(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フローチャネル(3、4)における前記凝縮器(8)の熱交換面の配分比率は、前記空気ガイド装置(27、28)によって無段で変更可能である請求項1記載の空調システム(1)。
各フローチャネル(3、4)は、周囲からの新気、前記客室(9)からの循環空気、又は新気と循環空気との混合気が供給可能に形成されている請求項1又は2に記載の空調システム(1)。
前記フローチャネル(3、4)は、前記フローチャネル(3、4)内の空気の主流方向が互いに平行に差し向けられるように配置されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の空調システム(1)。
前記フローチャネル(3、4)を通って流れる際に調和される空気質量流は、流路(12、17)を通じて前記客室(9)へ、及び/又は流路(11、16)を通じて周囲へ導出可能である請求項1乃至4の何れか1項に記載の空調システム(1)。
【背景技術】
【0002】
以前から従来技術に属する自動車の空調設備は、慣習的に車両の正面に配置される凝縮器、車両エンジンに接続され車両エンジンによって駆動される圧縮機、客室に配置された蒸発器、及びパイプやコネクタなどの種々異なる個別構成部品を備えている。空調設備が空気を調和し、続いて、空気が客室に導入される。圧縮機は、通例、自動車のエンジンによって、機械的エネルギーを圧縮機のシャフトへ入力することにより駆動される。冷却装置送風器とファンとは12Vの車載電源系統から給電される。設備の構成部品は、通常、車両の製造現場に個別に納品され、そこで組み立てられる。構成部品の数が多いために、いくつもの異なった組立工程が必要であるが、これらの組立工程もまた、多数の接続部に関わり、組立てを複雑にする。これに加えて、組立ての最中に作成する必要がある接続部は、漏れを招く可能性のある箇所であり、漏れが生じた場合には、非常に多くの時間と費用をかけて修正する必要がある。さらに、空調設備への冷媒の充填は、冷媒回路に関係するすべての構成部品を取付けてからしか行われない。そのことによって、車両の組立時の取付け作業がさらに複雑になる。
【0003】
車両駆動装置の効率的な内燃機関の冷却剤回路から熱出力を取り込む冷却剤・空気熱交換器を備えた同種の空調設備は、例えば−10℃未満の低い周囲温度では、車室内の快適な加熱のために必要な温度レベルに達しなくなる。ハイブリッド駆動装置を有する車両における設備についても同じことが言える。こうした車両には、補助加熱設計の使用が必要である。グリコール・空気ヒートポンプも内燃機関の冷却剤を利用するが、それは熱源としてである。その場合、熱は、冷却剤から取り出される。その結果、内燃機関は、低温でより長時間運転され、このことが排ガスの排出及び燃費に悪影響を及ぼす。ハイブリッド車では内燃機関を間欠的に作動させるので、作動時間が比較的長い場合でも冷却剤が十分に高い温度に達しない。その結果として、周囲温度が低いと内燃機関の始動・停止運転が中断される。内燃機関はスイッチオフされない。
【0004】
さらに、例えば、バッテリ又は燃料電池で駆動される車両などのように、駆動装置が完全に電化される傾向がある。その場合、空気を暖めるために可能な熱源としての内燃機関の廃熱は考えられなくなる。さらに、自動車のバッテリに蓄積可能なエネルギー量は、液体燃料の形態で燃料タンクに貯蔵可能なエネルギー量よりも少ない。従って、電気的に駆動される自動車の客室の空気を調和するために必要な出力は、自動車の走行距離に相当な影響を及ぼす。
【0005】
特許文献1(独国特許出願公開第102009028522号明細書)において、蒸発器ユニットと凝縮器ユニットと構成部品ユニットと冷媒回路とを備えた小型空調設備が記載されている。蒸発器ユニットと凝縮器ユニットとは、それぞれ、ハウジング内に配置された空気流熱交換器とファンとを有する。蒸発器と凝縮器と再熱器とを備えた冷媒回路は、冷却設備運転とヒートポンプ運転との組合せ、及び再熱運転のために形成されており、再熱運転において、凝縮器/ガス冷却器として形成された再熱器の熱出力と蒸発器の冷却出力とは互いに独立して制御可能である。空調設備の運転モードは、冷媒回路により操作される。従って、空調設備は、1つの1次回路と2つの流路から形成された2次系統とを有する冷媒回路の範囲内で能動的に切り替えることによって実現されるヒートポンプの機能を果たす。しかしながら、切替弁を有する冷媒回路の形成によって複雑度が増し、このこともまたコスト上昇と技術的手間の増加を引き起こす。
【0006】
特許文献2(仏国特許出願公開第2743027号明細書)から、蒸発器と圧縮機と凝縮器と膨張素子とを有しているだけの従来の冷媒回路を備えた車両空調設備が読みとれる。熱交換器は、少なくとも流体技術的に互いに分離して形成された別々のフローチャネルに配置されている。フローチャネルは、交差接続又はバイパスを有する。ファンによって吸入された空気質量流は、フラップを閉鎖及び開放することによって、且つ必要及び動作モードに応じてバイパスを通じて誘導されることによって熱交換器の表面に導かれる。その場合、空気質量流は冷却及び/又は除湿、もしくは加熱され、続いて客室及び/又は周囲へ導出される。
【0007】
従って、従来技術から、客室に給送されるべき、且つ調和されるべき空気を加熱、冷却、及び除湿する冷却設備運転とヒートポンプ運転との組合せのための自動車の空調設備が公知である。これらの空調設備は、冷媒回路側又は空気側で操作される。
【0008】
