特許第5864558号(P5864558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864558
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】飲料カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/40 20060101AFI20160204BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   A47J31/40 107
   A47J31/06 320
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-512986(P2013-512986)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-529119(P2013-529119A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】GB2011000837
(87)【国際公開番号】WO2011151626
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】1009181.7
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501175214
【氏名又は名称】クラフト・フーヅ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS R & D, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テュレイ マッセイ
(72)【発明者】
【氏名】イアン フィスク
(72)【発明者】
【氏名】シアン ヘンソン
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−028892(JP,U)
【文献】 実開昭52−141084(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第01994831(EP,A1)
【文献】 特開昭54−143542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/40
31/06
A23L 1/36−1/48
2/00−2/40
A23B 7/16
B65D 85/816
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料調製機で使用するための飲料カートリッジであって、実質的に水不透過性材料から作られ、水性媒体を前記飲料カートリッジの中に導入するための入口と、前記水性媒体および前記飲料カートリッジ内に収容された1以上の飲料原料から生成された飲料を排出するための出口とを備え、
前記1以上の飲料原料が、前記水性媒体中で実質的に不溶性であり使用時に前記飲料と共に前記飲料カートリッジから供給される1以上の個別食用構成要素を含み、前記個別食用構成要素は1以上のコーティング層を備えることを特徴とする、飲料カートリッジ。
【請求項2】
前記個別食用構成要素は、前記出口を通過するように変形可能であることを特徴とする請求項1に記載の飲料カートリッジ。
【請求項3】
前記個別食用構成要素は、再構成されたフルーツ片、ソフトキャンディ、フルーツトローチ、または風味付けされたナゲットを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飲料カートリッジ。
【請求項4】
前記風味付けされたナゲットは、親水コロイドおよび風味付けされた原料を含み、前記親水コロイドは好ましくは、ゼラチン、カラギーナン、アルギナート、アガロース、ジェランガム、ペクチン、セルロース誘導体、またはこれらの2つ以上の組合せから選択されることを特徴とする請求項3に記載の飲料カートリッジ。
【請求項5】
前記個別食用構成要素は、硬いキャラメル、ナッツ、破砕ナッツ、硬いキャンディ、押出しチョコレート、ライスクリスピー、シリアル、ビスケット片、コショウの実、破砕シナモンスティック、香辛料、またはこれらの2つ以上の組合せから好ましくは作られる変形可能ではない部分を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料カートリッジ。
【請求項6】
少なくとも1つの前記コーティング層は水不溶性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の飲料カートリッジ。
【請求項7】
前記水不溶性層は、アルギナート、好ましくはカルシウムアルギナートから作られることを特徴とする請求項に記載の飲料カートリッジ。
【請求項8】
前記個別食用構成要素は、飲料供給機で使用する前に前記飲料カートリッジ内の液体飲料構成物中に保存されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の飲料カートリッジ。
【請求項9】
少なくとも最も外側の前記コーティング層は流体中で溶解することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の飲料カートリッジ。
【請求項10】
前記個別食用構成要素は、0.25から10mmの最大平均径を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の飲料カートリッジ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の飲料カートリッジ内で使用するための個別食用構成要素を生成する方法であって、
味付けされた原料をコーティング溶液中で溶解させ、
その後、一定分量の前記風味付けされた溶解原料を、カルシウムイオンを含む溶液と接触させ、それによって前記コーティング溶液が前記カルシウムイオンとの接触で固体化して前記個別食用構成要素が作られ、さらに
前記個別食用構成要素を飲料カートリッジの中に移すことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記方法は、前記個別食用構成要素をすすぐステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記個別食用構成要素は、前記飲料カートリッジ内の水溶液の中に移されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
動作サイクル中に、請求項1〜10のいずれか一項に記載の飲料カートリッジから飲料を供給する方法であって、水性媒体を前記飲料カートリッジ中に通して前記個別食用構成要素を前記出口から供給し、入れ物に入れるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の飲料カートリッジと、前記飲料カートリッジを受け入れるように、かつ水性飲料媒体を加えることによって前記飲料カートリッジから飲料を供給するように適合された飲料供給機とを備えることを特徴とする飲料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料調製機で使用するための飲料カートリッジに関し、特に、個別の食用構成要素を含む飲料を作るための原料を備えるカートリッジに関する。これらの構成要素は、飲料に新規の舌触りおよび食感を与えることによって、最終飲料を増補する。
