(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダー(9)内をスライドしてブレーキパッド(14)に作用する所定の軸を有するピストン(10)を含む、ディスクブレーキ(1)のピストン−シリンダーユニット(19)を保護する可撓性ブーツ(100)であって、
前記可撓性ブーツは、一端において、前記シリンダーの第1の溝内に固定するように適合された第1の係合環(101)を備え、
前記溝は前記シリンダーの開口部の近傍に設けられており、
前記可撓性ブーツは、反対側の端部において、前記ピストンのヘッドの近傍に設けられた第2の溝内に固定された第2の係合環を(102)備え、
前記第1の係合環と前記第2の係合環との間には、前記ピストン(10)が前記シリンダー(9)の内部にあるときは、捲れ上がった形態をとり、前記ピストンが前記シリンダーから延出しているときは、展延された形態をとるように、複数の接続された環状バンド(106、107、108、111、112)と複数のプリーツ部(109、110)とを有し、
前記可撓性ブーツは、さらに表面を備え、複数の前記プリーツ部は、パッドの壁(30)と向き合うことができる部分を備える環状突出部(113、114)を有し、
前記環状突出部は、前記表面から側面に延出しており前記環状突出部のすべてよりも少ない範囲に亘っている少なくとも1つのスペーサ部材を有し、
前記スペーサ部材は、円形断面形状を有し、前記スペーサ部材が前記表面から外側面に延出するにつれて断面領域が減少するように先細にされて形成されており、それ故、前記スペーサ部材は、前記スペーサ部材の最小化された表面領域で前記パッドの前記壁と接触し、前記パッドの壁から離された前記表面の環状領域を維持し、
複数の前記スペーサ部材は、各隣接するペア間に距離を持って前記環状部分に沿って複数のペアになって分散されて形成されており、2つの隣接するスペーサ部材から形成された各ペアは、隣接する各ペア間の距離よりもより近接して配置されており、
前記複数のプリーツ部(109、110)は、第1のプリーツ部(109)と第2のプリーツ部(110)を備えており、
前記ペアになって分散されて形成されている複数のスペーサ部材(105)は、前記第1のプリーツ部(109)と前記第2のプリーツ部(110)上に互い違いに配置されており、
前記複数のスペーサ部材(105)は、球状キャップ形の隆起部である、
可撓性ブーツ。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディスクブレーキにおいては、制動力が、適当なキャリパ内に形成され、それぞれがシリンダーを有し、その内部でピストンが、パッドによって、回転ディスクの対向面に作用することができるようにスライドすることが可能であるピストン−シリンダーユニットによって発生される。
【0003】
このピストン−シリンダーユニットは、典型的には、シリンダーとピストン(特に、それらのスライド面)を、例えば、埃、汚物、水蒸気のような飛来物質および/または腐食剤の侵入に抗してこれを保護するための可撓性のブーツを備えており、前記のブーツは、制動作動が行われる間、シリンダー内部においてピストンが正確にスライドするように、および/または、ピストンのスライド面とシリンダーのスライド面に腐蝕が発生しないように保護する。
【0004】
正常に使用されるこれらの可撓性ブーツは、ベロース状であり、そのようなブーツは、それらの両端部の一方をピストンの周囲に、他方の端部をシリンダーの周囲に固定することによって、ピストン−シリンダーユニットにフィットされて、シリンダーの開口部の領域内においてピストン−シリンダーユニットを包囲して延出する保護バリヤーを形成している。
【0005】
可撓性保護ブーツが、休止状態にあるとき、すなわち、それがディスクブレーキ内にフィットされて、ピストンがシリンダー内にすっかり配置されているときは、ブーツが、磨耗していないパッドに起きるように、ブーツの或る一部分が互いの周囲にめくられて1または複数の湾曲部またはプリーツ部が形成される形態をとる。可撓性ブーツが、ディスクブレーキ面にフィットされているときは、これらのプリーツ部が、パッド側に向き合う突出部分、特に、パッドの摩擦ライニングの支持板側に向き合う突出部分を有する点に注目すべきである。パッドの摩擦ライニングが磨耗する結果として、ピストンは、ディスクに向かって延出し、可撓性ブーツは、展延されてピストンによって占められる新しい位置に順応する。
【0006】
ディスクブレーキを組み立てる間に、特に、ピストン−シリンダーユニットとその可撓性防御ブーツを組み付ける間に、一定量の空気が、ブーツとピストン−シリンダーユニットの間の空隙部にトラップされたままになることが知られている。
