特許第5864588号(P5864588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864588
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20160204BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20160204BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B41J2/14 301
   B41J2/14 501
   B41J2/14 607
   B41J2/14 605
   B41J2/18
   B41J2/045
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-530674(P2013-530674)
(86)(22)【出願日】2011年9月19日
(65)【公表番号】特表2013-538713(P2013-538713A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2011066187
(87)【国際公開番号】WO2012041729
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】10185813.2
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593016732
【氏名又は名称】オセ−テクノロジーズ ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】ウィヤショフ,ヘルマヌス エム アー
(72)【発明者】
【氏名】クレイン ミュールマン,ペーター
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/143362(WO,A1)
【文献】 特表2011−520671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷ヘッドであって、
少なくとも1つの細長い作動室を含み、該作動室の少なくとも主部は、実質的に第1の方向において延在し、各作動室は、夫々、
前記作動室の前記主部内に圧力波を生成するよう配置されるピエゾアクチュエータと関連付けられ、前記圧力波は、前記第1の方向において伝搬し、
前記細長い作動室の第1の端部に配置される室入口と関連付けられ、
前記作動室内の前記圧力波の生成後に、ノズルを通じて液滴を放出し得るよう、前記関連付けられる作動室と流体連絡して配置される前記ノズルと関連付けられ、
前記関連付けられる作動室の第2の端部に配置される室出口と関連付けられ、
前記少なくとも1つの作動室の前記室入口及び前記室出口と流体連絡する貯槽を含み、
前記貯槽からのインクを、前記室入口を通じ、前記作動室を通じ、前記室出口を通じ、前記貯槽内にポンピングするためのポンプ手段を含み、
前記圧力波を反射するための手段が、前記作動室の前記第2の端部に設けられ、そのような手段は、前記液滴を放出するための十分な圧力を前記ノズルで生成するよう配置され且つ構成され
前記圧力波を反射するための手段は、前記作動室の前記第2の端部にもたらされる順応性を含む
インクジェット印刷ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドであって、
第1のピエゾアクチュエータと関連付けられ、第1の室入口と関連付けられ、第1のノズルと関連付けられ、且つ第1の室出口と関連付けられる第1の作動室と、
第2のピエゾアクチュエータと関連付けられ、第2の室入口と関連付けられ、第2のノズルと関連付けられ、且つ第2の室出口と関連付けられる第2の作動室とを含み、
前記貯槽は、前記第1の作動室及び前記第2の作動室と流体連絡する、
インクジェット印刷ヘッド。
【請求項3】
前記ノズルは、ノズル板に配置され、該ノズル板は、前記作動室の前記第2の端部で順応性をもたらすために適切な可撓性を有する、請求項に記載のインクジェット印刷ヘッド。
