特許第5864573号(P5864573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864573検知した磁場信号とノイズ信号との間の識別を改良した磁場センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864573
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】検知した磁場信号とノイズ信号との間の識別を改良した磁場センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20160204BHJP
   G01N 27/72 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   G01R33/06 H
   G01N27/72
【請求項の数】44
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-521782(P2013-521782)
(86)(22)【出願日】2011年6月7日
(65)【公表番号】特表2013-537626(P2013-537626A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】US2011039394
(87)【国際公開番号】WO2012015533
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年4月24日
(31)【優先権主張番号】12/845,115
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100091063
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ,エルナン・デー
(72)【発明者】
【氏名】モンレアル,ジェラルド
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/057626(WO,A1)
【文献】 特開2008−286695(JP,A)
【文献】 特開2005−94195(JP,A)
【文献】 特表2010−507095(JP,A)
【文献】 特開2002−168965(JP,A)
【文献】 特表2009−511860(JP,A)
【文献】 国際公開第02/03087(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/011479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02−33/26
G01N 27/72−27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場センサであって、
磁場に応答してホール・エレメント出力信号を生成するように構成されているホール・エレメントであって、前記ホール・エレメント出力信号が、磁場信号成分とオフセット信号成分とを含む、ホール・エレメントと、
前記ホール・エレメント出力信号を受け取るように結合されており、変調回路出力信号を生成するように構成されているホール・エレメント変調回路であって、第1最低周波数から第1最高周波数まで変化し、更に前記第1最低周波数と前記第1最高周波数との間における複数の周波数まで変化する第1変化変調周波数を有する第1変調信号によって、前記磁場信号成分または前記オフセット信号成分を変調するように動作可能な、ホール・エレメント変調回路と、
前記変調回路出力信号を受け取るように結合されており、増幅回路出力信号を生成するように構成されている増幅回路と、
前記増幅回路出力信号を受け取るように結合されており、磁場センサ出力信号を生成するように構成されているフィルタ回路と、
を備えており、
前記フィルタ回路が、
アンチ・エリアス信号を生成するように構成されているアンチ・エリアス・フィルタと、
前記アンチ・エリアス・フィルタに結合され、前記第1変化変調周波数に関係がある変化サンプリング周波数を有するサンプリング信号にしたがって、前記アンチ・エリアス信号を表す信号をサンプリングするように構成されている離散時間選択フィルタであって、前記第1変化変調周波数に関係がある変化ノッチ周波数を有する、離散時間選択フィルタと、
を備えている、磁場センサ。
【請求項2】
請求項1記載の磁場センサにおいて、前記第1変化変調周波数が、前記第1最低周波数から前記第1最高周波数まで、線形掃引で変化する、磁場センサ。
【請求項3】
請求項1記載の磁場センサにおいて、前記第1変化変調周波数が、前記第1最低周波数から前記第1最高周波数まで、非線形周波数掃引で変化する、磁場センサ。
【請求項4】
請求項1記載の磁場センサにおいて、前記第1変化変調周波数が、前記第1最低周波数から前記第1最高周波数まで、2つより多くの不連続な周波数段階に沿って変化する、磁場センサ。
【請求項5】
請求項1記載の磁場センサにおいて、前記第1変化変調周波数が、複数の不連続な周波数段階に沿って変化する、磁場センサ。
【請求項6】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記増幅回路が、前記変調回路出力信号を表す信号を、第2最低周波数から第2最高周波数まで変化し、更に前記第2最低周波数と前記第2最高周波数の間における少なくとも1つの周波数まで変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号で変調するように構成されている切替回路を備えている、磁場センサ。
【請求項7】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記第2変化変調周波数が、前記第1変化変調周波数に等しく、これと同期する、磁場センサ。
【請求項8】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記第2変化変調周波数が、前記第1変化変調周波数とは異なるが、これと同期する、磁場センサ。
【請求項9】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記増幅回路が、前記変調回路出力信号を表す信号を、第2最低周波数から第2最高周波数まで変化し、更に前記第2最低周波数と前記第2最高周波数の間における少なくとも1つの周波数まで変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号に対応するレートでサンプリングするように構成されているサンプル/ホールド回路を備えている、磁場センサ。
【請求項10】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記第2変化変調周波数が、前記第1変化変調周波数に等しく、これと同期する、磁場センサ。
【請求項11】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記アンチ・エリアス・フィルタが、前記変化サンプリング周波数と関連のある最高サンプリング周波数の半分よりも高い周波数成分を低減するように選択された折点周波数を有する、磁場センサ。
【請求項12】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記変化サンプリング周波数が、前記第1変化変調周波数に整数を乗算した値に等しい、磁場センサ。
【請求項13】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記変化サンプリング周波数が、前記第1変化変調周波数に等しい、磁場センサ。
【請求項14】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記変化サンプリング周波数が、前記第1変化変調周波数の2倍に等しい、磁場センサ。
【請求項15】
請求項記載の磁場センサにおいて、前記変化ノッチ周波数が、前記第1変化変調周波数に等しい、磁場センサ。
【請求項16】
請求項記載の磁場センサであって、更に、前記第1変化変調周波数に関係がある変化周波数を有する電圧制御発振器出力信号を生成するように構成されている電圧制御発振器を備えている、磁場センサ。
【請求項17】
請求項16記載の磁場センサであって、更に、前記電圧制御発振器出力信号を受け取るように結合されており、前記第1変調信号、前記第2変調信号、または前記サンプリング信号の内少なくとも1つを生成するように構成されているクロック生成回路を備えている、磁場センサ。
【請求項18】
請求項16記載の磁場センサであって、更に、前記電圧制御発振器出力信号の変化周波数を制御するための出力信号を生成するように構成されている信号生成回路を備えている、磁場センサ。
【請求項19】
請求項18記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで傾斜する線形電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項20】
請求項18記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで変化する非線形電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項21】
請求項18記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで複数の不連続な電圧段階に沿って変化する階段状電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項22】
