(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配位子L’及びL”が、窒素含有複素環化合物、ハライドF、Cl、Br及びI、アルキルアセチリド、アリールアセチリド、シアン化物、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、脂肪族又は芳香族アルコラート、脂肪族又は芳香族チオアルコラート、アミド、カルボキシレート、2つの窒素原子を含む複素環化合物、ジアルコールから誘導されたジアルコラート、ジチオールから誘導されたジチオラートから選択される、請求項1乃至4のいずれかに記載の化合物。
有機発光デバイス又はダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)及び有機レーザーダイオード(O−レーザー)からなる群から選択される、請求項7に記載の電子部材。
式(1')の化合物が、発光層において発光材料として使用され、及び/又は、発光層において発光化合物のためのマトリクス材料として、及び/又は、正孔障壁層において正孔障壁材料として、及び/又は、電子輸送層において電子輸送材料として、及び/又は、正孔輸送又は正孔注入層において正孔輸送材料として、及び/又は、励起子障壁層において電子障壁又は励起子障壁材料として使用される、請求項7又は8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
式(1')の化合物が、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザカルバゾール、双極性マトリクス材料、シラン、アザボロール、ボロン酸エステル、トリアジン誘導体又は亜鉛錯体から選択されるマトリクス材料と組み合わせて発光層において発光材料として使用される、請求項9に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【背景技術】
【0002】
有機半導体が機能材料として使用される有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)の構造が、例えば、特許文献1−4に記載されている。ここで使用される発光材料は、蛍光の代わりにリン光を示す有機金属錯体である(非特許文献1)。量子力学的理由のため、リン光エミッターとして有機金属化合物を使用することにより、エネルギー及び電力効率を4倍増まで高めることが可能である。しかしながら、一般には、三重項発光を示すOLEDの改善の必要性が、特に金属錯体の安定性、効率、作業電圧及び寿命に関して、なお存在する。したがって、ここで更なる改善が望まれる。また、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて使用される他の化合物、例えば、マトリクス材料及び電荷輸送材料などの場合においても改善の必要性がなお存在する。
【0003】
先行技術においてリン光性OLEDに使用される三重項エミッターは、通常、イリジウム錯体である。これらOLEDにおける改善は、多座(polypodal)配位子又はクリプタートを有する金属錯体を使用することにより、錯体がより高い熱安定性を有する結果として達成され、OLEDの延長された寿命をもたらす(特許文献5−7)。しかしながら、これら錯体を高品質且つ長寿命のエレクトロルミネセンスデバイス、例えばテレビやコンピューター用モニターに使用できるように、錯体の更なる改善がなお望まれる。
【0004】
金属錯体は、有機エレクトロルミネセンスデバイスの他の機能においても使用され、例えば、電子輸送材料としてAlq
3(トリス(ヒドロキシキノリナート)アルミニウム)が、マトリクス材料又は正孔障壁材料としてBAlq(例えば、非特許文献2)が使用される。高品質エレクトロルミネセンスデバイスにおいてこれらの材料が使用される場合に、更なる改善もまた必要である。
【0005】
しかしながら、三重項発光を表示するOLEDはなお、改善を必要とする問題に見舞われている。これは特に三重項エミッター自体に当てはまる。式A及びBで表される構造としてイリジウムに配位結合した1−フェニルイソキノリン配位子を含む金属錯体に基づく赤色エミッターが、文献(例えば、特許文献8、9)から知られている。ここに示される構造は、フェニル環とイソキノリン環との間の架橋が存在しないか(式A)、存在するか(式B)の点で相違している。この架橋は、2−20アルキル炭素原子を含み、これらはヘテロ原子により置き換えられてもよい。
【化1】
【0006】
この種の化合物は、赤色エミッターとして適しているが、現実問題として、これら化合物が工業的に使用されることがないと思わせる重大な欠点を有している。
【0007】
1.上述した化合物の低い熱安定性は重大な欠陥である。したがって、例えば、ホモレプティック錯体ファク−トリス(1−フェニルイソキノリン−C
2,N)イリジウム(III)(一般に、Ir(piq)
3といわれる)は分解しないで昇華され得る。典型的な高真空条件(p<10
−7mbar)以下でさえ、この化合物の考慮すべき分解が観察され、使用されたIr(piq)
3の量の約30質量%を占めるイリジウム含有灰だけではなく、1−フェニルイソキノリン及び他の低分子量化合物の遊離もまた観察される。この熱分解は低再現性を有するデバイス特性をもたらし、特に稼働寿命に悪影響を及ぼす。凝華による金属錯体の精製においても、分解は錯体の大量損失をもたらすため、より熱安定性に優れた錯体を利用することが望まれる。
【0008】
2.現在でもなお稼働寿命は低く、これが高品質及び長寿命デバイスにおけるリン光性OLEDの導入の障害となっている。
【0009】
3.錯体は多くの場合が有機溶媒に低溶解性であり、これが再結晶又はクロマトグラフィーによる効率的な精製をかなり困難又は不可能なものとしている。これは、ディスプレイの製造に要求される比較的大量の精製に特に当てはまる。
【0010】
4.錯体は、特に溶液において酸化感受性である。これらの化合物の精製、貯蔵、輸送及び処理は不活性ガス下で行われなければならない可能性があり、これが工業的に非常なコスト高となるため、重大な欠点を示す。
【0011】
特に、錯体の寿命と熱安定性とを同時に改善することが有利であろう。したがって、上述した欠点を被らず、しかし効率及び発光色という点では既知の金属錯体と少なくとも同等である化合物についての要求が存在する。
【0012】
熱安定性が改善された錯体が特許文献10に記載されている。しかしながら、これら錯体の配位子の合成は複雑であり、より容易に入手可能な配位子を有し、更に良好な電子特性及び高い熱安定性を有する錯体が有利であろう。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の目的は、有機エレクトロルミネセンスデバイスに使用される新規な金属錯体を提供することである。金属錯体はここで、特に使用される金属に依存して、エミッター、マトリクス材料、正孔障壁材料、電子輸送材料として、またOLEDにおける他の機能において使用され得る。特に、赤、緑及び青色リン光金属錯体において改善の必要性がなお存在する。
【0016】
驚くべきことに、一般的に使用され、以下に説明する化合物において使用される5員キレート環に代えて6員キレート環を使用した特定の新規な化合物が、OLEDにおいて三重項エミッターとして優れた特性を有することが見いだされた。
【0017】
OLEDにおいて使用される、6員及び7員キレート環を有する金属錯体が、文献に記載されている。
【0018】
欧州特許第1211257号明細書には、フェニル環とピリジン環の間に、6員環および非連続的な共役配位子系を有するキレート錯体の形成をもたらす非共役単位X、例えば、O、S、CR
2等を有する金属錯体が記載されている。これらの錯体は上記の特許出願の例により示されるように青色〜オレンジ−赤色の発光を示すが、濃い赤色発光の生成には明らかに適しておらず、これは配位子の共役の欠如に起因していると思われる。しかしながら、現在、濃い赤色発光と良好な電子的特性と高い熱的安定性とを有する化合物が切実に欠けている。さらに、挙げた特許出願において記載されている化合物を含む発光ダイオードについては、非常に高い駆動電圧が必要とされる。つまり、例えば、8〜12Vの電圧が青色発光について報告されている。これは用途には不適切であり、これもまた配位子の共役の欠如に起因するのかもしれない。従って、どのようにこのような6員環のキレート構造を有益に用いることができるかということを理解することができない。
【0019】
特開2003−342284号公報には、6員環のキレート環を有する同様の錯体が記載されており、ここで単位Xは、さらに大きな環系の一部である。特に、Xはカルバゾール系の窒素であるか、フルオレンの9位における炭素である。この場合もその配位子が非共役である系の形成をもたらす。この理由のために、上記した同じ欠点をここでも予想することができる。
