【実施例】
【0011】
以下、本発明を適用したワイパウォッシャ装置の実施例について説明する。
実施例のワイパウォッシャ装置は、例えば、自車両前方を撮像する撮像装置を有する乗用車等の自動車のフロントガラスに設けられるものである。
図1は、実施例のワイパウォッシャ装置が設けられる車両におけるフロントガラス周辺の構成を示す図である。
フロントガラス10は、乗用車等の自動車の図示しない車室(キャビン)の前部に配置され、運転者の視界の主要部分を占めるフロントウインドウ開口に設けられるものである。
フロントガラス10は、正面から見た平面形が実質的に横長の矩形状に形成されるとともに、車幅方向中央部が両端部に対して前進するように二次元的に湾曲して形成された合わせガラスである。
フロントガラス10は、周縁部の内側にほぼ沿って配置された境界線11の外側には、黒色セラミック層が設けられる一方、境界線11の内側においては実質的に透明となっている。
【0012】
フロントガラス10の上端部近傍には、図示しないステレオカメラ装置の撮像領域12,13が配置されている。
ステレオカメラは、左右一対のカメラを車幅方向に離間して配置し、公知のステレオ画像処理によって、例えば前方車両、歩行者等の自車両に対する相対位置及び相対速度や、車線形状といった自車両前方の環境を認識するものである。
ステレオカメラは、車室内におけるルーフ前端部(ルームミラー基部付近)に配置されている。
撮像領域12,13は、フロントガラス10において左右のカメラの画角内にそれぞれ含まれる領域である。
ステレオカメラは、この撮像領域12,13越しに自車両前方を撮像する。
【0013】
フロントガラス10には、図示しない運転席側のワイパアーム、及び、助手席側のワイパアーム20が設けられている。
ワイパアーム20は、
図1では図示しないワイパモータ33(
図2参照)によって駆動され、フロントガラス10の下端部に隣接する図示しないカウル部における車幅方向中央部に設けられた回転軸回りに揺動する。
【0014】
ワイパアーム20には、ブレード21、ウォッシャノズル22が設けられている。
ブレード21は、ワイパアーム20の先端部付近に設けられ、ワイパアーム20の長手方向に略沿って延在するゴム製のフィン状の払拭部を備えている。
ウォッシャノズル22は、ウォッシャ液(洗浄液)をフロントガラス10の表面に向け噴射するものである。
ウォッシャノズル22は、ワイパアーム20におけるブレード21の回転軸側の端部近傍に設けられ、ワイパアーム20が初期位置から反転位置へ移動する際の進行方向側へウォッシャ液を噴射可能となっている。
【0015】
助手席側のワイパアーム20のブレード21、及び、図示しない運転席側のワイパアームのブレードは、それぞれ
図1に示す払拭領域14,15を形成する。
各払拭領域は、各ブレードの初期位置14a、15a及び反転位置14b、15bを半径とする実質的に扇形の領域となる。
運転席側の撮像領域13は、払拭領域14,15にともに含まれ、各ワイパアームが1往復する際に、左右のブレードがともに払拭するようになっている。
一方、助手席側の撮像領域12は、実質的に払拭領域14にのみ含まれ、実質的に助手席側のブレード21のみによって払拭されるようになっている。
ウォッシャノズル22は、助手席側の撮像領域12における払拭性能を改善するため、助手席側のワイパアーム20に設けられる。
なお、実施例のウォッシャ装置においては、ワイパアーム20に設けられるノズル22に追加して、カウル部やフード部等に固定式のノズルを設ける構成としてもよい。
【0016】
図2は、実施例のワイパウォッシャ装置の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、ワイパウォッシャ装置は、ワイパウォッシャスイッチ31、ウォッシャポンプ32、ワイパモータ33、位置検出センサ34、モータ速度制御装置35、ワイパリレー36等を有して構成されている。
【0017】
ワイパウォッシャスイッチ31は、ドライバ等のユーザがワイパアームに払拭動作を行わせるワイパ操作、及び、ウォッシャ液を噴射するとともにワイパアームに払拭動作を行わせるワイパウォッシャ操作を入力するものである。
ワイパウォッシャスイッチ31は、例えば、ステアリングコラム部から突出するレバーとして構成されている。
【0018】
ウォッシャポンプ32は、図示しないウォッシャタンクに貯留されたウォッシャ液(洗浄液)を加圧して吐出し、ウォッシャノズル22に供給する電動ポンプである。
ウォッシャポンプ32は、ウォッシャタンクの下部に取り付けられている。
【0019】
ワイパモータ33は、運転席側、助手席側のワイパアームをそれぞれ駆動するものである。
ワイパモータ33の出力は、減速ギア列及びリンク機構を介して各ワイパアームに伝達され、各ワイパアームを、初期位置と反転位置との間で往復するよう揺動させる。
【0020】
位置検出センサ34は、ワイパモータ33の出力部に設けられるリンク機構の状態等を検出することによって、ワイパアーム20の位置を検出するものである。