請求項18記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、複数の不連続な電圧段階に沿って変化する階段状電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項23】
請求項1記載の磁場センサであって、更に、前記第1変化変調周波数に関係がある変化周波数を有する電圧制御発振器出力信号を生成するように構成されている電圧制御発振器を備えている、磁場センサ。
【請求項24】
磁場センサであって、
磁場に応答してホール・エレメント出力信号を生成するように構成されているホール・エレメントであって、前記ホール・エレメント出力信号が、磁場信号成分とオフセット信号成分とを含む、ホール・エレメントと、
前記ホール・エレメント出力信号を受け取るように結合されており、変調回路出力信号を生成するように構成されているホール・エレメント変調回路であって、第1最低周波数から第1最高周波数まで第1線形周波数掃引で変化する第1変化変調周波数を有する第1変調信号によって、前記磁場信号成分または前記オフセット信号成分を変調するように動作可能な、ホール・エレメント変調回路と、
を備えている、磁場センサ。
【請求項25】
請求項24記載の磁場センサであって、更に、前記変調回路出力信号を受け取るように結合されており、増幅回路出力信号を生成するように構成されている増幅回路を備えている、磁場センサ。
【請求項26】
請求項25記載の磁場センサにおいて、前記増幅回路が、前記変調回路出力信号を表す信号を、第2最低周波数から第2最高周波数まで変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号で変調するように構成されている切替回路を備えている、磁場センサ。
【請求項27】
請求項26記載の磁場センサにおいて、前記第2変化変調周波数が、前記第1変化変調周波数に等しく、これと同期する、磁場センサ。
【請求項28】
請求項26記載の磁場センサにおいて、前記第2変化変調周波数が、前記第1変化変調周波数とは異なるが、これと同期する、磁場センサ。
【請求項29】
請求項25記載の磁場センサにおいて、前記増幅回路が、前記変調回路出力信号を表す信号を、第2最低周波数から第2最高周波数まで変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号に対応するレートでサンプリングするように構成されているサンプル/ホールド回路を備えている、磁場センサ。
【請求項30】
請求項29記載の磁場センサにおいて、前記第2変化変調周波数が、前記第1変化変調周波数に等しく、これと同期する、磁場センサ。
【請求項31】
請求項25記載の磁場センサであって、更に、前記増幅回路出力信号を受け取るように結合されており、磁場センサ出力信号を生成するように構成されているフィルタ回路を備えており、前記フィルタ回路が、
アンチ・エリアス信号を生成するように構成されているアンチ・エリアス・フィルタと、
前記アンチ・エリアス・フィルタに結合され、前記第1変化変調周波数に関係がある変化サンプリング周波数を有するサンプリング信号にしたがって、前記アンチ・エリアス信号を表す信号をサンプリングするように構成されている離散時間選択フィルタであって、前記第1変化変調周波数に関係がある変化ノッチ周波数を有する、離散時間選択フィルタと、
を備えている、磁場センサ。
【請求項32】
請求項31記載の磁場センサにおいて、前記アンチ・エリアス・フィルタが、前記変化サンプリング周波数と関連のある最高サンプリング周波数の半分よりも高い周波数成分を低減するように選択された折点周波数を有する、磁場センサ。
【請求項33】
請求項31記載の磁場センサにおいて、前記変化サンプリング周波数が、前記第1変化変調周波数に整数を乗算した値に等しい、磁場センサ。
【請求項34】
請求項31記載の磁場センサにおいて、前記変化サンプリング周波数が、前記第1変化変調周波数に等しい、磁場センサ。
【請求項35】
請求項31記載の磁場センサにおいて、前記変化サンプリング周波数が、前記第1変化変調周波数の2倍に等しい、磁場センサ。
【請求項36】
請求項31記載の磁場センサにおいて、前記変化ノッチ周波数が、前記第1変化変調周波数に等しい、磁場センサ。
【請求項37】
請求項31記載の磁場センサであって、更に、前記第1変化変調周波数に関係がある変化周波数を有する電圧制御発振器出力信号を生成するように構成されている電圧制御発振器を備えている、磁場センサ。
【請求項38】
請求項37記載の磁場センサであって、更に、前記電圧制御発振器出力信号を受け取るように結合されており、前記第1変調信号、前記第2変調信号、または前記サンプリング信号の内少なくとも1つを生成するように構成されているクロック生成回路を備えている、磁場センサ。
【請求項39】
請求項37記載の磁場センサであって、更に、前記電圧制御発振器出力信号の変化周波数を制御するための出力信号を生成するように構成されている信号生成回路を備えている、磁場センサ。
【請求項40】
請求項39記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで傾斜する線形電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項41】
請求項39記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで変化する非線形電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項42】
請求項39記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで複数の不連続な電圧段階に沿って変化する階段状電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項43】
請求項39記載の磁場センサにおいて、前記信号生成器の出力信号が、複数の不連続な電圧段階に沿って変化する階段状電圧信号を含む、磁場センサ。
【請求項44】
請求項24記載の磁場センサであって、更に、前記第1変化変調周波数に関係がある変化周波数を有する電圧制御発振器出力信号を生成するように構成されている電圧制御発振器を備えている、磁場センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、磁場センサに関し、更に特定すれば、ノイズの影響を低減するように構成した磁場センサに関するものである。
【従来技術】
【0002】
磁場を検出する磁場センサは公知である。磁場センサでは、ホール・エレメントまたは磁気抵抗エレメントというような磁場検知エレメントによって磁場を検出する。これらのエレメントは、検出した磁場に比例する信号(即ち、磁場信号)を供給する。構成の中には、磁場信号が電気信号である場合もある。
【0003】
磁場センサは、磁場の磁場密度を検知する線形磁場センサ、電流搬送動体を流れる電流によって生成される磁場を検知する電流センサ、強磁性物体の近接を検知する磁気スイッチ、および強磁性物品の通過を検知する回転検出器を含むが、これらには限定されない、種々の用途に用いられている。
【0004】
線形磁場センサでは、出力信号は、検知した磁場に直接比例して変化する。磁気スイッチでは、出力信号は検知した磁場に応答して状態を変化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁場センサは、ノイズの影響を受け、磁場センサの精度を低下させる傾向がある。ノイズは、外部磁場ノイズ発生源および外部電界ノイズ発生源を含むが、これらには限定されない、種々のノイズ発生源から来る可能性がある。
【0006】
所望の磁場信号からノイズを区別する(判別する)ことができる磁場センサを有することができれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、時間と共に周波数を変化させる変調クロック信号を有する磁場センサを提供する。これによって得られる磁場センサ出力信号は、当該磁場センサ出力信号において磁場信号からノイズ信号をより良く判別することを可能にする。
【0008】
本発明の一態様によれば、磁場センサは、磁場に応答してホール・エレメント出力信号を生成するように構成されているホール・エレメントを含む。このホール・エレメント出力信号は、磁場信号成分とオフセット信号成分とを含む。また、磁場センサは、ホール・エレメント出力信号を受け取るように結合されており、変調回路出力信号を生成するように構成されているホール・エレメント変調回路も含む。このホール・エレメント変調回路は、最低周波数と最高周波数との間で変化する変化変調周波数を有する変調信号によって、磁場信号成分またはオフセット信号成分を変調するように動作可能である。
【0009】
また、この磁場センサは、以下の態様の内1つ以上を含むこともできる。
実施形態の中には、第1変化変調周波数が、第1最低周波数から第1最高周波数まで、線形掃引で変化する場合もある。
【0010】
実施形態の中には、第1変化変調周波数が、第1最低周波数から第1最高周波数まで、非線形掃引で変化する場合もある。
実施形態の中には、第1変化変調周波数が、第1最低周波数から第1最高周波数まで、複数の不連続な周波数段階に沿って変化する場合もある。
【0011】
実施形態の中には、第1変化変調周波数が、複数の不連続な周波数段階に沿って変化する場合もある。