【0020】
特開2004−111193号公報には、7員環のキレート環を有する共役錯体および非共役錯体が記載されている。
【0021】
国際公開第2004−108857号には、三座又はさらに高い多座鎖構造配位子を有する金属錯体を含有する有機エレクトロルミネセンスデバイスが記載されている。
【0022】
国際公開第2006−061182号には、配位子の配位原子が炭素及び窒素である6員キレート環を有する金属錯体が記載されている。
【0023】
さらに、驚くべきことに、以下に詳細に記載する所定の金属キレート錯体が、特に、寿命、効率及び加熱に対する安全性に関して有機エレクトロルミネセンスデバイスに著しい改善をもたらすことが見出された。これは特に緑色及び青色リン光エレクトロルミネセンスデバイスに当てはまる。したがって、本発明は、有機エレクトロルミネセンスデバイスに用いることのできる特に好適な金属錯体に関する。また、本発明は、これら錯体を含有する有機エレクトロルミネセンスデバイスに関する。
【0024】
本発明は、式(2)で表される部分構造M(L)
nを含む式(1)で表される化合物を提供する。
【化2】
【化3】
【0025】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される。
【0027】
Eは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々においてsp
2混成炭素又は窒素原子である。
【0028】
Zは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々においてC(R)
2又はNRである。
【0029】
Cy1、Cy2は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々においてN原子を介してMに配位する置換又は無置換の複素環であり、基Zと結合していてもよい。
【0030】
Rは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々は、H、D、F、CN、1〜40個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルコキシ基、3〜40個の炭素原子を有する分岐もしくは環式アルキル又はアルコキシ基、2〜40個の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基であり、各々において、1又は2以上の非隣接CH
2基は、−R
2C=CR
2−、−C≡C−、Si(R
2)
2、Ge(R
2)
2、Sn(R
2)
2、−O−、−S−、−NR
2−、−(C=O)−、−(C=NR
2)−、−P=O(R
2)−、SO、SO
2又は−CONR
2−により置き換えられていてもよく、また、1以上のH原子はFにより置き換えられていてもよく、あるいは、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環、5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であり、各々は、1以上の非芳香族ラジカルR
2により置換されていてもよく、あるいは、これらの系の2、3又は4つの組み合わせであり、ここでRは、環Cy1及び/又はCy2の一方又は双方と共に脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を更に形成していてもよい。
【0031】
R
2は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環系からなる群から選択される。ここで1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNO
2により置き換えられていてもよく、2以上の隣接する置換基R
2は、それらが結合する原子と共に単環又は多環の脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成する。
【0033】
式(1)中、
配位子L’及びL”は、同一又は異なり、単座、二座又は三座キレート配位子から選択され、配位子Lと結合していてもよい。
【0034】
m、oは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々が0、1又は2であり、且つ、n+m+o=2又は3である。
【0035】
但し、n=1であり、且つ、Lが四座配位子であるとき、式(2)はM−C結合を有さないか、一つのみ有し、もしくは、式(2)は四座環状配位子を有する。
【0036】
また、式(1)で表される化合物から下式で表される化合物を除く。
【化4】
【0037】
式中、R及びmは上記で特定された意味と同じ意味を表す。
【0039】
Y
1は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、H、ハロゲン、カルボキシル、カルボキシレート、アルキルもしくは官能化アルキル基、OH又はアミノ基である。
【0040】
Y
2は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、H、ハロゲン、アルコキシ、OH、ニトロ又はアミノ基である。
【0042】
添え字n、m及びoは、金属Mにおける配位数が、金属に応じてこの金属の通常の配位数に全部で相当するように選択される。遷移金属については、これは、金属に応じて配位数4、5又は6であり、すなわち、添え字n、m及びoは、遷移金属については、これらの配位部位が配位子Lに結合した更なるドナー基により飽和していない場合には、通常、1、2又は3である。金属配位化合物が異なる配位数を有すること、すなわち、金属及び金属の酸化状態に応じて、異なる数の配位子と結合することは一般に知られている。有機金属化学又は配位化学の分野における当業者の通常の専門知識には、異なる酸化状態における金属及び金属イオンの好ましい配位数が含まれるので、金属及びその酸化状態、並びに、式(2)の配位子の正確な構造に応じた好適な態様において、当業者が好適な数の更なる配位子を使用し、このために添え字n、m及びoを選択することは容易であろう。更に、本発明に係る金属錯体及び/又は部分構造M−L
nは、使用される金属の酸化状態に応じて荷電され得、あるいは荷電され得ない。錯体が荷電される場合、錯体は対応する対イオンを更に含む。
【0043】
本発明の目的上、アリール基は6−60個のC原子を含み、本発明の目的上、ヘテロアリール基は1−59個のC原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含み、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/又はSから選択される。ここでアリール基又はヘテロアリール基は、単一の芳香族環(すなわちベンゼン)又は単一の芳香族複素環(例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等)、または、縮合アリール又はヘテロアリール基(例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等)のいずれかを意味すると捉えられる。本発明の目的上、環状カルベンは、中性C原子を介して金属に結合する環状基である。ここで環状基は、飽和又は不飽和であり得る。ここで好ましいものはアージュエンゴ(Arduengo)カルベン、すなわち、二つの窒素原子がカルベンC原子に結合したカルベンである。5員アージュエンゴカルベン環又は他の不飽和5員カルベン環は、本発明の目的上同様にアリール基とみなされる。
【0044】
本発明の目的上、芳香族環系は環系に6−60個のC原子を含む。本発明の目的上、芳香族複素環系は環系に1−59個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含み、C原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/又はSから選択される。本発明の目的上、芳香族又は芳香族複素環系は、必ずしもアリール又はヘテロアリール基だけを含む必要はないが、代わりに、更に複数のアリール又はヘテロアリール基が非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子の10%未満)、例えばC、N又はO原子により結合し得る系を意味すると捉えられることを意図する。したがって、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の系もまた、本発明の目的上芳香族環系を意味すると捉えられることを意図し、2以上のアリール基が、例えば、直鎖又は環状アルキル基又はシリル基により遮られている系についても同様である。
