特許第5864554号(P5864554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864554質量分析検出器およびイオンの特性を測定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864554
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】質量分析検出器およびイオンの特性を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20160204BHJP
   H01J 49/40 20060101ALI20160204BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   H01J49/06
   H01J49/40
   H01J49/42
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-511641(P2013-511641)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-528308(P2013-528308A)
(43)【公表日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】EP2011058415
(87)【国際公開番号】WO2011147804
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月13日
(31)【優先権主張番号】1008876.3
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170715
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 和道
(72)【発明者】
【氏名】マカロフ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ギアンナコプロス アナスタシオス
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−508288(JP,A)
【文献】 特表2006−526265(JP,A)
【文献】 特表平11−502665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00−49/48
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行時間または静電トラップ質量分析器内でイオンの特性を測定する方法であって、
(1)前記質量分析器内にイオンを入射させるステップと、
(2)前記イオンに前記質量分析器内の主要飛行経路の一部をたどらせるステップであって、前記主要飛行経路に複数回の方向転換が含まれるステップと、
(3)ビーム偏向を適用して、前記イオンの少なくとも一部を前記主要飛行経路から偏向し、これらを前記質量分析器内に配置された検出面に衝突させるステップであって、前記検出面が前記質量分析器の動作中の電場保持電極の一部をなすステップと、
(4)衝突する前記イオンにより前記検出面に到達する電荷を表す量を測定するステップと、
(5)適用された偏向から、前記イオンが偏向の直前に移動していた軌道の特性を測定し、および/または測定された前記量から、前記検出面に衝突した前記イオンの数を表す数値を測定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記検出面がその近辺の前記分析場を保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動作中の電場保持電極に電位が印加され、実質的に同じ電位が前記検出面に印加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析器内のイオンの総数が、前記検出面に衝突した前記イオンの数を表す前記数値から推定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出面に到達した前記電荷を表す前記量が、電流計を使って測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ビーム偏向は偏向器の切替によって行われ、前記偏向器が、前記偏向器の切替動作が電気ピックアップにより、前記電流計を大きく妨害しないように配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量は、電子増倍管を利用して測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出面がレンズ、ミラー、電場セクタ、またはこれらの要素のいずれかの集合のうちのいずれかの一部を形成する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量はその後、前記分析器に入射するイオンの量を制御するために使用される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量および/または前記イオンが偏向直前に移動していた前記軌道の前記特性は、前記質量分析器の調整に使用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量は、検出器の利得を調整するために使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
飛行時間または静電トラップ質量分析器であって、
前記質量分析計内に配置された検出面であって、使用時には前記質量分析器の動作中の電場保持電極の一部である検出面と、
偏向器であって、イオンを前記検出面へと偏向するための偏向器と、
を備え、前記分析器は、使用時に複数回の方向転換を含む飛行経路を有する飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項13】
前記検出面がその近辺で前記分析場を保持する、請求項12に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項14】
