【実施例】
【0035】
実施例
以下の実施例は、本発明の範囲内の特定の実施形態をさらに記載し、実証する。実施例は、単に例示のために与えられ、本発明の趣旨および範囲から外れることなく多くのバリエーションが可能であるので、限定するものとして構築されない。以下の実施例は、例示することだけが意図され、あらゆる様式において本発明の範囲を限定することは意図されない。「活性成分」は、上に記載されるように、1つ以上のNRTI、好ましくはテノホビルまたは生理学的に機能的なその誘導体を意味する。
【0036】
材料および方法
細胞。ヒト胚肺(HEL)線維芽細胞(HEL−299;ATCC CCL−137)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、1%のL−グルタミン、1%の可欠アミノ酸、および1%のピルビン酸ナトリウムを補ったMEMアール培地(Gibco,Invitrogen Corporation,UK)において培養した。初代ヒトケラチノサイト(PHK)を新生児の包皮から単離した。組織片をトリプシン−EDTAとともに37℃にて1時間インキュベートした。上皮細胞を分離し、以下の補充物:1ml当たり0.5μgのヒドロコルチゾン、1ml当たり10ngの上皮増殖因子、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、1×10
−10Mのコレラ毒素、1ml当たり5μgのインスリン、1ml当たり5μgのヒトトランスフェリン、および1ml当たり15×10
−4mgの3,3’,5−トリヨード−2−サイロニンを含むケラチノサイト無血清培地(ケラチノサイト−SFM)(Gibco,Invitrogen Corporation,UK)において培養した。上記PHKを、単層における抗ウイルスアッセイのために、および器官型ラフト培養物(organotypic raft culture)の調製のために使用した。TZM−bl細胞は、Dr.G.Van Ham(ITG,Antwerp,Belgium)によって、親切にも提供された。
【0037】
ウイルス。HSV−1株のKOSおよびF、ならびにHSV−2株のGおよびMSを参照ヘルペスウイルスとして使用した。ベルギーにおいてウイルスに感染した個体から単離されたいくつかのHSV−1野生型(wt)[RV−6、RV−132、RV−134、C559143]、HSV−1チミジンキナーゼ欠損型(TK
−)[RV−36、RV−117、328058]、HSV−2 wt[RV−24、RV−124、NA、PB、NS、HSV−47]、およびHSV−2 TK
−[RV−101、RV−129、19026589、LU、HSV−44]の臨床株を使用した。HIV−1株III
Bは、R.C.Gallo(当時、National Institutes of Health,Bethesda,MDにおける)によって提供された。
【0038】
化合物。化合物の供給源は、以下の通りであった:アシクロビル[ACV,9−(2−ヒドロキシエトキシメチル)グアニン](GlaxoSmithKline,Stevenage,UK);ガンシクロビル[GCV,9−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシメチル)グアニン(Roche,Basel,Switzerland);ペンシクロビル[PCV,9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルブタ−1−イル)グアニン](Aventis,Frankfurt,Germany);ブリブジン(brivudin)[(E)−5−(2−ブロモビニル)−1(−D−2’−デオキシリボフラノース−1−イル−ウラシル,BVDU](Searle,UK);(S)−HPMPC[シドホビル,CDV,(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン],PMEA,[アデホビル,ADV,9−[2−(ホスホニルメトキシエチル)アデニン]、および(R)−PMPA[テノホビル,TFV,(R)−9−[2−(ホスホニルメトキシプロピル)アデニン]](Gilead Sciences,Foster City,CA)。テノホビルジホスフェート(TFV−DP)、およびアシクロビルトリホスフェート(ACV−TP)は、Moravek Biochemicals,Brea,CAから得た。
【0039】
放射化学物質。[
3H]テノホビル(比放射能(radiospecificity):15Ci/mmol)、[8−
3H]dGTP(放射特異度:17.9Ci/mmol)、および[2,8−
3H]dATP((放射特異度:153Ci/mmol)は、Moravek Biochemicals(Brea,CA)からであった。
【0040】
HSV細胞変性効果(cytopathic effect)(CPE)低減アッセイ。HELおよびPHK細胞をCPE低減アッセイを行うために使用した。両方の細胞型を、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、それらの対応する増殖培地において培養した。コンフルエントな単層を100CCID
50(1CCID
50は、細胞培養物の50%について感染性であるウイルスストック希釈物に相当する)における各ウイルス株に感染させた。HEL細胞においてウイルスの感染および成長を可能にするために使用した培地は、2%のFCSを含むMEMアール培地であった。2時間の吸着期間後、残留ウイルスを取り除き、感染した細胞を試験化合物(二連)の連続希釈物を含む培地においてさらにインキュベートした。インキュベーション時間の2日後〜3日後、ウイルス細胞変性性(cytopathicity)(CPE)を視覚的に評価し、50%効果濃度[EC
