特許第5864544号(P5864544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864544
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】マルチモード圧力逃がし弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/06 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   F16K17/06 B
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-509077(P2013-509077)
(86)(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公表番号】特表2013-525714(P2013-525714A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2011031275
(87)【国際公開番号】WO2011139464
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月7日
(31)【優先権主張番号】12/775,360
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ダブリュ.ボルヤード
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−072172(JP,A)
【文献】 実開平04−075277(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード圧力逃がし弁であって、
流体入口ポートと流体出口ポートとを有し該流体入口ポートと流体出口ポートとの間に流体チャンバーが形成されるボディーであって、該ボディーは、前記流体チャンバーの前記入口ポートと前記出口ポートとの間に弁座を含み、圧縮ガス入口ポートを更に有するとともに、該圧縮ガス入口ポートと流体連通している圧縮ガスチャンバーを有しており、該圧縮ガスチャンバー及び前記流体チャンバーは互いから隔離されているボディーと、
前記圧縮ガスチャンバー内に配置されているピストンであって、該圧縮ガスチャンバー内で往復移動するように構成されており、ばね受け入れ領域と、該ばね受け領域を中心として設けられたピストン面とを有する、ピストンと、
弁ステムであって、前記流体チャンバー内で、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に流体連通が確立される開状態と、前記入口ポートと前記出口ポートとの間の流体連通が絶たれる閉位置との間で移動可能であり、ばね受け入れ領域と肩部とを有する、弁ステムと、
前記弁ステムと前記ピストンとの間に配置されているばねであって、前記圧縮ガスチャンバー内に前記ピストンを付勢するとともに、前記流体チャンバー内に前記弁ステムを付勢して前記閉位置にする、1つのばねと、
前記弁ステムを中心として環状に配置され、前記ボディー内に配置されているステムガイドであって、ピストン停止面を有したステムガイドとを具備し、
該弁は、少なくとも3つのモード、すなわち
前記弁ステムが前記開状態にあり、前記弁ステムが前記ピストンから離間しており、該ピストンが前記ばねによって前記弁ステムに圧力を加える動作モードであって、前記圧力は、前記弁ステムに力を加える、前記入口に入る流体の流体圧力によって平衡する動作モードと、
前記弁ステムが前記開状態にあり、前記弁ステムが前記ピストンから離間しており、前記ばねが弛緩状態にあり、前記ピストンが前記弁ステムに圧力を加えないゼロ状態モードと、
前記弁ステムが前記開状態にあり、前記弁ステムがその肩部において前記ピストンに接触し、そして前記ばねが、前記弁ステムに力を加える、前記入口に入る流体の流体圧力に起因して圧縮状態にある解放モードと、において動作可能となっており、
前記ボディーの一部と、前記ステムガイドと、前記弁ステムと、前記ピストンとの間にスペースが画成され、前記ばねが、該スペース内に少なくとも部分的に配置されており、
前記スペースは周囲に開放し、前記弁ステムを中心として周方向に延在しており、かつ、前記解放モードにおいて、前記ピストン停止面と前記ピストンとが接触することによって保持されるマルチモード圧力逃がし弁。
【請求項2】
前記ピストン停止面は、前記動作モード及び前記ゼロ状態モードにあるときに前記ピストン面が前記弁ステムの前記肩部と接触することを防止する請求項1に記載の圧力逃がし弁。
【請求項3】