実施形態の中には、磁場センサが、更に、変調回路出力信号を受け取るように構成されており、増幅回路出力信号を生成するように構成されている増幅回路を含む場合もある。
【0012】
実施形態の中には、増幅回路が、変調回路出力信号を表す信号を、第2最低周波数と第2最高周波数との間で変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号で変調するように構成されている切替回路を備えている場合もある。
【0013】
実施形態の中には、第2変化変調周波数が、第1変化変調周波数に等しく、これと同期する場合もある。
実施形態の中には、第2変化変調周波数が、第1変化変調周波数とは異なるが、これと同期する場合もある。
【0014】
実施形態の中には、増幅回路が、変調回路出力信号を表す信号を、第2最低周波数と第2最高周波数との間で変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号に対応するレートでサンプリングするように構成されているサンプル/ホールド回路を備えている場合もある。
【0015】
実施形態の中には、第2変化変調周波数が、第1変化変調周波数に等しく、これと同期する場合もある。
実施形態の中には、磁場センサが、更に、増幅回路出力信号を受け取るように結合されており、磁場センサ出力信号を生成するように構成されているフィルタ回路を含む場合もある。このフィルタ回路は、アンチ・エリアス信号を生成するように構成されているアンチ・エリアス・フィルタと、アンチ・エリアス・フィルタに結合され、第1変化変調周波数に関係がある変化サンプル周波数を有するサンプリング信号にしたがって、アンチ・エリアス信号を表す信号をサンプリングする離散時間選択フィルタとを含む。離散時間選択フィルタは、第1変化変調周波数に関係がある変化ノッチ周波数を有する。
【0016】
実施形態の中には、アンチ・エリアス・フィルタが、変化サンプリング周波数と関連のある最高サンプリング周波数の半分よりも高い周波数成分を低減するように選択された折点周波数を有する場合もある。
【0017】
実施形態の中には、変化サンプリング周波数が、第1変化変調周波数に整数を乗算した値に等しい場合もある。
実施形態の中には、変化サンプリング周波数が、第1変化変調周波数に等しい場合もある。
【0018】
実施形態の中には、変化サンプリング周波数が、第1変化変調周波数の2倍に等しい場合もある。
実施形態の中には、変化ノッチ周波数が、第1変化変調周波数に等しい場合もある。
【0019】
実施形態の中には、磁場センサが、更に、第1変化変調周波数に関係がある変化周波数を有する電圧制御発振器出力信号を生成するように構成されている電圧制御発振器を含む場合もある。
【0020】
実施形態の中には、磁場センサが、更に、電圧制御発振器出力信号を受け取るように結合されており、第1変調信号、第2変調信号、またはサンプリング信号の内少なくとも1つを生成するように構成されているクロック生成回路を含む場合もある。
【0021】
実施形態の中には、磁場センサが、更に、電圧制御発振器出力信号の変化周波数を制御するための出力信号を生成するように構成されている信号生成回路を含む場合もある。
実施形態の中には、信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで傾斜する線形電圧信号を含む場合もある。
【0022】
実施形態の中には、信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで変化する非線形電圧信号を含む場合もある。
実施形態の中には、信号生成器の出力信号が、最低電圧値から最大電圧値まで複数の不連続な電圧段階に沿って変化する階段状電圧信号を含む場合もある。
【0023】
実施形態の中には、信号生成器の出力信号が、複数の不連続な電圧段階に沿って変化する階段状電圧信号を含む場合もある。
実施形態の中には、磁場センサが、更に、第1変化変調周波数に関係がある変化周波数を有する電圧制御発振器出力信号を生成するように構成されている電圧制御発振器を含む場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の以上の特徴、そして本発明自体は、以下の添付図面の詳細な説明から、一層深く理解されよう。
図1図1は、ホール・エレメント、変調回路、チョッパ安定化増幅器を有する増幅回路、ならびにアンチ・エリアス・フィルタ(anti-alias filter)および離散時間選択フィルタを有するフィルタ回路を有し、固定クロック(即ち、周波数が固定されたクロック信号)によってクロック部分(clocked portion)が駆動される(clock)、先行技術の磁場センサを示すブロック図である。
図1A図1Aは、ホール・エレメント、変調回路、サンプル/ホールド回路、およびロー・パス・フィルタを有するフィルタ回路を有し、固定クロックによってクロック部分が駆動される、別の先行技術の磁場センサを示すブロック図である。
図2図2は、図1および図1Aの磁場センサにおいてホール・エレメントとして用いることができるホール・エレメントを有し、更にオフセット成分をもっと高い周波数に変調するために、図1および図1Aの磁場センサにおいて変調回路として用いることができる変調回路を有する切替ホール・エレメントを示すブロック図である。
図2A図2Aは、図2の切替ホール・エレメントのクロック信号を示すグラフである。
図2B図2Bは、図2の切替ホール・エレメントによって供給される変調オフセット成分を示すグラフである。
図2C図2Cは、図2の切替ホール・エレメントによって供給される無変調磁場信号成分を示すグラフである。
図3図3は、図1および図1Aの磁場センサにおいてホール・エレメントとして用いることができるホール・エレメントを有し、更にオフセット成分をもっと高い周波数に変調するために、図1および図1Aの磁場センサにおいて変調回路として用いることができる変調回路を有する切替ホール・エレメントを示すブロック図である。
図3A図3Aは、図3の切替ホール・エレメントのクロック信号を示すグラフである。
図3B図3Bは、図3の切替ホール・エレメントによって供給される無変調オフセット成分を示すグラフである。
図3C図3Cは、図3の切替ホール・エレメントによって供給される変調磁場信号成分を示すグラフである。
図4図4は、図1および図1AのポイントAにおいて現れるシングル・エンド信号として4つの信号を示すグラフである。
図4A図4Aは、図1のポイントBにおいて現れる変調オフセット成分および無変調信号成分を有する差動信号(differential signal)を示すグラフである。
図4B図4Bは、図1のポイントCに現れる復調磁場信号成分および変調オフセット成分を有する差動信号を示すグラフである。
図4C図4Cは、図1および図1AのポイントDに現れる復調信号成分および濾波(filtered)変調オフセット成分を有する濾波差動信号を示すグラフである。
図5図5は、ホール・エレメント、変調回路、チョッパ安定化増幅器を有する増幅回路、ならびにアンチ・エリアス・フィルタ(anti-alias filter)および離散時間選択フィルタを有するフィルタ回路を有し、変調クロック信号に比例して周波数が変化するクロックによってクロック部分が駆動される、磁場センサを示すブロック図である。
図5A図5Aは、ホール・エレメント、変調回路、サンプル/ホールド回路、およびロー・パス・フィルタを有するフィルタ回路を有し、変調クロック信号に比例して周波数が変化するクロックによってクロック部分が駆動される、他の磁場センサを示すブロック図である。
図6図6は、図5または図5AのVCOに制御信号として供給することができる電圧ランプ(voltage ramp)を示すグラフである。
図6A図6Aは、図6の電圧ランプに応答して、図5または図5Aの変調クロック信号として生成することができる可変周波数を示す周波数ドメインのグラフである。
図7図7は、図5の増幅回路内において第1切替回路の後または図5Aの変調回路の出力において生成することができる、可変周波数およびその高調波を有する変調信号を示し、更に図5または図5Aの増幅回路の出力あるいは図5または図5Aのフィルタ回路の出力において生成することができるベースバンド(復調)信号も示す、周波数ドメインのグラフである。
図8図8は、図5の増幅回路内において第1切替回路の後または図5Aの変調回路の出力において生成することができ、可変周波数を有する(がその高調波を削除した)変調信号を示し、更に変調信号の帯域内に発生こともあり得るノイズ信号も示し、更に図5または図5Aの増幅回路の出力あるいは図5または図5Aのフィルタ回路の出力において生成することができるベースバンド(復調)信号も示し、更に図5または図5Aの増幅回路の出力あるいは図5または図5Aのフィルタ回路の出力において生成することができるベースバンドに復調したノイズ信号も示す、周波数ドメインのグラフである。
図9図9は、線形可変周波数を有する図5および図5Aの変調クロック信号の一例を示す時間ドメインのグラフである。図9Aは、ノイズ信号が存在するときに、そして図9において示した線形可変周波数を有する変調クロック信号に応答して、図5のポイントCにおいて生成することができる出力信号を示す時間ドメインのグラフである。図9Bは、ノイズ信号が存在するときに、そして図9において示した線形可変周波数を有する変調クロック信号に応答して、図5および図5Aのフィルタ回路の出力において生成することができる出力信号を示す時間ドメインのグラフである。