50、ウイルスCPEを50%まで低減するために必要とされる化合物の濃度]を決定した。各ウイルス株に対して試験した化合物のEC
50を、少なくとも2つの独立した実験の平均値として計算した。ウイルス感染のために使用したダルベッコ−F12培地[10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、1リットル当たり5mlの100×抗生物質−抗真菌剤(Gibco,Invitrogen Corporation)を補った、1/3のHAM F12と2/3のダルベッコ改変イーグル培地との混合物]を除いて同様の様式で、PHKにおいて上記アッセイを行い、ケラチノサイト−SFMとダルベッコ−F12培地との50/50(v/v)混合物をウイルス吸着後に加えた。
【0041】
初代単球/マクロファージ細胞培養物のヘルペスウイルス感染。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健康な血清陰性のドナーの血液からFicoll−Hypaque密度勾配遠心法によって得た。上記PBMCを20%の熱非働化(56℃、30分)ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100mg/L)、およびL−グルタミン(2mM)を補ったRPMI 1640培地中に再懸濁し、次に48ウェルプレート(1.8×10
6細胞/ウェル)に播種した。単球/マクロファージ(M/M)細胞を、プラスチック上への接着によって分離した。5日後、非接着性細胞を温かい培地を用いて繰り返しやさしく洗浄することによって慎重に取り除き、接着性(95%の純度)M/Mをさらに3日間培養して成熟させ、単層を形成させた。HSV−2の細胞変性効果に高度に感受性のあるアフリカミドリザルの線維芽細胞様腎臓(Vero)細胞を10%の熱非働化FCSを補ったRPMI培地において成長させ、感染性ウイルスのタイター決定アッセイにおいて使用した。ヒトマクロファージにおけるテノホビルの抗HSV2活性を評価するために、上記化合物を感染の1時間前に、漸増する濃度(0.04μg/ml、0.2μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、20μg/ml、100μg/ml、または500μg/ml)でマクロファージに加えた。同様に、マクロファージ培養物を、対照薬物として使用した異なる濃度のアデホビル(0.04μg/ml、0.2μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、20μg/ml、または100μg/ml)またはアシクロビル(0.008μg/ml、0.04μg/ml、0.2μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、20μg/ml、または100μg/ml)で処理した。
【0042】
マクロファージ培養物を次に、試験化合物の存在下でHSV−2(100CCID
50)に感染させた。2時間のウイルス吸着後、あらゆる残留ウイルス粒子を取り除くために培養物を広範囲に洗浄した。新鮮な培養培地および指示された濃度における化合物を次に、上記培養物に加えた。テノホビル、アデホビル、およびアシクロビルを実験にわたって維持した。適切な陽性(感染させたが未処理のM/M)対照および擬似感染陰性(感染させず未処理のM/M)対照も各実験のために行った。全てのアッセイを三連で行った。マクロファージに対する細胞変性効果を顕微鏡的観測によって毎日モニターし、感染後5日目〜6日目に完了に至った。従って、HSV−2の複製に対する上記化合物の潜在的な阻害効果を、感染の6日後に評価した。上清における感染性ウイルスの量をVero細胞培養物において古典的な限界希釈アッセイによって決定した。生成されたウイルスのタイターをリード・ミュンヒ法に従って計算し、1ml当たりの50%組織培養感染量(TCID
50/ml)として表した。
【0043】
阻害能力を%で表し、値100をウイルス感染させた未処理培養物におけるウイルス生成とみなして計算した。
【0044】
HIV−1およびHSV−2でのTZM−bl細胞の共感染。TZM−bl細胞系は、HeLa細胞に由来し、高レベルのCD4、CCR5、およびCXCR4を発現する。さらに、この細胞系は、LTR駆動ホタルルシフェラーゼおよびE.coli−ガラクトシダーゼ遺伝子を用いて安定的に変換される(15)。96ウェルトレイにおいて、1日目に10,000個のTZM−bl細胞を播種した。2日目に上清を吸引し、テノホビルの連続希釈物100μlを細胞培養物に加えた。次にHIV−1(NL4.3)、HSV−2(G)のいずれか、または両方のウイルスを一緒に含むウイルス懸濁液100μlを投与した。感染の2日後〜3日後、HIV−1感染をルシフェラーゼ活性の測定に基づいてモニターした。この手段のために、100μlの培養上清を取り除き、100μlのBright−Glo Luciferase Assay Substrate(Promega,Madison,USA)を加えた。Safire 2マイクロタイタープレートリーダー(Tecan,Maennedorf,Switzerland)を用いて発光シグナルを測定した。擬似感染細胞のみを含む対照条件も、背景発光レベルを測定するために含めた。感染の3日後、HSV−2誘導細胞変性性を巨大細胞形成に基づいて顕微鏡的に記録した。
【0045】
器官型上皮ラフト培養。表皮等価物の調製のために、氷上にて10倍濃縮HAMのF12培地、10倍再構成バッファー、およびSwiss 3T3 J2線維芽細胞と混合したコラーゲンを用いて、コラーゲンマトリックス溶液を作製した。1ミリリットルのコラーゲンマトリックス溶液を24ウェルマイクロタイタープレートのウェルに注いだ。37℃にて一晩、1mlの増殖培地を用いたゲル平衡化後、2.5×10