【0045】
本発明の目的上、C
1−C
40アルキル基(個々のH原子又はCH
2基は上述した基により更に置き換えられていてもよい)は、好ましくは、ラジカル:メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、tert−ペンチル、2−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、tert−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、4−ヘプチル、シクロヘプチル、1−メチルシクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、1−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−(2,6−ジメチル)オクチル、3−(3,7−ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロ又は2,2,2−トリフルオロエチルを意味すると捉えられる。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル又はシクロオクテニルを意味すると捉えられる。アルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル又はオクチニルを意味すると捉えられる。C
1−C
40アルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ又は2−メチルブトキシを意味すると捉えられる。5−60個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環系は、各々において上述したラジカルRにより置換されていてもよく、所望される位置を介して芳香族又は芳香族複素環基に連結されていてもよく、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス又はトランス−インデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントルイミダゾール、ピリジムイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味すると捉えられる。
【0046】
本発明の目的上、環状アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基(個々のH原子又はCH
2基は上述した基により更に置き換えられていてもよい)は、好ましくは、ラジカル:シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、テトラヒドロフラン、ペンタメチレンオキシド、ヘキサメチレンオキシド、テトラメチレンスルフィド、ペンタメチレンスルフィド等を意味すると捉えられる。多環式アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基は、2以上の上記環状基が1以上の結合を介して連結しているか、2以上の上記気が互いに縮合環系を形成していることを意味する。また、例えば、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン(トリシクロ[3.3.1.1]デカン)等の二環式、三環式又は多環基も包含される。
【0047】
Cy1及びCy2は、好ましくは芳香族複素環基である。また、環式、脂肪族、芳香族又は芳香族複素環がCy1及びCy2に更に縮合していてもよく、及び/又は、Cy1及び/又はCy2は勿論置換されていてもよい。ここで、好ましい置換基は、後述するラジカルR
1である。
【0048】
更なる態様において、式(2)で表される部分構造は、式(3)により表されることが好ましい。
【化5】
【0049】
式中、記号及び添え字は上記に定義された意味と同じ意味を表す。式(3)又は(4)中の置換基Zは、環Cy3の一部であり、Cy1又はCy2と共に脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成する。
【0050】
本発明によれば、式(2)により表される部分構造は式(4)により表されることもまた好ましい。
【化6】
【0051】
式中、記号及び添え字は上記に定義された意味と同じ意味を表す。この態様において、Zは、2つの環Cy3及びCy4の一部であり、Cy1及びCy2と共に脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成する。
【0052】
基C=Zの結合順序(binding order)は、好ましくは>1〜2であり、より好ましくは1.5〜2である。結合順序の2は、実際の二重結合を意味し、一方、結合順序の1.5は共役芳香族又は芳香族複素環系を示す。
【0053】
本発明の他の態様において、式(2)により表される部分構造は式(5)又は(6)により表される。
【化7】
【0054】
式中、記号及び添え字は上記に定義された意味と同じ意味を表す。
【0055】
Xは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、C(R
1)又はNである。但し、Nにより表される隣接するXは最大で2つである。
【0056】
R
1は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、CNO、NCS、SCN、CF
3、1〜40個の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、3〜40個の炭素原子を有する分岐、環式又は多環式アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、2〜40個の炭素原子を有するアルケニル又はアルキニル基(各々は、1以上のR
2基により置き換えられていてもよく、各々において、1つのCH
2基又は2以上の非隣接CH
2基は、−R
2C=CR
2−、−C≡C−、Si(R
2)
2、Ge(R
2)
2、Sn(R
2)
2、C=O、C=S、C=Se、C=NR
2、P(=O)(R
2)、SO、SO
2、NR
2、O、S又はCONR
2−により置き換えられていてもよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNO
2により置き換えられていてもよい。)、又は、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環系(これらは1以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基(これらは1以上のラジカルR
2により置換されていてもよい。)、あるいは、上記系の組み合わせからなる群から選択され、ここで、2以上の隣接する置換基R
1は、それらが結合する原子と共に単環又は複素環の脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成していてもよく、該環系は1以上のラジカルR
2により置換されていてもよい。
【0057】
R
2は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環系からなる群から選択され、ここで1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNO
2により置き換えられていてもよく、2以上の隣接する置換基R
2は、それらが結合する原子と共に単環又は多環の脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成する。
【0058】
Cy3、Cy4、Cy5は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成するように選択される。
【0059】
更なる態様において、式(2)により表される部分構造は式(7)又は(8)により表されることが好ましい。
【化8】
【0060】
式中の記号及び添え字は、上記で定義された意味と同じ意味を表す。
【0061】
本発明に係る更なる部分構造M(L)nは、式(9)又は(10)により表される部分構造である。
【化9】
【0062】
式中の記号及び添え字は、上記で定義された意味と同じ意味を表す。
【0063】
金属Mは、好ましくは、Zr、Hf、Mo、W、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag及びAuからなる群から選択され、特に好ましくはIr、Pt及びCuである。