しかしながら、空気側で操作される空調設備によってでは、リヒートとも呼ばれる再熱モードでの運転が可能でない。付加的再熱運転のために形成された空調設備もまた、熱交換器、切替弁、及び膨張弁などの複数の構成部品を備えた複雑な冷媒回路を有する。「リヒート」もしくは再熱運転において、客室に給送された空気が冷却され、その際に除湿され、続いて、除湿された空気がわずかに加熱される。この運転モードにおいて、必要な再熱出力は、大抵の場合、空気を冷却及び除湿するために必要な冷却出力よりも小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、特に自動車において使用するための、加熱機能を有する空調システムを提供することである。冷媒回路は、最小限の数の構成部品によって形成され、従って、低コスト且つ保守の手間がかからないものでなければならない。それに加えて、空調システムは、調和されるべき客室の空気を加熱、冷却、及び除湿する、冷却設備運転とヒートポンプ運転との組合せ、並びに再熱運転のために形成されていなければならない。その場合、例えば、エネルギー効率のよい内燃機関、又は内燃機関と電気モータとからなるハイブリッド駆動装置の場合など少ない容量の熱源を有する周囲環境、あるいは、例えば、電気的に駆動される自動車の場合など、駆動装置からの熱源が無い場合にも、客室における快適な空調のすべての要求を満たす運転が可能であるべきである。
【0011】
本発明は、さらに、2つの異なった空気質量流を、これらの空気質量流が混ざり合うことなく、熱交換器の熱交換面を介して互いに分離して誘導することができる装置、及び非常に良好な制御性を可能にする空調システムを作動させる方法を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、本発明による自動車の客室の空気を調和する空調システムによって解決される。この空調システムは、空気を誘導するための第1フローチャネルと第2フローチャネルとを有するハウジングと、蒸発器と圧縮機と凝縮器と膨張素子とを有する冷媒回路とを備え、蒸発器が第1フローチャネルに配置され、凝縮器が第2フローチャネルに配置されている。
本発明の概念によれば、空調システムは、客室を冷却及び加熱する冷却設備運転と加熱運転との組合せ、並びに再熱運転のために形成されている。それぞれの運転モードの設定は、空調システムのハウジング内に配置された空気ガイド装置の操作のみによって行われ、冷媒回路の制御によってではない。
実質的に冷媒管路を介して互いに接続された蒸発器、圧縮機、凝縮器、コレクタ、及び膨張素子を有しているだけの冷媒回路は、周囲に対する動的シールを備えずに形成されており、従って技術的に漏れはない。
小型の冷媒回路は、自動車への取付け前、又は空調システムの納品前に冷媒を充填することができるという点で有利である。小型且つ事前組立可能な空調システムは、1つ又は2つのファンを有しており、ファンが2つの実施形態では、空気は、それぞれ1つのファンによってフローチャネルに供給され、ファンが1つの実施形態の場合は一緒に供給される。空調システムは、キャビンフロアの下側、自動車の前面の壁、又はトランクルームに配置することができる。
【0013】
本発明の概念によれば、熱交換器面のそれぞれ少なくとも一部分を有する熱交換器の少なくとも1つ、蒸発器、又は凝縮器が、第1フローチャネルと第2フローチャネルとに配置されている。それぞれの運転モード、すなわち冷却設備運転、加熱運転、又は再熱運転のために必要な熱交換面の配分比率は、空気ガイド装置によって空気を供給することにより設定可能である。ヒートポンプ運転では、好適にも、20l/sから300l/sの範囲、特に100l/s〜200l/sの範囲の空気体積流が蒸発器によって誘導される。冷却設備運転においても、20l/s〜300l/sの範囲、特に100l/s〜200l/sの範囲の空気体積流が凝縮器を介して流れる。
【0014】
ヒートポンプ機能を有する、すなわち、第1空気質量流の冷却及び/又は除湿と同時に第2空気質量流の暖めを行う空調システムは、有利にも、リヒート運転とも呼ばれる再熱運転で作動可能である。その場合、再熱運転は、全くの再熱運転として、すなわち、調和されていない空気の混入なしに可能である。暖められるべき空気質量流全体は、暖め前に、蒸発器の熱交換面を流れる際に冷却及び/又は除湿される。空気の冷却及び/又は除湿、並びに空気の加熱又は再熱の過程は、空気側のみで制御される。冷媒回路は、運転モードの種類に関係なく作動される。
【0015】
本発明の一変形実施形態では、蒸発器又は凝縮器の熱交換面の一部分が空調システムのハウジングの外側に配置されている。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態によれば、フローチャネル内の凝縮器の熱交換面の配分比率が空気ガイド装置によって無段で変更可能である。その場合、凝縮器の熱交換面は、完全に第1フローチャネルに配置されていてもよいし、第2フローチャネルに配置されていてもよく、それにより第1フローチャネルを通じて送られるか、又は第2フローチャネルを通じて送られる空気質量流が熱交換面上を流れ、その際に加熱される。すべての中間段階において、第1フローチャネルの空気質量流も第2フローチャネルの空気質量流も割り当て分の熱交換面を流れ、その場合、空気質量流の混合は無視できる程度に少ない。
【0017】
各フローチャネルには、周囲からの新気、客室からの循環空気、又は新気と循環空気との混合気が供給可能であることが有利である。フローチャネルは、このフローチャネル内の空気の主流方向が互いに平行に差し向けられ、共通の方向を差し向けられるように配置されていることが有利である。少なくとも客室の方向の空気質量流の流れ方向は、実質的に同一である。本発明の有利な実施形態では、フローチャネルを通って流れる際に調和される空気質量流は、流路を通じて客室へ、及び/又は流路を通じて周囲へ導出可能である。
【0018】
2つの異なった空気質量流を、2つの空気質量流が混ざり合うことなく互いに分離して熱交換器の熱交換面上に誘導することができる装置を提供するという課題は、本発明による空気ガイド機構によって解決される。空気ガイド機構は、2つの異なった空気質量流を互いに分離する静的且つ可動の空気ガイド装置を有する。
本発明の概念によれば、第1静的空気ガイド装置は、空気の流れ方向で熱交換器の上流に配置され、第2静的空気ガイド装置は、空気の流れ方向で熱交換器の下流に配置されており、静的空気ガイド装置は、熱交換器に隣接して配置されている。さらに、第1可動空気ガイド装置は、空気の流れ方向で第1静的空気ガイド装置の上流に配置され、第2可動空気ガイド装置は、空気の流れ方向で第2静的空気ガイド装置の下流に配置されている。従って、空気の流れ方向の構成部品の順番は、第1可動空気ガイド装置、第1静的空気ガイド装置、熱交換器、第2静的空気ガイド装置、及び第2可動空気ガイド装置である。
