)
板状原料のSEM写真を撮る。SEM写真から板状原料の短径を読み取り、上記のレーザー回折法で測定したメジアン径を長径(板状原料の長径)として、両者からアスペクト比(長径/短径)を算出した。SEM画像の倍率は1000倍とする。
【0077】
(表面開口径)
隔壁表面に平行な断面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真をとる。まず、隔壁表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真をとる。SEM写真の倍率は、500倍とする。そして、50μm×120μmの範囲の隔壁表面における「細孔の開口部」の短径の平均値を「表面開口径」とする。「細孔の開口部」の短径の測定は、例えば、以下の方法で行うことができる。画像解析ソフト「Image−Pro0.5J」(NVS社製)を用いて、撮像データを二値化し、気孔の輪郭を明確にする。そして、得られたデータより「細孔の開口部」の短径を測定する。「細孔の開口部」の短径とは、「細孔の開口部」の直径の中で、最も短いものである。例えば、円形の場合、直径が短径となる。また、楕円形の場合、短軸の長さが短径となる。また、その他の形状の場合、「当該形状の外周上の2点を結ぶ線分の中で、最も短い線分」の長さが、短径となる。
【0078】
(隔壁の平均細孔径)
島津製作所社製の水銀ポロシメータ(商品名:オートポアIV9520)を用いて、水銀圧入法により、隔壁の平均細孔径(μm)を測定する。
【0079】
(隔壁の気孔率)
島津製作所社製の水銀ポロシメータ(商品名:オートポアIV9520)を用いて、水銀圧入法により、隔壁の気孔率(開気孔率)(μm)を測定する。
【0080】
(隔壁の表面開口率)
まず、隔壁表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真をとる。SEM写真の倍率は、500倍とする。そして、50×120μmの範囲の隔壁表面における「細孔の開口部」の割合を表面開口率とする。「細孔の開口部」の割合の測定は、例えば、以下の方法で行うことができる。画像解析ソフト「Image−Pro0.5J」(NVS社製)を用いて、撮像データを二値化し、気孔の輪郭を明確にする。そして、得られたデータより、隔壁表面の面積に対する「細孔の開口部」の面積の比率を測定する。
【0081】
(捕集効率)
ハニカム構造体から、1枚の隔壁を10mm×10mm以上、50mm×50mm以下の評価領域が確保できるように切り出し評価用試料を得る。得られた試料を、「PM捕集効率測定装置」にて測定する。「PM捕集効率測定装置」は、評価試料が装着される本体を備え、本体の上流側にPM発生装置を配設し、このPM発生装置で発生させたPMを、本体に供給するように構成されたものである。評価試料は、本体の内部を上流側と下流側に仕切る(区画する)ように装着される。
【0082】
(初期圧損)
ハニカム構造体から、1枚の隔壁を10mm×10mm以上、50mm×50mm以下の評価領域が確保できるように切り出し評価用試料を得る。得られた評価用試料を、「PM捕集効率測定装置」に装着する。「PM捕集効率測定装置」は、上述の(捕集効率)の測定に用いたものとする。上述の「PM捕集効率測定装置」の本体には、評価試料の上流側及び下流側に計測孔が穿設されている。この計測孔により、評価試料の上流側と下流側の圧力をそれぞれ計測することができる。初期圧損(kPa)を測定する際には、PMを発生させない状態で、空気を本体に供給する。具体的には、PMを含有しない空気を、本体に供給し、評価試料を通過させる。このとき、PMを含有しない空気が評価試料を透過するときの流速(透過流速)は、30cm/秒以上、2m/秒以下の任意の点に調整する。そして、上流側の計測孔で測定した圧力と、下流側の計測孔で測定した圧力との差を、初期圧損(kPa)とする。
【0083】
(煤付き圧損)
上記「初期圧損」の測定方法と同様にして、「PM捕集効率測定装置」に評価試料を装着する。そして、評価試料に、PMを含有する空気を透過させる。そして、評価試料の1平方センチメートル当たりに、PMが0.03mg堆積した時点での、上流側の計測孔で測定した圧力と、下流側の計測孔で測定した圧力との差の値から初期圧損を差分した値を、PM堆積圧損上昇(kPa)とする。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例2〜
7、参考例、比較例1〜6)
製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
表1より、「表面開口径の、平均細孔径に対する比の値」が、0.26以下であると、総合判断が「A」又は「B」で、0.26超、0.42以下であると総合判断が「C」で合格であることがわかる。「表面開口径の、平均細孔径に対する比の値」が、0.58以上であると、捕集効率、煤付き圧損が悪く、総合判断が「D」で不合格であることがわかる。