(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864526
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 13/68 20060101AFI20160204BHJP
B60T 13/38 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
B60T13/68
B60T13/38
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-500434(P2013-500434)
(86)(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公表番号】特表2013-522115(P2013-522115A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011053945
(87)【国際公開番号】WO2011113853
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】102010011978.4
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゾラン ヴコヴィチ
【審査官】
中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/098003(WO,A1)
【文献】
米国特許第04223953(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00−13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧式のブレーキ装置のための電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムであって、制御ピストン(100)を有する制御弁装置(22)を備え、前記駐車ブレーキシステムは、少なくとも2つの運転状態、すなわちパーキング状態又は走行状態を取ることができ、これらの運転状態を選択的に前記制御ピストン(100)の位置に基づいて取ることができるようになっており、前記制御ピストン(100)が、ばね室(116)内に配置されたばね(98)の力により終端位置に強制移動されたときに、パーキング状態を取る、空気圧式のブレーキ装置のための電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムにおいて、前記制御弁装置(22)の空気抜き接続部(70)から流出する漏れ空気が、前記ばね室(116)内に戻し案内可能であることを特徴とする、空気圧式のブレーキ装置のための電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【請求項2】
前記制御弁装置(22)が、前記空気抜き接続部(70)に対して付加的に、第1の作業接続部(20)、第2の作業接続部(24)及び空気圧式の制御入口(50)を有しており、前記制御弁装置(22)は、前記制御入口(50)の通気によって、両作業接続部(20,24)が互いに接続されているとともに、前記第2の作業接続部(24)が前記空気抜き接続部(70)に対してシールされている走行状態を取り、かつ前記制御入口(50)の空気抜き及びばね力によって、両作業接続部(20,24)が互いにシールされているとともに、前記第2の作業接続部(24)が前記空気抜き接続部(70)に接続されているパーキング状態を取る、請求項1記載の電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【請求項3】
前記第2の作業接続部(24)が、圧縮空気を消費する消費部(26,50,56)に連結可能であり、
前記空気圧式の制御入口(50)が、少なくとも間接的に前記駐車ブレーキのためのリレー弁(58)の制御入口(56)に連結されており、
前記空気抜き接続部(70)が、制御兼空気抜き弁装置(72)に連結されており、かつ
前記制御兼空気抜き弁装置(72)の空気抜き出口(118)が、前記ばね室(116)に連結されている、
請求項2記載の電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【請求項4】
前記制御兼空気抜き弁装置(72)の前記空気抜き出口(118)が、絞り作用又は堰止め作用をもたらす構成部材(120)に連結されており、前記空気抜き出口(118)と前記構成部材(120)との間で、前記ばね室(116)に通じる漏れ空気戻し案内管路(122)が分岐している、請求項3記載の電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【請求項5】
