【実施例1】
【0010】
図1〜
図4は、本発明の実施例1に係るロータリーダンパを示す図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、ハウジング10、シャフト20、プラグ30、隔壁40、粘性液体、ベーン及びシール部材60を有して構成される。
【0011】
ハウジング10は、一端側が開口し、他端側が端壁11によって完全に閉塞されている(
図3参照)。ハウジング10は、端壁11と一体に成形される筒状の周壁12を備えており、ハウジング10の内部は、中空である(
図3及び
図4参照)。端壁11は、凸状の軸受け部13を有する(
図3参照)。なお、端壁11は、ハウジング10の他端側を完全に閉塞するものであり、従って、端壁11に形成される軸受け部として、端壁11を貫通する孔部は採用し得ない。
【0012】
シャフト20は、ハウジング10の軸受け部13に嵌合する凹部21を有する(
図3参照)。プラグ30は、ハウジング10の一端側の開口部を閉塞するものであり、ハウジング10の周壁12の端部をかしめることによって、ハウジング10に取り付けられている(
図3参照)。プラグ30には、シャフト20を支持する孔部31が形成されている(
図3参照)。シャフト20は、一端が軸受け部13に嵌合することで支持され、他端が孔部31に挿通されることで支持されている。
【0013】
ハウジング10の内部には、ハウジング10の回転に伴って回転し得るように隔壁40が設けられている(
図4参照)。隔壁40によって仕切られた室71,72の内部には、粘性液体が充填される(
図4参照)。ベーンは、隔壁40によって仕切られた室71,72の内部においてシャフト20の回転に伴って回転し得るように設けられる(
図4参照)。本実施例で採用したベーンは、第1加圧部51と第2加圧部52とを備えている。ハウジング10がシャフト20を中心として回転するときには、隔壁40が粘性液体を加圧する手段として機能し、シャフト20がハウジング10の内部で回転するときには、ベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が粘性液体を加圧する手段として機能する。
【0014】
本実施例で採用したベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)は、逆止弁を備えている。この逆止弁は、弁体84を備えている。この逆止弁は、第1加圧部51に形成される第1の溝81と、第2加圧部52に形成される第2の溝82と、弁体84に形成される第3の溝83との組み合わせにより、粘性液体を一方向にだけ流す働きをするものである。
【0015】
より詳細には、第1加圧部51と第2加圧部52は、一定間隔を置いて設けられており、第1の溝81はシャフト20から離れた位置に形成され、第2の溝82はシャフト20に近い位置に形成されている(
図5及び
図6参照)。弁体84は、第1加圧部51の先端面及び第2加圧部52の先端面に常に接し得る幅を有し、第1及び第2加圧部51,52とハウジング10の周壁12との間に配置される本体部84aと、本体部84aから突出し、第1加圧部51と第2加圧部52との間に配置される突出部84bとを備えて構成されており、突出部84bには、突出部84bが第2加圧部52に当接したときに第2の溝82と連通し得る第3の溝83が形成されている(
図6及び
図7参照)。この第3の溝83は、突出部84bが第1加圧部51に当接したときには、第1の溝81と連通しない位置に形成されている(
図5参照)。
【0016】
上記のように構成される逆止弁は、シャフト20が、
図5において時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の閉時には、第2加圧部52が粘性液体を加圧し、これに伴い、弁体84の本体部84aが粘性液体の抵抗を受けることによって弁体84の突出部84bが第1加圧部51に当接する(
図5参照)。このとき粘性液体は、第2の溝82を経由して第3の溝83まで流入するが、第1加圧部51によってせき止められる(
図5参照)。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生する。一方、シャフト20が、
図6において反時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の開時には、第1加圧部51が粘性液体を加圧し、これに伴い、弁体84の本体部84aが粘性液体の抵抗を受けることによって弁体84の突出部84bが第2加圧部52に当接する(
図6参照)。このとき粘性液体は、第2加圧部52によってせき止められることなく、第1の溝81及び第3の溝83を経由して第2の溝82まで流入する(
図6参照)。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生しない。
【0017】