図10図10は、周波数段差を有する図5および図5Aの変調クロック信号の一例を示す時間ドメインのグラフである。図10Aは、ノイズ信号が存在するときに、そして図10に示した不連続な周波数段階を有する変調クロック信号に応答して、図5のポイントCにおいて生成することができる出力信号を示す時間ドメインのグラフである。図10Bは、ノイズ信号が存在するときに、そして図10に示した不連続な周波数段階を有する変調クロック信号に応答して、図5および図5Aのフィルタ回路の出力において生成することができる出力信号を示す時間ドメインのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明について述べる前に、いくつかの導入概念および用語について説明する。本明細書において用いる場合、「磁場検知エレメント」という用語は、磁場を検知することができる様々な種類の電子エレメントを記述するために用いられる。磁場検知エレメントは、ホール・エレメント、磁気抵抗エレメント、または磁気トランジスタ(magnetotransistor)とすることができるが、これらに限定されるのではない。周知のように、ホール・エレメントには異なる種類、例えば、平面ホール・エレメント、垂直ホール・エレメント、円形ホール・エレメントがある。また、周知のように、磁気抵抗エレメントには異なる種類、例えば、異方性磁気抵抗(AMR)エレメント、巨大磁気抵抗(GMR)エレメント、トンネリング磁気抵抗(TMR)エレメント、アンチモン化インジウム(InSb)エレメント、および磁気トンネル接合(MTJ)エレメントがある。
【0026】
本明細書における例では、ホール効果エレメント(ホール・エレメント)を用いる。
周知のように、前述の磁場検知エレメントの一部は、磁場検知エレメントを支持する基板に対して平行に最大感度の軸を有することが多く、前述の磁場検知エレメントの他のものは、磁場検知エレメントを支持する基板に対して垂直に最大感度の軸を有することが多い。具体的には、全部ではないが、多くの種類の磁気抵抗エレメントは基板に対して平行に最大感度の軸を有することが多く、全部ではないが、多くの種類のホール・エレメントは、基板に対して垂直に感度の軸を有することが多い。
【0027】
本明細書において用いる場合、「磁場センサ」という用語は、磁場検知エレメントを含む回路を記述するために用いられる。前述のように、磁場センサは、種々の用途において用いられ、磁場の磁場密度を検知する磁場センサ、電流搬送導体によって搬送される電流によって発生する磁場を検知する電流センサ、強磁性体または磁性体の物体の近接を検知する磁気スイッチ、通過する強磁性体の物品を検知する回転検出器が含まれるが、これらに限定されるのではない。
【0028】
本明細書において記載する回路および技法は、ホール効果エレメントを用いる磁場センサの内、以上で特定した形式の全てに適している。しかしながら、簡略化のために、磁場の磁場密度を検知する線形磁場センサを示す例についてのみ、本明細書において示しそして説明することとする。
【0029】
図1を参照すると、先行技術の磁場センサ10は、2008年9月16日に発行された米国特許第7,425,821号に記載されている形式のものである。この特許は、本発明の譲受人に譲渡されており、ここで引用したことにより、その内容全体が本明細書にも含まれるものとする。磁場センサ10は、ホール・エレメント12を含む。ホール・エレメント12は、4つの結合部に、変調回路14へのおよび変調回路14からの関連信号12a〜12dを供給する。信号12a〜12dは、ここでは磁場信号と呼ぶ差動出力信号(differential output signal)を形成するために、変調回路14によって、2つで1組にして適正に選択される。尚、以下で説明するが、磁場信号は少なくとも2つの成分、即ち、磁場に応答する磁場信号成分と、磁場には通常応答しないオフセット成分(通常DCレベル)とを有する。
【0030】
変調回路14は、図2図2Cまたは図3図3Cと関連付けて以下で更に詳しく説明する形式とすることができるが、第1切替回路20がある実施形態では、図2図2Cと関連付けて以下で説明する形式であることが好ましく、第1切替回路20を用いない実施形態では、図3図3Cと関連付けて以下で説明する形式であることが好ましい。
【0031】
変調回路14は、部分出力信号14a、14bを増幅回路16に供給する。増幅回路16は、以下で更に詳しく説明するチョッパ安定化増幅器(chopper-stabilized amplifier)を有する。増幅器16は、増幅した部分信号24a、24bをフィルタ回路26に供給する。フィルタ回路26についても、以下で更に詳しく説明する。フィルタ回路26は、離散時間(時間サンプリング)選択フィルタの前に、ロー・パス・フィルタ28を含むことができる。フィルタ回路26は、差動出力信号30a、30bを供給する。代替実施形態の中には、部分信号24a、24bおよび30a、30bが、代わりに、シングル・エンド信号とすることができる場合もある。
【0032】
差動出力信号30a、30bは、ホール・エレメント12によって検知した磁場に比例する値を有する線形出力信号とすることができる。他の構成では、比較器(図示せず)を結合して差動出力信号30a、30bを受け取ることができ、この場合、比較器によって生成される出力信号は2つの状態を有する非線形信号となり、ホール・エレメント12によって検知した磁場信号を表す2つの状態は、閾値よりも上または下となる。
【0033】
増幅回路16は、差動信号14a、14b、そして差動フィードバック信号36a、36bも受け取るように結合されている加算ノード18を含むことができる。加算ノード18は、差動信号18a、18bを生成するように構成されている。第1切替回路20は、差動信号18a、18bを受け取るように結合されており、第1差動切替信号(differential switched signal)20a、20bを生成するように構成されている。差動増幅器22が、第1差動切替信号20a、20bを受け取るように結合されており、差動増幅信号22a、22bを生成するように構成されている。第2切替回路24が、差動増幅信号22a、22bを受け取るように結合されており、第2差動切替信号24a、24bを生成するように構成されている。加算ノード18、第1切替回路20、差動増幅器22、および第2切替回路24を一緒に合わせて、チョッパ安定化増幅器(chopper-stabilized amplifier)を形成する。構成の中には、加算ノード18を省略し、差動フィードバック信号36a、36bを用いない場合もある。
【0034】
また、磁場センサ10は、クロック生成回路32も含む。クロック生成回路32は、発振器34からクロック信号34aを受け取るように結合されており、クロック信号32a、32b、32cを変調回路14、増幅回路16、およびフィルタ回路26にそれぞれ供給するように構成されている。したがって、好ましい実施形態では、変調回路14の切替機能、増幅回路16の切替機能、およびフィルタ回路26の切替機能は同期する。
【0035】
変調回路14は、周波数Φを有するクロック信号32aによって駆動することができる。第1および第2切替回路20、24は、周波数KΦを有するクロック信号32bによって駆動することができる。ここで、Kは1/2を乗算した整数である。離散時間選択フィルタ30は、NΦの周波数を有するクロック信号32cによって駆動することができる。ここで、Nは整数である。構成の中には、KΦ=1/2Φ、およびNΦ=1/4Φである場合もある。クロック信号32a、32b、32cは静止周波数(static frequency)を有する。
【0036】
前述のように、差動出力信号(即ち、変調回路14によって信号12a〜12dの中から、2つで1組にして適正に選択された差動信号)は、検知した磁場に比例する所望の磁場信号成分と、不所望のオフセット信号成分(即ち、DC)とを含む可能性があることは理解されよう。図2図3Aと関連付けた以下の論述から、ホール・エレメント12が磁場信号成分およびオフセット成分の双方を有する信号(即ち、変調回路14によって信号12a〜12dの中から、2つで1組にして適正に選択された差動信号)を生成しても、磁場センサ10からの出力信号30a、30bは優勢な磁場信号成分と、比較的低減されたオフセット成分とを有することが明らかになろう。
【0037】
図2図2Cと関連付けた以下の論述から、動作において、変調回路14がホール・エレメント差動信号(即ち、変調回路14によって信号12a〜12dの中から、2つで1組にして適正に選択された差動信号)のオフセット成分を、もっと高い周波数に変調し(即ち、周波数をシフトし)つつ、磁場信号成分をベースバンド(例えば、DCまたは比較的低い周波数)に残しておくことが理解されよう。このように、変調回路14の動作後には、磁場信号成分およびオフセット成分は、周波数が別々に分かれる。
【0038】
動作において、チョッパ安定化増幅器を有する増幅回路16は変調(第1切替回路20によって)および復調(即ち、周波数シフト)(第2切替回路24によって)を行い、その結果、磁場信号成分がベースバンド(例えば、DCまたは比較的低い周波数)に留まる。また、この増幅回路は、復調(de-modulate)(第1切替回路20によって)および再変調(re-modulate)(即ち、周波数シフト)(第2切替回路24によって)も行うように動作し、その結果オフセット成分がもっと高い周波数に留まる。つまり、磁場信号成分およびオフセット成分は、増幅回路16の動作の後、周波数が別々に分かれたままになっている。
【0039】
フィルタ回路26は、前述のもっと高い周波数に現れるオフセット成分の振幅(magnitude)を低減する。つまり、差動出力信号30a、30bは、ベースバンド(例えば、DCまたは比較的低い周波数)における磁場信号成分と、予めもっと高い周波数にシフトされていた、遙かに低減されたオフセット成分とを含む。
