(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
160ダルトンから80300ダルトンの分子量、30%から90%の脱アセチル化度及び少なくとも2つの反応性求核基を有し、塩基性pHを有する水溶液に可溶性であるキトサンと;
200ダルトンから100000ダルトンの分子量を有し、少なくとも2つの求核反応性基を含む多官能性ポリエチレングリコールポリマーと;
200ダルトンから100000ダルトンの分子量を有し、少なくとも2つの求電子反応性基を含む、ポリエチレングリコールの多官能性多腕架橋剤と、
を含み、キトサンと多官能性ポリエチレングリコールポリマー間の共有結合、キトサンと多官能性多腕架橋剤間の共有結合、及び多官能性ポリエチレングリコールポリマーと多官能性多腕架橋剤間の共有結合を備える架橋ヒドロゲル組成物。
160ダルトンから80300ダルトンの分子量、30%から90%の脱アセチル化度及び少なくとも2つの反応性求核基を有し、塩基性pHを有する水溶液に可溶性であるキトサンと;
200ダルトンから100000ダルトンの分子量を有し、少なくとも2つの求核反応性基を含む多官能性ポリエチレングリコールポリマーと;
グルタールアルデヒドの多官能性架橋剤と、
を含み、キトサンと多官能性ポリエチレングリコールポリマー間の共有結合、キトサンと多官能性架橋剤間の共有結合、及び多官能性ポリエチレングリコールポリマーと多官能性架橋剤間の共有結合を備える架橋ヒドロゲル組成物。
ヒドロゲル組成物の成分の少なくとも2つが注射器中の溶液に供給され、残りの1つ又は複数の成分が封をしたバイアルに供給され、残りの1つ又は複数の成分のための再構成緩衝液が注射器に供給される、請求項32記載のキット。
ヒドロゲル組成物の少なくとも2つの成分が注射器中の溶液に供給され、残りの一つ又は複数の成分が、前記注射器の遠位端に接続された容器中に粉末として供給される、請求項30記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、添付の図面と組み合わせて読むとき、下記の詳細な説明から最もよく理解されるであろう。慣例により、図面の種々の特徴は、原寸に比例していないことが強調される。逆に、種々の特徴の寸法は、明確性のために任意に拡大または縮小されている。
【0012】
本発明が記載される前に、本発明は特定の記載実施例に制限されず、もちろんそれ自体変化し得ることは理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるのであるから、本明細書で用いる用語は、特定の実施例を記載する目的のためだけのものであり、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0013】
数値の範囲が示される場合は、その範囲の上限値と下限値の間の各中間値は、文脈上他に明確に表さない限り、下限の単位の10分の1まで具体的に開示もされることを理解すべきである。表示範囲内のいかなる表示値または中間値とその表示範囲内のいかなる他の表示値または中間値の間のより小さな各範囲は、本発明の範囲に含まれる。これらのより小さい範囲の上限値と下限値は、前記範囲内に独立に含まれ得、または除外され得、前記のより小さい範囲内に限界値のいずれか、いずれでもない、または両方が含まれる各範囲も本発明の範囲に含まれ、前記表示範囲のいかなる具体的除外制限の対象ともなる。前記表示範囲が前記限界値のひとつまたは両方を含む場合、これら含まれた限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0014】
他に断らない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する分野の当業者が共通に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載するのと同様または同等のいかなる方法および材料も本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの有望で好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書に記載した全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれ、前記文献の引用に関連して前記方法および/または材料を開示し記載する。本開示は、矛盾のある範囲において、組み込まれた文献の任意の開示に取って代わることが理解されるべきである。
【0015】
文脈上明確に示さない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数形“a”、“an”及び“the”は複数形対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、“a compound”への言及は、複数のこのような化合物を含み、そして“the polymer”への言及は、一つまたは複数のポリマーおよび当業者等に周知のその相当物を含む。
【0016】
本明細書で議論される文献は、本出願の出願日前の開示のためのみに提供される。本明細書は、本発明が従来技術によってそのような文献に事前日付の権利を与えないことの是認として解釈されるべきではない。さらに、記載された出版日は、現実の出版日と異なり得、独立に確認する必要があり得る。
【0017】
序論
一般に、本発明は、多糖類および2以上の追加成分から製造されたヒドロゲルを含む。表題ヒドロゲル組成物は、湿環境(例えば、血管)および乾環境の両環境において組織に結合することができ、前記組成物の組織への接着は生理的に許容されるものであると特徴づけられる。前記表題組成物のさらなる特徴は、耐性と、いかなる炎症反応であろうと実質的に炎症反応を引き起こさないということにある。前記表題組成物は、下記の任意の組み合わせのような多岐にわたる望ましい品質を提供することができる:止血性、接着性、血管再生、生体適合性、抗菌性、静菌性および/または抗真菌性、組織改変及び/または組織工学、再生、および/または細胞播種の足場の提供、酵素的または加水分解経路、膨潤、改変された滞留時間、改変された粘性、温度またはエネルギー活性化、画像療法(X−ray、CT、MRI、US、PET、CTA等)での可視化を可能にするための試薬を包含すること、改変された親水性または疎水性、空隙または空間充填、表面被覆、エネルギー吸収能、発泡剤の包含、可視化剤の包含、薬剤伝達の足場として機能する能力、音響伝送媒体および改変された硬度計としての品質である。
【0018】
表題の多糖系ヒドロゲルは、多糖要素とポリマーおよび架橋剤のような2以上の成分を組み合わせ、または混合して調製される。例示的マトリクスを
図1に示す。これらの各前駆成分または組成物について別々に詳細に説明する。
【0019】
組成物
前述のように、本発明の組成物は多糖成分を含む。本発明の使用に適した多糖類の例としてキトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ファミリー、ヘパリン、硫酸ケラタン、グリコーゲン、ブドウ糖、アミラーゼ、アミロペクチン及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。前記多糖は、天然物由来または合成的に製造されたものであり得る。多糖類は化学修飾可能な複数の反応基を有する。これらは、水酸基(OH)、カルボキシル基(COOH)およびアセトアミド基(COCH
3)を含む。多糖を高温度下で塩基性条件に置く塩基性脱アセチル化により、特定の多糖類に、アミン基(NH
2)の形で更なる官能性を付与することができる。脱アセチル化度は、アルカリ性条件の強さ、反応環境の温度、および反応時間による。例えば、脱アセチル化の比率は、単一源のキチンから異なるキトサンを得て制御できる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5874417号のPrestwichとMarecakにより教示される、未変性のヒアルロン酸をヒドラジンの使用によりアミン基で官能化するような、多糖類に官能性を付与する他の方法は、当該技術分野で周知である。この方法では、当該二糖のカルボキシル基は溶解性カルビジイミド存在下酸性条件で多機能ヒドラジドと連結する。
【0020】
特定の実施例では、多糖はキトサンである。キトサンは、甲殻類の殻およびある種の真菌に見出される天然由来のキチンの脱アセチル化により形成される二糖である。キトサンは生体適合性があり、止血性および抗菌性を有する親水性ポリマーである。キトサンは天然由来であり得、または合成的に誘導され得る。キトサンは、米国特許第5836970号、米国特許第5599916号および米国特許第6444797号に詳述されており、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0021】
ヒドロゲル原料の多糖以外の成分は、以下のような任意の天然、合成または混成ポリマーである親水性ポリマーを含む:ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アリールアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アリールアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)−コポリ(プロピレンオキシド)、ブロック共重合体、多糖類、カルボヒドレート、オリゴペプチドおよびポリペプチドである。ポリマー鎖は、前記物質のホモ−、コ−、またはターポリマーを直鎖または分岐鎖の形で、および前記物質の誘導体を含み得る。これら物質は前記多糖と対応する前記親水性ポリマー上に存在する化学的活性基の活性による共有結合の形成を介してヒドロゲルに架橋する。本発明で好適に使用される化学的活性基は、速効性の求核性または求電子性の残基と共有結合を形成し得るものである。
【0022】
前記成分材料上に存在する求核基と反応し得る求電子基としては、カルボキシル基、イソシアネート、チオシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グリシジルエーテル、グリシジルエポキシド、ビニルスルホン、マレイミド、オルソピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミドおよびカルボジイミドが挙げられるが、これらに限定されない。前記成分材料上に存在する求電子基と反応し得る求核基としては、無水物類、一級、二級、三級または四級アミン、アミド、ウレタン、尿素、ヒドラジド、スルファヒドリル基またはチオールが挙げられるが、これらに限定されない。反応基の上記リストは、例示的な例として供する;他の求核基および求電子基部分への拡張は、当業者にとって明らかである。
【0023】
一実施例においては、前記ヒドロゲル組成物は、末端求核基を持つ多官能性PEG、末端求電子基を持つ多官能性PEGおよびキトサンを含む3成分ヒドロゲルである。前記重合性成分を適当な緩衝液で再構成および混合すると、これらは反応して粘着性のヒドロゲルを形成する。
【0024】
前記末端求核基を持つ多官能性PEGは、二官能性活性型、三官能性活性型、四官能性活性型または星状枝分かれ活性型ポリマーを含み得る。前記多官能求核性PEGの分子量は、1キロダルトン(kD)から100kDの範囲;5kDから40kDの範囲;または10kDから20kDの範囲内にあり得る。前記多官能求核性PEGの質量は、質量百分率で少なくとも1%;少なくとも5%;少なくとも10%;少なくとも20%;少なくとも40%;少なくとも80%;少なくとも99%で存在する。
【0025】
前記末端求電子基を持つ多官能性PEGは、二官能性活性型、三官能性活性型、四官能性活性型または星状枝分かれ活性型ポリマーを含み得る。前記多官能求電子性PEGの分子量は、1kDから100kDの範囲内;5kDから40kDの範囲内;または10kDから20kDの範囲内にあり得る。前記多官能求電子性PEGの質量は、質量百分率で少なくとも1%;少なくとも5%;少なくとも10%;少なくとも20%;少なくとも40%;少なくとも80%;少なくとも99%で存在する。
【0026】
前記多糖(例えば、キトサン)は、塩またはアミドの形で存在し得る。前記キトサンは、10ダルトンから1kDの範囲内;1kDから10kDの範囲内10kDから100kDの範囲内;100kDから250kDの範囲内;250kDから500kDの範囲内;または500kDから1000kDの範囲内の分子量を有し得る。前記キトサンは、1%から10%の範囲内;10%から20%の範囲内;20%から30%の範囲内;30%から40%の範囲内;40%から50%の範囲内;50%から60%の範囲内;60%から70%の範囲内;70%から80%の範囲内;80%から90%の範囲内;または90%から99%の範囲内の脱アセチル化率を有する。前記キトサンは、硬化ヒドロゲルの質量百分率において、0.01%から0.1%の範囲内;0.1%から0.5%の範囲内;0.5%から1.0%の範囲内;1.0%から5%の範囲内;5%から10%の範囲内;10%から20%の範囲内;20%から40%の範囲内;40%から80%の範囲内;80%から99%の範囲内で存在し得る。特定の実施例では、多糖はキトサンである。更なる実施例においては、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5888988号に記載のN,Oカルボキシメチルキトサン、またはその開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2009/028965号に記載のジカルボキシル誘導体化キトサンのような、キトサン誘導体も含み得る。例えば、ジカルボキシル誘導体化キトサンは、少なくとも2つの求電子反応基を持つポリエチレングリゴールを介して、少なくとも2つの求核反応基を持つポリエチレングリゴールに架橋し得る。