【請求項4】
前記作動室の前記第2の端部にある前記室出口での前記作動室の断面は、前記室出口の下流の前記室出口にあるインク通路の断面よりも実質的に小さく、前記インク通路の前記断面のサイズは大きく選択されるので、前記圧力波は、前記作動室の前記第2の端部で実質的に完全に反射させられる、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドであって、
前記作動室の前記第2の端部に向かって伝搬し、前記第2の端部での反射後、前記ノズルに向かって伝搬する第1の圧力波が、前記ピエゾアクチュエータによって生成され、
同様に前記第2の端部に向かって伝搬する後続の第2の圧力波が、前記ピエゾアクチュエータによって生成され、
前記作動室の寸法は、記第1の圧力波の前記反射及び前記第2の圧力波の合計によって大きな圧力が生成されるよう、前記第1の圧力波の前記反射及び前記第2の圧力波が同時に前記ノズルに到達するように選択される、
インクジェット印刷ヘッド。
【請求項6】
前記ピエゾアクチュエータは、前記第1の方向において延在する、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッド。
【請求項7】
前記ノズルは、圧力波の生成後、液滴が前記第1の方向と実質的に平行な方向において放出されるように配置される、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッド。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、インクジェット印刷に関し、具体的には、印刷ヘッド組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のインクジェット印刷ヘッドでは、インクが圧力室内に配置される。圧力室は、圧力室の第1の側にあるインク入口と、第1の側の反対側の第2の側にあるノズルとを有する。圧力室は、ノズルで終端する。ノズルを通じて噴射させられる以外、インクはノズルを越えて流れ得ない。よって、例えば、インクが噴射させられないならば、汚物及び/又は気泡がノズル付近で圧力室内に捕捉されるようになり得る。圧力室内に大量の汚物又は大きな気泡又は他の類似の不規則性があるならば、液滴噴射が妨げられるようになるか或いはノズルが完全に塞がれるようになり得る。
【0003】
他の既知のインクジェット印刷ヘッドでは、印刷ヘッドの他の構成が選択される。インクの連続的な流れがインク通路を通過する。インク通路の第1の側で、アクチュエータ、例えば、当該技術分野において周知のピエゾアクチュエータ又は熱作動用の加熱素子が、インク通路の反対の第2の側に配置される。連続的な流れの故に、気泡又は汚物はインクと共にインク通路を通じて中央貯槽に向かって流れ得るため、気泡又は汚物がノズル付近で捕捉されるようになる可能性はより少ない。インク通路内には、例えば、インク貯槽内には、インク通路から来てインク貯槽に戻る汚物及び/又は空気を除去するために、フィルタ手段を設け得る。よって、気泡及び汚物のないインクをインク通路内に再導入し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、後者の既知の印刷ヘッドの不利点は、アクチュエータによって生成される作動圧力である作動効率が有利に減少させられるので、それが特定のインク、例えば、高粘性インクとの組み合わせにおける使用に適さないという事実である。より具体的には、既知の連続流印刷ヘッドにおける作動効率は、(圧力室の端部に配置されるノズルを有する)上記第1に述べた印刷ヘッドに比べて、約50%より低い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある特徴では、少なくとも1つの作動室を含む印刷ヘッドが提供され、作動室の主部は、第1の方向において延在する。各作動室は、夫々のピエゾアクチュエータ、室入口、ノズル、及び室出口と関連付けられる。
【0006】
ピエゾアクチュエータは、作動室の主部内に圧力波を生成するよう配置され,圧力波は、第1の方向において伝搬する。
【0007】