前記圧力逃がし弁は、前記弁ステムが前記開状態にあることができ、前記弁ステムが前記ピストンから離間しており、前記ピストン面が前記ピストン停止面に当接する最大圧力モードであって、前記ピストンが前記ばねによって前記弁ステムに圧力を加え、該弁ステムの前記肩部が前記ピストン面から離間している、最大圧力モードを含む請求項2に記載の圧力逃がし弁。
【請求項4】
前記ばねはコイルばねである請求項1に記載の圧力逃がし弁。
【請求項5】
前記ピストンはカップを形成するカップ形を呈しており、前記ばね受け入れ領域は該カップ内に設けられている請求項1に記載の圧力逃がし弁。
【請求項6】
前記ボディが、前記ピストン面とは反対側で前記ピストンに対面する上側ピストン停止部を有している請求項1に記載の圧力逃がし弁。
【請求項7】
圧力逃がし弁は前記流体チャンバーの前記流体入口ポートと前記流体出口ポートとの間に弁座を含み、該弁座は前記弁の前記閉位置を確立するように前記弁ステムと係合可能である請求項1に記載の圧力逃がし弁。
【請求項8】
マルチモード圧力逃がし弁であって、
流体入口ポートと流体出口ポートとを有し、該流体入口ポートと流体出口ポートとの間に流体チャンバーが形成されるボディーであって、圧縮ガス入口ポートを更に有するとともに、該圧縮ガス入口ポートと流体連通している圧縮ガスチャンバーを有しており、前記圧縮ガスチャンバーと前記流体チャンバーとの間に、周囲に開放しているスペースが設けられているボディーと、
往復移動するように前記圧縮ガスチャンバーに配置されているピストンと、
弁ステムであって、前記流体チャンバー内で、前記入口ポートと前記出口ポートとの間に流体連通が確立される開状態と、前記入口ポートと前記出口ポートとの間の流体連通が絶たれる閉位置との間で移動可能である、弁ステムと、
前記弁ステム及び前記ピストンに動作可能に接続されているとともに、前記ピストン及び前記弁ステムを互いから離すように付勢する、ばねと、
前記弁ステムを中心として環状に配置され、ピストン停止面が形成されたステムガイドとを具備し、
前記流体が前記ばねとともに前記弁ステムに加える圧力は、前記圧縮ガスが前記ピストンに加える圧力に対抗し、少なくとも3つの弁動作モード、すなわち
前記弁ステムが前記開状態にあり、前記ピストンから離間しており、該ピストンが前記ばねによって前記弁ステムに圧力を加える動作モードであって、前記圧力は、前記弁ステムに力を加える、前記入口に入る流体の流体圧力によって平衡する動作モードと、
前記弁ステムが前記開状態にあり、前記ピストンから離間しており、前記ばねが弛緩状態にあり、前記ピストンが前記弁ステムに圧力を加えないゼロ状態モードと、
前記弁ステムが前記開状態にあり、前記弁ステムが前記ピストンに接触し、そして前記ばねが圧縮状態にある解放モードとを行わせるようになっており、
前記解放モードにおいて、前記ピストン停止面と前記ピストンとが接触することによってスペースが形成されるようにしたマルチモード圧力逃がし弁。
【請求項9】
前記ピストン停止面は、前記弁ステムに向かう前記ピストンの過移動を防止する請求項8に記載の弁。
【請求項10】
前記弁ステムは、前記弁が前記解放モードにあるときに前記ピストンと係合可能な肩部を含む請求項9に記載の弁。
【請求項11】
前記ピストンは前記ボディー内に収まっており、上側停止面と下側停止面との間で移動可能であり、前記ピストンは、前記動作モードでは前記上側停止面と前記下側停止面との間に配置されており、前記ゼロ状態モードでは前記上側停止面の近くにまたは該上側停止面に配置されており、前記解放モードでは前記下側停止面の近くにまたは該下側停止面に配置されている請求項8に記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチモード弁に関する。より詳細には、本発明は、加圧ホットメルト接着剤システムにおいて用いるマルチモード圧力逃がし弁に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧ホットメルト接着剤システムは、数多くの産業における多数の生産施設において用いられている。例えば、これらのシステムは、炭酸清涼飲料から朝食用シリアル、また用具及び消耗品に及ぶ商品のカートン及び容器をシールするのに用いられる。
【0003】
加圧ホットメルトシステムでは、異常に高い圧力状況の場合の装置の故障を防止するために圧力逃がし弁が設けられている。通常、この防止は、接着剤を供給するタンクまたはリザーバーに対する高い圧力を逃がす機械式の圧力逃がし弁によって提供される。
【0004】
システム内の圧力をゼロ圧力状況(ゼロ状態として知られている)に迅速に低下させることができることも望ましい。これは、システムのメンテナンス、緊急停止状況等に望ましい。機械式の圧力解放はこの目的には適していない。従って、この機能のために別個の空気圧作動弁が多くの場合に設けられる。空気圧動作は、弁を迅速に遮断してシステムの圧力を低下させることが可能である。しかし、これには、空気圧回路、アクチュエーター及び他の構成部材の使用が必要である。