【0027】
加水分解で分解可能な結合が多
官能性PEGポリマーの主鎖に組み込まれ得る。加水分解で分解可能な化学基を含むことにより、結果として生じたヒドロゲルが、制御された一定の方式で移植された後に、分解することが可能となる。加水分解で分解可能な結合に接する化学基は加水分解反応の速度に影響する。Braunovaら(Collect. Czech. Chem. Commun. 2004、69、1643−1656)は、ポリ(エチレングリコール)ポリマー内のエステル結合の加水分解速度は、前記エステル結合に接するメチレン基数が増大するほど減少することを示している。例えば、トリリシンおよび多腕ポリ(エチレングリコール)スクシニミジルコハク酸のコポリマーは、生理学的条件下、水溶性溶液中およそ8日で分解するであろう。
図2に示すように、スクシニミジルコハク酸は、加水分解的に感受性が高いエステル結合に隣接する2つのメチル基を有する。
【0028】
比較すると、トリリシンおよび多腕ポリ(エチレングリコール)スクシニミジルグルタレートのコポリマーは、生理学的条件下、水溶液中およそ50日で分解するであろう。
図3に示すように、スクシニミジルグルタレートは、加水分解的に感受性が高いエステル結合に隣接する3つのメチル基を有する。
【0029】
前記エステル結合に隣接するメチル基数が増大するほど、前記エステル結合の加水分解速度は減少する。前記エステル結合の加水分解速度のさらなる減少は、以下の次第に沿って、前記PEGポリマーのメチル基数を増大することにより達成されるはずである:PEGスクシンイミジルアジペート、PEGスクシンイミジルピメレート、PEGスクシンイミジルスベレート、PEGスクシンイミジルアゼレート、PEGスクシンイミジルセバケート等。分解時間を制御するこの方法の他の系への拡張は、当業者に容易にアクセス可能なはずである。
【0030】
本発明の他の形態は、末端求核基を持つ
多官能性PEG、アルデヒド成分およびキトサンを含む3成分ヒドロゲルである。前記重合性成分を適当な緩衝液で再構成および混合すると、これらは反応して粘着性のヒドロゲルを形成する。
【0031】
組成物中の求核性PEGおよび多糖(例えば、キトサン)は、前述したものである。本明細書に記載する前記組成物中のアルデヒドは、任意の低毒性な生体適合性アルデヒドであり得る。特に、前記アルデヒド成分は、ジアルデヒド、ポリアルデヒドまたはそれらの混合物を含む。前記アルデヒドの例として、グリオキサール、コンドロイチン硫酸アルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタールアルデヒドおよびマレアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施例においては、前記アルデヒド成分はグルタールアルデヒドである。毒性の低い他の適切なアルデヒドとして、天然物質、例えば、デキストランジアルデヒドまたは糖類に由来する多官能性アルデヒド類が挙げられる。前記アルデヒド成分は、炭水化物およびその誘導体の過ヨウ素酸またはオゾン等との酸化開裂により得られるアルデヒド生成物であり得る。前記アルデヒドは、任意に熱で前処理され得る。「生体適合相転化タンパク質様組成物およびそれらの製造法ならびに使用法」については、Schankereliによる米国特許第7303757号を参照されたい。前記アルデヒド成分は、粘性およびモル浸透圧のような性質を分析し得る。粘着性組成物のアルデヒド成分は、それ自体さらに成分および/または下位成分を含み得る。この様に、前記アルデヒド成分は、混合前であれまたは混合後であれ、重量、重量対重量、重量対容量、容量対容量の観点で表し得る。例えば、多糖は、アルデヒド基で誘導体化されたデキストランを介して、少なくとも2つの反応性求核基を持つ多官能性合成ポリマーと架橋し得る。
【0032】
いくつかの実施例においては、前記アルデヒド成分は、約1−90%のアルデヒド濃度で構成される。いくつかの実施例においては、前記アルデヒド成分は、約1−75%のアルデヒド濃度を構成する。いくつかの実施例においては、前記アルデヒド成分は、約5−75%のアルデヒド濃度;約10−75%のアルデヒド濃度;約20−75%のアルデヒド濃度;約30−75%のアルデヒド濃度;約40−75%のアルデヒド濃度;約50−75%のアルデヒド濃度;または約60−75%のアルデヒド濃度を構成する。
【0033】
前記組成物は、少なくとも約1%のアルデヒド濃度;少なくとも約5%のアルデヒド濃度;少なくとも約10%のアルデヒド濃度;少なくとも約20%のアルデヒド濃度;少なくとも約30%のアルデヒド濃度;少なくとも約40%のアルデヒド濃度;少なくとも約50%のアルデヒド濃度;少なくとも約60%のアルデヒド濃度;少なくとも約70%のアルデヒド濃度;少なくとも約80%のアルデヒド濃度;少なくとも約90%のアルデヒド濃度;または少なくとも約99%のアルデヒド濃度を構成し得る。いくつかの実施例においては、前記粘着性組成物は、約1−30%、約25−75%、約50−75%または約75−99%のアルデヒド濃度を構成する。
【0034】
いくつかの実施例においては、前記組成物は、少なくとも約1%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約5%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約8%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約10%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約20%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約30%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約40%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約50%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約60%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約70%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約80%のグルタールアルデヒド濃度;少なくとも約90%のグルタールアルデヒド濃度;または少なくとも約99%のグルタールアルデヒド濃度を構成する。いくつかの実施例においては、前記組成物は、約1−30%;約25−75%;約50−75%;または約75−99%のグルタールアルデヒド濃度を構成する。
【0035】
増粘剤を上記本発明の形態に添加し得る。前記増粘剤は、例えば、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、リポソーム、プロリポソーム、グリセロール、デンプン、炭水化物、ポビドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコールを含む。いくつかの実施例においては、前記増粘剤は、デキストラン、ポリエチレングリコールまたはカルボキシメチルセルロースである。いくつかの実施例においては、前記組成物は、少なくとも約1%の増粘剤濃度;少なくとも約5%の増粘剤濃度;少なくとも約10%の増粘剤濃度;少なくとも約20%の増粘剤濃度;少なくとも約30%の増粘剤濃度;少なくとも約40%の増粘剤濃度;少なくとも約50%の増粘剤濃度;少なくとも約60%の増粘剤濃度;少なくとも約70%の増粘剤濃度;少なくとも約80%の増粘剤濃度;または少なくとも約90%の増粘剤濃度を構成する。いくつかの実施例においては、前記組成物は、少なくとも約0.5%−10%、少なくとも約0.5%−25%または少なくとも約0.5%−50%の増粘剤濃度を構成する。いくつかの実施例においては、前記増粘剤は、前記組成物の少なくとも約0.5%を構成し得る。前記増粘剤は、前記組成物のゲル化時間を変えることができる。
【0036】
本発明の前記態様のいくつかの実施例は、放射線不透過物質をさらに含み得る。放射線不透過物質としては、例えば、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸バリウム(BaSO
4)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ネオジム、ジルコニア(ZrO
2)、ストロンチア(SrO)、酸化スズ(SnO
2)、放射線不透過ガラス、ケイ酸ガラスが挙げられる。放射線不透過ガラスとしては、例えば、ケイ酸バリウム、シリコアルミノバリウムまたはストロンチウム含有ガラスが挙げられる。ケイ酸ガラスとしては、例えば、バリウムまたはストロンチウム含有ガラスが挙げられる。いくつかの実施例においては、前記放射線不透過物質は、少なくとも約0.001%の;少なくとも約0.05%の;少なくとも約0.1%の;少なくとも約0.2%の;少なくとも約0.5%の;少なくとも約1%の;少なくとも約2%の;少なくとも約5%の;少なくとも約8%のまたは少なくとも約10%の前記粘着性組成物を含む。
【0037】
本明細書に記載する前記ヒドロゲル組成物は、様々な天然由来または合成製造された、水、緩衝液、生理食塩水、中性塩、炭水化物、繊維、その他の生体物質、湿潤剤、抗生剤、保存剤、着色剤、増粘剤、希釈剤、フィブリノーゲン、ポリエチレングリコールのようなポリマーまたはそれらの組み合わせ、のような添加物を、これらに限定されないが、任意に含み得る。ポリマー類は、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ビニルポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロ−エチレン、ポリプロピレンおよび塩化ポリビニル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、酢酸セルロース、ポリメチルメタクリレート、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ニトロセルロースおよび同様のコポリマーを含む。ポリマー類は、さらに天然由来または発酵等により生体外で製造され得る生物学的ポリマーを含む。生物学的ポリマーは、制限なく、コラーゲン、エラスチン、シルク、ケラチン、ゼラチン、ポリアミノ酸、多糖(例えば、セルロースおよびデンプン)およびそれらのコポリマーを含む。
【0038】
硬化時に材料の結合に柔軟性を与えるため、柔軟剤を前記ヒドロゲルに含ませることができる。前記柔軟剤は、天然物由来組成物または合成的に製造されたものであり得る。適切な柔軟剤として、合成および天然ゴム、合成ポリマー、自然的非天然の生体適合性タンパク質(外来性(つまり、非天然)コラーゲン等)、グリコサミノグリカン(GAGs)(ヒアルロニンおよびコンドロイチン硫酸)および血液成分(フィブリン、フィブリノーゲン、アルブミンのような成分および他の血液因子)を挙げることができる。
【0039】
本明細書に記載の組成物は、任意に塩および/または緩衝液を含むことができる。塩の例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。適切な緩衝液は、例えば、アンモニウム、リン酸塩、ホウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、カコジル酸塩、クエン酸塩および、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)およびN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’(2−エタンスルホン酸)(HEPES)のような他の有機緩衝液を含むことができる。適切な緩衝液は、ヒドロゲル組成物の所望のpH範囲に基づいて選択することができる。
【0040】
前記組成物の機械的性質を修飾するために追加の添加剤が前記配合物中に存在し得る。いくつかの添加剤は、例えば、充填剤、軟化剤および安定化剤を含む。充填剤の例としては、カーボンブラック、金属酸化物、ケイ酸、アクリル樹脂粉末、種々のセラミック粉末が挙げられるが、これらに限定されない。軟化剤の例としては、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブトキシエチルおよび他のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。安定化剤の例としては、トリメチルジヒドロキノン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