【背景技術】
【0002】
飲料に食用構成要素を含めることが知られている。例えば、ホットチョコレートをカフェまたはレストランで買うと、ホットチョコレートにマシュマロが一般に付け加えられる。マシュマロは、その飲料に別の次元の舌触りおよび食感を与える。そのカフェスタイルの飲み物を家庭で飲むために、2小袋を含む家庭飲料キットを提供することが知られており、その第1の小袋には、飲料を作るための飲料構成物が収容され、第2の小袋には、飲料の上に振りかけるためのある量のマシュマロが含まれる。
【0003】
飲料カートリッジは当技術分野でよく知られている。多くの現代の国内の飲料機は、個々の飲料の一杯分を直接飲料入れ物の中に供給し、その飲料を、飲料原料の大容量供給源から、またはポッド、パッドまたはカートリッジなどの個別の飲料原料の包装容器から導出する。以下の明細書では、一般用語のカートリッジでこのような包装容器に言及する。このようなカートリッジを使用する機械では、清掃の必要性が低減し、ユーザがコーヒー、茶、ホットチョコレートなどの飲料を選択できるようになり得る。1つのタイプのカートリッジの一例が記載されている(例えば、特許文献1参照)。飲料は、熱いまたは冷たい水性媒体に飲料原料を煎出、混合、溶解または懸濁することにより作られる。例えばコーヒー飲料では、加熱された水が圧力を受けてカートリッジの中に強制的に通されて、その中に収容されているぎっしり詰まったコーヒーかすから芳香成分が抽出される。この場合、コーヒー飲料は、焙煎され挽かれたコーヒーから作られ(例えば特許文献2参照)、この焙煎され挽かれたコーヒーはカートリッジ内に保持され、それ自体は最終飲料の一部を構成しない。
【0004】
これらのオンデマンド飲料カートリッジ内の原料として使用される飲料構成物材料は通常、その可溶性および/または抽出性を増すために粒子または凝集粉末になっている。他の飲料構成物には、液体媒体の形の原料が含まれることがあり、この場合カートリッジ原料は、処理の必要性による厳しい要件を満足する必要がある。例えば原料は、包装容器内低温殺菌時に安定であることが望ましい。さらに、カートリッジ内の原料を使用するには、消費期限が長いことが要求される。
【0005】
したがって、飲料に別の次元の舌触りおよび食感を与えることができる添加物を含有するオンデマンド飲料への要望がある。しかし、知られている飲料添加物は、いくつかの理由のためにカートリッジ内での使用に適していない。特に、飲料中で識別可能であるためには、添加物は十分な大きさであることが必要である。しかし、例えばマシュマロは、従来のカートリッジ出口を通して供給するにはあまりに大きい。カートリッジ出口は、ある内部圧力をカートリッジに与えて固体原料の溶解または抽出を促進するために、通常は小さい。他の問題としては、これらの添加物が、同じカートリッジ内に液体飲料構成物が含まれる場合などの特に湿気を含む環境の存在下では、長期保存のカートリッジに適さないことが含まれる。したがって、ラッテ、カプチーノ、ホットチョコレート飲料を含む特製品に付加的な特性を持たせることができる、保存安定性があり、好ましくは熱安定性のある構成要素が必要とされている。
【0006】
液体、軟質または粒状の中心を取り囲む、ゼラチンなしの親水コロイド外被を備えるカプセル化食品製品が記載されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3で企図されている主要な食品製品は、シャンパン風味の炭酸菓子である。特許文献3には、飲料カートリッジから供給する原料が開示されていない。
【0007】
したがって、包み込まれた原料を食材内に入れて、例えば菓子を作り、この場合には外層で賞味期限を改善できること、あるいは制御された風味の放出を行うことが知られているが、別の層を使用することは、飲料添加物に関する上記の問題への取組みには応用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1440903号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/079639号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第1326500号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、飲料を調製する際に使用するための改善されたカートリッジ、あるいは少なくとも、従来技術に伴う問題の一部を軽減する、または従来技術の有用な代替方法を可能にするカートリッジへの要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、飲料調製機で使用するための飲料カートリッジを提供し、このカートリッジは、実質的に水不透過性材料から作られ、水性媒体をカートリッジの中に導入するための入口と、水性媒体およびカートリッジ内に収容された1以上の飲料原料から生成された飲料を排出するための出口とを備え、1以上の飲料原料は、水性媒体中で実質的に不溶性であり使用時に飲料と共にカートリッジから供給される1以上の個別食用構成要素を含む。
【0011】
広範囲にわたる研究の後、本発明者らは、飲料中に供給するための個別食用構成要素を中に有する飲料カートリッジを提供することが可能であることを発見した。これらの構成要素は、飲料を構成する水性媒体に実質的に不溶性である。水性媒体で溶解または抽出可能であり、従来の飲料カートリッジ内で使用することが知られている他の飲料原料もまた、1以上の個別食用構成要素と共にカートリッジ内に含めることができる。
【0012】
すなわち、本発明者らは、任意選択で水性環境中に保存され、飲料が作られるときにカートリッジから供給される、個別食用構成要素が中に入った飲料カートリッジを提供することが可能であることを発見した。有利なことに、個別食用構成要素は、それが飲料カートリッジ内に保存されていたときと同じ形で最終飲料の一部を構成することができる。あるいは、個別食用構成要素は、カートリッジから放出された後に、水を吸収した膨張形状をとることもできる。
【0013】
以下の節では、本発明の異なる態様/実施形態をより詳細に定義する。そのように定義されたそれぞれの態様/実施形態は、他の任意の1以上の態様/実施形態と組み合わせることが、それとは反対のことが明示されていない限り可能である。特に、好ましい、または有利であると示された任意の特徴を、好ましい、または有利であると示された他の任意の1以上の特徴と組み合わせることができる。
【0014】
「腰のある構成要素」