【0005】
さらに、設備によっては、生産速度の要件に適合するために接着剤の圧力曲線を調整することができることが望ましい。この機能は、別個の機械式の接着剤バイパス弁によって、かつ/またはポンプ速度を親機(parent machine)のライン速度と動的に調整することによって提供することができる。
【0006】
この方法は十分に機能するが、多くの場合に、親機のラインの停止中に接着剤の圧力を十分迅速に低下させることができない。この結果、最終製品に糊が過剰に塗布される。
【0007】
理解されるように、これらの機能はそれぞれ別個の弁の使用を必要とする。これらの個々の構成部材はそれぞれ、これらの構成部材が適切に機能することを確実にするためにメンテナンス、検査等を必要とする。加えて、それぞれに関連して初期資本コストがかかる。また、1つの構成部材が修理(すなわちメンテナンス)を必要とする場合、接着剤システムの動作だけではなく、親機のライン動作の動作にも悪影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、ホットメルト接着剤塗布システムにおいて、圧力解放機能、ゼロ状態機能及びライン速度追従機能を行うのに必要な構成部材(弁)の数を低減する必要がある。望ましくは、そのような弁は最少の可動部品を有する。より望ましくは、そのような弁は、弁が設置される接着剤システムの空気圧回路によって制御される。
【0009】
マルチモード圧力逃がし弁が、ホットメルト接着剤塗布システムにおいて、圧力解放機能、ゼロ状態機能及びライン速度追従機能を行う。弁は、最少の可動部品を含み、好ましくは、弁が設置される接着剤システムの空気圧回路によって制御される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
弁は、流体入口ポートと流体出口ポートとを有し、該流体入口ポートと流体出口ポートとの間に流体チャンバーが形成されるボディーを有する。ボディーは、流体チャンバーの入口ポートと出口ポートとの間に弁座を含む。ボディーは、圧縮ガス入口ポートを更に含み、ガス入口ポートと流体連通している圧縮ガスチャンバーを有している。圧縮ガスチャンバー及び流体チャンバーは互いから隔離されている。
【0011】
ピストンが圧縮ガスチャンバー内に配置されており、このチャンバー内で往復移動するように構成されている。ピストンはばね受け入れ領域を有する。
【0012】
弁ステムが、流体チャンバー内で、入口ポートと出口ポートとの間に流体連通が確立される開状態と、弁を通る流れを停止させる閉位置との間で移動可能である。弁ステムはばね受け入れ領域を有する。
【0013】
コイルばね等のばねが、弁ステムとピストンとの間に配置されている。ばねは、圧縮ガスチャンバー内へガス入口に向かってピストンを付勢するとともに流体チャンバー内に弁ステムを付勢して閉位置にする。
【0014】
弁は少なくとも3つのモードで動作可能である。動作モードでは、弁は開状態にあり、弁ステムがピストンから離間しており、ピストンがばねによって弁ステムに圧力を加える。ピストンの圧力は、弁ステムに力を加える流体圧力によって平衡する。
【0015】
ゼロ状態モードでは、弁は開状態にあり、弁ステムはピストンから離間しており、ばねは弛緩状態にある。ピストンは弁ステムに圧力を加えない。
【0016】
また、解放モードでは、弁ステムは開状態にあり、弁ステムがピストンに接触しているかまたは近接している。ばねは、弁ステムに力を加える、入口に入る流体の流体圧力及びピストンに対するガス圧力に起因して圧縮状態にある。
【0017】
本弁では、ピストンは弁ステムに対向するピストン面を有し、弁ステムは、弁が解放モードにあるときにピストン面と接触する肩部を含む。弁は、動作モード及びゼロ状態モードにあるときにピストン面が弁ステムの肩部と接触することを防止するピストン停止面を含む。
【0018】
ステムガイドが、弁ステムの回りに環状に配置されているとともにボディー内に配置されている。ピストン停止面はステムガイドに形成されている。
【0019】
弁は、動作状態である最大圧力モードにおいても動作することができ、最大圧力モードでは、弁ステムは開状態にあることができ、弁ステムはピストンから離間しており、ピストン面はピストン停止面に当接する。ピストンはばねによって弁ステムに圧力を加え、弁ステムの肩部はピストン面から離間している。
【0020】