シール部材60は、軸受け部13とシャフト20との嵌合部に粘性液体が流入することを防止し得る位置に設けられる。より詳細には、軸受け部13の先端面13aと該先端面13aに対向するシャフト20の一面21aとの間に粘性液体が流入することを防止し得る位置に設けられる。本実施例におけるシール部材60は、軸受け部13の外周面とシャフト20の凹部21の内周面との間隙をシールするように設けられている(
図3参照)。シール部材60としては、Oリングを用いることができる。
【0018】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が金属製であっても、ハウジング10又はシャフト20の回転時において、軸受け部13とシャフト20との嵌合部に粘性液体が流入することを、シール部材60によって阻止することができる(
図3参照)。したがって、シャフト20の浮き上がりが抑制され、ベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)がプラグ30に摺接することによるプラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗を減少させることが可能になる。
【0019】
本実施例に係るロータリーダンパと、比較例に係るロータリーダンパとを用いて実験を行った。比較例に係るロータリーダンパは、シール部材60が設けられていない点で本実施例に係るロータリーダンパと構成が相違する。
【0020】
この実験では、ハウジングを固定した状態で、シャフトを初期の位置から制動力発生方向に60度回転させることを3万回繰り返した。シャフトに加えた負荷は、14Nmであり、プラグ及びベーンは、本実施例のものも比較例のものも金属製である。
【0021】
実験後に、プラグの厚さを測定したところ、比較例では、0.026mmの摩耗が確認されたのに対し、本実施例では、0.012mmの摩耗しか確認されなかった。また、実験の前後において、シャフトが初期位置から制動力発生方向に60度回転するまでの間の時間を計測したところ、比較例では、実験前が1.9秒で、実験後が0.8秒であり、制動特性の低下が著しいのに対し、本実施例では、実験前が1.9秒で、実験後が1.3秒であり、制動特性の低下が少ないことが確認された。よって、本実施例に係るロータリーダンパによれば、耐久性の向上を図ることが可能である。
【実施例2】
【0022】
図8は、本発明の実施例2に係るロータリーダンパの断面図である。この図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、端壁11に形成される軸受け部13’が凹状である点で、実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0023】
本実施例におけるシール部材60は、ハウジング10の軸受け部13’の内周面とシャフト20の凸部21’の外周面との間隙をシールするように設けられている(
図8参照)。シール部材60としては、Oリングを用いることができる。
【0024】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が金属製であっても、ハウジング10又はシャフト20の回転時において、シャフト20の凸部21’の先端面21a’と該先端面21a’に対向する軸受け部13’の一面13a’との間に粘性液体が流入することを、シール部材60によって阻止することができる(
図8参照)。したがって、シャフト20の浮き上がりが抑制され、ベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)がプラグ30に摺接することによって生じるプラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗を減少させることが可能になる。したがって、本実施例に係るロータリーダンパも、実施例1に係るロータリーダンパと同等の効果を有する。
【実施例3】
【0025】
図9は、本発明の実施例3に係るロータリーダンパの断面図であり、
図10は、本実施例で採用した弁体84の斜視図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、弁体84がプラグ30とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)との間に配置される樹脂製のストッパー84cと、端壁11とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)との間に配置される樹脂製のストッパー84dとを有する点で、実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0026】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)が金属製であっても、樹脂製のストッパー84cによって、プラグ30とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)とが直接接触することを防ぐことができるため、プラグ30及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗をさらに減少させることが可能になる。
