(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬物積載容量は高分子材料の硬度の関数として調節できるということが見いだされた。加えて、薬物積載容量は、後硬化処理工程に先立って薬物を高分子材料中に含浸させることによって調節できるということが見いだされた。
【0005】
高分子材料の積載容量を調節することができれば、薬物の積載されたポリマー系のブー
ツ、シース、ディスク、カテーテル、及び同種物の設計における自由度が増すことになる
。特に、高分子材料中へ積載される薬物の量は、容易に制御できるようになる。これら及
び他の利点は、以下の詳細な説明が添付図面と関連付けて読まれれば容易に理解されるで
あろう。なお、本発明は、以下の態様に関し得る。
(態様1)植込式医療装置について既定薬物積載容量を選択する工程と、第1硬度を有する第1高分子材料を選択する工程と、前記第1硬度とは異なる第2硬度を有する第2高分子材料を選択する工程と、前記第1高分子材料を前記第2高分子材料と混成して、前記選択された既定薬物積載容量を有する混成高分子材料を獲得する工程と、を備えている方法。
(態様2)態様1に記載の方法において、前記混成高分子材料を前記植込式医療装置の形状へ成形する工程を更に備えている、方法。
(態様3)態様1に記載の方法において、前記混成高分子材料に後硬化プロセスを施す工程を更に備えている、方法。
(態様4)態様1に記載の方法において、前記植込式医療装置の特徴を前記混成高分子材料中へ製作する工程を更に備えている、方法。
(態様5)態様1に記載の方法において、前記混成高分子材料に治療剤を積載させるべく溶媒を当該混成高分子材料へ塗布する工程を更に備えている、方法。
(態様6)態様1に記載の方法において、前記混成高分子材料を前記植込式医療装置の形状へ成形する工程と、前記混成高分子材料に後硬化プロセスを施す工程と、前記植込式医療装置の特徴を前記混成高分子材料中へ製作する工程と、前記混成高分子材料に治療剤を積載させるべく溶媒を当該混成高分子材料へ塗布する工程と、を更に備えている、方法。
(態様7)態様6に記載の方法において、前記の混成材料に後硬化プロセスを施す工程は、前記の溶媒を混成高分子材料へ塗布する工程に先立って行われる、方法。
(態様8)態様6に記載の方法において、前記の混成高分子材料に後硬化プロセスを施す工程は、前記の溶媒を混成高分子材料へ塗布する工程の後に行われる、方法。
(態様9)植込式医療装置を形成する方法において、高分子材料を前記植込式医療装置の形状へ成形する工程と、前記高分子材料に治療剤を積載させるべく溶媒を当該高分子材料へ塗布する工程と、前記の溶媒を高分子材料へ塗布する工程の後に、当該高分子材料に後硬化プロセスを施す工程と、を備えている、方法。
(態様10)態様9に記載の方法において、前記植込式医療装置の特徴を前記高分子材料中へ製作する工程を更に備えている、方法。
(態様11)態様9に記載の方法において、前記植込式医療装置について既定薬物積載容量を選択する工程と、第1硬度を有する第1高分子材料を選択する工程と、前記第1硬度とは異なる第2硬度を有する第2高分子材料を選択する工程と、前記第1高分子材料を前記第2高分子材料と混成して、前記選択された既定薬物積載容量を有する混成高分子材料を獲得する工程と、を更に備えている、方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に続く詳細な説明では、本明細書の一部を成す添付図面を参照しており、その中には装置、システム、及び方法の幾つかの特定の実施形態が一例として示されている。実施形態は他にも考えられ、それらは本発明の範囲又は精神から逸脱することなく成され得るものと理解されたい。故に、以下の詳細な説明は、制限を課す意味に取られてはならない。
【0008】
本明細書で使用されている全ての科学的及び技術的用語は、別途指定されていない限り、当該技術で普通に使用されている意味を有する。本明細書に提示されている定義は、ここで頻繁に使用される或る一定の用語の理解を促そうとするものであり、本開示の範囲を制限するものではない。
【0009】
英語の単数を表す冠詞「a」、「an」、及び「the」の対訳で「一」、「或る」、及び「当該」が、本明細書及び付随の特許請求の範囲に使用されている場合、それらは、文脈により別途明白に指示されていない限り、複数の言及対象を有する実施形態を網羅する。本明細書及び付随の特許請求の範囲での使用に際し、「又は」という用語は、概して、文脈により別途明白に指示されていない限り、「及び/又は」を含めた意味で用いられている。