【0007】
ブレーキの作動中に、パッドが作用するディスクの過熱が原因となって、熱が放出されてピストンによって前記のトラップされた空気に伝わり、空気が可撓性ブーツに及ぼす圧力が増大する。この圧力は、可撓性ブーツの膨脹をもたらす原因となり、ブーツのプリーツ部その他の部分が、パッド、特に、支持プレートと直接接触する。この接触は、新しい、つまり磨耗していない摩擦ライニングを有し、ピストンが実質的に完全にシリンダー内に格納され、可撓性ブーツのプリーツ部の突出部が支持プレートに近接しているディスクブレーキに特に発生する傾向がある。
【0008】
制動作動の結果として、特に、この作動が長引いた結果として、パッドは高温に達して燃え出す可能性があり、いずれにせよ、パッドが接触する可撓性ブーツを損傷する可能性があるので、問題が見つかり次第ブーツを交換しなければならないことが指摘されている。
【0009】
更には、可撓性ブーツとパッドとの間の接触という問題は、ブーツがパッドに接近する数プリーツ部を備える相当量の可撓性ブーツを必要とする浮動キャリパを使用するディスクブレーキにおいて、特に注目されている。
【0010】
この損傷を防ぐために従来技術によって提案された1つの方法は、トラップされた空気の出口となる1つの適当な孔を備える可撓性ブーツの使用を提供している。この技術によれば、空気の放出がブーツの膨脹を防ぎ、したがってまた、パッドとの接触を防ぐ。
【0011】
米国特許第4,809,821号から知られるように、別の方法は、シリンダーの近傍において適当な環状チャンネルの形成を提供しており、この場合、可撓性ブーツを形成するプリーツ部が、前記チャンネル内に完全に収容されることができるのでプリーツ部は、パッドから適当に離間したままである。
【0012】
しかしながら、これまでに提案された諸方法は、可撓性保護ブーツと、付随的に燃え出してブーツを損傷するパッドとの接触を防ぐことができないことが見出されている。
【0013】
実際、制動中に到達される高温のために、空気の出口孔を利用しても、空気および空気をトラップするブーツの膨張を完璧に防ぐには充分ではない。
【0014】
ブーツとパッドの間の接触は、上に述べた空気の膨張によってのみ惹起されるばかりでなく、ブーツを形成するプリーツ部の不正確な配置が原因で発生することも注目されている。例えば、ブーツのプリーツ部の不正確な配置は、製造者による組立作業中に発生することがあり、メンテナンス作業者によるパッドの交換に引き続く可撓性ブーツの再折り曲げの結果として発生する場合は一層発生しやすい。実際、パッドの交換は、ピストンをシリンダー内に戻さなければならないので、その作業が行なわれる状態においては、取り外されたパッドによって自由になるスペースが限られているために、ブーツの正確な再折り曲げが必ずしも保証されない。
【0015】
内部にシリンダーが形成されるキャリパの構造を複雑化、脆弱化するのと同様に、可撓性ブーツを完全に収容するための適当なチャンネルの存在は、ブーツの不正確なマウントまたはトラップされた空気の過熱によって起こる膨れによって創り出される問題を解決しないこともまた念頭に置かなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1、2は、特に図示しない自動車用のディスク2の制動バンドに作用するディスクブレーキ1を一般的に示している。
【0022】
図1に示す特別な具体例において、ディスクブレーキ1は、浮動キャリパ型であるが、この発明は、例えば、固定キャリパ型ディスクブレーキのような異なる型のディスクブレーキにも応用することができる。
【0023】
ディスクブレーキ1は、自動車の車輪に関連するディスク2と、ブラケット4およびブラケット4に機械的に連結された浮動本体5を含むキャリパ3を有する。
【0024】
自動車のサスペンションのスタブアクスルに固定されるブラケット4は、ほぼU字状を呈し、ディスクブレーキ1の軸線I−Iの右側と左側においてそれぞれ、ディスク2を跨いで設けられた第1のブリッジ部材6と第2のブリッジ部材7を有する。第1および第2のブリッジ部材6、7は、ディスク2の対向する両側において軸線I−Iに対してほぼ直角をなして延出する第1のクロス部材8と第2のクロス部材8´によって、互いに強固に接続される。
【0025】
更に、ブラケット4内には、それぞれのパッド13、14を収容するために2つの座11と12が形成されている。これらのパッド13、14は、対応する摩擦ライニング35、36を支持するためのそれぞれのプレート25、26を有している。
【0026】
