(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A1)及び(A2)の合計100質量部に対して、粘度平均分子量(Mv)が40,000〜200,000のポリカーボネート樹脂(A1)を1〜50質量部および粘度平均分子量(Mv)が7,000〜35,000のポリカーボネート樹脂(A2)を99〜50質量部含有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムおよび/またはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムを0.01質量部以上0.1質量部未満含有し、厚みが5mm以上の厚肉部を有する厚肉成形品用ポリカーボネート樹脂組成物。
トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムおよびペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムの再結晶化最高ピーク温度が150℃以下である請求項1または2に記載の厚肉成形品用ポリカーボネート樹脂組成物。
50×50×12mmのフィルムゲート試験片を用い、成形温度280℃、金型温度80℃、射出速度25mm/sec、射出圧力50MPa、保圧70MPa、1次充填時間3秒、射出保圧時間15秒、冷却時間20秒、スクリュー回転数100rpm、背圧10MPaの条件で射出成形した12mm厚の多目的試験片を、140℃で500時間保持した際のヘイズ変化が1%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の厚肉成形品用ポリカーボネート樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
[1.概要]
本発明は、(A1)及び(A2)の合計100質量部に対して、粘度平均分子量(Mv)が40,000〜200,000のポリカーボネート樹脂(A1)を1〜50質量部および粘度平均分子量(Mv)が7,000〜35,000のポリカーボネート樹脂(A2)を99〜50質量部含有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムおよび/またはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムを0.01質量部以上0.1質量部未満含有し、厚みが5mm以上の厚肉部を有する厚肉成形品用ポリカーボネート樹脂組成物である。
以下、本発明の厚肉成形品用ポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分、成形体およびその成形方法等につき、詳細に説明する。
【0013】
[2.ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂組成物に使用するポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量(Mv)が40,000〜200,000のポリカーボネート樹脂(A1)および粘度平均分子量(Mv)が7,000〜35,000のポリカーボネート樹脂(A2)を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)は、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0014】
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を併用すると、難燃性の高いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂(A1)、(A2)の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0016】
ポリカーボネート樹脂(A1)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、40,000〜200,000の、ポリカーボネート樹脂(A2)より高い粘度平均分子量を有する。一方、ポリカーボネート樹脂(A2)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、7,000〜35,000の、ポリカーボネート樹脂(A1)より低い粘度平均分子量を有する。
ポリカーボネート樹脂(A1)と(A2)の粘度平均分子量を、それぞれ上記範囲とし、且つトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムまたはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムを所定の含有量とすることにより、厚肉成形品の厚肉部の除冷時の白濁の問題を解消し、且つ難燃性に優れ、さらに優れた耐熱変色性を発現することが可能となる。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A1)の分子量は、好ましくは45,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは55,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは170,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下、特に好ましくは90,000以下である。
また、ポリカーボネート樹脂(A2)の分子量は、好ましくは9,000以上、より好ましくは11,000以上、さらに好ましくは13,000以上、特に好ましくは15,000以上であり、好ましくは34,000以下、より好ましくは33,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特に好ましくは29,000以下である。
【0018】
ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融重合法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融重合法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂を使用するのも好ましい。
【0019】
ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)が直鎖状ポリカーボネート樹脂を含む場合、ポリカーボネート樹脂に占める直鎖状ポリカーボネート樹脂の割合は、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、また、通常0質量%より多く、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。ポリカーボネート樹脂中の直鎖状ポリカーボネート樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、難燃性、成形性に優れるポリカーボネート樹脂が得られやすいという利点が得られる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0021】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0022】
さらにポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0023】