5のPHK細胞をゲルの上に播種し、浸した状態を24時間〜48時間維持した。コラーゲンラフトを持ち上げ、空気と液体培養培地との間の界面においてステンレス鋼の格子上に置いた。上記増殖培地は、ケラチノサイト−SFMのために使用したのと同じ補充物を有する、1/3のHAM F12と2/3のダルベッコ改変イーグル培地との混合物であった。上皮細胞を層状にし、培地を2日〜3日毎に交換した。ラフトシステムにおける上記化合物の抗ウイルス効果の評価のために、2つの一連のラフトを、1つは組織学的実験のため、およびもう1つはプラーク低減アッセイによるウイルス生成の定量化のために並行して行った。ラフトを、持ち上げ後(post−lifting)10日後に5,000PFUのHSV−1(KOS)株またはHIV−2(G)株に感染させ、次に培地を異なる希釈の上記化合物を含む培地に交換した。異なる濃度の上記化合物を含む増殖培地を2日後および3日後(分化の15日後)に取替え、一連のラフトを10%の緩衝化ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、組織学的評価のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。別の一連のラフトを、ウイルス生成を定量化するために使用した。その目的のために、各ラフトを3mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中で凍結させ、解凍して、感染した上皮からウイルスを放出させた。上清を1,800rpmにおける遠心分離によって清浄化し、HEL細胞培養物におけるプラークアッセイによってタイター決定した。各ラフトにおけるウイルス生成を次に計算した。各薬物濃度について2つのラフトを、ウイルス収量に対する上記化合物の効果を決定するために使用した。
【0046】
ヒトエクスビボ組織。ヒト扁桃組織を、IRB承認プログラム下でChildren’s National Medical Center(Washington,DC)において通常の扁桃摘除術を経験している患者から得た。頸部組織を、National Disease Research Interchange(NDRI,Philadelphia,PA)を通して得た。組織を約8mm
3のブロックに切断し、培養培地におけるコラーゲンスポンジゲル上に、前に記載されたように(16)空気−液体界面に置いた。手短に言えば、組織ブロックを15%の熱非働化ウシ胎仔血清(FCS Gemini Bio−Products,Woodland,CA)を含むRPMI 1640(GIBCO BRL,Grand Island,NY)培地において培養した。
【0047】
扁桃組織:各実験条件について、27の組織ブロック(9ブロック/ウェル/3mlの完全培地)に各組織ブロックの上に置かれたHSV−1(株F)またはHSV−2(株GおよびMS)(ATCC)のウイルスストック5μLを接種した。共感染実験を5μLのHSV−2(株G)および5μL(0.5ngのp24)のX4
LAI.04(Rush University Virology Quality Assurance Laboratory(Chicago,IL)から得た)を連続して組織ブロックに接種することによって行った。扁桃組織を用いる全ての実験において、テノホビルをウイルス感染の12時間前に培養培地に加え、各培養培地の取替えにおいて補給した。
【0048】
頸膣組織:各実験条件のために、16の組織ブロックを、500μlのHSV−2(株G)懸濁液に37℃にて2時間浸し、PBSで3回洗浄し、次にゲルフォームラフト上に置いた。テノホビルを感染中に加え、各培養培地の取替えにおいて補給した。定量リアルタイムPCRによって測定される場合に、単純ヘルペスウイルスの複製を上記培養培地へのウイルスDNAの放出によって評価した(17)。HIV−1の複製をビーズベースのアッセイを用いて、p24キャプシド抗原の放出によって評価した(18)。
【0049】
HSV−1およびHSV−2感染マウスのインビボ抗ウイルス活性。成体NMRI無胸腺ヌードマウス(体重約20g)を約1cm
2の表面にわたって腰仙部において皮膚切除(scarify)した。1マウス当たり50μL中5×10
3PFUのHSV−1(Kos株)または5×10
2のHSV−2(G株)をマウスに接種した。テノホビル、アデホビル、およびシドホビルの局所用1%処方物を100%ジメチルスルホキシドにおいてか、またはCAPRISA 004試験において用いられたのと同一のゲルにおいて調製した。各実験において、薬物のない試験処方物と同じプラセボ処方物で処置された動物の群を陰性対照として含めた。処置プロトコルにおいて、テノホビル、アデホビル、またはシドホビルを、1日に2回、感染後1時間〜2時間から始めて5日間の期間、指示された処方物および薬物の濃度で動物に局所投与した。ウイルス接種の日は、常に0日目と見なした。全ての動物手順は、K.U.Leuven Animal Care Committeeによって承認された。病変の発症および死亡率を1ヶ月の期間にわたって記録した。動物を30%超の体重損失または麻痺の発症が起こる場合に安楽死させた。生存率をカプラン−マイヤー法に従って推定し、ログランク検定(Mantel−Cox)検定(GraphPad Prism)を用いて比較した。
【0050】
リンパ球CEM、線維芽細胞HEL、および上皮TZM−bl細胞培養物におけるテノホビルの代謝。放射性同位元素標識されたテノホビルの代謝を以下の通りモニターした:CEM、HEL、またはTZM−bl細胞を、5mlの培養フラスコ(25cm
2)において、それぞれ4×10
5/ml、5.1×10
5/ml、および17×10
5細胞/mlで播種し、2μMの[2,8−