前記偏向器が前記検出面を含む、請求項12または13に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項15】
前記検出面が電流計に接続されている、請求項12〜14のいずれか1項に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項16】
前記検出面が電子増倍システム内で利用される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項17】
前記検出面がレンズ、ミラー、電場セクタ、またはこれらの要素のいずれかの集合のうちのいずれかの一部を形成する、請求項12〜16のいずれか1項に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項18】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量はその後、前記分析器に入射するイオンの量を制御するために使用される、請求項12〜17のいずれか1項に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項19】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量は、検出器の利得を調整するために使用される、請求項12〜18のいずれか1項に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【請求項20】
前記検出面に到達する前記電荷を表す前記量および/または前記イオンが偏向直前に移動していた前記軌道の前記特性は、前記質量分析器の調整に使用される、請求項12〜19のいずれか1項に記載の飛行時間または静電トラップ質量分析器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析の分野に関し、特に質量分析計の質量分析器におけるイオン検出に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析器による質量分離工程中、イオンビームが分析器内を通るように輸送される。飛行時間(TOF)質量分析器および静電イオントラップ(EST)質量分析器では、特にその分析器で高い質量分解能を得ようとする場合、イオンは長い、および/または複雑なビーム軌道へと案内されるかもしれない。たとえば、高分解能多重反射TOF(MR−TOF)質量分析器のビーム経路は、長さ数メートルまたは数十メートルに及ぶことがあり、最近の設計では、長い直線的なフィールドフリー領域を利用せず、その代わりに、イオンは複雑な湾曲した、または折り返されたイオン軌道をたどり、場合によってはこれが分析場が継続的に存在する間に行われる。このような分析器の例としては、たとえば米国特許第7,399,960号明細書に記載のマルチセクタMR−TOF型、国際公開第2005/001878号パンフレットに記載の多重反射鏡TOF型および、たとえば米国特許第7,186,972号明細書に記載のらせん軌道TOF型がある。このような分析器内の長い、および/または複雑なビーム経路は、精密に保持することが困難な場合がある。分析器への入射時にイオンビームの特性、たとえば空間位置、軌道およびビームエネルギー等にばらつきがあると、イオンビームは分析器内の所望のイオンビーム経路をたどりきれないことがあり、その結果、イオンビームまたはその一部がルート上の分析器のいずれかの構造要素と衝突して失われる。複雑なビーム経路と複雑な分析器構造では、射出するイオンビームの検出不良により、分析器が使用不能となるかもしれず、これは問題の原因が解決しがたいためである。あるいは、イオンビームは分析器を無事に通過するかもしれないが、最適なビーム経路をたどらずに、分析場が精密に保持されていない領域を移動するかもしれず、それによってビーム収差が生じる。そのため、先行するイオン光学装置とこのような質量分析器との接続と定常作業のための質量分析計の調整が難しいことがある。
【0003】
TOFおよびEST質量分析器の設計には、電場、場合によっては強力な静電場を利用するものがあり、これは分析器内のイオンビーム経路の大部分または全体に沿って発生し、その分析計で高い質量分解能を実現するためには、これらの静電場は、イオンビームが分析器内に存在する間ずっと、精密に発生させ、保持しなければならない。強力な場が存在する場合は、入射するビームの特性にさらに高い精度が求められるが、これはイオンビーム経路のわずかなずれが強力な場によって増幅されて、ビームが急速に理想のビーム経路から逸れるからである。この問題は、質量分析器内の飛行経路に複数の方向転換点が含まれる場合、さらに悪化する。
【0004】
一部の形態のTOF質量分析器、たとえば多重周回型分析器では、分析器の1回の周回後の分析器外の検出器の射出を利用して、ビームをモニタしてもよい。同様の方式は、ビーム経路が折り返される、その他のタイプの質量分析器で採用してもよく、これはすなわち、ビームが質量分析全体に使用される全ビーム経路の一部だけ移動した後に、外部検出器に射出され、モニタされる。どちらの場合も、外部検出器は、全飛行経路の終端における質量分析全体のために使用され、イオンビームは、整数回通過するごとに主要飛行経路から逸れて、これに衝突する。しかしながら、他のタイプの分析器の場合、分析器の形状とその結果得られるビーム経路では、全飛行経路を移動し終えるまで、都合よく最後の検出器へと射出させることができない。ビームが飛行経路全体をたどり終える前にモニタすることは、複数回の通過または複数回の方向転換によってビーム喪失の原因となりうるビームのずれの倍増が起こる前に、ビーム位置および/または軌道を測定できるため、有利である。また、ビーム内のイオン量の測定も、複数回通過させることが必要な質量分析全体にかかる時間よりはるかに短時間で行うことができる。しかしながら、多重周回型分析器や、ビーム経路が折り返される、その他のタイプの質量分析器は、低質量のイオンが分析器の中を通り、何回か通過した後に高質量のイオンに追いつくため、質量範囲が限定される。その結果、イオンの重複によって複雑となるスペクトルは、デコンボリューションが難しい、ないしは不可能かもしれず、したがって、イオンの重複を回避するために質量範囲を制限する必要がある。そこで、繰り返しの経路を使用しない質量分析器を使用することが望ましく、この場合、前述のように、そのビーム経路では、飛行経路全体を飛行し終わるまで、都合よく最終的な検出器に射出できない。