隣合せに配置された可動及び静的空気ガイド装置は、それぞれ向き合う側に、互いに適合するように調整された形状もしくは外輪郭を有しており、それにより、互いに分離した2つの異なる空気質量流が最低限もしくは無視できる程度の混ざり合いで、理想的には混ざり合うことなく第1熱交換器の熱交換面上に誘導されるようになっている。その場合、2つの空気質量流は、熱交換面の任意の大きさの配分比率で分割可能である。
【0019】
本発明の有利な一実施形態によれば、可動空気ガイド装置は、それぞれ1つの回転軸を中心に旋回可能に支承して配置された、それぞれ1つの平面を描くフラップとして形成されている。フラップは、それぞれ、互いに平行に差し向けられた対向する2組の側縁部を有し、その場合、1組の側縁部は、空気の流れ方向に、そしてもう1組の側縁部は空気の流れ方向に対して垂直に差し向けられている。
第1可動空気ガイド装置の回転軸は、空気の流れ方向に対して垂直に差し向けられ、空気が向かって来る側縁部に配置されている。第2可動空気ガイド装置の回転軸は、空気の流れ方向に対して垂直に差し向けられ、空気が離れて行く側縁部に配置されている。回転軸と接続された側縁部に対して向き合うように配置され、それぞれ自由な動きが可能な側縁部は、静的空気ガイド装置の方向にそれぞれ差し向けられている。
【0020】
可動空気ガイド装置の回転軸は、可動空気ガイド装置の、空気の流れ方向の広がりに相当する距離の分だけ、静的空気ガイド装置のそれぞれ最も近い縁部から離して配置されていることが有利である。静的空気ガイド装置のそれぞれ最も近い縁部からの距離は一定である。
【0021】
本発明の一変形実施形態によれば、静的空気ガイド装置は、空気ガイド板として形成されている。その場合、空気ガイド板は、間隔を置いて互いに平行に配置されており、且つ交差接続によって互いに接続され、空気の流れ方向に差し向けられている。空気ガイド板及び交差接続は、全体として格子を形成する。空気の流れ方向の空気ガイド板の広がりは、空気ガイド板の長さとも呼ばれ、これは格子の奥行にも相当する。
空気ガイド板は、熱交換器に向いた側が一直線に並ぶように配置されており、従って、空気ガイド板の端部もしくは側縁部は、空気通路を備えた直線的な平らな面を形成する。空気の流れ方向のこれらの側縁部に対向するように配置された空気ガイド板の側縁部、すなわちそれぞれの静的空気ガイド装置の方向に差し向けられた側縁部は、同様に空気通路を備えた凹状に成形された面を形成することが有利である。凹状に湾曲した面は、空気ガイド板の長さが様々に異なることによってでき、その場合、格子の外側縁部に配置された空気ガイド板は、それぞれ最大長さを有し、その隣に配置された空気ガイド板の長さは規則的に小さくなる。その場合、隣に配置された空気ガイド板は互いに一定の間隔を有する。従って、凹状に湾曲した面は、それぞれ一定の半径を有することが好ましく、その場合、面の中心軸は、隣接して配置された可動の空気ガイド装置の回転軸に相当する。その場合、円弧状に曲がった面の半径は、同時に、空気の流れ方向の可動空気ガイド装置の長手方向の広がりに相当する。
【0022】
本発明による空気ガイド機構は、自動車の客室の空気を調和する空調システム内で使用され、冷媒回路の凝縮器と接続して用いられることが好ましい。
本発明の概念によれば、自動車の客室の空気を調和する、冷却設備運転と加熱運転との組合せ、及び再熱運転のために空調システムを作動させる方法では、運転モード間の切替えが、空気ガイド装置の位置を制御することによって、従って、フローチャネルを通り、冷媒回路の蒸発器及び/又は凝縮器の熱交換面上を通る空気側の部分質量流の分割を制御することのみによって実現される。
その場合、フローチャネル内の凝縮器の熱交換面の配分比率は、空気ガイド装置によって設定され、客室に給送されるべき部分空気流は、十分な快適性のために必要な給気の温度が達成されるように制御される。
【0023】
本発明による解決策の種々の利点は以下のようにまとめられる。
−除湿と加熱とを同時に行うことができる効率的な空調システム、
−周囲温度が低い場合、及び内燃機関を備えた自動車でのエンジン冷却水が低温の場合における暖気の迅速な提供、
−循環空気運転による、及び/又はフローチャネル内での的確な空気誘導による、客室の加熱のために必要な出力の低減、
−蒸発器に部分循環空気又は循環空気が供給されることで、蒸発器の上流での空気の温度が周囲空気の温度よりも高くなる、吸引圧力側で冷媒を暖めて周囲温度よりも高くすることによる効率的な加熱運転、
−冷却設備運転及び加熱運転のために必要な冷媒充填量の保持又は貯蔵、
−周囲に対する動的シールを備えずに事前に充填可能で(半)気密の冷媒回路、
−冷媒回路における最低限の複雑性、すなわち、切替弁の省略と、膨張弁、熱交換器、及び冷媒管路の数の最小化、
−例えば、自動車におけるキャビンフロアの下側、トランクリーム、ダッシュボードなどへの空調システムのフレキシブルな配置が可能、
−客室内で必要のない空気の周囲への導出。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の他の詳細、特徴、及び利点は、添付図面と関連する実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0026】
図1は、第1フローチャネル3と第2フローチャネル4とを有するハウジング2を備えた空調システム1を示し、各フローチャネル3、4には、ファン5、6が割り当てられており、周囲からの新気が、客室9からの循環空気が、又はこれら両方からの混合気が供給可能である。