【0040】
磁場センサ10についての更なる論述は、先に記載した米国特許第7,425,821号において見いだすことができる。
これより図1Aを参照すると、図1と同様のエレメントには同様の参照符号を有して示されている。別の先行技術の磁場センサ40は、1997年4月15日に発行された米国特許第5,621,319号に記載されている形式のものとすることができる。この特許は本発明の譲受人に譲渡されており、ここで引用したことによりその全体が本明細書にも含まれるものとする。磁場センサ40は、ホール・エレメント12を含む。ホール・エレメント12は、4つの結合部に、変調回路15へのおよび変調回路15からの関連信号12a〜12dを供給する。変調回路15は、図3図3cと関連付けて以下で更に詳しく説明する形式のものとすることができる。
【0041】
変調回路15は、差動出力信号15a、15bを増幅回路41に供給する。増幅回路41は、以下で更に詳しく説明する2つのサンプル/ホールド回路43、44を有する。増幅回路41は、差動増幅信号46a、46bをフィルタ回路48に供給する。フィルタ回路48についても、以下で更に詳しく説明する。フィルタ回路48は、差動出力信号47a、47bを供給する。代替実施形態の中には、差動信号46a、46bおよび47a、47bをシングル・エンド信号とすることができる場合もある。
【0042】
増幅回路41は、差動増幅器42を含むことができる。差動増幅器42は、差動信号15a、15bを受け取るように結合されており、差動増幅信号42a、42bを生成するように構成されている。第1サンプル/ホールド回路43は、信号42aをシングル・エンド信号として受け取るように結合されており、第2サンプル/ホールド回路44は、信号42bをシングル・エンド信号として受け取るように結合されている。サンプル/ホールド回路43は、信号43aを生成するように構成されており、サンプル/ホールド回路44は、信号44aを生成するように構成されている。加算ノード45は、信号43a、44aを受け取るように結合されており、減算信号45aを生成するように構成されている、増幅器46は、減算信号45aを受け取るように結合されており、差動信号46a、46bを生成するように構成されている。
【0043】
フィルタ回路48は、ロー・パス・フィルタ47を含むことができる。ロー・パス・フィルタ47は、差動信号46a、46bを受け取るように結合されており、差動濾波信号47a、47bを生成するように構成されている。
【0044】
また、磁場センサ40は、クロック生成回路49も含む。クロック生成回路49は、クロック信号34aを発振器34から受け取るように結合されており、クロック信号49aを変調回路12および増幅回路41に供給するように構成されている。好ましい実施形態では、変調回路15の切替機能は、増幅回路41の切替機能と同期する。
【0045】
変調回路15は、周波数Φを有するクロック信号49aによって駆動することができる。また、第1および第2サンプル/ホールド回路43、44も、クロック信号49aによって駆動することができる。クロック信号49aは静止周波数を有する。実施形態の中には、フィルタ回路48を駆動しない場合もある。他の実施形態では、フィルタ回路48は、離散時間選択フィルタを含むことができ、図1の離散時間選択フィルタ30と同一または同様であることができる場合もある。
【0046】
前述のように、ホール・エレメント12からの出力信号(即ち、変調回路15によって信号12a〜12dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)は、検知した磁場信号に比例する磁場信号成分と、オフセット信号成分との双方を含む可能性があることは理解されよう。図3図3Cと関連付ける以下の論述から、ホール・エレメント12が磁場信号成分およびオフセット成分の双方を有する信号(即ち、変調回路15によって信号12a〜12dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)を生成しても、磁場センサ40からの出力信号47a、47bは優勢な磁場信号成分と、非常に低減されたオフセット成分とを有することが明らかになろう。
【0047】
また前述のように、図3および図3Aと関連付ける以下の論述から、動作において、変調回路15はホール・エレメント差動信号(即ち、変調回路15によって信号12a〜12dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)の磁場信号成分を、もっと高い周波数に変調(即ち、周波数シフト)しつつ、オフセット成分をベースバンド(例えば、DC)に残しておくことも理解されよう。つまり、磁場信号成分およびオフセット成分は、変調回路15の動作によって、周波数が別々に分けられる。
【0048】
増幅回路41は、2つのサンプル/ホールド回路43、44を有し、磁場信号成分をベースバンド(例えば、DCまたは低周波数)に復調(即ち、周波数シフト)し、オフセット成分をもっと高い周波数に変調(即ち、周波数シフト)する。つまり、磁場信号成分およびオフセット成分は、増幅回路41の動作の後、周波数が別々に分けられたままとなる。更に、2つのサンプル/ホールド回路43、44は、図1の離散時間選択フィルタ30によって行われる濾波と同様に、結果的に得られた信号の濾波も行うことも理解されよう。したがって、離散時間選択フィルタ30は磁場センサ40では必要でない。
【0049】
フィルタ回路48は、ロー・パス・フィルタ47を含むことができる。動作において、フィルタ回路48は、更に、前述のもっと高い周波数において現れるオフセット成分の振幅を低減させることができる。また、フィルタ回路48は、サンプリング動作から生じるあらゆる二次成分も低減することができる。このように、差動出力信号47a、47bは、ベースバンド(例えば、DCまたは低周波数)の磁場信号成分と、もっと高い周波数に予めシフトされて大きく低減されたオフセット成分とを含む。
【0050】
これより図2を参照すると、ホール・オフセット成分を変調する形式の切替ホール・エレメント50は、ホール・エレメント(ホール・プレート)52と、変調回路54とを含む。変調回路54は、図1の変調回路14と同じまたは同様であることができる。ホール・エレメント52は、4つの接点52a、52b、52c、および52dを含み、図示のように、各々がそれぞれのスイッチ56a、56b、56c、および56dの第1端子に結合されている。スイッチ56bおよび56cの第2端子は、ここではVo+と称する、切替ホール出力信号の正ノードを規定する(provide)ように結合されており、スイッチ56aおよび56dの第2端子は、ここではVo−と称する、切替ホール出力信号の負ノードを規定するように結合されている。
【0051】
追加のスイッチ60a、60b、60c、および60dは、ホール接点52a、52b、52c、52dを選択的に供給電圧Vsおよび接地に結合するように構成されている。更に特定すると、スイッチ56b、56d、60a、および60cは、クロック信号CLKによって制御され、スイッチ56a、56c、60b、および60dは、図示のように、相補クロック信号CLK/によって制御される。図2Aに示すように、クロック信号CLKおよびCLK/は、2つの状態または位相、Φ0°状態およびΦ90°状態を有する。
【0052】
動作において、位相Φ0°の間、電流が端子52aから端子52cに流れ、切替ホール出力信号VoはV+Vopに等しくなる。ここで、Vopはホール・エレメント・オフセット電圧またはホール・オフセット成分であり、Vは磁場信号成分である。位相Φ90°の間、電流は端子52bから端子52dに流れ、切替ホール出力信号Voは、V−Vopに等しくなる。つまり、変調回路54は、磁場が0以外の場合に図2Bに示すホール・オフセット成分Vopを変調する。磁場信号成分Vは、図2Cに示すように、実質的に不変のままである。
【0053】
これより図3を参照すると、磁気信号成分を変調する形式の代替切替ホール・エレメント70は、ホール・エレメント72と、変調回路74とを含む。変調回路74は、図1Aの変調回路15と同じまたは同様であることができる。ホール・エレメント72は、図2のホール・エレメント52と同じであり、4つの接点72a、72b、72c、および72dを含む。各接点は、それぞれのスイッチ76a、76b、76c、および76dの第1端子に結合されている。スイッチ76aおよび76bの第2端子は、ここではVo+と称する切替ホール出力信号の正ノードを規定するように結合されており、スイッチ56cおよび56dの第2端子は、ここではVo−と称する切替ホール出力信号の負ノードを規定するように結合されている。つまり、図2および図3を比較すると、ホール・エレメントの出力接点はΦ90°位相の間交換されることが分かる。
【0054】
追加のスイッチ80a、80b、80c、および80dは、ホール接点72a、72b、72c、および72dを選択的に供給電圧Vsおよび接地に結合するように構成されている。スイッチ76b、76d、80a、および80cは、クロック信号CLKによって制御され、スイッチ76a、76c、80b、および80dは、図示のように、相補クロック信号CLK/によって制御される。クロック信号CLK、CLK/は、図2における同様の信号と同一であり、したがって、図示のように2つの状態または位相Φ0°およびΦ90°を有する。
【0055】
