【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0036】
実施例1
硝酸銀0.124gに水37.5gを加え、攪拌して硝酸銀水溶液とし、この水溶液にYMn
2O
5からなる担体粉末1.5gを投入し、30分間攪拌した。得られたスラリーを直径25.4mm×長さ76.2mmのコージェライト製パティキュレートフィルター上にコートさせた。これを120℃で3時間乾燥した後、空気中600℃で1時間焼成した。得られたパティキュレートフィルター形状の排ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5質量%であった。
【0037】
実施例2
水30gにYMn
2O
5からなる粉末1.5gを投入し、30分間攪拌した。得られたスラリーを用いて直径25.4mm×長さ76.2mmのコージェライト製パティキュレートフィルター上にYMn
2O
5をコートさせた。これを120℃で3時間乾燥した後、空気中600℃で1時間焼成してパティキュレートフィルター形状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0038】
実施例3
硝酸マンガン(II)六水和物を5倍質量の水に溶解させた溶液にYMn
2O
5を分散させ、撹拌しながら200℃で加熱、乾燥させた。その後、大気中、600℃で2時間焼成し、Mn担持YMn
2O
5粉末を得た。この場合にMnの担持量が金属Mn+担体の合計質量基準で5.57質量%となるようにした。このMn担持YMn
2O
5粉末6.08gに水30gを加え、30分間撹拌してスラリーとした。得られたスラリーを直径25.4mm×長さ60mmのコージェライト製ハニカムにコートした。これを120℃で3時間乾燥した後、空気中、500℃で1時間焼成した。コージェライト製ハニカムに担持されたMn担持YMn
2O
5の量は、ハニカム容積1Lあたり200gであった。
【0039】
実施例4
YMn
2O
5粉末6.08gに水30gを加え、30分間撹拌してスラリーとした。得られたスラリーを直径25.4mm×長さ60mmのコージェライト製ハニカムにコートした。これを120℃で3時間乾燥した後、空気中、500℃で1時間焼成した。コージェライト製ハニカムに担持されたYMn
2O
5の量は、ハニカム容積1Lあたり200gであった。
【0040】
実施例5
硝酸銀を水30gに溶解させた溶液にYMn
2O
5を分散させ、撹拌しながら200℃で加熱、乾燥させた。その後、大気中、600℃で2時間焼成し、Ag担持YMn
2O
5粉末を得た。この場合にAgの担持量が金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%となるようにした。このAg担持YMn
2O
5粉末6.08gに水30gを加え、30分間撹拌してスラリーとした。得られたスラリーを直径25.4mm×長さ60mmのコージェライト製ハニカムにコートした。これを120℃で3時間乾燥した後、空気中、500℃で1時間焼成した。コージェライト製ハニカムに担持されたAg担持YMn
2O
5の量は、ハニカム容積1Lあたり200gであった。
【0041】
比較例1
実施例2に記載の製造方法においてYMn
2O
5の代わりにCeO
2(30質量%)−ZrO
2(70質量%)を用いた以外は実施例2と同様に処理してパティキュレートフィルター形状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0042】
比較例2
実施例2に記載の方法においてYMn
2O
5の代わりにAl
2O
3を用いた以外は実施例2と同様に処理してパティキュレートフィルター形状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0043】
<酸素吸蔵性の評価>
実施例1〜2及び比較例1〜2において得られた各々の試料粉末25mgを反応器に充填し、600℃にて酸素雰囲気下で10分間処理して清浄表面とした。その後、50%O
2/Heガス及びH
2ガスを用いて200〜600℃の温度範囲で酸素吸蔵能(OSC)を測定した。OSCは、試料粉末1g当たりのO
2吸蔵量(μmol/g)として評価した。試料粉末1g当たりのO
2吸蔵量(μmol/g)と温度との相関関係は第1表に示す通りであった。
【0044】
【表1】
【0045】
第1表に示すデータから明らかなように、本発明の実施例1〜2に係る試料粉末は、比較例1〜2に係る試料粉末と比較して酸素吸蔵性に優れたものであった。
【0046】
<昇温反応法(TPR)による評価>
実施例1〜2及び比較例1〜2において得られた各々の試料粉末200mgとカーボン20mg(デグサ社製、Printex−V、トナーカーボン)とをメノウ乳鉢で10分間混合し、この混合物から20mgを分取し、石英反応管の中央部に石英ウールを使って固定した。下記組成の流通ガスを下記の流量で流しながら電気炉によってその石英反応管の温度を下記の昇温速度で昇温させながら出口側でのCO及びCO