浮動本体5は、ディスク2とパッド13、14を跨いで設けられており、プレート25の傍を延出するサイド40とプレート26の傍を延出するサイド41を有し、プレート26に作用するフラットな面を備えた突出部42を備えている。
【0027】
浮動本体5のサイド40は、軸線I−Iの対向両端部の領域において、それぞれのシリンダー状の座43を有しており、それぞれが、案内される態様でスライドするようにブラケット4に固定されたシリンダー状案内部材44内に係合されている。シリンダー状の座43とこれに対応している軸線I−Iの左側に位置する案内部材44だけが、
図1において視認することができる。更に、従来の保護ブーツ17が、各シリンダー状の座43とこれに対応する案内部材44の間にフィットされている。
【0028】
説明した具体例においては、浮動本体5のサイド40は、2つのピストン−シリンダーユニット19を含んでおり、
図1にはそのうちの1つだけを見ることができる。各ピストン−シリンダーユニット19は、サイド40の一部分45を有しており、前記1部分45は、内部において軸線a−aの油圧シリンダー9を規定しており、前記シリンダー9は、座12の方向に向かって対面する開口27と、ヘッド29を備えてシリンダー9内を軸方向にスライドしてパッド14に作用することができるピストン10を有する。
【0029】
浮動本体5内には、従来どおりの態様でダクトが存在しており、シリンダー9にブレーキオイルを供給する。このシリンダー9は、従来どおりのシール部28のための環状溝18を備えている。
【0030】
ピストン−シリンダーユニット19はまた、シリンダー9とピストン10(特にそれらのスライド面)とを、飛来物質および/または腐食剤の進入から保護するために可撓性ブーツ100を有する。
【0031】
この可撓性ブーツ100は、ベロース状であって、当該ベロースは、ベロースが休止状態にあるとき、または、ベロースが接続されているピストン10が、シリンダー9の内側にあるとき生じる1または複数のプリーツ部または曲折部を備える捲れ上がった(rolled up)ような形態を呈する。更に、この可撓性ブーツ100は、ピストン10がシリンダー9からディスク10に向かって延出して、実質的にシリンダー状または切頭円錐形状の形状をとることができる。
【0032】
特に、パッド13、14が新しい状態、すなわち、(
図2に例示するように)摩擦ライニング35、36が摩滅していない状態にあるときは、可撓性ブーツ100は、捲れ上がった形態をとるが、ピストン10が摩擦ライニング35、36が摩滅した結果として、延出するときは展延された状態になる。
図3は、
図1のブレーキのディスクの一部分を、ピストンが、摩擦ライニング35、36が殆ど完全に摩滅した結果として前方へ延出された状態で示している。
図3の視点においては、可撓性ブーツ100が、ピストン10の外側表面に密着しているが、ピストン10が前方に延出している状態においては、可撓性ブーツ100が、やはり、表面にほぼ密着はしているけれども、例えば、コルゲート状の形態を有している。
【0033】
図4は、捲れ上がった形態におけるときの可撓性ブーツ100の一部の断面図である。
【0034】
可撓性ブーツ100は、その一方の端部に、シリンダー9を規定する部分45に固定することを意図する第1の環状領域、または、第1の係合環101を有するとともに、反対側の端部には、ピストン10に固定することを意図する第2の環状領域または第2の係合環102を有する。
【0035】
可撓性ブーツ100を固定することができるように、前記の部分45は、開口部27に近傍に、第1の環101を収容するための溝20を有するとともに、ピストン10は、ヘッド29の近傍に第2の環102を収容するための溝29を有している。例えば、係合環101、102の厚さと形状は、これらの両環が、可撓性ブーツ100の固定を確実にするように造形されたた溝20、21内に係合することができるように形成されている。いずれにせよ、可撓性ブーツ100をピストン−シリンダーユニット19に固定するために、他の任意の適当な手段を用いることができる。
【0036】
更に、部分45には、可撓性ブーツ100が捲れ上がった形態にあるときに、これを少なくとも部分的に収容するために、開口部27の領域にオプションによる環状ハウジング22が形成される。
【0037】
可撓性ブーツ100は、外側面103と内側面104を有し、そして、複数の互いに接続され、異なる直径を有する同心の環状のバンド部分を備えている。
【0038】