[3.トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B1)、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(B2)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B1)および/またはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(B2)を含有する。
難燃剤としての有機スルホン酸金属塩としては、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩等の脂肪族スルホン酸金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩等の芳香族スルホン酸金属塩等があり、また、有機スルホン酸金属塩の金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属等、数々あるが、本発明においては、トリフルオロメタンスルホン酸のナトリウム塩(B1)またはペンタフルオロエタンスルホン酸のナトリウム塩(B2)を使用する。
トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムおよびペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムが、UL94に準拠した垂直燃焼試験でV−0を満たしながら、かつ厚肉成形においても2%以下の極めて低いヘイズ値を達成すること、これら以外の有機スルホン酸金属塩では、これらは達成できないことが判明した。
【0024】
トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B1)および/またはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(B2)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、0.01質量部以上0.1質量部未満であることが必要である。両者を併用する場合はその合計量である。
トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B1)および/またはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(B2)の含有量は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.03質量部以上であり、好ましくは0.095質量部以下、より好ましくは0.090質量部以下、さらに好ましくは0.085質量部以下である。
0.01質量部を下回ると、成形品の難燃性が悪化し、V−2レベルまで低下する。0.01質量部以上になると、成形品の難燃性が却って悪化したり、ヘイズが悪化する。
【0025】
トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B1)およびペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(B2)の再結晶化最高ピーク温度はポリカーボネート樹脂のガラス転移温度に近い温度が好ましく、具体的には150℃以下であることが好ましい。再結晶化最高ピーク温度が150℃以下であると、成形加工時ポリカーボネート樹脂組成物中で白濁しにくくなるので好ましい。
【0026】
なお、再結晶化最高ピーク温度の測定は、JIS K7121記載のDSC(示差走査熱量計)法に準拠して行う。具体的には、実施例に記載の方法で測定する。再結晶化温度のピークが複数またはそれ以上ある場合には、最も高温側にあるピークの温度をいう。
再結晶化最高ピーク温度は、用いる難燃剤の結晶性などに依存し、150℃以下のものは種々のトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムおよびペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムの中から選択して採用することができる。
【0027】
[4.その他の添加剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムまたはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム以外の他の難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0028】
・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
【0029】
なかでも、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機ホスファイトが好ましい。
【0030】
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0031】
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0032】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0033】
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0034】
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0035】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0036】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0037】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0038】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルは、フルエステルであることが好ましい。
【0039】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0040】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0041】
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらのうち、有機紫外線吸収剤が好ましく、中でもベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0042】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0043】
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバスペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0044】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、その上限は好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0045】
・滴下防止剤
滴下防止剤としては、フッ素系樹脂を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部含有することが好ましい。このようにフッ素系樹脂を含有することで、樹脂組成物の溶融特性を改良することができ、具体的には燃焼時の滴下防止性を向上させることができる。