前記絞り作用又は堰止め作用をもたらす構成部材は、逆止弁である、請求項4記載の電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【請求項6】
前記逆止弁の開放圧及び閉鎖圧は、該逆止弁がシステム圧を下回る第1の圧力レベルで、前記駐車ブレーキシステムの空気抜きを可能にするために開き、かつ前記第1の圧力レベルを下回る第2の圧力レベルで、前記絞り作用又は堰止め作用をもたらすために、少なくとも部分的に閉じるように選択されている、請求項5記載の電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【請求項7】
前記逆止弁の開放圧及び/又は閉鎖圧は調節可能である、請求項6記載の電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧式のブレーキ装置のための電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムであって、制御ピストンを有する制御弁装置を備え、駐車ブレーキシステムは、少なくとも2つの運転状態、すなわちパーキング状態又は走行状態を取ることができ、これらの運転状態を選択的に制御ピストンの位置に基づいて取ることができるようになっており、制御ピストンが、ばね室内に配置されたばねの力により終端位置に強制移動されたときに、パーキング状態を取る、空気圧式のブレーキ装置のための電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムに関する。
【0002】
本発明の開示は、例えばドイツ連邦共和国特許第102008007877号明細書に記載されているような、電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムに係る。この種のシステムに対する安全上重要な中心的な要求は、電流喪失あるいは電源喪失(Stromausfall)が駐車ブレーキの状態変化を惹起してはならないという点にある。つまり、駐車ブレーキがパーキング状態にあるときは、電流喪失時においても、商用車両の意図しない転動をいずれにしても回避するためにパーキング状態が維持されなければならず、また、駐車ブレーキが走行状態にあるときは、電流喪失時に駐車ブレーキが急に利くようなことが起こると、走行中に危険な状態に陥る可能性があるので、駐車ブレーキが急に利くようなことはあってはならない。
【0003】
これらの安全上重要な要求を充足するために、双安定性の制御弁が使用可能である。この制御弁は、電気式又は空気圧式に制御可能であってよい。本発明は、双安定性が与えられており、これにより前述の安全上重要な要求が充足されるように、電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムに組み込まれている空気圧式に制御可能な切換弁装置に係る。
【0004】
電気式に操作可能な駐車ブレーキシステム及び特に上述の空気圧式の制御弁装置は、絶対的な切換安全性が保証されているように設計されていなければならない。つまり、制御弁装置の切換を行うために、駐車ブレーキシステム内の圧力状況が切り換えられたときには、制御弁装置は、確実に切換可能でなければならず、どんな外的な状況にあっても、特に、切換弁装置の切換を特に摩擦力の増大に基づいて妨害する可能性のある低温時にあっても、確実に切換可能でなければならない。
【0005】
本発明の課題は、電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムのための空気圧式の制御弁装置の双安定性が保証されているコンセプトを提供することである。特に、安定したパーキング状態が保証されることが望ましい。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴により解決される。
【0007】
本発明の好ましい態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明は、冒頭で挙げた本発明の前提となる従来技術に基づいており、制御弁装置の空気抜き接続部から流出する漏れ空気が、ばね室内に戻し案内可能であることを特徴としている。ばね室内に戻し案内可能な漏れ空気は、ばねの作用を助成することができる。つまり、漏れ空気は、パーキング状態を確保する位置へとピストンを強制する力に寄与することができる。
【0009】