室入口は、作動室の第1の端部に配置される。
【0008】
関連する作動室内での圧力波の生成後、ノズルを通じて液滴を放出し得るよう、ノズルは関連する作動室と流体連絡して配置される。
【0009】
室出口は、関連する作動室の第2の端部に配置される。
【0010】
印刷ヘッドは、少なくとも1つの作動室の室入口及び室出口と流体連絡する貯槽を更に含み、貯槽からのインクを、室入口を通じ、作動室を通じ、室出口を通じ、貯槽内にポンピングするためのポンプ手段を更に含む。
【0011】
本発明に従ったインクジェット印刷ヘッドは、圧力波を反射するための手段を含み、該手段は、作動室の第2の端部に設けられる。圧力波を適切に反射させることは、以下により詳細に説明するように、液滴を放出するための十分な圧力をノズルで生成するために有利である。結果的に、圧力室の端部に配置されるノズルを有する印刷ヘッドと比べて、10%以下だけの効率減少を得ることができる。
【0012】
ある実施態様では、多数の、即ち、少なくとも2つの作動室と関連部分とが、単一の貯槽に連結される。
【0013】
ある実施態様において、圧力波を反射させるための手段は、作動室の第2の端部に設けられる順応性(順応体)を含む。当該技術分野において既知であるように、例えば弾性部材によってもたらされる順応性は、圧力波の反射が起こることを保証する。適切に選択される順応性が適切な反射をもたらす。ある具体的な実施態様では、ノズル板が印刷ヘッドのノズルをもたらし、ノズル板は可撓であり且つ弾性的であるよう選択される。適切に配置されるとき、ノズル板は順応性をもたらす。
【0014】
ある実施態様において、室出口の直ぐ上流の作動室の断面は、室出口の直ぐ下流のインク通路の断面よりも実質的に小さい。そのような断面の変化は、作動室のある種の開放端部として圧力波に対して作用する。結果的に、圧力波が主として反射する(圧力波の小さな部分は室出口を通じてインク通路内に伝搬し得る)。断面の適切な選択は、圧力波の反射部分と伝搬部分との比を制御することを可能にする。
【0015】
ある実施態様において、第1の圧力波は、ピエゾアクチュエータによって生成され、第1の圧力波は、作動室の第2の端部に向かって伝搬し、第2の端部での反射後、ノズルに向かって伝搬する。更に、ピエゾアクチュエータによって後続の第2の圧力波が生成され、第2の圧力波も第2の端部に向かって伝搬する。作動室の寸法及び第1の圧力波に対する第2の圧力波のタイミングは、第1の圧力波及び第2の圧力波の合計によって大きな圧力がもたらされるよう、(i)第1の圧力波の反射及び(ii)第2の圧力波が同時にノズルに到達するよう選択される。よって、適切に高い圧力がノズルで生成され、ノズルを通じて液滴を放出させる。
【0016】
本発明の適用性の更なる範囲が以下に示す詳細な記載から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な記載及び具体的な実施例は、本発明の実施態様を示しているが、本発明の範囲内の様々な変更及び修正がこの詳細な記載から当業者に明らかになるので、例示の目的のためにのみ示されていることが理解されるべきである。
【0017】
本発明は、以下に示す詳細な記載及び例示の目的のためにのみ示す添付の概略的な図面から、より十分に理解されるようになるであろう。よって、それらの図面は本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】画像形成装置を示す斜視図である。
図1B】インクジェット印刷組立体を示す概略図である。
図2A】第1の簡略化した従来技術のインクジェット印刷ヘッドを示す概略図である。
図2B】第2の簡略化した従来技術のインクジェット印刷ヘッドを示す概略図である。
図3A】本発明に従ったインクジェット印刷ヘッドの第1の実施態様の断面を示す斜視図である。
図3B図3Aに示す印刷ヘッドを概略的に示す側面図である。
図3C図3Aに示す印刷ヘッドの作動室を概略的に示す概略図である。
図4】本発明に従ったインクジェット印刷ヘッドの第2の実施態様の断面を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明を今や記載する。図面では、同じ又は類似の素子を幾つかの図面を通じて特定するために、同じ参照番号を使用する。
