特許第5864595号(P5864595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864595
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】水性カチオン性ポリウレタン分散体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20160204BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160204BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20160204BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20160204BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C08G18/38 Z
   B41M5/00 B
   C09D175/04
【請求項の数】30
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-536867(P2013-536867)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2013-543907(P2013-543907A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】US2011058281
(87)【国際公開番号】WO2012058534
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/407,932
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ラブニン, アレクサンダー ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】マラバ, デニス エヌ.
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−173196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/38
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン骨格に側方結合した1つ又は複数のテザー第三級アミノ基を有する前記ポリウレタン骨格を有するポリウレタンの水性分散体を含み前記第三級アミン基が前記ポリウレタン骨格からそれらのテザー基における少なくとも2個の介在原子により分離されている、水性カチオン性ポリウレタン分散体(PUD)。
【請求項2】
前記第三級アミノ基が部分的又は完全に中和又は四級化されている、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記ポリウレタンの合成中につのイソシアネート反応性水素を有する少なくとも1つの第三級アミノ基化合物を反応させることにより前記テザー第三級アミノ基が前記ポリウレタンに組み込まれ、前記中和又は四級化テザー第三級アミノ基がカチオン基を形成している、請求項に記載の分散体。
【請求項4】
前記ポリウレタン骨格が2つ以上のイソシアネート反応性水素を有するポリオールを反応させることによる反復単位も含み、前記ポリオールが少なくとも1つのポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はポリエーテルポリオールを含む、請求項に記載の分散体。
【請求項5】
前記水性カチオン性ポリウレタン分散体のウレタンプレポリマー又はポリマー固体が少なくとも25重量%である、請求項1に記載の分散体。
【請求項6】
前記ポリウレタンに結合した非イオン性又は両性イオン性コロイド安定化部分をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
つの活性水素を有する前記少なくとも1つの第三級アミノ基化合物の少なくとも1つが化合物当たり1つ又は複数のテザー第三級アミノ基を含んだ、請求項又はに記載の分散体。
【請求項8】
前記ポリウレタンが少なくとも1つの脂肪族又は芳香族ジイソシアネートを前記少なくとも1つの第三級アミノ基化合物と反応させることにより得られる、請求項又はのいずれかに記載の分散体。
【請求項9】
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり.1〜0ミリ当量の量で存在する、請求項1からのいずれかに記載の分散体。
【請求項10】
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり.3〜ミリ当量の量で存在する、請求項1からのいずれかに記載の分散体。
【請求項11】
前記テザー第三級アミノ基が3−ジメチルアミノプロピルアミノ−1,1’−ビス−(プロパン−2−オール)又はN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテルに由来する、請求項1から10のいずれかに記載の分散体。
【請求項12】
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%が中和されてカチオン中心を形成する、請求項1から1のいずれかに記載の分散体。
【請求項13】
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%が四級化されてカチオン中心を形成する、請求項1から1のいずれかに記載の分散体。
【請求項14】
ポリ(ビニルアルコール)とブレンドされている、請求項1から1のいずれかに記載の分散体。
【請求項15】
請求項1から1のいずれかに記載の分散体を含む、水系デジタル印刷用途のためのコーティング。
【請求項16】
少なくとも1つの第三級アミノ基及びつの活性水素を有する1つ又は複数の化合物をジイソシアネートと反応させて、1つ又は複数のテザー第三級アミノ基を有するポリウレタン骨格を有するポリウレタンを形成することにより、請求項1に記載のポリウレタン分散体(PUD)を作製する方法であって、テザー第三級アミノ基がジイソシアネートとの反応により形成され、前記テザー第三級アミノ基の少なくとも1つが少なくとも2個の原子により前記ポリウレタン骨格から分離されるように、前記第三級アミノ基が前記第三級アミノ基化合物に配置されている、方法。
【請求項17】
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%を中和してカチオン中心を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%を四級化してカチオン中心を形成するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり.1〜0ミリ当量の量で存在する、請求項1から1のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり.3〜ミリ当量の量で存在する、請求項1から1のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第三級アミノ基を有する前記1つ又は複数の化合物が3−ジメチルアミノプロピルアミノ−1,1’−ビス−(プロパン−2−オール)又はN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテルを含む、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ポリウレタン分散体が、水への分散中又は分散後に鎖延長されるポリウレタンプレポリマーから調製される、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項1から1のいずれかに記載の分散体または請求項1に記載のコーティングで被覆されたインク受容基材。
【請求項24】
不織布又はテキスタイルである、請求項2に記載のインク受容基材。
【請求項25】
紙である、請求項23に記載のインク受容基材。