動作において、位相Φ0°の間、電流は端子72aから端子72cに流れ、切替ホール出力信号VoはV+Vopに等しくなる。位相Φ90°の間、電流は端子72bから端子72dに流れ、切替ホール出力信号Voは−V+Vopに等しくなる。つまり、変調回路74は、磁場信号成分を変調して、図3Cに示す変調磁気信号成分Vを、磁場がゼロ以外の場合に供給する。オフセット成分Vopは、図3Bに示すように、実質的に不変のままである。
【0056】
尚、図5および図5Aと関連付ける以下の論述から、好ましい実施形態では、図5の変調回路14が、図2図2Cと関連付けて先に説明した形式のものであり、図5Aの変調回路15が、図3図3Cと関連付けて先に説明した形式のものであることは理解されよう。言い換えると、好ましい実施形態では、図5の増幅回路16が、変調オフセット成分および無変調磁場信号成分を有する差動信号14a、14bを受け取る。逆に、好ましい実施形態では、図5Aの増幅回路41が、変調磁場信号成分および無変調オフセット成分を有する差動信号15a、15bを受け取る。
【0057】
これより図4図4Cを参照すると、グラフ100、120、140、160は、図1のポイントA、B、C、およびDに現れる信号を示す。グラフ100、120、140、160は、各々、任意の時間単位の目盛りとした横軸と、任意の電圧単位の目盛りとした縦軸とを有する。
【0058】
図1Aの構成に関して、図1AにおいてA’、B’、およびD’と称する信号は、図1および図4図4Cの信号A、B、およびDと同様である。図1Aの磁場センサ40の動作は、前述の米国特許第5,621,319号に記載されており、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0059】
グラフ100は、4つの信号102、104、106、108を含む。これらは、それぞれ、信号12a、12b、12c、12d、即ち、図1に示す信号Aを示す。更に、これらは図2のスイッチ56a、56b、56c、56dが受け取る4つの信号も示す。図1のクロック信号Φおよび図2の信号CLKのいずれの半サイクルにおいても、これらの信号の内2つ(例えば、102および108または104および106)が、図2の信号Vo+およびVo−として、変調回路の出力に出てくる。これらは、図1の差動信号14a、14b、即ち、図1の信号Bである。図2の信号Vo+とVo−との間の差、および図1の信号14a、14bの間の差が、差動信号になる。
【0060】
位相ph0の間、信号104および106は量110だけ異なる。位相ph90の間、信号108および102は量112だけ異なる。この量は、信号104および106の差とは、極性が反対である。図4Aの信号122は、前述した信号の差を表し、更に図2Bおよび図2Cの信号VopおよびVの和も表し、更に図1の差動信号Bも表す。信号122のAC部は、信号122の変調オフセット成分を表す。線124は、信号122のDC部(または低周波数部)、即ち、信号122の磁場信号成分を表す。これは、無変調磁場信号成分である。
【0061】
信号144は、図1の差動信号28a、28b、即ち、図1の信号Cを表す。信号144は、図1のロー・パス・フィルタ回路28の帯域制限効果のために、図1のクロック信号32bの周波数に応じて、丸められたエッジを有する可能性がある。信号144は、図1の増幅回路16によって行われる増幅のために、信号122よりも大きくなっている。信号144は、図4Aのオフセット成分124を表すAC部を有し、図1の増幅回路16(チョッパ安定化増幅器)によって生成された変調オフセット成分である。線142は、信号144のDC部を表し、変調磁場信号122(即ち、磁場信号成分)のAC部の復調バージョンである。
【0062】
尚、所望の信号(磁場信号成分)は信号144のDC部(または低周波数部)であり、このDC部は線142によって表されており、不所望信号(オフセット成分)は信号144のAC部であることは認められてしかるべきである。また、線142によって表される信号144のDC部は、図1の磁場センサ10が静止磁場だけを受けるときのDC信号であることも、理解されてしかるべきである。言い換えると、図1の磁場センサ10が変化する磁場を受けると、線142によって表される信号144のDC部は、変化する(AC)部分を有することになる。
【0063】
曲線164は、図1の差動信号30a、30b、即ち、図1の信号Dを表す。曲線164は、曲線144を濾波したバージョンである。尚、信号164を得るために信号144を濾波すると、信号144のAC部の多くが除去され、線142および162が表す、信号144の所望のDC部(磁場信号成分)を一層厳密に表す信号が残されることは認められてしかるべきである。しかしながら、前述のように、線162によって表される信号164のDC部は、図1の磁場センサ10が静止磁場を受けるときのDC信号に過ぎないことも、理解されてしかるべきである。
【0064】
尚、図4図4A、および図4Cの信号は、図1Aの信号A’、B’、およびD’と同様であることは理解されてしかるべきである。しかしながら、図1Aに関して、図4Aの信号122は図3Bおよび図3Cの信号VopおよびVの和を表し、図1Aの差動信号B’も表す。信号122のAC部は、信号122の変調磁場信号成分を表す。線124は、信号122のDC部(または低周波数部)、即ち、信号122のオフセット成分を表す。したがって、図4Aを参照すると、図1Aの信号B’については、図1の信号Bとは異なり、これは変調された磁場信号であって、オフセット成分ではない。
【0065】
これより図5を参照すると、図1と同様のエレメントは、同様の参照符号を有して示されている。磁場センサ200は、図1の磁場センサ10と同様である。しかしながら、磁場センサ200は、電圧制御発振器(VCO)218を含む。VCO218は、VCO制御信号生成器220が生成するVCO制御信号220aを受け取るように結合されている。VCO218は、VCO制御信号220aに応答して周波数が変化するVCO出力信号を生成するように構成されている。クロック生成回路216は、VCO出力信号218aを受け取るように結合されており、同様に周波数が変化するクロック信号216a、216b、216cを生成するように構成されている。
【0066】
図1のクロック生成回路32と同様、クロック生成回路216は、クロック信号216a、216b、216cをそれぞれ変調回路14、増幅回路16、およびフィルタ回路26に供給するように構成されている。したがって、好ましい実施形態では、変調回路14の切替機能、増幅回路16の切替機能、およびフィルタ回路26の切替機能は同期する。
図1の磁場センサにけると同様、変調回路14は、周波数Φを有するクロック信号216aによって駆動することができる。第1および第2切替回路20、24は、周波数KΦを有するクロック信号216bによって駆動することができる。ここで、Kは1/2を乗算した整数である。離散時間選択フィルタ30は、NΦの周波数を有するクロック信号216cによって駆動することができる。構成の中には、KΦ=1/2、およびNΦ=1/4Φである場合もある。しかしながら、図1の磁場センサ10とは異なり、クロック信号216a、216b、216cは、非静止(変化する)周波数を有する。
【0067】
具体的には、クロック信号216aは、第1最低周波数と第1最高周波数との間で変化する第1変化変調周波数を有する第1変調信号とすることができる。実施形態の中には、第1変化変調周波数が、第1最低周波数から第1最高周波数まで線形掃引(linear sweep)で変化する場合もある。他の実施形態の中には、第1変化変調周波数が第1最低周波数から第1最高周波数まで非線形掃引で変化する場合もある。他の実施形態の中には、第1変化変調周波数が第1最低周波数から第1最高周波数まで、複数の不連続な周波数段階に沿って変化する場合もある。他の実施形態の中には、第1変化変調周波数が、複数の不連続な周波数段階に沿って変化する場合もある。実施形態の中には、不連続な周波数段階が、擬似ノイズ・パターンとなっている段階である場合もある。
【0068】
同様に、クロック信号216bは、第2最低周波数および第2最高周波数の間で変化する第2変化変調周波数を有する第2変調信号であることができる。実施形態の中には、第2変化変調周波数が、第1クロック信号216aの第1変化変調周波数に等しく、これと同期する場合もある。他の実施形態の中には、第2変化変調周波数が、第1のクロック信号216aの第1変化変調周波数とは異なるが、これと同期する場合もある。
【0069】
同様に、クロック信号216cは、第1クロック信号216aの第1変化変調周波数または第2クロック信号2176bに関係がある変化サンプリング周波数を有するサンプリング信号であることができ、離散時間選択フィルタ30は、第1変化変調周波数に関係する変化ノッチ周波数を有する。実施形態の中には、変化サンプリング周波数が、第1クロック信号の第1変化変調周波数に整数を乗算した値に等しい場合もある。実施形態の中には、変化サンプリング周波数が、第1変化変調周波数に等しい場合もある。実施形態の中には、変化サンプリング周波数が、第1変化変調周波数の2倍に等しい場合もある。実施形態の中には、変化ノッチ周波数が第1変化変調周波数に等しい場合もある。
【0070】
実施形態の中には、アンチ・エリアシング・フィルタ(anti-aliasing filter)28が、変化サンプリング周波数と関連のある最高サンプリング周波数の半分よりも上の周波数成分を低減するように選択された折点周波数(corner frequency)を有する場合もある。
【0071】