【0020】
図1Aは、画像形成装置36を示しており、そこでは、大判インクジェットプリンタを使用して印刷を達成する。大判画像形成装置36は、ハウジング26を含み、そこには、印刷組立体、例えば、図1Bに示すインクジェット印刷組立体が配置される。画像形成装置36は、受像部材28,30を収納する収納手段や、印刷後の受像部材28,30を収集する排出ステーションや、マーキング材料の収納手段20も含む。図1Aにおいて、排出ステーションは、排出トレイ32として具現化されている。任意的に、排出ステーションは、印刷後に受像部材28,30を処理するための処理手段、例えば、ホルダ又は穿孔機を含み得る。大判画像形成装置36は、印刷ジョブを受け取るための手段を更に含み、任意的に、印刷ジョブを操作するための手段を更に含む。これらの手段は、ユーザインターフェース装置24及び/又は制御装置34、例えば、コンピュータを含み得る。
【0021】
画像がロール28,30によって供給される受像部材、例えば、紙の上に印刷される。ロール28はロール支持体R1の上に支持されるのに対し、ロール30はロール支持体R2の上に支持される。代替的に、受像部材のロール28,30の代わりに、カットシート受像部材を使用し得る。ロール28,30から切断される受像部材の印刷済みシートは、排出トレイ32内に堆積させられる。
【0022】
印刷組立体における使用のためのマーキング材料の各々は、マーキング材料を印刷ヘッドに供給するための夫々の印刷ヘッドと流体接続して配置される4つの容器20内に貯蔵される。
【0023】
ローカルユーザインターフェース装置24が印刷エンジンに統合され、ディスプレイ装置及び制御パネルを含み得る。代替的に、制御パネルを、例えばタッチスクリーン制御パネルの形態の、ディスプレイ装置に統合し得る。ローカルユーザインターフェース装置24は、印刷装置36の内側に配置される制御装置34に接続される。制御装置34、例えば、コンピュータは、例えば、印刷プロセスを制御するために、印刷エンジンに命令を発するよう構成されるプロセッサを含む。任意的に、画像形成装置36をネットワークNに接続し得る。ネットワークNへの接続は、図式的にケーブル22の形態において示されている。しかしながら、それにも拘わらず、その接続はワイヤレス(無線)であってもよい。画像形成装置36はネットワークを介して印刷ジョブを受け取り得る。更に、任意的に、USBポートを介して印刷ジョブをプリンタに送信し得るよう、プリンタのコントローラはUSBポートを備え得る。
【0024】
図1Bは、インクジェット印刷組立体3を示している。インクジェット印刷組立体3は、受像部材2を支持するための支持手段を含む。支持手段は、プラテン1として図1Bに示されている。しかしながら、代替的に、支持手段は、平坦な表面であってもよい。図1Bに描写するように、プラテン1は、回転可能なドラムであり、プラテンは、矢印Aによって示すように、その軸について回転可能である。支持手段は、任意的に、受像部材を支持手段に対して固定位置に保持するための吸引孔を備え得る。インクジェット印刷組立体3は、走査印刷キャリッジ5の上に取り付けられる印刷ヘッド4a−4dを含む。走査印刷キャリッジ5は、適切な案内手段6,7によって案内されて、主走査方向Bにおいて往復的に移動する。各印刷ヘッド4a−4dは、オリフィス表面9を含み、オリフィス表面9は、少なくとも1つのオリフィス8を備える。印刷ヘッド4a−4dは、マーキング材料の液滴を受像部材2の上に噴射させるよう構成される。プラテン1、キャリッジ5、及び印刷ヘッド4a−4dは、夫々、適切な制御手段10a、10b、及び10cによって制御される。
【0025】
受像部材2は、ウェブ形態又はシート形態の媒体であり得る。例えば、紙、厚紙、粘着シート(label stock)、コート紙、プラスチック、又は織物(textile)で受像媒体2を構成し得る。代替的に、受像部材2は、無端であろうとなかろうと、中間部材であってもよい。周期的に移動させ得る無端部材の例は、ベルト又はドラムである。受像部材2は、流体マーキング材料を備える4つの印刷ヘッド4a−4dに沿って、プラテン1によって副走査方向Aにおいて移動させられる。