【請求項26】
ポリマーフィルムである、請求項2に記載のインク受容基材。
【請求項27】
前記第三級アミノ基が少なくともリン酸を含む少なくとも1つの中和酸で部分的又は完全に中和されている、請求項に記載の分散体。
【請求項28】
前記ポリウレタンと適合する1つ若しくは複数のポリマー、又は前記ポリマー分散体と適合するポリマー分散体をさらに含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項29】
ポリウレタンの前記水性分散体がポリウレタンの分散粒子を含み、ポリウレタンの前記分散粒子が、ポリウレタン及びビニルポリマーの組み合わせた重量に対して少なくとも1重量パーセントのビニルポリマーをさらに含み、それによりハイブリッドポリウレタン分散体を構成する、請求項1に記載の分散体。
【請求項30】
前記ビニルポリマーがアクリルポリマーである、請求項29に記載の分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性カチオン性ポリウレタン分散体(PUD)の組成物及び製造に関し、ポリウレタンの分散性及び性能が、場合によって中和及び/又は四級化された第三級アミノ基、例えば、テザー(tethered)第三級アミン基(側鎖におけるアミン基)又は末端当たり複数の第三級アミノ基を有する末端第三級アミノ基により向上している。そのような分散体は、デジタル印刷、インク受容基材、紙及びガラス繊維サイジング、コーティング、接着剤、包装、医療品、パーソナルケア用品並びに家庭用ケア用品を含む様々な用途で有用である。
【背景技術】
【0002】
インクジェット及びレーザーを含むデジタル印刷は、コンピュータから画像又はデータを媒体上に直接的に再現する方法である。どちらも、データ又は画像の即時の現像及び固定が可能にする。多くの利点があるが、乏しい耐水性(染料のしみと称される)、保色性及び空白部の黄変などの問題を含む、デジタル技術を用いることに伴ういくつかの問題点もある。画質における他の主要な因子は、吸収、又は液体インクが固体媒体にどのように取り込まれるか、そして、それが最終データ若しくは画像の外観における役割をどのように果たすかである。インクを媒体上につけた場合、それはタイトな対称性のドットにとどまるべきであり、そうでなければ、インクのドットは、にじみ又は不規則に広がり始めて、デジタルプリンターが意図したよりわずかに大きい面積に及ぶ。その結果は、とりわけ物体及びテキストの縁において不鮮明に見える画像又はデータであり、これは、ウィッキングとも呼ばれている。これらの潜在的な問題点を改善する努力がなされた。
【0003】
特許文献1は、骨格に第三級アミンを含み、前記アミンが硫酸ジエチルにより四級化されている、又は酢酸により中和されている、カチオン性ポリウレタン樹脂を開示している。ポリオールは使用されず、結果として得られたポリマーは、水に溶け、低い固体含量(20〜30重量%)を有する溶媒含有水溶液として製造された。特許文献2は、カチオン性であり得る、又はカチオン性とし得るポリウレタン組成物に関する。それはまた、前記ポリウレタンを用いる美容的処理プロセスに関する。
【0004】
特許文献3は、骨格における第三級アミノ基が酢酸により中和された、防水インクジェット受容コーティング用の水性カチオン性ポリウレタン溶液を開示している。非常に低い分子量の生成物のみがジメチルホルムアミド溶媒を含有する希薄(総固体が20重量%未満)水溶液の形で得られた(重量平均分子量が8,000g/モル未満)。
【0005】
特許文献4は、中和又は四級化されていない、側鎖におけるものを含む第三級アミン基を含有するポリウレタンを含む、親水性ポリマーを開示している。水溶性ポリウレタングリコールポリオールが合成に用いられているため、発明の実証は、有機溶媒中の重合に限定されており、最終生成物は、有機溶媒中ポリマー溶液である。水系生成物のテザーアミンの独特の特徴は、予見されず、実証されなかった。
【0006】
特許文献5は、ジエポキシ化合物と第二級アミンとの反応生成物を介して第三級アミン基が導入されるカチオン性ポリウレタン分散体を対象としている。このアプローチの限界は、標的第三級窒素が1つの炭素原子のみにより骨格から除去され、テザーが結合している骨格のアンカリング原子が炭素のみであり得、他の窒素であり得ないことである。この経路の実現におけるさらなる重大なハードルは、それが追加の合成ステップを必要とし、最大の分散性を得るためには、第二級アミンにおける最も好ましいアルキル基がメチルである必要があり、これが、7℃の沸点を有し、空気との爆発性混合物を形成する有害で、高度に可燃性のジメチルアミンの高温(70℃)での取り扱いを必要とすることである。この理由のため、米国特許出願第2008090949号における発明の実施化は、ジブチルアミンに限定された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1068959号明細書
【特許文献2】仏国特許第2,934,777号明細書
【特許文献3】米国特許第6,140,412号明細書
【特許文献4】米国特許第6,358,306号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008090949号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)ウレタン骨格に側方結合したテザー第三級アミノ基(単数又は複数)又はb)複数の第三級アミノ基を含有する末端結合第三級アミノ基のような、アミノ基と水性媒体との相互作用を最適化する位置でウレタンに結合した第三級アミノ基を有するポリウレタンの水性分散体を含む水性カチオン性ポリウレタン分散体を対象とし、前記アミノ基は、場合によって酸により中和及び/又は四級化されており、テザーは、第三級アミンを含有する基がウレタン骨格からの側方へのペンダントであり、前記第三級アミン基が、炭素、窒素、酸素からなる群から選択され、好ましくは炭素などの少なくとも2個の介在原子により前記ウレタン骨格から分離されていることを示すと解釈される。
【0009】
具体的には、本発明は、高い固体含量及び低い粘度を有する、環境にやさしい(すなわち、実質的に低い溶媒含量を有する)水性カチオン性の好ましくは高分子量ポリウレタン分散体を対象とする。
【0010】
分散体は、低いウィッキング、高い耐摩耗性、ひずみのない色及び速い乾燥速度などの優れた特性を有するインク受容コーティング(例えば、インクジェットインク用の受容コーティング)に用いることができる。本発明のウレタンの他の有用な特性は、アニオン性基材への親和性並びにデジタル印刷用途及び本明細書で述べた他の用途において補助としてしばしば使用されるカチオン性物質及び多価金属イオンとの水中分散体としての適合性などである。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
ポリウレタン骨格セグメントに側方結合した1つ又は複数のテザー第三級アミノ基を有する前記骨格セグメントを有するポリウレタンの水性分散体を含み、前記第三級アミノ基が場合によって部分的又は完全に中和又は四級化されており、前記第三級アミン基が前記ポリウレタン骨格からそれらのテザー基における少なくとも2個の介在原子により分離されている、水性カチオン性ポリウレタン分散体(PUD)。
(項目2)
前記ポリウレタンの合成中に約2つのイソシアネート反応性水素を有する少なくとも1つの第三級アミノ基化合物を反応させることにより前記テザー第三級アミノ基が前記ポリウレタンに組み込まれ、前記中和又は四級化テザー第三級アミノ基がカチオン基を形成している、項目1に記載の分散体。
(項目3)
前記ポリウレタン骨格が2つ以上のイソシアネート反応性水素を有するポリオールを反応させることによる反復単位も含み、前記ポリオールが少なくとも1つのポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はポリエーテルポリオールを含む、項目2に記載の分散体。
(項目4)
前記水性カチオン性ポリウレタン分散体のウレタンプレポリマー又はポリマー固体が少なくとも25重量%である、項目1に記載の分散体。
(項目5)