【0064】
本発明において、R
1は、より好ましくは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、H、D、F、Br、I、CN、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、3〜6個のC原子を有する分岐又は環式アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基(これらは1以上のR
2基により置換されていてもよく、各々において、1つのCH
2基又は2以上の非隣接CH
2基は、R
2C=CR
2、C=O、NR
2、O又はSにより置き換えられていてもよく、1以上のH原子は、F、Br、I又はCNにより置き換えられていてもよい。)、5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環系(これらは1以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、5〜20個の芳香族環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基(これらは1以上のラジカルR
2により置換されていてもよい。)、あるいは、上記系の組み合わせからなる群から選択され、ここで、2以上の隣接する置換基R
1は、単環又は多環の脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成し(該環系は1以上のラジカルR
2により置換されていてもよい。)、配位しているN原子に対してオルト位にあるC原子は、Mと共に環を形成していてもよい。
【0065】
特に好ましいR
1は、メチル基、エチル、i−プロピル、t−ブチル、フェニル、o−/m−/p−ビフェニル、o−/m−/p−又は分岐テルフェニル、1−/2−ナフチル、2−/3−/4−ピリジル及びジアジン(diacine)であり、ジアジンは、好ましくは、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン又はこれらの誘導体から選択される。
【0066】
特に好ましい態様において、部分構造M(L)
nにおける配位子L
nは、三座又は四座配位子であり、式(11)又は(12)において示される。
【化10】
【0067】
式中の記号及び添え字は、上記で定義された意味と同じ意味を表す。R
3は、Mに配位する基であり、5、6又は7員環キレートが形成されるように選択され、C、N、P、O、S又はこれらの組み合わせから選択されるドナー基を含む。
【0068】
式(12)中の半サイクルは、脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成するのに必要な基を表すが、必ず存在するものではない。
【0069】
式(11)又は(12)により表される更なる部分構造は、式(13)又は(14)により表される。
【化11】
【0070】
式中、記号及び添え字は、上記に定義された意味と同じ意味を表す。R
3は、好ましくは、ドナー基C、N、P、O、S又はこれらの組み合わせを介して金属Mに結合している。
【0071】
好ましい炭素含有ドナー基R
3は、アセチリド、及び、脂肪族又は芳香族イソニトリルである。
【0072】
好ましい窒素含有ドナー基R
3は、芳香族窒素含有複素環、脂肪族アミン(好ましくはC
1−C
20アルキル基、より好ましくはC
1−C
10アルキル基、更に好ましくはC
1−C
4アルキル基含有)、脂肪族環状アミン(例えば、ピロリジン、ピペリジン又はモルホリン)、ニトリル、アミド、イミド及びイミンであり、各々は、基Rにより置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0073】
好ましいリン含有ドナー基R
3は、PF
2、P(NR
42)
2(式中、R
4は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、上記に定義された意味のC
1−C
20アルキル基又はアリールもしくはヘテロアリール基、アルキル−、アリール−又は混合したアルキルアリールホスフィン、アルキルハロ−、アリールハロ−又は混合したアルキルアリールハロホスフィン(ここでハロゲンは、各々において、F、Cl、Br又はI)、アルキル−、アリール−又は混合したアルキルアリールホスファイト、又はホスファ芳香族化合物(例えば、ホスファベンゼンなど)であり、各々は、基Rにより置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。ここで、アルキル基は、好ましくはC
1−C
20アルキル基、より好ましくはC
1−C
10アルキル基、特に好ましくはC
1−C
4アルキル基である。アリール基は、ヘテロアリール基を意味するとも捉えられる。これらの基は上記に定義された通りである。
【0074】
好ましい酸素含有ドナー基R
3は、フェノール、アルコール、アルコラート、開鎖又は環式の脂肪族又は芳香族エーテル、酸素複素環(例えば、フラン)、アルデヒド、ケトン、ホスフィンオキシド基、フォスフェイト、ホスホナート、ボラート、シリケート、スルホキシド基、カルボキシレート、フェノール、フェノラート、オキシム、ヒドロキサメート、β−ケト酸塩(β-ketoketonate)、β−ケトエステル及びβ−ジエステルであり、各々は、基Rにより置換されていてもよく、置換されていなくてもよく、最後に記載した基は二座キレート配位子を表す。これらの基におけるアルキル基は、好ましくはC
1−C
20アルキル基、より好ましくはC
1−C
10アルキル基、特に好ましくはC
1−C
4アルキル基である。アリール基は、ヘテロアリール基を意味するとも捉えられる。これらの基は上記に定義された通りである。
【0075】
好ましい硫黄含有ドナー基R
3は、硫黄芳香族複素環基、脂肪族又は芳香族チオール及びチオラート、開鎖又は環式チオエーテル、チオカルボニル基、硫化ホスフィン、ホスフィンスルフィド及びチオカルボキシレートであり、各々は、基Rにより置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。これらの基におけるアルキル基は、好ましくはC
1−C
20アルキル基、より好ましくはC
1−C
10アルキル基、特に好ましくはC
1−C
4アルキル基である。アリール基は、ヘテロアリール基を意味するとも捉えられる。これらの基は上記に定義された通りである。
【0076】
二座キレート基R
3は、これらのドナー基の二つを組み合わせることによりこれらのドナー基からも形成されることができる。これらの二つの基は、同一でも異なっていてもよく、同一又は異なるドナー原子を有する。これらの基は1以上のラジカルRにより置換されていてもよい。この種の二座キレート基の例としては、置換又は無置換のβ−ケトネート(β-ketoketonate)、β−ケトエステル、β−ジエステル、アミノカルボン酸から誘導されたカルボキシレート(例えば、ピリジン−2−カルボン酸、キノリン−2−カルボン酸、グリシン、ジメチルグリシン、アラニン又はジメチルアミノアラニン)、イミノアセトネート(iminoacetoacetonate)、ヒドロキサメート、ピリジルホスフィン、α−ホスフィノカルボキシレート、グリコールエーテル、エーテルアルコラート、ジアルコールから誘導されたジアルコラート(例えば、エチレングリコール又は1,3−プロピレングリコール)、ジチオールから誘導されたジチオラート(例えば、1,2−エチレンジチオール又は1,3−プロピレンジチオール)、ジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン又はシス−もしくはトランス−ジアミノシクロヘキサン)、イミン(例えば、2−[1−(フェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(メチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(エチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(イソ−プロピルイミノ)エチル]ピリジン又は2−[1−(tert−ブチルイミノ)エチル]ピリジン)、ジイミン(例えば、1,2−ビス(メチルイミノ)エタン、1,2−ビス(エチルイミノ)エタン、1,2−ビス(イソ−プロピルイミノ)エタン、1,2−ビス(tert−ブチルイミノ)エタン、2,3−ビス(メチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(エチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(イソ−プロピルイミノ)