本発明者らは、飲料供給機から供給される飲料に付随物として食用構成要素を含めることを妨げる主要な障害は、その構成要素がカートリッジの小さな開口を通過するのが困難なことであることを見出した。本発明者らによって見出された1つの解決策は、カートリッジを出るときの変形にもかかわらずそれらがその構造を保持する変形可能な、または「腰のある(chewy)」構成要素を与えることである。この解決策は、腰のある構成要素の変形可能な特性により、その構成要素が飲料調製時に予想されるよりも小さな開口を通過できることになり得るので、特に有利であることが分かった。
【0015】
したがって、一実施形態において食用構成要素は、出口を通過するように変形可能である。これにより、構成要素のサイズを最大化することが、所望の飲料を(例えば、飲料原料を完全に溶解する、希釈する、または抽出することによって)調製するための十分な圧力がカプセル内に保持されることを依然として保証しながら、可能になる。
【0016】
一実施形態では、水性媒体を加えることにより飲料を調製する間中に、腰のある構成要素の水和反応で構成要素サイズの増大が生じる。この構成要素は、それが供給開口よりも大きいサイズに膨らむ前にカートリッジから供給されるように選定することができる。しかし、腰のある構成要素は、水和反応を必要としない(実質的に、または完全に水和可能ではない)ことが好ましい。というのはこのことにより、よりよい品質管理、より均質な構成要素を得ること、したがって顧客満足の改善を実現することができるからである。
【0017】
「歯ざわりの良い構成要素」
飲料中に歯ざわりの良い(crunchy)構成要素を含めることは、飲料に特有の食感を与えるので望ましい。歯ざわりの良い飲料構成要素は実質的に変形可能ではないので、その構成要素は、損なわれることなくカートリッジの小さな開口を通過するのが困難なことがあり得る。別の問題は、歯ざわりの良い構成要素は、飲料を作るために使用される液体媒体よりも大きい密度を有し得ることである。このため、その構成要素は、飲料が飲まれない場合に飲料の底部に沈むことになり得る。
【0018】
本発明者らは、歯ざわりの良い構成要素の上に変形可能な、または「腰のある」外層を形成できることを見出した。こうすることにより比較的大きい歯ざわりの良い構成要素を使用することが可能になる。というのは、飲料を供給する間中にその構成要素が押しつぶされる、または損なわれることがないからである。むしろ、この腰のある層は変形し、歯ざわりの良い芯を保護する。さらに、異なる密度の外層を付けることにより、水性媒体に対して添加物の密度を選択的に低減/増大することが可能になる。これにより、必要に応じて構成要素を、飲料の表面に浮かべる、飲料中に沈める、または浮遊させるように適応させることが可能になる。
【0019】
「多層コーティング」
本発明者らは、飲料添加物構成要素をコーティングする新規の方法を発見した。本発明者らはまた、1以上のコーティング層付きの腰のある、または歯ざわりの良い個片を形成することによって、新規の飲料構成要素を生成した。飲料カートリッジ内で使用するのに好ましい構成要素は、1以上の層を備えた中心の芯を有し得る。この構成要素に使用される1以上のコーティング層は、以下のいくつかの役割のうちの1つを果たすことができる。
【0020】
・腰のない、または変形可能ではない構成要素の外側に腰のある、または変形可能なコーティングを形成すること、
・例えば湿気の侵入または酸素の浸透を低減することによって原料の保存安定性を向上すること、
・特定の風味構成要素を閉じ込め、その結果、飲料の調製時にその構成要素が制御されて放出されるようになること、および
・飲料が層状外観を備えることができるように層の一時的な放出を行うこと。
【0021】
したがって、上で特定した3つの技法、およびこれらの組合せによって、本発明者らは、特有の食感および味の特性を有するオンデマンド飲料を生成できるように、新規の構成要素を中に有するカートリッジをうまく実現した。
【0022】
本明細書で「不溶性の」とは、その構成要素が水に溶解しないことを意味する。好ましくはその構成要素は、湿気のある環境において、貯蔵条件(冷蔵)のもとで、好ましくは周囲条件(20℃)のもとでさえなくても、少なくとも1週間、より好ましくは1ヶ月、最も好ましくは少なくとも1年の期間以内に溶解しないように、実質的に不溶性である。したがって、好ましい一実施形態では、個別食用構成要素は、水性環境中(液体ミルク原料中など)に保存されるカートリッジ内に用意される。溶解するとは、湿った状態に完全に溶解することを意味する。より好ましくは、その構成要素は、これらの条件下でわずかな劣化以上は示さない。最も好ましくは、その構成要素は、湿った条件に影響を受けない。
【0023】
食用構成要素は、好ましくは飲料調製条件下で実質的に不溶性である。すなわち、カートリッジ内で熱い(または冷たい)水性媒体と接触したときに、その構成要素は実質的に溶解しない。以下で説明するように、構成要素が水性環境中に保存されない場合には、その構成要素は可溶性外側コーティングを備えてよく、このコーティングは、熱い(または冷たい)水性媒体との接触によって溶解され得るが、少なくとも下にある本体、すなわち芯は、好ましくは実質的に不溶性である。完成飲料中の構成要素に関し、その構成要素の可溶部分は、飲料が供給された後少なくとも1分間は完全に溶解せず、より好ましくは少なくとも5分間溶解しないことが好ましい。その構成要素の不溶部分は、飲料が適切な飲用温度で存続する間、好ましくは実質的に溶解しない。好ましくは、その構成要素は溶解しない。
【0024】
以下の用語は当業者には理解されよう。特に、これらの用語は、当技術分野で明確に定義された意味を有する。
【0025】
本明細書で「変形可能な」という用語は、純然たる力を受けたときに、構成要素が伸びる/柔軟であることを意味する。すなわち、構成要素に圧縮力または膨張力を加えられたときに、その構成要素の塑性変形および/または弾性変形がある。「腰のある」という用語は、「変形可能な」という用語と同義と考えられる。
【0026】
本明細書で「変形可能ではない」という用語は、純然たる力を加えられたときに、構成要素が砕けやすい、および/またはポキッと折れやすいことを意味する。すなわち、構成要素に圧縮力または膨張力を加えられたときに、その構成要素の塑性変形および/または弾性変形は実質的にないか、または非常に限定されている。「歯ざわりの良い」という用語は、「変形可能ではない」という用語と同義と考えられる。
【0027】
本明細書で「個別の(discrete)」という用語は、構成要素が分離しており、別個の、または「個々の」ものであることを意味する。すなわち、各構成要素は個々に認識することができるが、何か他のものに接続されたもの、またはその一部としては認識できず、特に、いくつかの構成要素の塊としては認識することができない。
【0028】