3H]テノホビル(10μCi/フラスコ)とともにインキュベートした。上記細胞の播種時から72時間後に、放射性同位元素標識された薬物を上記細胞培養物に24時間加えた。この時点において、上記細胞を4℃で遠心分離(HELおよびTZM−bl細胞について、培養受容物からの予めの取り外し後に)し、氷冷培地(血清なし)で2回入念に洗浄し、60%の冷メタノールで沈殿させた。10,000rpmにおける遠心分離後、以前に記載された(19)ようなPartisil−SAX−10ラジアルコンプレッションカラムを用いて、上清における放射性同位元素標識された[
3H]テノホビルおよびその代謝産物をHPLC分析によって定量化した。[
3H]テノホビル、[
3H]テノホビル−MP、およびテノホビル−DPのための保持時間は、約5分、約16分、および約32分であった。
【0051】
HSV−1 DNAポリメラーゼおよびHIV−1逆転写酵素アッセイ。HSV−1 DNAポリメラーゼおよびHIV−1 RTアッセイについての反応混合物(40μl)は、4μlのPremix(200mMのTris.HCl、pH7.5;2mMのDTT;30mMのMgCl
2)、4μlのBSA(5mg/ml)、1.6μlの活性化仔ウシ胸腺DNA(1.25mg/ml)、0.8μlのdCTP(5mM)、0.8μlのdTTP(5mM)、0.8μlのdGTP(5mM)、2μlの放射性同位元素標識された[
3H]dATP(1mCi/ml)(3.3μM)、18μlのH
2O、および異なる濃度(すなわち、200μM、20μM、2μM、0.2μM)のテノホビル−DP4μlを含んだ。4μlの組換えHSV−1 DNAポリメラーゼ(M.W.Wathen(Pfizer,Kalamazoo,MI)によって親切にも提供された)、または組換えHIV−1 RT(20mMのTris.HCl、pH8.0;1mMのDTT;0.1mMのEDTA;0.2MのNaCl;40%のグリセロールにおける)を加えることによって反応を開始し、反応混合物を60分間(HSV−1 DNAポリメラーゼ)、または30分間(HIV−1 RT)、37℃にてインキュベートした。次に、重合反応を終結するために0.02MのNa
4P
2O
7・10H
2O中5%のTCA(氷冷)1mlを加え、その後、酸不溶性沈殿物(放射性同位元素標識されたDNA)をWhatmanガラスファイバーフィルターGF/C型(GE Healthcare UK Limited,Buckinghamshire,UK)上に捕捉し、遊離の放射性同位元素標識されたdATPを取り除くために5%のTCAおよびエタノールでさらに洗浄した。放射活性をPerkin Elmer Tri−Carb 2810 TR液体シンチレーションカウンターにおいて決定した。
【0052】
結果
複数の許容細胞型におけるHSV−1およびHSV−2の複製のテノホビルによる阻害
実験室HSV株に対するテノホビルの活性をまず、HEL細胞単層および初代ヒトケラチノサイト(PHK)において評価し、ヌクレオシド(すなわち、アシクロビル、ペンシクロビル、ガンシクロビル、およびブリブジン)類似体および非環式ヌクレオチドホスホネート(ANP)(すなわち、シドホビルおよびアデホビル)類似体の抗HSV活性と比較した。テノホビルは、PHKにおいて、HSV−1およびHSV−2に対して約100μg/ml〜約200μg/mlのEC
50値でウイルス誘導細胞変性性を阻害した。アデホビルについてのEC
50値は、3.6μg/ml〜13μg/mlであり、シドホビルについては、0.63μg/ml〜4.4μg/mlであった。HSV−1に対してよりもHSV−2に対して著しく低い活性を有することが知られているブリブジンを除いて、ヌクレオシド類似体は、試験した非環式ヌクレオチドホスホネート類似体のうちのどれよりも活性があることが証明された。
【0053】
非環式ヌクレオシドホスホネート(ANP)のアデホビルおよびシドホビル、およびいくつかのヌクレオシド類似体と並行して、テノホビルをまた、HEL線維芽細胞細胞培養物において、野生型およびアシクロビル抵抗性ウイルス株を含む、多様なHSV−1およびHSV−2臨床単離物に対して評価した。テノホビルは、HSV−1 wt、チミジンキナーゼ欠損HSV−1 TK
−、HSV−2 wt、およびチミジンキナーゼ欠損HSV−2 TKに対して、それぞれ130μg/ml(114μg/ml〜160μg/mlの範囲)、≧166μg/ml(117μg/ml〜≧200μg/mlの範囲)、≧157μg/ml(125μg/ml〜≧200μg/mlの範囲)、および152μg/ml(131μg/ml〜179μg/mlの範囲)の平均EC
50値で全ての臨床単離物の細胞変性効果を阻害した。並行して試験される場合、アデホビルはテノホビルについて見られた平均EC
50値よりも1/20〜1/32低い平均EC
50値を示したが、シドホビルが0.35μg/mlと0.67μg/mlとの間の範囲に及ぶ平均EC
50値を有して最も活性のあるANPであった。従って、テノホビルについての抗ヘルペスEC
50値は、シドホビルについてよりも181倍〜474倍高かった。野生型および変異体TK
− HSV臨床単離物について同様のEC
50値を示した試験したANPと対照的に、アシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、およびブリブジンは、チミジンキナーゼ欠損ヘルペスウイルス株に対してそれらの抗ヘルペス活性を失った。
【0054】
テノホビル、アデホビル、およびアシクロビルを、初代単球/マクロファージ(M/M)細胞培養物においてそれらの抗HSV−2活性についても評価した。ヘルペスウイルス生成は、対照ウイルス感染培養物の上清において2.8±0.9×10
5 TCID
50/mlにまで達し、顕微鏡可視である90%〜100%の細胞変性効果(CPE)(