前記組成物にふくまれ得る一クラスの添加剤は、ナノ粒子またはナノスケールの構造物である。所定の物理的特徴を有するように工学操作されたナノ粒子の例は、ナノシェルであり、Oldenburgらにより教示される(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6344272号)。ナノシェルは、非導電性核を取り囲む金属殻から成り、前記核の直径および前記殻の厚みを変えることにより、前記金属の吸光波長を所定のスペクトル領域にすることが可能になる。Westらは、米国特許第6428811号および米国特許第6645517号において薬物伝達のためのナノシェルの熱感受性ポリマーマトリクスへの組み込みを開示し、さらに米国特許第6530994号において、局所温熱療法を介する癌治療にナノシェルを使用することを教示する(上記特許は、参照によりそれら全体が本明細書に取り込まれる)。ナノ粒子または他のナノスケール構造と本発明の前記組成物との組み合わせは、前記組成物に追加機能(すなわち、可変同調型吸収スペクトル)を供給し得る。一例においては、局所温熱誘導のための近赤外光適用前に、近赤外光を吸収するように調整されたナノ粒子を所望の身体位置に固定するために前記組成物を採用し得る。前記ナノシェルの前記ヒドロゲルマトリクス内への組み込みは、標的領域からの前記ナノシェルの浸出を防止する。
【0042】
前記組成物は、任意に可塑剤も含み得る。前記可塑剤は、表面の湿潤、他にも材料の弾性率の増加、またさらには、材料の混合および利用の補助を含む多数の機能を提供する。例えばオレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、ジオクチルフタレート、リン脂質およびフォスファチジン酸を含む多数の可塑剤が存在する。可塑剤は、典型的に非水溶性有機物であり、かつ容易に水と混和しないため、適切な可塑剤をアルコールと予混合して溶液に関係する表面張力を減らすことにより、これは時にそれらの水との混和性を修飾する際の利点となる。最終的に、任意のアルコールを使用し得る。本発明のある代表的実施例においては、オレイン酸は、50%(w/w)溶液を生成するようエタノールと混合され、次いでこの溶液は、配合工程でポリマー物質を可塑化するのに使用される。前記可塑剤の種類と濃度は適用によるが、特定の実施例においては、可塑剤の最終濃度は、約2から4%(w/w)を含む、約 .01から10%(w/w)である。他の注目する可塑剤として、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
注目する充填剤は、強化性充填剤と非強化性充填剤の両方を含む。強化性充填剤は、細断繊維シルク、ポリエステル、PTFE、NYLON、炭素繊維、ポリプロピレン、ポリウレタン、ガラス等を含み得る。繊維は、上記のように他の成分の用に、例えば湿潤、混合性を増大する等、所望のように改変することができる。強化性充填剤は、約10から約30%のように、約0から40%で存在し得る。非強化性充填剤は、例えば、クレー、マイカ、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、骨細片等が含まれ得る。所望の場合には、これらの充填剤は、例えば上記の様に改変もされ得る。非強化性充填剤は、約10から約30%のように、約0から40%で存在し得る。
【0044】
特定の実施例においては、前記組成物は発泡剤を含んでもよく、前記発泡剤は、前記架橋組成物と結合する際に、例えば散在するガス状気泡を含んだ組成物のような発泡組成物となる。前記架橋組成物と接触する際に、気泡産生を提供して前記組成物に所望の特徴を付与するような気体生成剤となることができる任意の便宜な発泡剤が存在し得る。例えば、約2から約5%w/wの範囲にある量の重炭酸ナトリウムのような塩が前記基材に存在してもよい。前記基材が、例えば約pH5の酸性の架橋組成物と結合する際に、発泡組成物が産生する。
【0045】
本発明のポリマー網状組織に、生理活性物質を組み込むことができる。これら薬剤として、天然由来又は合成的に生産された血漿タンパク質、ホルモン、酵素、抗生剤、防腐剤、抗腫瘍剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、ヒト由来及び非ヒト由来の成長因子、麻酔剤、ステロイド、細胞懸濁液、細胞毒、細胞増殖阻害剤、バイオミメティクスが挙げられるが、これらに限定されない。生理活性物質は、本分野で周知の任意の方法により本発明のヒドロゲルに組み込むことができる。非限定的実施例として、前記ヒドロゲルマトリクスが単剤または多剤の周囲に形成されて該単剤または該多剤を機械的に封入するように、混合前に、該単剤または該多剤を前記成分溶液に添加してもよい。あるいは、該単剤または該多剤は、混合前に一つのまたは全部の前記成分溶液に添加されてもよい。もう一つの例では、該単剤または該多剤は、前記ヒドロゲルの成分と反応して前記ヒドロゲルと共有結合を形成するように修飾または誘導化されてもよい。該単剤または該多剤は、ヒドロゲル構造のつり鎖配置(pendent chain configuration)において、または該構造の完全集積成分としてヒドロゲル構造の骨格に結合し得る。さらに他の例においては、該単剤または該多剤は、ヒドロゲル内に封入またはヒドロゲルに渡り分布した疎水性領域内に懸濁されてもよい。あるいは、該単剤または該多剤は、静電的相互作用、ファンデルワールス相互作用または疎水的相互作用を介してヒドロゲルの骨格と関連付けられてもよい。上記技術の任意の組み合わせも企図される(例えば、正荷電ヒドロゲルマトリクスに物理的に封入される負荷電剤)。封入の正確な方法は、生理活性物質の性質により決まる。
【0046】
方法
成分ポリマーの水溶液を混合し本発明のヒドロゲルを形成させる。一般に、等容積の成分水溶液を混合させヒドロゲルを形成させる。しかしながら、前記溶液が、混合時に架橋して本発明のヒドロゲルを形成するような性質である場合、異なる比率の成分水溶液が使用され得る。当業者は、下記の例示的なパラメータのうちの一つ又は複数を操作することにより、本発明のヒドロゲルの硬化時間を変化させることができる:
a)多糖類(例えばキトサン)の脱アセチル化度;
b)多糖類(例えばキトサン)の分子量;
c)本発明のアルデヒド成分の種類;
d)水溶液中のポリマー成分の質量百分率;
e)水溶液中の個別のポリマー成分の相対質量百分率;
f)多
官能性求核性PEGポリマーの分子量;
g)多
官能性求核性PEGポリマーの腕の数;
h)多
官能性求核性PEGポリマーに内在する求核性化学基の種類;
i)多
官能性求電子性PEGポリマーの分子量;
j)多
官能性求電子性PEGポリマーの腕の数;
k)多
官能性求電子性PEGポリマーに内在する求電子性化学基の種類;
l)水溶液中の緩衝塩の濃度;
m)水溶液のpH;
n)水溶液の粘度。
【0047】
本発明の一実施形態では、ヒドロゲルはin situで形成される。本発明成分の水溶液は、水溶液の吹き付け、流動、注射、塗布又は注入により標的領域に同時にアプライ又は堆積され得る。前記成分は標的領域への適用又は堆積時に混合され、架橋し、ポリマー網状組織を形成する。水媒体中でポリマー網状組織が形成されることにより、ヒドロゲルがつくり出される。あるいは、前記成分は標的領域への移動中に混合され得る。これは、エアロゾル又は噴霧により適用された場合は空気中で起こり得、流動又は注射による送達の場合送達装置の管腔内で起こり得る。成分溶液の混合は、いずれの送達においても、成分の混合を補助する非活性要素(例えばビーズ)の含有など、静的又は活性化混合要素により促進され得る。他の適用方法としては、ヒドロゲルの硬化時間が適切に選択されたという条件で、成分水溶液を送達前に混合するという方法がある。
【0048】
成分溶液は標的領域に同時に又は反復様式(第一の成分溶液の適用後に、第二の成分溶液の適用等)で、適用又は堆積され得る。適用又は堆積方法は上記のいずれかであり得、さらに、多成分系のin situ硬化を行う種々の方法論及び装置が、本発明の物質を適用するために使用され得る。
【0049】
本発明の他の実施形態では、ヒドロゲルは適用前に形成される。成分溶液は適切な容器内で混合され、硬化され得る。硬化したヒドロゲルはその後、容器から除去され標的領域に適用され得る。あるいは、硬化したヒドロゲルは標的領域への適用前に乾燥され得る。用語「乾燥」とは、ポリマー候補体の水含量を、それにより、当初の値より低い値に減少させる任意の処理をいう。これは、種々の温度および圧力条件下で前記材料を前記ポリマー材料より水含有量が低い環境に置くことにより達成されるが、そのうちの幾つかを表に列挙する。
【0050】
【表1】
本明細書に列挙するものを超える乾燥技術の適用は、当業者にとって容易に入手可能である。例えば、米国特許出願公開第2007/0231366号は、反応完了前に溶液の温度を反応溶液の凝固点より低下させることにより架橋反応している成分溶液を停止させ、次いで部分的に架橋したヒドロゲルから溶媒を除去して部分的架橋ヒドロゲルを凍結乾燥させること、を含むヒドロゲル乾燥法を教示する。前記部分的架橋ヒドロゲルは、次いで架橋反応を完成させるのに働く一連の処理を経る。この方法の液体固体間の相変化への依存度は煩雑であり、前記教示によるヒドロゲルの製造を採用できる製造法に制限を設ける。例えば、液体から固体状態(すなわち、凍結)への溶液の転移のタイミングは、金型の物性と材料特性(壁厚、熱伝導率、金型表面の親水性または疎水性)、凍結法(冷却板、冷凍機、液体窒素浸漬等)、およびとりわけ前記架橋速度に大きく依存する。これらの変数にもかかわらず、一貫した処理を維持することは困難であり、前記教示法によるヒドロゲルのスケールアップ生産に障害をもたらす可能性がある。
【0051】
米国特許出願公開第2007/0231366号教示の前記工程の複雑性を減らす一つの方法は、凍結でのように多くのパラメータに影響を受けることなく、もはや架橋を支持しないレベルまで反応成分溶液のpHを変えるというように架橋反応速度を停止または遅らせる方法を使用することである。例えば、N−ヒドロキスクシンイミドと一次アミンの二次求核置換の反応速度は、反応媒体のpHがより塩基性になると速まり、反応媒体のpHがより酸性になると減速する。従って、前記反応媒体のpHが酸性条件に移行するような十分なモル濃度と容量の酸性溶液の添加は、前記求核置換の反応速度を停止または減少させるであろう。反応速度を変更するもうひとつの手段は、前記反応媒体のイオン強度を変更することによるものである。前記ヒドロゲル成分溶液は次いで凍結乾燥のための準備状態となる。この新規方法の利点は、ヒドロゲル成分が液体相(例えば、室温)にある状態で前記反応速度を処理し得、鋳型のサイズ、形状、素材に依存することがないことである。前記制約から独立した本方法は、処理工程の複雑性とユーザ依存性を減少させることによりバッチ間の製造ロットの一貫性を向上させ、より大きな金型の使用を容易にすることによりスケールアップ生産に適することとなる。
【0052】
乾燥や他の加工技術(例えば、ネッキング、延伸、機械加工、切断、加圧、成形等)の使用は組み合わされて、剤形に形状記憶特性を与え得る。例として、前記組成物の鋳型が円筒管の形状に鋳造され、その後、前記物質の含水量が環境と平衡状態に達するまで(質量又は他の適切な方法に基づき)、風乾され得る。乾燥された製剤はその後ネッキング過程にさらされ、乾燥ヒドロゲルが加熱され引き延ばされることにより、直径が減少しシリンダーの長さが増加する。室温まで冷却された時、前記シリンダーはネッキングされた寸法を維持する。水を吸収すると、前記シリンダーはその鋳造された長さ及び寸法に戻る。上記の例は製剤が水和反応に応答して形状記憶特性を得るように処置をする一つの方法を説明するものであり、この概念の他の外的刺激(例えばpH、超音波、放射線、温度等)への拡張は当業者に容易に利用されるべきである。
【0053】
本発明の1つの実施形態では、多糖類及び合成ポリマーは、中性又は塩基性の緩衝液に溶解される。架橋剤は、適切にpH平衡化された緩衝液に溶解される。2つの溶液を混ぜ合わせ、多糖類、合成ポリマー及び架橋剤の間で、ヒドロゲル網状組織を形成することができる。溶液は、スプレー又は液体適用を介して、in situ架橋材として使用するために送達系の一部として混合され、若しくは、溶液は、混合後、鋳型に入れて成型され、それに続く適用のためのヒドロゲルを更に手を入れずに作成し、若しくは、結果として生じるヒドロゲルは、前述のように、乾燥され加工され得る。
【0054】
第2の実施形態では、多糖類及び合成ポリマーは、メチレンブルー、ブルーデキストラン、FD&C 青色1号、FD&C 青色2号、FD&C 緑色3号、FD&C 赤色40号、FD&C 赤色3号、FD&C 黄色5号、FD&C 黄色6号などの可視化染料分子とともに、中性又は塩基性の緩衝液に溶解される。架橋剤は、適切に緩衝化された溶液に溶解される。前述の実施形態に記載のように、溶液は混合され、ヒドロゲルを形成する。染料材を包含することによって、使用者は、適用の箇所でドロゲルの厚み及び/又は位置を確認することができる。一例として、染料は、コーティング厚が増加するにつれて染料の色の強度が変化するのを観察することによって、組織表面にスプレー又はエアゾールを介して塗布されたヒドロゲルのコーティングの厚みを推定するために使用され得る。別の例として、染料は、製造過程における工程で、鋳型又はキャスティング型の被覆を確認するために使用され得る。あるいは、可視化染料は、架橋剤とともに溶液中に存在する。更に別の方法として、1つ以上の染料が、多糖類/合成ポリマー溶液及び架橋剤溶液中に含まれ得る。例えば、青色染料が多糖類/合成ポリマー溶液に加えられ、黄色染料が架橋剤溶液に加えられ、混合された際に、混合溶液が緑色を呈するので、2つの構成要素の混合が視覚による確認が可能であり得る。異なる染料、染料の組み合わせを用いたこれら技術の置換、1つ又は両方の多糖類/合成ポリマー溶液中の染料の包含などは、当業者に明白であろう。