【0010】
ここでの使用に際し、「治療剤」とは、ヒトの様な対象へ投与されると有益な効果をもたらす可能性のある巨大分子(例えば、ペプチド又は核酸又はそれらの誘導体)又は小分子の様な分子を意味する。
【0011】
ここで化合物という言及があれば、それは、化合物及びその何らかの薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、異性体、及び多形体を指しているものと解釈されたい。
【0012】
別途指し示されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている特徴の大きさ、量、及び物理的性質を表す全ての数は、どの場合においても「約」という用語で丸められているものと理解されたい。従って、それとは反対の指示のない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数的パラメータは近似値であって、当業者がここに開示されている教示を利用して獲得を模索する所望の性質に応じて変わり得る。
【0013】
端点による数的範囲の表記は、当該範囲内及び当該範囲の内の何れかの範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0014】
本開示は、他にもあるが中でも特に、植込式医療装置、高分子材料、及び高分子材料中への薬剤の組み込み、に関する。高分子材料の硬度と関連付けられる薬物の積載容量との間にはトレードオフが存在することが見いだされた。更に、後硬化プロセスの温度に耐えることのできる治療剤については、後硬化処理工程に先立って薬剤を高分子材料に組み込めば、後硬化処理工程後に薬剤を組み込む場合に比べ薬物積載容量が増加することも見いだされた。
【0015】
加えて、後硬化処理工程に先立って高分子材料に所望の薬剤を「過剰積載」(即ち、所望量より多く積載)すれば、後硬化が薬剤中に或る程度の分解を引き起こした後に適正濃度が得られることになる。
【0016】
ポリマー
本明細書の教示に従って、何れの適した高分子材料が使用されてもよい。高分子材料は如何なる適した形状であってもよく、如何なる適した形態をとっていてもよい。例えば、高分子材料は、管、シース、スリーブ、ブーツ、ディスク、又は同種物の形態をしていてもよい。高分子材料は、押出成形されてもよいし、モールド成形されてもよいし、又はそれ以外のやり方で形成されてもよい。一般に使用されている適した高分子材料の例としては、有機ポリマーである、例えば、シリコン、ポリアミン類、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリレート類、ポリシラン類、ポリスルホン、メトキシシラン類、及び同種物など、が挙げられる。利用することのできる他のポリマーには、ポリオレフィン類、ポリイソブチレン、及びエチレン‐アルファオレフィンコポリマー;アクリル系ポリマー及びコポリマー、エチレン‐コビニルアセテート、ポリブチルメタクリレート;ポリ塩化ビニルの様なハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー;ポリビニルメチルエーテルの様なポリビニルエーテル類;ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンの様なポリハロゲン化ビニリデン類;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン類;ポリスチレンの様なポリビニル芳香族類、ポリビニルアセテートの様なポリビニルエステル類;エチレン‐メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル‐スチレンコポリマー、ABS樹脂、及びエチレン‐ビニルアセテートコポリマー、の様なビニルモノマー同士か又はビニルモノマーとオレフィン類とのコポリマー;ナイロン66及びポリカプロラクタムの様なポリアミド類;ポリカーボネート類;ポリオキシメチレン類;ポリイミド類;ポリエーテル類;エポキシ樹脂;ポリウレタン類;レーヨン;レーヨン‐トリアセテート;セルロース;セルロースアセテート;セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロハン;セルロースナイトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル類;カルボキシメチルセルロース;ポリフェニレンオキシド;及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、が含まれる。