特に制御弁装置が、空気抜き接続部に対して付加的に、第1の作業接続部、第2の作業接続部及び空気圧式の制御入口を有しており、制御弁装置が、制御入口の通気によって、両作業接続部が互いに接続されているとともに、第2の作業接続部が空気抜き接続部に対してシールされている走行状態を取り、かつ制御入口の空気抜き及びばね力によって、両作業接続部が互いにシールされているとともに、第2の作業接続部が空気抜き接続部に接続されているパーキング状態を取るようになっていてもよい。パーキング状態において、第2の作業接続部及び後続のコンポーネントは、空気抜き接続部に接続されていることが望ましい。その結果、システムは無圧である。その際、圧縮空気源に接続されている第1の作業接続部は、シールされていること、つまり、特に空気抜き接続部に接続されていないことが望ましい。それにもかかわらず、ある程度の漏れの可能性は排除されないため、漏れ空気を空気抜き接続部に導くことが可能である。漏れ空気は、次いでばね室に、パーキング状態の維持を助成するために供給される。
【0010】
この関係において、第2の作業接続部が、圧縮空気を消費する消費部に連結可能であり、空気圧式の制御入口が、少なくとも間接的に駐車ブレーキのためのリレー弁の制御入口に連結されており、空気抜き接続部が、制御兼空気抜き弁装置に連結されており、かつ制御兼空気抜き弁装置の空気抜き出口が、ばね室に連結されていると、特に有益である。好ましくは電磁弁として設計されている制御兼空気抜き弁装置は、制御弁装置のための空気圧式の信号を出力する。特に制御兼空気抜き弁装置は、駐車ブレーキ装置のシステム圧を解消可能な空気抜き出口も有していると同時に、制御弁装置のための制御信号を提供する。制御兼空気抜き弁装置の空気抜き接続部を介して流出する漏れ空気は、そうして、制御弁装置のばね室に供給するために利用可能である。
【0011】
本発明の特に好ましい態様では、制御兼空気抜き弁装置の空気抜き出口が、絞り作用又は堰止め作用をもたらす構成部材に連結されており、空気抜き出口と構成部材との間で、ばね室に通じる漏れ空気戻し案内管路が分岐している。絞り作用又は堰止め作用をもたらす構成部材は、漏れ空気が単に大気中に流出するのではなく、制御弁装置のばね室内においてばね作用を助成すべく、戻し案内可能であることを保証する。
【0012】
上記態様において、絞り作用又は堰止め作用をもたらす構成部材は、特に逆止弁であってよい。
【0013】
この場合、特に有利には、逆止弁の開放圧及び閉鎖圧は、逆止弁がシステム圧を下回る第1の圧力レベルで、駐車ブレーキシステムの空気抜きを可能にするために開き、かつ第1の圧力レベルを下回る第2の圧力レベルで、絞り作用又は堰止め作用をもたらすために、少なくとも部分的に閉じるように選択されている。つまり、逆止弁は、走行状態からパーキング状態への移行時のシステムの空気抜きを阻害しないか、又は仮に阻害したとしても僅かである。それにもかかわらず、逆止弁の絞り作用又は堰止め作用は、パーキング状態において大気中への漏れ空気の流出を少なくとも部分的に阻止し、制御弁装置のばね室内に圧力を形成するのに十分である。
【0014】
この関連において、逆止弁の開放圧及び/又は閉鎖圧が調節可能であることは特に有利な場合がある。このことは、制御弁装置の漏れ率がシステムの寿命にわたって変化、特に拡大する場合があるため、有利な場合がある。逆止弁の切換圧を変更することにより、本態様では、システムの確実な機能を持続的に保証するために、適合、特にメンテナンスの枠内での適合が実施可能である。
【0015】
本発明との関連で、パーキング状態を保証するために漏れ空気を利用することについて説明した。上述の説明は、漏れ空気を流出させる漏れが制御弁装置の不都合な特性である点から出発したものである。しかし、それどころか、制御弁装置を適当に、漏れがあるように形成して、パーキング状態を保証する力に所定の貢献を果たすようにすることもできる。
【0016】
以下に、本発明について添付の図面を参照しながら特に有利な実施の形態を基に例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムの回路図である。
【
図2】可動の弁座を備える制御弁装置を走行位置で示す図である。
【
図3】可動の弁座を備える制御弁装置を中間位置で示す図である。
【
図4】可動の弁座を備える制御弁装置をパーキング位置で示す図である。
【
図5】固定の弁座を備える制御弁装置を走行位置で示す図である。
【
図6】固定の弁座を備える制御弁装置をパーキング位置で示す図である。
【0018】
回路図及び弁装置の断面図についての以下の説明において、同一の符号は、同一の又は対比可能なコンポーネントを指している。回路は、中心的な装置として、複数の3ポート2位置方向制御弁を有している。これらの3ポート2位置方向制御弁は、それぞれ、2つの2ポート2位置方向制御弁に置換可能である。3ポート2位置方向制御弁を基に説明する原理は、本発明の範囲内で2ポート2位置方向制御弁群にも転用可能である。
【0019】
