特許第5864556号(P5864556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864556インスリン様成長因子1受容体結合ペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864556
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】インスリン様成長因子1受容体結合ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160204BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20160204BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20160204BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20160204BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20160204BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160204BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160204BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160204BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20160204BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160204BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K7/08
   C07K14/00
   C07K19/00
   C12P21/02 C
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/00
   A61K37/02
   A61P25/00
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-512202(P2013-512202)
(86)(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公表番号】特表2013-534811(P2013-534811A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】US2011037904
(87)【国際公開番号】WO2011150061
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年2月28日
(31)【優先権主張番号】61/348,937
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ディエム,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オニール,カリン
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−228199(JP,A)
【文献】 特表2009−515819(JP,A)
【文献】 特開2010−000082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
PubMed
Google Scholar
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、2、4、8および12のいずれか1つに示される配列を有するポリペプチドを含む、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1、2、4、8および12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号14、15、17、21および25のいずれか1つに示される配列、又はその相補配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号14、15、17、21および25のいずれか1つに示される配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
【請求項5】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項7】
第2のポリペプチドに融合された配列番号1、2、4、8および12のいずれか1つに示される配列を有するポリペプチドを含む、単離された融合タンパク質。
【請求項8】
前記第2のポリペプチドが、免疫グロブリン又はそのフラグメントである、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
ポリペプチドを発現させる方法であって、
a.請求項6に記載の宿主細胞を準備する工程と、
b.配列番号1、2、4、8および12のいずれか1つに示される配列を有するポリペプチドの発現に十分な条件下で、前記宿主細胞を培養する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
コンジュゲートを含む医薬組成物であって、該コンジュゲートは、配列番号1、2、4、8および12のいずれか1つに示される配列を有するポリペプチドを含むポリペプチドおよび該ポリペプチドにコンジュゲートされた治療薬を含み、
前記医薬組成物は、内皮細胞を横切って治療薬を送達するための方法であって、
.前記コンジュゲートを前記内皮細胞と接触させる工程と、
ii.前記内皮細胞を横切って送達された前記コンジュゲートの量を測定する工程と、を含む、方法において使用される、医薬組成物
【請求項11】
