(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シールド電線の複数のシールド線端末に圧着した端子が挿入される複数の端子収容室を有するインナーハウジングと、前記インナーハウジングを覆うシールド部と前記シールド電線のシース部を圧着固定するバレル部とを有するシールドシェルと、を備えたシールドコネクタであって、
前記端子収容室が、一側方と前後方向が開放された空間を有し、
前記空間を区画形成する隔壁が、前記一側方から前記空間に挿入された前記端子の前後方向の移動を規制する係止部と、前記一側方から挿入された前記端子の離脱を阻止する仮係止部と、
を備えることを特徴とするシールドコネクタ。
【背景技術】
【0002】
複数本の素線を撚り合わせてなる導体を絶縁被覆層で覆った信号線を複数本有する多芯線型シールドケーブルに接続してなるシールドコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種のケーブル側のシールドコネクタ501を
図10に示す。
シールドケーブル(シールド電線)510は、複数の素線を撚り合わせてなる導体511aの周囲を絶縁被覆層511bで覆った信号線511と、複数本の銅素線を撚り合わせてなるドレイン線512とを金属箔503で覆い、さらに金属箔503の外周を絶縁外被(シース部)514で被覆してなる。
【0003】
シールドコネクタ501は、シールドケーブル510の端末部の信号線511とドレイン線512とを露出させ、これらの端末部を端子520,520,520にそれぞれ接続し、この端子520,520,520を誘電体(インナーハウジング)530の端子収容部531,531,531に収容し、さらに、この誘電体530の外周にドレイン線512に接続した中央に位置する端子520と電気的に導通接続させる金属製の外導体シェル540を装着してなるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、USB2.0(高速伝送用差動コネクク)などのシールド電線は、
図11に示すように、伝送性能、耐ノイズ性能を満足させるため、特殊なシールド電線603が用いられる。このシールド電線603は単体で性能を満足させる構造となっているため、端子605とのつなぎ部625ではシールド電線603の絶縁外被615やシールド箔627からなる皮629を剥ぐ必要がある。そのため、皮629を剥いでいる部分は、インピーダンス不整合を引き起こし、伝送性能が悪くなるため、皮629を剥ぐ長さは短ければ短いほどよい。
【0006】
しかしながら、シールド電線603の皮629を剥ぐ長さを短くしていると、シールド電線603に端子605を圧着した状態の端子装着シールド電線607をインナーハウジング609に挿入する際、端子605の向きを合わせ、全て(USB2.0の場合は4本)の端子装着シールド電線607を同時に挿入したり、半挿入の状態を意図的に作り、一度揃えたりするなどの作業が必要になってしまう。これらの同時挿入作業や、半挿入状態の揃え作業は、インナーハウジング609への端子605の組付作業性を低下させた。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、シールド電線の皮を剥ぐ長さが短い場合でも端子の挿入作業が容易になるシールドコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) シールド電線の複数のシールド線端末に圧着した端子が挿入される複数の端子収容室を有するインナーハウジングと、前記インナーハウジングを覆うシールド部と前記シールド電線のシース部を圧着固定するバレル部とを有するシールドシェルと、を備えたシールドコネクタであって、前記端子収容室が、一側方と前後方向が開放された空間を有し、前記空間を区画形成する隔壁が、前記一側方から前記空間に挿入された前記端子の前後方向の移動を規制する係止部と、前記一側方から挿入された前記端子の離脱を阻止する仮係止部と、を備えることを特徴とするシールドコネクタ。
【0009】
上記(1)の構成のシールドコネクタによれば、端子収容室が、端子収容室の前後方向に直交する方向となるインナーハウジングの一側方で開放される。複数のシールド線端末のそれぞれには端子が設けられ、シールド電線には端子との間につなぎ部が形成される。つなぎ部は、複数本のシールド線を纏める皮が剥かれることで、皮による拘束が解かれ、それぞれの端子が相互に離間可能となる。つなぎ部は、伝送性能が悪くなるインピーダンス不整合が引き起こされないように、短い長さで皮が剥かれている。端子収容室に端子が装着される際、それぞれの端子は、つなぎ部が屈曲され、対応する端子収容室の一側方に平行に配置される。短いつなぎ部であっても、端子は端子収容室の一側方から平行移動するだけで容易に挿入できる。これにより、端子の同時挿入作業や、半挿入状態の揃え作業が不要となる。