【0017】
高分子材料は、合成又は天然の生体吸収性ポリマーの様な、生体分解性であってもよい。被覆層を形成するのに使用することのできる合成の生体吸収性高分子材料には、ポリ(L‐乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)、ポリ(エチレン‐ビニルアセテート)、ポリ(ヒドロキシブチレート‐コバレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸‐コ‐トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸類)、シアノアクレート類、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、PEOI PLAの様なコポリ(エーテル‐エステル類)、ポリアルキレンオキサレート類、ポリホスファゼン類、及びチロシン由来ポリアリレートを含むポリアリレート類、が含まれる。別の例示としての実施形態によれば、高分子材料は、限定するわけではないが、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、及びヒアルロン酸の様な、天然の生体吸収性ポリマーであってもよい。「生体分解性」、「生体浸食性」、「生体吸収性」、及び類義の語は、ここでは置き換え可能に使用されている。
【0018】
様々な実施形態では、高分子材料は、エラストマー系高分子材料である。エラストマー系高分子材料の例としては、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、シリコン、エチレン‐プロピレンエラストマー類、スチレン‐1,3‐ブタジエン、アクリロニトリル‐1,3‐ブタジエン、イソブチレン‐イソプレン、及び同種物、が挙げられる。
【0019】
高分子材料は、植込式医療装置の周りに設置されるように設計されているブーツの形態をしていてもよいし、又はディスクの形態をしていてもよい。1つ又はそれ以上の治療剤が関連付けられた高分子材料は、皮下ポケットに設置されてもよいし、植込式医療装置の上又は周りに設置されてもよい。様々な実施形態では、高分子材料は、医療装置へ結合されるか、接着されるか、被覆されるか、又はそれ以外のやり方で取り付けられている。他の実施形態では、高分子材料は、ポリマー系のシャントカテーテル、脈管カテーテルへ形成されており、開口、開窓、造形、マーク、接続部、及び同種物の様な、様々な特徴を含んでいる。
【0020】
治療剤
ここに提示されている教示に従って、何れの治療剤が高分子材料と関連付けられてもよい。治療剤の積載された高分子材料が植込式医療装置と関連付けられる場合、医療装置の植え込みに関連する感染症、炎症、又は増殖を治療又は予防するのが望ましいであろう。
【0021】
従って、1つ又はそれ以上の抗感染剤、1つ又はそれ以上の抗炎症剤、1つ又はそれ以上の抗増殖剤、又はそれらの組合せを、高分子材料と関連付けるのが望ましいであろう。状況によっては、局所麻酔剤を送達するのが望ましいこともあろう。高分子材料と関連付けてもよいとされる追加の治療剤については、高分子材料が植込式医療装置と関連付けられているか又は関連付けられる予定であるかに関わらず、当業者には容易に見極めがつくであろう。使用されてもよいとされる治療剤の幾つかの非限定的な種類を簡単にまとめると以下の通りである。
【0022】
1.抗感染剤
様々な実施形態に従って、何れの抗感染剤が使用されてもよい。ここでの使用に際し、「抗感染剤」は、微生物又は微生物集団の様な感染性有機体を殺すか又はその増殖を阻害する薬剤を意味する。抗感染剤には、抗生剤及び防腐剤が含まれる。
【0023】
A.抗生剤
本発明の様々な実施形態に従って、ヒトでの使用に適した何れの抗生剤が使用されてもよい。本明細書での使用に際し、「抗生剤」は、抗菌剤を意味する。多くの抗生剤は、細菌以外の微生物に対しては効果が限定されている。抗菌剤は、静菌活性を有するもの、及び/又は殺菌活性を有するものがある。
【0024】