【0046】
フッ素系樹脂の含有量は、0.01質量部より少ないと、フッ素系樹脂による難燃性向上効果が不十分になりやすく、1質量部を超えると、成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。含有量の下限は、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であり、また、含有量の上限は、より好ましくは0.75質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
【0047】
フッ素系樹脂としては、なかでもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、このフッ素系樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。このように、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
【0048】
フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、ダイキン化学工業社製「ポリフロン(登録商標)F201L」、「ポリフロン(登録商標)F103」、「ポリフロン(登録商標)FA500」などが挙げられる。さらに、フルオロオレフィン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン化学工業社製「フルオン(登録商標)D−1」等が挙げられる。
【0049】
さらに、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法等が挙げられる。
【0050】
フルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではなく、このような有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0051】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;
グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。なお、これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
なかでもフルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
【0053】
また、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率は、通常30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率を、上述の範囲とすることで、難燃性と成形品外観のバランスに優れる傾向にあるため好ましい。
【0054】
このような有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂としては、具体的には、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標)A−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス(登録商標)449」、PIC社製「Poly TS AD001」等が挙げられる。
なお、フッ素系樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0055】
[5.ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B1)および/またはペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(B2)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0056】
[6.成形品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、厚みが5mm以上の厚肉部を有する厚肉成形品として好適に成形される。
本発明において成形品の厚みとは、その板状部においてはその厚さ(mm)を意味し、棒状、球状、凸状のものはその径または高さ(mm)を意味する。本発明において、厚肉成形品とは、5mm以上、好ましくは10mm以上の厚さの厚肉部分を少なくともその一部にでも有していればよく、その他は5mmに満たない薄肉部分であってもよい。
本発明の樹脂組成物を成形した成形品は、その成形時の冷却過程において、厚肉部で生じる白濁の問題を解決し、難燃性に優れ、さらに耐熱変色性に優れる。
【0057】
成形品のヘイズとしては、実施例で具体的に規定されるように、厚さ12mmとした際の徐冷品として測定して、5%以下であることが好ましく、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特には2%以下であることが好ましい。
また、得られる厚肉成形品は熱処理前後での透明性の変化が少なく、具体的には50×50×12mmのフィルムゲート試験片を用い、成形温度280℃、金型温度80℃、射出速度25mm/sec、射出圧力50MPa、保圧70MPa、1次充填時間3秒、射出保圧時間15秒、冷却時間20秒、スクリュー回転数100rpm、背圧10MPaの条件で射出成形した12mm厚の多目的試験片を、140℃で500時間保持した際のヘイズ変化が、1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.95%以下であることが好ましい。
【0058】
成形品は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
厚みが5mm以上の厚肉部分を有する厚肉成形品を製造するために適用される成形方法は、好ましくは、射出成形法、押出成形法、中空成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法などの成形法が挙げられる。中でも、射出成形法が特に好ましい。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形した厚肉成形品は種々の分野で好適に使用できる。例えば、白熱電球、蛍光ランプの他、冷陰極管、LED、有機EL等の光源を直接または間接に利用する機器・器具の部品に好適に使用できる。具体的な例示として、LED用レンズ、携帯電話、携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器部品、信号機器部品、自動車のヘッドランプ、テールランプ、家電機器・OA機器の表示部用部品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0061】
(実施例1〜9、比較例1〜8)
ポリカーボネート樹脂として、下記のポリカーボネート樹脂(A1−1)〜(A1−2)および(A2−1)〜(A2−3)を使用した。
(A1−1):
国際公開WO2011/132510の実施例1(PC−1の合成)に準拠した界面重合法により得られた直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量67,000
(A1−2):
国際公開WO2011/132510の実施例1(PC−1の合成)に準拠した界面重合法により得られた直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量75,000