また、複数の端子が端子収容室へ順に挿入される過程において、挿入の完了された端子は、仮係止部によって端子収容室からの離脱が規制され、作業性が高められる。端子収容室における空間の一側方を開放する端子挿入開口は、最終的にはシールドシェルのシールド部によって閉塞されて端子が離脱しなくなるので、仮係止部は、端子収容室の隔壁に形成された簡単な構造で形成が可能となる。
【0010】
(2) 上記(1)のシールドコネクタであって、前記仮係止部が、前記端子に突設された係止突起を係止する可撓アームにより構成されることを特徴とするシールドコネクタ。
【0011】
上記(2)の構成のシールドコネクタによれば、インナーハウジングの一側方において端子挿入開口によって開放される端子収容室に、端子に突設された係止突起を係止する可撓アームが、一側方に向けて突設され、端子を上下から挟持する方向へ撓み可能とされる。端子には、この可撓アームに対向する面に、係止突起が突出して形成されているので、可撓アームを押し広げて端子収容室へ挿入された端子は、係止突起が弾性復元力によって押圧される可撓アームに係止され、端子挿入開口からの容易な離脱が規制される。従って、端子挿入作業時には、端子が可撓アームにより仮係止されるので、挿脱が容易に行え、作業性もよい。
【0012】
(3) 上記(1)または上記(2)のシールドコネクタであって、前記端子が、オス端子により構成されることを特徴とするシールドコネクタ。
【0013】
上記(3)の構成のシールドコネクタによれば、端子がオス端子となることで、一般的に端子先端部分(電気接触部)が箱形状のメス端子よりも端子が薄厚の狭い幅で形成される。このため、オス端子は、同一容積の端子収容室で比較した場合、メス端子よりも端子収容室の占有率が小さい。その分、可撓アームの形成が容易となり、可撓アームの可撓ストロークも稼ぎ易くなる。
【0014】
(4) 上記(3)のシールドコネクタであって、前記空間の一側方が、前記オス端子の先端が貫通する端子貫通孔を有するフロントホルダにより閉塞されることを特徴とするシールドコネクタ。
【0015】
上記(4)の構成のシールドコネクタによれば、インナーハウジングにフロントホルダが装着されると、端子収容室から突出されるオス端子の先端がフロントホルダの端子貫通孔に貫通され、オス端子の先端が高精度に位置決めされ、かつ、高強度に保持される。また、フロントホルダが装着されると、端子挿入開口となる端子収容室における空間の一側方がフロントホルダによっても閉塞されるので、端子挿入開口は、フロントホルダ及びその外側を覆うシールド部とによる二重構造で確実に塞がれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るシールドコネクタによれば、端子収容室には、一側方から端子をそれぞれ挿入することができるので、シールド電線の皮を剥ぐ長さが短い場合でも端子の挿入作業が容易になる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシールドコネクタの分解斜視図である。
【
図3】(a)は相手側コネクタの斜視図、(b)は(a)に示した相手側コネクタの縦断面図である。
【
図4】端子が装着されたインナーハウジングの斜視図である。
【
図5】
図4のインナーハウジングをA−A方向の断面で切り欠いた斜視図である。
【
図6】
図1に示したインナーハウジングと端子装着シールド電線の拡大図である。
【
図7】端子収容室に端子が装着される直前のインナーハウジングの斜視図である。
【
図8】インナーハウジングにフロントホルダを装着する前の斜視図である。
【
図9】インナーハウジングが組み込まれる途中におけるシールドシェルの斜視図である。
【
図10】従来のシールドコネクタの分解斜視図である。
【
図11】従来のシールドコネクタの課題を説明するための要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態に係るシールドコネクタ11は、USB2.0(高速伝送用差動コネクタ)のケーブル側のシールドコネクタとして好適に用いることができる。
図1に示すように、シールドコネクタ11は、端子であるオス端子13と、インナーハウジング15と、フロントホルダ17と、シールドシェル19と、シールドシェルカバー21と、アウターハウジング23と、を備える。なお、本明細書中、アウターハウジング23の前方側(
図1の左下側)を前、シールド電線25の後方側(
図1の右上側)を後として説明する。
【0020】
オス端子13は、板金加工により成形され、