【0005】
また、質量分析計において、分析器の構造の一部を一時的なビームモニタ装置として利用することも知られている。たとえば、静電セクタ装置の外側セクタ電極を、TOFとしての使用中は静電場の発生のために使用される電圧供給源から切断し、その代わりに電流計に接続してもよい。イオンは、分析場がないため、セクタ内に案内されるのではなく、外側セクタ電極と衝突し、外側セクタ電極に到達した電流が電流計により測定される。同様の方式は、たとえば、MR−TOFの中のレンズを利用しても利用できる。しかしながら、このように分析器の電極を中間検出面として使用した場合、測定を行うために電圧供給を切断し、その後、接続しなおさなければならず、その結果、分析場が破壊されるため、分析器は質量電析器として動作できなくなる。この工程には時間がかかり、測定は正しい分析場がない中で行われる。ビーム開口プレートをビームモニタのための中間検出面として使用してもよく、この場合も電流計が用いられる。通常の分析場が存在している間は、このような開口プレートがイオンビームを通過させ、開口プレートに衝突する電荷だけがビーム損失量となる。ビーム全体の中に存在する電荷を測定するためには、分析場を変化させて、実質的にビームがまったく開口を通過しないように、ビーム全体を開口プレートに向けなければならない。さらに、最近のマルチセクタおよびMR−TOFの設計では、分析器全体に場が存在していてもよく、上記のような開口プレートは、不要であり、またその付近の電場が歪むという両方の理由から、使用しなくてもよい。
【0006】
より小さいビーム流を測定するために、二次電子増倍管を使用してもよく、これはたとえば、A.E.Giannakopulos et al.がInt.J.Mass Spectrom. and Ion Processes,131,(1994),67で説明しているとおりである。しかしながら、このようなタイプの検出システムはコストが高く、分析器内に増倍管を格納するための構造を設ける必要があり、その存在によって分析器内の電場の質が損なわれる可能性がある。さらに、電子増倍管の検出効率は、検出すべきイオンの化学的組成に依存し、また、その速度に強く依存する。
【0007】
上記を鑑み、本発明がなされた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様において、本発明は飛行時間または静電トラップ質量分析器内でイオンの特性を測定する方法を提供し、この方法は、
(1)質量分析器内にイオンを入射させるステップと、
(2)イオンに質量分析器内の主要飛行経路の一部をたどらせるステップであって、主要飛行経路に複数回の方向転換が含まれるステップと、
(3)ビーム偏向を適用して、イオンの少なくとも一部を主要飛行経路から偏向し、これらを質量分析器内に配置された検出面に衝突させるステップであって、検出面が質量分析器の動作中の電場保持電極の一部をなすステップと、
(4)衝突イオンにより検出面に到達する電荷を表す量を測定するステップと、
(5)適用された偏向から、イオンが偏向の直前に移動していた軌道の特性を測定し、および/または測定された量から、検出面に衝突したイオンの数を表す数値を測定するステップと、
を含み、
分析器が分析場を利用し、検出面付近の分析場は実質的にゼロでない。
【0009】
他の態様において、本発明は、飛行時間または静電トラップ質量分析器を提供し、これは、質量分析計内に配置された検出面であって、使用時には質量分析器の動作中の電場保持電極の一部である検出面と、偏向器であって、イオンを検出面へと偏向するための偏向器と、を備え、この分析器は、使用時に複数回の方向転換を含む飛行経路を有し、この分析器は分析場を利用し、検出面付近の分析場は実質的にゼロでない。
【0010】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、検出面はその付近に分析場を保持する。
【0011】
本明細書においては、イオンは、文脈上、他の解釈が必要でないかぎり、荷電粒子の一例として挙げられており、他のタイプの荷電粒子が排除されることはない。イオンパケットはイオンの集合であり、この集合には通常、さまざまな質量対電荷比が含まれ、これは少なくとも当初において、空間的に限定されている。好ましくは、イオンはパケットとしてTOFまたはEST質量分析器の中に入射する。
【0012】
本明細書の主要飛行経路とは、イオンがその質量対電荷比に応じて質量分析計の中で分離される時にイオンがたどる飛行経路を意味し、すなわち、主要飛行経路はしたがって、分析器がイオンをその質量電荷比に応じて分離するように動作している間に、イオンが分析器内を通過する際に移動する分析器内の空間の体積である。主要飛行経路には複数回の方向転換が含まれ、方向転換は、複数の静電セクタ、複数のイオンミラー、複数のイオン偏向器等を利用して起こしてもよい。したがって、質量分析器としては、ESTまたはTOF質量分析器がある。本発明での使用に適した質量分析器には、たとえば、多重反射TOF、セクタTOF、マルチセクタTOF、Orbitrap(商標)ESTがある。好ましい分析器には、多重反射TOFがあり、より好ましい分析器には、ある軸に沿って長い、内側と外側の電場画定電極系を含む、密接に連結された2つの線形電場ミラーから構成される多重反射TOFがある。
【0013】
本明細書において、複数の方向転換という用語は、少なくとも1つの運動座標における、複数回の交互の方向転換を説明するために使用される。イオンは、たとえば多重反射、多重セクタおよびらせん軌道TOF分析器等のように、複数回反射され、または複数の軌道をたどることで、複数回方向転換する。好ましくは、前記運動座標は飛行時間分離の方向に向かう。
【0014】
本発明の方法において、イオンは分析計の中に入射し、主要飛行経路の一部に沿って進み、その後、偏向されて検出面に衝突し、偏向器と検出面はどちらも分析器内にある。したがって、イオンは主要飛行経路に沿って移動し、偏向されてから、方向転換してもよく、または他の場合、イオンは1回または複数回方向転換してから、偏向されてもよい。
【0015】