前記ポリウレタンに結合した非イオン性又は両性イオン性コロイド安定化部分をさらに含む、項目1に記載の分散体。
(項目6)
約2つの活性水素を有する前記少なくとも1つの第三級アミノ基化合物の少なくとも1つが化合物当たり1つ又は複数のテザー第三級アミノ基を含んだ、項目2又は3に記載の分散体。
(項目7)
前記ポリウレタンが少なくとも1つの脂肪族又は芳香族ジイソシアネートを前記少なくとも1つの第三級アミノ基化合物と反応させることにより得られる、項目2、3又は6のいずれかに記載の分散体。
(項目8)
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり約0.1〜約10ミリ当量の量で存在する、前記項目のいずれかに記載の分散体。
(項目9)
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり約0.3〜約3ミリ当量の量で存在する、前記項目のいずれかに記載の分散体。
(項目10)
前記テザー第三級アミノ基が3−ジメチルアミノプロピルアミノ−1,1’−ビス−(プロパン−2−オール)又はN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテルに由来する、前記項目のいずれかに記載の分散体。
(項目11)
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%が中和されてカチオン中心を形成する、前記項目のいずれかに記載の分散体。
(項目12)
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%が四級化されてカチオン中心を形成する、前記項目のいずれかに記載の分散体。
(項目13)
ポリ(ビニルアルコール)とブレンドされている、前記項目のいずれかに記載の分散体。
(項目14)
項目1から13のいずれかに記載の分散体を含む、水系デジタル印刷用途のためのコーティング。
(項目15)
少なくとも1つの第三級アミノ基及び約2つの活性水素を有する1つ又は複数の化合物をジイソシアネートと反応させて、1つ又は複数のテザー第三級アミノ基を有するポリウレタン骨格セグメントを有するポリウレタンを形成することにより、項目1に記載のポリウレタン分散体(PUD)を作製する方法であって、テザー第三級アミノ基がジイソシアネートとの反応により形成され、前記テザー第三級アミノ基の少なくとも1つが少なくとも2個の原子により前記ポリウレタン骨格から分離されるように、前記第三級アミノ基が前記第三級アミノ基化合物に配置されている、方法。
(項目16)
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%を中和してカチオン中心を形成するステップを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記テザー第三級アミノ基の少なくとも25%を四級化してカチオン中心を形成するステップを含む、項目15のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり約0.1〜約10ミリ当量の量で存在する、項目15から17のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記テザー第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり約0.3〜約3ミリ当量の量で存在する、項目15から17のいずれかに記載の方法。
(項目20)
第三級アミノ基を有する前記1つ又は複数の化合物が3−ジメチルアミノプロピルアミノ−1,1’−ビス−(プロパン−2−オール)又はN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテルを含む、項目15から19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記ポリウレタン分散体が、水への分散中又は分散後に鎖延長されるポリウレタンプレポリマーから調製される、項目15から19に記載の方法。
(項目22)
項目1から14のいずれかに記載の組成物で被覆されたインク受容基材。
(項目23)
不織布又はテキスタイルである、項目22に記載のインク受容基材。
(項目24)
紙である、項目23に記載のインク受容基材。
(項目25)
ポリマーフィルムである、項目22に記載のインク受容基材。
(項目26)
ポリウレタン骨格セグメントに結合した1つ又は複数の末端第三級アミノ基を有するポリウレタン骨格セグメントを有するポリウレタンの水性分散体を含み、前記末端第三級アミノ基が末端基当たり2つ以上の第三級アミノ基からなり、場合によって部分的又は完全に中和又は四級化されている、末端第三級アミノ基を有する水性カチオン性ポリウレタン分散体(PUD)。
(項目27)
前記末端第三級アミノ基の少なくとも25%が中和された形の少なくとも1つの第三級アミノ基(カチオン中心)を含む、項目26に記載の水性分散体。
(項目28)
前記末端第三級アミノ基の少なくとも25%が四級化された形の少なくとも1つの第三級アミノ基(カチオン中心)を含む、項目26に記載の水性分散体。
(項目29)
前記末端第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり約0.1〜約10ミリ当量の量で存在する、項目26から28のいずれかに記載の水性分散体。
(項目30)
前記末端第三級アミノ基がポリウレタン1グラム当たり約0.2〜約3ミリ当量の量で存在する、項目26から28のいずれかに記載の水性分散体。
(項目31)
前記ポリウレタンに結合した非イオン性又は両性イオン性コロイド安定化部分をさらに含む、項目26から30のいずれかに記載の水性分散体。
(項目32)
前記第三級アミノ基が少なくともリン酸を含む少なくとも1つの中和酸で部分的又は完全に中和されている、項目1に記載の分散体。
(項目33)
前記ポリウレタンと適合する1つ若しくは複数のポリマー、又は前記ポリマー分散体と適合するポリマー分散体をさらに含む、項目1に記載の分散体。
(項目34)
ポリウレタンの前記水性分散体がポリウレタンの分散粒子を含み、ポリウレタンの前記分散粒子が、ポリウレタン及びビニルポリマーの組み合わせた重量に対して少なくとも1重量パーセントのビニルポリマーをさらに含み、それによりハイブリッドポリウレタン分散体を構成する、項目1に記載の分散体。
(項目35)
前記ビニルポリマーがアクリルポリマーである、項目34に記載の分散体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
以下の用語は、下文で述べる定義を有する。
【0012】
テザーアミン基は、主なポリマー骨格から離れたアミン基の位置を指す。そのような配置において、複数のアミン基がスペーサーを介して前記骨格に連結されている。このトポロジーは、以下の図によって表すことができる。
【0013】
【化1】
ここで、Pは、ウレタンポリマー骨格であり、Lは、リンク又はスペーサーであり、NRは、酸により中和又は四級化することができるテザー第三級アミンである。各Rは、一般的に他と独立に低級アルキル基(例えば、1〜5個の炭素原子、好ましくは1又は2個の炭素原子)又は他の第三級アミン基を含み得るアルキルアミンである。各Lは、結合基(置換、線状、分岐、シクロアルキル、芳香族又はウレタン結合、エステル結合を含み得、炭素に加えて、酸素及び窒素などのヘテロ原子を含有し得るそれらの組合せ)であり得る。好ましく且つ単純な実施形態において、Lは、一般的にエチレン、プロピレン、又は2〜6個、好ましくは2〜4個、最も好ましくは2若しくは3個の炭素原子の他のアルキレン基である。
【0014】
末端第三級アミノ基と以後称するこのトポロジーのサブセット(テザー第三級アミノ基以外である)は、以下の図によって表すことができる。
【0015】
【化2】
この配置において、アミン基は、分岐ポリマーの鎖端に結合している。この実施形態において、L及びRは、テザー第三級アミノ基について上で定義した通りである。
【0016】
本明細書における「テザー」という用語は、技術文献で同等に用いられている「側方結合」、「ペンダント」及び「側鎖基」という用語と同義語である。これらの側方結合第三級アミン基は、場合によって中和及び/又は四級化され得る。