本明細書では「カートリッジ」という用語が、カートリッジに形成された入口および別個の出口を有して、1以上の飲料原料を記述されたようにして収容する任意のカプセル、ポッド、容器、または入れ物を意味することを理解されたい。このカートリッジは剛性、半剛性、または可撓性であり得る。使用できる実質的に水不透過性の材料は一般的であり、当技術分野でよく知られている。この材料は完全に水不透過性でなくてもよいことを理解されたい。というのは、非常にわずかな量の水であれば、十分な時間があると、一部のカートリッジ材料を通り抜けて放散できるからである。好ましくは、この材料はまた、実質的に空気不透過性である。使用される材料は、好ましくは少なくとも完全な水不透過性であり、好ましくは完全な空気および水不透過性である。
【0029】
カートリッジは、好ましくは使用前にシールされる。シールが開かれると、カートリッジは、好ましくは水性媒体の流路を画定する。この流路は、入口から始まり、飲料原料(特許請求されている構成要素を含む)の中または近傍を通り、出口で終わり、ここで水性媒体が入れ物の中に供給される。カートリッジには、好ましくは飲料供給を妨げるフィルタまたはメッシュなどの障害物が何もない。
【0030】
水性媒体は、好ましくは水であるが、事前調整されたホットチョコレートなどの飲料を使用することもできる。この媒体は冷やされていても室温でもよいが、好ましくはカートリッジに導入されるときに高温である。好ましくは媒体は25から99℃であり、より好ましくは65から95℃であり、最も好ましくは80から90℃である。
【0031】
変形可能な食用構成要素には、再構成されたフルーツ片、ソフトキャンディ、フルーツトローチ、または風味付けされたナゲットが含まれ得る。風味付けされたナゲットが使用される場合、これは、好ましくは親水コロイドおよび風味付けされた原料を含む。このようにして、ある構成要素をサイズ、味、および硬度の厳密な要件に合わせることができる。親水コロイドは好ましくは、ゼラチン、カラギーナン、アルギナート、アガロース、ジェランガム、ペクチン、セルロース誘導体、またはこれらの2つ以上の組合せから選択される。
【0032】
好ましい一実施形態によれば、風味付けされたナゲットを作るための風味付けされた原料は、コーヒー抽出物である。これは、可溶性コーヒー溶液、および/または焙煎され挽かれたコーヒー抽出物から簡単に製造することができる。代替の原料には、茶風味、チョコレート風味、バナナ、イチゴまたはバニラ風味などが含まれる。
【0033】
好ましくは、食用構成要素は変形可能ではない部分を含む。変形可能ではない部分は、好ましくは歯ざわりの良いものとなっている。歯ざわりの良い構成要素は、消費時に「割れる」感じを呈する破砕ナッツ、または歯ざわりの良い食感を呈する非常に砕けやすい材料を含む、非常に断片化しやすい材料を含み得る。これらの構成材料は、最終製品の中で沈むことがある。他の構成要素は、空気を含ませることができる砕けやすい澱粉様のマトリクスを含み、それによって、最終製品の上に浮かぶことができる歯ざわりの良い含有物が提供される。
【0034】
好ましくは、この変形可能ではない部分は、硬いキャラメル、ナッツ、破砕ナッツ、硬いキャンディ、押出しチョコレート、ライスクリスピー、シリアル、ビスケット片、コショウの実、破砕シナモンスティック、香辛料、またはこれらの2つ以上の組合せから作られる。穀物片および繊維ベース片もまた企図される。
【0035】
上記のように構成要素は、カートリッジの小さな開口を通過するのが困難である。本発明者らが提案する1つの解決策は、変形時にその構造を保持する概して変形可能な構成要素を提供することであり、一代替実形態は、変形可能なコーティングで被覆された歯ざわりの良い構成要素を提供することであり、このコーティングは、歯ざわりの良い構成要素が変形しないように機能する。
【0036】
好ましい一実施形態は、腰のある、すなわち変形可能なコーティングで被覆された歯ざわりの良い構成要素を飲料中に使用することである。その技術的利点は、食感、表面の感じ、および賞味期限の改善を実現すること、ならびに適切な飲料カートリッジから構成要素を供給する行為を容易にすることにある。
【0037】
腰のある外側は、例えば、ゲル型の材料(例えばマシュマロ)または繊維ベースの材料で形成、作製することができ、これらの材料は、変形時(例えば、小さな開口を通して供給されるとき)にその構造を保持する。これらは耐熱性とすることができ、それにより有利なことにパック内低温殺菌が可能になる。腰のある外側は、その形状および粘度を飲料調製中ずっと保持する一方で、他の構成要素の歯ざわりの良い食感を賞味期限全体を通して保つ保護層として機能する。最後に、これらの構成要素は、その腰のある舌触りの外側、および歯ざわりの良い/パリパリした舌触りの内側により、飲料が消費されるときに複数の感覚経験をもたらす。
【0038】
腰のあるコーティングは、有利なことに構成要素の密度を変えるために使用することができる。このように、低密度の腰のある材料の外層を備えることによって、高密度の腰のある、または歯ざわりの良い原料を水性媒体よりも低密度にすることができる。こうすると、不溶性構成要素が飲料中に跡形もなしに残らず沈むという望ましくない、あり得る状況を回避することができる。
【0039】
好ましくは、食用構成要素は1以上のコーティング層を備える。すなわち、本発明で使用される構成要素は、飲料カートリッジ内で使用するのに単層(単一のコーティング層がある芯)または多層の原料とすることができる。上記のように、構成要素に使用される1以上のコーティング層は、以下のいくつかの役割のうちの1つを果たすことができる。
【0040】
・腰のない、または変形可能ではない構成要素の外側に腰のある、または変形可能なコーティングを形成すること、
・例えば湿気の侵入または酸素の浸透を低減することによって原料の保存安定性を向上すること、
・特定の風味構成要素を閉じ込め、その結果、飲料の調製時にその構成要素が制御されて放出されるようになること、および
・飲料が層状外観を備えることができるように層の一時的な放出を行うこと。
【0041】
多層構成要素を使用することにより、積層飲料を生成するための層の一時的な放出がある製品の生成が可能になる。従来技術では、これらの作用は、積層飲料を提供するための飲料カートリッジの別々の区画内の、例えばコーヒーかすおよびクリームである別個の構成要素を使用することにより得ることができた。本発明の多層構成要素を使用することにより、複雑なカプセル設計、または複数のカプセル調製が必要でなくなる。
【0042】
任意の望ましい舌触りまたは特徴を得るために、構成要素にさらなる層を形成することができる。例えば、構成要素は、腰のある構造物、歯ざわりの良い構造物、あるいは濁り、クリーム状、積層化、特定の風味、または味物質などの特有の機能的特性を最終製品に与える構造物を備えることができる。構成要素は、特定の味物質、例えばフルーツ酸を含むことができ、それによってフルーツ片の感覚的印象を呈示する。
【0043】
一実施形態では、構成要素には、水不溶性である少なくとも1つのコーティング層、および/または水性飲料媒体中で不溶性である最外層を備えることができる。別法として、外層は可溶性でなくてよいが、任意選択で冷たい/または熱い水性媒体と接触することで放出され得る。例えば、ある構成要素はエマルジョン滴の表面被覆を有することができ、このエマルジョン滴は、飲料の調製の際に放出され飲料の表面まで上昇する。これは、例えば、飲料を供給した後の短い遅れに続いて滴が飲料の表面まで上昇する場合に、時間的な作用を与えるために使用することができる。