図1)をもたらした。500μg/mlおよび100μg/mlの両方の濃度におけるテノホビルは、ウイルス感染後6日目に顕微鏡可視CPEの徴候が一切なく完全にウイルス複製を抑制した。20μg/mlおよび5μg/mlにおいて、培養上清におけるウイルスタイターは、未処理の対照におけるウイルスタイターよりも1log超低く、それぞれ約5%および30%の可視CPEをもたらした。1μg/mlまたは0.2μg/mlの薬物濃度においては、テノホビルの明白な保護効果を観測しなかった(2.5×10
5 TCID
50/ml;≧70%〜80%のCPE)(
図1)。予期されたように、アデホビルは、M/Mにおいて、より抗ウイルス活性があった。500μg/mlと5μg/mlとの間の薬物濃度において、上清におけるウイルスの粒子も可視CPEも上記細胞培養物において見出されなかった。1μg/mlおよび0.4μg/mlと同じくらい低いアデホビル濃度でさえ、HSVタイターを著しく低減し(8.5×10
2および5.4×10
3 TCID
50/ml)、可視CPEは、それぞれ5%および45%であった。予期されたように、確立された抗ヘルペス薬物アシクロビルは、M/M細胞培養物におけるヘルペスウイルスの複製を阻害することにおいて極めて有効であることが証明された(上清において放出されたウイルスを完全に抑制し、そして0.008μg/mlと等しい濃度または0.008μg/mlよりも高い濃度において可視の細胞変性性がない)。
【0055】
HIV感染上皮TZM−bl細胞培養物におけるテノホビルによるHSV−2の複製の阻害
上皮TZM−Bl細胞は、HIV(コ)レセプターCD4、CXCR4、およびCCR5でトランスフェクションされたHeLa細胞に由来する。それらは、HIVおよびHSVの両方によって感染し得る。発明者らは、これらの細胞をHIV−1(NL4.3)およびHSV−2(G)に共感染させ、HIVの複製をLTR駆動ルシフェラーゼ発現(発光)によってモニターし、HSV−2の複製をウイルス誘導細胞変性性の顕微鏡読み取りによってモニターした。テノホビルは、共感染培養物において、単独でHSV−2に感染したTZM−bl細胞培養物を阻害するために必要されるテノホビル濃度と同様である約60μg/mlの薬物濃度でHSV−2の感染を防いだ。また、テノホビルによって、進行中のHSV−2感染の存在下、または非存在下でHIV−1を等しく抑制した(データは示されない)。従って、HIV−1およびHSV−2の二重感染の実験条件下で、各ウイルスは、他のウイルスに対するテノホビルの抗ウイルス活性に影響を与えなかった。
【0056】
器官型上皮ラフト培養物におけるテノホビルによるウイルス複製の抑制
分化したケラチノサイトは、インビボでのHSVの産生性感染に対する主要な標的細胞であるので、ケラチノサイトの器官型ラフト培養物におけるテノホビルの抗ウイルス活性を評価した。この3次元培養モデルにおいて、ケラチノサイトは完全に分化し、従って、インビボでの組織状態を忠実に真似ていた。発明者らは、この系において、テノホビル、アデホビル、およびシドホビルのHSVの複製を低減するための能力を比較した。上記器官型上皮ラフト培養物を分化の10日後に感染させ、試験化合物の連続希釈物を用いて処理した。持ち上げ後15日後(すなわち、処理の5日後)に、組織学的実験のために、およびウイルスの定量化のためにラフトを加工した。培養切片の組織学的実験は、対照ラフトにおいて、特徴的な層を有する完全に分化した上皮を示したが、HSV感染ラフトは、明白なウイルス感染および上皮一帯にウイルスの広がりを示した(
図2)。ラフトのHSV感染は、細胞変性効果を生じ、核内好酸性封入体の出現、代表的な上皮内小胞の形成および多核化と一緒にケラチノサイトの気球状化および網状変性をもたらした。
【0057】
上記器官型培養物の形態学的分析は、200μg/mlおよび50μg/mlにおけるテノホビルでの処理がHSV−2誘導細胞変性性に対して上皮全体を保護し、他方、20μg/mlおよび5μg/mlにおいて、正常な上皮の領域および破壊されたラフトを有する領域を有して、その化合物が部分的に保護することを示した(
図2)。2μg/mlの濃度において、テノホビルは、HSV−2に対して不活性であった。≧2μg/mlにおけるアデホビルの投与および0.2μg/mlにおけるシドホビルの投与は、上皮組織の完全な保護をもたらした(データは示されない)。死滅細胞の数の増加または分化の変化として測定される毒性効果を、全ての試験した化合物の最高濃度(テノホビルについて200μg/ml、ならびにアデホビルおよびシドホビルについて50μg/ml)において一切観測しなかった。テノホビル、アデホビル、およびシドホビルの選択的抗HSV効果をまた、上記ラフト培養物が参照HSV−1実験室株に感染している場合に確かめた。この場合において、ウイルス誘導細胞変性効果からの完全な保護を、200μg/mlのテノホビルの濃度、2μg/mlのアデホビルの濃度、および≧0.5μg/mlのシドホビルの濃度において認めた。上記化合物のより低い濃度は、上皮の部分的保護(すなわち、50μg/mlのテノホビル)または完全な破壊(すなわち、20μg/mlのテノホビル)をもたらした。
【0058】
アデホビルおよびシドホビルと比較したテノホビルの抗ウイルス効果を定量化するために、1ラフト当たりのウイルス収量を定量PCRによって決定した。