ブタン、2,3−ビス(tert−ブチルイミノ)ブタン、1,2−ビス(フェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2−メチルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エタン、2,3−ビス(フェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2−メチルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)ブタン又は2,3−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)ブタン)、ジホスフィン(例えば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジメチルホスフィノ)メタン、ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)メタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)プロパン)、サリチルイミンから誘導されたサリチルイミナート(例えば、メチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン又はフェニルサリチルイミン)等が挙げられる。
【0077】
配位子Lは、中性電荷、正電荷又は負電荷であり得る。中性錯体が好ましい。
【0078】
式(1)により表される化合物における配位子L’及びL’’は、好ましくは、中性、モノアニオン、ジアニオン又はトリアニオン配位子であり、特に好ましくは、中性又はモノアニオン配位子である。これらは、好ましくは、単座、二座又は三座、すなわち、1つ、2つ又は3つの配位部位を有する。
【0079】
好ましい中性の単座配位子は、一酸化炭素、NO、イソニトリル(例えば、tert−ブチルイソニトリル、シクロヘキシルイソニトリル、アダマンチルイソニトリル、フェニルイソニトリル、メシチルイソニトリル、2,6−ジメチルフェニルイソニトリル、2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイソニトリル、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイソニトリル)、アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン)、ホスフィン(例えば、トリフルオロホスフィン、トリメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、ホスファイト(例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト)、アルシン(例えば、トリフルオロアルシン、トリメチルアルシン、トリシクロヘキシルアルシン、トリ−tert−ブチルアルシン、トリフェニルアルシン(triphenylarsinine)、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルシン)、スチビン(例えば、トリフルオロスチビン、トリメチルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、トリ−tert−ブチルスチビン、トリフェニルスチビン、トリス(ペンタフルオロフェニル)スチビン)、及び、窒素含有複素環化合物(例えば、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン)から選択される。
【0080】
好ましいモノアニオン性一座配位子は、水素化物、重水素化物、ハライドF、Cl、Br及びI、アルキルアセチリド(例えば、メチル−C≡C−、tert−ブチル−C≡C−)、アリールアセチリド(例えば、フェニル−C≡C−)、シアン化合物、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、脂肪族又は芳香族アルコラート(例えば、メタノラート、エタノラート、プロパノラート、イソ−プロパノラート、tert−ブチラート、フェノラート)、脂肪族又は芳香族チオアルコラート(例えば、メタンチオラート、エタンチオラート、プロパンチオラート、iso−プロパンチオラート、tert−チオブチラート、チオフェノラート)、アミド(例えば、ジメチルアミド、ジエチルアミド、ジ−イソ−プロピルアミド、モルホリン)、カルボキシレート(例えば、アセテート、トリフルオロアセテート、プロピオネート、ベンゾエート、及び、アニオン性窒素含有複素環化合物(例えば、ピロリド、イミダゾリド、ピラゾリド)から選択される。これらの基におけるアルキル基は、好ましくはC
1−C
20アルキル基、より好ましくはC
1−C
10アルキル基、特に好ましくはC
1−C
4アルキル基である。アリール基は、ヘテロアリール基を意味するとも捉えられる。これらの基は上記に定義された通りである。
【0081】
好ましいジ−又はトリアニオン性配位子は、O
2−、S
2−、ナイトレン(R−N=M(式中、Rは一般的な置換基を表す。)の形態における配位をもたらす。)又はN
3−である。
【0082】
好ましい中性、モノ又はジアニオン性二座又は多座配位子は、ジアミン(例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、シス−もしくはトランス−ジアミノシクロヘキサン、シス−もしくはトランス−N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノシクロヘキサン)、イミン(例えば、2−[1−(フェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(メチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(エチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(イソ−プロピルイミノ)エチル]ピリジン又は2−[1−(tert−ブチルイミノ)エチル]ピリジン)、ジイミン(例えば、1,2−ビス(メチルイミノ)エタン、1,2−ビス(エチルイミノ)エタン、1,2−ビス(イソ−プロピルイミノ)エタン、1,2−ビス(tert−ブチルイミノ)エタン、2,3−ビス(メチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(エチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(イソ−プロピルイミノ)ブタン、2,3−ビス(tert−ブチルイミノ)ブタン、1,2−ビス(フェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2−メチルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エタン、2,3−ビス(フェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2−メチルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)ブタン、又は2,3−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)ブタン)、2つの窒素原子を含む複素環化合物(例えば、2,2’−ビピリジン、o−フェナントロリン)、ジホスフィン(例えば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジメチルホスフィノ)メタン、ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジエチルホスフィノ)メタン、ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)メタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)プロパン、1,3−ジケトンから誘導される1,3−ジケトネート(例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、1,5−ジフェニルアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ビス(1,1,1−トリフルオロアセチル)メタン)、3−ケトエステルから誘導された3−ケトネート(例えば、アセト酢酸エチル)、アミノカルボン酸から誘導されたカルボキシレート(例えば、ピリジン−2−カルボン酸、キノリン−2−カルボン酸、グリシン、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、N,N−ジメチルアミノアラニン)、サリチルイミンから誘導されたサリチルイミナート(例えば、メチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン、フェニルサリチルイミン)、ジアルコールから誘導されたジアルコラート(例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール)、及び、ジチオールから誘導されたジチオラート(例えば、1,2−エチレンジチオール、1,3−プロピレンジチオール)から選択される。