【0044】
多層コーティングを付けることは、例えば湿気侵入を管理し、酸素浸透を管理し、品質を劣化させる化学連鎖反応(例えば、酸敗臭の発生)の伝搬を管理することによって、構成要素の貯蔵安定性を向上させるのに用いることができる。
【0045】
水不溶性層は、アルギナート、好ましくはカルシウムアルギナート、または本明細書に記載の他のコーティングから作ることができる。これは、本発明の方法によってコーティング層を作ることが簡単にできるために有利であり、その結果、従来の食材を安定性のある、実質的に不溶性の飲料添加物に簡単に変換できることになる。例えば、アルギナート、特にカルシウムアルギナートのコーティングは、ライスパフまたはライスクリスピーを実質的に水不溶性に、また所望の程度の腰があるように変えることができる。
【0046】
水不溶性コーティングを使用すると有利なことに、その食用構成要素は、飲料供給機で使用する前にカートリッジ内の液体飲料構成物中に保存することが可能になる。マシュマロなどの従来の添加物では、こうすることは、時が経つにつれてマシュマロが分解および溶解することにより考えられない。水不溶性コーティング、特にアルギナートを形成することにより、こうすることが容易になる。
【0047】
一代替実施形態では、最も外側のコーティング層は、水性媒体(または「流体」)中で溶解性であり得る。したがって、構成要素は、それが高温の水性媒体中(例えば80℃)のみで可溶性であり貯蔵条件下(例えば20℃)では可溶性ではない限り、水性環境中に保存されるべきではない。これにより、飲料に付加されるべき、構成要素の外側の飲料構成要素が飲料の中に徐々に放出されることが可能になる。可溶性コーティングが不溶性コーティングの上に形成される場合、例えば、歯ざわりの良い中心の添加物を腰のある水溶性コーティングと共に飲料中に供給することが可能であり、この添加物は、可溶性コーティングを飲料中に徐々に放出して、例えば表面着色を行う。
【0048】
好ましくは、食用構成要素は、0.25から10mmの最大平均径を有する。より好ましくは、最大平均径は0.5から5mm、最も好ましくは1から3mmである。この最大平均径は、構成要素のランダムサンプリング、撮影および最大観察可能径の決定を含む、従来の技法によって測定することができる。
【0049】
飲料カートリッジの出口は、好ましくは0.5から10mmの最小径を有する。より好ましくは、最大平均径は1から7.5mm、最も好ましく2から5mmである。出口は任意の断面形状を有し得るが、長方形、円形、および楕円形が最も適切と考えられる。特に円形の出口が好ましく、この場合、その径は一定値になる。出口とは、構成要素が保存される部分と、飲料がカップ、マグまたは飲料容器に入る部分との間の流体経路の最も狭い部分を意味する。したがって出口は、排出装置の一部、または従来のカートリッジで使用される泡立たせる手段の一部を形成し得る。あるいは、カートリッジは、どの泡立て手段も迂回することによって構成要素を供給できるように設計することもできる。
【0050】
好ましくは、本発明の飲料カートリッジは、一度使うだけの飲料カートリッジである。すなわち、カートリッジは飲料調製機に挿入され、水性飲料媒体を加えることによって飲料がカートリッジから供給され、その後カートリッジは廃棄される。カートリッジは、好ましくは使用前にシールされる。すなわち、カートリッジは、内部の飲料原料(個別食用構成要素および飲料粉末/塊または液体飲料原料)が少しも漏れる可能性がないように、機械の中に入れられる前にシールされる。カートリッジの材料が実質的に空気不透過性である場合、シールとの組み合わせにおいて、内部の原料を劣化させるおそれがある大気接触にカートリッジが無防備にならないという付加的な利点がある。別法として、貯蔵中、カートリッジは外部包装紙の中に、おそらく窒素下で保持して、カートリッジ内の原料のいかなる劣化も低減することができる。飲料が調製されるとき、シールは破られ、その結果、水性媒体はカートリッジに入ることができ、飲料を供給できるようになる。
【0051】
第2の態様によれば、本発明は、動作サイクル中に、本明細書に記載の本発明によるカートリッジから飲料を供給する方法を提供し、この方法は、水性媒体をカートリッジ中に通して個別食用構成要素を出口から排出し入れ物に入れるステップを含む。
【0052】
本発明者らはまた、水性飲料媒体中で実質的に不溶性である個別食用飲料構成要素を得たが、この構成要素は、
(i)任意選択で歯ざわりの良い芯を有する、腰のある本体、または
(ii)任意選択で腰のある芯を有する、歯ざわりの良い本体を含む。
好ましくは、少なくとも1つの別のコーティング層が構成要素の上に形成され、これら別のコーティング層のうちの少なくとも1つが実質的に水に不溶である。好ましくは、構成要素は、前記の再構成されたフルーツ片、ソフトキャンディ、フルーツトローチまたは風味付けされたナゲット、あるいは硬いキャラメル、ナッツ、破砕ナッツ、硬いキャンディ、押出しチョコレート、ライスクリスピー、シリアル、ビスケット片、コショウの実、破砕シナモンスティック、香辛料、またはこれらの2つ以上の組合せを含む。食用構成要素は、好ましくは0.25から10mmの最大平均径を有する。
【0053】
コーティング層を形成することの特別な利点は、構成要素の湿り気および貯蔵安定性を大きく改善できることである。好ましいコーティングは、Ca2+イオンと接触するとゲルを形成する化合物を前記イオンに接触させることによって作られる。好ましくは、化合物は多糖である。好ましいコーティングには、アルギナートゲル、イオタカラギーナンゲル、低メトキシ(LM)ペクチン、および低アシル(LA)ジェランガムが含まれる。このコーティング層により、構成要素が時間的に制御されて飲料中に溶解することが可能になり得る。さらに、最外層が存在することにより、飲料中での上記の時間的な作用が可能になり得る一方で、内側の水不溶性層が芯を保護することができる。
【0054】
一実施形態では、飲料構成要素は、腰のある層で被覆された歯ざわりの良い構成要素であり、この構成要素は、飲料の上に浮かぶように1g/cm3未満の総密度を有する。好ましくは、本発明のカートリッジ内で使用される構成要素は、0.1から0.99g/lの飲料中密度を有する。この密度は、構成要素が出口を通過し、その後で飲料中でさらに膨張することができるように、水性媒体との接触前により大きくてもよい。
【0055】
別の実施形態では、飲料構成要素は、腰のある層で被覆された歯ざわりの良い構成要素であり、この構成要素は、飲料中に浮遊する、または沈むように1g/cm3以上の総密度を有する。表面効果によりまた、わずかに水より高密度の構成要素が飲料の表面に保持され得る。好ましくは、本発明のカートリッジ内で使用される構成要素は、1.01から2g/lの飲料中密度を有する。この密度は、水性媒体をいくらか吸収する前にはより低くてもよい。
【0056】