2の濃度を赤外線分析計で測定した。このCOの濃度とCO
2の濃度との和が30ppmになった時の触媒入り口側の温度(電気炉制御温度)をTig(燃焼開始温度)とした。
ガス組成:O
2:10%、N
2:残余
流量:400cc/min
昇温速度:10℃/min
【0047】
実施例1〜2及び比較例1〜2に係る試料粉末のTPRの評価結果は第2表に示す通りであった。
【0048】
【表2】
【0049】
第2表に示すデータから明らかなように、Agを担持している本発明の実施例1に係る試料粉末は、Agを担持していない本発明の実施例2に係る試料粉末と比較してTPRの評価において優れたものであった。
【0050】
<排ガス浄化性能試験>
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5及び比較例1で得られた各々の排ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った。その後、それらの排ガス浄化用触媒を別々にモデルガス測定装置(堀場製作所製MEXA−7500D)に装填し、下記の第3表に示す組成の排気モデルガスを空間速度29000/hで流通させながら、600℃から17℃/分の降温速度で降温させ、CO、HC浄化率を連続的に測定した。COの浄化率は
図1及び
図3に示す通りであり、HCの浄化率は
図2及び
図4に示す通りであった。
【0051】
【表3】
【0052】
図1及び
図2に示すグラフから明らかなように、CeO
2−ZrO
2を用いた場合よりもYMn
2O
5を用いた場合に浄化性能が優れており、YMn
2O
5を用いた場合よりもAg/YMn
2O
5を用いた場合に浄化性能が優れている。また、
図3及び
図4に示すグラフから明らかなように、YMn
2O
5を用いた場合よりもAgやMnをYMn
2O
5に担持させることによって浄化性能を高めることができる。
【0053】
実施例6〜10
Y
2O
3及びLu
2O
3を下記第4表の割合で溶解した硝酸溶液と、下記第4表の硝酸マンガン溶液とを混合し、500mLとした溶液に、2.5%NH
3水溶液359.2mLと、30%過酸化水素水17mLとを加え、沈殿を生成した。続いて、沈殿物をろ過し、洗浄した後、120℃で一晩乾燥させた。その後、大気中、600℃で5時間焼成し、さらに、800℃で5時間焼成し、LuドープYMn
2O
5粉末(実施例6についてはLu未ドープ)を得た。
【0054】
硝酸銀0.124gに水37.5gを加え、攪拌して硝酸銀水溶液とし、この水溶液に、各LuドープYMn
2O
5粉末を1.5gを投入し、加熱して水分を揮発させた。得られた粉末を、120℃で2時間乾燥した後、空気中600℃で1時間焼成し、実施例6〜10の排ガス浄化用触媒を得た。得られた排ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0055】
<固定床模擬ガス浄化性能評価試験1>
実施例6〜10の排ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った。その後、実施例6〜10で得られた各々の排気ガス浄化用触媒の触媒活性を以下のようにして評価した。
【0056】
まず、固定床流通型反応装置を用い、反応管に触媒粉を0.1gセットし、上記第3表の組成から成る模擬排気ガスを1L/minで流通させ、500℃まで昇温後10分間保持し、前処理を行った。その後、一旦冷却後、100℃〜500℃まで10℃/minで昇温し、100〜500℃における出口ガス成分をCO/HC/NO分析計を用いて測定した。得られたライトオフ性能評価結果より、CO及びHCの50%浄化率に到達する温度(T50)を求めた。その結果は第4表に示す通りであった。
【0057】
第4表には、耐久処理後の比表面積(BET法で測定)をあわせて示す。
【0058】
この結果、実施例7〜10に係るYの一部をLuで置換した排ガス浄化用触媒については、Luドープ量が多くなるほどT50が低下していき、ドープ量が0.2(Y:Lu=8:2)の実施例9で最も良好な結果を示すことがわかった。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例11〜16
Y
2O
3を下記第5表の割合で溶解した硝酸溶液と、第5表に示した濃度の水酸化カルシウム硝酸溶液と、下記第5表の硝酸マンガン溶液とを混合し、500mLとした溶液に、2.5%NH
3水溶液350.4mLと、30%過酸化水素水17mLとを加え、沈殿を生成した。続いて、沈殿物をろ過し、洗浄した後、120℃で一晩乾燥させた。その後、大気中、600℃で5時間焼成し、さらに、800℃で5時間焼成し、CaドープYMn
2O
5粉末(実施例11はCa未ドープ)を得た。
【0061】
硝酸銀0.124gに水37.5gを加え、攪拌して硝酸銀水溶液とし、この水溶液に、各YMn
2O
5粉末を1.5gを投入し、加熱して水分を揮発させた。得られた粉末を、120℃で3時間乾燥した後、空気中600℃で1時間焼成し、実施例11〜16の排ガス浄化用触媒を得た。得られた排ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0062】