【0055】
第3実施形態では、放射線不透過性物質が、多糖類及び合成ポリマーとともに、中性又は塩基性の緩衝液中に包含され得る。あるいは、放射線不透過性物質が、緩衝化された架橋剤溶液に包含され、又は放射線不透過性物質は、多糖類/合成ポリマー溶液及び架橋剤溶液の両方に包含され得る。溶液は、前述の実施形態で記載のように混合され、ヒドロゲルの本体内に分散された放射線不透過性要素を含むヒドロゲルを形成する。放射線不透過性要素の存在によって、ヒドロゲルに対する肉眼で見ること(即ち、直接視覚化)ができない場合、蛍光透視を介してヒドロゲルの視覚化が可能である。例えば、本発明のin situ架橋実施形態は、子宮筋腫の閉塞用塞栓剤として、標準心臓血管カテ−テル通して患者に送達され得る。ヒドロゲルの位置は、蛍光透視画像システムの結果上で、暗い又は不透明なかたまりとして観察され得る。
【0056】
第4の実施形態では、増粘剤が、多糖類及び合成ポリマーの中性から塩基性の溶液又は緩衝された架橋剤溶液のいずれか、若しくはその両方の溶液に添加され得る。2つの溶液は混合され、前述の実施形態に記載されているように、架橋反応を開始し、ヒドロゲルを形成する。増粘剤は、多糖類、合成ポリマー又は架橋剤成分のいずれか又はその全てと反応する化学基を含まないように選択され得る。あるいは、増粘剤は、多糖類、合成ポリマー又は架橋剤成分のいずれか又はその全てと補完的な化学基に結合できる単一の反応基を含むという点で単官能性であり得る。増粘剤の存在は、1つ又は両方の多糖類/合成ポリマー及び架橋剤溶液の粘性を増加する役目を果たす。一例として、増粘剤の添加前に多糖類/合成ポリマー溶液が架橋溶液より著しく粘稠な場合、増粘剤は、架橋剤溶液に加えられ得る。2つの成分溶液の粘性を合わせることは、溶液の混合を良くし、より均一で均質のヒドロゲル構造を作り、不完全又は非効率的な混合のために架橋反応の速度にあり得るばらつきを減少することができ、取扱い易さも同様に上がる。別の例として、増粘剤は、多糖類/合成ポリマー及び架橋剤溶液の一方又はその両方に加えられ、ヒドロゲルの架橋及び形成の完了前に送達位置からの移動に耐える溶液を作成し得る。ヒドロゲルのin situ架橋の実施形態の送達の例示的な場合では、送達と架橋反応の完了との時間の間、高度に粘稠な物質は洗い流されず、放散されず、その他、希釈されないであろう。
【0057】
第5の実施形態では、ステロイドは、中性から酸性の緩衝液中で、架橋剤と混ぜ合わせられ得る。多糖類及び合成ポリマーは、中性又は塩基性の緩衝溶液に溶解される。2つの溶液は混合され、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ステロイドをヒドロゲル網状組織に封入して、ヒドロゲルを形成する。ステロイドは一般に塩基性又はアルカリ性の溶液に不溶性で、よって、ステロイドを架橋剤を含む中性から酸性の緩衝液へ付加することは、ステロイドがヒドロゲルへ取り込まれる前に、ステロイドが溶液から沈殿することを防止又は軽減するように作用する。創傷に塗布又は対象者にインプラントした際、ステロイドは、ヒドロゲルの孔のサイズによって部分的に決定される速度でヒドロゲルから拡散するか、又は周囲の人体組織へのステロイドの拡散が可能な位置にヒドロゲルが分解するまでヒドロゲルに入り込んだままのいずれかであろう。
【0058】
第6の実施形態では、ゲンタマイシンなどの抗生物質が、中性から酸性の緩衝液中で、架橋剤と混ぜ合わせられ得る。多糖類及び合成ポリマーは、中性又は塩基性の緩衝溶液に溶解される。2つの溶液は混合され、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ステロイドをヒドロゲル網状組織に封入して、ヒドロゲルを形成する。抗生物質は一般に塩基性又はアルカリ性の溶液に不溶性で、よって、抗生物質を架橋剤を含む中性から酸性の緩衝液へ付加することは、ステロイドがヒドロゲルへ取り込まれる前に、抗生物質が溶液から沈殿することを防止又は軽減するように作用する。創傷に塗布又は対象者にインプラントした際、抗生物質は、ヒドロゲルの孔のサイズによって部分的に決定される速度でヒドロゲルから拡散するか、又は周囲の人体組織への抗生物質の拡散が可能な位置にヒドロゲルが分解するまでヒドロゲルに入り込んだままのいずれかであろう。
【0059】
第7の実施形態では、本発明の組成物の完全に架橋された形態が、多血小板血漿(PRP)のための担体として、使用され得る。前記組成物の完全に架橋された形態は、平衡膨張に達する前の状態で、PRPの溶液に浸され、網状組織の隙間にPRPを吸収する。ヒドロゲルの完全に架橋された状態としては、限定はされないが、空気乾燥された形態、完全に硬化されたが、まだ乾燥されてない(半水和された(semi−hydrated))形態、凍結乾燥形態、並びに乾燥及び断片化された形態などが挙げられる。PRPが入った(loaded)本発明の組成物は、軟組織欠損(例えば腱、靭帯、ヘルニア、回旋腱板など)、裂傷又は外傷の創傷床(例えば褥瘡、糖尿病性潰瘍など)、若しくは硬組織欠損(例えば骨)などの標的となる人体組織に、塗布され、一定の期間かけてPRPを標的領域に送達する。あるいは、外部の物質(例えばガーゼスポンジ、テフラフレックス(TephaFLEX)(登録商標)が編み込まれた単繊維メッシュ、テフラフレックス(TephaFLEX)(登録商標)吸収性のあるフィルム、コラーゲンスポンジ、帯具、その他の足場(scaffold)物質など)が、担体の表面に塗布された本発明の組成物とともに、PRPを吸収し運ぶために使用され、ヒドロゲルコーティングを形成し、担体材からPRPの拡散に対するバリアとして作用し得る。随意に、カルシウム、トロンビン又はコラーゲンが、PRPからの成長因子の放出を活性化するために添加され得る。塗布の方法としては、限定はされないが、スプレー塗布、浸漬被覆、及び塗装などが挙げられ得る。
【0060】
ステロイド、抗生物質、及びPRPを本発明の組成物に組み込む例は、あらゆる生理活性物質に広げることができることは、明白であるはずで、その例として、天然又は合成プラズマタンパク質、ホルモン、酵素、防腐性薬品、抗悪性腫瘍薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症剤、ヒト由来成長因子及びヒト以外に由来する成長因子、麻酔薬、細胞懸濁液、細胞毒素、細胞増殖阻害剤、フィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、及び生体模倣物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
第8の実施形態では、メチルセルロースなどの繊維が、前記組成物に加えられ、消化器系での物質の吸収を防ぎ得る。この目的で、メチルセルロースは、適切な緩衝液中で、断片化されたヒドロゲル溶液に添加され得る。
【0062】
第9の実施形態では、オレイン酸などの湿潤剤が、多糖類及び合成ポリマーの中性から塩基性の溶液又は緩衝された架橋剤溶液のいずれか、若しくはその両方の溶液に添加され得る。2つの溶液は混合され、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ヒドロゲルを形成する。湿潤剤は、皮膚、肝臓又は胆嚢などの油性の標的表面上にヒドロゲルのin situ組成物の硬化および粘着を促進する役目を果たす。
【0063】
第10の実施形態では、コラーゲンなどの柔軟剤が、多糖類及び合成ポリマーの中性から塩基性の溶液又は緩衝された架橋剤溶液のいずれか、若しくはその両方の溶液に添加され得る。2つの溶液は混合され、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ヒドロゲルを形成する。ヒドロゲル組成物に組み込まれる柔軟剤のタイプ及び量は、調整可能であり、硬化されたヒドロゲルの延性及び弾性を多様にする。
【0064】
第11の実施例では、特定の塩及び/又は緩衝液が、多糖類、合成ポリマー、及び架橋剤を溶解するための溶媒として使用され得る。例えば、多糖類及び合成ポリマーは、中性又は塩基性pHに調整されたホウ酸ナトリウム緩衝液に溶解され得る。架橋剤は、中性又は酸性pHに調整されたリン酸ナトリウム緩衝液に溶解され得る。2つの溶液の混合によって、所与の適用(例えばスプレー適用では、10秒未満のゲル化、キャスティング適用では10分未満のゲル化など)に適切な架橋反応速度をもたらすpHで、ヒドロゲルの3つの成分を含む緩衝液を生じるであろう。特定の塩及び緩衝液は、本発明の組成物を含み得る更なる成分に合うように選択され得る。例えば、モノリン酸ナトリウム塩が、架橋剤及びステロイドの両方を溶解するのに適した酸性緩衝液を得るために使用され得る。
【0065】
第12の実施形態では、ヒドロキシアパタイト、繊維様絹、炭素ファイバー、骨片、ポリグリコール酸のメッシュ、テフラフレックス(TephaFLEX)(登録商標)のメッシュなどの充てん剤が、多糖類及び合成ポリマーの中性から塩基性の溶液又は緩衝された架橋剤溶液のいずれか、若しくはその両方の溶液に添加され得る。2つの溶液は混合され、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ヒドロゲルを形成する。充てん剤は、ヒドロゲルの機械的特性、例えば、限定はされないが、強さ、強靱性、引き裂き抵抗、圧縮弾性率及び張力係数などを変える役目を果たす。あるいは、多糖類及び合成ポリマーは、中性又は塩基性の緩衝液に溶解される。架橋剤は、適切にpH平衡化された緩衝液に溶解される。2つの溶液は、混ぜ合わされて、充てん剤を含む鋳型に注がれるか吹き付けられ、充てん剤の周り及び/又は充てん剤内に、多糖類、合成ポリマー、及び架橋剤間のヒドロゲル網状組織の形成を可能にする。
【0066】
第13の実施形態では、トリメチルジヒドロキノンなどの安定剤が、多糖類及び合成ポリマーの中性から塩基性の溶液又は架橋剤組成の粉末形態のいずれかに添加され得る。安定剤の包含は、本発明のin situ架橋構成において成分の混合前の保存可能期間を延ばす役目を果たす。使用時に、架橋剤の粉末形態は、適切にpH平衡化された緩衝溶液に溶解され、多糖類/合成ポリマー溶液と混ぜ合わされ、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ヒドロゲルを形成する。
【0067】
第14の実施形態では、重炭酸ナトリウムなどの発泡剤が、多糖類及び合成ポリマーの中性から塩基性の溶液又は緩衝された架橋剤溶液のいずれか、若しくはその両方の溶液に添加され得る。2つの溶液は混合され、前述の実施形態で記載されているように、架橋反応を開始し、ヒドロゲルを形成する。重炭酸ナトリウムの存在は、気泡の形成及び反応溶液の混合物の発泡を誘起し、結果としてマクロ多孔性の構造を示すヒドロゲルを生じる。あるいは、発泡剤は、2つの溶液を混合した後(架橋反応が進行している間)、多糖類/合成ポリマー及び架橋剤溶液の混合物に添加されることができる。別の方法では、発泡剤は、混ぜ合わされた多糖類/合成ポリマー及び架橋剤溶液を受ける鋳型又はキャストに入れることができる。発泡されたヒドロゲルの平均孔サイズ、孔サイズの分布、合計孔容積及びその他の特性は、本発明の組成物に組み込まれる発泡剤の量を調整することによって制御することができる。
【0068】
第15の実施例では、吸収性のスポンジが、多糖類及び合成ポリマーを含む中性から塩基性の緩衝液と、架橋剤を含む適切にpH平衡化された緩衝液とが混ぜ合わされて生じる生成物を凍結乾燥することによって作製される。スポンジは、生物学的又は薬学的活性剤を含む溶液で膨張され、本発明の組成物のin situ架橋製剤でコーティングされ得る。
【0069】
物学的又は薬学的活性剤の放出は、in situ硬化させたコーティングのメッシュのサイズに対する薬剤のサイズに依存するであろう。薬剤のサイズがコーティングのメッシュのサイズより著しく大きい場合、薬剤は、コーティングが分解または摩耗されるまで維持されるであろう。薬剤のサイズがコーティングのメッシュのサイズにほぼ同じ場合、薬剤は、限定はされないが、コーティング拡散勾配、コーティングを通る平均的経路のねじれ、コーティングに対する薬剤の電荷、コーティングの厚み、及びコーティングの水和の程度、その他のパラメータなどに部分的に決定される速度で、スポンジから拡散するであろう。コーティングは、オーバーモールド(overmolded)キャスティング技術のような、吹付け及び/又はディップコーティング法、若しくは当該技術分野において公知のその他の方法で塗布され得る。コーティングは、共有結合、機械的連結、又は電荷の違いなどを通してスポンジ表面に取り込まれ得る。あるいは、コーティングは、スポンジに取り込まれず、スポンジ物質のコアの周りで浮動性シェル又は摩擦的に結合したシェルとして機能し得る。スポンジが水和、半水和(semi−hydrated)、又は乾燥状態にあるときは、コーティングは、コアスポンジに塗布され得る。例えば、コアスポンジは、乾燥状態でコーティングされ、コーティングされたスポンジは、生物学的又は薬学的活性剤のローディング溶液(loading solution)に浸漬され得る。あるいは、コアスポンジは、生物学的又は薬学的活性剤のローディング溶液(loading solution)に浸漬され、そのあと乾燥状態でコーティングされ得る。別の例では、コアスポンジは、所望のレベルの水和まで適切な溶液に浸漬され、結果として生じる水和されたコアで、生物学的又は薬学的活性剤を含む第2の溶液に浸漬されたコーティングされた物質をコーティングされ得る。上記の例のいずれも、コーティングされたスポンジの充てん(loading)が実質的に完了した後に、乾燥、半水和(semi−hydrated)又は水和状態において埋め込まれ得る。