ボディーは、ピストンと弁ステムとの間にスペースが設けられており、ばねはそのスペース内に少なくとも部分的に配置されている。スペースは、弁の動作または機能に対する圧縮ガスまたは流体からの影響を防止するために周囲に開放している。ピストンはカップ状であるものとすることができ、ばね受け入れ領域がカップ内に設けられている。
【0021】
弁は、流体チャンバーの流体入口ポートと流体出口ポートとの間に弁座を含む。ステムは弁座と係合して弁を閉じる。
【0022】
本発明のこれらの特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0023】
本発明の利益及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面の検討後には当業者により容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の原理を具現するマルチモード圧力逃がし弁を有する接着剤システムの概略図である。
図2】中立状況すなわち動作状況にある弁の断面図である。
図3】最大圧力解放状況にある弁の断面図である。
図4】ゼロ状態状況にある弁の断面図である。
図5】最大圧力状況にある弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は種々の形態の実施形態が可能であるが、本開示は本発明の例示とみなされるべきであり、かつ本発明を示される特定の実施形態に限定する意図はないという理解のもとで、幾つかの好ましい実施形態を図面に示すとともに以下で説明する。
【0026】
本明細書の本項のタイトル、すなわち「発明を実施するための形態」は、米国特許商標庁の要件に関連するものであり、本項において開示される主題を限定するよう示唆するものではなく、また本項において開示される主題を限定するように推論されるべきではないことを更に理解されたい。
【0027】
ここで、図面、特に図1を参照すると、本発明の原理に従ったマルチモード圧力逃がし弁12を有するホットメルト接着剤システム10の概略図が示されている。接着剤システム10は、接着剤の移送または搬送を可能にする温度に維持されている特定量の接着剤を収容している、図示のタンク14のような接着剤供給部を含む。通常の動作では、タンクの温度は、接着剤塗布温度よりも28°C(50°F)低く維持される。本システムでは、タンク温度は149°C(300°F)に維持される。
【0028】
4つ示されている接着剤ディスペンサーヘッド16が、接着剤を動作温度すなわち塗布温度(例えば約177°C(350°F)に加熱し、接着剤はこの温度で所望の物体上に吐出される。物体は、例えば炭酸清涼飲料から朝食用シリアル、また用具及び消耗品に及ぶ商品のカートンまたは容器であるものとすることができることが認識されるであろう。接着剤は、物体への接着剤の塗布を制御するために、所望の温度及び所望の流量で分配供給される(dispensed)。流量は、接着剤が生産ラインの速度に影響を与えることもなく生産ラインの速度を遅くすることもなく物体上に流れるが、接着プロセスを行うのに十分な量が塗布されるように決められる。
【0029】
ポンプ18が接着剤をアプリケーターヘッド16に供給する。本システムでは、接着剤は、1000psi〜1100psiもの比較的高い圧力で供給される。接着剤をアプリケーターヘッド16へ送る(routing)前にろ過するフィルター20を設けることができ、種々の圧力・温度モニター22をシステム10内に設けることができる。
【0030】
生産ライン(図示せず)及び接着剤システム10の全体的な動作は、空気圧制御システムを用いて行われ、空気圧供給部が全体的に24で示されている。そのようなシステムは、動作に必要な弁、及びシステム内の他の構成部材の制御を可能にするために十分に汎用である。特定の生産ラインシステムでは、空気圧システムの圧力を用いて全体的な生産(パッケージング)動作を制御する。これらのシステムでは、生産速度は、空気圧システム24の圧力によって制御される。
【0031】
動作状況で示される本マルチモード圧力逃がし弁12が図2に示されている。再び図1を簡単に参照すると、弁12は、分岐ライン26に、接着剤流路に沿ってポンプ18とフィルター20との間に配置されている。このように、システム10の圧力は、ポンプ18からの流体流の一部または全てを、弁12から排出側の分岐ライン27を通してタンク12に戻すことによって制御される。
【0032】
図2に戻って参照すると、弁12は、接着剤入口ポート30と接着剤出口ポート32とを有するボディー28を含む。入口30及び出口32は互い横切る位置関係で示されているが、当業者であれば、入口30及び出口32の構成を変更することがでよう。接着剤流路Fが入口30と出口32との間に形成されている。弁12は、接着剤の入口30及び出口32から隔離された圧縮ガス(空気)入口34も含む。ボディー28は、従って、接着剤の入口30と出口32との間に接着剤チャンバー36が形成している。ボディー28は、2つの部品、すなわち一緒に螺合される本体38及びキャップ40として形成され、それらの部品の間にシール42を有する。