第1フローチャネル3には、蒸発器7が配置され、第2フローチャネル4に凝縮器8が配置されており、これら両方が空調システム1の冷媒回路の構成部品として、且つ空気供給される熱交換器として形成されている。その場合、蒸発器7は、フローチャネル3の流断面全体を占める。凝縮器8は、フローチャネルを跨って延びるように配置され、2つの領域を有している。第1領域は、第2フローチャネル4内にあって、流断面全体を覆うように配置されており、第2領域と比べて大きい熱交換面を有している。凝縮器8は、その広がりが第1フローチャネル3の中にまで達し、凝縮器8の第2領域が第1フローチャネル3の流路14内に配置されている。その場合、凝縮器8の第2領域は、流路14の流断面全体を占める。凝縮器8の各領域は、フローチャネル3、4間の仕切り壁10によって区切られる。
【0027】
別々に制御可能なファン5、6は、空調システム1に有利な動特性をもたらすが、それは蒸発器7を有する第1フローチャネル3と凝縮器8を有する第2フローチャネル4とに異なった速度の空気質量流が供給可能であり、それによって、運転状態の変化に対して迅速な反応が可能になるからである。
第1フローチャネル3のファン5は、吸入した空気を空気質量流として蒸発器7に導く。空気質量流は、蒸発器7の熱交換面上を流れる際に冷却及び/又は除湿される。
蒸発器7から出た冷気質量流は、部分空気質量流として冷気流路11を介して周囲と、部分空気質量流へ、冷気流路12を介して客室9とに必要な比率で分割されるか、又は、全部が冷気流路11、12の1つに割り当てられる。冷気質量流は、フラップとして形成された空気ガイド装置13によって分割される。冷気流路12を通って導かれた空気質量流は、流路14に沿って、従ってバイパス流としてバイパスチャネル15を通って凝縮器8の周囲に誘導される。
【0028】
ファン5と同様に、ファン6は、空気を吸入し、吸入した空気を空気質量流として凝縮器8に導く。空気質量流は、凝縮器8の熱交換面上を流れる際に暖められる。凝縮器8から出る暖気質量流は、部分空気質量流として暖気流路16を介して周囲と、部分空気質量流へ、暖気流路17を介して客室9とに必要な比率で分割されるか、又は、全部が暖気流路16、17の1つに割り当てられる。暖気質量流は、フラップとして形成された空気ガイド装置18によって分割される。
【0029】
冷却設備運転時、すなわち客室9に給送されるべき空気の冷却時に、空気ガイド装置19、20、21、22は閉じている。空気ガイド装置13は、冷気流路11が閉鎖されている間に空気質量流が冷気流路12から客室9に誘導されるように設計されている。空気ガイド装置18は、客室9への暖気流路17が閉鎖されている間に空気質量流が暖気流路16を通って周囲へと誘導されるように設計されている。
ファン5は、空気を第1フローチャネル3から蒸発器7へ送る。空気は、冷却及び除湿され、冷気流路12を通って客室9に流れ込む。ファン6は、第2フローチャネル4内の空気を凝縮器8へ送る。空気は暖められ、暖気流路16を通って周囲へ運ばれる。
【0030】
ヒートポンプ運転時、すなわち客室9に給送されるべき空気の暖め時に、フラップとして形成された空気ガイド装置20、21が開いている。空気ガイド装置13は、冷気流路12が閉鎖されている間に空気質量流が冷気流路11から周囲へ誘導されるように設計されている。その場合、空気ガイド装置18は、暖気流路16が閉鎖されている間に空気質量流が暖気流路17から客室9へ誘導されるように設計されている。空気ガイド装置19、22は閉鎖されている。
ファン5は、空気を第1フローチャネル3から蒸発器7へ送る。空気は冷却され、冷気流路11を通って周囲へと流れる。ファン6は、空気を第2フローチャネル4から凝縮器8へ送る。空気は暖められ、暖気流路17を通って客室9に到達する。
【0031】
再熱運転時、空気ガイド装置13、18、19、20、21、22は、必要に応じて、完全に開いたポジションと完全に閉じたポジションとの間で様々に配置される。空気ガイド装置13、19、22の位置及びファン5の回転数によって、加熱されるべき空気質量流が変更される。
【0032】
これに代えて、フラップとして形成された空気ガイド装置13、18は、それぞれ、2つの別々のフラップ23、24、25、26として形成されていてもよく、その場合、2つのフラップ23、24は、冷気流路11、12内に、2つのフラップ25、26は、暖気流路16、17内に配置されており、このことは
図2aからも見て取れる。その場合、それぞれ2つのフラップ23、24及びフラップ25、26は、それぞれ1つの運動装置によって結合されて唯一の駆動装置によって位置調整可能であってもよい。フラップ23、24、25、26を分離する実施形態、及びそれぞれ1つの共同のフラップ13、18とする実施形態は、空調システム1の以下にも説明する実施形態の各々に関係する。
さらに、
図2aから、代替的実施形態では、第1フローチャネル3の流路14と第2フローチャネル4との間の接続部としての空気ガイド装置20、21が形成されていないことが明らかになる。
図2aによる空調システム1の実施形態では、
図1の実施形態と比較して、冷却設備運転のための凝縮器8が異なった設計になっているだけであるが、それは、第2フローチャネル4に配置された凝縮器8の熱交換面しか考慮されないからである。流路14に配置された凝縮器8の領域は、再熱運転のためにのみ利用可能である。
【0033】
図2a及び
図2bの実施形態は、空気ガイド装置19及び22の代わりに、流路14をフローチャネル3から区切る空気ガイド装置19のみが設けられているという点で区別される。冷却設備運転では、凝縮器8から冷気流路12内の冷却された空気質量流へ伝達される熱はごくわずかであるため、
図2aによる実施形態の空気ガイド装置22の構成は放棄されてもよい。従って、
図2bが示すように、空調システム1の機能を確保するために、少なくとも3つの空気ガイド装置13、18及び19が設けられる必要がある。
【0034】
図3aの実施形態では、凝縮器8は、フローチャネル3、4内の中央に配置されている。その場合、中央配置とは、凝縮器8を同じ大きさの2つの領域に区分する、仕切り壁10に対する凝縮器8の方向付けと解される。第1領域は、第2フローチャネル4内に配置され、フローチャネル4の流断面全体を覆う。凝縮器8の第2領域は、第1フローチャネル3内に配置され、フローチャネル3の部分断面のみを覆う。凝縮器8により覆われない流断面は、