【0017】
ポリウレタンは、それらがどのように作製されたかに無関係に、ウレタン基、すなわち、−O−C(=O)−NH−を含有するオリゴマー(例えば、プレポリマー)を含むポリマーを記述するために用いられる用語である。周知のように、これらのポリウレタンは、ウレタン基に加えて、尿素、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、オキサゾリジニル、イソシアヌレート(isocynaurate)、ウレトジオン、エステル、エーテル、カーボネート、炭化水素、過フッ化炭化水素、アルコール、メルカプタン、アミン、ヒドラジド、シロキサン、シラン、ケトン、オレフィン等などのさらなる基を含有し得る。
【0018】
最終ポリウレタン生成物は、本発明の水性分散体生成物中のポリウレタンの形を指す。ポリウレタンプレポリマーを場合によって鎖延長させる場合、最終ポリウレタン生成物は、この鎖延長ポリマーである。ポリウレタンプレポリマーを鎖延長させない場合、最終ポリウレタン生成物は、プレポリマー自体である。
【0019】
マイケル付加は、以下のような不飽和カルボニル化合物へのカルボアニオン又は他の求核試薬の求核付加である。
【0020】
【化3】
重量%は、成分が一部を形成する組成物又は材料の100重量部当たり(しばしばウレタンポリマー又はオリゴマーの100重量部当たり)の成分の重量部数を意味する。すべての単位は、特に示さない限り、重量%である。
【0021】
水性は、実質的な量の水を含有する組成物を表現する。好ましくは、水性は、少なくとも20重量%の水を意味し、より好ましい実施形態において、水及び他の溶媒に対して少なくとも50重量%の水である。それは、適合性有機溶媒などの他の成分も含有し得る。したがって、我々が水性ポリウレタン分散体と言う場合、我々は、好ましい実施形態において、ポリウレタンが、少なくとも20重量%が水であり、アルコール及び他の極性有機溶媒のような適合性有機材料を含有し得る液体媒体中に分散していることを意味する。
【0022】
水の実質的な非存在は、かなりの量、例えば、組成物の総重量に対して約2重量%以下ほどの水の意図的な添加なしに形成された組成物を指す。典型的に、イソシアネートとポリオールとの反応は、水の実質的な非存在のもとで行わせるが、これは、水がイソシアネートと別個に反応してさほど望ましくなく、さほど制御されない構造を形成し得るからである。
【0023】
界面活性剤の実質的な非存在は、分散体の分散相を懸濁又は分散させるためのかなりの量の界面活性剤(200Mn未満の表面活性種としばしば定義される)を意図的に含めずに分散体を作製することを意味する。これは、ポリウレタンが水中で自己分散性であることを可能にするのに十分なテザー第三級アミノ基及び/又は非イオン性分散剤がポリウレタン骨格に結合している場合にしばしば起こる。
【0024】
ポリマー骨格は、最初の反復単位の最初の原子と最後の反復単位の最後の原子との間の原子の連続的な相互連結配列である。TDI又はポリ(1,2−プロピレンオキシド)におけるメチル基のような骨格からのペンダントである原子は、ペンダント部分とみなされ、骨格原子ではない。
【0025】
本発明は、テザーアミンがウレタンに組み込まれた水系デジタル印刷用途において使用するためのカチオン性ポリウレタン分散体を対象とする。本発明の範囲を制限することなく、我々は、テザー第三級アミンが鎖内アミンより有効な分散単量体であるとの理論を立てたが、これは、より十分な水和が可能になるようにアミン基が骨格から除去されるためである。これは、ウレタンの末端位置における複数の第三級アミノ基にも当てはまるという仮説が立てられる。同じ理由のために、これらのアミン基は、より高度の可動性を有し、意図される用途におけるアニオン性成分との相互作用のためにより容易にアクセスできる。1原子より長いスペーサーは、テザーアミン単量体がハードセグメントの一部になる場合に特に好ましい。強い水素結合及びファンデルワールス相互作用は、第三級アミンを捕捉することができ、したがって、より長いスペーサーは、第三級アミンがハードセグメントドメインから離れて移動し、より可動性になり、相互作用にアクセスできるようになることを可能にする。テザーアミンの重要なサブクラスは、1分子に複数の第三級アミン基を有する単量体である。ジアミンは、より高い局所電荷密度を有し得るので、モノアミンより有効な分散単量体である。
【0026】
カチオン電荷を付与する2つの様式、すなわち、酸による中和と有機ハロゲン化物、硫酸エステル及びオキシラン(エポキシド)による四級化とがある。中和と異なり、四級化は、永久的である。酸による塩の形成は、とりわけ酸が揮発性(例えば、酢酸又は塩酸)である場合に可逆性である。アミン塩は、乾燥中に非中和形に戻り、ポリマーは、耐水性になり、優れた性能を備える。
【0027】
ポリウレタン
本発明のポリウレタンは、少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのNCO反応性化合物とから形成される。
【0028】
次の反応:−NCO+H−X→−NH−C(=O)−Xによりイソシアネート基と反応する活性水素の源となる任意の化合物は、本発明におけるNCO反応性化合物として用いることができる。例は、ポリオール、ポリチオール及びポリアミンを含むが、これらに限定されない。
【0029】
イソシアネート
適切なポリイソシアネートは、1分子当たり約2つ以上のイソシアネート基の平均、好ましくは約2つから約4つのイソシアネート基の平均を有し、単独で又は2つ以上の混合物として用いられる、脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び複素環式ポリイソシアネート並びにそれらのオリゴマー化の生成物を含む。ジイソシアネートがより好ましいが、単官能イソシアネートさえも例えば、分子量制御剤として用いることができる。
【0030】
適切な脂肪族ポリイソシアネートの具体的な例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートなどの5〜20個の炭素原子を有するアルファ、オメガアルキレンジイソシアネートなどがある。5個より少ない炭素原子を有するポリイソシアネートは、用いることができるが、それらの高い揮発性及び毒性のため、さほど好ましくない。好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−ジイソシアネート及び2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネートなどである。
【0031】
適切な環式脂肪族ポリイソシアネートの具体的な例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサントリイソシアネート、それらの異性体などがある。好ましい環式脂肪族ポリイソシアネートは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートなどである。
【0032】
適切な芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体的な例としては、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネートなどがある。好ましい芳香脂肪族ポリイソシアネートは、テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
【0033】
適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、ジフェニルメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジメチルビフェニレンジイソシアネート、ジクロロビフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、それらの異性体などがある。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートなどである。
【0034】