前記内皮細胞が血液脳関門を形成する、請求項10に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン様成長因子1受容体結合ペプチド、それらをコードするポリヌクレオチド、及び前述のものを作製し、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学的研究及び高処理薬物スクリーニングにおける近年の進歩は、CNS関連の疾病の治療のために多くの可能性のある治療剤を生み出してきた。しかしながら、多くの治療剤は、血液脳関門(BBB)を通る輸送に不適切であるため、生体内試験で不合格となる。
【0003】
治療剤は、飽和輸送体系、治剤がBBBの細胞によって内部に取り入れられ、脳の細胞内液体区画の中に堆積させるために反管腔側の表面に送られる吸着性経細胞輸送、治療剤がBBBを含む細胞の膜を形成する脂質二層の中に溶解する膜貫通型拡散、治療剤がBBBの残留物漏出性を利用する細胞外経路を含むいくつかの経路を使用してBBBを横切る(cross)ことができる。
【0004】
治療薬を修飾してそれらのBBBの透過性を変更するために、BBBを自然に横切るタンパク質、例えばインスリン、インスリン成長因子1及び2(IGF−1、IGF−2)、レプチン、トランスフェリン(米国特許出願第US2007/0081992号)とのコンジュゲート、ポリペプチドの、インスリン受容体(米国特許第7,388,079号)又はトランスフェリン受容体(米国特許第6,329,508号;Zhang and Pardridge,Brain Res.889:49〜56,2001)等の特定の細胞受容体に結合するカチオン化抗体への連結、治療剤の、ポリソルベート80で被覆されたポリ(ブチルシアノアクリレート)又はポリアクリルアミド等の合成ポリマーとの結合(米国特許出願第2002/0009491号、米国特許出願第2002/0013266号、米国特許出願第2006/0051317号)、及びリポソーム又は免疫リポソームの使用を含む、いくつかのアプローチが試されてきた。
【0005】
BBBを横切る治療薬の輸送を向上するための現在のアプローチは、内因性リガンドとの競合による無効性、脳軟組織への治療剤の輸送の欠如、及びリソソーム標的による治療剤の分解を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、BBBを通して治療薬を輸送するための方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドを含む単離されたポリペプチドである。
【0008】
本発明の別の態様は、配列番号1〜13に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドである。
【0009】
本発明の別の態様は、配列番号14〜26に示される配列又はその相補配列を有するポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチドである。
【0010】
本発明の別の態様は、配列番号14〜26に示される配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離されたベクターである。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明のベクターを含む単離された宿主細胞である。
【0012】
本発明の別の態様は、第2のポリペプチドと融合する配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドを含む単離された融合タンパク質である。
【0013】
本発明の別の態様は、
a.本発明の宿主細胞を準備する工程と、
b.配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドの発現に十分な条件下で、宿主細胞を培養する工程と、を含む、ポリペプチドを発現させる方法である。
【0014】
本発明の別の態様は、
a.治療薬を、配列番号1、2、4、8、又は12に示される配列を有するポリペプチドを含むポリペプチドにコンジュゲートして(conjugating)、コンジュゲート(conjugate)を形成する工程と、
b.コンジュゲートを内皮細胞と接触させる工程と、
c.内皮細胞を横切って(across endothelial cells)送達されたコンジュゲートの量を測定する工程と、を含む、内皮細胞を横切って治療薬を送達するための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】選択ファージ溶菌液のIGF1R及びIRへの結合。
図2】ペプチド−AP融合体のIGF1Rへの結合。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に引用する、特許及び特許出願を含むがそれらに限定されない刊行物はすべて、それらがあたかも本明細書に完全に記載されているのとまったく同様に本願に援用するものである。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、文脈で明確に指示されない限り、単数形「a」、「and」、及び「the」は、複数形の言及を含む。したがって、例えば、「ポリペプチド」への言及は1つ以上のポリペプチドへの言及であり、当業者には既知のそれらの等価物を包含する。
【0018】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているのと同様又は同等のあらゆる組成物及び方法を本発明を実施又は試験するために使用することが可能であるが、代表的な組成物及び方法を本明細書に記載する。
【0019】
用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドを形成するためにペプチド結合によって結合された少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。50個のアミノ酸未満の小さなポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合がある。ポリペプチドはまた、「タンパク質」とも呼ばれる場合がある。