図1、
図2a及び
図2bの実施形態のバイパスチャネル15に相当する。
【0035】
第1フローチャネル3及び第2フローチャネル4は、仕切り壁10によって、並びに可動フラップとして形成された2つの付加的空気ガイド装置27、28によって、且つ空気ガイド板として形成された静的空気ガイド装置29、30によって互いに分離される。凝縮器8を通って誘導される空気質量流は、ファン6の回転数と空気ガイド装置27、28の位置とに応じて決定される。
【0036】
互いに適合するように調整された形状を有する空気ガイド装置27、28と空気ガイド板29、30とは、熱交換器のための空気ガイド機構をなし、第1フローチャネル3内での蒸発器7の貫流時に冷却及び調和された空気質量流が第2フローチャネル4の調和されていない空気質量流と混ざり合うことを阻止するために利用される。
空気ガイド板29、30は、仕切り壁10に対して平行に方向調整して配置されているので、仕切り壁10に沿って流れる空気質量流は、空気ガイド板29、30に向かって来る際に、且つ通過もしくは貫流する際に、その流れ方向が偏向されない。
両側へ、それぞれフローチャネル3、4の中へ、そしてそれにより、仕切り壁10から遠く離して配置される空気ガイド板29、30の長さLは大きくなっていく。仕切り壁10からの空気ガイド板29、30の配置が遠くなるほど空気板29、30の長さLが増加し、その場合、並設された空気ガイド板29、30の長さLは、空気ガイド板29、30の構成全体の端部が2つの凹状に形成された面31、32をなすように大きくなっていく。面31、32は、それぞれ矩形に形成され、それぞれ、面31、32に対して平行に差し向けられた軸33、34を中心に均等に曲げられているので、矩形面31、32の第1の2つの対向する側縁部は、それぞれ直線をなす一方で、第2の2つの対向する側縁部は円弧を描く。円弧の中心点は、それぞれ軸33、34であり、これらの軸を中心に矩形面31、32が曲げられている。その場合、軸33、34は、可動の空気ガイド装置27、28の回転軸33、34に相当する。円弧状に曲がった面31、32の半径は、空気ガイド装置27、28の長手方向の広がり、すなわち、フローチャネル3、4を通る空気質量流の流れ方向の可動空気ガイド装置27、28の広がりに相当する。
【0037】
旋回可能な空気ガイド装置27、28は、回転軸33、34とは反対側の側縁部が、空気ガイド板29、30の端部によって形成される凹状に撓曲された面31、32に差し向けられている。空気ガイド装置27、28の自由な可動性のために、面31、32と空気ガイド装置27、28の側縁部との間には、空気質量流の流れに影響を及ぼさないか、無視できる程度にしか及ぼさない間隙が残る。
空気ガイド装置27、28をそれぞれの回転軸33、34を中心に、逆の回転方向35、36で同時に回転させることによって、第1フローチャネル3及び第2フローチャネル4における凝縮器8の領域の配分比率が設定可能である。その場合、凝縮器8の領域の分割は、実質的に無段で行うことができる。空気ガイド装置27、28の回動の範囲内で段ができるとすれば、フローチャネル3、4を通る空気質量流の流れ方向に対して垂直の空気ガイド板29、30の間隔からである。空気ガイド装置27、28は、回動後、回転軸33、34に対して平行に、且つ回転軸33、34とは反対側に配置された側縁部が空気ガイド板29、30の一端の対向側に位置し、それによって空気質量流が一続きの流面に沿って流れることができるように差し向けられる。空気ガイド装置27、28が空気ガイド板29、30に対して中間位置にあるときに生じる漏れ流は、無視することができる。中間位置とは、空気ガイド装置27、28の側縁部が空気ガイド板29、30の縁部と正確に向き合わず、2つの空気ガイド板29、30間に配置されているような空気ガイド装置27、28の位置と解される。
【0038】
空気ガイド装置27、28が、回転方向35、36で空気ガイド板29、30の長手方向の最大の広がりにまで、すなわち、第2フローチャネル4の外側のハウジング壁に達するまで回動した場合、凝縮器8全体が第1フローチャネル3内に配置される。空気ガイド装置27、28は第1終端位置にある。空気ガイド装置27、28が回転方向35、36とは逆の方向に空気ガイド板29、30の長手方向の最大の広がりにまで、すなわち、第1フローチャネル3の外側のハウジング壁の方向、もしくはバイパスチャネル15の方向に回動した場合、凝縮器8全体が第2フローチャネル4内に配置される。空気ガイド装置27、28は第2終端位置にある。2つの終端位置の他に、空気ガイド装置27、28は中間ポジションに設定可能である。平均的な中間ポジションが
図3aに示される。
【0039】
全くの冷却設備運転、又は全くの加熱運転時には、空気ガイド装置27、28は第2終端位置に配置されている。凝縮器8は、熱交換面とともに完全に第2フローチャネル4内に配置されている。
【0040】
冷却設備運転時、空気ガイド装置13はバイパスチャネル15を開き、周囲への冷気流路11を閉鎖するので、ファン5によって吸入され蒸発器7を流れる際に冷却及び除湿された空気質量流は、バイパスチャネル15及び冷気流路12を通って客室9に誘導される。その一方で、ファン6を通じて送られ凝縮器8を流れる際に暖められた空気質量流は、空気ガイド装置18によって開かれる暖気流路16を通って周囲へ運ばれる。暖気流路17は閉鎖されている。
【0041】
加熱運転時、空気ガイド装置13は、冷気流路11を開き、バイパスチャネル15を閉鎖するので、ファン5によって吸入され蒸発器7を流れる際に冷却された空気質量流は、冷気流路11を通って周囲へ運ばれる。その一方で、ファン6を通じて送られ凝縮器8を流れる際に暖められた空気質量流は、空気ガイド装置18によって開かれる暖気流路17を通って客室9へ送られるが、暖気流路16は閉鎖されている。
【0042】
図3b及び
図4a〜
図4dの実施形態は、
図3aによる空調システム1と比較して、第1フローチャネル3と第2フローチャネル4とを通じて空気質量流を送るファン37のみを有している。この空調システム1は、実質的に、操作のために十分である空気ガイド装置13、27、28として形成された3つの空気ガイド要素を備えている。その場合、空気ガイド装置28は、
