(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864535
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】光学的にトレーサガスを検出する漏れ検知器
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
G01M3/20 N
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-503100(P2013-503100)
(86)(22)【出願日】2011年4月6日
(65)【公表番号】特表2013-524227(P2013-524227A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011055361
(87)【国際公開番号】WO2011124613
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】12/757,631
(32)【優先日】2010年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502079409
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ウラディミール・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヴェツィヒ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・チェルノブロッド
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−006134(JP,A)
【文献】
特開2006−047312(JP,A)
【文献】
特開平01−227046(JP,A)
【文献】
特開平09−101230(JP,A)
【文献】
特開2005−134218(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0028640(US,A1)
【文献】
米国特許第06277177(US,B1)
【文献】
特開平05−099780(JP,A)
【文献】
特表平11−507587(JP,A)
【文献】
特開平06−194259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーサガスを透過できる膜(13)を含むトレーサガス入口(12)を備えるセル(10)と、
前記トレーサガスをエネルギ準位の高い準安定状態にするための、前記セル(10)の中の励起装置(25)と、
レーザ源(15)およびレーザビームを受光するフォトデテクタ(16)からなる光学測定部(14)とを含む、光学的にトレーサガスを認識する漏れ検知器。
【請求項2】
前記セル(10)は、真空ポンプ装置に接続されている、請求項1の漏れ検知器。
【請求項3】
前記セル(10)は、バッファガスのためのバッファガス入口(32)と、前記バッファガスをプラズマに変化させるガス放電部を備え、前記プラズマにより前記トレーサガスを準安定状態にする励起装置(25)とを含む、請求項1の漏れ検知器。
【請求項4】
前記セル(10)は、前記トレーサガスを準安定状態にするために、電子衝突を利用する電子発生源を含む、請求項1の漏れ検知器。
【請求項5】
前記セル(10)は、前記トレーサガスを透過できる膜を備えるポンプ接続(35)をさらに含み、前記ポンプ接続は、前記セルを、さらに真空ポンプ装置に接続されたポンプチャンバ(36)に接続する、請求項1の漏れ検知器。
【請求項6】
前記ポンプチャンバ(36)は、バッファガス接続(37)とポンプ接続(38)とを含む、請求項5の漏れ検知器。
【請求項7】
前記セル(10)は、該セルの中に生じる前記トレーサガスの分圧が雰囲気中の前記トレーサガスの分圧に等しくなるように、前記トレーサガス入口(12)を除いて密閉シールされている、請求項1の漏れ検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的にトレーサガスを検出する漏れ検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
漏れ検知器は、典型的には、引き込んだガスについてトレーサガスの有無を調べるための質量分光計または同様のガス分析装置を含む。選択されるトレーサガスは、ヘリウム、および、水素等の他の希ガスである。質量分光計の使用は、高真空の生成、ひいてはかさばる真空ポンプを必要とする。さらに、漏れ検知器は、気密な壁を含み、トレーサガスを選択的に透過する膜で封止されたセルを有し、膜がトレーサガスの入口を形成するものが知られている。セルを使用すると、セルの外側においてトレーサガスが膜上に存在するとき、トレーサガスの分圧が上昇する。セルは、トレーサガス以外のガスを保持しないので、セル内で全圧を測定することによりトレーサガスの分圧を測定できる。これは、雰囲気におけるトレーサガスの分圧についての情報を与える。つまり、それは、環境におけるトレーサガスの存在を検出することが可能なだけでなく、量的な測定も可能である。セル内での圧力測定は、複雑な測定装置およびトレーサガスを除去するためのポンプ機能を必要とする。ペニングまたはマグネトロンセルがこの目的のために望ましいセルである。
【0003】