図2に示すように、タブ状の電気接触部27を有する。電気接触部27の接触基端部29には、係止突起であるインデント31が打ち出し成形等により突出して形成される。接触基端部29の後方には、一対の前後移動規制片33が起立して設けられる。前後移動規制片33の後方には、シールド電線25の内部導体を圧着するための一対の導体圧着片35が起立して設けられる。オス端子13は、シールド電線25に接続されて端子装着シールド電線37を構成する。
【0021】
シールド電線25は、複数(本実施形態では4本)の内部導体が内部保護被覆によって覆われる。本明細書中、内部導体を覆う内部保護被覆までをシールド線41と称する。複数のシールド線41は、外部保護被覆であるシールド箔39とシース部43によって更に覆われて、シールド電線25を構成する。シールド電線25は、オス端子13とのつなぎ部45で、少なくともシース部43とシールド箔39からなる皮47を剥ぐ必要がある。皮47を剥いでいる部分は、インピーダンス不整合を引き起こし、伝送性能が悪くなる。このため、つなぎ部45の皮47を剥ぐ長さは、短ければ短いほどよい。
【0022】
インナーハウジング15は、合成樹脂材により成型され、シールド電線25の複数のシールド線端末49に圧着したオス端子13が挿入される複数の端子収容室51(
図4参照)を備える。端子収容室51は、一側方と前後方向が開放された空間53を有する。この空間53は、一側方で端子挿入開口55(
図7参照)となって開口される。また、空間53の前方は、インナーハウジング15の前面に、電気接触部挿通開口57となって開口される。空間53の後方は、インナーハウジング15の後面に、シールド線導出開口59となって開口する。
【0023】
端子収容室51の空間53を区画形成する隔壁61は、一側方から空間53に挿入されたオス端子13の前後方向の移動を規制する凹状の係止部63と、一側方から挿入された端子の端子挿入開口55からの離脱を阻止する仮係止部と、を備える。
本実施形態における仮係止部は、オス端子13に突設された上記インデント31を係止する可撓アーム65により構成される。可撓アーム65の端子対向面には、インデント31をより外れ難くする微小凸部(屈曲部)がインデント31よりも外側に設けられている。この微小凸部に代えて、インデント31と嵌合する微小凹部を設けたりしてもよい。
【0024】
図1に示したフロントホルダ17は、前面板を有して、インナーハウジング15の前部に挿着される。前面板には、インナーハウジング15の電気接触部挿通開口57に一致する複数(本実施形態では、4個)の端子貫通孔67が形成される。前面板には、後方に延びる一対のホルダ両側板73が形成され、インナーハウジング15の一側方の端子挿入開口55は、フロントホルダ17が装着されることで、フロントホルダ17のホルダ両側板73によって閉塞される。
【0025】
図1に示したシールドシェル19は、板金材を用いた板金加工により形成される。シールドシェル19は、インナーハウジング15を内方に挿入して覆う箱状のシールド部75を有する。シールド部75の後方には、シールド電線25のシース部43を圧着固定するバレル部77が連設される。端子装着シールド電線37のオス端子13を挿着したインナーハウジング15は、シールドシェル19に挿入され、端子装着シールド電線37のシース部43がバレル部77に加締め固定される。
【0026】
シールドシェルカバー21は、シールドシェル19の上部開口を上方から覆うようにして装着される。シールドシェルカバー21は、両側部に形成した係止穴を、シールド部75の両側部に形成した係止爪に係止して、シールド部75に固定される。
【0027】
アウターハウジング23は、合成樹脂材により角筒状に成形される。アウターハウジング23の内方には、シェル装着空間24が形成される。シェル装着空間24には、シールドシェル19に覆われたインナーハウジング15が挿入保持される。シェル装着空間24の前方には、後述する相手コネクタ81がコネク嵌合される。
【0028】
図3に示すように、相手コネクタ81は、インナーハウジング87と、インナーハウジング87の外側を覆うアウターシールドシェル85と、アウターハウジング83とを具備する。
図示しないシールド電線の各シールド線に接続されたメス端子89は、箱状の電気接触部を有し、
図2に示したオス端子13のタブ状の電気接触部27と接触する。
メス端子89を収容したインナーハウジング87は、シールドコネクタ11がコネクタ嵌合されると、シールドシェル19のシールド部75によって覆われる。
アウターシールドシェル85にはバレル部86が垂設され、シールド電線25のシース部43に圧着固定される。
アウターシールドシェル85及びインナーハウジング87を収容するアウターハウジング83の一側面(図中、上面)には、シールドコネクタ11におけるアウターハウジング23のロック穴23aにロック係止されるロックアーム84が設けられている。
【0029】
次に、上記したシールドコネクタ11の組み立て手順を説明する。
シールドコネクタ11を組み立てるには、