図3aによる空気ガイド装置18の機能、すなわち暖気流路16、17の閉鎖及び開放を引き受ける。フラップとして形成された第4空気ガイド装置24’は、バイパスチャネル15の閉鎖及び開放のために用いられる。
【0043】
図4aによる全くの冷却設備運転時、空気ガイド装置27、28は、第2終端位置に配置されているので、凝縮器8は、完全に第2フローチャネル4内に配置されている。空気ガイド装置13は冷気流路12を開き、周囲への冷気流路11を閉鎖する。蒸発器7を流れる際に冷却及び除湿された空気質量流は、冷気流路12から客室9に誘導される。凝縮器8を流れる際に暖められた空気質量流は、空気ガイド装置28によって開かれる暖気流路16から周囲へ導かれる。暖気流路17は閉鎖されている。
図4cによる調和されていない空気を用いる全くの加熱運転時、空気ガイド装置13は冷気流路11を開き、客室9への冷気流路12を閉鎖するので、蒸発器7を流れる際に冷却された空気質量流は、冷気流路11から周囲へ運ばれる。その一方で、電気流路16が閉鎖されている間、凝縮器8を流れる際に暖められた空気質量流が、空気ガイド装置28によって開かれる暖気流路17から客室9へ送られる。
空気ガイド装置27、28は、互いに逆方向に配置されている。空気ガイド装置28が第2終端位置に配置されており、且つ暖気流路16を閉鎖すると同時に暖気流路17を開いている間、空気ガイド装置27は第1終端位置にある。
調和されていない空気を用いる全くの加熱運転は、客室9に給送されるべき空気の除湿が必要でないか、又は所望されない場合には切り換えられる。
【0044】
客室9に給送されるべき空気のフル加熱運転での暖めと同時に除湿が必要な場合、空気ガイド装置28と全く同様に第2終端位置にある空気ガイド装置27によって第2フローチャネル4が閉じられる。ファン37によって送られる全空気質量流は蒸発器7を介して誘導される。
蒸発器7と圧縮機と凝縮器8とを備えた閉じた冷媒回路の場合に凝縮器8で送出されるべき熱出力は、蒸発器7及び圧縮機で冷媒に給送される出力の合計から求められ、従って、凝縮器8での熱出力は、圧縮機で給送される出力の分だけ、蒸発器7で給送される出力よりも大きくなるにすぎないので、空気は、凝縮器8の熱交換面を流れる際にごくわずかしか暖められ得ない。従って、同じ空気質量流において、圧縮機出力と空気の全くの除湿による出力とを再び給送することしかできず、その場合、システムの損失もさらに考慮される必要がある。
凝縮器8でより大きい熱出力を達成し、且つ客室9に給送されるべき空気質量流をより強力に暖めるために、蒸発器7を介して流れ、その際に冷却及び除湿される空気質量流の第1割り当て分が周囲へ導出される一方で、空気質量流の第2割り当て分は凝縮器8を介して導かれ、その際、暖められ、続いて客室9へ送られる。空気質量流は、バイパスチャネル15に配置された空気ガイド装置24’の操作によって分割される。
客室9に送られた空気質量流は、周囲へ排出される割り当て分少なくなるので、客室9に送られる空気質量流をより強力に暖めることが可能である。その場合、客室9に導入される空気質量流は、前記全空気質量流のうち周囲へ運ばれる配分比率が大きいほど、すなわち、空気ガイド装置24’によって解放されたバイパスチャネル15の流断面が大きく設定されるほどより暖められる。
【0045】
図4dが示すように、空調システム1は、全くの冷却設備運転及び全くの加熱運転の他に、混合運転でも作動させることが可能である。その場合、調和された空気は、冷却及び除湿された空気の割り当て分と、冷却、除湿、及び再熱された空気の割り当て分とから構成される。
ファン37は、全部が蒸発器7を介して流れ、その際に冷却及び除湿される空気質量流を、第1フローチャネル3を通じて送り、凝縮器8の部分領域を介して誘導され、蒸発器7において取り込まれた熱を再び排出する空気質量流を、第2フローチャネル4を通じて送る。その場合、空気ガイド装置27、28は、凝縮器8の第1領域が第2フローチャネル4に配置され、凝縮器8の第2領域が第1フローチャネル3に配置されるように設定されている。第2フローチャネル4を通じて送られる空気質量流は、空気ガイド装置28によって解放される暖気流路16を通じて周囲へ導出される。
蒸発器7を介して流れる際に調和される空気質量流の第1部分空気質量流は、空気ガイド装置24’を開くことによってバイパスチャネル15を通じて冷気流路12に誘導される。この部分空気質量流は、これ以上調和されない。第2部分空気質量流は、第1部分空気質量流に対して平行に、凝縮器8の第2領域を介して暖気流路17に導かれ、その際に暖められる。バイパスチャネル15を通じて誘導され、これ以上調和されない、すなわち冷却と除湿とがされただけの冷気流路12からの部分空気質量流は、付加的に、凝縮器8を介して誘導され、その際に暖められた暖気流路17からの部分空気質量流と混合され、続いて、客室9に導入される。
【0046】
図5は、凝縮器8による空気質量流の分割を可能にする空気ガイド装置27、28、29、30を有する空気ガイド機構72を示す。その場合、必要に応じて1つの空気質量流又は2つの空気質量流が凝縮器8を介して誘導される。2つの空気質量流を用いる運転モードでは、空気ガイド装置27、28、29、30によって異なった調和が行われた空気質量流の混合が阻止される。空気の流れ方向38で凝縮器8の上流及び下流に位置決めされた空気ガイド板29、30が、それぞれ1つの格子に配置されている。
その場合、格子の空気ガイド板29、30は、空気の流れ方向38に対して垂直に一定間隔で、互いに平行に設定され、交差接続39、40によって互いに接続して形成されている。
【0047】
格子は、凝縮器8への移行部に、平面として形成されたそれぞれ1つの面を有している。空気ガイド装置27、28の方向に差し向けられた格子の面31、32は、均等に湾曲し、空気ガイド装置27、28の回転軸33、34からそれぞれ一定の距離を有している。従って、回転軸33、34からの凹状湾曲面31、32の距離は、回転軸33、34に対する半径、及び空気の流れ方向38の空気ガイド装置27、28の広がりに相当する。 格子とは反対側の側縁部に、それぞれ回転軸33、34を中心に回転方向35、36に回転運動可能に支承された空気ガイド装置27、28は、空気ガイド板29、30とともに、空気質量流を任意の配分比率で、すなわち凝縮器8の熱交換面の任意の大きさの配分比率で分割され得る。