図3に示されるように、1ラフト当たりのウイルス生成の濃度依存性阻害を、上記化合物の連続濃度を用いたラフトの処理後に観測した。テノホビルにより、試験した最高濃度(すなわち、200μg/ml)でのウイルス生成(プラーク形成単位(PFU))における2.6logの低減(HSV−1)および5.4logの低減(HSV−2)が実証された。50μg/mlにおけるテノホビルの濃度において、0.81log(HSV−1)および1.75log(HSV−2)のウイルス収量の低減を観測した。HSV−2に感染したラフトにおいて、20μg/mlにおいてさえ、ウイルス生成における0.9logの低減を観測した。上記化合物のより低い濃度では、ラフトにおけるウイルス複製を低減することができなかった。予期されたように、アデホビルおよびシドホビルの両方は、HSV複製に対してテノホビルよりも活性があることが証明された(
図3Aおよび3B)。
【0059】
単独で感染したヒトエクスビボリンパ組織およびHIV−1に共感染したヒトエクスビボリンパ組織における、テノホビルによる単純ヘルペスウイルス2型の抑制
HSV−1株F(HSV−1
F)、HSV−2株G(HSV−1
G)、およびHSV−2株MS(HSV−2
MS)の複製に対するテノホビルの効果を、感染したヒト扁桃組織においてエクスビボで調査した(
図4)。この系は、外因性刺激または活性化なしで、種々のウイルスの複製を支持する(17)。このインビボ様組織系における接種の際に、組織ブロックを浸している培養培地におけるウイルスDNAの存在によって、示されるように、HSV−1
F、HSV−2
G、またはHSV−2
MSを効率的に複製した。全ての試験したドナーからの組織は、培養の9日間にわたって培養培地において、HSV−1
F、HSV−2
G、およびHSV−2
MSそれぞれについて、7.8log
10 DNAコピー/ml[四分位数間範囲(IQR)7.1〜8.1、n=5]、7.25log
10コピー/ml(IQR7.2〜7.9、n=6)、および6.4log
10コピー/ml(IQR6.1〜7.5、n=3)に達するウイルスDNAゲノムのメジアン蓄積を有する、明白な産生性ウイルス感染を支持する。
【0060】
HSV複製へのテノホビルの効果を試験するために、ヒト扁桃組織のブロックを3μg/ml〜240μg/mlの範囲に及ぶ薬物濃度で一晩処理し、HSV−1
F、HSV−2
G、またはHSV−2
MSに感染させた。テノホビルを培養期間全体にわたって維持し、各培地の取替えで置き換えた。テノホビルは、HSV−1
Fについて7μg/ml[95%の信頼区間(CI):10〜44];HSV−2
Gについて14μg/ml(CI:10〜163)(
図4A)、およびHSV−2
MSについて19μg/ml(CI:27〜127)のEC
50を有する用量依存の様式で、HSV−1
F、HSV−2
G、およびHSV−2
MSの複製を抑制した。従って、66μg/mlの濃度におけるテノホビルは、HSV−1
F、HSV−2
G、およびHSV−2
MSの複製を、感染したドナー適合(matched)未処理組織と比較して、それぞれ99±0.1%、94±7%(
図4A)、および89±2%まで低減した(p<0.01)。66μg/mlのテノホビルで処理した組織において、感染後9日目に、培養培地におけるウイルスDNAの放出によって測定される場合のHSV−1
Fの複製は、未処理の適合ドナー組織(n=3)における8log
10 DNAコピー/ml(IQR7.87〜8.04)と比較して4log
10 DNAコピー/ml(IQR3.9〜4.3)であった。同様に、感染後9日目において、HSV−2
GおよびHSV−2
MSの複製は、未処理組織において、それぞれ7.6log
10 DNAコピー/ml(IQR7.4〜7.8)、および7.3log
10 DNAコピー/ml(IQR6.9〜7.6)をもたらしたが、66μg/mlのテノホビルで処理した適合ドナー組織において、5.2log
10 DNAコピー/ml(IQR3.6〜6.1、n=14)、および5.8log
10 DNAコピー/ml(IQR5.7〜6.1、n=3)であった。
【0061】
最も高い薬物濃度においてでさえ、HSV−1
F、HSV−2
G、およびHSV−2
MSの複製の抑制は、測定可能な扁桃組織リンパ球の枯渇と関係なかった:60μg/mlのテノホビルで処理した組織とドナー適合未処理組織との間で、総T細胞(CD3
+)、総B細胞(CD19
+)、またはナイーブT細胞および記憶T細胞のサブセットの絶対数において、統計的有意差はなかった(n=3、p>0.4)。
【0062】
HSV−2およびHIV−1に対するテノホビルの二重抗ウイルス活性を評価するために、発明者らは、前に記載されるように(16)扁桃組織をHSV−2
GおよびHIV−1
X4LAIに共感染させ、培養期間全体にわたってそれらを66μg/mlの濃度におけるテノホビルで処理した。未処理の対照組織において、培養培地へのHSV−2
G DNAの放出は、7.3log
10コピー/ml(IQR6.8〜7.4)であり、他方、HIV−1に共感染させたドナー適合テノホビル処理組織において、培養培地へのHSV−2
G DNAの放出は、5log
10コピー/ml(IQR4.3〜5.7、n=6)であった。従って、これらの組織において、66μg/mlのテノホビルは、HSV−2
Gの複製を96±1%まで抑制した(n=6;p<0.01)(
図4B)。感染後9日目に、培養培地へのp24の放出によって測定されたHIV−1
X4LAIの複製を、全ての試験した組織において完全に抑制した(未処理対照において2462±1117pg/ml対ドナー適合テノホビル処理組織において0pg/ml)(
図4B)。
【0063】
HSV−2
Gにおけるテノホビルの抗ウイルス活性の特異性を確かめるために、発明者らは、33μg/mlの濃度における強いHIVヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(NRTI)ラミブジンを用いて組織を処理した。発明者らは、未処理のドナー適合HSV−2
G感染組織と比較して、2つのドナーからの組織において、HSV−2