【0020】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖−リン酸骨格又は他の等価な共有結合化学によって共有結合されたヌクレオチド鎖を含む分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型的な例である。
【0021】
用語「相補配列」は、第1の単離ポリヌクレオチド配列と逆平行であり、第1のポリヌクレオチド配列におけるヌクレオチドに対して相補的なヌクレオチドを含む第2の単離ポリヌクレオチド配列を意味する。典型的には、このような「相補配列」は、適切な条件下で第1の単離ポリヌクレオチド配列と組み合わされたときに、二本鎖DNA又は二本鎖RNAのような二本鎖のポリヌクレオチド分子を形成することができる。
【0022】
用語「ベクター」は、生体系内で複製され得る、又はこうした系の間で移動可能である、ポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的に、生体系においてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するように機能する複製起点、ポリアデニル化信号又は選択マーカーのような因子を含有する。このような生体系の例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製することのできる生物学的構成成分を利用して再構成された生体系を挙げることができる。ベクターを含むポリヌクレオチドは、DNA又はRNA分子又はこれらのハイブリッドであってよい。
【0023】
用語「発現ベクター」は、生体系又は再構成された生体系において、その発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされたペプチドの翻訳を命令するために利用することができるベクターを意味する。
【0024】
本明細書で使用される「血液脳関門」又は「BBB」とは、脳毛細管内皮原形質膜内の密着結合によって形成され、60Daの分子量を有する尿素ほどの小さい分子でも、分子の脳の中への輸送を制限する非常に密着した関門を作り出す、抹消循環と脳及び脊髄との間の関門を指す。脳内の血液脳関門、脊髄内の血液−脊髄関門、及び網膜内の血液−網膜関門は、中枢神経系(CNS)内の連続する毛細管関門であり、総じて血液脳関門と称される。
【0025】
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する分子を指し、二量体、三量体及び多量体抗体、並びにキメラ、ヒト化及び完全ヒト抗体を包含する。また、抗体は、全抗体、又は少なくともその抗原結合機能を保持しているフラグメント等の抗体分子の機能フラグメントであってもよく、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、scFv、dsFv、及び二重特異性抗体を含む。例えば、抗体フラグメントは、タンパク質分解酵素を用いて得ることができる(例えば、全抗体はパパインで消化されてFabフラグメントを生成し、ペプシン処理によりF(ab’)2フラグメントが生成される)。種々の抗体を調製及び使用する技術は当該技術分野において周知である(Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY 1987〜2001;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY,1989;Harlow and Lane、Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY,1989;Colliganら編、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY 1994〜2001;Colliganら、Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,1997〜2001;Kohlerら、Nature 256:495〜497,1975;US4,816,567,Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.86:10029〜10033,1989)。例えば、任意の非ヒト配列を欠いている完全なヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリントランスジェニックマウスから、又はファージディスプレイライブラリから調製され得る(Lonbergら、Nature 368:856〜859,1994;Fishwildら、Nature Biotech.14:845〜851,1996;Mendezら、Nature Genetics 15:146〜156,1997;Knappikら、J.Mol.Biol.296:57〜86,2000;Krebsら、J.Immunol.Meth.265:67〜84,2001)。
【0026】
抗体分子又は調製物は、それがこの抗原に、第2の非同一抗原と比較して、より高い親和性をもって、及び非特異的な態様とは対照的に特異的な態様で、結合する場合に、所与の抗原を「特異的に結合する」という。別の言い方をすれば、抗体分子又は調製物の「特異的な結合」を使用して、2つの異なるポリペプチドを区別することができる。
【0027】
本明細書で使用される用語「インスリン様成長因子1」又は「IGF1R」とは、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するヒトIGF1R(GenBank受託番号NP_000866)を指す。IGF1Rプロ−ポリペプチドは、α鎖及びβ鎖に切断され、成熟タンパク質を形成する。α鎖は、配列番号27のアミノ酸残基31〜740を有し、β鎖は、配列番号27のアミノ酸残基741〜1367を有する。本明細書で使用される「可溶性IGF1R」又は「sIGF1R」は、IGF1Rの細胞外ドメイン(配列番号27のアミノ酸31〜932)を指す。可溶性IGF1Rは、未切断プロ−ポリペプチドの細胞外ドメイン、又は成熟IGF1Rの細胞外ドメイン(α鎖を形成するアミノ酸残基31〜740、及びβ鎖の細胞外部分を形成するアミノ酸残基741〜932)であってもよい。
【0028】