【0026】
走査印刷キャリッジが4つの印刷ヘッド4a−4dを支持する。主走査方向Bにおける受像部材2の走査を可能にするために、走査印刷キャリッジをプラテン1と平行な主走査方向Bにおいて往復的に移動させ得る。本発明を実証するために、4つの印刷ヘッド4a−4dのみを描写しているが、実際には、任意の数の印刷ヘッドを利用し得る。いずれにしても、マーキング材料の色毎に少なくとも1つの印刷ヘッド4a−4dが走査印刷キャリッジ5の上に配置される。例えば、白黒印刷のためには、少なくとも1つの印刷ヘッド4a−4dが存在し、黒(ブラック)のマーキング材料を収容するのが普通である。代替的に、白黒プリンタは、黒色の受像部材2の上に塗布される白色(ホワイト)のマーキング材料を含み得る。多色を収容するフルカラー印刷のためには、それらの色、通常、黒色、青緑色(シアン)、赤紫色(マジェンタ)、及び黄色(イエロー)の各々のために、少なくとも1つの印刷ヘッド4a−4dが存在する。フルカラー印刷では、異なる色のマーキング材料と比べて、黒色マーキング材料がより頻繁に使用されることが多い。従って、他の色のいずれかのマーキング材料を収容する印刷ヘッド4a−4dと比べて、黒色マーキング材料を収容するより多くの印刷ヘッド4a−4dを、走査印刷キャリッジ5の上に設け得る。代替的に、黒色マーキング材料を収容する印刷ヘッド4a−4dは、異なる色のマーキング材料を収容する印刷ヘッド4a−4dよりも大きてもよい。
【0027】
キャリッジ5は案内手段6,7によって案内される。これらの案内手段6,7は、図1Bに描写するようなロッド(棒)であり得る。適切な駆動手段(図示せず)によってロッドを駆動し得る。代替的に、キャリッジ5を移動し得るアームのような他の案内手段によってキャリッジ5を案内し得る。他の代替は受像材料2を主走査方向Bにおいて移動することである。
【0028】
各印刷ヘッド4a−4dは、印刷ヘッド4a−4d内に提供される流体マーキング材料を収容する圧力室と流体連絡する少なくとも1つのオリフィス8を有するオリフィス表面9を含む。オリフィス表面9には、多数のオリフィス8が副走査方向Aと平行な単一の直線配列において配置される。プリントヘッド4a−4d毎に8個のオリフィスを図1Bに描写しているが、実用的な実施態様では、印刷ヘッド4a−4d毎に数百のオリフィス8を設け得るのが明らかであり、それらは任意的に多数の配列において配置される、図1Bに描写するように、夫々の印刷ヘッド4a−4dは、夫々の印刷ヘッド4a−4dの対応するオリフィス8が主走査方向Bにおいて直列に位置付けられるように、互いに平行に配置される。これは、各々が異なる印刷ヘッド4a−4dの一部である最大で4つまでのオリフィス8を活性化させることによって、主走査方向Bにおける画像点(ドット)の線を形成し得ることを意味する。オリフィス8の直列配列に対応する印刷ヘッド4a−4dのこの平行な位置付けは、生産性を増大させ且つ/或いは印刷品質を向上させるのに有利である。代替的に、夫々の印刷ヘッド4a−4dのオリフィス8が直線ではなく千鳥配置に位置付けられるよう、多数の印刷ヘッド4a−4dを互いに近接して印刷キャリッジの上に配置し得る。これを行うのは、例えば、印刷解像度を増大させ或いは有効印刷領域を拡大させるためであり、それを主走査方向における単一走査において取り組み得る。画像点はオリフィス8からマーキング材料の液滴を噴射させることによって形成される。
【0029】
マーキング材料の噴射後、一部のマーキング材料が印刷ヘッド4a−4dのオリフィス表面9の上に零れて留まり得る。オリフィス表面9の上に存在するインクは、液滴の噴射及び受像部材2上での液滴の配置に否定的な影響を及ぼし得る。従って、オリフィス表面9から余分なインクを取り除くことは有利であり得る。例えば、ワイパで拭うことによって、並びに/或いは、例えば、塗膜によってもたらされる表面の適切な防湿性の適用によって、余分なインクを取り除き得る。
【0030】