Gの複製へのラミブジンの効果を見出さなかった(データは示されない)。予期されたように、ラミブジンは、HIV−1の複製において強い効果を示した。従って、テノホビルの抗ヘルペス効果は、NRTIの一般的な特性ではない。
【0064】
また、エクスビボでの扁桃組織において、テノホビル処理の起こり得る免疫調節効果を評価するために、発明者らは、培養培地において、66μg/mlの濃度におけるテノホビルで9日間処理したドナー適合組織から20個のサイトカイン(IL−1、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IFN、CCL3/MIP−1、CCL4/MIP−1、CCL20/MIP−3、CCL5/RANTES、CXCL12/SDF−1、TGF、TNF、CCL2/MCP−1、CCL11/エオタキシン、CXCL9/MIG、CXCL10/IP−10`)の濃度を測定した。感染後9日目に、未処理組織およびテノホビルで処理した組織における評価したサイトカインのいずれの濃度間でも有意差はなかった(p>0.15)。
【0065】
ヒトエクスビボ頸膣組織におけるテノホビルによるHSV−2の抑制
頸膣組織においてテノホビルの抗HSV活性を調査するために、この組織のブロックを前に記載されるように培養し、HSV−2
Gを接種し、薬物で処理した。166μg/mlの濃度におけるテノホビルをHSV−2
G感染時に加え、各培地の取替えでそれを補給することによって実験の持続期間にわたって維持した。HSV−2
Gの複製を、頸膣組織ブロック(1条件当たり16ブロック)を浸している培養培地へのウイルスのDNAの放出によって評価した。テノホビルで処理されていない対照組織において、5つの全ての試験したドナーからの組織において、12日間の培養にわたって6.6log
10コピー/ml(IQR5.3〜8.2)のメジアン累積生成を有するウイルスの複製を検出した。テノホビルで処理した頸膣組織において、ウイルス生成を5.5log
10コピー/mL(IQR4.8〜5.7、n=5)(
図4Cおよび
図4D)まで低減し、各実験におけるウイルス複製の低減を平均する場合に78±9%の低減を反映した(p<0.01)。
【0066】
HSV感染マウスにおけるテノホビルの活性
2つの異なるビヒクル−DMSO(
図5)およびCAPRISA 004研究において使用されるゲルを用いて、テノホビル、アデホビル、およびシドホビルを、HSV−1感染マウスおよびHSV−2感染マウスにおける抗ヘルペス薬(antiherpetics)として評価した(データは示されない)。全ての化合物を1%の濃度で、感染の日から始めて5日間、HSV−1感染マウスおよびHSV−2感染マウスに投与した。HSV−1に感染し、1%のテノホビルで処置したマウスの罹患および生存曲線の両方は、プラセボ処置群と比較して有意に遅延した。予期されたように、動物がDMSOまたはゲル中1%のアデホビルを受けた場合、それぞれ80%および100%の生存を観測したので、アデホビルは、テノホビルと比較して、DMSO(
図5A)およびゲル処方物(データは示されない)の両方においてより効果的であることが証明された。DMSO処方物中1%のアデホビルで処置されたマウスが皮膚病変を発症せずに死亡したことに言及すべきである(
図5A)。DMSOまたはゲル処方物のいずれかにおけるシドホビルでの処置は、ウイルス誘導罹患および死亡に対してマウスを完全に保護した。
【0067】
テノホビルがDMSO処方物においてHSV−2に対して評価される場合、感染の日から始めてテノホビルを受けた群とプラセボ群との間で、生存曲線および罹患曲線において、再度、統計的有意差があった。1%のアデホビルまたは1%のシドホビルを用いたHSV−2感染マウスの処置は、ウイルス誘導罹患および死亡に対して、それぞれ80%および100%の保護をもたらした(
図5B)。同様に、1%でゲル中に処方される場合に、テノホビルは、ヘルペスウイルス関連病変の出現および動物のその後の死亡を遅延した(データは示されない)。ゲル中に処方されたシドホビルは、HSV−2誘導罹患および死亡に対して80%の保護をもたらし、他方、アデホビルは、同じ実験条件下で病変の出現およびその後の死亡の有意な遅延を提供した。
【0068】
リンパ球、上皮、および線維芽細胞細胞培養物において、テノホビルをその抗ウイルス性活性代謝産物に効率的に転換する
テノホビルのその抗ウイルス性活性(ジホスホリル化(diphosphorylated))代謝産物への代謝変換を、以前に確立された手順(19)に従って、ヒトリンパ球CEM(HIV感染実験に使用した)ならびにヒト上皮TZM−blおよび線維芽細胞HEL(HSV感染実験に使用した)細胞培養物において研究した。培養物の開始後72時間における2μMの[2,8−
3H]テノホビルを用いた細胞の24時間の間の処理は、テノホビル−ジホスフェートの形成をもたらし、Tリンパ細胞、上皮細胞、および線維芽細胞において、それぞれ13pモル/10
9細胞、6pモル/10
9細胞、および15pモル/10
9細胞のレベルに達した。従って、インビボでのHIVまたはHSV感染のいずれかに対して関連がある標的細胞を代表する複数の異なる細胞型において、テノホビルをその抗ウイルス性活性代謝産物に転換した。
【0069】
テノホビルの活性代謝産物は、HSV DNAのポリメラーゼおよびHIV逆転写酵素の両方を効率的に阻害する
ウイルスをコードするヘルペスウイルスDNAのポリメラーゼまたはHIV−1逆転写酵素のインヒビターとしての活性を有するために、テノホビルは、細胞酵素によって、そのジホスホリル化誘導体(テノホビル−DP)に転換される必要がある。活性代謝産物は、プライマー/鋳型として活性化仔ウシ胸腺DNA、および競合基質として[2,8−
3H]dATPを用いて、標的酵素に対するその阻害活性について評価されてきた。テノホビル−DPは、HIV−1 RT(IC
50:4.3μM)およびHSV−1 DNAポリメラーゼ(IC