一実施形態では、構成要素は固体の、任意選択で「歯ざわりの良い」構成要素として飲料カートリッジ内に含まれる。水性媒体が付加されると、構成要素は少なくとも部分的に水性媒体によって水和され、その結果、最も外側の面が軟らかく、好ましくは「腰がある」ようになって、構成要素が損なわれることなくカートリッジから排出されることが可能になる。好ましくは、構成要素はその後さらに大量の飲料中でさらに水和されて、実質的に腰があり(任意選択で歯ざわりの良い芯があり)、好ましくは膨張した構成要素が作られる。すなわち、好ましくは、構成要素は、それが水性媒体を吸収する速度でその構造が、本明細書に示される定義による「歯ざわりの良い」または「腰のある」ものとして決まるように選択される。しかし、前記のように、水和可能でない構成要素が、より予測可能で均一な飲料製品が結果として得られるので、好ましい。
【0057】
第3の態様によれば、本発明は、本発明による飲料カートリッジ内で使用するための個別食用構成要素を生成する方法を提供し、この方法は、
a)風味付けされた原料をコーティング溶液中で溶解するステップ、または
b)個別食用構成要素の少なくとも外面をコーティング溶液と接触させて、被覆された構成要素を作るステップを含み、
その後、被覆された構成要素または一定分量の風味付けされた溶解原料を、カルシウムイオンを含む溶液と接触させ、それによってコーティング溶液がカルシウムイオンとの接触で固体化して個別食用構成要素が作られ、さらに
個別食用構成要素を飲料カートリッジの中に移すステップを含む。
【0058】
カルシウムイオンと接触すると固体化する溶液が当技術分野で知られており(例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる特許文献3参照)、消費するのに安全である任意のそのような溶液を本発明の方法のコーティング溶液として使用することができる。好ましくは、コーティング溶液は、水中に溶解した多糖を含む。好ましい多糖には、アルギナート、イオタカラギーナンゲルなどのカラギーナン、低メトキシ(LM)ペクチン、および低アシル(LA)ジェランガムが含まれる。アルギナートが最も好ましい。k−カラギーナンなど、カリウムイオンに反応する溶液を使用することもまた可能であり、この場合、被覆された構成要素、または一定分量の風味付けされた溶解原料は、カリウムイオンを含む溶液と接触させなければならない。
【0059】
好ましくは、この方法は、風味付けされた溶解原料を滴のように、カルシウムイオンを含む溶液の中に加えることによって、一定分量の風味付けされた溶解原料をカルシウムイオンを含む溶液と接触させることを含む。こうすることは、風味付けされたどのような構成物でも、飲料カートリッジ内の食用構成要素として使用するための腰のある、または変形可能なナゲットになるように調製し変換できるので有利である。
【0060】
好ましくは、カルシウムイオンを含む溶液は、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、または塩化カルシウム、あるいはこれらの2つ以上の混合物の溶液である。塩化カルシウムが、低コストで、容易に入手でき、高可溶性(20℃および100kPaにおいて、純水中に750g/lまで)であるので好ましい。他の可溶性カルシウム塩を使用することもできる。この溶液中のイオンの濃度に対する特定の制限はないが、好ましくはカルシウムイオンは、0.1から100g/l、より好ましくは0.1から10g/l、より好ましくは0.5から5g/lまでの濃度で存在する。この濃度は、所望の溶剤の中、好ましくは水中で、20℃および100kPaにおいて測定される。
【0061】
有利なことに、本発明の方法により、液体溶液中での個別食用構成要素の移動、および任意選択で貯蔵が可能になる。コーティングは、湿気の存在下での構成要素の劣化を防止し、構成要素を湿った状態の中に、ミルクなどの液体飲料原料と直接接触さえしても、保存できるようにする。
【0062】
第4の実施形態によれば、上記の方法によって得られる飲料付属物が提供される。この飲料付属物は個別食用構成要素である。
【0063】
第5の態様によれば、本発明は、湿気の影響を受けやすい個別食用構成要素が水性環境中で安定していることを可能にするために、第3の態様によるコーティング、好ましくはカルシウムアルギナートコーティングを使用することを実現する。すなわち、湿気の影響を受けやすい個別食用構成要素は、分解または劣化することなく水性環境中に保存することができる。このように、コーティングを使用することにより、構成要素が水性環境中に少なくとも1週間、好ましくは1ヶ月、好ましくは少なくとも1年間保持され、存続可能なままであることができる。すなわち、飲料中に供給されたときに、その有利な食感特性が失われない。
【0064】
第6の態様によれば、本発明によるカートリッジと、カートリッジを受け入れるように、かつ水性飲料媒体を加えることによってカートリッジから飲料を供給するように適合された飲料供給機とを備える飲料供給システムが提供される。
【0065】
本発明のカートリッジはまた、食品製品を調製するために使用できることに留意されたい。このような液体食品製品は、厳密には飲料ではないが、例えばスープ、カスタード、ソースなどを含む。これらの製品を作るための原料は、一般に知られているように、粉末にされ、挽かれた、葉ベースまたは液体であり得る。これらの非飲料製品を生成するために使用されることがある構成要素は、本発明により生成することができる。したがって、例えばスープにクルトンを入れることができ、したがって、改善された風味、食感、および改善した官能特性を持つ製品を生成することができる。
【0066】
以下に、本発明の非限定的諸実施形態を例としてのみ、次の添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明で使用するためのカートリッジの等角図である。
図2図1のものと類似の、カートリッジの外側ケーシングの部分が取り除かれた図である。
図3】本発明で使用するためのカートリッジの別の実施形態のケーシングの上部および下部の等角図である。
図3a図3に示された上部および下部から形成されたケーシングの別の方位における側断面図である。
図4】異なる構成要素を有する各サンプルカプチーノ飲料の差異が認められる食感属性を示すグラフである。
図5】異なる種類の構成要素を含むサンプルカプチーノ飲料中で差異が認められる属性全体を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明で使用するためのカートリッジは、カートリッジに形成された入口および別個の出口を有して、1以上の飲料原料を記述されたようにして収容する任意のカプセル、ポッド、容器、または入れ物を包含する。このカートリッジは剛性でも、半剛性でも、可撓性でもよい。使用できる実質的に水不透過性の材料は一般的であり、当技術分野でよく知られている。
【0069】