【0070】
別の例では、生物学的又は薬学的活性剤は、コアスポンジ物質の作成の間に、多糖類及び合成ポリマー溶液及び/又は架橋剤溶液に取り込まれ得る。取り込みは、限定はされないが、共有結合、静電気的及び/又はファンデルワールス相互作用、疎水的相互作用、及び封入などを含み得る。そして、充てんされた(loaded)スポンジ物質は、上記のように、in situ架橋されたコーティングでコーティングされ得る。in situ架橋されたコーティングは、少なくとも1つの付加的で、異なる生物学的又は薬学的活性剤を含み、単一の物質から少なくとも2つ異なる薬剤の送達を可能にし得る。薬剤の放出速度は、のコアスポンジ及び/又はコーティングの間のそれら各々の拡散定数、並びにスポンジ及び/又はコーティングの分解速度によって決定されるであろう。別の例では、同一の生物学的又は薬学的活性剤がスポンジ及びコアに入れられ(loaded)、延長又は改変された放出プロフィールを達成し得る。放出プロフィールは、スポンジ及びコーティング材の分解時間、スポンジ及びコーティング材のヒドロゲル網状組織の密度、スポンジの相対的なサイズ、及びコーティングの厚みなどを変えることによって改変されることができる。更に別の例では、1つの薬剤が、スポンジ作成中に、スポンジに取り込まれ、第2の薬剤が、前述のように、膨張を通して、スポンジに入れられ(loaded)、第3の薬剤が、コーティングに取り込まれ得る。くわえて、in situで硬化させたポリマーの連続したコーティングを層化することが実施可能で、物質の構造的、機械的、及び放出プロフィールを改変する。各層は、例えば、限定はされないが、分解時間、分解の方法、架橋密度、ポリマー高分子物質の率、平衡膨張、延性、圧縮弾性率、親水性などの特有の性質を有し得る。コーティング及びスポンジの構造的及び機械的特性、活性薬剤を含む、物質の充てん(loading)の順序、並びにここに記載のもの以外の活性薬剤のタイプの交換が達成実現可能であることは、当業者に明白なはずである。
【0071】
第16の実施形態では、多糖類及び合成ポリマーは、中性又は塩基性の緩衝液に溶解される。架橋剤は、適切にpH平衡化された緩衝液に溶解される。2つの溶液は混ぜ合わせられ、多糖類、合成ポリマー及び架橋剤の間でヒドロゲル網状組織を、およそ数十分のゲル化時間で形成することができる。混ぜ合わされた溶液は、溶液の容積が鋳型の容積より少ない鋳型に移される。その後、鋳型は、(例えば、旋盤、遠心分離器又は類似した装置を使用して)回転され、鋳型の内壁を混ぜ合わされた溶液でコーティングする。ゲル化が完了した後、鋳型の回転は停止され、中空の、硬化したヒドロゲルが、鋳型から取り除かれる。中空のヒドロゲルは、この時点で、前述の方法のいずれかによって乾燥され得る。ヒドロゲルの中央の窪みは、生物学的又は薬学的活性剤、生理食塩水溶液などのリザーバとして使用可能である。窪みは、ヒドロゲルの標的となる人体組織への埋め込みの前又は後に、所望の溶液で充てんされ得る。溶液が一連の治療が終わる前に物質から溶出する場合、窪みは、注射器、カテ−テル、充てんチューブ又はその他の仕組みを介して所望の溶液で補充され得る。
【0072】
実用性
本明細書で記載される組成物は、下記のように、多くの実用性を兼ね備え得る。例えば、ヒドロゲルは治療又は治療介入処置に続く縫合線又は吻合における漏れを防止するために塗布又は堆積され、例えば、米国特許7303757号に記載されるように冠状動脈バイパス移植、頸動脈内膜剥離術、人工移植治療、米国特許6350244号、6592608号、6790185号、6994712号、7001410号、7329414号、及び7766891号に記載されるように生検、米国特許7226615号に記載されるように肝臓又は腎移植、米国特許5716413号、5863297号、5977204号、6001352号、6156068号、6203573号、6511511号、6514286号、及び6783712号に記載されるようにヘルニア修復、胃バイパス、肺切除、肺容積低減、骨空所充てん、軟骨修復、及び米国特許7371403号、7482503号、及び7776022号に記載されるように局所切開(ヒドロゲル帯具として作用)、損傷又は潰瘍が挙げられる。前述のパラグラフに記載されているすべての列挙された特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
眼科において、シーラントは、透明な角膜の切開を封じるために使用され、外部環境から接眼面切開を保護する柔らかいなめらかな表層バリアを提供し、これは、米国特許出願公開2007/0196454及び2009/0252781に記載されている。神経外科手術及び/又は整形外科手術において、シーラントは、硬膜裂傷又は切開を修復するために使用され、CSF漏れを回避する防水シートを確保することができ、これは、米国特許6566406号に教示されている。前述のパラグラフに記載されているすべての列挙された特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
前記組成物は、動脈瘤閉塞の塞栓として使用され得る。本発明の形態としては、限定はされないが、以下が挙げられ得る:動脈瘤で架橋して固体物質を形成する液体組成物、動脈瘤内で液体にさらされたとき膨潤し得る乾燥組成物、及び従来のコイル上におかれ、コイルの有効性及び空間充てん特性を向上する乾燥コーティング。前記組成物は、神経血管瘤及び/又は周辺動脈瘤の遮断若しくは避妊にためのファロピウス管及び/又は精嚢の遮断に使用され得る。本発明の組成物の更なる適用は、静脈瘤塞栓、子宮類線維塞栓、過剰血管化腫瘍の塞栓、動静脈奇形の塞栓、髄膜腫塞栓、傍神経節腫腫瘍塞栓、及び転移性腫瘍塞栓においてであり、これらは米国特許7670592号に教示されており、参照してその全体が本明細書に組み込まれる。腫瘍の治療は、ヒドロゲルの構成要素として、化学療法剤を含んでも含まなくてもよい。
【0075】
前記組成物は、止血剤として使用され得る。本発明の1つの形態は、米国特許7371403号、7482503号、及び7776022号に記載されるように、文民及び軍隊の適用での外傷における、ファーストレスポンダー(first responder)救命手段としての出血コントロール用の中実(solid)の帯具である。本発明の組成物の止血剤としての使用の更なる例は、診断又は治療介入処置に基づいたカテ−テル後の大腿又は上腕動脈の破裂を遮閉することであり、これらは、米国特許7331979号、7335220号、7691127号、6890343号、6896692号、7083635号、4890612号、5282827号、5192302号、及び6323278号に教示されている。更なる例は、扁桃腺摘出後の扁桃腺、咽頭扁桃腺切除後の咽頭扁桃腺、抜歯後、歯のドライソケットの治療、鼻出血の治療、又はその他粘膜表面の破壊損傷の治療などの、外傷、損傷、火傷又は断裂した粘膜内壁の出血のコントロールが必要とされる管理である。前記組成物を使用して、肝臓、肺、腎臓、胸部、軟組織、及びリンパ節生検で経験される、生検目的で組織を除去した後の止血制御を提供することができ、これらは、米国特許5080655号、5741223号、5725498号、及び6071301号で教示されている。前述のパラグラフに記載されているすべての列挙された特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
前記組成物は、糖尿病性足潰瘍、静脈うっ血性潰瘍、圧迫潰瘍など、高度な損傷管理を必要とする、あらゆるタイプの潰瘍及び裂傷の治療するための薬剤として作用するように使用され得る。これらの物質の目的は、湿った環境を提供し、露出した組織を被覆及び保護し、時に最適な治癒を促進することであり、米国特許4963489号、5266480号及び5443950号に教示されている。前述のパラグラフに記載されているすべての特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
前記組成物は、一般手術、婦人科手術、及び耳鼻咽喉科手術適用において、癒着バリアとして使用され、術後癒着の発生、広がり、及び重症度を減らし得る。癒着は、体内で通常は分かれている2つの臓器又は表面の間の結合を形成する瘢痕組織の1種である。仮説では、手術に起因して遊離した血液及びプラズマが、組織間でフィブリン鎖を急性に形成することがあり;これらの鎖は、数日内に、持続的な帯状組織に成熟し、正常な臓器機能を妨害したり、他の重篤な臨床的合併症をもたらすことがある。それらは、時に子宮内膜症及び骨盤内炎症性疾患に関連し、腹部、骨盤、又は血脈洞手術の後に高い頻度で形成することが知られており、これらは、米国特許5852024号、6551610号、及び5652347号に教示されている。この種の外科的処置を受けた、90%を超える患者が、癒着を形成し得る。前記組成物は、内腔が本体内で維持されるように形成され、継続した空気の流れ(即ち、血脈洞手術後の適用の間)、又は体液の排出を可能にし得る。前記組成物は、組織間の分離を維持するためのステントとしても使用され得る。例えば、前記組成物は、円筒状構造へと成形され、組織が回復する間、拡張された副鼻腔口に挿入して小孔の拡張を維持し得る。別の例では、前記組成物は、篩骨スペーサとして使用され、手術後、篩骨洞への開口部を維持し得る。更に別の例では、本発明の組成物は、生物学的又は薬学的活性剤の溶液に浸漬され、本発明のin situ架橋可能な組成物でコーティングされ、前側(frontal)又は篩骨細胞に挿入される、凍結乾燥させたヒドロゲルの円筒状構造体であり、生物学的又は薬学的活性剤の局所的送達を提供し得る。前述のパラグラフに記載されているすべての特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
本明細書で記載される組成物は、医療用具又は組織への表層コーティングとしてとして使用され、バイオフィルム、及び細菌又は真菌のコロニーの形成を防止し得る。ヒドロゲル網状組織の構成要素として、陽イオン性が強い多糖類(例えばキトサン)を選択することによって、インプラント及び使い捨て医療用具上に連続的に表面コーティングすることを可能にし、バイオフィルムの堆積の妨害する(カールソン(Carlson)、R.P.ら、キトサンのコーティング表面の抗バイオフィルム特性 Journal of Polymer Science、Polymer版、19(8):l035−1046頁、2008年)。作用の機序は2つの面をもち、多糖類物理的な構造は、細菌細胞壁を破壊するよう機能することができ、多糖類の陽イオンの特質は、陰イオン性に抗生物質に結合するのに活用され得る。あるいは、多糖類以外の構成要素、又は添加物(例えば、銀)が用いられ、類似した抗菌物質、抗菌性、又は抗真菌性特性を提供し得る。感染制御を提供する、コーティングされた表面の重要な適用は、骨髄炎の予防と治療にある。骨髄炎は、発熱性の細菌によって進行する傾向のある骨又は骨髄の感染である。関節置換、骨折内固定、又は根管治療を受けた歯(root canalled teeth)などの医原性の原因によって、骨髄炎の発症がみられ得る。本発明のヒドロゲル組成物は、局所的、継続的な抗生物質治療を可能にし得る。更にその上、組成剤は、細菌又は真菌感染を防止又は軽減するように設計され、長期にわたる全身抗生物質治療に対する必要性を減少又は除去することができ、これらは、米国特許5250020号、5618622号、5609629号、及び5690955号で教示されている。前述のパラグラフに記載されているすべての特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書で記載される組成物は、細胞播種及び組織工学の適用に好ましい、制御された微細構造の多孔性及び無孔足場(scaffolds)を形成するために効果的に使用可能である。孔径及び構造を制御する方法としては、以下が挙げられる:フリーズドライ(凍結乾燥)、塩抽出、過酸化水素などの発泡剤の使用、及び当分野で周知の他の方法。現在興味深いのは、これら多孔性及び無孔足場骨格を使用して、複雑な組織の成長及び修復を可能にする複数の細胞系であり、例えば、組織工学的に作られた膵臓の形成、神経再生、軟骨の再生及び修復、骨の成長及び修復、並びに結合組織及び軟組織の修復(腹部及び鼠径部ヘルニア、骨盤底再建、膣スリング(vaginal slings)、回旋腱板、腱など)のための血管系、上皮組織、島細胞がある。
【0080】