【0027】
本実施例に係るロータリーダンパと、比較例に係るロータリーダンパとを用いて実験を行った。比較例に係るロータリーダンパは、シール部材60が設けられず、かつ弁体84がストッパー84cを有していない点で本実施例に係るロータリーダンパと構成が相違する。
【0028】
この実験では、ハウジングを固定した状態で、シャフトを初期の位置から制動力発生方向に60度回転させることを3万回繰り返した。シャフトに加えた負荷は、14Nmであり、プラグ及びベーンは、本実施例のものも比較例のものも金属製である。
【0029】
実験後に、プラグの厚さを測定したところ、比較例では、0.026mmの摩耗が確認されたのに対し、本実施例では、0.001mmの摩耗しか確認されなかった。また、実験の前後において、シャフトが初期の位置から制動力発生方向に60度回転するまでの間の時間を計測したところ、比較例では、実験前が1.9秒で、実験後が0.8秒であり、制動特性の低下が著しいのに対し、本実施例では、実験前が1.9秒で、実験後が1.7秒であり、制動特性の低下が少ないことが確認された。よって、本実施例に係るロータリーダンパによれば、耐久性の更なる向上を図ることが可能である。
【0030】
また、本実施例に係るロータリーダンパによれば、シャフト20に偏荷重が加えられて、シャフト20が偏芯しながら回転した場合でも、ストッパー84cに加えて、端壁11とベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)との間に樹脂製のストッパー84dが介在しているため、端壁11及びベーン(第1加圧部51及び第2加圧部52)の摩耗も少なくすることが可能であり、耐久性をより一層高めることができる。
【実施例4】
【0031】
図11及び
図12は、本発明の実施例4に係るロータリーダンパの断面図である。これらの図に示したように、本実施例に係るロータリーダンパは、ベーン及び逆止弁の構造が実施例1に係るロータリーダンパと異なる。
【0032】
本実施例において採用した逆止弁は、ベーン50に形成される第1の溝86と、弁体85に形成される第2の溝87及び第3の溝88との組み合わせにより、粘性液体を一方向にだけ流す働きをするものである。
【0033】
より詳細には、ベーン50が、先端部に第1の溝86を有している(
図13及び
図14参照)。弁体85は、所定の幅を有し、ベーン50とハウジング10の周壁12との間に配置される本体部85aと、第2の溝87を有し、本体部85aから突出する第1突出壁85bと、第3の溝88を有し、第1突出壁85bと一定間隔おいて本体部85aから突出する第2突出壁85cと、プラグ30とベーン50との間に配置される樹脂製のストッパー85dと、端壁11とベーン50との間に配置される樹脂製のストッパー85eとを有して構成されている(
図13〜
図15参照)。ベーン50は、第1突出壁85bと第2突出壁85cとの間に配置され、ベーン50が第2突出壁85cに当接したときには、第1の溝86と第3の溝88が連通せず、第1の溝86が第2突出壁85cによって塞がれるようになっている(
図13参照)。一方、ベーン50が第1突出壁85bに当接したときには、第1の溝86と第2の溝87が連通するようになっている。
【0034】
上記のように構成される逆止弁は、シャフト20が、
図13において時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の閉時には、弁体85の第2突出壁85cがベーン50に当接する(
図13参照)。このとき粘性液体は、第3の溝88に流入するが、ベーン50によってせき止められる(
図13参照)。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生する。一方、シャフト20が、
図14において反時計回り方向に回転したとき、すなわち、逆止弁の開時には、弁体85の第1突出壁85bがベーン50に当接する(
図14参照)。このとき粘性液体は、ベーン50によってせき止められることなく、第2の溝87及び第1の溝86を経由して第3の溝88まで流入する。その結果、シャフト20の回転速度を減速せしめる制動力が発生しない。
【0035】
上記のように構成されるロータリーダンパによれば、プラグ30及びベーン50が金属製であっても、樹脂製のストッパー85dによって、プラグ30とベーン50とが直接接触することを防ぐことができるため、プラグ30及びベーン50の摩耗をさらに減少させることが可能になる。
【0036】
また、シャフト20に偏荷重が加えられて、シャフト20が偏芯しながら回転した場合でも、ストッパー85dに加えて、端壁11とベーン50との間に樹脂製のストッパー85eが介在しているため、端壁11及びベーン50の摩耗も少なくすることが可能であり、耐久性をより一層高めることができる。