質量分析器は、イオンをその質量対電荷比に応じて分離するように動作中の分析器における分析場を利用する。好ましくは、分析場は電場を含む。より好ましくは、分析場は静電場である。分析場は分析器の中でイオンに主要飛行経路をたどらせ、従って、主要飛行経路は分析場の中にある。質量分析器は、1つまたは複数の電場保持電極を有して、分析場を保持し、そのうちの少なくとも1つは検出面を含み、すなわち、検出面は分析器の電場保持電極の1つの一部をなす。
【0016】
分析場は、ビーム偏向器がビームを偏向して検出面に衝突させるように設定されると、ビーム偏向器付近の空間の体積の中で歪曲される。しかしながら、分析器内の他の場所では、分析場は、たとえば偏向器からの距離や電場保持電極の位置に応じて多少の差はあるが、歪曲されない。偏向器の周囲にシールド電極を設置して、分析場が歪曲される空間の体積を限定してもよく、シールド電極には、それらが取り囲み、ビーム偏向器を含む空間の体積の外の分析場を保持するように、適当な電気的バイアスがかけられる。したがって、シールド電極そのものが、電場保持電極である。
【0017】
本明細書における動作中という用語は、電場保持電極がエネルギーの供給を受けて、分析場を保持している状態を指す。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、検出面は、動作中の状態にある、すなわち分析場を保持している間の電場保持電極をなす。このようにして、分析場の中で、イオンが検出直前に移動していた軌道をモニタすることが可能となる。これに加えて、軌道のモニタとイオン量の測定はどちらも、毎回の質量分析の合間に素早く行うことができ、これは、質量分析時とビームモニタ時の両方で検出面に同じ電位が印加されるため、電荷増幅器に接続された検出面の電圧が切り替わらないからである。したがって、ビームモニタは毎回の質量分析作業の合間に行うことができ、時間的ロスが少なくてすみ、デューティサイクルが改善される。好ましくは、検出面は動作中の電場保持電極をなす。他の実施形態において、検出面には一時的に天気的バイアスをかけて、イオンを偏向し、そこに衝突させてもよい。これらの実施形態において、検出面は、その時点では、動作中の電場保持電極とならず、その代わりに、偏向器となるが、それでもなお、検出面は常に、すべての実施形態において、別の動作中の電場保持電極の一部をなし、すなわち、検出面は動作中の電場保持電極の中またはその上に配置される。これらの実施形態において、検出面は、イオンを主要飛行経路から偏向し、検出面に衝突させるのに必要な唯一の偏向器であってもよく、または、分析器内に別の偏向器があってもよい。本発明のすべての実施形態において、検出面付近の分析場は、実質的にゼロでない。
【0018】
ビーム偏向器は、イオンの軌道の方向を変えることのできるどのようなタイプの切替可能なイオン光学装置であってもよく、イオンは、たとえばイオンビームまたはイオンパケットの形態であってもよい。偏向は、電場および/または磁場を使用して行ってもよい。たとえば、平行板型偏向器、電場セクタ、磁場セクタ、コイル、電場または磁場レンズがある。好ましくは、偏向器は電場を利用し、好ましくは、偏向器は、実質的に平行な、対向する1対の平坦な板を含み、主要飛行経路の両側に1枚ずつある。偏向器は使用の際、電源を投入してビームを主要飛行経路から偏向しても、または電源を切ってビームを主要飛行経路から偏向してもよいが、好ましくは、電源を投入してビームを主要飛行経路から偏向する。ビーム偏向器は、好ましくは、分析器の中の、主要飛行経路上の少なくとも1点に隣接して配置される。ビーム偏向器は、主要飛行経路上のどの適当な点に隣接して配置してもよい。前述のように、検出面が偏向器をなしてもよい。
【0019】
検出面は、電場保持電極のうちの1つの表面の中またはその上に配置される。検出面は、平坦でも湾曲していてもよい。検出面は、対称面を有していても、有していなくてもよく、規則的形状でも、不規則形状でもよい。検出面は、質量分析器内に配置され、これは本明細書において、検出面が、使用時に質量分析場を画定する構造または構造の集合の中またはその上にあり、したがって、検出面が、分析場の少なくとも一部により占められる空間の中に配置されることを意味する。検出面は、主要飛行経路に隣接していても、主要飛行経路から実質的に離れていてもよい。検出面は、検出面に到達する電荷を表す量を測定する装置に接続される。好ましくは、検出面に到達する電荷を示す量を測定する装置は電荷増幅器である。より好ましくは、この電荷増幅器は電流計である。検出面が質量分析器の動作中の電場保持電極をなす実施形態において、検出面は適当な形状であり、イオンがそこに衝突するように偏向されるか否かを問わず、それには、質量分析場が検出面の付近の空間の体積内でそれによって実質的に保持されるように、電気的にバイアスがかけられる。したがって、これらの実施形態では、検出面は、検出面に到達する電荷を表す量を測定する装置に接続されるほか、質量分析場が検出面の付近で保持されるようにそれに電気的にバイアスをかけるのに必要な電源にも接続される。本明細書において、いずれかの電源と接続することは、他の電極を介してそのような電極に接続することを含む。そのような実施形態では、検出面に到達する電荷を表す量を測定するための、検出面に接続された装置、たとえば電流計は、電源により供給される電位に浮動される。好ましくは、質量分析の実行中とビームのモニタ中のどちらも、検出面に接続された電源は、同じ電位を高い精度で発生するように制御される。検出面は特にイオン検出のために設置された面であると同時に、いくつかの実施形態においては、質量分析器の動作中の電場保持電極でもある。他の実施形態では、検出面は特にイオン検出のために設置された表面であると同時に、偏向器でもある。検出面はしたがって、同時に2つの機能を果たす表面であり、すなわち、いくつかの実施形態では、検出と、検出面の付近の空間の体積の中の質量分析場の保持であり、他の実施形態では、検出と、ビーム偏向である。検出面の近辺の分析場は、実質的にゼロでない電場である。分析器は分析場を利用し、本発明のすべての実施形態において、検出面の近辺の分析場は実質的にゼロでない。いくつかの実施形態において、検出面はその近辺で分析場を保持する。検出面は、いずれのタイプの電場保持電極の一部を形成してもよく、たとえば、これはレンズ、ミラー、電場セクタ、長形ロッドまたはこれらの要素のいずれかの集合の一部からを形成してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、検出面は偏向器の近辺に配置されても、または偏向器から実質的に離れていてもよい。