図1は、電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムの回路図である。電気式に操作可能な駐車ブレーキシステムは、逆止弁10を介して、図示しない圧縮空気処理装置に接続されている。逆止弁10には、任意選択的なスクリーンあるいは任意選択的なフィルタユニット12が接続されている。スクリーンあるいはフィルタユニット12を介して圧縮空気は、任意選択的な絞り18の介在下で、2ポート2位置方向制御弁として設計されている供給電磁弁14に供給される。絞り18は、入口側の漏れの作用が制限されるように働く。供給電磁弁14の出口には、供給管路区分16を介して制御弁装置22の作業接続部20が接続されている。制御弁装置22は、空気圧式に制御可能な3ポート2位置方向制御弁として設計されている。制御弁装置22の第2の作業接続部24は、トレーラ制御モジュール30の制御入口26に通じている。トレーラ制御モジュール30は、トレーラ連結装置(Anhaengerkupplung)の供給接続部34及び制御接続部36を操作する。別のトレーラ制御モジュール32の制御入口28は、トレーラ制御管路分岐44を介して供給管路分岐16に接続されている。この別のトレーラ制御モジュール32は、供給接続部38及び制御接続部40を有している。トレーラ制御管路分岐42,44は、セレクトローバルブ46の入口に接続されている。セレクトローバルブ46の出口は、制御管路48を介して制御弁装置22の制御入口50に接続されている。セレクトローバルブ46は、セレクトローバルブ46の出口に、すなわち制御管路48内に、相対的に低い入口圧、すなわち、両トレーラ制御管路分岐42,44のうちの低い方の圧力が作用するように働く。さらに制御管路48は、リレー制御管路52及びシャトル弁54を介してリレー弁58のリレー制御入口56に連通している。リレー弁58は、リレー供給管路60を介して、供給電磁弁14の上流側の一箇所から、圧縮空気を取り込む。リレー出口管路62は、管路分岐64,66に通じている。管路分岐64,66には、図示しないばね式アキュムレータシリンダが接続されている。さらにシャトル弁54には、常用ブレーキ管路68が接続されている。制御弁装置22の空気抜き接続部70には、制御兼空気抜き弁装置72の接続部74が接続されている。制御兼空気抜き弁装置72の別の接続部76には、フィルタユニット12と供給電磁弁14との間の一点から圧縮空気が供給される。さらに、2ポート2位置方向制御弁として設計された空気抜き弁78が設けられている。空気抜き弁78は、供給管路区分16に接続されている。さらに制御弁装置22の第2の作業接続部24の圧力を検出するための圧力センサ80と、リレー出口管路62の圧力を検出するための圧力センサ82とが設けられている。
【0020】
図1に示した切換状態では、制御弁装置22の第2の作業出口は、制御兼空気抜き弁装置72を介して空気抜きされている。その結果、常用ブレーキ管路68を介した圧力の供給がなければ、リレー弁58の制御入口56も空気抜きされている。したがって、図示しないばね式アキュムレータシリンダは、無圧である。その結果、駐車ブレーキは、そのパーキング位置にある。そこで、駐車ブレーキを走行位置に移行させるため、制御兼空気抜き弁装置72が切り換えられる。したがって、特に制御管路分岐48内、リレー制御管路52内及びリレー制御入口56に圧力が形成される。この圧力は、閾値を超えると、リレー弁58の接続位置への切換に至らしめる。その結果、ばね式アキュムレータシリンダには、圧力が供給され、駐車ブレーキは解除される。制御管路48内の圧力も、制御弁22を切り換える動力である。切換戦略次第で、この切換は、制御兼空気抜き弁装置72が再びその図示の非通電状態に移行される前に実施可能である。制御兼空気抜き弁装置72がまだその通電状態にある間に、上述の切換が行われることが望ましい場合、制御弁装置22は、作用面を有して構成され、接続部に作用する圧力が、制御弁装置22のばね力を克服する力を発生させるようになっていなければならない。制御兼空気抜き弁装置72の非通電状態への切換後の、ばね力に抗した制御弁装置22の切換を可能にする切換戦略は、後述する動的なプロセスに基づく。これにより、つまり実情がどうであれ、制御弁装置22の切換が達成されると、圧力が制御弁装置22の制御入口50及びリレー弁58の制御入口56にさらに形成可能である。これは、対応する管路分岐に供給管路区分16から圧縮空気が供給されるからである。特に、制御弁装置22は、電磁弁14,72,78のさらなる切換動作が起こらなければ、その状態にとどまる。電流喪失あるいは電源喪失は、これに影響を有しない。その結果、パーキング状態への駐車ブレーキ装置の意図しない移行は起こり得ない。これに対して、このような切換は、予定通り、空気抜き電磁弁78が通電されることにより実施される。その結果、供給管路区分内、ひいては制御弁装置22の制御入口50及びリレー弁56の制御入口56における圧力は減少する。このことは、図示の位置への制御弁装置22の切り換え、及び制御弁装置22の制御入口50及びリレー弁58の制御入口56の後続の完全な空気抜きに至る。こうして取られたパーキング位置は、制御弁装置22内のばね作用により確保されているので、電流喪失が反対に、パーキング状態から走行状態へ意図せず移行する事態に至らしめる可能性はない。
【0021】