DE19853049C2は、他のタイプの、キャリアガスが検査対象を通してポンプ送りされ、流出するキャリアガス中にトレーサガスが存在するかどうかを検出する漏れ検知器を記載する。この場合、検査対象への漏れが測定される。検査対象からポンプ送りされたガスは、放電セルを通過して、準安定性状態とみなされるようになる。ガス放電を生成するために選択されるキャリアガスまたはトレーサガスは、ヘリウムである。ガス放電の目的は、トレーサガスを準安定状態にすることである。放電セルは、レーザ源およびレーザからの光線を受け取るフォトデテクタにより形成された光学測定流路を含む。検出すべきキャリアガスまたはトレーサガス成分の励起された原子は、放電セルにおいてレーザ吸光分析により測定される。この測定の原理は、トレースガスの励起に必要なキャリアガスが検査対象を通過することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高い感度、短い反応時間および簡素な構造を有する漏れ検知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
提案される漏れ検知器は、請求項1に規定される。漏れ検知器は、好ましくはトレーサガスを透過可能なガス入口を備えるセルを含む。理論的に、ガス入口は、選択的または専らトレーサガスを透過する。これは、膜が、外側または雰囲気の圧力をブロックするが、トレーサガスおよびまれに他のガスの通過を許すことを意味する。例えば、膜は、水晶または酸化珪素(SiO
2)の薄い層を含んでもよい。膜は、特に、それが加熱されたときに、水素またはヘリウムのような軽いガス選択的に透過できる。膜は、重いガスおよび水蒸気並びにトレーサガスの準安定状態を打ち破り得る他の如何なるものもセルの内側に入れない。したがって、膜のトレーサガスに対する「完全な選択性」は、要求されない。むしろ、膜は、トレーサガスの通過を許容するが、他のガス成分も取り込み得るもので十分である。
【0006】
本発明は、異なる漏れ検査方法を可能にする。例えば、漏れ検知器は、検査対象の外側に沿って通過したプローブを含み、トレーサガスの漏れを検出するスニファー探知機であってもよい。一方、漏れ検知器は、また、検査対象からガスを引き抜く吸引装置を含んでもよく、その場合、検査対象の外側にトレーサガスを含む領域が形成される。
【0007】
セルを空にする必要はないが、本発明の好ましい実施形態では、セルに真空ポンプ装置が接続される。
【0008】
準安定状態の励起は、ガスプラズマ下またはガス放電下におけるバッファガスの粒子衝突によって達成できる。他の可能性は、電子源(陰極)から来る電子がトレーサガスに衝突してより高いエネルギレベルとなる直接電子衝突を提供する。ここでは、バッファガスは必要ではない。さらなる可能な励起方法は、X線、多光子励起、ローマ型分布(Raman-type population)励起、例えば超音波ビームにおける中性原子/分子との衝突である。
【0009】
準安定ヘリウムの光学的検出は、吸光分光法または蛍光分光法によって達成されてもよい。吸光分光法のために、レーザ源が高励起状態の吸収スペクトルをカバーする変調を受けてもよい。
【0010】
特別な実施形態によれば、セルは、さらに、好ましくはトレーサガスを透過できる膜からなるポンプ接続を含み、ポンプ接続は、セルを、さらにバキュームポンプ装置またはトレーサガスのない大気に接続されたチャンバに接続する。ポンプ接続は、雰囲気中へのまたはポンプ動作のいずれかによるセルからのヘリウムの除去を可能にする。ポンプ接続の目的は、トレーサガスが膜の前から除去された後、トレーサガスをセルの内側から外側に放出することである。
【0011】
本発明の他の実施形態において、セルは、トレーサガス入口を除いて、密閉シールされている。トレーサガス入口において、雰囲気のトレーサガスの分圧と等しいトレーサガスの分圧がセルの内側に生じる。
【0012】
その最良の実施形態を含み、当業者に本発明の実施を可能にする、本発明の完全で実施を可能にする開示は、添付の図面への参照を含んだ以下の記載において非常に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】準安定励起がバッファガスによるガスプラズマで達成される、具体的な第1実施形態を示す図である。
【
図3】セルに、短い応答時間を達成するようにトレーサガスをセルから引き抜く追加のポンプ接続を含んだ第2実施形態を示す図である。
【
図4】セルが真空接続を含む実施形態を示す図である。
【
図5】セルがトレーサガス入口を除いて密閉シールされて、セルの内側に雰囲気における分圧と等しい分圧が生じるような他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一般概念は、
図1に示される。提示した漏れ検知器の核心は、トレーサガス入口12で閉鎖された内部空間11を有するセル10である。トレーサガス入口12は、好ましくは、トレーサガス、例えばヘリウムを透過できる膜13を含む。それは、好ましくは、ヘリウムのみを選択的に透過できる膜である。膜13は、双方向に透過性である。したがって、セル10の内部空間11には、セルの外側のトレーサガスの分圧と等しい圧力が生じる。セル10は、トレーサガス以外の如何なるガスも保持し得ないように、前もって空にされる。セル10は、それによりトレーサガスを高位の励起状態にする励起装置(不図示)を含む。
【0015】
準安定状態のトレーサガスの光学検出は、レーザ源15およびレーザビーム17を受け取るフォトデテクタ16を含む測定部14によって達成される。レーザ源15が射出したレーザビーム17の波長は、トレーサガス(例えばヘリウム)の吸収線にしたがって設定される。例えば、レーザビームの波長は、準安定レベル2