差動信号204a〜204b、215a〜215b、206a〜206b、207a〜207b、208a〜208b、210a〜210b、212a〜212b、および214a〜214bは、総じて、図1の信号14a〜14b、36a〜36b、18a〜18b、20a〜20b、22a〜22b、24a〜24b、28a〜28b、および30a〜30bに対応するが、異なるクロック信号216a〜216cの使用のために、異なっている。差動信号(即ち、変調回路14によって信号204a〜204dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)は、図1の差動信号(即ち、変調回路14によって信号12a〜12dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)と同じまたは同様であることができる。
【0072】
これより図5Aを参照すると、図1Aおよび図5と同様のエレメントは同様の参照符号を有して示されている。磁場センサ230は図1Aの磁場センサ40と同様である。しかしながら、磁場センサ230は電圧制御発振器(VCO)218を含む。VCO218は、VCO制御信号生成器220が生成するVCO制御信号220aを受け取るように結合されている。VCO218は、VCO制御信号220aに応答して周波数が変化するVCO出力信号218aを生成するように構成されている。クロック生成回路217は、VCO出力信号218aを受け取るように結合されており、クロック信号217aを生成するように構成されている。
【0073】
図1Aのクロック生成回路49と同様、クロック生成回路217は、クロック信号217aを変調回路15および増幅回路41に供給するように構成されている。したがって、好ましい実施形態では、変調回路15の切替機能は、増幅器41の切替機能と同期する。実施形態の中には、フィルタ回路48が駆動されない場合もある。他の実施形態では、フィルタ回路48は離散時間選択フィルタを含むことができる。これは、図5の離散時間選択フィルタ340と同じまたは同様であることができ、その場合、この離散時間選択フィルタを駆動するために、他のクロック信号を供給する。
【0074】
図5のクロック信号216aと同様、クロック信号217aは、最低周波数と最高周波数との間で変化する変化変調周波数を有する変調信号とすることができる。他の実施形態では、変化変調周波数は、最低周波数から最高周波数まで線形掃引で変化する。他の実施形態の中には、変化変調周波数が最低周波数から最高周波数まで非線形掃引で変化する場合もある。他の実施形態の中には、変化変調周波数が最低周波数から最高周波数まで、複数の不連続な周波数段階に沿って変化する場合もある。他の実施形態の中には、不連続な周波数段階が、擬似ノイズ・パターンとなっている段階である場合もある。
【0075】
信号205a〜205b、232a〜232b、234a、235a、236、238a〜238b、および240a〜240bは、総じて、図1Aの信号14a〜14b、42a〜42、43a、44a、45a、46a〜46b、および47a〜47bに対応するが、異なるクロック信号217aの使用のために、異なっている。差動信号202b、202cは、図1Aの差動信号12b、12cと同じまたは同様であることができる。
【0076】
図6から図10は、図5の磁場センサ200の動作の間に現れる信号の例を示す。図5Aの磁場センサ230の動作の間に発生する同様の信号は、理解されるであろうが、明示的には示されていない。
【0077】
これより図6を参照すると、グラフ250は、任意の時間単位の目盛りとした横軸と、任意の電圧単位の目盛りとした縦軸とを有する。最小電圧254から最大電圧256まで掃引する曲線252は、図5のVCO制御信号220aの1つの特定の実施形態を表し、クロック信号216a、216b、216cの周波数の線形掃引に対応する。
【0078】
曲線252は時間と共に上に向かってのみ傾斜するように示されているが、他の時間期間では、曲線252は下に向かって傾斜することもでき、上向きおよび下向きの傾斜が周期的に繰り返す。
【0079】
これより図6Aを参照すると、グラフ250は、任意の時間単位の目盛りとした横軸と、任意の電圧単位の目盛りとした縦軸とを有する。グラフ260は、周波数ドメインの周波数ドメインの図であり、線262a〜262eは、VCO制御信号220aが、周波数の上向き掃引の間図6に示す通りであるが、周波数の下向き掃引の間下向きに傾斜する(図示せず)ときにおける、図5のクロック信号216aの複数の瞬時スナップショットを表す。矢印264a、264bは、クロック信号216aの周波数が、最低周波数fchop-Δfmaxおよびfchop+Δfmaxの間、周波数が上向きに傾斜し次いで下向きに傾斜できることを表している。ここで、周波数fchop、即ち、クロック信号216aのチョッピング周波数(変調周波数)は、掃引範囲の中心における中心周波数である。他の構成では、クロック信号216aの周波数は、周期的に上向きのみまたは下向きのみに掃引し、次いで他の極値に急速にリセットする。
【0080】
これより図7を参照すると、グラフ300は、任意の周波数単位の目盛りとした横軸と、任意の電力単位の目盛りとした縦軸とを有する。グラフ300は、周波数ドメインの図であり、線302a〜302cは、クロック信号216aが周波数の上向き掃引の間図6Aに示す通りであるが、周波数の下向き掃引の間下向きに傾斜する(図示せず)ときにおける、図5の差動信号207a、207bの磁場信号成分の基本周波数の複数の瞬時スナップショットを表す。線302a〜302cの有限幅は、DCだけでなく比較的低い周波数においても信号内容を有する磁場信号成分(即ち、図5のホール・エレメント12によって検知される磁場)を表す。矢印306a、306bは、差動信号207a、207bの周波数が、周期的に周波数が上向きに掃引しそして下向きに掃引できることを表す。
【0081】
線304a〜304cは、図5の差動信号207a、207bの磁場信号成分の第3高調波の複数の瞬時スナップショットを表す。尚、図5の変調回路14(図2の回路と同様)は、図5の差動信号202b、202cを方形波(クロック信号216a)と乗算する回路であることは理解されよう。つまり、線302a〜302cによって表される掃引周波数の第3高調波(および他の奇数高調波)が生成される。線304a〜304cは、第3高調波のみを表すが、他の奇数高調波も、変調回路14によって生成される。
【0082】
構成の中には、中心周波数fchopが約300キロヘルツである場合もある。
尚、線304a〜304cは、線302a〜302cに対して適正な相対的割合で示されているのではなく、線302a〜302cの電力(power)の1/9((1/3))に等しい電力を有することは理解されよう。
【0083】
破線307(狭いスペクトル)は、増幅回路16の出力における差動信号210a、210b(図5)の磁場信号成分を表す。言い換えると、破線307は、増幅器16(第2切替回路24によって)が掃引クロック信号216bによって駆動されているときの動作によって復調されてベースバンドに戻された後における、図7の掃引信号302a〜302c(即ち、磁場信号成分を表す差動信号207a、207b)を表す。この復調の結果、線(狭帯域)スペクトル307が生じる。破線307によって表される差動信号210a、210bは、DCにおいてまたはその近くに現れ、この例では掃引しない。
【0084】
曲線308は、フィルタ回路26の通過帯域を表す。
これより図8を参照すると、図7と同様のエレメントが同様の参照符号を有して示されている。グラフ320は、任意の周波数単位の目盛りとした横軸と、任意の電力単位の目盛りとした縦軸とを有する。グラフ320は、周波数ドメインの図であり、ここでも、線302a〜302cは、クロック信号216aが、周波数の上向き掃引の間は図6Aに示す通りであるが、周波数の下向き掃引の間は下向きに傾斜する(図示せず)ときにおける、図5の差動信号207a、207bの磁場信号成分の基本周波数の複数の瞬時スナップショットを表す。図7の第3高調波304a〜304cは示されていない。
【0085】
線(周波数)322は、ノイズを表す。このノイズは、例えば、図5のホール・エレメントによって検知することができる磁場ノイズであってもよく、あるいは他の例では、切替回路24の前において、ホール・エレメント12、変調回路14、または図5の増幅回路16に結合されることもあり得る電気ノイズであってもよい(注記:切替回路24の後に注入される場合、このノイズは変調されてもベースバンドに戻らない)。このノイズ信号例322は、周波数が固定である。
【0086】
構成の中には、中心周波数fchopが300キロヘルツであり、ノイズ信号322が、約300キロヘルツの静止周波数またはほぼ静止周波数を有する。しかしながら、図9Bと関連付ける以下の論述から、図5の磁場センサ200(および図5Aの230)も、中心周波数fchop以外の周波数におけるノイズ信号、および周波数が固定でないノイズ信号についても利点を提供することが認められよう。しかしながら、図8に示す例では、明確化のために、中心周波数fchopと同じ周波数におけるノイズ信号322を示している。
【0087】
1群の線324は、クロック信号216a〜216cの周波数が図6Aにしたがって、周波数掃引したときに、図5の増幅回路16の動作(即ち、図5の差動信号210a、210bまたは212a、212b内における)によって復調されたときのスペクトル線322を表す。
【0088】