適切な複素環式イソシアネートの例としては、5,5’−メチレンビスフルフリルイソシアネート及び5,5’−イソプロピリデンビスフルフリルイソシアネートなどがある。
【0035】
上述のイソシアネートの二量体、三量体及びオリゴマーも用いることができる。例は、ポリマーMDIなどである。
【0036】
イソシアネートは、単独又は2つ以上の組合せで用いることができる。
【0037】
NCO:OH比
通常、本発明において生成するプレポリマーは、イソシアネートを末端とする。この目的のために、プレポリマー中のイソシアネート等価体と活性水素との比は、典型的に約1.3/1〜約2.5/1、好ましくは約1.5/1〜約2.1/1、より好ましくは約1.7/1〜約2/1の範囲に及ぶ。
【0038】
OHを末端とするプレポリマーも、所望の場合、作製することができる。この場合、NCOに対して過剰のOH当量が使用される。
【0039】
テザー単量体
カチオン性ポリウレタンは、骨格に組み込まれた及び/又は結合したカチオン中心を含有する。そのようなカチオン中心は、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム基を含む。これらの基は、イオンの形でポリマーに組み込むことができ、或いは、場合によって、それらは、対応する窒素、リン又は硫黄部分の後中和又は後四級化により発生させることができる。上述の基のすべての組合せ並びに非イオン性安定化を伴うそれらの組合せを用いることができる。アニオン基もポリマーに組み込んで、両性イオン組成物を生成することができる。
【0040】
1つの実施形態において、カチオン中心は、化合物をポリウレタンに組み込む場合に、テザー第三級窒素原子がポリウレタン骨格の最も近い原子から少なくとも2つの原子(より好ましくは少なくとも3つの原子)により分離されるように、ポリウレタンに、テザー第三級アミノ基を有する1つ又は複数の前記化合物を反応させる(第三級アミン基上のイソシアネート反応性基との通常のイソシアネート反応による)ことにより得られる。
【0041】
1つの実施形態において、テザー第三級アミノ基を有する化合物は、本発明のポリウレタンを構築するのに関与し得る平均で2つの反応性基を含有することが好ましい。
【0042】
好ましいテザーアミン単量体の例は、以下の1,1’−{[3−(ジメチルアミノ)プロピル]イミノ}−ビス−2−エタノール、1,1’−{[3−(ジメチルアミノ)プロピル]イミノ}−ビス−2−プロパノール(Hunstman製のJeffcat(登録商標)DPA)及びN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−イソニコチンアミド(BIN)などである。
【0043】
【化4】
テザーアミンを有する単量体又は第四級塩は、NCO反応性基を含有する、第三級アミン又は第四級アンモニウム塩をジイソシアネートと反応させ、その後、ジアルカノールアミンと反応させることにより作製することができる。例えば、TDIを2−ジメチルアミノエタノールと反応させ、その後、ジエタノールアミンと反応させることにより、以下の単量体を得ることができる。
【0044】
【化5】
この経路に適するジアルキルアミノ誘導体の例としては、ジアルキルアミノエタノール、ジアルキルアミノプロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジアルキルプロピレンジアミン、N,N−ジアルキルヘキサメチレンジアミン及び以下のZF−10、Z−110、ZR−50などのJeffcat(登録商標)商標名のもとでHuntsmanから入手できるアミンなどがある。
【0045】
【化6】
この経路は、第1及び第2段階の選択性の増大を可能にする異なる反応性の2つのイソシアネート基を有するTDI及びIPDIなどの非対称性ジイソシアネートを用いることから恩恵を受け得る。
【0046】
1つの実施形態において、カチオン中心(一部又は全体)は、第三級窒素基(場合によって四級化された又は酸により中和された)を有するポリウレタンの末端基に由来する。仮説により拘束されることを望むものではないが、末端第三級窒素基は、テザー第三級窒素基と同程度のコロイド安定化及びコロイド安定化の選択の余地をもたらさないという仮説が立てられる。しかし、いくらかの望ましい付着特性(それ自体への耐ブロッキング性であるが、中性又はアニオン荷電表面への付着性など)がテザーでなく末端第三級アミノ基を有するウレタンポリマーにより示されたことが注目された。好ましい及び請求される実施形態において、ウレタンポリマーは、少なくとも0.1、0.2、0.3又は0.4から10、8、5、4、2又は1ミリ当量/グラムまでの末端第三級アミノ基のポリウレタンで形成され、末端第三級アミノ基の少なくとも25、35、50、75又は80%が鎖端当たり少なくとも2つの第三級アミノ基を含む。これらは、第三級アミノ基を備えた化合物の1ミリ当量又はグラム当たり、より多くのカチオン電荷を提供するので、特に有効である。
【0047】
上に示したモノアルコールは、第三級窒素基がポリマー鎖端(末端)になる場合のポリウレタン合成に直接用いることができる。
【0048】
ジアルカノールアミンの代わりに、非対称性ジアルキルジアミノアルキレンを用いて、テザーアミンウレタン−尿素単量体を生成することができる。例は、ジメチルアミノプロピルアミン及びジメチルアミノヘキシルアミンなどである。
【0049】
テザーアミンは、イソシアネート単量体の一部としてポリウレタンに組み込むことができる。後者は、上述のジアルキルアミノモノアルコール及びモノアミンをジ−、トリ−及びポリイソシアネートと反応させることにより得ることができる。例えば、HDIトリマーを2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール(DMAMP)と反応させることにより、以下のジイソシアネートを得ることができる。
【0050】
【化7】
テザーアミンを有する単量体又は第四級塩は、アクリル単量体へのジエタノールアミンなどの適切なアミンのマイケル付加によっても作製することができる。第三級アミノ基を有する単量体の例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA;Evonik製のMhoromer(登録商標)BM601)、3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−プロピルメタクリレート(DMADMPMA)及びN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドである。それらは、所望のポイントで、中和及び/又は四級化によりカチオン性単量体に転換することができる。
【0051】
マイケル付加に適するカチオン性単量体の例は、
・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート−塩化メチル四級塩(CibaのAGEFLEX(登録商標)FM1Q80MC又はEvonikのMHOROMER(登録商標)BM606)、
・N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート−塩化メチル四級塩(AGEFLEX(登録商標)FA1Q80MC)、
・メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸(AGEFLEX(登録商標)FA1Q80DMS)、
・N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド−塩化メチル四級塩
である。入手可能な場合、ホスフィン類似体も用いることができる。
【0052】
マイケル付加の他の変形形態は、ヒドロキシアルキルアクリレートがN,N−ジアルキルアルキレンジアミンと反応するとき、テザーアミン単量体を生成することができる。したがって、2−ヒドロキシエチルアクリレートとN,N−ジメチルプロピレンジアミンとの反応により、以下の単量体が得られる。
【0053】
【化8】
2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりにグリセロールモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート又はペンタエリスリトールジアクリレートを用いることにより、テザーアミンジオールが得られる。