使用することのできる抗生剤の種類の非限定的な例としては、テトラサイクリン類(例えばミノサイクリン)リファマイシン類(例えばリファンピン)、マクロライド類(例えばエリスロマイシン)、ペニシリン類(例えばナフシリン)、セファロスポリン類(例えばセファゾリン)、他のベータラクタム系抗生剤(例えば、イミペネム、アズトレオナム)、アミノグリコシド類(例えばゲンタマイシン)、クロラムフェニコール、スルホンアミド類(例えばスルファメトキサゾール)、グリコペプチド類(例えばバンコマイシン)、キノロン類(例えばシプロフロキサシン)、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、ムピロシン、ポリエン類(例えばアムホテリシンB)、アゾール類(例えばフルコナゾール)、及びベータラクタマーゼ阻害剤(例えばスルバクタム)、が挙げられる。使用することのできる特定の抗生剤の非限定的な例としては、ミノサイクリン、リファンピン、エリスロマイシン、ナフシリン、セファゾリン、イミペネム、アズトレオナム、ゲンタマイシン、スルファメトキサゾール、バンコマイシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、テイコプラニン、ムピロシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、オフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、スパルフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、クリナフロキサシン、スルバクタム、クラブラン酸、アムホテリシンB、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、及びナイスタチン、が挙げられる。抗生剤の例はサカモトらの米国特許第4,642,104号に掲載されているものなど他にもあり、それらが使用されてもよく、前記米国特許をここに参考文献としてそっくりそのまま援用する。当業者には使用することのできる他の抗生剤が認識されるであろう。
【0025】
高分子材料が植込式医療装置と関連付けられているか又は関連付けられる予定である場合、選択される(単数又は複数の)抗生剤は、医療装置の外科的植え込みに続く感染症に関連のある1つ又はそれ以上の細菌を殺すか又はその増殖を阻害するのが望ましい。その様な細菌は、当業者には認識されており、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、及び大腸菌が含まれる。
【0026】
選択される(単数又は複数の)抗生剤は、1つ又はそれ以上の抗生剤に耐性のある細菌の菌株に対して有効性があるのが好ましい。
【0027】
細菌が殺されるか又は阻害される可能性を高めるためには、2つ又はそれ以上の抗生剤を組み合わせることが望ましいこともあろう。更に、1つ又はそれ以上の抗生剤を1つ又はそれ以上の防腐剤と組み合わせるのが望ましいこともあろう。その様な効果を実現させるには、異なる作用機序及び/又は異なる作用スペクトルを有する抗微生物剤が最も有効であることは当業者の認識するところであろう。或る実施形態では、リファンピンとマイコサイクリン(micocycline)の組合せが使用されている。或る実施形態では、リファンピンとクリンダマイシンの組合せが使用されている。
【0028】
B.防腐剤
様々な実施形態に従って、ヒトでの使用に適した何れの防腐剤が使用されてもよい。ここでの使用に際し、「防腐剤」は、細菌、真菌、又はウイルスのうち1つ又はそれ以上を殺すか又はその増殖を阻害する能力のある薬剤を意味する。消毒剤の様な、多くの防腐剤は、細菌、真菌、及びウイルスのうち2つ又はそれ以上又はそれらの全てに対して有効性がある。防腐剤の非限定的な例としては、ヘキサクロロフェン、カチオン性ビシグアニド類(cationic bisiguanides)(即ち、クロルヘキシジン、シクロヘキシジン)、ヨード及びヨードフォア類(即ちポビドンヨード)、パラクロロ‐メタ‐キシレノール、トリクロサン、フラン系医薬品(即ち、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン)、メテナミン、アルデヒド類(グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド)、銀含有化合物(スルファジアジン銀、金属銀、銀イオン、硝酸銀、酢酸銀、プロテイン銀、乳酸銀、ピクリン酸銀、硫酸銀)、及びアルコール類、が挙げられる。当業者には、本開示に従って採用することのできる他の防腐剤が認識されるであろう。