検出面が偏向器の近辺に配置されたとしても、イオンビームは、偏向器を通過してから検出面に到達するまでに長い距離を通る飛行経路をたどるようにしてもよく、それは、飛行経路が偏向器と検出面との間で、たとえば軌道、反射、折り返される経路、またはこれらを組み合わせたものであってもよいからである。これは、検出面が動作中の電場保持電極をなす実施形態または、検出面が偏向器をなす実施形態にあてはまるかもしれない。検出面が偏向器をなす他の実施形態において、イオンは、偏向器に引力を発生する電位を印加することによって、検出面に直接引き付けられるようにしてもよい。検出面が偏向器をなさない実施形態では、偏向器を検出面から十分な距離だけ離れた位置および/または検出面から電気的に遮断された位置に配置することによって、別の利点が得られる。このような場合、偏向器のオンまたはオフを切り替える動作は、電気ピックアップの誘導によって、検出面に接続されたいずれの電流計を大きく妨害しない。
【0021】
使用時に、偏向器は、電源投入されるか、電源が切られるかにより、ビーム偏向を行って、イオンの少なくとも一部をそれが移動していた主要飛行経路から偏向して、検出面に衝突させる。衝突するイオンは、検出面に到達する電荷に貢献する。検出面に衝突するイオンは、分析器内のイオン総数の部分集合のみであるかもしれない。好ましくは、検出面に衝突するイオンのイオン電荷は、検出面に到達する電荷の実質的にすべてを構成する。しかしながら、他の電荷発生源が検出面に到達しうるということがあるかもしれず、たとえばこれは、付近の他の面に衝突するイオンにより生成される二次電子等である。
【0022】
本発明の方法は、適用された偏向から、衝突したイオンが偏向直前に通っていた軌道の特性を測定し、および/または測定された量から、質量分析器内のイオンの少なくとも一部の数を表す数値を測定する手段を提供する。イオンを検出面に衝突させるためにイオンに適用される偏向の大きさによって、検出されたイオンが偏向の直前に通っていた軌道の特性を推測することが可能となる。好ましくは、この特性はたとえば、イオンエネルギー、軌道の位置、およびイオンの軌道の方向である。このような特性を推測できるのは、より大きなエネルギーのイオンビームには、ある角度だけそのイオンを偏向するのに、より小さいエネルギーのビームより大きな偏向力が必要となることが知られているからである。たとえば、偏向器が1対の平行板に1対の反対の電位を印加することによって提供される電場を利用する場合、平行板に印加される電位差が大きいほど、偏向力は大きい。偏向器構造の形状、分析場、偏向器と検出面の位置の知識と印加された電位差とにより、当業者は検出されたイオンビームのいくつかの特徴的特性を予測できる。これに加えて、またはその代わりに、検出された信号の大きさから、質量分析器内のイオンの数を表す数値を推測してもよい。検出された信号の大きさは、検出面に衝突した偏向イオンビームの電荷の数に関する情報を提供する。電荷の数を利用して、検出面に衝突した偏向イオンビーム中のイオンの数を予測または推定してもよく、これを利用して、質量分析器内に存在するイオンの数を予測してもよい。質量分析器内のイオンの数は、偏向イオンビームのうち検出面に衝突したイオンの数と同じではないかもしれず、これは、偏向器が分析器内のイオの一部だけを偏向し、その他すべてのイオンには引き続き主要飛行経路をたどらせるように操作してもよいからである。これは、一定時間だけ偏向器に電源を投入するか、電源を切り、一部のイオンだけを偏向することによって行ってもよい。本明細書におけるイオンの特性という用語は、イオンの量またはイオンの部分集合の量を含む。
【0023】
分析器内には複数の検出面があってもよく、イオンを1つの偏向器または、好ましくは複数の偏向器からそこに向ける。ある偏向器は、たとえば偏向器に異なる電圧が印加されて、異なる偏向力が発生したら、イオンを主要飛行経路から1つまたは複数の検出面へと向かわせてもよい。その代わりに、またはこれに加えて、偏向器は、それが同じ偏向力で動作するが、イオンが異なる方向から主要飛行経路上でそれに近づいたら、イオンを主要飛行経路から1つまたは複数の検出面へと向かわせてもよい。イオンは、質量分析器内で一方向に主要飛行経路をたどり、分析器内で戻る軌道の全部または一部を引き返すように案内されて、飛行経路の全長が長くされてもよく、すると、これらはたとえば、どちらの方向に移動する際も偏向器の付近を通過できる。その代わりに、またはこれに加えて、主要飛行経路を、イオンが同じ経路をたどらないようにした上で、1カ所または何カ所かで交差させて、偏向器を1カ所または複数のそのようなビーム交差点に隣接して配置してもよい。
【0024】
同じ質量分析器内で、異なる検出面を利用してもよい。検出面は、異なる形状、大きさ、向きであってもよい。いくつかの検出面は追加の電子増倍を利用して、他の検出面はこれを利用しなくてもよく、したがって、いくつかの検出面を1つの目的に使い、他の検出面は他の目的に使ってもよい。
【0025】
たとえば、主要飛行経路に沿ったイオンの通過と偏向器等の光学装置と検出面の間のイオンの移動には、イオン損失が伴ってもよい。したがって、本発明は、方法の各ステップで、またはどのステップでもすべてのイオンが経路に沿って、または装置間で移動する場合に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1a及び図1bは、本発明の態様を説明する概略図である。
図2a】本発明の各種の実施形態の概略図を示す。
図2b】本発明の各種の実施形態の概略図を示す。
図2c】本発明の各種の実施形態の概略図を示す。
図2d】本発明の各種の実施形態の概略図を示す。
図2e】本発明の各種の実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、本発明の各種の実施形態を以下の例と添付の図面によって説明する。
【0028】