本明細書で使用される用語「コンジュゲート」とは、配列番号1〜13に示されるアミノ酸配列を有する本発明のペプチド及び治療薬を含むキメラ分子を指す。用語「コンジュゲートされる」又は「コンジュゲートする」は、治療薬(複数可)及び本発明のペプチドが、例えば、共有結合的化学結合、ファンデルワールス若しくは疎水性相互作用等の物理的力、封入、包埋、又はこれらの組み合わせによって、物理的に連結されることを意味する。治療薬(複数可)及び本発明のペプチドは、周知の化学合成法(例えば、米国特許出願第US2010/0028370号を参照)を使用して、アルコール、酸、カルボニル基、チオール基、又はアミン基を通した化学結合によって連結され得る。治療剤は、リンカーによって本発明のペプチドに結合され得る。代表的なリンカーは、Gly3SerGly3Ser(配列番号28)又はGly4SerGly4SerGly4Ser(配列番号29)等のグリシン豊富リンカーである。治療薬及び本発明のペプチドが共有結合又はペプチドを介してコンジュゲートされ、治療薬がポリペプチドである場合、全コンジュゲートは「融合タンパク質」である。よって、用語「融合タンパク質」とは、単一アミノ酸配列において通常一緒に融合しない2つ(以上)の異種ポリペプチドで構成されるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、一般に、いずれかの組み換え核酸法を使用して、すなわち、組み換え遺伝子融合生成物の転写及び翻訳の結果として、調製され得、その融合体は、本発明のポリペプチドをコードするセグメント、及び異種ポリペプチドをコードするセグメントを含む。
【0029】
本明細書で使用される用語「治療薬」とは、対象に所望の治療効果を誘発するように投与される分子を指す。対象は、哺乳類又は霊長類を含む、ヒト又はヒト以外の動物である。代表的な治療薬は、タンパク質、抗体、ペプチド、小分子、又はポリヌクレオチドである。治療薬は、また、意図される治療効果が、例えば癌細胞の死滅である場合、毒素又は放射性同位体であってもよい。
【0030】
本発明は、IGF1Rに結合する単離されたポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、単離された宿主細胞、ポリヌクレオチドの発現から入手可能なポリペプチド、本発明のポリペプチドの発現方法、並びに本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの使用方法を提供する。本発明のポリペプチドは、IGF1Rに結合し、内皮細胞を横切って経細胞輸送される。IFG1Rは、血液脳関門(BBB)内の内皮細胞上で発現するため、本発明のポリペプチドは、BBBを横切って治療薬を送達するための手段を提供することができる。
【0031】
本発明の一態様は、配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドを含む単離されたポリペプチドである。
【0032】
本発明のポリペプチドは、自動ペプチド合成機で固相ペプチド合成などの化学合成により生成されてよい。あるいは、本発明のポリペプチドは、これらのペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドから、網状赤血球溶血液に基づく発現システム、小麦胚抽出物に基づく発現システム、及び大腸菌抽出物に基づく発現システムなどのセルフリー発現システムを使用することによって得ることができる。本発明のポリペプチドはまた、容易に単離されるアフィニティ標識されたポリペプチドの組み換え発現などの当該技術分野において周知の技術により、本発明の核酸配列を内包する細胞から発現及び単離することによって得ることもできる。当業者は、本発明のポリペプチドを得るための他の技術を認識するであろう。
【0033】
本発明の別の態様は、第2のポリペプチドと融合する配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドを含む単離された融合タンパク質であるそのような第2のポリペプチドは、リーダー配列又は分泌シグナル配列であってもよい。そのような第2のポリペプチドは、本発明のペプチドに融合される治療薬であってもよい。治療薬及び本発明のペプチドは、様々な方式で相互に融合され得る。本発明のペプチドのC末端又はN末端は、アミド結合又はペプチドリンカーを介して、それぞれ、治療薬のN末端又はC末端に直接連結され得る。治療薬は、当該技術分野において周知の化学架橋を使用して、本発明のペプチドに連結され得る。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドである。
【0035】
本発明のポリヌクレオチドは、自動ポリヌクレオチドシンセサイザーでの固相ポリヌクレオチド合成のような化学合成により生成されてよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、PCRに基づく複製、ベクターに基づく複製、又は制限酵素に基づくDNA操作技術などの他の技術によって生成されてよい。所与の既知の配列のポリヌクレオチドを生成する又は得るための技術は、当該技術分野において周知である。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドはまた、転写されているが翻訳されていない配列、終結シグナル、リボソーム結合部位、mRNA安定化配列、イントロン、及びポリアデニル化シグナルなどの、少なくとも1つの非コード配列を含んでもよい。ポリヌクレオチド配列はまた、追加のアミノ酸をコードする追加の配列を含んでもよい。これらの追加のポリヌクレオチド配列は、例えば、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(Gentzら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86:821〜284,1989)又はHAペプチドタグ(Wilsonら,Cell 37:767〜778,1984)などのマーカー若しくはタグ配列をコードし得、これらは融合ポリペプチドの精製を促進する。代表的なポリヌクレオチドは、配列番号14〜26に示される配列を有するポリヌクレオチドである。