3S
1に始まって高エネルギレベル2
3P
2を達成するように、1083.034nmに設定される。1083.025nmのレーザの周波数によってエネルギレベル2
3P
1が達成され、エネルギレベル2
3P
0が1082.908nmの波長によって達成されるであろう。準安定状態のトレーサガスは、上記波長によって照明され、この波長が吸収される。詳細にはDE19853049C2を参照してもよい。
【0016】
レーザビーム17の放射は、基本波長をカバーする部分が検出されるように調節される。吸光分光法は、吸収波長の検出を可能にする。この原則は、以下に説明する全ての実施形態で同じである。セル10は、分光計セルとも呼ばれる。好ましくは、それはガラスで形成される。レーザ源15およびフォトデテクタ16は、セル10の中またはその外側に配置されてもよい。
【0017】
図2の実施形態において、セル10は、測定部14を備える。セルは、トレーサガス(ヘリウム)を選択的に透過できるか、少なくとも好ましくはこのガスを透過する膜13で閉鎖されている。膜13は、ガスを透過可能な多孔性の支持体20と、厚さ数nmのSiO
2または水晶の薄いフィルタ層21とを有する。好ましくは吸収部の外部の加熱装置22が、フィルタ層を加熱する役目を果たす。この加熱装置は、トレーサガスがフィルタ層を通過できるように、フィルタ層21から離れて配置されている。膜13の構造の詳細は、EP0831964B1(=US6277177B1)に記載されている。
【0018】
セル10は、それによって、セルに入ったヘリウムを準安定状態にする励起装置25を含む。この例では、励起装置は、内部空間11においてバッファガスからプラズマを生成するガス放電部の一部であるカソード26を含む。バッファガスは不活性ガス、好ましくは、トレーサガスとして使用されるヘリウム以外の希ガスである。
【0019】
セル10は、
a)直接または間接的に雰囲気の空気に露出してもよく(スニファー漏れ検知)、或いは、
b)トレーサガスが充填された検査対象を収容する検査チャンバ28に接続されてもよく(総体漏れ検査)、或いは、
c)外側からトレーサガスが噴射される空にした検査対象に接続されてもよい(真空漏れ検査)。
【0020】
そして、トレーサガスは、膜13を通過し、セル10の内部空間に到達する。そこからトレーサガスが所定流量だけ漏れ出す検査漏れ部30が、入口の前に設けられ得る。検査漏れ部30は、トレーサガス濃度についての定量的情報を取得するような、漏れ検知器の較正に使用される。
【0021】
セル10は、励起装置25によってイオン化されたバッファガスがそこを通して供給されるバッファガス入口32をさらに備える。さらに、セル10は、接続部33を介して真空ポンプ装置に接続されている。真空ポンプ装置は、セル10からバッファガスとトレーサガスとの混合物を引き抜く。
【0022】
図3の実施形態は、セル10が真空装置に接続されていない点で、上述の実施形態とは異なる。セル10は、検査チャンバ28に接続されたトレーサガス入口12を含む。セルは、測定部14および電極によって形成された励起装置25をさらに含む。
【0023】
図3のセル10は、吸引チャンバ36を備えるポンプ接続35が設けられている。ポンプチャンバ36は、バッファガス接続37および真空ポンプ装置(不図示)に接続されたポンプ接続38を有する。ポンプ接続35の機能は、トレースガスだけをセル10から吸引ポンプ36に選択的に導くことである。それは、トレーサガス入口12と同様に構成されている。ポンプチャンバ36とともに、ポンプ接続35は、セル10からトレーサガスを除去するポンプまたは一方弁を形成する。
【0024】
図4の実施形態は、
図2のものと殆ど同じであるが、検査チャンバ28が省略されている点が異なる。トレーサガス入口12は、直接、或いは、スニファー導管を通して雰囲気を引き抜き、入口12に供給することにより、雰囲気に露出している。トレーサガス雲40がトレーサガス入口12に到達したとき、それは吸引され、トレーサガスは、準安定状態になって検出されるセル10に入る。セルは、さらにバッファガス接続41および
図2に示したような真空ポンプ装置に接続されてもよいポンプ接続38を含む。
図4の実施形態は、スニファー漏れ検知器として使用するのに適する。
【0025】
図5は、トレーサガス入口12を備えるセル10、および、先に説明したような類の測定部14を含む漏れ検知器の他の実施形態を示す。セル10はポンプ接続を有していない。トレーサガスがトレーサガス入口12の前にあると膜の前のトレーサガス(ヘリウム)の分圧と等しいセル10の内側の圧力が低下する。トレーサガスが膜の前から除去されたなら、トレーサガスは、セル10からトレーサガス入口12を通して、大気に戻る。
【0026】
図5の実施形態は、また、セル10の中のヘリウムを光学的に検出できる準安定状態にする励起装置(不図示)を含む。準安定状態のヘリウムは、セルまたはトレーサガス入口または他の装置の壁に接触して、エネルギを喪失し、それにより基底状態に戻される。したがって、セル10から漏出したヘリウムは、もはや準安定状態ではなくなる。
【0027】
本発明は、特定の説明的実施形態に関して説明および図示したが、それらの説明的実施形態は、本発明を限定することを意図しない。当業者は、変形および改良が、以下の特許請求の範囲に規定した本発明の真の範囲を逸脱することなくなし得ることに気付くであろう。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等の範囲内にあるような変形および改良の全てを本発明に含むことが企図される。