(A2−1):
溶融重合法により得られた分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス製「ノバレックス(登録商標)M7027BF」
粘度平均分子量27,000
(A2−2):
界面重合法により得られた直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス製「ユーピロン(登録商標)H−4000」
粘度平均分子量17,000
(A2−3):
界面重合法により得られた直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス製「ユーピロン(登録商標)E−2000」
粘度平均分子量27,000
【0062】
[難燃剤(B1)及び(B2)]
(B1):トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム
三菱マテリアル電子化成社製、商品名「エフトップEF−13」
再結晶化ピーク温度123、163、207℃(最高ピーク温度207℃)
(B2):ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム
三菱マテリアル電子化成社製、商品名「エフトップEF−23」
再結晶化ピーク温度146℃
なお、再結晶化温度は、セイコーインスツルメント(株)製の示差走査熱量計「DSC220U型」を使用し、30℃/分の速度で50℃から300℃に昇温し、3分保持後、10℃/分の速度で50℃に降温し、3分保持後、10℃/分の速度で300℃に昇温、3分保持後、30℃/分の速度で50℃に昇降温して測定したDSC曲線から、求めた。
【0063】
[その他難燃剤]
上記以外の他の難燃剤として、以下のものを使用した。
(B3):ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム
DIC社製、商品名「メガファックF114」
再結晶化ピーク温度121、252、271℃(最高ピーク温度271℃)
(B4):ヘプタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム
三菱マテリアル電子化成社製、商品名「エフトップEF−33」
再結晶化ピーク温度122、193℃(最高ピーク温度193℃)
(B5):ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム
三菱マテリアル電子化成社製、商品名「エフトップEF−43」
再結晶化ピーク温度109、132、218℃(最高ピーク温度218℃)
また、他の難燃剤として以下のポリシランを使用した。
(E1)デカフェニルシクロペンタシラン
大阪ガスケミカル社製、商品名「オグソールSI−30」
【0064】
[離型剤(C)]
離型剤(C)として、以下のものを使用した。
(C1)ペンタエリスリトールテトラステアレート
コグニスジャパン社製商品名「ロキシオールVPG861」
(C2)ステアリル酸ステアリル
日油社製商品名「ユニスターM9676」
[安定剤(D)]
安定剤(D)として、以下のものを使用した。
(D1)リン系安定剤 トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
ADEKA社製、商品名「アデカスタブ2112」
(D2)フェノール系酸化防止剤 ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
ADEKA社製、商品名「アデカスタブAO−50」
【0065】
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記した各成分を、表1及び表2に記した割合(全て質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0066】
[流動性評価:Q値]
前記により得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JIS K7210
付属書Cに記載の方法にて高化式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgf/cm
2の条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10
−2cm
3/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
【0067】
[難燃性評価(UL)]
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物について、日本製鋼所社製射出成形機J50を用い、設定温度280℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚1.5mm、2mmおよび3mmの成形品を試験片として得た。得られた試験片について、UL94Vに準拠した垂直燃焼試験を行い、燃焼性結果は良好な順からV−0、V−1、V−2とし、規格外のものをNGと分類した。
【0068】
[ヘイズ(Haze、%)]
日本製鋼所社製射出成形機J50を用い、成形温度280℃、金型温度80℃、射出速度25mm/sec、射出圧力=50MPa、保圧=70MPa、1次充填時間=3秒、射出保圧時間=15秒、冷却時間=20秒、スクリュー回転数100rpm、背圧=10MPaの低速低圧の条件で、長さ50mm、幅50mm、肉厚3mm、5mm及び12mmの成形品を試験片として得た。
測定は、成形機から取り出し後、室温放置により徐冷した肉厚3mm、5mmおよび12mmの成形品について、JIS K7136に準拠し、日本電色工業社製のNDH−2000型ヘイズメーターで、ヘイズを測定した。
【0069】
[ヘイズ変化(%)]
上記肉厚12mmの成形品を、140℃で500時間保持し、日本電色工業社製SE2000型分公式色彩計で、処理前後のヘイズ変化(ΔHaze:%)を測定した。
[YI値変化]
また、上記肉厚3mmの成形品を、140℃で500時間保持し、日本電色工業社製SE2000型分公式色彩計で、透過法により、YI(イエローインデックス)値を、処理前と処理後を測定した。ΔYIが小さい方が、耐熱試験による変色が小さい、つまり耐熱変色性に優れることを示し、好ましい。
以上の評価結果を表1および表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
実施例1〜9から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、厚肉部の白濁がなく、かつ難燃性に優れ、さらに耐熱変色性に優れることがわかる。
一方、(A2)で規定の粘度平均分子量の範囲の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂のみを用いた比較例1、および難燃剤としてポリシランを用いた比較例6では難燃性に劣り(3mm厚でV−2)、A2の粘度平均分子量の分岐状と直鎖状の芳香族ポリカーボネート混合物を用いた比較例2では熱処理後の色相(耐熱変色性)が劣ることがわかる。
【0073】
また、本発明のトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウムとは異なる金属塩系難燃剤を用いた比較例3〜5、7では12mm厚でのHazeが高く(比較例7では5mm厚でもHazeが高く)、厚肉部の透明性に劣ることがわかる。
さらに、本発明の難燃剤の添加量が多すぎる比較例8でも、12mm厚でのHazeが高く、厚肉部の透明性が劣ることがわかる。