【0037】
本発明の別の実施形態は、配列番号14〜26に示される配列を有する単離されたポリヌクレオチドを含むベクターである。本発明のベクターは、ポリヌクレオチドを維持し、ポリヌクレオチドを複製し、又は再構成された生体系を包含する生体系において本発明のベクターによりコードされたポリペプチドの発現を促進するために有用である。ベクターは、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入因子、酵母染色体因子、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、家禽ジフテリアウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコロナウイルス及びレトロウイルスに由来するベクター、並びにコスミド及びファージミドなどのこれらの組み合わせに由来するベクターのような、染色体由来、エピソーム由来及びウイルス由来のものであってよい。
【0038】
本発明のベクターは、アジュバント、脂質、緩衝液又は特定用途に適当なその他の賦形剤とともに、微小粒子中に処方され得る。
【0039】
本発明の一実施形態では、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターは典型的に、このようなベクターによってコードされたポリペプチドの発現を制御し、調整し、引き起こし又は許容することができる核酸配列因子を含む。このような因子は、転写エンハンサー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、及び所与の発現システムにおけるコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含んでよい。このような発現システムは、当該技術分野において周知の、細胞に基づく、又は無細胞のシステムであってよい。コードされたポリペプチドの発現に使用するのに好適な核酸配列因子及び親ベクター配列もまた、周知である。本発明のポリペプチドの発現に有用な代表的なプラスミド由来発現ベクターは、大腸菌起源の複製物、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、バクテリオファージT7プロモーター、pelBシグナル配列、及びT7終結配列を含む。
【0040】
本発明の他の実施形態は、本発明のベクターを含む単離宿主細胞である。代表的な宿主細胞の例としては、古細菌細胞、細菌細胞、例えば連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌、ストレプトミセス、シアノバクテリア、枯草菌、及び黄色ブドウ球菌、真菌細胞、例えばクリベロマイセス(Kluveromyces)、サッカロミセス、担子菌(Basidomycete)、カンジダアルビカンス、又はアスペルギルス、昆虫細胞、例えばドロソフィラS2及びスポドプテラSf9、動物細胞、例えばCHO、COS,HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV−1、ボーズメラノーマ(Bowes melanoma)、及び骨髄腫、並びに植物細胞、例えば裸子植物又は被子植物細胞が挙げられる。本発明の方法における宿主細胞は、個々の細胞として提供されても細胞群として提供されてもよい。細胞群は、単離された培養された細胞群、又は組織などのマトリックス中に存在する細胞を含んでよい。
【0041】
ベクターなどのポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は、当業者には周知の方法によって行うことができる(Davisら、Basic Methods in Molecular Biology,2nd ed.,Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001)。これらの方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、及び感染が挙げられる。
【0042】
基質特異性、安定性、溶解性及びこれらに類するものを高めるなどの目的のために本発明のポリペプチド又はフラグメントの構造を改変することが可能である。例えば、アミノ酸置換、欠失、又は添加によるなどしてアミノ酸配列が変更されている修飾ポリペプチドを生成することができる。ロイシンとイソロイシン若しくはバリン、アスパラギン酸塩とグルタミン酸塩、トレオニンとセリンの隔離置換、又はアミノ酸と構造的に関連したアミノ酸の類似的置換(即ち、保存的変異)は、全てではないが場合によっては、生じた分子の生物学的活性に大きな影響を与えるものではないと想到される。保存的置換とは、側鎖で関連したアミノ酸ファミリー内で起こる置換である。遺伝的に符号化されたアミノ酸は、(1)酸性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩)、(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び(4)電荷を持たない極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)、の4つのファミリーに分類され得る。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸として連帯的に分類される場合もある。代替的に、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)脂肪族性(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)(セリン及びスレオニンは、所望により脂肪族ヒドロキシル基として別にグループ化される)、(4)芳香族性(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、(5)アミド性(アスパラギン、グルタミン)、並びに(6)硫黄含有性(システイン及びメチオニン)にグループ化することができる(Stryer(ed.),Biochemistry,2nd ed,WH Freeman and Co.,1981)。ポリペプチド又はそのフラグメントのアミノ酸配列の変化が機能相同体をもたらすかどうかは、本明細書に記載のアッセイを用いて、修飾されていないポリペプチド又はフラグメントと同様のやり方で、この修飾ポリペプチド又はフラグメントが反応を生みだす能力を評価することによって、容易に判定され得る。1超の置換が起こったペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を、同様のやり方で容易に試験することができる。