システムの別の切換状態は、空気抜き弁78、供給電磁弁14及び制御兼空気抜き弁装置72が通電されたときに生じる。その結果、制御弁装置22の制御入口50及びリレー弁58の制御入口56は、空気抜きされ、これに対して、トレーラ制御弁30の制御入口26は、通気あるいは給気される。システム内のこの圧力状況は、トレーラブレーキの解除を生じる一方、牽引車両の駐車ブレーキは、作動されるか、又は作動した状態のままとなる。つまり、トレーラテスト状態が生じる。トレーラテスト状態において、牽引車両とトレーラとからなる連結車両全体が牽引車両の駐車ブレーキだけで停止され得るか否か検査可能である。
【0022】
制御兼空気抜き弁装置72の空気抜き出口118の下流には、逆止弁120が配置されている。流動方向で見て逆止弁120の上流で、漏れ空気戻し案内管路122が分岐している。漏れ空気戻し案内管路122は、漏れ空気を、制御弁装置22の、ここでは詳細な説明をしないばね室に導く。ばね室内には、パーキング状態を保証するためのばね98が配置されている。制御弁装置22の図示の切換状態において、漏れ、すなわち、特に第1の作業接続部20に作用している圧縮空気の、制御弁装置22の空気抜き接続部70、ひいては制御兼空気抜き弁装置72の空気抜き出口118への移動が生じると、この漏れ空気は、漏れ空気戻し案内管路122を介して制御弁装置22のばね室に戻し案内可能である。このために、逆止弁120の開放圧は、特に、この場合、逆止弁が開弁しないか、開弁したとしても僅かにすぎないように選択されている。その結果、少なくとも漏れ空気の絞り作用が提供される。それというのも、これによってのみ、制御弁装置22のばね98のばね室内に有効な圧力を形成することができるからである。これにより、リレー弁58が、リレー制御管路52内、ひいてはリレー制御入口56における意図しない圧力形成に基づいて早期に開弁してしまうことは、回避される。さもなければ、この早期の開弁は、このことが可能であるようなリレー弁58の特性線を有している場合に起こり得る。その結果、所望されない高い圧力が、リレー弁58の出口に、ひいてはばね式アキュムレータシリンダ内に形成されてしまう可能性がある。これにより、場合によっては、駐車ブレーキの制動作用は、積載量及び傾斜に基づいて、もはや十分ではなくなってしまう場合がある。
【0023】
図2は、可動の弁座108を備える制御弁装置22を走行位置で示している。弁ハウジング84は、制御弁装置22を格納している。制御弁装置22は、第1の作業接続部20、第2の作業接続部24、制御入口50及び空気抜き接続部70を有している。さらにリレー接続部86が設けられている。リレー接続部86は、リレー制御管路52に接続され、制御入口と同じ圧力が支配する。制御弁装置22は、制御ピストン100を有している。制御ピストン100は、ラジアルシールとして機能する3つのOリング88,90,92を介して弁ハウジング84内で、あるいは弁ハウジング84内にOリング94を介してシール状態に装入されたスリーブ96内で案内される。また、制御ピストン100に力を加えるばね98が設けられている。制御ピストン100は、中央の孔102を有しており、この中央の孔102を介して作業室104は、空気抜き室106と連通可能である。しかし、制御弁装置22の図示の状態で、この連通は、シールするように働く第1の弁座108により遮断される。第1の弁座108は、弁座ピストン110と制御ピストン100の協働により機能する。弁座ピストン110は、ばね112を介して弁ハウジング84に支持されている。
【0024】
制御弁装置22の、
図2に示した切換状態は、作業接続部20及び制御入口50を介して圧縮空気が供給される一方、空気抜き接続部70が空気抜きされているときに生じる。
【0025】
図3は、可動の弁座108を備える制御弁装置22を中間位置で示している。
図4は、可動の弁座108を備える制御弁装置22をパーキング位置で示している。制御弁装置22が、
図2に示した切換状態、すなわち走行状態から、
図4に示した切換状態、すなわちパーキング状態に移行すべきとき、作業接続部20は、空気抜きされる。これにより、ばね98,112は、制御ピストン100を作業室内の減少する圧力に抗して移動させ得る。このとき、可動の弁座ピストン110は、制御ピストン100の運動に従う。これにより取られる中間状態は、
図3に示されている。制御ピストン100は、既に、作業室104を縮小する方向で運動したものの、弁座108は、依然として作業室104を空気抜き室106に対してシールしている。したがって、この時点までは、弁座108における制御ピストン100の、場合によっては起こり得る付着は、まだ克服されなくてよい。この時点までは、Oリング88,90,92の静止摩擦力だけが、制御ピストン100の運動に抗して作用する。
図4に示した切換状態への後続の移行時に初めて、弁座108の、場合によっては生じる付着力が、克服されなければならない。このとき、Oリング88,90,92のすべり摩擦だけが同時に作用している。これにより、弁座108の開放は、ラジアルシールの静止摩擦により生じる反力から解放されている。