空気ガイド装置27、28をそれぞれの回転軸33、34を中心に逆の回転方向35、36に、且つ同じ角度だけ同時に回転させることによって、凝縮器8の領域の配分比率を無段で設定することができる。回転の後、空気ガイド装置27、28は、格子に向かって差し向けられたその側縁部が空気ガイド板29、30の側縁部にそれぞれ対向し、それによって空気質量流が一続きの流面に沿って流れるように配置されていることが有利である。
【0048】
凝縮器が、例えば扁平管から形成されており、その扁平側が空気ガイド板29、30の方向に、従って空気の流れ方向38に設定されているならば有利である。それに加えて、格子の空気ガイド板29、30の数が、凝縮器8の管の数に相当しているとよく、各管の短辺側が空気の流れ方向38に空気ガイド板29、30と一直線に並んで配置されていることが有利である。凝縮器8の管の数と格子の空気ガイド板29、30の数とが異なる場合も空気ガイド板29、30と管の短辺側とが向き合うように設定されていなければならない。
空気ガイド装置27、28と空気ガイド板29、30と凝縮器8の管とをこのように構成することによって、分離された空気質量流の混合が最小限に抑えられるが、この構成は、必ずしも必要ではない。凝縮器8の熱交換面を流れる際に空気質量流を分離するという原則は、凝縮器8の管が空気ガイド板29、30の方向に配置されていないか、又は、それどころか空気ガイド板29、30の方向に対して垂直に配置されている場合にも達成される。しかしながら、空気の流れ方向38に設定された空気ガイド板29、30、及び凝縮器8の同様に設定された管においては、それとは異なる構成と比較して流れ抵抗が極めて小さい。
【0049】
図6a及び
図6bは、第1フローチャネル3と第2フローチャネル4を備える空調システム1を示し、第2フローチャネル4は付加的に2つの暖気流路16、17に分割されている。蒸発器7は、第1フローチャネル3の流断面全体にわたって延伸し、仕切り壁10を通って第2フローチャネル4内に伸び、暖気流路16の流断面全体を覆っている。凝縮器8は、第2フローチャネル4の流断面全体を覆い、それによって双方の暖気流路16、17を覆っている。
【0050】
第1フローチャネル3もしくは冷気流路12は、フラップとして形成された空気ガイド装置42によって
図6aによる客室9の方向に閉鎖又は開放される。その場合、第2フローチャネル4の暖気流路17は、入口、すなわちファン6と蒸発器7との間で空気ガイド装置42によって閉鎖又は開放される。空気の流れ方向で凝縮器8の上流及び下流において、第2フローチャネル4の暖気流路16、17間の確実な分離が、可動フラップとして形成された空気ガイド装置43、44によって中断される。
冷却設備運転では、空気ガイド装置23、26、42が閉じられ、空気ガイド装置25、41、43、44が開かれている。ファン5は、空気質量流を、第1フローチャネル3を通じて蒸発器7に送る。空気は、蒸発器7を流れる際に冷却及び除湿される。空気は、調和後に冷気流路12を通って客室9に流れ込む。ファン6は、空気質量流を、暖気流路16を通じて凝縮器8に送る。空気は暖まり、周囲へ導出される。
加熱運転では、空気ガイド装置23、26、43、44が開かれ、空気ガイド装置25、41、42は閉じられている。ファン5から第1フローチャネル3を通じて蒸発器7の熱交換面に送られて冷却された空気質量流は、冷気流路11を通じて周囲へ誘導される。ファン6は、空気質量流を、蒸発器7を通過させて凝縮器8に送る。空気は暖められ、暖気流路17を通って客室9に流れ込む。再熱運転では、空気ガイド装置23、25、26、41、42、43、44が、完全開から完全閉の範囲で種々異なる位置に位置決めされる。空気ガイド装置25及び42の位置によって、加熱されるべき空気質量流が確定される。
【0051】
フラップ23、41及び25、26、44は、それぞれ1つの運動装置によって結合されて唯一の駆動装置によって位置調整されてもよい。
図6bが示すように、フラップ23と41とを結合して、1つのフラップとして形成された空気ガイド装置13’としてもよいし、フラップ25、26、44を結合して、1つのフラップとして形成された空気ガイド装置45としてもよい。暖気流路17の入口に配置された空気ガイド装置42は、暖気流路16又は暖気流路17を閉鎖するか、もしくは開放する空気ガイド装置46と取り替えられる。
【0052】
図7による空調システム1の実施形態では、ファン5、6によって送られる空気質量流の他に、走行風が利用可能であり、このことは、2つの付加的走行風流路47、49とフラップとして形成された2つの空気ガイド装置48、50とを用いて実現される。走行風流路47は、加熱運転時に空気が供給される。その場合、空気ガイド装置48が開かれ、走行風流路47への走行風の流入が可能になる。第2走行風流路49は、冷却設備運転時に空気が供給され、その場合、空気ガイド装置50が開かれ、走行風流路49への走行風の流入が可能になる。
図7による空調システム1内への走行風流路47、49の形成は、蒸発器7及び/又は凝縮器8がフローチャネルを跨いで配置されている、これまでの図の実施形態と組み合わせることができる。
【0053】
図7による空調システム1のさらなる形態を示す
図8aによれば、走行風によって生成された空気質量流がファン5、6を通って逆流することを阻止するために、フローチャネル3、4への入口に、フラップとして形成された付加的空気ガイド装置51、52が配置されている。
冷却設備運転時、及び走行風使用時には、空気ガイド装置23、26、48、52が閉じられている。空気ガイド装置25、41、50、51は開いている。ファン5は、空気質量流を、第1フローチャネル3を通じて蒸発器7に送り、そこで、空気は冷却及び除湿される。その後、調和された空気は、客室9へ誘導される。