図2Aは、従来技術のインクジェット印刷ヘッド4の一部としての作動室44を示している。作動室44は、本体41と、ノズル板42とによって形成され、ノズル板には、ノズル45が配置される。ピエゾアクチュエータ素子43が作動室44の側壁に配置されることで、作動後、作動室44の側壁が変形し、圧力波が作動室44内に生成される。作動圧力がアクチュエータ43の延在方向と平行な作動方向48においてノズル45付近にもたらされ、その結果、液滴49を放出するように、圧力波が生成される。実際には、汚物粒子又は気泡47がノズル45又は作動室44内に捕捉されるようになり得る。作動室44内の気泡47は、作動室44内に生成される如何なる圧力波をも減衰させ、その結果、ノズル45付近の圧力減少、故に、液滴形成の劣化を招く。ノズル45内又は付近の汚物粒子も液滴形成の劣化を引き起こすのは明らかである。しかしながら、汚物粒子又は気泡47は逃げ出し得ず、従って、最悪の場合には、作動室44及びノズル45は恒久的に使用不能になる。
【0031】
図2Bには、他の既知のインクジェット印刷ヘッド4を簡略化した図において示している。作動室44が本体41内に形成され、本体にはノズル45が配置されている。ノズル45の反対側には、アクチュエータ43が配置されている。図2Bのインクジェット印刷ヘッド4において、アクチュエータ43は、熱作動のためのサーミスタであってもよく、インクの急激な局所的な加熱は、蒸気の気泡をもたらす。蒸気は元々の液体インクよりも多くの容積を必要とし、結果的に、インク内の圧力はアクチュエータ43の延在方向に対して垂直な作動方向48において増大し、その結果、反対側に配置されるノズル45を通じて液滴49を放出し得る。しかしながら、従来技術から既知の実施態様において、アクチュエータ43は、ピエゾアクチュエータ(即ち、電気機械的な変換器)であってもよく、それは駆動電圧が供給されるときに圧力室44の容積を増大し且つ/或いは減少する。容積変化は圧力波を生み、圧力波はノズル45を通じて液滴を放出させる。
【0032】
図2Bに示すような印刷ヘッド4では、汚物粒子又は気泡47が捕捉されるようになり得る。しかしながら、インクは流れ方向48において流れ続ける。気泡47はインクによってノズル45から離れる方向に運ばれるかもしれず、結果的に、ノズル45の閉塞の故にノズル45が使用不能になる可能性はより小さい。
【0033】
図2Bに示す印刷ヘッドにおいて利用される方法が安定的な噴射プロセスのために望ましくあり得るのは明らかであるが、熱作動を有する印刷ヘッドは、溶剤が迅速に気化し得る水性インクのような溶解性インクとの使用にのみ適している。更に、アクチュエータの種類とは無関係に、低粘性のインクが必要とされる。何故ならば、作動方向48において比較的小さな圧力のみをノズル45付近で生成し得るからである。生成される圧力の有意な部分は、作動方向48に対して垂直な方向、即ち、流れ方向46と平行な方向において失われる。例えばホットメルトインクのような非溶解性インク、及び/又は高粘性インクのためには、図2Aに示すようなインクジェット印刷ヘッド4が既知であり且つ利用可能であるが、作動チャンバ44を通じて並びにノズル45に沿って連続的なインクの流れをもたらす印刷ヘッドは、そのような圧力損失の故に利用可能ではない。
【0034】
図3A−3Cは、図2Aに示す印刷ヘッド4に従った作動方法をもたらし且つ作動室54(図3A),54a−55e(図3C)を通じる連続的なインクの流れをもたらす、本発明に従った印刷ヘッド50のある実施態様を例示している。インクジェット印刷ヘッド50は、任意の適切な材料の本体51を有する。例えば、グラファイト又はシリコンを使用し得るが、精密な機械処理に適した他の材料も利用し得る。多数のピエゾアクチュエータ53がアクチュエータ支持素子52の上に配置される。作動後に、関連するノズル60を通じて液滴を放出し得るよう、各アクチュエータ53は、多数のアクチュエータ室54の1つと関連付けられる。適切な可撓なシート材料58が、夫々のアクチュエータ53とアクチュエータ室54との間に配置される。
【0035】