【0054】
他の実施形態において、テザー第三級アミノ基を有するアミノアルコール単量体は、以下のようにオキシラン(エポキシド)を前述の非対称性ジアルキルジアミノアルキレンと反応させることにより合成することができる。
【0055】
【化9】
上述のテザー単量体は、ポリウレタン合成に鎖延長剤として又はDow製のVORANOL(商標)、VORACTIV(商標)と同様にポリエステル若しくはポリエーテルポリオールの構成成分として用いることができる。後者は、テザー単量体と組み合わせて又は単独で用いることができる。
【0056】
本開示で述べたテザー単量体は、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族置換基を含有し得る任意の他の第三級アミノ基(テザー又は非テザー)と組み合わせて用いることもできる。
【0057】
カチオン性は、例えば、エポキシ第四級アンモニウム化合物とDMPA単量体単位のカルボキシル基との反応などの後重合反応によっても付与又は改善することができる。
【0058】
テザー第三級アミノ基の数は、ウレタンポリマー1グラム当たり0.1〜約15又は20ミリ当量であり得る。1つの実施形態において、下限は、0.2、0.3、0.4、0.5又は0.6ミリ当量/グラムであり、上限は、ウレタンポリマー1グラム当たり約10、8、5、4、3、2、1ミリ当量又は1ミリ当量未満である。テザー第三級アミノ基の数は、基が四級化又は酸により中和されるときに低くなる(これにより、水中のウレタン分散体をコロイド状で安定化するのにより有効になる)。テザー第三級アミノ基の数は、非イオン性及び/又は両性イオン基がウレタンポリマーに付加されるときにも低くなり、水中のウレタン分散体のコロイド安定化のためのカチオン安定化効果を補完する。上記の範囲のテザー第三級アミノ基の量の計算を容易にする目的のために、ウレタン骨格からのテザー又は末端位置の1つの基に複数のテザー第三級アミノ基が存在する場合、テザー第三級アミノ基のすべてを一緒にして単一のテザー第三級アミノ基として数える。テザー第三級アミノ基は、四級化されているか、又は酸構成成分により中和されているかにかかわりなく、同じものと数える。非イオン性コロイド安定化部分がない一例において、我々は、ウレタンポリマー1グラム当たりわずか0.87ミリ当量のテザー第三級アミノ基を用いて非常に有効なコロイド安定化を見いだした。
【0059】
第四級塩
第三級アミンは、任意の公知の四級化剤により四級化することができる。好ましい四級化剤は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、炭酸ジアルキル、硫酸ジアルキル及びエポキシドである。特に好ましい四級化剤は、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、臭化メチル、臭化エチル、臭化ベンジル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド及びエピクロロヒドリンなどである。
【0060】
第三級アミン基がある程度四級化されていることが好ましい。1つの実施形態において、テザー及び/又は末端第三級アミン基の四級化の程度は、>10モル%であり、他の実施形態において、>20、≧25又は>30であり、より好ましい実施形態において、四級化の程度は、>45又は>60モル%である。好ましい実施形態において、第三級アミノ基の少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90又は少なくとも95モル%が四級化されている。
【0061】

第三級アミンは、事実上任意の酸により中和してカチオン塩を作製することができる。酸の例としては、酢酸、ギ酸、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、ホウ酸、炭酸、過塩素酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸2−カルボキシエチル、乳酸、アスコルビン酸、グリシン、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、セリン、タウリン、バリン、アルファ−アミノ酪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸、メルカプト酢酸、サリチル酸、ピバル酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸、プロピオン酸、グリコール酸、1−スルホナフタレン、酒石酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−スルホサリチル酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンカルボン酸、o−、m−及びp−トルイル酸、o−、m−及びp−アミノ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、メチルベンゼンスルホン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、オレイン酸、o−、m−及びp−クロロ安息香酸、o−、m−及びp−ブロモ安息香酸、アントラニル酸、o−、m−及びp−ニトロ安息香酸、アジピン酸、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、フルオロ酢酸、カプリン酸、ミリスチン酸、メトキシ酢酸、ドデカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ポリアクリル酸、アクリル、メタクリル、イタコン、マレイン及びフマル酸のコポリマーなどがある。
【0062】
ポリウレタンの水への分散の前又は水への分散中に第三級アミン基をある程度中和することが好ましい。1つの実施形態において、テザー及び/又は末端第三級アミン基の中和の程度は、>10%であり、他の実施形態において、>20、≧25又は>30モル%であり、より好ましい実施形態において、中和の程度は、>45又は>60モル%である。好ましい実施形態において、第三級アミノ基の少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90又は少なくとも95モル%が中和されている。複数の第三級アミノ基は、緊密に隣接した第三級アミノ基の中和又は四級化を時として阻害するので、四級化又は中和の百分率を指定する場合、(緊密な物理的接近による四級化又は中和の阻害に起因する四級化又は中和の百分率を減少させず)テザー又は末端基の1個又は複数個の窒素原子において四級化又は中和された基の百分率に言及する。他の実施形態において、アミンに対して過剰の酸を用いることができる。
【0063】
第三級アミノ基(テザー又は末端)の中和は、中和に用いた酸をポリウレタン分散体のフィルム又は乾燥形から揮発させる又は他の方法で除去することができる場合、いくつかの便益又は四級化をもたらす。中和されたテザー及び/又は末端第三級アミンからの揮発性又は除去可能酸構成成分の除去の後に、ポリウレタンの乾燥形は、カチオン性が低くなり、親水性が低くなり、水吸着又はカチオン性が低い乾燥ポリウレタンを作製することを容易にする。
【0064】
四級化と中和の組合せを用いることができる。
【0065】
1つの実施形態において、永久的な中和を付与する不揮発性酸は、単独で又は一過性酸(fugitive acid)と組み合わせて用いることができる。例えば、いくつかの酸は、疎水性を付与し得る。例としては、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、ジメレート(dimerate)、アビエチン酸、ソルビン酸、過フッ化オクタン酸及び他の同様な酸などがある。Dextrol(商標)遊離酸型リン酸塩界面活性剤は、そのような酸の他の群に相当する。
【0066】