図1aの概略図を参照すると、TOFまたはEST質量分析器10は、動作中の電場保持電極20を備える。イオンは、入射軌道30に沿って分析器内に入射し、質量分析器10が作動してイオンをその質量電荷比に応じて分離すると、イオンは分析器内の主要飛行経路40をたどり、射出軌道50に沿って分析器を出て、分析器の外の検出器60によって検出されることになる。分析器は、イオンをその質量対電荷比に応じて分離するように動作している間、分析場を利用する。偏向器100と検出面200は、分析器の中に配置されている。検出面200はまた、動作中の電場保持電極20の一部をなし、その近辺の分析場を保持する電位に保たれる。検出面200は、電場保持電極20の中に物理的に組み込まれ、電場保持電極20と同じ電位に保たれるが、電気的にそれから絶縁され、検出面はそこに衝突する電荷を検出システムに送ることができる。本発明の方法において、イオンは偏向器100の作用によって主要飛行経路40から偏向され、補助経路150を通って検出面200に至る。電流計210が接続手段220を介して検出面200に電気的に接続されている。電流計210は、検出面200に到達した電荷を表す量を測定し、出力230を、コンピュータを含むコントローラ250に供給する。電流計210は差動電荷増幅器であり、質量分析計の中の他の構成要素に印加される無線駆動電位からのノイズのピックアップを拒絶する。この実施形態には、電流計210を、好都合な点として、検出面200とそれに隣接する、検出面200が配置されている電場保持電極20の両方に接続してもよいという利点があり、それは、これらの電極がいずれも同じ電位に保持されるからである。このような実施形態の一例は、図2eに関して後述する。
【0029】
別の実施形態が図1bに示されており、ここでは、同様の特徴要素には図1aと同じ符号が付されている。TOFまたはEST質量分析器11は、動作中の電場保持電極20を備える。イオンは、入射軌道30に沿って分析器内に入射し、質量分析器11が作動してイオンをその質量電荷比に応じて分離すると、イオンは分析器内の主要飛行経路40をたどり、射出軌道50に沿って分析器を出て、分析器の外の検出器60によって検出されることになる。分析器は、イオンをその質量対電荷比に応じて分離するように動作している間、分析場を利用する。偏向器100と検出面200は、分析器の中に配置され、同じ電極をなす。検出面200は、電場保持電極20の中に物理的に組み込まれるが、検出工程中、電気的にそれから絶縁され、その時点でそれ自体は動作中の電場保持電極を形成しない。本発明の方法において、イオンは偏向器100の作用によって主要飛行経路40から偏向され、補助経路150を通って検出面200に至る。この例では、偏向器100は分析場を妨害し、イオンを偏向器から反発させ、それによってイオンは補助経路150をたどり、方向転換の後、検出面200に斥力を持つ電位が印加されているにもかかわらず、検出面200に衝突する。他の実施形態においては、これと同じ目的のために引力を持つ電位を利用してもよい。電流計210が接続手段220を介して検出面200に電気的に接続されている。電流計210は、検出面200に到達した電荷を表す量を測定し、出力230を、コンピュータを含むコントローラ250に供給する。電流計210は差動電荷増幅器であり、質量分析計の中の他の構成要素に印加される無線駆動電位からのノイズのピックアップを拒絶する。
【0030】
図1aと図1bの両方の実施形態において、コントローラ250は、入射軌道30および/または分析場に影響を与える、先行するイオン光学装置(図示せず)を制御するために使用される。それによって次の入射イオンパケットの入射軌道30が調整されてもよく、および/またはそれによって分析場が調整されてもよく、これはたとえば、電場保持電極20に印加される電位を変化させて、分析器10内のイオンビーム経路を制御することによって行われる。分析器10、11内のイオンビーム経路を制御して、イオンビームを、たとえば最高の透過率および/または最高の質量分解能を提供できるような最適な経路に沿って案内することが望ましい。本発明はそれによって、フィードバックシステムで使用して、コントローラ250により、検出面に到達した電荷を表す量および/またはイオンが偏向直前に移動していた軌道の特性に基づいてイオンビームが配向され、質量分析器が調整されるようにしてもよい。イオンビームを、それが主要飛行経路の一部だけを移動したところで検出し、イオンビームが主要飛行経路の下流の位置で失われる原因となるようなビームの位置ずれが検出され、その後入射したイオンビームが再配向されるようにすることは有利である。
【0031】
コントローラ250はまた、先行するイオン光学装置(図示せず)を制御して、電流計210で検出された電荷の量に基づいて、次の入射パケットの中で所望の数のイオンに分析器10、11を通過させるためにも使用される。電流計210により検出された電荷の量は検出面200に到達したイオンの数を示すことができ、これは分析器10、11に入射したイオンの数を示すことができる。特定の量のイオンを分析器10、11に入射させて、たとえば、質量分解能が空間電荷により不利な影響を受けないように分析器10、11を最適に充填するか、検出器60が過負荷となるのを確実に防止することが望ましい場合、イオンの数を前述のように、自動利得制御(AGC)の形態のコントローラ250によって制御することができる。その代わりに、またはこれに加えて、検出器60の利得はまた、コントローラ250により、電流計210により検出された電荷の量に基づいて調整してもよく、これは、それによって検出システムを次に検出器60に到達するであろうイオンの数のために準備できるという利点を有する。検出システムの有益なダイナミックレンジをそれによって、すでに分析器内で飛行しているか、次の入射で分析器内に入射するであろうイオンの到着速度に対応できるように設定してもよい。
【0032】
検出面200は、各種の電荷増幅器に接続してもよい。別の、ベネチアンブラインド型またはチャネルトロン型増倍管等の電子増倍手段を、これらがイオンの衝突に応答して検出面から放出される二次電子を受けるように配置できる場合は、使用してもよい。こうした種類の増倍管の利点としては、その高帯域幅によって速い繰り返し菓子率で動作できる点および、これらが非常に小さなイオン流を測定できる点がある。あるいは、別の電子増倍管を持たない電流計を使用してもよく、その場合、検出面か受けた正味の電荷が測定され、これには衝突するイオンから受けたイオン電荷と、おそらくは検出器の表面から放出された二次電子および/または二次イオンによる電荷が含まれる。この種の検出の利点としては、検出効率が、前述のように衝突イオンの質量とその化学的組成に依存する衝突イオンの運動エネルギーから二次電子への変換プロセスによって左右されない点がある。