本発明のヒドロゲル組成物は、治療薬又は緩和薬の制御された送達又は管理において使用され得る。前記組成物は、治療薬又は緩和薬の担体又は貯蔵場所として作用する合成構成要素を含んでもよい。薬剤は、ヒドロゲル基材の構造体に共有結合していてもよく、又は物理的にヒドロゲル基材内に取り込まれていてもよい。治療薬又は緩和薬を放出する速さは、本発明の組成物を改変することによって制御され得る。1つの例では、前記組成物は、中空のチャンバへと成形され、治療剤又は緩和剤を含む溶液の注入を可能にし得る。治療剤又は緩和剤を含むチャンバは、標的となる人体組織に定置され(例えば、篩骨洞、前頭洞細胞、鼻堤細胞、上顎洞などに挿入される)、その後、薬剤又は薬剤類は、時間の経過とともにチャンバの壁を通して拡散する。あるいは、治療剤又は緩和剤は、結合又はカプセル封入を介して、前記組成物の構造体に組み込まれ得る。これによって、治療剤又は緩和剤の放出プロフィールが、薬剤または薬剤類のヒドロゲルの間の拡散速度又はヒドロゲルの分解速度のいずれか、若しくは同時に進行している両方の機構によって、改変されることができる。別の例では、中空のチャンバは、標的となる人体組織に挿入され、その後、目的の治療剤又は緩和剤を含む溶液で充てんされ得る。現在興味深い標的として、次が挙げられる;腫瘍の治療のためのパクリタキセル、糖尿病治療のためのインスリン、痛みの治療のための鎮痛薬又は麻酔薬、アンフェタミン、抗ヒスタミン剤、プソイドエフェドリン、及びカフェインなどの血圧コントロールのための血管収縮薬、アルファ遮断薬、一酸化窒素誘導剤、及びパパベリン(papavarine)などの血圧コントロールのための血管拡張薬、スタチン(例えばロバスタチン(lovostatin)などのコレステロール降下薬、硫酸プロタミン、トロンビン、フィブリン、及びコラーゲンなどの凝固を制御するための凝血原、ヘパリン、クマジン、グリコプロテイン 2−β−3−α、ワルファリン、アブシキシマブ、チカグレロル、及び重硫酸クロピドグレルなどの凝固を制御するための抗凝固剤、並びにうつ病、強迫性障害、過食症、拒食症、パニック障害、及び月経前不快性障害の緩和療法を提供するフルオキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害剤、うつ病の緩和療法のためのフェネルジンなどのモノアミンオキシダーゼ阻害薬品、並びに慢性副鼻腔炎に伴う副鼻腔の炎症の治療のためのグルココルチコイド。ヒドロゲル組成物は、組換えヒト骨形態形成タンパク質のほか、バイオサーフェシーズエンジニアリングテクノロジー(BioSurfaces Engineering Technology)によるB2A、 F2A、 PBA、 (LA)I、 VA5、 PBA、 (LA)I、 VA5、 B7A、 F9A、 F5A、 及び F20A、米国特許7528105号で教示されるヘテロ二量体鎖合成ヘパリン結合性成長因子類似体、米国特許7482427号及び7414028号に教示される骨形態形成タンパク質−2の正のモジュレーター、米国特許7414028号に教示される成長因子類似体、及び米国特許7166574号に教示される合成ヘパリン結合性成長因子類似体などの、この適応に使用可能な生体模倣物質などの、合成骨再生剤及びヒトに基づいた骨再生剤の担体として使用される場合があり、すべて、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。発明の組成物は、特に美容外科及び皮膚科の領域において多様な用途を有する。可鍛性、流動性がある組成物は、注入可能な製剤として調製される場合があり、例えば、皮膚しわ、ひだ、折り目及び唇の矯正、充てん、及び支持など、表面から深層の皮膚の増補に適切であり、これらは、米国特許5827937号、5278201号及び5278204号に教示されている。大容積の注入が、胸、陰茎亀頭、及び体の他の解剖的な部位の増補のために想定され、それは、米国特許6418934号に教示されており、記載されているすべての特許は、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
豊胸を含む、体形を整える(body sculpting)処置は、整形目的及び再建目的のために検討される。陰茎亀頭の増補は、早漏の治療に用いられている。歴史的に、早漏に対する薬物治療の主な限界は、薬の中止後、再発することである。本発明の注入可能な組成物を使用した陰茎亀頭増補は、触刺激の神経受容体へのアクセスしやすさ(accessibility)をブロックすることを介して早漏の治療を容易にする。本発明の組成物は、失禁をコントロールするための括約筋増補のための注入可能な充てん剤として使用されることができるであろう。本願において、物質は、括約筋コントロールが回復され得るように、括約筋組織に直接注入され、組織構造を向上及び増補する。
【0082】
本明細書で記載される組成物は、また、空間充てん剤及びエネルギー障壁としても使用され、隣接組織の罹患問題を抑えて、既存のエネルギーに基づいた治療を衰退させ、現在の用量を減少し得る。本発明のヒドロゲル組成物は、患部以外の組織及び腫瘍標的の間の一時的な緩衝剤として作用する。この方法の利点は2つの面をもつ;製剤の空間を充填する特性は、エネルギーが適用される標的腫瘍から側副の組織を物理的に移動し、更にその上、前記組成物は、適用された放射線又は他のエネルギーの強度を減弱する添加剤を含むように処方され得る。例えば、前記組成物は、放射線療法の処置の間、前立腺の放射線障害を軽減又は低減するのに用いられ得る。本明細書で記載される、腫瘍を健康な組織からずらすことは、頭及び首癌、骨盤、胸部、胸部及び軟組織肉腫にもあてはまる。放射線療法及び外科的腫瘍除去処置における本組成物の更なる使用は、腫瘍の境界を描くための標示システムとして使用することである。
【0083】
本発明の組成物は、組織において空洞を埋めるために用いられ得る。潜在的な使用としては、骨の空洞の治療、荷重及び免荷、関節軟骨の空洞又は隙間、生検処置に起因する空洞、及び心臓の中隔欠損症の治療が挙げられる。これらの空洞の治療は、ヒドロゲル組成物を、生理活性物質及び生物学的活性化剤に包含することによって、向上させることができる。例えば、組換えヒト骨形態形成タンパク質、又は同種移植ヒト由来骨物質、又は鉱質除去した骨基質、又は合成生体模倣成長因子材が、前記組成物に組み込まれ、骨空洞の治療において補助し得る。
【0084】
本明細書において記載された組成物は、2つ以上の組織を互いに接着するため、若しくは埋め込み式又は使い捨ての医療装置を組織に接着するために使用され得る。硬化され、部分的に水和された製剤の変形は補聴器を鼓膜に接着するために使用され得る。半水和された(semi−hydrated)ヒドロゲルの圧力波を伝導する能力は、補聴器から中耳へ音の伝導を可能にするであろう。更に、前記組成物の接着性変形の適用は、真皮の裂傷用の粘膜又は頬の帯具又は被膜を含み得る。
【0085】
本環境の組成物は、合成滑液又は他のタイプ潤滑剤として使用され得る可能性がある。高度に親水性である合成ポリマーを組み込むことによって、これらの物質は、腱又は靭帯修復及び胸部外科手術などの分野において用途を見出され得る。外科的修復を受けた断裂された腱の腱鞘への癒着は、罹患した指又は肢の間節可動域を狭め、残る間節可動域を得るのに必要な労力を増やす。外科的に修復された腱と腱鞘の間の、ヒドロゲル組成物の流動性を持つスラリーの堆積は、摩擦を減らし、罹患した腱がより少ない労力で伸長できるように作用する。別の適用では、前記組成物の薄膜が、腱に吹き付けられ、又は別の方法として、腱に塗布され、腱と腱鞘との間の癒着を防止するなめらかなコーティングを形成し得る。胸部外科手術では、癒着は、胸部の治療介入後に形成されるかもしれない。本明細書で記載されるヒドロゲルの導入は、胸膜間の癒着の形成を防止又は減少し及び、それ加えて、擦れ合う隣接した組織の動きに滑沢剤を提供し得る。
【0086】
本発明に記載されている組成物は、スプレーコーティングとして適用され得る。製剤の複数の構成要素は、順次又は同時に塗布され、標的部位で部分的又は完全架橋を介して硬化することを可能にし得る。スプレーコーティング物質は、埋め込み可能な整形外科装置、冠状動脈、末梢、神経血管ステント、カテーテル、カニューレなど多様な医療装置及びインプラントに塗布され得る。更にくわえて、スプレーコーティングはシーラント又は癒着バリアとして、創傷又は病変に塗布され、治癒を助ける又は速め、若しくはシーラントとして、目のため又は薬物送達のための保護コーティングとして作用し得る。詳細な例として、整形外科のインプラントは、骨形成及び/又は骨誘導及び/又は骨伝導を促進し、細菌、微生物又は真菌コロニーの形成を防止し、インプラントの耐荷重性特性を補助し、若しくは生理活性物質又は生物学的活性化剤の送達のための貯蔵所として作用するように設計された製剤でスプレーコーティングされ得る。
【0087】
本発明に記載されている組成物は、部分的又は完全な架橋を介してin situ硬化するための液体として塗布され得る。製剤の複数の構成要素は、順次又は同時に塗布され、標的部位で架橋又は硬化することを可能にし得る。これらの実施形態は、製剤を体内に置かれるインプラントのコア又は窪みに注入することによって適用され、局所的薬物送達、例えば、限定はされないが、鎮痛薬、抗生物質、凝血原、化学療法剤、及び抗凝固剤、又は例えば限定はされないが骨形成、骨誘導、及び骨伝導などの組織工学的な特長を提供し得る。体内に置かれることが意図されたインプラントは、本明細書において記載された液体製剤でディップコーティングされ得る。これらコーティングは、長期保存のために乾燥され;それらは、乾燥又は再水和された状態で、埋め込まれ得る。乾燥形態において、物質はin situで再水和されるであろうことが予想される。液体製剤は、例えば限定はされないが、骨空洞、生検後開口部、及び心臓の中隔欠損症などの組織の空洞に導入され得る。液体製剤は、例えば、限定はされないが、胸部、唇、及びほうれい線など現存する構造体の形状又は形態を増補するように導入され得る。また、液体製剤は、限定はされないが、神経血管及び末梢血管動脈瘤、子宮筋腫、転移性及び良性腫瘍、並びに静脈瘤の治療のための塞栓としても使用され得る。液体製剤は、手術後の目に対する保護、潤滑、及び緩衝を提供するために使用され得る。液体製剤は、薬、生物学的及び生体模倣物質の送達又は塗布のための方法として使用され得る。また、液体製剤は、限定はされないが、硬膜へのアクセス(access)、脊椎へのアクセス(access)、又は血管系へのアクセス(access)などの処置のためのシーラントとして有用である。
【0088】
本発明に記載されている組成物は、硬化された又は実質的に完全に架橋された物質として塗布され、それは、水和されていともいなくともよい。本発明のこの実施形態の使用分野としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:予め成形された接着性バッキングを有する被覆又はそれを有さない被覆(一般に帯具の形態で使用される)として創傷治癒、神経血管又は末梢動脈瘤、子宮筋腫、転移性及び良性腫瘍若しくは静脈瘤の治療のための固体塞栓として、2つ以上の組織又は物質の間をつなぐための接着剤として、補聴器などのインプラントを組織に付けるための接着剤、並びに薬物送達の方法として。水和されていない、硬化された(実質的に完全に架橋された)物質は、それに続いて加工(例えば、口絞(necking)、延伸、成形、切断など)され、その他の所望の特性を獲得し得る。これらの加工された物質は、本願明細書において述べられた適用に使用され得る。例えば、ヒドロゲルは、チューブとしてキャストされ、最小限に侵襲的及び経皮カテーテルに基づいた医療技術の分野で通常望まれる、堅い内腔又は限られた空間への挿入を容易にする縮小された直径又は外形に狭められ得る。本実施形態が有用であろう1つの具体例は、外傷をコントロールすることであり、そこで、狭められ、キャストされた成形ヒドロゲルは、その組織と弾丸が通ったことによって形成された狭い組織創傷に挿入されるであろう。物質は、文民の環境では救急治療室技術者、又は軍人の環境では医師によって、患者のより安定した医療治療環境への移動を容易にする速効性止血バンドとして挿入され得るであろう。また、別の例として、神経血管の動脈瘤の処置が考えられ、そこでは、水和されていない、硬化された物質は狭められて、介入的(interventional)神経放射線学的治療に通常使用されるミクロカテーテルを内腔の間の通過及び送達することを容易にするであろう。その後、硬化された、狭められたヒドロゲルは、現代の金属製着脱可能コイルに類似した(similar to contemporary metallic detachable coils)動脈瘤におかれ、動脈瘤の閉鎖又は除外を容易にするであろう。
【0089】
本発明に記載されている、硬化された(完全又は部分的に架橋された)組成物は、粉末として配合され得る。粉末は、注射器と注射器との混合、又は物質のサイズを所望の粒径にまで減少するために使用され得るその他の方法を通じて、破砕、粉砕、細断、凍結粉砕、断片化されることによって加工される。加工は、物質が、水和された、部分的に水和された又は水和されていない形態である間に実施され得る。あるいは、スプレー乾燥は、高温ガスを使って、前記組成物の細かい粉末を得るように使用され、前記組成物のスラリーをアトマイザー又はスプレーノズルから強く押し得る。スラリーは、未反応状態、部分的に反応した又は完全に反応した状態で、前記組成物の構成要素を含み得る。場合によっては、個々の組成物の要素は、別々の供給ラインを通してアトマイザー又はスプレーノズルに導入され、アトマイザー又はスプレーノズルを通る前に架橋反応が開始されることを防止し得る。部分的に架橋された実施形態は、次のin situ又は局所反応に、特に適しており、そこで反応は、限定はされないが、以下を可能にする:シーラントとして作用すること、塞栓剤として作用すること、止血剤として作用すること、表層コーティングとして作用すること、潤滑剤として作用すること、接着剤として作用すること、空洞充てん剤として作用すること、空間充てん剤として作用すること、又は本明細書にて取り扱われるその他の適用。この実施形態は、止血特性をもつ局所包帯として適用を有し得る。