架橋に適する酸は、クエン酸、酒石酸、ジメレート、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(BTCA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、5−スルホイソフタル酸(5−SIPA)、アスパラギン酸、グルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、マレイン酸とフマル酸のコポリマー、Carbosperse(商標)及びSolsperse(商標)分散剤(Lubrizol)、アジピン酸又は他の二酸ジヒドラジドと組み合わされたレブリン酸などの複数の酸群を有するものを含む。他の適切な酸は、下記のポリエステルポリオールを作製するのに用いられる酸を含む。
【0067】
他の酸を用いることにより、以下を含むが、それらに限定されない他の有用な特性を付与することが可能である。
・テトラブロモフタル酸−難燃性、
・リン酸、イソプロペニルホスホン酸(IPPA)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、アミノトリ−(メチレンホスホン酸)、ビス−(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ−(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ−(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ヒドロキシホスホノ酢酸−難燃性並びに熱及び光誘発性酸化に対する安定性、
・3−ヨードプロピオン酸−生物致死性、
・アクリル、メタクリル及びイタコン酸、ベータ−カルボキシエチルアクリレート(アクリル酸二量体)、AMPS(登録商標)(Lubrizol)、ソルビン、イソプロペニルリン酸−UV/EB硬化、
・RAFT酸(例えば、S’−1−ドデシル−(S’)−(α,α’−ジメチル−α’’−酢酸)トリチオカーボネート)及び二酸−アクリル−ウレタン(AU)ハイブリッド(RAFT−可逆的付加開裂連鎖移動重合剤)、
・ステアリン酸又はヒドロキシステアリン酸などの8〜50個の炭素を有する脂肪族モノ及びポリカルボン酸を用いることによるコーティングへの疎水特性。より望ましくはモノ及びポリカルボン酸は、12〜36個の炭素原子を有する。
【0068】
活性水素含有化合物
「活性水素含有」という用語は、活性水素の源であり、以下の反応によりイソシアネート基と反応することができる化合物を指す。
【0069】
−NCO+H−X→−NH−C(=O)−X
そのような化合物は、典型的に分子量が水の18g/モル及びアンモニアの17g/モルから約10,000g/モルまでと広い範囲に及ぶ。それらは、分子量によって2つのサブクラス、すなわち、約500〜10,000g/モルの数平均分子量を有するポリオールと18〜500g/モルの分子量を有する鎖延長剤とに通例分類される。スケールの極端は、物理的現実を表し、高分子量ポリオールは、ポリウレタンのソフトセグメントに寄与し、短い鎖延長剤は、ハードセグメントに寄与するが、デバイダーの正確な位置は、多少不定であり、状況によって移動させることができる。両クラスを下文でより詳細に概説する。
【0070】
ポリオール
「ポリオール」という用語は、本発明の文脈において、イソシアネートと反応することができる活性水素を有する長鎖ポリオールと典型的に称され、1分子当たり平均で約2つ以上のヒドロキシル又は他のNCO反応性基を有する材料を含む任意の高分子量生成物(M>500g/モル)を意味する。
【0071】
そのような長鎖ポリオールは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリカプロラクトンポリオールなどである。他の例としては、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリアセタール、ポリチオエーテル、ポリシロキサン、エトキシル化ポリシロキサン、ハロゲン化ポリエステル及びポリエーテル、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、アルキド修飾及びポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシル含有アクリル及びメタクリルポリマー並びにコポリマー、ヒドロキシル含有エポキシドなど、及びそれらの混合物がある。異なる種類のポリオールの組合せを用いることができる。
【0072】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0073】
ポリエーテルポリオールは、ポリエステルポリオールの調製について述べた水又はジオールなどの反応性水素原子を含有する出発化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン及びそれらの混合物などのアルキレンオキシドとの反応により公知の様態で得られる。好ましいポリエーテルは、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)及びポリ(プロピレングリコール)(PPG)などである。例としては、Invista製のTerathane(登録商標)PTHFポリオール及びArco Chemical製のより低いモノオール含量を有するAcclaim(商標)PPGジオールなどがある。
【0074】
好ましくは、ポリエーテルポリオールは、骨格(主鎖)に最終ポリウレタンの乾燥重量に対して約25重量%未満、より好ましくは約15重量%未満、最も好ましくは約5重量%未満のポリ(エチレンオキシド)単位を備えるが、これは、そのような主鎖ポリ(エチレンオキシド)単位は、水系ポリウレタン分散体におけるポリウレタン粒子の膨潤を引き起こす傾向があり、またポリウレタン分散体製の物品のより低い使用時(湿潤又は高湿度条件下)引張強さの一因となるためである。
【0075】
ポリエステルポリオールは、典型的に有機ポリカルボン酸又はそれらの無水物と化学量論的過剰のジオールとの反応により調製されるエステル化生成物である。反応に用いる適切なポリオールの例としては、アジピン酸ポリグリコール、ポリエチレンテレフタル酸ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、オルトフタルポリオール、スルホン化ポリオールなど、及びそれらの混合物がある。
【0076】
ポリエステルポリオールを作製するのに用いられるジオールは、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族であり得、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、1,2−、1,3−、1,4−及び2,3−ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、並びにビスフェノール−A、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール(1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパン(prorane)−1,3−ジオール、CARDURA(登録商標)E10P(Hexion)から製造されたVersatic(商標)アルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、カプロラクトンジオール、ジメレートジオール、ヒドロキシル化ビスフェノール、ポリエーテルグリコール、ハロゲン化ジオールなどの他のグリコール、並びにそれらの混合物などである。好ましいジオールは、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールなどである。
【0077】
ポリエステルポリオールを作製するのに用いられる適切なカルボン酸は、ジカルボン酸及びトリカルボン酸並びに無水物、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クロレンド酸、1,2,4−ブタン−トリカルボン酸、フタル酸、フタル酸の異性体、無水フタル酸、フマル酸、無水テトラブロモフタル酸及びテトラブロモフタル酸、オレイン酸などの二量体脂肪酸など、及びそれらの混合物である。ポリエステルポリオールを作製するのに用いられる好ましいポリカルボン酸は、脂肪族又は芳香族二塩基酸などである。