図6に示すように、シールド電線25の複数のシールド線端末49にオス端子13を圧着接続して、端子装着シールド電線37とする。そして、端子装着シールド電線37のそれぞれのオス端子13を、
図7に示すように、所定の端子収容室51の一側方に配置し、平行移動して端子挿入開口55から挿入する。
【0030】
次いで、
図8に示すように、フロントホルダ17をインナーハウジング15の前方より組み付ける。フロントホルダ17を組み付けたインナーハウジング15は、
図9に示すように、シールドシェル19のシールド部75に装着される。インナーハウジング15が挿着された端子装着シールド電線37のシース部43を、シールドシェル19のバレル部77で圧着固定する。シールドシェル19の上部開口は、シールドシェルカバー21を装着して覆う。最後に、シールドシェル19をアウターハウジング23に挿着する。
【0031】
次に、上記構成を有するシールドコネクタ11の作用を説明する。
本実施形態のシールドコネクタ11では、端子収容室51が、端子収容室51の前後方向に直交する方向となるインナーハウジング15の一側方で開放される。複数のシールド線端末49のそれぞれにはオス端子13が設けられ、シールド電線25には、オス端子13との間につなぎ部45が形成される。つなぎ部45は、複数本のシールド線41を纏める皮47が剥かれることで、皮47による拘束が解かれ、それぞれのオス端子13が相互に離間可能となる。つなぎ部45は、伝送性能が悪くなるインピーダンス不整合が引き起こされないように、短い長さで皮47が剥かれている。端子収容室51にオス端子13が装着される際、それぞれのオス端子13は、つなぎ部45が屈曲され、対応する端子収容室51の一側方に平行に配置される。
【0032】
本実施形態のシールドコネクタ11では、従来、一度に挿入されていた端子装着シールド電線37のオス端子13が、1本ずつに分けて挿入が可能となる。即ち、短いつなぎ部45であっても、オス端子13は端子収容室51の一側方から平行移動するだけで容易に挿入できる。これにより、オス端子13の同時挿入作業や、半挿入状態の揃え作業が不要となる。
【0033】
また、複数のオス端子13が端子収容室51へ順に挿入される過程において、挿入の完了されたオス端子13は、可撓アーム65によって端子収容室51からの離脱が規制され、作業性が高められる。端子挿入開口55は、最終的にはシールドシェル19のシールド部75によって閉塞されてオス端子13が離脱しなくなるので、可撓アーム65は、端子収容室51の隔壁61に形成された簡単な構造で形成が可能となる。
【0034】
また、本実施形態のシールドコネクタ11は、インナーハウジング15の一側方において端子挿入開口55によって開放される端子収容室51に、オス端子13に突設されたインデント31を係止する可撓アーム65が、一側方に向けて突設され、オス端子13を上下から挟持する方向へ撓み可能とされる。オス端子13には、この可撓アーム65に対向する面に、インデント31が突出して形成されているので、可撓アーム65を押し広げて端子収容室51へ挿入されたオス端子13は、インデント31が弾性復元力によって押圧される可撓アーム65に係止され、端子挿入開口55からの容易な離脱が規制される。従って、端子挿入作業時には、オス端子13が可撓アーム65により仮係止されるので、挿脱が容易に行え、作業性もよい。
【0035】
更に、本実施形態のシールドコネクタ11は、端子がオス端子13となることで、一般的に端子先端部分の電気接触部が箱形状のメス端子よりも薄厚の狭い幅で形成される。このため、オス端子13は、同一容積の端子収容室51で比較した場合、メス端子よりも端子収容室51の占有率が小さい。その分、可撓アーム65の形成が容易となり、可撓アーム65の可撓ストロークも稼ぎ易くなる。
【0036】
また、本実施形態のシールドコネクタ11は、インナーハウジング15にフロントホルダ17が装着されると、端子収容室51から突出されるオス端子13の電気接触部27がフロントホルダ17の端子貫通孔67に貫通される。これにより、オス端子13の電気接触部27が高精度に位置決めされ、かつ、高強度に保持される。また、フロントホルダ17が装着されると、端子挿入開口55となる端子収容室51における空間53の一側方がフロントホルダ17によっても閉塞されるので、端子挿入開口55は、フロントホルダ17及びその外側を覆うシールド部75とによる二重構造で確実に塞がれる。
【0037】
従って、本実施形態に係るシールドコネクタ11によれば、端子収容室51には、一側方からオス端子13をそれぞれ挿入することができるので、シールド電線25の皮47を剥ぐ長さが短い場合でもオス端子13の挿入作業が容易になる。
【0038】
なお、本発明のシールドコネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。