例として、本発明で使用するのに適したカートリッジの第1の実施形態が図1および図2に示されている。カートリッジ10は、自動煎出機で使用することができる。カートリッジ10は一般に、ケーシング11およびシール手段を備える。ケーシング11とシール手段は組み合わされてカートリッジ10を形成する。ケーシング11は、図2に特徴18として一部だけが示される1以上の飲料原料を収容する、細長い管状チャンバ13を少なくとも部分的に画定する。チャンバ13内の飲料原料18の詰め込み密度は、必要に応じて変えることができる。1以上の飲料原料18は、飲料を作るために使用される水性媒体に実質的に不溶性である1つまたは複数の個別食用構成要素を含む。チャンバ13は、1:4から1:200の範囲にある幅に対する長さの比を有する。管状チャンバ13は、断面が図示のように円筒形である必要がなく、任意の所望の断面形状を有し得る。
【0070】
チャンバ13は、入口14、出口15を有し、入口14と出口15を連結する連続した細長い流体流路を形成する。入口14および出口15は、シール手段によって最初にシールされ、使用時にシール手段に穴をあける、切り取る、または除去することによって開放される。他の構成要素が、カートリッジ10の中に任意選択で含まれることがある。
【0071】
チャンバ13は、飲料または液体食品製品を作るのに適した1以上の飲料原料18を収容する。この生成処理には、1以上の原料を液体で溶解すること、原料と液体の混合、希釈、浸漬、煎出、またはこれらの処理のいずれかの組合せが、液体がチャンバ13の中に導入されたときに伴い得る。
【0072】
本明細書に記載のように、1以上の飲料原料18は、飲料を作るために使用される液体媒体に実質的に不溶性である1以上の個別食用構成要素を含む。
【0073】
図示のカートリッジ10の全体形状は、概して円形または円板形であり、カートリッジ10の直径は、その高さよりも著しく大きい。この寸法は、カートリッジ10が使用されることになっている機械によって制限される。典型的には、カートリッジ10の全体直径は74.5mm±6mmであり、全体高さは16mm±3mmである。
【0074】
カートリッジ10は、外側に延びるフランジ16を備える。典型的には、フランジ16は2から4mmの間の幅を有する。フランジ16の一部分は取っ手17を形成するために広くなっており、この取っ手でカートリッジ10を保持することができる。フランジ16および取っ手17は一般に、カートリッジを煎出機の中に適正に設置するために使用される。
【0075】
ケーシング11は好ましくは、高密度ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、またはこれらの材料の2つ以上の積層物からなる2つ別々の成形品として作られる。適切なポリプロピレンは、DSM UK Limited(Redditch、英国)から入手可能な範囲のポリマーである。ケーシング11は、好ましくは射出成形を用いて作製され、ケーシングの各部分は適切な方法で、例えば超音波溶接または熱溶接によって接合される。
【0076】
別法としてケーシング11は、生分解性ポリマーから作製することができる。適切な材料の例には、生分解性ポリエチレン(例えば、英国BorehamwoodのSymphony Environmentalから供給されるSPITEK)、分解性ポリエステルアミド(例えば、Symphony Environmentalから供給されるBAK 1095)、ポリ乳酸(米国ミネソタ州のCargilから供給されるPLA)、澱粉ベースポリマー、セルロース誘導体、およびポリペプチドが含まれる。
【0077】
使用時、入口14および出口15が、シール手段に孔をあける機械の動作によって開かれている場合、液体(例えば水性媒体)は、圧力を受けてカートリッジ10に入り、入口14を通ってチャンバ13の中へ流れる。液体はチャンバ13の中を、そこに収容されている原料18と接触して流れる。液体がチャンバ13の中を通過することによって作られる飲料または食品製品は出口15まで進み、ここで製品は、排出するために機械によって、カップまたはボウルなどの入れ物の中に誘導される。
【0078】
本発明のカートリッジ10の管状チャンバ13は、従来技術のカートリッジのものと比較すると、幅に対する内部長の比が大幅に拡大されており、これにより、飲料または食品製品を調製するために使用される液体を管理できること、またそれによって、調製された製品の諸特性を変更できることでのいくつかの顕著な利点が得られる。これを実現する1つの方法は、チャンバ13をらせん管として形成することであり、このらせん管は入口14から始まり、内向きのらせん形になって出口15に至る(図1および図2に示す)。これは特に、図1および図2に示された円盤形カートリッジ10に適している。
【0079】
チャンバ13の好ましい内径は、1から20mm、より好ましくは1から10mm、最も好ましくは5から8mmの範囲にある。チャンバ13の好ましい内部長は50から1000mmの範囲にある。
【0080】
細長いチャンバ13を使用することの利点の1つは、調製時間、すなわち液体(水または他の流体)がチャンバ13を通過するのに要する時間が著しく延長されることである。さらに、非常に大きい表面積:体積の比があり、これは、いくつかの有利な方法で用いることができる。例えば、この比により、粉末および濃厚な液体が流れ出ることが可能になり、それによって、より多くの固形物が飲料または食品製品に取り込まれ得る。これにより、チャンバ13の中に残る残留物が低減する。
【0081】
図3および図3aに示されたカートリッジの別の実施形態では、ケーシング11は上部30および下部31を有し、そのそれぞれがらせんの形をしたチャンバ13の部分を有するが、各らせんは反対方向になっている。図3および図3aでは、各らせんは並んでいる。水性媒体は入口から送り込まれ、対向するらせん進路を回って供給される。この流れは、上下のらせん間で分割され、反対方向に進む。これにより乱流が作り出され、その結果、製品が攪拌/混合されることになる。
【0082】
次に、本発明を以下の非限定的例でさらに説明する。
【実施例】
【0083】
以下の実施例では、液体オンデマンド飲料に関する本発明の利益を実証する。最初に、本発明の方法により飲料原料を作った。次に、液体濃縮物(例えば、風味付けされた、または風味付けされていないチョコレートシロップ、またはキャラメル、ヘーゼルナッツなどのシロップ)および腰のある飲料原料を熱い/冷たい(88〜90℃/25℃)水で希釈することによって飲料を生成した。
【0084】
以下の溶液を、各実施例で使用するために調製した。
【0085】
溶液1:
1gのアルギナートを5gの砂糖と乾燥混合して分散性を助長した。0.01gのレベルの水溶性の黄色の食品着色剤、および上記の乾燥混合物を周囲温度(約20℃)で100gの水に、マグネチックスターラを使用して的確に攪拌しながらゆっくりと加えた。すべての乾燥原料が水和し溶解した後、十分に澄んだ黄色のアルギナート溶液を得た。
【0086】
溶液2:
2gのCaCl2を周囲温度(約20℃)で100gの水に加えた。CaCl2が水和し溶解した後、十分に澄んだ溶液を得た。
【0087】
溶液3:
1gのCaCl2を100gの半脱脂ミルクに、マグネチックスターラを使用して的確に攪拌しながら加えた。
【0088】
溶液4:
1gの乳酸カルシウムを100gの全乳に、マグネチックスターラを使用して的確に攪拌しながら加えた。
【0089】
1)腰のある構成要素の調製
実施例1:
約1〜2mlの上記の溶液1を溶液2の中に、小さなオリフィス(0.1〜5mmの範囲)を有するピペットを使用して落下させ、小さな完全に丸い黄色の球を形成した。次に、これらの球を取り出し、約85℃の熱水で洗浄した。これらの球をこの溶液の中に、その形状または大きさを失わずに周囲条件で12ヶ月間保存した。
【0090】
実施例2:
10gの吹き付け乾燥可溶性コーヒーを上記の溶液1の中で戻し、1〜2mlのこの溶液を溶液2の中に、小さなオリフィス(0.1〜5mmの範囲)を有するピペットを使用して落下させた。小さな完全に形成されたコーヒーの球が形成された。次に、これらの球を濾過器で取り出し、約85℃の熱水で洗浄した。これらの球をこの溶液の中に、その形状または大きさを失わずに周囲条件で12ヶ月間保存した。
【0091】
実施例3:
10gの吹き付け乾燥可溶性コーヒーを上記の溶液1の中で戻し、1〜2mlのこの溶液を上記の溶液3の中にピペットを使用して落下させた。小さい、完全に丸い青白い色の球が形成された。次に、これらの球を濾過器で取り出し、約85℃の熱水で洗浄した。これらの球をこの溶液の中に、その形状または大きさを失わずに周囲条件で12ヶ月間保存した。
【0092】
上記のように作られた腰のある構成要素をキャラメルシロップの中に入れ、ウォーターバス中に約85℃で15分間維持してからすぐに冷却して、その熱安定性を調べた。この熱処理が終わったときに構成要素は、なお損なわれていなく、その元の形状を保っており、なおキャラメルシロップから分離していた。
【0093】
2)歯ざわりの良い内部を有する腰のある構成要素の調製
実施例4:
ココア粉末で薄く被覆されたライスクリスピー片を上記の溶液1の中に入れ、1分間維持した。次に、ライスクリスピー片を取り出し、上記の溶液4の中に入れた。Caアルギナートで作られた腰のあるケーシングがすぐに形成された。これらの個片を濾過器を用いて取り出し、すぐに85℃の熱水中で洗浄した。
【0094】
実施例4で説明したように作られた構成要素を熱水の中に入れ、ウォーターバス中に約85℃で15分間維持してからすぐに冷却して、構成要素の熱安定性を調べた。この熱処理が終わったときに構成要素は、その元のココア粉末コーティングと共になお損なわれておらず、水を吸収する(湿り気を帯びる)または分解する兆候は何も示さなかった。熱処理の直後に水中での変色はなかった。
【0095】
3)官能試験による本発明の利点
官能試験をKraft内部の専門家の官能パネルと共に実施した。最大10人の委員がこの試験に参加し、以下の構成要素を標準的なTassimo Carte Noireのカプチーノベースに入れた。
構成要素(i):ミルクチョコレート集合体で被覆された球形のタフィー/キャラメル片
構成要素(ii):ココア粉末で薄く被覆された球形のライスクリスピー片
構成要素(iii):ダークチョコレート集合体で被覆された球形のライスクリスピー片
比較物(iv):付加構成要素なし
【0096】
結果は、図4および図5に示されている。以下の凡例は、これらの図で使用されている文字符号を説明するものである。
A:腰がある(1〜12)
B:軟らかい/湿り気を帯びている(1〜12)
C:粘り気がある/粘着性がある(1〜12)
D:歯ざわりが良い(1〜12)
E:滑らかである(1〜12)
F:粘着性の後食感(1〜12)
G:乾燥した後食感(1〜12)
*:気が抜けている(1〜11)
*:ココア(1〜11)
*:シリアル/粒状(1〜11)
*:甘い(1〜11)
*:タフィー/キャラメル(1〜11)
*:気が抜けた後味(1〜11)
*:シリアル後味(1〜11)
*:甘い後味(1〜11)
*:キャラメル/タフィー後味(1〜11)
*:ココア後味(1〜11)
** 気が抜けた後味(1〜11)
**:シリアル/粒状後味(1〜11)
**:キャラメル/タフィー後味(1〜11)
*は構成要素に関連する属性。
**は液体部分に関連する属性。
【0097】
結果で以下が示された。
・各構成要素により2つの異なる次元、すなわち食感および風味が飲料全体に付加された。
・すべての構成要素が、カプチーノベースという状況の中で互いに明確に差異が認められた。
・構成要素(ii)を有するカプチーノは、気が抜けた、かつシリアル/粒状の全体的風味および後味があると知覚された。これらはまた、湿り気を帯びている/軟らかいと知覚された。これらには、委員から否定的な反応があった。
・構成要素(iii)を有するカプチーノは、滑らかである食感次元、および歯ざわりが良く空気を含んだ食感次元で差異が認められた。ダークチョコレートコーティングは、液体風味全体でココア風味次元を引き上げた。歯ざわりの良い内側が後に続く滑らかな外側は、意外なものとして、また肯定的に知覚された。
・構成要素(i)を有するカプチーノは、甘い、タフィー/キャラメル味および後味で差異が認められた。またこれには、粘り気がある/粘着性がある食感、および濃厚な食感があった。
【0098】
比較例
約2gの小さな球形の、ココア粉末で薄く被覆されたライスクリスピー片を、小さいガラス瓶の中で別々に約7gのUFミルク、15gのキャラメルシロップ、および約7gの熱水に入れ、約85℃で15分間の熱処理をして、これらの熱安定性を試験した。熱処理が終了したときに以下が観察された。
・キャラメルシロップ中のライスクリスピー片は、その形状をほとんど保持したが、その外側のココアコーティングは失われた。
・ミルク中のライスクリスピー片はほとんど分解し、互いにくっつき、ライスクリスピー片の外側のコーティングは失われ、ミルクがわずかにチョコレートの色になった。2本の指の間で押しつぶすと、これらの個片は軟らかく、湿り気を帯びていて、すぐに軟らかいペーストに変わった。
・水中のライスクリスピー片は、その形状およびコーティングを完全に失い、水がチョコレート色をしたビスケットの液体に変わった。
【0099】
本発明は、飲料供給カートリッジの利便性と共に、別の次元の食感の食感を与えるための個別食用構成要素を提供する。これらの構成要素は、カートリッジから供給するのに特に適するように適応させることができる。加えて、構成要素は、長い賞味期限を実現するためのカートリッジ内の貯蔵に特に適するように適応させることもできる。有利なことに各構成要素は、これらが実質的に不溶性であるので、水性環境中に保存することができる。水性環境を使用することにより、泡立ちの改善(乾燥構成要素と比べて)、より速い供給、混合の改善、およびカートリッジ内にとどまる残留物または無駄になる原料がないなどの既知の利点を有する、液体ミルク、クリーム、または液体チョコレートなどの水性飲料構成要素を使用することが可能になる。
【0100】
本発明の好ましい諸実施形態を本明細書で詳細に説明してきたが、これらの実施形態に対する変形形態を本発明または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく作製できることが当業者には理解されよう。
図1
図2
図3
図3a
図4
図5