位置検出センサ34は、ワイパアーム20が初期位置に到達した際に、これを検出してモータ速度制御装置35に伝達可能となっている。
【0021】
モータ速度制御装置35は、ワイパモータ33の回転速度を、低速モード、高速モードの二段階に切り替えるものである。
【0022】
ワイパリレー36は、ウォッシャポンプ32を停止し、ウォッシャ液の噴射を終了した後のワイパモータ33の作動時間(ワイパアームの作動回数)を制御するものである。
【0023】
以下、実施例のワイパウォッシャ装置の動作について説明する。
図3は、実施例のワイパウォッシャ装置におけるウォッシャ液噴射時の動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:ワイパウォッシャスイッチオン判断>
ワイパウォッシャスイッチ31がドライバによってオンされている場合には、ステップS2に進み、オフである場合には、一連の処理を終了(リターン)する。
【0024】
<ステップS02:ウォッシャポンプ作動>
ウォッシャポンプ32を作動し、ウォッシャタンクからウォッシャノズル22にウォッシャ液を圧送し、ウォッシャ液の噴射を行わせる。
その後、ステップS03に進む。
【0025】
<ステップS03:ワイパモータ低速モード作動>
ワイパモータ33は、ワイパアームを低速モードで払拭動作を行わせる。
低速モードの動作速度は、ウォッシャノズル22から噴射されたウォッシャ液が、ワイパアームが初期位置から反転位置まで移動する時間内に、ブレード21の実質的に全長にわたって行き渡ることを考慮して設定される。
ウォッシャノズル22から噴射されたウォッシャ液は、ブレード21によってフロントガラス10の表面上をかき上げられつつ、遠心力によってブレード21の先端部側へ流れる。
その後、ステップS04に進む。
【0026】
<ステップS04:ワイパウォッシャスイッチオフ判断>
ワイパウォッシャスイッチ31がオンからオフとされた場合には、ステップS05に進む。
一方、オン状態が継続されている場合には、ステップS04の処理を繰り返す。
【0027】
<ステップS05:ウォッシャポンプ停止>
ウォッシャポンプ32を停止し、ウォッシャ液の噴射を終了する。
その後、ステップS06に進む。
【0028】
<ステップS06:ワイパアーム初期位置判断>
位置検出センサ34は、ウォッシャポンプを停止後、ワイパアーム20が最初に初期位置14aに到達したか否かを判断する。
ワイパアーム20が初期位置14aに到達した場合には、ステップS07に進み、未到達の場合には、ステップS06を繰り返す。
【0029】
<ステップS07:ワイパモータ高速モード作動>
モータ速度制御装置35は、ワイパモータ33の回転速度を、低速モードに対応する回転速度から高速モードに対応する回転速度に切り替えて、ワイパアーム20の払拭動作を高速化する。
その後、ステップS08に進む。
【0030】
<ステップS08:高速モード切替後1ストローク駆動判断>
位置検出センサ34は、高速モードへの切り換え後、ワイパアーム20が初期位置14aと反転位置14bとの間を1ストローク往復し、初期位置14aに到達したか否かを判断する。
ブレード21は、このウォッシャ液の噴射を伴わない払拭動作によって、払拭領域14内に縞状に残るウォッシャ液の拭き残しSを払拭する。
ワイパアーム20が初期位置14aに到達した場合には、ステップS09に進み、未到達の場合には、ステップS08を繰り返す。
【0031】
<ステップS09:ワイパモータ停止>
ワイパモータ33は停止し、ワイパアームによる払拭動作を終了する。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0032】
以上説明した本実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ウォッシャ液の噴射終了後にワイパアーム20を高速モードで一往復させることによって、撮像領域12に残るウォッシャ液の拭き残しSや液だれを短時間で拭き上げ、撮像手段の撮像に影響を及ぼす時間を短縮することができる。
(2)ウォッシャ液の噴射中はワイパアーム20を低速モードで駆動することによって、噴射されたウォッシャ液がブレード21全長に行き渡る時間を確保し、払拭性能を確保することができる。
【0033】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)ワイパウォッシャ装置を構成する各要素の形状、構造、配置、数量等は、上述した実施例の構成に限らず、適宜変更することができる。
例えば、ノズルの個数、配置や、制御系の構成などは適宜変更することができる。
また、実施例においては、撮像手段は左右一対のカメラを有するステレオカメラであったが、単独のカメラであってもよい。
(2)実施例においては、ウォッシャ液の噴射中はワイパアームを低速モードで駆動しているが、払拭性能の確保が可能である場合には、ワイパアームを高速モードで駆動してもよい。この場合、ウォッシャスイッチの操作時には常時ワイパアームを高速モードで駆動することになる。