【0043】
本発明のポリペプチドはまた、製薬上許容できるキャリア又は希釈剤中へと処方することができる。例えば、0.4%生理食塩水、又は0.3%グリセリンなどの、種々の水性キャリアを援用することができる。これらの溶液は滅菌され、粒子状物質を含まない。これらの溶液は、従来の、周知である殺菌技術(例えば、ろ過)などにより殺菌される。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤のような製薬上許容できる補助物質を、生理学的状態に近づけるために必要に応じて含有してもよい。そのような薬学的製剤中の本発明のポリペプチドの濃度は、幅広く変化させることができ、すなわち、約0.5重量%未満から、通常は約1重量%又は少なくとも約1重量%から15又は20重量%程度まで変化させることができ、主に選択された投与の特定の様式に応じて流体の容積、粘度、及び他の要因に基づいて選択される。適切な治療に有効な投与量は、当業者にとっては直ちに決定することができる。決定された用量は、必要ならば、治療期間中に医師又は他の当業者(例えば、看護師、獣医、又は獣医学技術者)によって必要に応じて選択された適切な時間間隔で反復されてもよい。
【0044】
本発明のポリペプチドは、保存のために凍結乾燥することができ、使用前に好適なキャリアで再構成できる。この技術は、従来のタンパク質調製で有効であることが示されている。凍結乾燥及び再構成技術は、当該技術分野において周知である。
【0045】
本発明の別の実施形態は、本発明の宿主細胞を準備する工程と、本発明の少なくとも1つのポリペプチドの発現に十分な条件下でこの宿主細胞を培養する工程と、を含む、ポリペプチドの発現方法である。
【0046】
宿主細胞は、所与のタイプの宿主細胞を維持又は増殖させるのに好適な、及びポリペプチドを発現させるために十分なあらゆる条件下で培養され得る。ポリペプチドの発現に十分な培養条件、培地、及び関連する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、多くの哺乳動物細胞タイプは、適切に緩衝されたDMEM培地を用いて37℃において好気的に培養することができ、一方、細菌、酵母及び他の細胞タイプは、LB培地中適切な雰囲気条件下で37℃にて培養されてよい。
【0047】
本発明の方法では、ポリペプチドの発現は、種々の周知の方法を使用して確認することができる。例えば、ポリペプチドの発現は、例えば、FACS若しくは免疫蛍光技術を使用する抗体等の検出試薬を使用して、又はSDS−PAGE若しくはHPLCを使用して確認することができる。
【0048】
本発明の別の態様は、
a.治療薬を、配列番号1、2、4、8、又は12に示される配列を有するポリペプチドを含むポリペプチドにコンジュゲートして、コンジュゲートを形成する工程と、
b.コンジュゲートを内皮細胞と接触させる工程と、
c.内皮細胞を横切って送達されたコンジュゲートの量を測定する工程と、を含む、内皮細胞を横切って治療薬を送達するための方法である。
【0049】
本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドのIGF1Rへの結合を通して内皮細胞を横切って治療薬の送達を容易にする。ペプチドは、コンジュゲートされた治療薬が本発明のポリペプチドのIGF1Rへの結合に干渉しないように選択される。本発明は、経細胞輸送活性を失うことなく、約100kD(921個のアミノ酸)の分子量を有するタンパク質の本発明のポリペプチドへのコンジュゲートを説明する。同程度の大きさの他のポリペプチドも、本発明のポリペプチドに正常にコンジュゲートされ、内皮細胞を横切って脳に送達される可能性が高い。
【0050】
内皮細胞を横切るコンジュゲートの送達は、周知の生体外又は生体内方法を使用して測定され得る。代表的な生体外測定は、内皮細胞の分極された単層を使用し、例えば、抗体をコンジュゲートに対して使用するコンジュゲートの経細胞輸送を測定することにより行うことができる。生体内測定は、対象において、例えば、放射能コンジュゲートを使用し、投与後の脳におけるそれらの分布を測定することにより行うことができる。生体外方法と生体内方法との間に良好な相関が観察されている。例えば、Perrierらは、星状細胞とラットの脳内皮細胞の共培養物を使用して、一連の化合物の透過係数とそれらの対応する生体内ゲッ齒類血液脳移動係数との間の良好な相関(R=0.94)を示した(Perrierら,Brain Res.1150:1〜13,2007)。
【0051】
ここで、以下の具体的及び非限定的な実施例を参照して、本発明を説明する。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
IGF1R結合ペプチドの識別
ファージパニング
ランダムペプチドを示すpIXファージライブラリは、米国特許出願第US2010/0021477号に記載される方法に従い生成され、ヒトIGF1R結合ペプチドの供給源として使用された。このライブラリは、3回にわたり、カルボキシ基末端ヘキサヒスチジンタグ(R&D Systems,Minneapolis,MN)を有する精製された可溶性IGF1R(sIGF1R)のビオチン化形態に対して溶液中でパニングされた。sIGF1Rのビオチン化は、EZ−Link No−Weigh Sulfo−NHS−LC−Biotinマイクロチューブ(Pierce,Rockford,IL)を使用して行われた。sIGF1Rの大きさが大きいため(〜330kDa)、Dynal磁気ビーズより〜10倍大きい結合能により、1回目の選択にTetralinkアビジンビーズが使用された。
【0053】