より詳細に言えば、可撓性ブーツ100は、捲れ上がった上がった状態において、第1の係合環101と、座22の内部に収容され、径方向に設けられることを予定した第2のバンド107との間、つまり、可撓性ブーツ100がピストン−シリンダーユニット19にフィットされたとき、シリンダー9の軸線a−aにほぼ直角な面内にあるようにされた第1の接続バンド106を備える。
【0039】
第2のバンド107は、可撓性ブーツ100がピストン−シリンダーユニット19にフィットされたとき、軸線a−aのシリンダーを規定するように、第3のバンド108に接続される。第3のバンド108は、第1のプリーツ部109に接続される。
【0040】
この第1のプリーツ部109は、第4のバンド111によって、第2の係合環102に接続され、径方向に設けられる、つまり、可撓性ブーツ100が、ピストン−シリンダーユニット19にフィットされたとき、シリンダー9の軸線a−aにほぼ直角になるように、第5の帯112に接続される。
【0041】
第1および第2のプリーツ部109、110は、環状陥没部115によって互いに接続されたそれぞれの環状突出部113、114を有している。
【0042】
外側面103の1つまたは複数の部分は、パッド14に面することができる(
図2参照)、つまり、これらの部分は、パッドと向き合う、特に、可撓性ブーツ100がピストン−シリンダーユニット19にフィットされたとき、プレート25の壁30と向き合うことができる点が指摘される。特に、
図2に示すように、環状突出部113、114は、パッド14と対面することができる。
【0043】
可撓性ブーツ100は、有利にも、少なくとも1つのスペーサ部材105を備えており、これらのスペーサ部材は外側面103の少なくとも一部がパッド14から、特に、プレート25の壁30から離間した状態を適切に維持することを可能とする。
【0044】
図示した具体例においては、スペーサ部材105が、環状突出部113、114の面に配置されている。
【0045】
これらのスペーサ部材105は、外側面103とプレート25の間に介装されて、壁30と接触するように有利に予定されており、プレートと、例えば、環状突出部113、114のような可撓性ブーツ100の諸部分とが直接接触することを防ぎ、したがって、制動作用から結果的にパッド14と可撓性ブーツ100との間に生じる熱の交換を減少する。
【0046】
1つの具体例によれば、スペーサ部材105は、ブーツ100に形成された隆起部であって様々な形状をとることができる。これに関連して、1つの具体例によれば、隆起部とプレート25の壁30の間の接触面積を、理想的に1点に減少する形状は、この目的に特に適切である。
図4には、スペーサ部材105が球状キャップ形の隆起部である。
【0047】
図5は、別の例として、ほぼ切頭円錐形を備える隆起部105´で形成されたスペーサ部材を有する可撓性ブーツを示し、
図6は、切頭楕円錐形の隆起部105´´で形成されたスペーサ部材を有する可撓性ブーツ100を示している。
【0048】
しかしながら、例えば、切頭角錐形や、(1方向または複数方向に更に突出する)不規則断面の形状のような図示したもの以外の他の形状を使用することも可能である。
【0049】
更に、スペーサ部材105は、可撓性ブーツ100の表面103に様々に可能な表面密度で設けることができる。例えば、スペーサ部材105は、可撓性ブーツの表面の一部分(例えば、隆起部113、114の表面)に亘ってほぼ一様に分散配置することができ、或いは、これらのスペーサ部材の2またはそれ以上の群を形成し、これらの群が可撓性ブーツ100に適切に分散するように設けることもできる。これに関して、
図4、5においては、隆起部105、105´が2つの群をなして配置されているのに対して、
図6に示す隆起部105´´が、ほぼ一様に分散されていることに注目されたい。
【0050】
スペーサ部材105を備えている可撓性ブーツ100は、従来の態様で製造することができる。例えば、流動素材を、消極的な形態においては捲り上げられた構造のブーツを再生産することが可能なキャビティーを備えるモールド中へ射出することによって製造される。典型的には、可撓性ブーツ100を製造するのに用いる材料は、ブレーキオイルに対して耐性があり、ブーツが受ける温度に対して耐える材料である。好ましくは、制動中に到達する温度が増大するのに伴って、下記の材料が、可撓性ブーツ100を製造するために使用される。:ミネラルオイルの存在する環境下で用いるSBR(スチレンブタジエンゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)またはシリコンゴム、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)。
【0051】