【0029】
高分子材料が植込式医療装置と関連付けられているか又は関連付けられる予定である場合(例えば、高分子材料がカテーテルやリードの様な装置の一部を形成しているか、高分子材料が当該装置の周りに配置されるか、装置へ被覆されるか、又はそれ以外のやり方で装置へ接着される予定である、又は植え込み後に装置の近傍に設置される場合)、選択される(単数又は複数の)防腐剤は、医療装置の外科的植え込みに続く感染症に関連のある1つ又はそれ以上の微生物を殺すか又はその増殖を阻害するのが望ましい。その様な微生物は、当業者には認識されており、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、及びカンジダ菌が含まれる。
【0030】
微生物が殺されるか又は阻害される可能性を高めるためには、2つ又はそれ以上の防腐剤を組み合わせることが望ましいこともあろう。更に、1つ又はそれ以上の防腐剤を1つ又はそれ以上の抗生剤と組み合わせるのが望ましいこともあろう。その様な効果を実現させるには、異なる作用機序及び/又は異なる作用スペクトルを有する抗微生物剤が最も有効であることは当業者の認識するところであろう。或る特定の実施形態では、クロルヘキシジンとスルファジアジン銀の組合せが使用されている。
【0031】
C.抗ウイルス剤
本発明の様々な実施形態に従って、ヒトでの使用に適した何れの抗ウイルス剤が使用されてもよい。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、アシクロビル及びアシクロビルのプロドラッグ類、ファムシクロビル(famcyclovir)、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、ザルシタビン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、n‐ドコサノール、トロマンタジン、及びイドクスリジン、が挙げられる。当業者には、本開示に従って採用することのできる他の抗ウイルス剤が認識されるであろう。
【0032】
ウイルスが殺されるか又は阻害される可能性を高めるためには、2つ又はそれ以上の抗ウイルス剤を組み合わせることが望ましいこともあろう。更に、1つ又はそれ以上の防腐剤を1つ又はそれ以上の抗ウイルス剤と組み合わせることが望ましいこともあろう。
【0033】
D.抗真菌剤
本発明の様々な実施形態に従って、ヒトでの使用に適した何れの抗真菌剤が使用されてもよい。抗真菌剤の非限定的な例としては、アモロルフィン、イソコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、ビフォナゾール、アムホテリシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、フルコナゾール及びフルシトシン、サリチル酸、フェザチオン、チクラトン、トルナフテート、トリアセチン、亜鉛、ピリチオン、及びピリチオンナトリウム、が挙げられる。当業者には、本開示に従って採用することのできる他の抗真菌剤が認識されるであろう。
【0034】
ウイルスが殺されるか又は阻害される可能性を高めるためには、2つ又はそれ以上の抗真菌剤を組み合わせることが望ましいこともあろう。更に、1つ又はそれ以上の防腐剤を1つ又はそれ以上の抗真菌剤と組み合わせることが望ましいこともあろう。
【0035】
2.抗炎症剤
様々な実施形態に従って、ヒトでの使用に適した何れの抗炎症剤が使用されてもよい。抗炎症剤の非限定的な例としては、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチル‐プレドニシロン(methyl-prednisilone)、及びそれらの誘導体、の様なステロイド剤、及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)が挙げられる。