【0090】
本発明に記載されている組成物は、再水和された粉末として適用され得る。再水和された粉末は、注射器と注射器との混合、又は物質のサイズを所望の粒径にまで減少するために使用され得るその他の方法を通じて、破砕、粉砕、細断、凍結粉砕、断片化され、その後に再水和され、硬化された(部分的にまたは完全に架橋された)ヒドロゲル物質から構成され得る。この実施形態は、以下の例示的領域において適用を有し得る:糖尿病性潰瘍の治療、洞及び粘膜病変の治療、塞栓剤として、腱、靭帯又は胸膜インタフェースの保護コーティングとして、薬物送達の方法として、組織増補の方法(皮膚充てん剤、声帯ヒダ充てん剤など)として、豊胸手術の充てん剤として、並びに骨に留置するため及び骨の間などの空洞を埋めるために使用されるものなど吸収性インプラント用充てん剤としてであり、これらは、米国特許出願公開2006/0241777号に教示されており、参照してそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
キット
対象となる方法の実施に使用するキットもまた提供され、そのキットは、典型的に、上記の通り、前記組成物の異なる基材及び架橋剤構成要素を含む。基材及び架橋剤構成要素は、キット中で別々の容器で存在する場合があり、例えば、基材は第1の容器に存在し、架橋剤は第2の容器に存在するなどで、ここで容器は、一体となった構成中に存在してもしなくてもよい。基材及び架橋剤組成物のための必須の緩衝溶液は、更なる、別の容器にて提供され得る。容器とは、本発明のヒドロゲル組成物の構成要素を、保持又は包囲し得る任意の構造体を指すと理解され、例示的な容器としては、注射器、バイアル、袋、カプセル、カープル、アンプル、カートリッジなどが挙げられる。容器は、付加的な構成要素(例えば、注射器を取り囲むホイルポーチ(foil pouch))を使用すること、若しくは容器自体の材料の性質(例えば、琥珀ガラスバイアル又は不透明な注射器)を選択することを通して、可視光線、紫外線、若しくは赤外線から保護されてもよい。
【0092】
また、対象のキットは、基材と架橋組成物とをともに混合して本発明の組成物を作成するための混合装置も含み得る。キットは、(混合要素を含んでも含まなくてもよい)送達装置を更に含むことがあり、例えば、カテーテル装置(例えば、同一又は異なったサイズ及び形状をもつ1つ以上の内腔や、様々な形状、寸法、及び様々な位置の出口点を有するチューブ)、類似又は異なる直径及び容積の注射器(類)、噴霧要素、逆止め弁、ストップコック、Y型コネクタ、空気抜き要素(例えば、患者に送達する前に液体溶液から空気の除去を可能にする膜)、強制的な空気の流れを導入するための引き込み口又はチャンバ、長期にわたるヒドロゲル組成物の堆積を考慮した使い捨てカートリッジ、アプリケータ又はスプレッダ、本発明の組成物の送達における機械的な有利点を実現する組立体、前記の構成部品を保護及び含有する筐体又は包装などがある。
【0093】
キットは、更に、他の構成要素を含んでもよく、例えば、乾燥剤またはキットの含水量のコントロールを維持するその他の手段、酸素スクラバー又はキット内の酸素含有量の制御を維持するその他の手段、不活性ガス雰囲気(例えば窒素又はアルゴン)、キットが経る最大温度を伝達するインジケーター類、滅菌放射線、酸化エチレン、オートクレーブ条件などへの露出を伝達するインジケーター類、構成要素への損傷を防ぎ、製品の輸送及び保存中に良好な状態に維持するのに必要とされる保持構造又は位置決め構造(例えば、トレイ類又は包装カード(packaging card))がある。
【0094】
本発明のヒドロゲル組成物の展開及びin situ形成のためのキットの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
2つの密封されたバイアル、1つは求核性構成要素(類)を含みもう1つは親電子性構成要素(類)を含む、2つの注射器、1つは求核性構成要素(類)用緩衝液を含み、もう1つは親電子性構成要素(類)用緩衝液を含む、注射器を入れて固定するケース、バイアルを収容し固定するケース、及び注射器とバイアルが合わされる際に、バイアルの隔壁を刺すように位置づけられた針を保持するバイアルを筐体内のコネクタ要素。使用者は、2つのケースを合わせ(針をそれぞれの隔壁に押し通し)、バイアルに緩衝溶液を注入し、溶解された溶液を注射器に引くことによって注射器を充てんする。そのあと、必要に応じて、使用者は送達装置を注射器に付けてもよい(包括的でないリストに関して、上記例示的送給装置要素を参照)。
【0095】
ヒドロゲル製剤のin situ送達及び形成のための第2のキットは、2つの二重室混注射器(dual chamber mixing syringes)(例えば、Vetter Lyo−Ject(登録商標))、1つの注射器は、核性粉末及び求核性緩衝液を含み、もう1つは親電子粉及び親電子緩衝液を含む、並びに2つの二重室注射器(dual chamber syringe)を収容する注射器ケースから構成され得る。使用者は、注射器のプランジャを押し、近位のチャンバから遠位の粉末チャンバへ緩衝液を移し、粉末を再溶解する。そのあと、必要に応じて、使用者は送達装置を注射器に付けてもよい(包括的でないリストに関して、上記例示的送給装置要素を参照)。
【0096】
ヒドロゲル製剤のin situ送達及び形成のための第3のキットは、適切な緩衝液で再溶解された求核性基材を含む注射器、親電子性基材粉末を含む密閉されたバイアル、親電子性緩衝液を含む第2の注射器、注射器を入れて固定するケース、単一バイアルを収容し固定するケース、及び注射器ケースとバイアルケースが合わされる際に、バイアルの隔壁を刺すように位置づけられた針を保持するバイアルを筐体内のコネクタ要素から構成され得る。使用者は、2つのケースを合わせ(針を隔壁に押し通し)、バイアルに親電子性緩衝溶液を注入し、溶解された溶液を注射器に引くことによって注射器を充てんする。そのあと、必要に応じて、使用者は送達装置を注射器に付けてもよい(包括的でないリストに関して、上記例示的送給装置要素を参照)。
【0097】
ヒドロゲル製剤のin situ送達及び形成のための第4のキットは、適切な緩衝液で再溶解された求核性基材を含む注射器、及び凍結乾燥させた親電子性粉末を含む密閉された一方向逆止め弁によって隔たれたチャンバから構成され得る。注射器を押し出すことによって、求核性物質溶液が、親電子性物質粉末チャンバに導入され、速やかに親電子性物質を再溶解して、架橋反応を開始する。注射器を継続して押しことによって、活性化された溶液は、粉末チャンバから、附属構成要素(例えば、上記に列挙されているように、混合要素、カニューレ、又はスプレー先端部など)へと押される。
【0098】
ヒドロゲル製剤のin situ送達及び形成のための第5のキットは、2つの注射器、1つは適切な緩衝液で再溶解された求核性基材を含み、もう1つは適切な緩衝液で再溶解された親電子基材を含む、及び注射器ケースから構成され得る。そのあと、必要に応じて、使用者は送達装置を注射器に付けてもよい(包括的でないリストに関して、上記例示的送給装置要素を参照)。
【0099】
ヒドロゲル製剤のin situでの送達及び形成のための第6のキットは、乾燥形態の多糖類基材、生理学的に許容可能なポリマー基材、架橋組成物、及び適切な緩衝塩を含むスポンジ又は綿棒から構成され得る。使用者は、綿棒を生理食塩水で湿らせ、湿らせた綿棒で標的組織又は標的領域にわたって拭くことによって、硬化されたヒドロゲル製剤の1つの層を堆積させることができる。食塩水は綿棒に4つの構成要素を再溶解し、架橋反応を開始する;この反応は、活性化された構成要素が標的に堆積された後、完了し、架橋されたヒドロゲル製剤の形成をもたらす。あるいは、反応は、4つの構成要素を含む綿棒を目の角膜などの湿った組織表面と接触させることによって推し進められ得る。
【0100】
その他のキットは、使用者へ出荷される前に硬化されたヒドロゲル製剤の使用を想定され得る。以下の例は非限定的であり、ヒドロゲル組成物をキットとすることの潜在性を示すことを意図する。
【0101】
1つの実施形態では、硬化、乾燥、及び断片化したヒドロゲル製剤を収容する容器が提供される。粉末を再水和するのに適切な緩衝液を含む注射器が供給される。注射器は、断片化したヒドロゲルの容器に連結され、緩衝液が容器に導入され、断片化したヒドロゲルが再水和される。再水和されたヒドロゲル製剤は、注射器に引き上げられ、使用者は、先に記載されている例示的な装置の要素のいずれかに注射器をつなげることができる。
【0102】
第2の実施形態では、硬化、乾燥及び断片化したヒドロゲル製剤及び適切な緩衝溶液ともに二重室注射器(dual chamber syringe)にて提供される。使用者は、注射器プランジを押し下げること、及び乾燥したヒドロゲル断片と緩衝溶液を混合することによって乾燥したヒドロゲル断片を再水和する。使用者は、先に記載されている例示的な装置の要素のいずれかに注射器をつなげることができる。
【0103】
第3実施形態では、硬化、乾燥、及び断片化したヒドロゲル製剤が、再水和された状態で注射器にて提供される。そして、使用者は、先に記載されている例示的装置要素のいずれかに注射器をつなげることができる。
【0104】
第4の実施形態では、硬化、乾燥、及び断片化したヒドロゲル製剤は、標的部位に直接適用するために、袋又は容器にて提供される。
第5の実施形態では、硬化されたヒドロゲルは、乾燥され、いかなる形態又は形状で提供され得る。例えば、硬化済されたヒドロゲルは、カテ−テルを通して挿入するための細いシリンダー;同じ形態のヒドロゲルが提供され、それは、カテ−テル、又は神経血管カテーテルに挿入することを意図されたカートリッジに入れられる。あるいは、硬化されたヒドロゲルは、鼻腔に挿入するためのらせん状又は円錐形のらせん状のものとして提供され、鼻弁の崩壊を防止し、気道開存性を維持し得る。別の例では、硬化されたヒドロゲルは、参照して、その全体が本願明細書にみ込まれる米国特許6322590号に教示されるように、気管又は鼻道の崩壊の防止、又は体内腔の内面間の癒着形成の防止のための編みステントとして提供され得る。更に別の例では、硬化されたヒドロゲルは、帯具又は包帯として使用するためにシートとして提供され得る。更に別の例として、凍結乾燥されたヒドロゲル製剤は、帯具又は包帯として使用するために粘着フィルムに取り付けられ得る。更なる例では、ヒドロゲルは、神経血管性動脈瘤への挿入のためにコイル状のワイヤ上にコーティングされ乾燥され得る。動脈瘤内で血液にさらされた時、ヒドロゲルコーティングは、膨張し、コイル自身又はコイル及び乾燥ヒドロゲルの合わせた空間よりかなり大きい空間を塞ぐ。
【0105】
第6の実施形態では、硬化されたヒドロゲルは、乾燥及び再水和され、いかなる形態又は形状で提供され得る。例えば、再水和されたヒドロゲルは、湿った損傷被覆として使用するためシートにて提供され得る。別の例では、再水和されたヒドロゲルは、包帯又は湿った損傷被覆として粘着フィルムに付けられ得る。
【0106】
第7の実施形態では、硬化されたヒドロゲルは、ヒドロゲルの分解を速めるようにpH平衡された生理食塩水洗浄液を有するキットにて提供され得る。例えば、凍結乾燥されたヒドロゲルは、生理食塩水洗浄液の使用によって凍結乾燥されたヒドロゲルを含まない洗浄液の分解速度に対してより速いシートの分解をもたらす、癒着防止に使用するためのシートとして提供され得る。
【0107】
前記の構成要素に加えて、対象のキットは、典型的に、キットの構成物を使用して目的の方法を実行するための取り扱い説明書を更に含む。目的の方法を実行するための取り扱い説明書は、一般に適切な記録媒体に記録されている。例えば、取り扱い説明書は紙又はプラスチックなどの基材に印刷され得る。従って、取り扱い説明書は、パッケージ内挿入物としてキット中にあったり、キットの容器又はキットの構成物のラベルにあったりする(即ち、包装又は副包装(subpackaging)に付いている)ことがある。他の実施形態では、取り扱い説明書は、適切なコンピュータで読み込み可能な記憶媒体上の、例えばCD−ROM、ディスケットなど電子的記憶データファイルとして存在する。更に他の実施形態では、取り扱い説明書の実物はキットに存在しないが、例えば、インターネットをするなど、経由、遠く離れたところから取り扱い説明書を得るための手段が提供される。本実施形態の一例は、取り扱い説明書を見ることができるウェブアドレス、及び/又はそこから取り扱い説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。取り扱い説明書と同様に、取り扱い説明書を得るための手段は、適当な基材に記録される。
【0108】
実施例