【0033】
偏向器が、質量分析器の出口より入口に近い主要飛行経路の付近に設置される実施形態において、AGCのため、または最後の飛行時間検出器の利得調整のためにビーム中のイオンの数を表す測定値を得るプロセスは、イオンパケットが入射し、分離され、その後、質量分析器の外で検出される分析時間よりはるかに短い。たとえばAGCの目的のためには、利用可能なイオンの数は、ある分析に有益に利用される数よりはるかに大きくてもよく、これは、たとえば質量分解能に影響を与える空間電荷効果が、AGCのプロセスにとっては重要でなく、許容できるからである。これによって、比較的低帯域幅の電荷検出システムを使用することが可能となり、低コスト化につながる。MR−TOFにおけるAGCは、好ましくは、大きな質量範囲スペクトルを取得する場合や、質量分析器が、機器の調整を頻繁にチェックする必要のあるMS/MSおよびMSnを組み込んだ質量分析計システムの一部である場合に使用される。一般に、AGC測定は、質量スペクトルの一部または全部を取得する前や、フラングメンテーションスペクトルの一部または全部を取得する前に行ってもよい。
【0034】
図2aの概略図を参照すると、好ましい分析器は、密接に連結された2つの線形電場ミラー810、820から構成される多重反射TOF 800を含んでおり、これらは相互に対向し、それぞれ、軸Zに沿って延びる内部および外部電場画定電極システム900、910を備える。このような分析器は、英国特許出願第0909232.1号明細書に詳しく記載されており、同出願の全体を引用によって本願に援用する。図2aは、分析器800の断面を示す。2つのミラー810、820は、z=0平面に対して実質的に対称である。好ましくは、内部および外部電場画定電極システム900、910は、図2aに示されるように同中心である。両方のミラー810、820の内部および外部電場画定電極システム900、910は分析器の軸に関して実質的に回転対称である。各ミラーの外部電場画定電極システム910は、大きさが内部電場画定電極システム900より大きく、内部電場画定電極システム900の周囲に配置される。Orbitrap(商標)静電トラップのように、内部電場画定電極システム900は紡錘型の形状であり、直径がミラー間の中間点に向かって(すなわち、分析器の赤道(すなわち、z=0平面)に向かって増大し、外部電場画定電極システム910はバレル型の形状で、直径がミラー間の中間点に向かって増大する。電場画定電極システム900、910は、ミラー内に四次対数的(quadro−logarithmic)な電位分布を発生させる形状である。両ミラーの外部電場画定電極システム910は、z=0平面と交差する領域にくびれ部955を有する。両方のミラーの外部電場画定電極システム910がくびれている箇所の957において、整列された電極トラック958が半径方向の異なる位置に、分析部の内部に面して位置付けられる。これらの電極トラックには適当な電気的バイアスがかけられて、外部電場画定電極システムのくびれ部分によって分析器内の他の場所の四次対数的(quadro−logarithmic)な電位分布が歪められるのを防止する。整列された電極トラック958は、たとえばその代用として適当な抵抗コーティングに置き換えてもよく、あるいは他の電極手段も考えられる。本明細書において、整列された電極トラック、抵抗コーティングまたは、主要電場の歪曲を防止するためのその他の電極手段は、その機能により、それらが関係するミラーの外部電場画定電極システムの一部を形成する。電場画定帯状電極965、975がz=0平面の領域内に配置され、内部電場画定電極システム900を取り囲む。内部および外部帯状電極アセンブリ965と975はそれぞれ、内部および外部偏向電極923、924のそれぞれを支持する。対向するレンズ要素996、997もまた、それぞれ内部および外部帯状電極アセンブリ965と975の上に支持される。追加で、レンズ要素996、997と同様のレンズ要素対が、内部および外部帯状電極アセンブリ965、975の上に、z軸の周囲の内部および外部偏向電極923、924が配置されている領域を除く全体にわたり、環状に離間させて支持される。これらのレンズ要素は、イオンビームがレンズ要素対間の主要飛行経路をたどる際、イオンビームの発散を制御する機能を果たし、これについては後に詳述する。偏向器アセンブリの偏向電極923、924とレンズ電極996、997は、図中、明確さを期し、それらが取り付けられている帯状電極アセンブリ965、975から突出するように概略的に示されているが、実際には、これらの電極は帯状電極アセンブリ内に嵌め込まれ、帯状電極アセンブリと偏向器およびレンズ電極の表面とは平坦であってもよい。外部電場画定電極システムのくびれ部955の内面は、外部帯状電極975を支持するために使用され、これ自体は、偏向器およびレンズ電極924、997のそれぞれを支持する。すると、内部および外部帯状電極アセンブリ965と975をそれぞれ、好都合に、それぞれ内部および外部電場画定電極システム900、910から分析部内に取り付けてもよい。帯状電極アセンブリ965と975は内部および外部電極画定電極システム900、910から、たとえば短い絶縁体または絶縁シートを介して、取り付けてもよい。
【0035】
図2bは、図2aに示されているものと同じ分析器800の概略図であり、主要飛行経路がよく見えるように、参照番号が除かれている。主要飛行経路は軌道であり、内部および外部電場画定電極システム900、910間に配置された繰り返し螺旋920となる。ビームの軌道運動は、一方のミラーから他方へ、z軸に平行な方向に移動しながら、分析器の軸の周囲で軌道を描くらせん運動である。らせん状の主要飛行経路920は、軸zの周囲を複数回進んでから、同じ経路を繰り返す。イオンは、経路がこのように繰り返す前に、検出のために射出されてもよく、TOF質量分析器の質量範囲が制限されなくなる。主要飛行経路920は、内部電場画定電極構造の赤道(平面z=0)を複数回通過し、そのたびに前回の周回からz軸の周囲である角度ずつずれる。主要飛行経路920は、前述のように帯状電極アセンブリ上に取り付けられた対向するレンズ要素(996、997および図示されていないそれ以外の対)の間を通過し、ビーム発散が、ビームが分析器を通る間にレンズ要素によって複数回制御されうる。主要飛行経路920に沿って移動するイオンビームはそれゆえ、適当な大きさの偏向電極923、924(参照番号は図2aに記載)も少なくとも1回通過し、このような電極を使って、本発明の方法のように、イオンビームを主要飛行経路から偏向して、その後、検出面(図示せず)に衝突するようにしてもよい。