図4に示した状態が達成されると、制御ピストン110は、第2の弁座114を閉鎖する。これにより、作業接続部20,24は、互いに切り離される。したがって、圧縮空気は、もはや作業出口24に到達せず、外部の接続が
図1に示した通りであるときは、もはや制御入口50にも達しない。
【0026】
図2に示した走行位置から
図4に示したパーキング位置への移行時の制御ピストンの初期運動が、ばね112の作用により助成される一方、このばね112は、
図4に示したパーキング位置から
図2に示した走行位置への移行時の、制御ピストン100の初期の運動を阻害しない。
図4に示した状態で空気抜き接続部70に圧力が供給されることによって、圧力が、作業室104内に形成され、外部の接続が
図1に示した通りであるときは、制御弁装置22の制御入口50にも形成される。ばね98の力及びOリング88,90,92の静止摩擦を克服する必要はあるが、ばね112の力は克服しなくてよい。ばね112は、弁座108が閉鎖して初めて再び作用する。しかし、このときには既に、Oリング88,90,92のすべり摩擦だけが制御ピストン100の運動に抗して働いているにすぎないので、制御弁装置22は、確実に
図2に示した走行位置に移行可能である。
【0027】
図2に示した走行位置から
図4に示したパーキング位置への移行にとって、制御ピストン100の初期運動が、空気抜き出口70が通気されることにより助成されると、特に有益である。
図1に示した回路で、このことは、制御兼空気抜き電磁弁72の通電により実施される。弁座ピストン110の、弁座108とは反対側の面、つまりばね112側の面124に、空気抜き接続部70を介して供給される圧力が加えられるように、弁座ピストン110が弁ハウジング84内に配置されていると、これにより生じる力は、有益に、第2の弁座114に向かう制御ピストン110の運動を助成する。
【0028】
制御弁装置22の制御ピストン100をパーキング状態に、つまり
図4に示した状態に駆動するばね98は、ばね室116内に配置されている。ばね室116には、漏れ空気戻し案内管路122が接続されている。この漏れ空気戻し案内管路122を介して圧縮空気が供給されると、これにより形成された圧力は、ばねの作用を助成する。パーキング状態の維持は、こうしてより確実となる。
【0029】
図5は、固定の弁座108′を備える制御弁装置22を走行位置で示している。
図2乃至
図4に示した実施の形態とは異なり、
図5に示した制御弁装置22は、可動の弁座ピストンを有しない。むしろ、弁座108′は固定である。それにもかかわらず、空気抜き接続部70が通気あるいは給気されると同時に、作業接続部20が空気抜きされることによって、
図5に示した走行位置から、
図6に示したパーキング位置への移行が助成可能である。
【0030】
図2乃至
図6との関連で説明した制御弁装置は、3つのOリング88,90,92により案内されシールされている。制御ピストン100の作用面は、パーキング位置から走行位置への移行が
図1に示した制御兼空気抜き電磁弁装置72の通電時に実施されるように設計されている。そして制御弁装置22が走行位置に切り換えられると直ちに、制御兼空気抜き弁装置72は、制御弁装置22の切換状態に対する作用なしに非通電状態に移行可能である。
【0031】
以上の説明、図面及び特許請求の範囲に開示される本発明の特徴は、単独でも、任意の組み合わせでも、発明の実現にとって本質的な特徴であり得る。
【符号の説明】
【0032】
10 逆止弁
12 フィルタユニット
14 供給電磁弁
16 供給管路区分
18 絞り
20 第1の作業接続部
22 制御弁装置
24 第2の作業接続部
26 制御入口
28 制御入口
30 トレーラ制御モジュール
32 トレーラ制御モジュール
34 供給接続部
36 制御接続部
38 供給接続部
40 制御接続部
42 トレーラ制御管路分岐
44 トレーラ制御管路分岐
46 セレクトローバルブ
48 制御管路
50 制御入口
52 リレー制御管路
54 シャトル弁
56 リレー制御入口
58 リレー弁
60 リレー供給管路
62 リレー出口管路
64 管路分岐
66 管路分岐
68 常用ブレーキ管路
70 空気抜き接続部
72 制御兼空気抜き弁装置
74 接続部
76 接続部
78 空気抜き電磁弁
80 圧力センサ
82 圧力センサ
84 弁ハウジング
86 リレー接続部
88 Oリング
90 Oリング
92 Oリング
94 Oリング
96 スリーブ
98 ばね
100 制御ピストン
102 孔
104 作業室
106 空気抜き室
108 第1の弁座
108′ 第1の弁座
110 弁座ピストン
112 ばね
114 第2の弁座
116 ばね室
118 空気抜き出口
120 逆止弁
122 漏れ空気戻し案内管路
124 面