パニングからの合計384の個別のファージ溶菌液は、固相ファージELISAにおいて、sIGF1Rに対する結合特異性について試験された。簡潔に、100μL/ウェルの5μg/mLのsIGF1R(R&D Systems,Minneapolis,MN)をBlack Maxisorpプレート(Nunc,Rochester,NY)に結合し、25μLのファージ溶菌液を添加し、抗M13−HRP抗体(EMD Biosciences,Gibbstown,NJ)及びPOD基質(Roche,Indianapolis,IN)を使用して反応を検出し、TEKANプレート読み取り装置を使用してシグナルを検出した。BBBを横切らないと認められた非関連タンパク質は、陰性対照として使用された。陽性溶菌液は、陰性対照の背景より3倍上であったsIGF1Rの特異的シグナルによりクローンとして定義された。固有のペプチド配列を有する合計13のクローンが得られ、sIGF1Rに結合することが確認された(表1)。これらの13のクローンから、3つ(クローン5、13及び16)をインスリン受容体と交差反応させた。
【0054】
クローン5〜14、16及び17からのペプチドは、ペプチド−アルカリホスファターゼ−His6(ペプチド−AP)融合タンパク質として、内部でクローン化されたクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を有する修飾されたpET20b+ベクターの中にインフレームクローン化された。得られたペプチド−AP融合物を細菌の中で発現させ、製造者の指示に従い、Ni−NTA(EMD Biosciences,Gibbstown,NJ)を使用して精製した。使用されたアルカリホスファターゼのアミノ酸配列は、配列番号30に示される。
【0055】
【表1】
【0056】
精製されたペプチド−AP融合タンパク質のsIGF1Rへの結合は、固定されたsIGF1Rに対してELISAを使用して評価された。簡潔に、各ペプチド−AP融合発現ベクターを用いて変換された細菌を終夜成長させ、翌日、培養物を4,500rpm、4℃で遠心分離により清澄した。上清を回収し、ELISAプレート上に固定された2μg/mLのsIGF1Rへの結合について、75μLの各上清を評価した。結合されたペプチドは、製造者の推奨に従いAttophos基質(Roche,Indianapolis,IN)を使用して検出され、Molecular Devices M5プレート読み取り装置を使用して読み取られた。ペプチドクローン7及び10との融合物は、うまく発現しなかった。他の全てのペプチド−AP融合物は、sIGF1Rへの結合活性を示した(図2)。
【0057】
【表2】
【0058】
(実施例2)
IGF1R結合ペプチドの特徴付け
識別されたIFG1R結合ペプチドは、PG−ペプチド融合物を生成するために、ライゲーション非依存クローニング部位(LIC)を有する修飾されたpET17bベクター(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)のタンパク質G IgGドメイン(PG)のC末端にインフレームクローン化された。タンパク質GのIgG結合ドメインは、安定しており、よって、細菌溶菌液から融合タンパク質を容易に精製することができた。使用されたタンパク質G IgGドメインのアミノ酸配列は、配列番号31に示される。1mMのIPTGの導入により、PG−ペプチド融合物を細菌の中で発現させ、16,000g、4℃で20分間遠心分離することにより清澄された細菌溶菌液からのIgGセファロースビーズ(GE Healthcare Life Sciences,Piscataway,NJ)を使用して精製した。
【0059】
sIGF1RにおけるPG−ペプチド融合物の相対的結合親和性は、ELISAを使用して測定された。一部位結合方程式を用いたGraphPad Prism 4ソフトウェアを使用して、Kdを判定した。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS(−/−))中の100μLの2μg/mL sIGF1R(R&D Systems,Minneapolis,MN)が、終夜、4℃で、96ウェルBlack Maxisorpプレート(Nunc,Rochester,NY)上に被覆された。プレートをTBSTで洗浄し、ウェルを300rpmで振盪させながら、室温で1時間、200μL/ウェルStarting Block T20(TBS)(Pierce,Rockford,IL)で遮断した。75μL/ウェルの精製された、40μMの開始濃度で連続希釈されたPG−ペプチド融合物を、ウェルに添加し、300rpmで混合しながら、室温で1時間インキュベートし、Starting Block T20を用いて容量を最大100μLとした。プレートをTBSTで3X洗浄した後、100μL/ウェルのペルオキシダーゼ標識されたウサギ抗体(1:5000)(Rockland,Gilbertsville,PA)でプローブし、洗浄し、100μL/ウェルのPOD基質(Roche,Indianapolis,IN)を使用してシグナルを検出した。Molecular Devices M5プレート読み取り装置を使用して、化学発光が検出された。
【0060】
競合アッセイにおいて、インスリン様成長因子1(IGF−1)(R&D Systems,Minneapolis,MN)が、400nMの最終濃度で、最大100μLの容量とするために使用されたStarting Block T20に添加された。
【0061】
PG−ペプチド融合物の特徴付けを表2に要約する。大部分のペプチドは、低いμM範囲(0.75〜8μM)の相対的親和性で結合した。ペプチドクローン17を用いた融合タンパク質は、結合曲線がベル形状であったという点で、その結合プロファイルにおいて固有であった。これは、インスリン受容体に結合するインスリン、及びIFG1Rに結合するIGF−1と類似し、リガンドは、高濃度のリガンドで結合し、負の協同性プロファイルを有するとき、受容体の構造変化を誘発する。IGF−1の競合研究の結果を表2に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例3)
生体外BBBモデル
選択IGF1R結合ペプチドは、生体外血液脳関門モデルであるラット脳微小血管内皮細胞モデルにおいて更に特徴付けされた。
【0064】
