特許第5864548号(P5864548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864548
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   F16F9/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-509958(P2013-509958)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2012060002
(87)【国際公開番号】WO2012141242
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-87863(P2011-87863)
(32)【優先日】2011年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】北田 達哉
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−052228(JP,A)
【文献】 特開平08−312694(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0139558(US,A1)
【文献】 特開平05−026280(JP,A)
【文献】 特開2010−084866(JP,A)
【文献】 特開2006−242318(JP,A)
【文献】 特開2004−183888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口し、他端側が端壁によって完全に閉塞された中空のハウジングと、
前記端壁に形成される軸受け部と、
前記軸受け部に嵌合するシャフトと、
前記シャフトを支持する孔部を有し、前記ハウジングの開口部を閉塞する金属製のプラグと、
前記ハウジングの回転に伴って回転し得るように前記ハウジングの内部に設けられる隔壁と、
前記隔壁によって仕切られた室内に充填される粘性液体と、
前記シャフトの回転に伴って回転し得るように前記室内に設けられる金属製のベーンと、
前記軸受け部と前記シャフトとの嵌合部に前記粘性液体が流入することを防止するためのシール部材とを備えるロータリーダンパ。
【請求項2】
前記ベーンが逆止弁を備え、
前記逆止弁が弁体を備え、
前記弁体が前記プラグと前記ベーンとの間に配置される樹脂製のストッパーを備える請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記弁体が前記端壁と前記ベーンとの間に配置される樹脂製のストッパーをさらに備える請求項2に記載のロータリーダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一端側が開口し、他端側が端壁によって完全に閉塞された中空のハウジングと、前記軸受け部に嵌合するシャフトと、前記シャフトを支持する孔部を有し、前記ハウジングの開口部を閉塞するプラグと、前記ハウジングの回転に伴って回転し得るように前記ハウジングの内部に設けられる隔壁と、前記隔壁によって仕切られた室内に充填される粘性液体と、前記シャフトの回転に伴って回転し得るように前記室内に設けられるベーンとを具備するロータリーダンパが知られている(例えば、特開2008−082462号公報参照)。
【0003】
この種のロータリーダンパでは、ハウジングの他端側が端壁によって完全に閉塞されているため、ハウジング又はシャフトの回転時において、端壁に形成された軸受け部とシャフトとの間に粘性液体が流入し、それによって、シャフトが浮き上がる。その結果、ベーンがプラグに押し当てられた状態で摺動することになる。そして、プラグ及びベーンがいずれも金属製である場合には、プラグ及びベーンにそれぞれ摩耗が生じて、特性の低下を招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−082462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、プラグ及びベーンの摩耗を防止して、耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下のロータリーダンパを提供する。
1.一端側が開口し、他端側が端壁によって完全に閉塞された中空のハウジングと、
前記端壁に形成される軸受け部と、
前記軸受け部に嵌合するシャフトと、
前記シャフトを支持する孔部を有し、前記ハウジングの開口部を閉塞する金属製のプラグと、
前記ハウジングの回転に伴って回転し得るように前記ハウジングの内部に設けられる隔壁と、
前記隔壁によって仕切られた室内に充填される粘性液体と、
前記シャフトの回転に伴って回転し得るように前記室内に設けられる金属製のベーンと、
前記軸受け部と前記シャフトとの嵌合部に前記粘性液体が流入することを防止するためのシール部材とを備えるロータリーダンパ。
2.前記ベーンが逆止弁を備え、
前記逆止弁が弁体を備え、
前記弁体が前記プラグと前記ベーンとの間に配置される樹脂製のストッパーを備える前記1に記載のロータリーダンパ。
3.前記弁体が前記端壁と前記ベーンとの間に配置される樹脂製のストッパーをさらに備える前記2に記載のロータリーダンパ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のロータリーダンパは、プラグ及びベーンがいずれも金属製であるが、シール部材によって、軸受け部とシャフトとの嵌合部に粘性液体が流入することを防止し得るため、シャフトの浮き上がりを抑制できる。よって、本発明のロータリーダンパによれば、ベーンがプラグに摺接することによって生じるプラグ及びベーンの摩耗を減少させ、耐久性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施例1に係るロータリーダンパの平面図である。