【0083】
好ましい三座配位子は、窒素含有複素環式化合物(例えば、テトラキス(1−イミダゾリル)ボラート及びテトラキス(1−ピラゾリル)ボラート)である。
【0084】
更に好ましいものとして、二座モノアニオン配位子(これは、金属と共に、少なくとも一つの金属−炭素結合を含むシクロメタル化5員環を形成する。)が挙げられる。これらは、特に有機エレクトロルミネセンスデバイス用のリン光性金属錯体の分野において通常使用される配位子、すなわち、フェニルピリジン、ナフチルピリジン、フェニルキノリン、フェニルイソキノリン等の種類の配位子であり、各々は1以上のラジカルRにより置換されていてもよい。非常に多数のそのような配位子が、リン光エレクトロルミネセンスデバイスの分野における当業者に知られており、当業者であれば進歩性なしに式(1)により表される化合物のこの種の配位子L’及びL’’を更に選択することができるであろう。
【0085】
同様に好ましい配位子L’及びL’’は、η
5−シクロペンタジエニル、η
5−ペンタメチルシクロペンタジエニル、η
6−ベンゼン又はη
7−シクロヘプタトリエニルであり、各々は1以上のラジカルRにより置換されていてもよい。
【0086】
配位子は、共役系であるか、または交差共役系のいずれかである。共役系は、置換基Rの少なくとも1つと環Cy1および/またはCy2が芳香族又は芳香族複素環系を形成する際に生じる。一方で、交差共役系は、置換基RとCy1またはCy2が芳香族環系又は芳香族複素環を形成しない、すなわち、Rが脂肪族環系を形成するか、Cy1またはCy2と共には環を形成しない場合に生じる。
【0087】
本発明の特に好ましい態様において、配位子系は堅固な系であり、すなわち、2つの置換基Rは互いに環Cy1および環Cy2と共に6員環を形成する。
【0088】
本発明のさらに特に好ましい態様において、2つ又は3つの配位子L及び/又はL’及び/又はL’’は、ラジカルR
1を介して結合し、多座(polypodal)系又はクリプタンドを形成し得る。
【0089】
式(2)の部分構造を形成する対応する配位子、並びに配位子L’およびL’’もまた、有機合成分野の当業者に既知である有機化学の通常の方法により調製することができる。
【0090】
本発明の金属錯体は、基本的には、当業者に既知の様々な方法により調製することができる。
【0091】
これらの方法は、式(1)の本発明の化合物を高い純度で、好ましくは99%を超えて(
1H−NMRおよび/またはHPLCを用いて決定)得ることを可能にする。
【0092】
上記した本発明の化合物を、対応する共役、部分共役若しくは非共役オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーを製造するためのコモノマーとして用いることもできる。重合は好ましくは、臭素官能性を通じて達成される。つまり、これらを、特に、ポリフルオレン(例えば EP 842208 または WO 00/22026 に記載されている)、ポリスピロビフルオレン(例えば EP 707020 または EP 894107 に記載されている)、ポリ−パラ−フェニレン(例えば WO 92/18552 に記載されている)、ポリジヒドロフェナントレン(例えば WO 05/014689 に記載されている)、ポリフェナントレン(例えば未公開特許出願 DE 102004020298.2 に記載されている)、ポリインデノフルオレン(例えば WO 04/041901 および WO 04/113412 に記載されている)、ポリカルバゾール(例えば WO 04/070772 または WO 04/113468 に記載されている)、ポリケトン(例えば WO 05/040302 に記載されている)、ポリシラン(例えばWO 05/111113に記載されている)、若しくはポリチオフェン(例えば EP 1028136 に記載されている)に、またはこれらのタイプの種々の単位を含むコポリマーに共重合することができる。これらの単位を、ポリマーの側鎖中または主鎖中に形成することができ、または、これらの単位は、ポリマー鎖の分枝点を示してもよく(例えば、WO06/003000に記載されている)、もしくはポリマー鎖の末端基を示してもよい。
【0093】
従って本発明はまた、置換基R
1のうちの少なくとも1つが、共役、部分共役若しくは非共役のポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーの合成のためのパラジウムまたはニッケルにより触媒されるC−Cカップリング反応を可能にする基である式(1)の化合物の使用を提供する。C−Cカップリング反応を可能にする置換基は、好ましくは、Cl、Br、I、O−トシレート、O−トリフラート、O−SO
2R
2、B(OR
2)
2、およびSn(R
2)
3からなる群から選択され、特に好ましくはBr、O−トリフラート、およびB(OR
2)
2の中から選択される(式中、R
2は上記した通りであり、2つ以上のラジカルR
2は互いに環系を形成していてもよい)。この基は環Cy1に結合していることが好ましく、特に好ましくは金属Mへの結合に対してパラ位で結合している。重合のためのモノマーとして用いることができるこれらの金属錯体は、同様に、本発明の好ましい態様である。
【0094】
C−Cカップリング反応を可能にするこの基が錯体中に1つ、2つ若しくは3つ以上存在するかどうかに応じて、錯体はポリマーにおける末端基を示すか、ポリマー鎖中に直線的に取り込まれるか、またはポリマー鎖の分枝点を示す。さらに、適切に置換されている場合には、錯体は、側鎖であってもよいし、または直鎖のポリマー鎖、もしくは分枝したポリマー鎖であってもよい。
【0095】
従って、本発明はまた、上記したラジカルRおよびR
1の少なくとも1つ(好ましくはR
1)が、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーへの結合を表す式(1)の化合物の1種以上を含む、共役、部分共役若しくは非共役のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーも提供する。上記したものと同じ好ましさが、ポリマーおよびデンドリマー中の式(1)の単位に当てはまる。
【0096】
上記したオリゴマー、ポリマー、コポリマーおよびデンドリマーは、有機溶媒中で良好な溶解性を示し、且つ、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて高い効率と安定性を示す。さらにこれらのオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは非常に熱的に安定である。したがって、本発明は更に、1以上の結合が、式(1)の錯体からポリマー、オリゴマー又はデンドリマーに存在する、式(1)の化合物の一種以上を含有するオリゴマー、ポリマー又はデンドリマーに関するものである。式(1)の化合物の結合に応じて、錯体は、オリゴマー又はポリマーの側鎖を形成するか、あるいは、主鎖に結合する。ポリマー、オリゴマー又はデンドリマーは、共役でも、部分共役でも、もしくは非共役であってもよい。オリゴマー又はポリマーは、直鎖、分岐又は樹枝状であってよい。
【0097】
上記したものと同じ好ましさが、オリゴマー、デンドリマー及びポリマー中の式(1)の繰り返し単位に、完全に類似して当てはまる。
【0098】
オリゴマー又はポリマーの調製のために、本発明に係るモノマーが更なるモノマーと共にホモ重合又は共重合される。
【0099】