空気ガイド装置50が開かれることによって、走行風が、走行風流路49を通って第2フローチャネル4に流れ込む。空気質量流は、凝縮器8の熱交換面上を流れ、暖められて、暖気流路16を通じて周囲へ送られる。加熱運転時、空気ガイド装置25、41、50、51が閉じている間、空気ガイド装置23、26、48、52は開かれている。空気ガイド装置48が開かれることによって、走行風が走行風流路47を通って第1フローチャネル3に流れ込む。空気は、蒸発器7の熱交換面上を流れ、冷気流路11を通じて周囲へ誘導される。ファン6は、空気質量流を、第2フローチャネル4を通じて凝縮器8へ送り、そこで、空気質量流は暖められ、続いて、暖気流路17を通じて客室9に誘導される。
【0054】
図8bが示すように、
図8aによる実施形態に代えて、走行風は、ファン5、6のインペラを通って流れる。冷却設備運転時、走行風は、ファン6を通じて誘導され、加熱運転時、走行風は、ファン5によって偏向される。
【0055】
図9aは、空気の流れ方向でファン5、6の上流に配置された、
図8bによるファンに走行風を供給するための流路55、56、57を有する空調システム1の部分領域を示す。
流路55、57は、フラップとして形成された空気ガイド装置58によって開かれるか、部分的に開かれるか、又は閉じられる。フラップ58は、流路55、57が合流してファン5への流路53に移行する混合ゾーン内に配置される。外側流路55、56間に配置された流路57は、混合ゾーンに達する前に2つのサブ流路に分岐し、第1サブ流路はフラップ58へ導かれ、第2サブ流路は、フラップとして形成された空気ガイド装置59へ導かれる。
フラップ59も、流路56、57が合流してファン6への流路54に移行する混合ゾーンに配置されている。フラップ59は、流路56、57を開放するか、部分的に開放するか、又は閉鎖するために用いられる。
【0056】
図9b及び
図9cにおいて、
図9aによる空調システム1への流路55、56、57の接続が示されている。外側流路55、56には、周囲からの新気が供給され、内側流路57には客室9からの循環空気が流される。フラップ58、59は、循環空気が循環されるようにそれぞれ配置されている。周囲からの新気のための流路55、56は閉鎖されている。
図9bの実施形態において、内側流路57を通じて誘導される循環空気に、凝縮器8を流れる際に暖められた空気が混入されてもよい。その場合、暖気流路17から暖められた空気が導出され、循環空気が蒸発器7もしくは凝縮器8の上流で混合される。暖気流路17を流路57と接続する空気チャネルは、フラップとして形成されたさらに別の空気ガイド装置73を備えている。空気チャネルは、フラップ73によって、必要に応じて開閉される。
【0057】
図9cの代替的実施形態によれば、外側流路55、56を通じて送られた新気に、それぞれ、凝縮器8を流れる際に暖められた空気が混入されてもよい。暖められた空気は、再び、暖気流路17から導出され、新気が蒸発器7もしくは凝縮器8の上流で混合される。その場合、第1空気チャネルは暖気流路17を流路55と接続し、第2空気チャネルは暖気流路17を流路56と接続する。2つの空気チャネルは、フラップとして形成された空気ガイド装置74、75によってそれぞれ閉鎖可能である。図示されたフラップ74、75の設定において、空気チャネルは閉鎖されている。
【0058】
図9b及び
図9cによる循環空気チャネルの実施形態により、冷媒を吸引圧力側で周囲温度よりも高い温度に暖めることによって、空調システム1の効率を高めることが、特に加熱運転において可能である。その場合、蒸発器7に、部分循環空気又は循環空気が供給され、それにより蒸発器7の上流での空気の温度が周囲からの新気の温度よりも高くなる。その場合、循環空気チャネルは、空気の流れ方向で凝縮器8の下流の第2フローチャネル4と、空気の流れ方向で蒸発器7の上流の第1フローチャネル3との間のバイパスとして用いられる。暖気流路17から、温かい空気が第1フローチャネル3に混入され、次に、この空気は蒸発器7へ流れる。
【0059】
空調システム1の空気分配システム全体が、大抵の場合フラップとして形成されたさらに別の空気ガイド装置と、図示されないサーボモータとを備えている。
【0060】
図10a及び
図10bにおいて、
図2aによる実施形態の空調システム1が空調システム1に組み込まれ、閉じた、且つ完全な冷媒回路60とともに示されている。冷媒回路は、R134a、R744、R1234yf又は他の冷媒用に設計されている。冷媒回路60は、蒸発器7と圧縮機61と凝縮器8とコレクタ64と膨張素子67とを備えている。冷媒回路60の構成部品は、冷媒管路62、63、65、66、68、69によって接続されている。吸引管路69は、蒸発器7を圧縮機と接続し、圧力管路62は、圧縮機61を凝縮器8と接続する。冷媒は、圧力管路63を通って凝縮器8の第1区間からコレクタ64に流れる。圧力管路65及び66は、コレクタ64を凝縮器8の第2区間の入口と接続し、凝縮器8の第2区間の出口を膨張素子67と接続する。冷媒は、膨張素子67から冷媒管路68を通って蒸発器7に流れる。
圧縮機61は、電気的に駆動可能な圧縮機として形成されていることが好ましいが、これに代えて、車両の内燃機関によって駆動されてもよい。膨張素子67は、制御可能な膨張素子、もしくは膨張弁として形成されていることが有利である。
【0061】
図10bに示すように、
図10aによる実施形態の他の例によれば、冷媒回路60は、第1フローチャネル3に配置された蒸発器7に対して平行に結び付けられたさらに別の蒸発器71を有する。それによって、蒸発器7、71に必要な冷却出力を互いに独立して設定することが可能である。
第2蒸発器71は、2つの冷媒管路70を介して空調システム1と接続されており、駆動バッテリ、パワー電子ユニット、又は自動車の他の構成部品を冷却するために設けられている。その場合、第2蒸発器71は、例えば、冷媒により直接冷却されるバッテリのための接触冷却装置として、チラーとも呼ばれる冷媒・冷却水熱交換器として、又は冷媒・空気熱交換器として形成されていてもよい。