【0036】
図2cは、図2aと図2bに関して説明したタイプの分析器の一部の側面図を示し、いくつかの別の実施形態と、検出面の好ましい位置を示す。外部電場画定電極910は、明確さを期し、図示されていない。内部帯状電極965は連続的レンズ要素電極980を支持し、これは使用中、図2aのレンズ要素996と同様の方法で、ビームの角度発散を制御する。同様の連続的レンズ要素が外部帯状電極アセンブリに配置されているが、図示されていない。角度発散を制御するために使用する際、内部および外部帯状電極アセンブリ上のレンズ要素には、同じ極性と同じ大きさの電位がかけられる。図2cに示されている例は、偏向電極の配置のための別の構成を示しており、これはレンズ要素の脱落を避けるものであり、それは、この例では連続的レンズ電極980が偏向器として使用され、内部および外部レンズ電極に反対の極性の電位が印加されることにより、イオンビームが最初の周回でz=0平面を通過する時に、その全部または一部を偏向するからである。すると、分析器の赤道を通過するイオンビームはすべて、主要飛行経路から逸れるように偏向される。イオンは、赤道周辺のある地点において、このように主要飛行経路を離れ、次の周回で検出面985に衝突する。偏向されたイオンの飛行経路はしたがって、1つの軌道と、偏向器による偏向と検出面での受取までの間の2回の反射を経る。このように、入射されたイオンビームの一部または全部をサンプリングしてもよい。検出面985は、連続的レンズ電極980の付近に配置され、内部帯状電極アセンブリ965と同じ電位にバイアスされ、それによって、その付近の分析場が保持される。この例において、連続的レンズ要素980と検出面985は、帯状電極965に嵌め込まれている。
【0037】
図2dは、図2aと図2bに関連して説明したタイプの分析器の一部の概略側方断面図を示し、いくつかの別の実施形態を示している。この例において、検出面は、電子増倍システムとともに使用される。図2dは、それぞれ内部および外部帯状電極965、975の両方の一部の概略図を示す。検出面986は、内部帯状電極965の中に嵌め込まれた動作中の電場保持電極である。検出面986に衝突する正電荷イオン987は二次電子988を発生させ、これは、分析場の作用を受けて、検出面986から反発し、スリット板990を通過した後、陽極989に衝突する。スリット板990は、外部帯状電極975の一部であり、二次電子988が電子増倍管の一部である陽極989を通過する間、スリット板990の付近の空間の体積の中の分析場を保持する役割を果たす。この構成において、イオンは分析計の中の別の箇所の(図示されていない)偏向電極によって偏向される。他の実施形態では、検出面986自体が偏向器として動作し、動作中の電場保持電極ではなく、この場合、イオンは、それが最初の軌道で検出面986の付近を通過する時に偏向され、それによって次の軌道で検出面986に衝突させられてもよく、またはイオンは、それが検出面986に近づく際に印加される十分に強力な引力電位によって検出面986へと偏向され、イオンが同じ軌道を移動中に偏向、検出されてもよい。
【0038】
図2eは、高圧電源710と電流計720をどのように検出面730とその付近の電場保持電極740に接続できるかを示す概略図である。抵抗器750が接続手段760と770の間に接続される。接続手段760は、高圧電源710と差動電流計増幅器720の1つの入力を電場保持電極740に電気的に接続する。接続手段770は、差動電流計増幅器720の第二の入力を検出面730に電気的に接続する。イオン780は、検出面730に衝突する。電流計720は出力790で信号を出力し、この信号は、検出面730に衝突する電荷を表す。この構成では、抵抗器750の数値は10Mオームである。このような抵抗器の適当な数値は、たとえば、これに限定されないが、1〜100Mオームの範囲である。検出面730に到達する電荷の急速の変化は、接続手段770を介して差動電流計増幅器720により記録され、その間、検出面730と電場保持電極740からのノイズのピックアップは、差動電流計増幅器720の両方の入力760、770に同様のノイズが出現するため、ほとんど取り消される。
【0039】
本明細書において、特許請求の範囲も含め、文脈上これに当てはまらない場合を除き、明細書中の用語の単数形は複数形を含み、その逆もある。たとえば、文脈上これに当てはまらない場合を除き、単数への言及、たとえば冠詞「1つの((a)または(an))」は本明細書において、特許請求の範囲を含め、「1つまたはそれ以上の」という意味である。
【0040】
本明細書の説明と特許請求の範囲全体を通じて、「〜を備える(comprise)」、「〜を含む(including)」、「〜を有する(having)」および「包含する(contain)」ならびにこれらの変化形(たとえば、comprising、comprises等)は、「以下を含み、これに限定されない」という意味であり、他の構成要素を排除するとは意図され(ず、排除し)ない。
【0041】
当然のことながら、本発明の上記の実施形態を変更することも可能であり、これらも依然として本発明の範囲内に含まれる。本明細書で開示された各特徴は、特に断りがないかぎり、同じ、均等または類似の目的に適う別の特徴に置き換えてもよい。それゆえ、特に断りがないかぎり、開示された各特徴は、均等または類似の特徴の包括的集合の一例にすぎない。
【0042】
本明細書中のいずれかおよびすべての例、または例を表す文言(「たとえば」、「等」および同様の文言)は、単に本発明をよりよく説明するためのものであり、特に特許請求の範囲に別段の記載がないかぎり、本発明の範囲を限定しない。明細書中の文言のいずれも、特許請求の範囲に記されていないいずれかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈するべきではない。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e