NSAIDsの非限定的な例としては、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アクロフェナク、ジクロフェナク、アロキシプリン、アプロキセン、アスピリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、サリチルアミド、サリチル酸、スリンダク、デソキシスリンダク、テノキシカム、トラマドール、ケトララク、フルフェニサル、サルサレート、トリエタノールアミンサリチレート、アミノピリン、アンチピリン、オキシフェンブタゾン、アパゾン、シンタゾン、フルフェナム酸、クロニキセル(clonixerl)、クロニキシン、メクロフェナム酸、フルニキシン、コルチシン、デメコルシン、アロプリノール、オキシプリノール、塩酸ベンジダミン、ジメファダン、インドキソール、イントラゾール、塩酸ミムバン、塩酸パラニレン、テトリダミン、塩酸ベンジンドピリン、フルプロフェン、イブフェナク、ナプロキソール、フェンブフェン、シンコフェン、ジフルミドンナトリウム、フェナモール、フルチアジン、メタザミド(metazamide)、塩酸レチミド、塩酸ネキセリジン、オクタザミド(octazamide)、モリナゾール、ネオシンコフェン、ニマゾール、クエン酸プロキサゾール、テシカム、テシミド、トルメチン、及びトリフルミダート、が挙げられる。
【0036】
3.局所麻酔剤
様々な実施形態に従って、ヒトでの使用に適した何れの局所麻酔剤が使用されてもよい。局所麻酔剤の非限定的な例としては、リドカイン、プリロカイン、メピビカイン(mepivicaine)、ベンゾカイン、ブピビカイン(bupivicaine)、アメトカイン、リグノカイン、コカイン、シンコカイン、ジブカイン、エチドカイン、プロカイン、ベラトリジン(選択的C線維遮断薬)、及びアルチカイン、が挙げられる。
【0037】
4.他の薬理学的作用物質
使用することのできる他の薬理学的作用物質の非限定的な例としては、ベータ線放射性同位元素、ベクロメタゾン、フルオロメトロン、トラニラスト、ケトプロフェン、クルクミン、シクロスポリンA、デオキシスペルグアリン、FK506、スリンダク、ミリオシン、2‐アミノクロモン(U‐869831、コルヒチン、ペントサン、アンチセンスオリゴヌクレオチド類、ミコフェノール酸、エトポシド、アクチノマイシンD、カンプトテシン、カルムスチン、メトトレキサート、アドリアマイシン、マイトマイシン、シス‐白金、有糸分裂阻害剤、ビンカアルカロイド類、組織成長因子阻害剤、白金化合物、細胞毒性のある阻害剤、アルキル化剤、抗代謝剤、タクロリムス、アザチオプリン;インターロイキン、T細胞、B細胞、及び受容体に対する組み換え抗体又はモノクローナル抗体、ビスアントレン、レチノイン酸、タモキシフェン、銀含有化合物、ドキソルビシン、アザシチジン、ホモハリントニン、セレン化合物、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン類、ヘパリン;抗新生物剤/抗血管新生剤として、例えば、抗代謝剤、アルキル化剤、細胞毒性のある抗生剤、ビンカアルカロイド類、有糸分裂阻害剤、白金化合物、細胞成長因子阻害剤、シスプラチン、及びエトポシドなど;免疫抑制剤として、例えば、シクロスポリンA、ミコフェノール酸、タクロリムス、ラパマイシン、Abbott Labolatories社製造ラパマイシン類似体(ABT−578)、アザチオプリン、インターロイキン、T細胞、B細胞、及び/又はそれらの受容体に対する組み換え抗体又はモノクローナル抗体など;抗凝血剤として、例えばヘパリン及びコンドロイチン硫酸など;血小板阻害剤として、例えばチクロピジンなど;血管拡張剤として、例えば、シクランデレート、イソクスプリン、パパベリン、ジピリマドール、二硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate)、フェントラミン、ニコチニルアルコール、コ‐デルゴクリン、ニコチン酸、三硝酸グリセリン、四硝酸ペンタエリトリトール、及びキサンチノールなど;血栓溶解剤として、例えば、ストレトキナーゼ(stretokinase)、ウロキナーゼ、及び組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogin activators)など;鎮痛剤及び解熱剤として、例えば、ブプレノルフィン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、パパベレタム、ペンタゾシン、ペチジン、フェノペフィジン(phenopefidine)、コデイン、ジヒドロコデイン、の様なオピオイド系鎮痛剤、並びにアセチルサリチル酸(アスピリン)、パラセタモール、及びフェナゾンなど;及び抗増殖剤として、例えば、QP−2(タクソール)、パクリタキセル、ラパマイシン、タクロリムス、エベロリムス、アクチノマイシン、メトトレキサート、アンギオペプチン、ビンクリスチン、マイトサイシン(mitocycin)、スタチン、C−MYCアンチセンス、シロリムス、レステンASE、2-クロロ‐デオキシアデノシン、PCNA(増殖細胞核抗原)リボザイム、バチマスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、ハロフジノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、及びプロブコールなど;並びにそれらの組合せ及び/又は誘導体、が挙げられる。