図2図2は、本発明の実施例1に係るロータリーダンパの正面図である。
図3図3は、図1におけるA−A部断面図である。
図4図4は、図3におけるB−B部断面図である。
図5図5は、本発明の実施例1で採用した逆止弁の構造及び作用を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施例1で採用した逆止弁の構造及び作用を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施例1で採用した弁体の斜視図である。
図8図8は、本発明の実施例2に係るロータリーダンパの断面図である。
図9図9は、本発明の実施例3に係るロータリーダンパの断面図である。
図10図10は、本発明の実施例3で採用した弁体の斜視図である。
図11図11は、本発明の実施例4に係るロータリーダンパの断面図である。
図12図12は、図11におけるC−C部断面図である。
図13図13は、本発明の実施例4で採用した逆止弁の構造及び作用を説明するための図である。
図14図14は、本発明の実施例4で採用した逆止弁の構造及び作用を説明するための図である。
図15図15は、本発明の実施例4で採用した弁体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明するが、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1図4は、本発明の実施例1に係るロータリーダンパを示す図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、ハウジング10、シャフト20、プラグ30、隔壁40、粘性液体、ベーン及びシール部材60を有して構成される。
【0011】
ハウジング10は、一端側が開口し、他端側が端壁11によって完全に閉塞されている(図3参照)。ハウジング10は、端壁11と一体に成形される筒状の周壁12を備えており、ハウジング10の内部は、中空である(図3及び図4参照)。端壁11は、凸状の軸受け部13を有する(図3参照)。なお、端壁11は、ハウジング10の他端側を完全に閉塞するものであり、従って、端壁11に形成される軸受け部として、端壁11を貫通する孔部は採用し得ない。
【0012】
シャフト20は、ハウジング10の軸受け部13に嵌合する凹部21を有する(図3参照)。プラグ30は、ハウジング10の一端側の開口部を閉塞するものであり、ハウジング10の周壁12の端部をかしめることによって、ハウジング10に取り付けられている(図3参照)。プラグ30には、シャフト20を支持する孔部31が形成されている(図3参照)。シャフト20は、一端が軸受け部13に嵌合することで支持され、他端が孔部31に挿通されることで支持されている。
【0013】
ハウジング10の内部には、ハウジング10の回転に伴って回転し得るように隔壁40が設けられている(図4参照)。隔壁40によって仕切られた室71,72の内部には、粘性液体が充填される(図4参照)。ベーンは、隔壁40によって仕切られた室71,72の内部においてシャフト20の回転に伴って回転し得るように設けられる(図4参照)。本実施例で採用したベーンは、第1加圧部51と第2加圧部52とを備えている。ハウジング10がシャフト20を中心として回転するときには、隔壁40が粘性液体を加圧する手段として機能し、シャフト20がハウジング10の内部で回転するときには、ベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が粘性液体を加圧する手段として機能する。
【0014】
本実施例で採用したベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)は、逆止弁を備えている。この逆止弁は、弁体84を備えている。この逆止弁は、第1加圧部51に形成される第1の溝81と、第2加圧部52に形成される第2の溝82と、弁体84に形成される第3の溝83との組み合わせにより、粘性液体を一方向にだけ流す働きをするものである。
【0015】
より詳細には、第1加圧部51と第2加圧部52は、一定間隔を置いて設けられており、第1の溝81はシャフト20から離れた位置に形成され、第2の溝82はシャフト20に近い位置に形成されている(図5及び図6参照)。弁体84は、第1加圧部51の先端面及び第2加圧部52の先端面に常に接し得る幅を有し、第1及び第2加圧部51,52とハウジング10の周壁12との間に配置される本体部84aと、本体部84aから突出し、第1加圧部51と第2加圧部52との間に配置される突出部84bとを備えて構成されており、突出部84bには、突出部84bが第2加圧部52に当接したときに第2の溝82と連通し得る第3の溝83が形成されている(図6及び図7参照)。この第3の溝83は、突出部84bが第1加圧部51に当接したときには、第1の溝81と連通しない位置に形成されている(図5参照)。
【0016】
上記のように構成される逆止弁は、シャフト20が、図5において時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の閉時には、第2加圧部52が粘性液体を加圧し、これに伴い、弁体84の本体部84aが粘性液体の抵抗を受けることによって弁体84の突出部84bが第1加圧部51に当接する(図5参照)。このとき粘性液体は、第2の溝82を経由して第3の溝83まで流入するが、第1加圧部51によってせき止められる(図5参照)。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生する。一方、シャフト20が、図6において反時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の開時には、第1加圧部51が粘性液体を加圧し、これに伴い、弁体84の本体部84aが粘性液体の抵抗を受けることによって弁体84の突出部84bが第2加圧部52に当接する(図6参照)。このとき粘性液体は、第2加圧部52によってせき止められることなく、第1の溝81及び第3の溝83を経由して第2の溝82まで流入する(図6参照)。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生しない。