印刷ヘッド50は、第1のインク入口55aと、第2のインク入口55bと、インク出口56とを備える。インク流路が印刷ヘッド50内に配置され、インク流路は、第1のインク入口55aで開始し、矢印57aによって示すように通路を通じ、矢印57bによって示すようにアクチュエータ室54に向かい、矢印57cによって示すようにアクチュエータ室54を通じ、引き続き、矢印57dに示すように第1の出口通路56aを通じ、矢印57eによって示すようにインク出口56に向かって流れる。
【0036】
類似の第2の流路が第2のインク入口55bで開始する。第2のアクチュエータ支持素子及び第2の多数のピエゾアクチュエータを示していないが、実際には存在し得ることに留意のこと。他方、ある実施態様では、第2の流路を省略することによって、単一の流路のみを設け得る。
【0037】
特に図3Bを今や参照すると、印刷ヘッド50の背面側が示されている。背面側は、正面側の反対側であり、正面側は、ノズル60を含む。背面側は、第1及び第2のインク入口55a,55bと、インク出口56とを含む。図3Bに例示するように、第1のインク入口55a及び第2のインク入口55bは、夫々、主インク終端59aと流体連絡し、インク出口56は、主インク出口59bと流体連絡する。印刷ヘッド50の背面側は、背面側を覆う適切なカバーを配置することによって閉塞され、主インク入口59a及び主インク出口59bはカバーを通じて突出し、インクジェット印刷ヘッド50にインクを供給し且つインクジェット印刷ヘッド50からインクを受け取ることを可能にする。例えば図1Bに示すような印刷組立体では、インク貯槽及びポンプ手段を設けることで、インクが連続的な流れにおいて、そのようなインク貯槽から主インク入口59aに進み、インクジェット印刷ヘッド50を通じ、主インク出口59bを通じ、貯槽に戻るよう、インクをポンピングし得る。
【0038】
図3Cを今や参照して、印刷ヘッド50の動作をより詳細に記載する。作動室54を詳細に示している。作動室54は、室入口54aと、主部54bと、連結部54cと、長さLを有する排出部54dと、室出口54eとを含む。インクは、室入口54aで作動室54に進入し得る。室入口54aは、図2Aに示す既知の印刷ヘッド4の室入口と同じ特徴を有し得る。アクチュエータ53の延在方向と平行な方向において伝搬する圧力波を実質的に反射するよう室入口54aを構成し得る。作動室54の主部54b内に圧力波を生成するようピエゾアクチュエータ53を駆動し得る。圧力波は、主部54bを通じ、連結部54cを通じ、ノズル60に向かって伝搬し、更に、排出部54dさえも通じて伝搬する。室出口54eで、圧力波は実質的に反射されて、ノズル60に向かって戻る。
【0039】
例示的な動作方法において、アクチュエータ53は、先ず、主部54bの容積を増大させるよう駆動され、それによって、第1の伝搬圧力波を生成する。所定の時間期間の後、アクチュエータ53は駆動させられてその元々の位置に戻り、それによって、主部54bの容積を減少させ、第2の圧力波を生成する。所定の長さの主部54b、連結部54c、及び、排出部54dの前記長さ、並びに、第1の圧力波と第2の圧力波との間に所定の適切な時間期間を有することに基づき、室出口54eで反射させられる第1の圧力波はノズル60付近に戻り、同時に、第2の圧力波はノズル60付近に到達し、それによって、十分な大きさ及び速度でノズル60を通じて液滴を放出するために、ノズル60付近に十分な圧力を生成する。
【0040】
圧力波が室入口54aで適切に反射するために、可撓なシート材料58(図3A)は、既知のインクジェット印刷ヘッドから既知であり且つ既知のインクジェット印刷ヘッドにおいて使用されているような適切な順応性(コンプライアンス)(compliance)をもたらす。室出口54eで、ある実施態様では、類似の順応性をもたらし得る。具体的な実施態様において、そのような順応性は、作動室54の排出部54dを覆って配置される可撓なシート材料によってもたらされ、可能なシート材料の内にノズル60が配置される(そのようなシート材料は図4に示され、図4に関する記述中に記載され且つ説明される)。その上、高粘性流体を噴射するためにノズル付近で十分な圧力を生成することを可能にするために、ノズルに或いはノズル付近に順応性をもたらすことを、特にその内に配置されるノズルを有する可撓なシート材料の適用によって、他の印刷ヘッド設計においても有利に利用し得る。他の実施態様では、適切な反射をもたらすために順応性をもたらす代わりに、当該技術分野において周知であるように、大きなインピーダンスをもたらし得る。