ラット脳毛細管内皮細胞は、記載されるように調製された(Perriereら,J.Neurochem.93:279〜289,2005)。簡潔に、6〜8週齢の雄のスプラーグドーリーラットの脳を、3MMクロマトグラフィー紙上に巻き付け、髄膜を除去し、矢状に切断し、皮質を残して白質を切断し、次いで、これを十分に刻んだ。刻んだ髄膜を、最終濃度の39単位/mlのDNase I(Worthington,Lakewood,NJ)及び0.7mg/mLコラゲナーゼ2型(Worthington,Lakewood,NJ)で補足した20mLのDMEMと共に50mLのポリプロピレン円錘チューブに移し、1.25時間、穏やかに混合しながら、37℃でインキュベートした。短時間の遠心分離後、得られたペレットをDMEM中の20mLの20% BSA(Sigma,St.Louis,MO)に再懸濁し、遠心分離し、微小血管富化ペレットを単離し、37℃で1時間、39単位/mLのDNase I及び1mg/mLのコラゲナーゼ/ディスパーゼ(Roche,Indianapolis,IN)で補足された20mLのDMEMで2回目の消化を行った。消化物を短時間遠心分離し、得られた細胞ペレットを2mLのDMEMに再懸濁し、続いて33%の連続Percoll勾配の上部に層状に重ね、遠心分離し、富化微小血管分画を除去し、2回目の遠心分離を短時間行った。細胞ペレットを10mLの完全なラットの脳微小血管内皮細胞成長培地(DMEM、20%血漿由来血清(PDS)、100μg/mLのヘパリン、2mMのL−グルタミン、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.25μg/mLのアムホテリシン)中に再懸濁し、37℃、5%のCO2で4時間、10cmの組織培養皿上で平板培養した。4時間後、付着しなかった残りの細胞をピペットで取り出し、トリパンブルーを使用して、血球計数器で数えた。細胞は、6×105細胞/mL、ウェル当り500μLの密度で、400μg/mLのコラーゲンIV型(Sigma,St.Louis,MO)及び100μg/mLのフィブロネクチン(Sigma,St.Louis,MO)で処理された、Transwell(0.4μmの孔径、直径1.12cm,Corning,Acton,MA)の上部チャンバの中に平板培養された。1mLの成長培地は、底部チャンバの中に設置された。両方のチャンバは、4μg/mLのピュロマイシン(Clontech,Mountain View,CA)で補足され、プレートは、37℃、5%のCO2で終夜インキュベートされた。翌日、4μg/mLのピュロマイシンを含む新しい完全な培養培地を用いて培地が交換され、細胞は、終夜、インキュベータの中に再び設置された。翌日、完全な培養培地を用いて培地が交換され、2日後に再び交換された。培養物は、100%集密に達するまで肉眼で監視され、播種後〜6〜7日であった。開発された生体外BBBモデルは、高い経内皮電気抵抗(>100オーム−cm2)(Millicell−ERS(Millipore,Billercia,MA)を使用して測定された)、及び非常に低いNa−フルオレセイン透過性(約1〜5×10-6cm/s)を有した。
【0065】
25μgの精製されたペプチド−AP融合物が生体外BBBモデルの上部チャンバに添加され、経細胞輸送されたペプチド−AP融合物が、ELISAを使用して、底部チャンバで、15分及び30分の時間点で検出された。簡潔に、75μLの各試料は、5μg/mLのマウスモノクローナル抗菌AP抗体(Sigma,St.Louis,MO)で被覆されたプレートに移された。プレートを1時間インキュベートし、洗浄し、製造者の推奨に従い、Attophos基質(Roche,Indianapolis,IN)を用いてシグナルを発生させ、440nmの励起及び550nmの放射で、Molecular Devices M5プレート読み取り装置を使用して読み取った。結果を表2に示す。
【0066】
以上、本発明の全容を述べたが、付属の特許請求の範囲の趣旨又は範囲を逸脱することなく本発明に多くの変更及び改変をなし得ることは、当業者にとって明白であろう。

本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドを含む、単離されたポリペプチド。
[2]
配列番号1〜13に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチド。
[3]
配列番号14〜26に示される配列、又はその相補配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチド。
[4]
配列番号14〜26に示される配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
[5]
前記ベクターが発現ベクターである、上記[4]に記載のベクター。
[6]
上記[4]に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
[7]
第2のポリペプチドに融合された配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドを含む、単離された融合タンパク質。
[8]
前記第2のポリペプチドが、免疫グロブリン又はそのフラグメントをコードする、上記[7]に記載の融合タンパク質。
[9]
ポリペプチドを発現させる方法であって、
a.上記[6]に記載の宿主細胞を準備する工程と、
b.配列番号1〜13に示される配列を有するポリペプチドの発現に十分な条件下で、前記宿主細胞を培養する工程と、を含む、方法。
[10]
内皮細胞を横切って治療薬を送達するための方法であって、
a.前記治療薬を、配列番号1、2、4、8、又は12に示される配列を有するポリペプチドを含むポリペプチドにコンジュゲートして、コンジュゲートを形成する工程と、
b.前記コンジュゲートを前記内皮細胞と接触させる工程と、
c.前記内皮細胞を横切って送達された前記コンジュゲートの量を測定する工程と、を含む、方法。
[11]
前記内皮細胞が血液脳関門を形成する、上記[10]に記載の方法。

図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]