【0033】
弁ステム44が、接着剤流路Fに出入りするようにボディー28内に配置されている。弁座46が、接着剤の流れを可能にするかまたは接着剤の流れを断つための、ステム44がその上に着座する環状要素である。図2において分かるように、ステム44が弁座46から離れると、入口30と出口32との間に接着剤の流れが確立される。ステム44は環状凹部48を含み、環状凹部48はその内部にばね50(後述する)が配設され、環状肩部52を有している。
【0034】
ステムガイド54が、ステム44が開位置(図1)と閉位置(図3)との間を移動するときにステム44をガイドするようにボディー28内に配置されている。ガイド54は、ステム44を弁12内に保持しながら、ステム44が移動して弁12を開閉するときにステム44をガイドする。ステム44の周囲への接着剤の漏洩、或いは、ボディー28の「クリーンな」領域への接着剤の漏洩を防止するために、ステムシール56がステム44とガイド54との間に配置されている。シール56は、ステム44とボディー28とガイド54との間の良好な接触及び隔離を確実にするようにばねを用いた圧縮タイプのシールとすることができる。
【0035】
弁12は、ボディー28内において、弁座46とは反対側にピストン58を含む。ばね50がピストン58とステム44との間に配置されている。圧縮ガス(すなわち空気)チャンバー60が空気入口34とピストン58の上部62との間に形成されている。ピストン58は、空気チャンバー60内で弁ステム44に接離するように配置されている。ピストン58は、逆U字状またはカップ状の往復動部材であり、ピストン58の周囲の空気の漏れを防止するシール64を含む。カップ状部分66の回りの領域がピストン面68を形成している。
【0036】
ばね50はステム44とピストン58との間に配置されており、ピストン58のカップ状部分66内に配設されている。ばね50は、ステム44の端から延びる支柱またはフィンガー70によってステム44の回りの適所に保持され、ばね50は支柱またはフィンガー70の回りに配設されており、ステムの環状凹部48内に配置されている。ばね50はコイルばねとして示されているが、当業者であれば、ばねは、皿ばね等の複数の様々なタイプであるものとすることができることと、そのような他の構成が本発明の範囲及び精神内にあることとを認識するであろう。ピストン58の底部と弁ステム44の上部との間のスペース72が周囲に開放している。このように、接着剤側(チャンバー36)または空気側(チャンバー60)からの、それらのそれぞれのシールの回りに逃げる可能性がある圧力が、弁の動作に悪影響を与えず、弁の動作または機能に影響を及ぼさない。
【0037】
図面の考察から、空気側60の圧力によりピストン58に加わる力が、ばね50の力とともに、接着剤側36の圧力により弁ステム44に加わる力を相殺するかまたは平衡させることが認識されるであろう。本弁12においては、接着剤側36対空気側60の圧力比は14:1であり、この比において圧力は平衡する。すなわち、システムは、各1psiの空気圧あたり、14psiの接着剤圧力を与える。弁12の比は当然ながら、特定の接着剤システムまたは制御システムについて所望どおりに構成することができる。
【0038】
所望の動作特性を達成するために弁の種々の他の特徴が含められている。図2において最も良く分かるように、弁12はステムガイド54上にピストン停止面74を含む。停止面74は、空気圧が最大設定よりも大きい場合にピストン58の進み過ぎを防止し(図3及び図5を参照のこと)、接着剤圧力が最小閾値よりも大きいときに遮断を防止する。停止面74は、ピストン58の移動の物理的な停止部を提供する。図2を参照すると、弁12は、ピストン58が(図4において分かるように)空気チャンバー60内へ十分に上に移動することを可能にするように、通常の状況すなわち動作状況に対するゼロ状態動作(より詳細に後述する)のための、76で示される自由な隙間も含む。
【0039】
弁12は、少なくとも3つの、好ましくは4つの動作状況または状態を有する。図2は通常の動作状況にある弁12を示している。接着剤圧力がステム44に加わることによって弁12を付勢して開き、一方で空気圧がピストン58に加わるとピストン58及びばね50を付勢して弁12(ステム44)を閉じる。空気圧と接着剤圧力とは平衡しており、弁12は接着剤の流れを可能にするように開いたままである。
【0040】