50:1.3μM)の両方を効率的に阻害する。従って、細胞培養物、器官型上皮ラフト培養物、ヒトリンパ球および頸部エクスビボ組織、ならびにウイルス感染マウスにおけるテノホビルの抗ヘルペス活性を、その活性代謝産物テノホビル−DPによるウイルスDNAポリメラーゼの阻害によって説明し得る。
【0070】
処方物(膣のゲル)
(%w/w)
テノホビル 1.00
ヒドロキシエチルセルロース、NF
(Natrasol(登録商標)250H) 2.50
プロピルパラベン、NF 0.02
メチルパラベン、NF 0.18
エデト酸二ナトリウム、USP 0.05
グリセリン、USP 20.00
クエン酸、USP 1.00
純水、USP
75.25
合計 100.00。
【0071】
水酸化ナトリウムおよび塩酸をpHを4.4の標的に調整するための10%w/w溶液として使用する。メチルパラベンおよびプロピルパラベンを加熱したグリセリンに溶解させる。ヒドロキシエチルセルロースを加え、分散させて有機相を形成する。エデト酸二ナトリウムおよびクエン酸を純水に溶解させ、テノホビルを加え、分散させ、pHを4.4に調整し、そして溶液を0.22μmのフィルターに通すことによって清浄化する。水相および有機相を混合し、よく撹拌し、次にチューブまたはアプリケーターに充填する。
【0072】
安全性および忍容性
1%のBIDを用いたテノホビル膣ゲルは、限定された全身吸収性(systemic absorption)を有し、膣のミクロフロラに対して起こり得る有益な効果を有して、禁欲的および性的に活発なHIV(−)およびHIV(+)女性において忍容性が良好であった。
【0073】
研究手順
本研究の目的は、膣に適用される場合に、単純ヘルペスウイルス、特にHSV−2の伝播を防ぐことにおけるテノホビルゲルの有効性を評価することであった。
【0074】
本研究は、性感染HIV感染に対して高いリスクがある18歳〜40歳の889人の性的に活発な女性の中で、1%のテノホビルゲルの効果をプラセボゲルと比較した第IIb相試験−2群二重盲検無作為化対照試験であった。
【0075】
プラセボゲル(「万能(universal)」プラセボゲルとして公知)を研究の最終段階におけるあらゆる起こり得る影響(マイナスまたはプラス)を最小にするために処方した。それは、上皮細胞の腫脹または脱水を避けるために等張である。それは、4〜5のpHにおいて処方されたが、最小の緩衝能を有した。等量の精液と混合される場合、上記プラセボゲルは、精液pH(7.8〜7.7)において、取るに足らない減少のみを引き起こした。上記プラセボゲルは、ゲル化剤としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含み、その粘性は、テノホビルゲルの粘性と同等であった。上記ゲルは、抗HIVまたは抗HSV−2の特性を有さない。上記ゲルは、保存剤としてソルビン酸を含んだ。ソルビン酸は、抗HIV活性を有さず、ヒト細胞によって容易に代謝される。プラセボゲルを以下のように処方した:
【0076】
【表1】
割り当てた研究製品を保存および適用する適切な方法を参加者に教育した。参加者に、膣性交の各行為の12時間前までに製品の1用量(1つのアプリケーターの中身全体)を膣に挿入し(性交は、製品の挿入後すぐに行われ得る)、性交後できるだけすぐに、とはいえ12時間以内に第二用量を挿入することを指示した。
【0077】
研究参加者に以下を勧めた:
・単に割り当てられた製品を膣に適用すること。
・ゲル挿入後2時間は膣洗浄もしくは他の方法で膣を洗浄しないこと、または他の物体もしくは膣製品を挿入しないこと。女性が性交後に膣洗浄する計画である場合、膣洗浄後にゲルを挿入することを彼女に勧めた。
・彼らの研究製品を適切に保存すること(直射日光の当たらない涼しい乾燥した場所で)。
・コンドームを使用してもしなくても、研究製品を使用すること。
【0078】
研究参加者は、彼らの参加期間の間、毎月の追跡訪問を完了し、HIVおよびHSV−2について試験するために、登録時、次に追跡の間の予め特定された時点、および研究終了時に採血した。
【0079】
結果
HSV−2の存在を、Kalon HSV−2型特異的EIA(Kolon Biological Ltd.,United Kingdom)を用いて、採った血液サンプルにおいて決定した。登録時、888人の女性のうち454人(1人の女性は、試験のために保管された血液を有さなかった)は、既存のHSV−2感染を有し、51.1%の有病率をもたらした。残りの434人の女性を、試験への参加時にHSV−2に感染しやすいとみなし、終了時のHSV−2状態をこれらの女性のうちの426人において決定した。これらの女性のうちの4人は、保管された研究終了時の標本を有さず、4人は、研究終了時において不確定なHSV−2の結果を有したことに留意すべきである。
【0080】
研究期間の間テノホビル処方物を使用した205人の女性のうち29人はHSV−2に感染した。研究期間の間プラセボを提供された224人の女性のうち58人はHSV−2に感染した。従って、テノホビルゲルは、HSV−2に対して51%の保護を提供した。
【0081】
【表2】
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許出願は、あたかも個別の刊行物または特許出願のそれぞれが具体的におよび個別に参考として本明細書中で援用されることが示されるのと同程度まで、参考として本明細書中で援用される。
【0082】
特定の実施形態が上に詳細に記載されるが、当業者は、実施形態において、その教示から外れることなく多くの改変が可能であることを明らかに理解する。全てのそのような改変は、本発明の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。