【0041】
他の実施態様では、作動室54の排出部54dの断面よりも有意に大きい、インク出口通路、例えば、第1のインク出口通路56a及び第2のインク出口通路56bの断面に起因して、室出口54eでの圧力波の適切な反射をもたらし得る。
【0042】
図4は、本発明に従った印刷ヘッド70の他の実施態様を示している。印刷ヘッド70は、本体71と、アクチュエータ支持素子72と、アクチュエータ73と、作動室とを含み、作動室は、室入口74aと、主部74bと、連結部74cと、排出部74dと、室出口74eとを含む。印刷ヘッド70は、ノズル板75と、作動室の主部74bを覆う可撓なシート部材78とを更に含み、ノズル板内には、ノズル76が配置され、各ノズル76は、作動室と関連付けられる。第1及び第2のインク入口81a,81bを通じてインクを供給することができ、インクはインク出口82を通じて印刷ヘッド70から出ることができる。図3Aに示す実施態様と比べると、印刷ヘッド70はノズル板支持素子71aを追加的に備える。
【0043】
上述のようなノズル板75は可撓なシート材料で作製され、ノズル76は可撓なシート材料に設けられる。可撓なノズル板75は、作動室の排出部54dを覆い、それによって、図3Cに関連して記載したような適切な順応性をもたらす。可撓なノズル板75によってもたらされる順応性が適切であるようにノズル板支持素子71aの支持表面積を決定し得る。例えば、支持表面積が小さいならば、可撓シートの不支持部分の長さは大きく、順応性は大きい。支持表面積の増大は、可撓シートの不支持部分の減少をもたらし、故に、順応性の減少を招く。更に、ノズル板支持素子71aは、圧力波の一部が室出口74eを越えて進むことの結果としての漏話を削減するのを助け得る。
【0044】
図3A−3Cに例示する実施態様を参照すると、図3Aではノズル板が示されていない。しかしながら、実際には、ノズル板は存在する。そのようなノズルを図4に示す実施態様に存在するような可撓なシート材料で作製し得る。他の実施態様では、剛性材料又は他の適切な材料でノズル板を作製し得る。
【0045】
ある実施態様において、可撓シートで作製されるノズル板は、Upilex(R)のようなポリイミドシートで作製される。
【0046】
本発明の詳細な実施態様をここに開示する。しかしながら、開示の実施態様は、様々な形態において具現化し得る本発明の例示に過ぎないことが理解されるべきである。従って、ここに開示する具体的な構成及び基本的な詳細は、限定的であるように解釈されてはならず、請求項のための基礎として並びに本発明を実質的に如何なる詳細な構成にも多様に利用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。具体的には、別個の従属項に提示し且つ記載する機能を組み合わせにおいて適用可能であり、そのような請求項の如何なる有利な組み合わせをもここに開示する。
【0047】
更に、ここで使用する用語及び語句は限定的であることは意図されておらず、むしろ本発明の理解可能な記載を提供することが意図されている。ここで使用されるとき、単数形(“a” or “an”)の用語は、1つ又は1つよりも多くとして定められる。ここで使用されるとき、複数の用語は、2つ又はそれよりも多くとして定められる。ここで使用されるとき、他という用語は、少なくとも第2の又はそれよりも多くのとして定められる。ここで使用されるとき、含む及び/又は有するという用語は、含む(即ち、開放言語)として定められる。ここで使用されるとき、結合されるという用語は、直接的である必要はないが、接続されることとして定められる。
【0048】
このように本発明を記載したが、本発明は多様に異なり得ることが明らかであろう。そのような変形は、本発明の精神及び範囲からの逸脱と考えられるべきではなく、当業者に明らかであるそのような変形の全ては、後続の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4