ポンプの吐出圧力が高すぎるかまたは例えば高圧故障状況にある場合のような、接着剤システム10内の圧力を解放することが望ましい場合、システム10内の空気圧に関係なく、弁ステム44に対する上方への力によってステム44が上に付勢されて弁12が開く。この圧力解放状況が図3に示されており、ここではピストン58は最大の空気圧にある状態で示されているが、ステム44(及びばね50)に対する力によって弁12がそれでもやはり付勢されて開く。高い空気圧の場合であっても、ピストン停止面74が、ピストン58の進み過ぎを防止し、ステム44が上昇して弁12が開くことを可能にすることが分かる。この状況では、ピストン58が最大下方位置にあるとしてもピストンの環状肩部52がピストン面68と接触し、弁12が開く。すなわち、ピストン58が空気側60の最大圧力を受ける場合であっても、環状肩部52とピストン面68との間には、ステム44が(肩部52が面68と接触するまで)上昇してシステム10の圧力を解放することを可能にするのに十分な物理的スペースが存在する。
【0041】
(例えば接着剤システム10のメンテナンスのためにシステムの圧力を下げるように)システム10を減圧することが望ましい場合、弁12は図4において分かるようなゼロ状態状況にある。ここで、空気圧はゼロまで低下するかまたはゼロに近くなり、ピストン58はボディー28内で空気入口34に向かって十分に上に移動する。この状況では、ピストン58は、自由な隙間すなわちゼロ状態状況のスペース76内へ移動し、ボディー28の上側ピストン停止部78に当接する。従って、ステム44は同様に低減したばね50の力に抗して上に移動して弁12を開き、接着剤供給システム10内の圧力を降下させる、すなわち下げる。
【0042】
最後の動作状況が、最大動作状況を示す図5に示されている。ここでは、空気供給部の圧力は最大であり、ピストン58は停止面74に当接しており、ステム44は、ステム44に対する流体の圧力によって上方に付勢されて弁12を開いている。ステム44はピストン58から離間しており(すなわちステムの環状肩部52とピストン面68とは接触しておらず)、従って、ステム44は、接着剤の圧力によってピストン58に向かって上に移動し、接着剤の流れを可能にし、かつ/またはピストン面68に抗して上に移動するステム44によって過加圧を防止して圧力解放状況にすることができる。
【0043】
上述したように、本マルチモード弁12は、現在用いられている3つの弁、すなわち圧力逃がし弁、ゼロ状態装置(弁)及びライン速度追従弁に取って代わる。本マルチモード弁12は3つ全ての機能を果たす。すなわち、ゼロ状態状況は、弁12への空気の流れを絶ち、従って弁12が完全に開くことを可能にすることによって提供され、圧力解放は、ピストン58に作用する空気側の圧力60にかかわらず弁12を開くようにステム44に対する圧力を可能にすることによって提供され、また、ライン速度追従は、ピストン58に作用する空気側60の圧力と、弁ステム44に作用する、対抗して平衡する接着剤側36の圧力との平衡によって、通常の動作状況から最大の圧力状況において提供される。さらに、本弁12は有利には、最少の可動部品を有する単一のコンパクトな構成部材においてこれらの動作モード及び安全モードを提供する。
【0044】
本開示において、数量が特定されていない語("a" or "an")は、単数及び複数の双方を含むように解釈される。逆に、複数の部材(items)への任意の言及は、適切な場合には単数を含むものとする。本明細書において引用された全ての特許は、本開示の文章中で具体的に参照により援用されていようとなかろうと、参照により本明細書に援用される。
【0045】
上記から、本発明の新規の概念の真の精神及び範囲から逸脱することなく多くの変更及び変形をなすことができることが分かるであろう。図示の特定の実施形態に対する限定は全く意図されておらず、推論されるべきでもないことを理解されたい。本開示は、添付の特許請求の範囲によって、特許請求の範囲の範囲内に入る全ての変更をカバーすることを意図する。
【符号の説明】
【0046】
10 接着剤システム
12 弁
14 タンク
16 接着剤ディスペンサーヘッド
18 ポンプ
20 フィルター
22 圧力・温度モニター
24 空気圧システム
26 分岐ライン
27 分岐ライン
28 ボディー
30 接着剤入口ポート
32 接着剤出口ポート
34 空気入口
36 接着剤チャンバー
38 本体
40 キャップ
42 シール
44 弁ステム
46 弁座
48 環状凹部
50 ばね
52 環状肩部
54 ステムガイド
56 シール
58 ピストン
60 空気チャンバー
62 上部
64 シール
66 カップ状部分
68 ピストン面
70 支柱またはフィンガー
72 スペース
74 ピストン停止面
76 スペース
78 上側ピストン停止部
図1
図2
図3
図4
図5