【0038】
様々な実施形態では、ステロイド(例えばデキサメタゾン)、細胞増殖抑制剤(例えばラパマイシン)、及び放射性物質が、高分子材料と関連付けられている。
【0039】
治療剤は、高分子材料中に何れの適した濃度で存在していてもよい。例えば、治療剤は、物品の重量の0.1%乃至50%、0.1%乃至20%、0.1%乃至5%、0.1%乃至10%、など、を占めていてもよい。
【0040】
溶媒
治療剤を高分子材料中へ積載するのに何れの適した溶媒が使用されてもよい。また、治療剤を高分子材料中へ組み込むのに何れの溶媒媒介プロセスが使用されてもよい。例えば、治療剤は、ポリマーを適当な溶媒の溶液中に膨潤させることによって、高分子材料の中へ含浸されてもよい。概して、治療剤は溶媒中に溶けることができ溶媒はポリマーを膨潤させる能力があるのが望ましい。当業者には、どの溶媒に治療剤を溶解させる能力があるか及びどの溶媒に高分子材料を膨張させる能力があるかが容易に解るであろう。治療剤を高分子材料に組み入れるか又は関連付けるのに使用されるプロセス又は溶媒に関係なく、治療剤は、対象に投与されたときに意図される治療効果を発揮するのに有効な量が組み入れられるか又は関連付けられるのが望ましい。
【0041】
図1は、植込式医療装置で利用しようとする高分子材料を、薬物積載容量増加対高分子材料硬度低下というトレードオフに基づいて選択するための方法の流れ図である。方法100は、工程102で始まり、装置について、所望の薬物積載容量が、植込式医療装置としての硬度要件に応じて確定される。植込式医療装置に積載される薬物の形成には、所望の薬物積載容量と所望の物理的特性との間のトレードオフが存在する。特に、高分子材料の硬度と薬物積載容量との間には或る関係が存在することが判明している。例えば、下表1は、デュロメータ値及び関連付けられるクリンダマイシン薬物積載容量を示している。
【表1】
【0042】
表1に基づき、薬物積載容量を高分子材料の硬度の関数として予測するために、線形回帰分析を行うことができる。これらの予測値が与えられたら、所望の
薬物積載容量を考慮しながら装置を設計すればよい。多くのシリコンエラストマー系原材料製造者は、自身の原材料を柔軟から堅硬まで様々な硬度等級で提供しているので、中間の硬度の材料ひいては選択された薬物積載容量の材料を形成するべく原材料を混成することは可能である。例えば、ミシガン州ミッドランドのDow Corning Corporation社は、柔らかめの硬度(公称35ショアAデュロメータ)、中間の硬度(公称50ショアAデュロメータ)、及び堅めの硬度(公称65ショアAデュロメータ)のエラストマーを提供している。所望に応じ、これらの材料は中間の硬度を実現させるべく混成されてもよい。方法100を参照すると、工程
104は、第1硬度を有する第1高分子材料を選択する工程を含んでいる。次に、工程
106で、第2硬度を有する第2高分子材料が選択される。工程
108で、第1高分子材料と第2高分子材料が混成され、選択された既定薬物積載容量を有する中間の硬度を実現させる。
【0043】
所望の高分子材料が選択されたら、次に植込式医療装置を様々な方法を使用して形成することができる。
図2及び
図3は、治療薬を含浸させた植込式医療装置を形成するための2つの例示としての方法を示している。
図2の方法200と
図3の方法300は、同様の番号が付されてはいるが異なった順序で行われる同様の工程を含んでいる。方法200及び方法300は単に例示であり、当業者には、方法200及び方法300の全体的な枠内で他の工程を更に利用できることが認識されるであろう。
【0044】
方法200は、工程202で始まり、例えば
図1の方法100又は所望により別の方法を使用して、所望の高分子材料が選択される。