<固定床模擬ガス浄化性能評価試験2>
実施例11〜16の排ガス浄化用触媒について、固定床模擬ガス浄化性能評価試験1と同様に試験し各々の排気ガス浄化用触媒の触媒活性を以下のようにして評価した。得られたライトオフ性能評価結果より、CO及びHCの50%浄化率に到達する温度(T50)を求めた。その結果は第5表に示す通りであった。
【0063】
第5表には、耐久処理後の比表面積(BET法で測定)をあわせて示す。
【0064】
この結果、実施例11〜16に係るYの一部をCaで置換した排ガス浄化用触媒についてもCaドープ量が多くなるほどT50が低下していき、ドープ量が0.1(Y:Ca=9:1)の実施例15で最も良好な結果を示すことがわかった。
【0065】
【表5】
【0066】
実施例17〜20
Y(1−x)BixMn
2O
5のx=0、0.1、0.2及び0.3となるように、所定量の硝酸イットリウム、硝酸ビスマス及び硝酸マンガンをそれぞれ秤量後、16モル倍のイオン交換水に投入し、溶解した。各溶液に、6モル倍のクエン酸を入れ、攪拌し、温度を80℃まで昇温してクエン酸を完全に溶解させる。次に、各溶液を150℃の炉で蒸発乾固し、続いて、350℃で2時間一次焼成を行い、さらに、800℃で2時間二次焼成を行い、実施例17〜20の排ガス浄化用触媒を得た。なお、実施例18〜20の排ガス浄化用触媒は、BiドープYMn
2O
5である。
【0067】
<昇温脱離法による評価>
実施例17〜20の排ガス浄化用触媒をそれぞれ100mg秤量し、前処理として、100mL/minで大気を導入した雰囲気下で、室温から10℃/minで700℃まで昇温し、その後、同じ雰囲気で50℃まで放冷した。
【0068】
各サンプルについて、昇温脱離法(TPD)により、酸素放出ピーク温度を測定した。測定条件は、2%H
2含有Heを50mL/min導入した雰囲気下で、50℃から700℃まで10℃/minで昇温し、放出されたガスの質量を測定し、酸素放出のピーク温度(℃)を求めた。結果は下記第6表に示す。
【0069】
この結果、Yの一部をBiで置換した実施例18〜20のBiドープYMn
2O
5からなる排ガス浄化触媒は、Biがドープされない実施例17と比較してより低温で酸素を放出できることがわかった。
【0070】
【表6】
【0071】
実施例21
硝酸銅を所定量秤量し、適量のイオン交換水に入れて攪拌し、溶解させた。硝酸銅が完全に溶解した後、所定量のYMn
2O
5粉末を投入し、攪拌して分散させる。次いで、60℃で真空脱気を行い、蒸発乾固させ、600℃で2時間焼成を行い、5質量%Cu担持YMn
2O
5粉末を得た。
【0072】
<固定床模擬ガス浄化性能評価試験3>
実施例21の排ガス浄化用触媒について、固定床模擬ガス浄化性能評価試験1と同様に試験し各々の排気ガス浄化用触媒の触媒活性を以下のようにして評価した。得られたライトオフ性能評価結果より、CO及びHCの50%浄化率に到達する温度(T50)を求めた。その結果は第7表に示す通りであった。
【0073】
この結果、実施例21に係るCu担持YMn
2O
5も浄化性能を発揮することがわかった。なお、実施例21は測定条件が異なるため、他の実施例と単純な比較はできない。
【0074】
【表7】
【0075】
実施例22〜24
実施例6の合成方法で得られたYMn
2O
5と、これと同様な方法でY/Mnが1/1になる様にして合成して得られたYMnO
3とを、第8表に示す比率で混合し、マンガン酸イットリウム担体の混合物(実施例22はYMnO
3未混合)を得た。
【0076】
次に、硝酸Ag0.124gに水37.5gを加え、攪拌して硝酸Ag水溶液とし、この水溶液に上記のYMn
2O
5とYMnO
3との混合物1.5gを投入し、加熱攪拌して水分を揮発させた。得られた粉末を120℃で3時間乾燥した後、空気中600℃で2時間焼成し、排ガス浄化用触媒を得た。得られた排ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0077】
<固定床模擬ガス浄化性能評価試験4>
実施例22から24の排ガス浄化用触媒について、固定床模擬ガス浄化性能評価試験1と同様に試験し各々の排気ガス浄化用触媒の触媒活性を以下のようにして評価した。得られたライトオフ性能評価結果より、CO及びHCの50%浄化率に到達する温度(T50)を求めた。その結果は第8表に示す通りであった。
【0078】
第8表には、耐久処理後の比表面積(BET法で測定)をあわせて示す。
【0079】
この結果、YMnO
3未混合のYMn
2O
5である実施例22が最も良好な排ガス浄化性能を示したが、YMnO
3を混合した実施例23、24も、概ね同様の排ガス浄化性能を示すことがわかった。これは、YMn
2O
5固有の優れた排ガス浄化性能による効果は勿論、YMn
2O
5が比較的に高い比表面積を得られやすいことにも起因するものと思われる。なお、実施例22〜24の測定条件は他と異なるため、他の実施例と単純な比較はできない。
【0080】
【表8】