以下の実施例は、いかにして本発明を作製および使用するかに関する、完全な開示および記述を当業者に提供するために提示するものであり、発明者らが、その発明として考えている範囲を限定するのものでも、あるいは下記の実験が実施されたすべての実験であること、もしくはそれら以外の実験が行われなかったことを発明者らが表すものでもない。数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にする努力はしているが、いくつかの実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。他に示さない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、及び圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0109】
実施例1
キトサンに対してポリエチレングリコールが10:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。等量のホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、キトサン溶液と混合した。1時間経過後、堅い、透明なヒドロゲルが形成した(
図4)。
【0110】
実施例2
実施例1に記載の通り作製したヒドロゲルを3つのサンプルに分け、秤量し、37℃のリン酸緩衝食塩水に入れた。24時間経過後、サンプルを秤量して、その間の膨張量を次式より算出した:100*(m24−m0)/m0、式中、 m0は時間ゼロにおけるサンプルの質量、及びm24は24時後のサンプルの質量である。ヒドロゲルは、24時間で平均143%膨張した。
【0111】
実施例3
キトサンに対してポリエチレングリコールが10:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。等量の4%グルタルアルデヒド(GA)を含むリン酸ナトリウム緩衝液を、キトサン溶液と混ぜ合わせた。1時間経過後、堅い、黄褐色のヒドロゲルが形成した(
図5)。
【0112】
実施例4
カルボキシメチルセルロース(CMC)に対してポリエチレングリコールが4:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でカルボキシメチルセルロースと混ぜ合わせた。等量のホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが1:1の割合で、カルボキシメチルセルロース溶液と混合した。1時間経過後、柔らかい、透明なヒドロゲルが形成した(
図6)。
【0113】
実施例5
キトサンに対してポリエチレングリコールが5:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。等量のホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、キトサン溶液と混合した。1時間経過後、堅い、透明なヒドロゲルが形成した。ヒドロゲルを恒量まで乾燥し、凍結破砕加工で微粒子に破砕した。凍結破砕された微粒子のイメージを
図7に示す。
【0114】
実施例6
キトサンに対してポリエチレングリコールが5:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。等量のホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、キトサン溶液と混合し、その混合した溶液を、約3mmの深さまでトレイにキャスティングした。サンプルを凍結乾燥に供し、大きなサンプルから1cm×1cmのサンプルに切った。物質は、スポンジ又は高密度のガーゼの堅さを有し、顕著に損傷したり裂けたりすることなく、丸める、圧をかける、折るなどの操作で取り扱うことができた。
図8は、丸めて、ピンセットでつまんだサンプル物質を示す。
【0115】
実施例7
キトサンに対してポリエチレングリコールが15:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。等量のホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、キトサン溶液と混合し、その混合した溶液を、直径約0.25インチの円柱形鋳型にキャスティングした。前記組成物を硬化させ、それから鋳型から取り出し、恒量及び外径0.114インチまで空気乾燥した。口絞加工を経て、棒の直径を、キャスティング寸法から更に0.033インチまで減らした。その狭めた棒のサンプルを、0.5インチの長さに切り、水中に置き;サンプルの質量、長さ、直径を経時的に追った。水にさらして約24時間で、サンプルは、質量1285%増加、長さ44%増加、直径481%増加を示した。
図9は、乾燥及び水和状態における物質のサンプルを示す。
【0116】
実施例8
キトサンに対してポリエチレングリコールが5:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、着色剤としてメチレンブルーを含むホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。この溶液を1ミリリットル注射器にいれた。ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、等量のリン酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、第2の1mm注射器にいれた。注射器を、注射器のハンドル(syringe handle)、オーバーロード(overmolded)コネクタ、混合要素、及びスプレー先端部につなげた。送達システムを使って、ヒトの手にヒドロゲル組成物の薄い、統一性が保たれた(conformable)コーティングを塗布し、それは、塗布数秒以内で硬化した。コーティングは、垂直方向に保った時皮膚に付着でき、掌の曲げにも破裂したりや亀裂を生じることなく持ちこたえることができた(
図10)。
【0117】
実施例9
キトサンに対してポリエチレングリコールが9:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。この溶液を、二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)の2つのシリンダー(barrels)の1つにいれた。等量のエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、リン酸ナトリウム緩衝液に再溶解した。視覚化目的で、メチレンブルーをリン酸ナトリウム溶液に加え、溶液を二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)の第2のシリンダー(barrel)にいれた。二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)を、プランジャキャップ、二重注射器(dual syringe)プランジャ、及びスプレー先端部と合わせた。
【0118】
移植されたウシ腱の切片及び腱鞘の完全なままの切片を長さ約3インチに切った。約1.5インチの腱がでるまで腱を鞘から進めた。送達システムを使って、腱の外面にヒドロゲル組成物の薄い(ミリメートル未満(sub−millimeter))、統一性が保たれた(conformable)コーティングを塗布した。4秒後、腱をピンセットを使って、鞘に戻し入れた。コーティングは、滑らかで、もろくなく、20回の伸縮サイクルにわたって、完全な状態で残り、腱に付着していた。
図11は、ウシ腱の断面イメージであり、矢印はコーティングを指し示す。
【0119】
実施例10
キトサンに対してポリエチレングリコールが17:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。この溶液を、二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)の2つのシリンダー(barrels)の1つにいれた。1:42.5の熱処理したグルタールアルデヒド:ポリエチレングリコールの割合、及び1:10のデキストラン:ポリエチレングリコールの割合で、等量の熱処理したグルタールアルデヒド及びデキストランを注射用滅菌水に溶解した。熱処理したグルタールアルデヒド/デキストラン溶液を二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)の第2のシリンダー(barrel)にいれた。二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)を、プランジャキャップ、二重注射器(dual syringe)プランジャ、及びスプレー先端部と合わせた。送達システムを使って、ヒトの手にヒドロゲル組成物の薄い、統一性が保たれた(conformable)コーティングを塗布した。コーティングは、垂直方向に保った時皮膚に付着でき、掌の曲げにも破裂したりや亀裂を生じることなく持ちこたえることができた。
図12は、皮膚に付いているコーティングの透視図を示す。
【0120】
実施例11
キトサンに対してポリエチレングリコールが9:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。等量のホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解したエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、キトサン溶液と混合し、その混合した溶液を、約3mmの深さまでトレイにキャスティングした。サンプルを凍結乾燥に供し、大きなサンプルから1cm×1cmのサンプルに切った。サンプルは、滅菌生理食塩水の溶液に置かれ、1時間膨張した。
【0121】
同時に、ホウ酸ナトリウム緩衝液中のFD&C 青色1号のアルカリ性溶液中で、キトサンに対してポリエチレングリコールが22:1の割合でキトサンと混ぜ合わせたアミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールの溶液を作ることによって、前記組成物のスプレーコーティングの塗布のためのキットを準備した。この溶液を、二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)の2つのシリンダー(barrels)の1つにいれた。等量のエステル活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、リン酸ナトリウム緩衝液に再溶解した。二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)を、プランジャキャップ、二重注射器プランジャ(dual syringe)プランジャ、及びスプレー先端部と合わせた。
【0122】
再水和したヒドロゲルを滅菌生理食塩水から取り出し、二重注射器アプリケータ(dual syringe applicator)を使って、ヒドロゲル表面上に組成物のin−situ架橋形態のコーティングを塗布した。
図13は、コーティングしたヒドロゲルの断面図と参照用の定規を示し;定規の目盛りは、ミリメートルである。コーティングは、ヒドリゲルの表面に付いて、一体化しているようであり、ゆがめたり(flexed)曲げたりした時、剥離したり裂けたりしなかった。
図14は、ピンセットでつまんだ、二つ折りにしたコーティングしたヒドロゲルの断面を示す。コーティングしたヒドロゲルを、24時間、滅菌生理食塩水に戻した。この時間の終わりには、目視検査で顕著な程度までヒドロゲルコーティングは膨張していたが、コーティングは、裂けたり、剥離したり、裂け目やでこぼこを生じたりしていなかった。
【0123】
実施例12
キトサンに対してポリエチレングリコールが9:1の割合で、アミン活性基をもつ多腕ポリエチレングリコールを、ホウ酸ナトリウム緩衝液中でキトサンと混ぜ合わせた。ポリエチレングリコールアミンに対してポリエチレングリコールエステルが2:1の割合で、ホウ酸ナトリウム緩衝液に再溶解した、等量のエステル活性基をもつ多腕のポリエチレングリコールを、キトサン溶液と混合し、その混合した溶液を、円柱形鋳型にキャスティングした。混合した溶液の容積は、鋳型の容積より少なかった。鋳型を、旋盤に固定し、回転して、鋳型の内壁を溶液でコーティングした。ヒドロゲルが硬化した時、鋳型を旋盤から取り外し、開けて、ヒドロゲルを乾燥させ、中空の風船様構造を形成させた。
図15は、乾燥期間の終わりのヒドロゲルの構造を示す。
【0124】
前述の記載は本発明の原理の単なる例示である。当然のことながら当業者は、本明細書において明記又は明示されていないが、本発明の原理を具現化し、その精神及び範囲に含まれる様々な配置を設計できる。さらに、本明細書で引用されるすべての例及び条件付き言語は、原則として、本発明の原理及び当該技術の推進に対して本発明者が寄与した概念について読者の理解を助けることを目的とし、そのような特異的に引用された例及び条件に限定されないと解釈される。その上、本明細書において本発明の原理、側面、及び実施形態を引用するすべての記述、及びその特定例は、その構造的及び機能的相当物を含むことを意図する。更に、そのような相当物は、現在知られている相当物及び将来開発される相当物、例えば構造にかかわらず同一機能を実行する任意の開発要素をどちらも含むことを意図する。従って、本発明の範囲は、本明細書に図示及び説明される典型的な実施形態に限定するものではない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の請求項により具現化される。