ノイズ、即ち、スペクトル線322は周波数が固定であるので、周波数掃引するクロック信号216bによって復調されると、その結果、周波数掃引するベースバンド信号が得られる。1群の線324はこのベースバンド信号を表す。また、掃引信号216bの代わりに増幅回路116による復調のために固定のクロックを用いる場合(図1におけるように)、復調されるノイズ信号はDCまたはその近くに現れ、所望の復調信号307(磁場信号成分)と結合する。この結合のために、所望の復調信号307の精度が低下する。
【0089】
図9図9Bは、クロック信号216aの周波数が、図6および図6Aと関連付けて先に説明したように、最低周波数と最高周波数との間において線形に上下に変化するときに、図5の磁場センサ200の動作の間に現れる信号の例を示す。対照的に、その次の図10図10Bは、クロック信号216aの周波数が複数の不連続な周波数段階に沿って最低周波数と最高周波数との間で上下に変化するときに、図5の磁場センサ200の動作に間に現れる信号を示す。他の実施形態も、図5に関連付けて先に説明したが、他の信号例はここでは明示的には示さない。
【0090】
これより図9を参照すると、グラフ340は、ミリ秒と単位とした時間目盛りの横軸と、Hzを単位とした周波数目盛りの縦軸とを有する。波形342は、図5のクロック信号216aの周波数を表す。クロック信号216aは、上向きに傾斜し、次いで、実施形態の中には、下向きに傾斜する場合もある(下向きは示されていない)。これに応じて、クロック216bおよび216cは上向きおよび下向きに掃引する。
【0091】
これより図9Aを参照すると、グラフ360は、ミリ秒と単位とした時間目盛りの横軸と、ミリボルトを単位とした電圧目盛りの縦軸とを有する。信号362は、図5の磁場センサ200がノイズ、例えば、周波数が固定である図8のノイズ322を受けていたときにおける、図5の差動信号212a、212bを表す。つまり、信号362は、図8の1群の線324によって表される、周波数掃引する信号も表す。図8と関連付けて先に説明したように、信号362は、図8のノイズ信号322を表す。ノイズ信号322は、図5の増幅回路16によって復調されて(第2切替回路24によって)ベースバンドに戻されているが、掃引クロック信号216a〜216cの動作のために、周波数掃引する。
【0092】
信号362において、高周波数成分が、それよりも低い周波数の正弦波の上に載っているのを見ることができる。この高周波数成分は、ホール・エレメントによって生成された差動信号のオフセット成分を表し、図5の変調回路14および増幅回路16の動作によって、もっと高い周波数に周波数がシフトされている。
【0093】
これより図9Bを参照すると、グラフ380は、ミリ秒と単位とした時間目盛りの横軸と、ミリボルトを単位とした電圧目盛りの縦軸とを有する。信号382は、同様に図5の磁場センサ200がノイズ、例えば、周波数が固定である図8のノイズ322を受けていたときにおける、図5の差動信号214a、214bを表す。信号382は、図9Aの信号362と同様であるが、図5の離散時間選択フィルタ30を通過している。図9Aの信号362の高周波数成分は、図5のフィルタ回路26の動作によって除去されている。信号382において、段階の例を見ることができる。これらは、離散時間選択フィルタ30の離散サンプリングによって生じたのであり、望ましければ、追加のフィルタ(図示せず)によって除去することもできる。
【0094】
信号362、382は、周波数掃引する信号として現れるノイズを含有するが、所望の信号、即ち、ホール・エレメント12によって生成された差動信号202b、202cの磁場信号成分は、差動信号202b、202cの磁場信号成分がDCにある場合には、信号362、382のDC部となることは認められよう。DC部は0ボルトであるように示されているが、ホール・エレメント12が受ける磁場に比例する他の値とすることもできる。
【0095】
また、図5のクロック信号216a〜216cが、図1のクロック信号32a〜32cのように、静止周波数を有する場合、図8の静止ノイズ信号322は、復調されると(図5の第2切替回路24によって)、図8の1群の線324にしたがって周波数掃引するのではなく、1つの周波数となることは認められよう。これは、DCである可能性があり、またはDCに近い(ゆっくりと変化する)可能性もあるが、その結果、図5の信号214a、214bの磁場信号成分の検出精度が低下する。しかしながら、掃引クロック信号216a〜216cは、周波数掃引するノイズ信号を生ずるので、このノイズ信号は容易に特定され、その後の処理によって除去することができ、またはその後の濾波によって、所望の磁場信号成分のみを残すことができる。
【0096】
その後の処理または濾波は、図5および図5Aに示す処理モジュール222として設けることができる。処理モジュール222は、図5または図5Aの差動信号214a、214bまたは240a、240bをそれぞれ受け取るように結合されている。実施形態の中には、処理モジュール222を単純なロー・パス・フィルタにすることができる場合もある。他の実施形態では、処理モジュール222は他の離散時間選択フィルタを含むことができる。実施形態の中には、処理モジュール222がディジタル・フィルタを含むことができる場合もある。実施形態の中には、処理モジュール222が、a)差動信号214a、214bまたは240a、240bの安定な時間領域を選択すること、およびb)磁場信号成分を特定するために差動信号のDC値(またはゆっくりと変化する値)を計算することができるロジックを含むことができる場合もある。
【0097】
以上の磁場信号成分のノイズ信号からの区別は、変化するノイズ信号が磁場信号成分の周波数(DCを含む)に留まらない限り、周波数が比較的ゆっくりと変化する差動信号の磁場信号成分(即ち、変調回路14によって信号202a〜202dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)にもそのまま当てはまる。また、以上の磁場信号成分のノイズ信号からの区別は、ノイズ信号の可変周波数が磁場信号成分の可変周波数の周波数(at the frequency of the varying frequency)に留まらない限り、差動信号の磁場信号成分(即ち、信号202a〜202dの中から2つで1組にして適正に選択された差動信号)の周波数が相対的に変化し、更にノイズ信号も周波数が変化する場合にもそのまま当てはまる。
【0098】
これより図10を参照すると、グラフ400は、ミリ秒と単位とした時間目盛りの横軸と、Hzを単位とした周波数目盛りの縦軸とを有する。波形402は、図5のクロック信号216aの周波数を表す。クロック信号216aは、不連続な階段状に上向きに進み、次いで、実施形態の中には、不連続な階段状に下向きに進むこともある。クロック216bおよび216cは、これにしたがって、不連続な周波数階段状に上下に進む。
【0099】
これより図10Aを参照すると、グラフ420は、ミリ秒と単位とした時間目盛りの横軸と、ミリボルトを単位とした電圧目盛りの縦軸とを有する。信号422は、図5の磁場センサ200がノイズ、例えば、周波数が固定である図8のノイズ322を受けていたときにおける、図5の差動信号212a、212bを表す。つまり、信号422は、周波数が階段状に変化する信号も表し、図8の1群の線324によって表すこともできる。図8に関連付けて先に説明したように、信号422は、図5の増幅回路16によって復調されてベースバンドに戻されている図8のノイズ信号322を表すが、この周波数が階段状に変化するクロック信号216a〜216cの動作のために、周波数が階段状に変化する。
【0100】
信号422において、高周波数成分が、階段状に変化する、これよりも低い周波数信号の上に載っているのを見ることができる。この成分は、ホール・エレメント12によって生成された差動信号202b、202cのオフセット成分を表し、図5の変調回路14および増幅回路16の動作によって、もっと高い周波数に周波数がシフトされている。
【0101】
これより図10Bを参照すると、グラフ440は、ミリ秒と単位とした時間目盛りの横軸と、ミリボルトを単位とした電圧目盛りの縦軸とを有する。信号442は、同様に図5の磁場センサ200がノイズ、例えば、周波数が固定である図8のノイズ322を受けていたときにおける、図5の差動信号214a、214bを表す。信号442は、図10Aの信号422と同様であるが、図5の離散時間選択フィルタ30を通過している。図10Aの信号422の高周波数成分は、図5のフィルタ回路26の動作によって除去されている。信号442において、段階の例を見ることができる。これらは、望ましければ、追加のフィルタ(図示せず)によって除去することもできる。
【0102】
磁場信号成分をノイズ信号から区別することに関する図9Bに関連付けた先の論述は、図10図10Bに関しても実質的に同じであり、ここでは繰り返さない。
前述のように、他のクロック信号216a〜216cは、他の形式の変調に備えることができるが、いずれにしても、ノイズ信号から磁場信号成分を区別しつつ、オフセット成分を大幅に除去するという同じ能力が得られる。
【0103】
本明細書において引用した全ての参考文献は、引用したことによりその全てが本願にも含まれるものとする。
以上、本発明の主題である種々の概念、構造、および技法を例示するのに役立つ好ましい実施形態について説明したが、これらの概念、構造、および技法を組み込んだ他の実施形態も用いることができることは、当業者には明白となろう。したがって、本発明の範囲は、記載した実施形態に限定されるのではなく、以下の請求項の主旨および範囲によってのみ限定されるべきことを具申する。
図1
図1A
図2
図2A
図2B
図2C
図3
図3A
図3B
図3C
図4
図4A
図4B
図4C
図5
図5A
図6
図6A
図7
図8
図9
図10