好ましいものはコポリマーであり、この場合に式(1)の単位は、好ましくは0.01〜50mol%の量、特に好ましくは0.1〜20mol%の範囲で存在する。ポリマー骨格を形成する好適且つ好ましいコモノマーは、フルオレン(例えば、EP842208又はWO00/22026に記載されている)、スピロビフルオレン(例えば、EP707020, EP894107又はWO06/061181に記載されている)、パラ−フェニレン(例えば、WO92/18552に記載されている。)、カルバゾール(例えば、WO04/070772又はWO04/113468に記載されている。)、チオフェン(例えば、EP1028136に記載されている。)ジヒドロフェナントレン(例えばWO05/014689に記載されている。)、シス−及びトランス−インデノフルオレン(例えば、WO04/041901又はWO04/113412に記載されている。)、ケトン(例えば、WO05/040302に記載されている。)、フェナントレン(例えば、WO05/104264又はWO07/017066に記載されている。)、又はこれらの単位の複数から選択される。これら単位の合計の割合は、好ましくは、少なくとも50mol%である。ポリマー、オリゴマー及びデンドリマーはまた、更なる単位、例えば、正孔−輸送単位(特にトリアリールアミン系)及び/又は電子−輸送単位を含んでいてもよい。
【0100】
また、本発明の金属錯体は、さらに官能化させることができ、従って、拡張された金属錯体に変換することができる。ここで挙げることのできる例は、スズキ法を用いてアリールボロン酸による官能化か、またはハートウィッグ−ブッフバルト(Hartwig-Buchwald)法を用いて1級又は2級アミンによる官能化である。
【0101】
本発明の化合物、オリゴマー、ポリマー、デンドリマー、または式(1)の拡張された化合物は、電子部材、例えば有機発光デバイス/ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(organic field quench device)(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、または有機レーザダイオード(O−laser)における活性成分として用いられ、特に発光化合物として、特に好ましくはOLEDにおける三重項エミッターとして使用される。
【0102】
したがって、本発明は、更なる形態において、式(2)により表される部分構造M(L)
nを含む式(1')により表される化合物を含有する電子部材を提供する。
【化12】
【化13】
【0103】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される:
Mは、遷移金属である。
【0104】
Eは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々はsp
2混成炭素又は窒素原子である。
【0105】
Zは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々はC(R)
2又はNRである。
【0106】
Cy1、Cy2は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々はN原子を介してMに配位する置換又は無置換の複素環であり、各々は基Zと結合していてもよい。
【0107】
Rは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々は、H、D、F、CN、1〜40個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルコキシ基、3〜40個の炭素原子を有する分岐もしくは環式アルキル又はアルコキシ基、2〜40個の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基であり、各々において、1つのCH
2基又は2以上の非隣接CH
2基は、−R
2C=CR
2−、−C≡C−、Si(R
2)
2、Ge(R
2)
2、Sn(R
2)
2、−O−、−S−、−NR
2−、−(C=O)−、−(C=NR
2)−、−P=O(R
2)−、SO、SO
2又は−CONR
2−により置き換えられていてもよく、また、1以上のH原子はFにより置き換えられていてもよく、あるいは、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環、5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ又はヘテロアリールオキシ基であり、各々は、1以上の非芳香族ラジカルR
2により置換されていてもよく、あるいは、これらの系の2、3又は4つの組み合わせであり、ここでRは、環Cy1及び/又はCy2の一方又は双方と共に脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を更に形成していてもよい。
【0108】
R
2は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族又は芳香族複素環系からなる群から選択され、ここで、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN又はNO
2により置き換えられていてもよく、2以上の隣接する置換基R
2は、それらが結合する原子と共に単環又は多環の脂肪族、芳香族又は芳香族複素環系を形成する。
【0110】
式中、配位子L’及びL”は、同一であるかまたは異なり、単座、二座又は三座キレート配位子から選択され、これらは配位子Lと結合していてもよい。
【0111】
m、oは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、各々は0、1又は2であり、且つ、n+m+o=2又は3である。
【0112】
但し、n=1であり、且つ、Lが四座配位子であるとき、式(2)はM−C結合を有さないか、一つのみ有し、もしくは、式(2)は四座環状配位子である。
【0113】
電子部材は、特に有機発光デバイスにおいて、有機発光デバイス/ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(organic field quench device)(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、または有機レーザダイオード(O−laser)からなる群から選択される。
【0114】
有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)は、カソード、アノード及び少なくとも1つの発光層を含む。これらの層とは別に、OLEDは更なる層、例えば、各々において、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、励起子障壁層、電荷発生層、及び/又は、有機あるいは無機p/n接合を含んでいてもよく、これらの層は、例えば、励起子障壁機能を有し、同様に2つの発光層の間に導入され得る。しかしながら、これらの各層は、必ず存在しなければならないものではないことが指摘されるべきである。有機エレクトロルミネセンスデバイスは、1層の発光層を含んでいてもよいし、複数の発光層を含んでいてもよく、少なくとも1層の発光層は、少なくとも1種の式(1)で表される化合物を含有する。複数の発光層が存在する場合には、これらは、好ましくは380nm〜750nmに合計で複数の発光極大を有し、全体的に白光、すなわち、蛍光又はリン光を発し得る種々の発光化合物が、発光層において使用されることとなる。特に好ましいものとしては、3層が青色、緑色及びオレンジ色又は赤色発光を示す3層系(基本的構造については、例えば、)が挙げられる。WO05/011013を参照)。
【0115】
本発明の好ましい態様において、有機エレクトロルミネセンスデバイスは、発光層中に式(1)で表される化合物、又は、発光化合物として上記に示された好ましい態様を含む。これは、特に、金属MがIr又はPtの場合である。
【0116】
式(1)で表される化合物が発光層中に発光化合物として使用される場合、1以上のマトリクス材料と組み合わせて使用されることが好ましい。式(1)で表される化合物とマトリクス材料の混合物は、エミッター及びマトリクス材料を含有する混合物全体を基準として、式(1)で表される化合物を、1〜99体積%、好ましくは2〜90体積%、より好ましくは3〜40体積%、特に好ましくは5〜15体積%含有する。これに対応して、該混合物は、エミッター及びマトリクス材料を含有する混合物全体を基準として、マトリクス材料を、99〜1体積%、好ましくは98〜10体積%、より好ましくは97〜60体積%、特に好ましくは95〜85体積%含有する。
【0117】