図1の方法100が使用された場合、以下に論じられている諸工程は、上述の工程108で形成されている混成高分子材料に適用できる。次に、工程204で、高分子材料は所望の形状へ成形される。例えば、形状は、押し出し成形された管であってもよいし、形状はブーツなどであってもよい。次に、工程206で、高分子材料には後硬化プロセスが施される。例えば、後硬化プロセスは、高分子材料を加硫処理することや材料を炉内で高温に曝露することなどを伴っていてもよく、それらの工程は原材料供給者によって別途指定されてもよいし、完成させる装置の所望の特性に応じて調節されてもよい。次に、工程208で、所望に応じ装置の特徴が製作される。例えば、カテーテルは、様々な孔、構造、開窓、造形、マーク、及び同種物を含んでいるかもしれない。特徴が製作されたら、方法200は、工程210へ進み、溶媒が材料へ塗布される。1つの実施形態では、材料に治療剤を含浸させるべく材料は溶媒中に沈められる。次に、工程212で、材料は溶媒から取り出され乾燥させられる。この時点で、材料は薬物の積載された装置と成っており、いつでも包装して出荷できる状態である。
【実施例】
【0045】
実施例A
1つの実施例(実施例A)では、方法100及び方法200を使用してシャントカテーテルを形成した。57デュロメータショアA硬度を有するシャントカテーテルならシャントカテーテルとしての使用に適した硬度を提供するはずであると判断された。加えて、クリンダマイシンを0.015重量%及びリファンピシンを0.054重量%、シャントカテーテル中へ積載させることが所望された。また一方で、当該シャントカテーテルは薬物クリンダマイシンの要求重量%を積載するには所望の容量を有していないことが判明した。翻って、より柔らかい44デュロメータショアA硬度の材料を使用すれば適正積載量が可能になろうが、当該材料ではシャントカテーテルの所望硬度としては柔らかすぎた。方法100を利用することにより、57デュロメータ材料と44デュロメータ材料の50/50混成(即ち同等量)が選定され、方法100に従って混成した。材料を混成し次いで完全に後硬化させた後、孔形成、先端造形、及びマーク付けの様な、最終的なカテーテル製作を行った。カテーテル製作後、材料を、リファンピシンとクリンダマイシンの両方を含有するクロロホルム溶媒中に約45−60分間浸軟させた。溶媒を排流し、カテーテルを乾燥させて包装し、最後に蒸気で滅菌した。リファンピンは、当初、蒸気滅菌前に約0.15−0.17重量%であったものが、60%分解して0.054重量%という最終目標濃度になった。クリンダマイシンはより安定しているので約10%しか分解しない。滅菌後、シャントカテーテルは、適した中間の硬度を持ち、更にクリンダマイシン約0.15%及びリファンピシン0.054%を有していた。
【0046】
図3では、後硬化処理工程206が方法300の最後に移動しており、溶媒塗布工程210が材料の所望形状への成形(工程204)後に行われている。方法300では、溶媒塗布工程210で利用されている治療剤が後硬化処理工程206中に提供されている温度に耐えるように装備されている限りにおいて、分解を補償できるだけの量を後硬化以前に積載させることができる。溶媒は後硬化以前に塗布され、後硬化工程206が高分子材料のデュロメータを改変させる。
【0047】
実施例B
別の実施例(実施例B)では、方法300を使用して、孔、先端造形、又はマークの無い一般的なカテーテルを形成した。この実施例では、使用材料は、57デュロメータショアA材料100%であった。クリンダマイシンの所望量を、後硬化以前に溶媒を材料へ塗布することによって材料中へ積載させることができた。この特定の実施例では、先端造形及びマーク付けというカテーテル製作工程は、それら製作工程がカテーテルを熱tに曝露させ、そのせいでクリンダマイシン容量が減ってしまうため、行っていない。しかしながら、後硬化に先立って溶媒を材料へ塗布することによって、カテーテルとしてより高い硬度及びより高い薬物積載容量を実現させることができる。
【0048】
以上、「高分子材料中の薬物積載の調節」の実施形態を開示してきた。当業者には、本発明を開示されている以外の実施形態で実践することもできることが理解されるであろう。開示されている実施形態は、説明を目的として提示されており、限定を課す目的ではなく、本発明は、次に続く特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0049】
本開示を好適な実施形態を参照しながら説明してきたが、当業者には、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細事項に変更のなされる余地のあることが認識されるであろう。