【0017】
シール部材60は、軸受け部13とシャフト20との嵌合部に粘性液体が流入することを防止し得る位置に設けられる。より詳細には、軸受け部13の先端面13aと該先端面13aに対向するシャフト20の一面21aとの間に粘性液体が流入することを防止し得る位置に設けられる。本実施例におけるシール部材60は、軸受け部13の外周面とシャフト20の凹部21の内周面との間隙をシールするように設けられている(図3参照)。シール部材60としては、Oリングを用いることができる。
【0018】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が金属製であっても、ハウジング10又はシャフト20の回転時において、軸受け部13とシャフト20との嵌合部に粘性液体が流入することを、シール部材60によって阻止することができる(図3参照)。したがって、シャフト20の浮き上がりが抑制され、ベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)がプラグ30に摺接することによるプラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗を減少させることが可能になる。
【0019】
本実施例に係るロータリーダンパと、比較例に係るロータリーダンパとを用いて実験を行った。比較例に係るロータリーダンパは、シール部材60が設けられていない点で本実施例に係るロータリーダンパと構成が相違する。
【0020】
この実験では、ハウジングを固定した状態で、シャフトを初期の位置から制動力発生方向に60度回転させることを3万回繰り返した。シャフトに加えた負荷は、14Nmであり、プラグ及びベーンは、本実施例のものも比較例のものも金属製である。
【0021】
実験後に、プラグの厚さを測定したところ、比較例では、0.026mmの摩耗が確認されたのに対し、本実施例では、0.012mmの摩耗しか確認されなかった。また、実験の前後において、シャフトが初期位置から制動力発生方向に60度回転するまでの間の時間を計測したところ、比較例では、実験前が1.9秒で、実験後が0.8秒であり、制動特性の低下が著しいのに対し、本実施例では、実験前が1.9秒で、実験後が1.3秒であり、制動特性の低下が少ないことが確認された。よって、本実施例に係るロータリーダンパによれば、耐久性の向上を図ることが可能である。
【実施例2】
【0022】
図8は、本発明の実施例2に係るロータリーダンパの断面図である。この図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、端壁11に形成される軸受け部13’が凹状である点で、実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0023】
本実施例におけるシール部材60は、ハウジング10の軸受け部13’の内周面とシャフト20の凸部21’の外周面との間隙をシールするように設けられている(図8参照)。シール部材60としては、Oリングを用いることができる。
【0024】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が金属製であっても、ハウジング10又はシャフト20の回転時において、シャフト20の凸部21’の先端面21a’と該先端面21a’に対向する軸受け部13’の一面13a’との間に粘性液体が流入することを、シール部材60によって阻止することができる(図8参照)。したがって、シャフト20の浮き上がりが抑制され、ベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)がプラグ30に摺接することによって生じるプラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗を減少させることが可能になる。したがって、本実施例に係るロータリーダンパも、実施例1に係るロータリーダンパと同等の効果を有する。
【実施例3】
【0025】
図9は、本発明の実施例3に係るロータリーダンパの断面図であり、図10は、本実施例で採用した弁体84の斜視図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、弁体84がプラグ30とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)との間に配置される樹脂製のストッパー84cと、端壁11とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)との間に配置される樹脂製のストッパー84dとを有する点で、実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0026】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が金属製であっても、樹脂製のストッパー84cによって、プラグ30とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)とが直接接触することを防ぐことができるため、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗をさらに減少させることが可能になる。
【0027】