好適なマトリクス材料は、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド及びスルホン(例えば、WO04/013080, WO04/093207, WO06/005627又はWO2010/006680に記載されている。)、トリアリールアミン、例えば、CBP(N,N−ビスカルバゾールイルビフェニル)のカルバゾール誘導体、又は、WO05/039246, US2005/0069729, JP2004/288381, EP1205527又はWO08/086851に記載されたカルバゾール誘導体、インドロカルカルバゾール誘導体(例えば、WO07/063754又はWO08/056746に記載されている。)、インデノカルバゾール誘導体(例えば、WO10/136109又は未公開出願DE102009031021.5)、アザカルバゾール(例えば、EP1617710, EP1617711, EP1731584, JP2005/347160に記載されている。)、双極性マトリクス材料(例えば、WO07/137725)、シラン(例えば、WO05/111172に記載されている。)、アザボロール又はボロン酸エステル(例えば、WO06/117052に記載されている。)、トリアジン誘導体(例えば、WO2010/015306, WO07/063754又はWO08/056746に記載されている。)、又は亜鉛錯体(例えば、EP652273又はWO09/062578に記載されている。)である。
【0118】
本発明の更に好ましい態様において、式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様は、発光層中の発光化合物のためのマトリクス材料として使用される。
【0119】
式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様が発光層中で発光化合物のためのマトリクス材料として使用される場合、1以上のリン光材料(三重項エミッター)と組み合わせて使用されることが好ましい。本発明の目的上、リン光は、比較的高いスピン多重度(すなわち、スピン状態>1)の励起状態からの、特に励起三重項状態又はMLCT混合状態からの発光を意味すると捉えられる。本発明の目的上、すべての発光遷移金属錯体、特に発光イリジウム、白金及び銅錯体のすべては、三重項エミッターと見なされることを意図している。式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様と発光化合物の混合物は、エミッター及びマトリクス材料を含有する化合物全体を基準として、式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様を、99〜1体積%、好ましくは98〜10体積%、より好ましくは97〜60体積%、特に好ましくは95〜85体積%含有する。これに対応して、該混合物は、エミッター及びマトリクス材料を含有する混合物全体を基準として、エミッターを、1〜99体積%、好ましくは2〜90体積%、より好ましくは3〜40体積%、特に好ましくは5〜15体積%含有する。
【0120】
好適なリン光化合物は、特に、好適な励起状態において発光する、好ましくは可視領域において発光する化合物であり、加えて、原子番号が20より大きい、好ましくは38より大きく且つ84より小さい少なくとも1つの原子を含有する。使用されるリン光エミッターは、好ましくは、
銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金又はユウロピウムを含有する化合物であり、特にイリジウム又は白金を含有する化合物である。
【0121】
上述したエミッターの例は、出願WO00/70655、WO01/41512、WO02/02714、WO02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO05/033244又はWO09/118087に示されている。上述した式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様は、エミッターとして更に好適である。一般に、すべてのリン光錯体がリン光性OLEDに関する先行技術に従い使用され、有機エレクトロルミネセンスの当業者に好適であることが知られ、当業者であれば進歩性なしに更なるリン光錯体を使用することができるであろう。
【0122】
本発明の更に好ましい態様において、式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様は、正孔障壁層中の正孔障壁材料として、及び/又は、電子輸送層中の電子輸送材料として使用される。ここで発光層は、蛍光性又はリン光性であり得る。
【0123】
本発明の更に好ましい態様において、式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様は、正孔輸送層又は正孔注入層中の正孔輸送材料として、及び/又は、励起子障壁層中の励起子障壁材料として使用される。
【0124】
また、材料が真空昇華装置内で10
−5mbar未満、好ましくは10
−6mbar未満の初期圧力において蒸着される昇華法により、1以上の層が形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。初期圧力を更に低くすること、例えば、10
−7mbar未満とすることも可能である。
【0125】
1以上の層がOVPD(有機気相蒸着)法により、または搬送ガス昇華を用いて形成され、その場合に材料が10
−5mbarから1barの圧力において適用されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスも同様に好ましい。この方法の特別な場合として、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)法があり、材料がノズルを介して直接適用され、それにより構造化される(例えば、M. S. Arnold 等、Appl. Phys. Lett. 2008、92、053301)。
【0126】
また、1以上の層が、例えばスピンコーティング、あるいは、所望される印刷法(例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷又はノズル印刷等)などにより溶液から製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましいが、特にLITI(光誘導サーマルイメージング、熱転写印刷)又はインクジェット印刷により製造されることが特に好ましい。この目的上、溶解性化合物が必要であり、例えば、好適な置換により得られる。
【0127】
これらの方法は一般論として当業者に既知であり、式(1)で表される化合物又は上述した好ましい態様を含有する有機エレクトロルミネセンスデバイスに問題なく使用することができる。
【0128】
本発明は、上述した1以上の化合物、又は、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマー、及び少なくとも1つの溶媒を含有する調製物(特に溶液)もまた包含するものである。
【0129】
本発明に係る部分構造M(L)nの化合物例を詳細に以下に示す。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0130】
本発明の化合物は、従来技術による化合物に対して以下の利点を有する。
【0131】
1.本発明の化合物は高い熱的安定性を有する。従って、低分子量化合物を高真空下で分解を伴わずに蒸着することができ、またオリゴマー化合物、樹枝状化合物およびポリマー化合物も非常に熱的に安定であるため、損傷を伴うことなくデバイスを熱的に処理することができる。この性質はOLEDの再現性のある製造についての基本的な必要条件であり、特に駆動寿命について好ましい効果を有する。さらに、錯体を、精製およびデバイス製造において実質的に損失なく昇華させることができるために、これらレアメタルの化合物の資源保護的な利用が従って可能である。
【0132】
2.本発明の化合物は有機溶媒中で良好な溶解性を示し、これは再結晶やクロマトグラフィーのような一般的な方法によるその精製をかなり容易にする。従って化合物は、コーティング、または印刷法を用いて溶液から処理することもできる。この性質は気化による一般的な処理における利点でもある。というのは、用いた装置またはシャドーマスクの洗浄が結果としてかなり容易になるためである。
【0133】
3.本発明の化合物は改善された酸化安定性を示し、これは精製と一般的にこれらの化合物の取り扱いに対して好ましい効果を有する。
【0134】
4.本発明の化合物は高純度で再現性よく調製することができ、バッチ間のばらつきを示さない。従って、本発明のエレクトロルミネセンスデバイスを製造するための工業的な方法は、著しくより効率的である。
【0135】
5.配位子の合成は単純であり、WO 04/081017 中の配位子の合成と比べて工程が少ない。このことはかなりの工業的な利点である。
【0136】
本発明を以下の例により示すが、これらに限定されるものではない。当業者は、さらなる発明を必要とすることなく示した情報に基づいて、本発明によるさらなる化合物を調製すること、またはこれらを有機電子デバイスにおいて使用することが可能である。