既に説明したように、可撓性ブーツ100は、その休止状態においては、それが、新しいパッド13、14を備えるピストン−シリンダーユニット19にフィットされるときに、それが有している同じ捲れ上がった形態を自然にとる態様で形成される。
【0052】
更に、可撓性ブーツ100によって自然的にとられるこの形態を目立って変更しないようにするために、スペーサ部材105は、適切に小さな寸法にすることが有利である。
【0053】
例えば、球形キャップ型のスペーサ部材105は、0.3mmと0.9mmの間、好ましくは0.5mmと0.7mmの間、特定的には約0.6mmの半径を備えている。
【0054】
展延状態において、可撓性ブーツ100は、(使用されるパッドの厚さに応じて)相当な長さをとることが指摘される。例えば、固定キャリパを用いる場合は、可撓性ブーツ100のこの長さは、8mmと20mmの間、浮動キャリパを用いる場合は25mmと40mmの間の値であるが、50mmに達しても差し支えない。
【0055】
更に、この可撓性ブーツは、典型的には、2つまたは3つのプリーツ部を有している。
【0056】
可撓性ブーツ100は、好ましくは、ブーツとピストン−シリンダーユニット19の間に存在する空気の導出を利するために知られたタイプの(図示されない)開口部と弁を備えている。
【0057】
従来の態様で行われる可撓性ブーツ100のピストン−シリンダーユニット19への取り付けの間は、可撓性ブーツ100とスペーサ部材105を、これらが捲れ上がった状態のときは、プレート25の壁30と接触しないように配置することが可能である。
【0058】
制動作用が起きると、ピストン10は、ブレーキオイルの圧力の下でプレート25を加圧するので、パッド14は摩擦ライニング35によってディスク2に作用して、ブレーキバンドに圧力を及ぼす。パッド14が加圧されてディスク2と接触する結果、案内部材44によって案内される浮動本体5に反力が作用して、ピストン10の力に反対方向の力を及ぼす。
【0059】
この浮動本体5の反作用が原因となって突出部42が、パッド13に、したがってディスク2に反作用を及ぼすので、ディスクのブレーキバンドは、パッド14によって及ぼされる力と大きさが等しく方向が反対である力の作用を受ける。
【0060】
以上説明したように、制動中に、ディスク2が過熱されて熱を放出し、これが、パッド13、14に、したがってまたピストン10に伝達される。更に、放出された熱はピストン10によって、可撓性ブーツ100とピストン−シリンダーユニット19の間においてトラップされた空気に伝えられて空気がブーツに及ぼす加圧力を増大する。
【0061】
知られた可撓性ブーツにあっては、この圧力は、ブーツがパッド14、特にプレート25と接触するように、可撓性ブーツを膨張させる原因となる。この接触は、摩擦ライニングが新しいほど、つまり、これらが摩滅していないほど発生する傾向があるので、可撓性ブーツは、パッド14に向かって延出するプリーツ部を有する捲れ上がった形態を備えている。
【0062】
既に説明したように、パッド14は、それがもし可撓性ブーツと直接接触していると仮定すれば、高温に達して燃え出すか、ブーツを損傷するであろう。
【0063】
従来のディスクブレーキにおいて起こり得る場合とは対照的に、
図1のディスクブレーキにおいては、可撓性ブーツ100は、スペーサ部材105による場合を除きパッド14とは直接接触しない。特に、スペーサ部材105は、たとえ、ブーツが内部にトラップした空気によって膨脹しても、可撓性ブーツ100をパッド14から離間した状態に維持する。
【0064】
スペーサ部材105の存在は、可撓性ブーツ100とパッド14との接触面積を大きく減らすとともに、これらの間のスペースを創造して、可撓性ブーツを燃やすか損傷する原因をなすような熱交換を防ぐ。
【0065】
スペーサ部材105の存在は、ブーツをピストン−シリンダーユニット19に装着する過程、或いは、パッド13、14を交換する作業を行う間に発生するように、ブーツがたとえ、正確に捲れ上がった状態にないような場合であっても、可撓性ブーツがパッド14と直接接触することを有利に防ぐ。
【0066】
更に、この発明の教示のおかげで可撓性ブーツの一体性が、ブーツを収容するための適切なチャンネルを形成するために、シリンダーを規定する本体に設計変更を施したり、複雑化したり、および/または、この構造を脆弱化したりすることなく維持されることが可能である。
【0067】
当然のことではあるが、付随する特定の要件を満足するために、当技術分野の当業者が、上に説明された可撓性ブーツとディスクブレーキに多くの改変を施すことが可能であり、これらはすべて、付属するクレームによって規定されるこの発明の保護の範囲に含まれる。