本実施例に係るロータリーダンパと、比較例に係るロータリーダンパとを用いて実験を行った。比較例に係るロータリーダンパは、シール部材60が設けられず、かつ弁体84がストッパー84cを有していない点で本実施例に係るロータリーダンパと構成が相違する。
【0028】
この実験では、ハウジングを固定した状態で、シャフトを初期の位置から制動力発生方向に60度回転させることを3万回繰り返した。シャフトに加えた負荷は、14Nmであり、プラグ及びベーンは、本実施例のものも比較例のものも金属製である。
【0029】
実験後に、プラグの厚さを測定したところ、比較例では、0.026mmの摩耗が確認されたのに対し、本実施例では、0.001mmの摩耗しか確認されなかった。また、実験の前後において、シャフトが初期の位置から制動力発生方向に60度回転するまでの間の時間を計測したところ、比較例では、実験前が1.9秒で、実験後が0.8秒であり、制動特性の低下が著しいのに対し、本実施例では、実験前が1.9秒で、実験後が1.7秒であり、制動特性の低下が少ないことが確認された。よって、本実施例に係るロータリーダンパによれば、耐久性の更なる向上を図ることが可能である。
【0030】
また、本実施例に係るロータリーダンパによれば、シャフト20に偏荷重が加えられて、シャフト20が偏芯しながら回転した場合でも、ストッパー84cに加えて、端壁11とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)との間に樹脂製のストッパー84dが介在しているため、端壁11及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗も少なくすることが可能であり、耐久性をより一層高めることができる。
【実施例4】
【0031】
図11及び図12は、本発明の実施例4に係るロータリーダンパの断面図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、ベーン及び逆止弁の構造が実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0032】
本実施例において採用した逆止弁は、ベーン50に形成される第1の溝86と、弁体85に形成される第2の溝87及び第3の溝88との組み合わせにより、粘性液体を一方向にだけ流す働きをするものである。
【0033】
より詳細には、ベーン50が、先端部に第1の溝86を有している(図13及び図14参照)。弁体85は、所定の幅を有し、ベーン50とハウジング10の周壁12との間に配置される本体部85aと、第2の溝87を有し、本体部85aから突出する第1突出壁85bと、第3の溝88を有し、第1突出壁85bと一定間隔おいて本体部85aから突出する第2突出壁85cと、プラグ30とベーン50との間に配置される樹脂製のストッパー85dと、端壁11とベーン50との間に配置される樹脂製のストッパー85eとを有して構成されている(図13図15参照)。ベーン50は、第1突出壁85bと第2突出壁85cとの間に配置され、ベーン50が第2突出壁85cに当接したときには、第1の溝86と第3の溝88が連通せず、第1の溝86が第2突出壁85cによって塞がれるようになっている(図13参照)。一方、ベーン50が第1突出壁85bに当接したときには、第1の溝86と第2の溝87が連通するようになっている。
【0034】
上記のように構成される逆止弁は、シャフト20が、図13において時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の閉時には、弁体85の第2突出壁85cがベーン50に当接する(図13参照)。このとき粘性液体は、第3の溝88に流入するが、ベーン50によってせき止められる(図13参照)。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生する。一方、シャフト20が、図14において反時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の開時には、弁体85の第1突出壁85bがベーン50に当接する(図14参照)。このとき粘性液体は、ベーン50によってせき止められることなく、第2の溝87及び第1の溝86を経由して第3の溝88まで流入する。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生しない。
【0035】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン50が金属製であっても、樹脂製のストッパー85dによって、プラグ30とベーン50とが直接接触することを防ぐことができるため、プラグ30及びベーン50の摩耗をさらに減少させることが可能になる。
【0036】
また、シャフト20に偏荷重が加えられて、シャフト20が偏芯しながら回転した場合でも、ストッパー85dに加えて、端壁11とベーン50との間に樹脂製のストッパー85eが介在しているため、端壁11及びベーン50の摩耗も少なくすることが可能であり、耐久性をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 ハウジング
11 端壁
12 周壁
13,13’ 軸受け部
20 シャフト
21,21’ 凹部
30 プラグ
31 孔部
40 隔壁
50 ベーン
51 ベーン(第1加圧部)
52 ベーン(第2加圧部)
60 シール部材
71,72 室
81,86 第1の溝
82,87 第2の溝
83,88 第3の溝
84,85 弁体
84a,85a 本体部
84b 突出部
84c,84d,85d,85e ストッパー
85b 第1突出壁
85c 第2突出壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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