【0078】
好ましいポリエステルポリオールは、ジオールである。好ましいポリエステルジオールは、ヘキサンジオールネオペンチルグリコールアジピン酸ポリエステルジオール、例えば、Piothane(商標)67−3000HNA(Panolam Industries)及びPiothane67−1000HNA並びにプロピレングリコール無水マレイン酸アジピン酸ポリエステルジオール、例えば、Piothane50−1000OPMA及びヘキサンジオールネオペンチルグリコールフマル酸ポリエステルジオール、例えば、Piothane67−500HNFなどである。他の好ましいポリエステルジオールは、Rucoflex(商標)S1015−35、S1040−35及びS−1040−110(RUCO Polymer Corp.)などである。
【0079】
ポリカーボネートは、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど、及びそれらの混合物などのジオールとジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート又はホスゲンとの反応により得られるものなどである。
【0080】
ポリシロキサンポリオールは、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン)、ポリジフェニルシロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサンなど、及びそれらの組合せなどのアルキル又はアリール基を含有し得る−RSiO−反復単位の存在によって特徴づけられる。例としては、Momentive Performance Materials製のエトキシル化ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)Y−17256及びGelest製の側鎖PDMSジオールMCR−C61などがある。
【0081】
ポリアセタールは、ホルムアルデヒドなどの(A)アルデヒドとジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エトキシル化4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、1,6−ヘキサンジオールなどの(B)グリコールとの反応により調製することができる化合物などである。ポリアセタールは、環式アセタールの重合によっても調製することができる。
【0082】
ポリエステルアミド及びポリアミド。長鎖ポリオールの代わりに、長鎖アミンを用いてイソシアネート末端プレポリマーを調製することもできる。適切な長鎖アミンは、多塩基飽和及び不飽和カルボン酸又はそれらの無水物と多価飽和又は不飽和アミノアルコール、ジアミン、ポリアミン及びそれらの混合物との反応により得られる主として線状縮合物などのポリエステルアミド及びポリアミドなどである。
【0083】
ジアミン及びポリアミンは、前述のポリエステルアミド及びポリアミドを調製するのに有用な好ましい化合物の1つである。適切なジアミン及びポリアミンは、1,2−ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,12−ジアミノドデカン、2−アミノエタノール、2−[(2−アミノエチル)アミノ]−エタノール、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又はIPDA)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)−メタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−プロピレンジアミン、ヒドラジン、尿素、アミノ酸ヒドラジド、セミカルバジドカルボン酸のヒドラジド、ビス−ヒドラジド及びビス−セミカルバジド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、N,N,N−トリス−(2−アミノエチル)アミン、N−(2−ピペラジノエチル)−エチレンジアミン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)−ピペラジン、N,N,N’トリス−(2−アミノエチル)エチレンジアミン、N−[N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル]−N’−(2−アミノエチル)−ピペラジン、N−(2−アミノエチル)−N’−(2−ピペラジノエチル)−エチレンジアミン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)−N−(2−ピペラジノエチル)アミン、N,N−ビス−(2−ピペラジノエチル)−アミン、ポリエチレンイミン、イミノビスプロピルアミン、グアニジン、メラミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、3,3’−ジアミノベンジジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、ポリオキシプロピレンアミン、テトラプロピレンペンタミン、トリプロピレンテトラミン、N,N−ビス−(6−アミノヘキシル)アミン、N,N’−ビス−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、及び2,4−ビス−(4’−アミノベンジル)−アニリンなど、及びそれらの混合物である。好ましいジアミン及びポリアミンは、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン又はIPDA)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン並びにそれらの混合物などである。他の適切なジアミン及びポリアミンは、分子量のみが異なり、Huntsman Chemical Companyから入手できるアミン末端ポリプロピレングリコールであるJeffamine(商標)D−2000及びD−4000などである。
【0084】
鎖延長剤
脂肪族、環式脂肪族又は芳香族ジオール又はアミンなどの18〜500g/モルの分子量を有する鎖延長剤は、プレポリマーの形成中及びプロセスの分散ステップ中に用いることができる。プレポリマーは、高温で、水の全面的な非存在下で形成されるため、温度及び混合のより十分な制御を可能にするためにプレポリマーの鎖延長にはより反応性が低いアルコール官能性が好ましい。
【0085】
他方で、プロセスの分散段階中に、鎖延長剤は、残りのNCOとの反応について水と競合している。この場合、より反応性が高いアミン官能性が好ましい。
【0086】
プレポリマーの段階については、好ましい鎖延長剤は、上述のポリエステルポリオールを作製するのに用いるジオール単量体である。上述の低分子量(500g/モル未満)のポリオールのいずれかをプレポリマー鎖延長剤として用いることもできる。
【0087】
本発明の最も好ましい実施形態において、プレポリマー鎖延長剤を用いない。
【0088】
分散体鎖延長剤として、水、平均約2つ以上の第一級及び/又は第二級アミン基又はそれらの組合せを有する無機又は有機ポリアミンの少なくとも1つが本発明における使用に適する。分散体鎖延長剤としての使用に適する有機アミンは、ポリエステルアミド及びポリアミドを調製するための単量体としての上述の同じジアミン及びポリアミドである。
【0089】
好ましいアミン分散体鎖延長剤は、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、2−メチルペンタンジアミンなど、及びそれらの混合物である。また本発明における実施に適するものは、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、3,3−ジクロロベンジデン、4,4’−メチレン−ビス−(2−クロロアニリン)、3,3−ジクロロ−4,4−ジアミノジフェニルメタン、スルホン化第一級及び/又は第二級アミンなど、及びそれらの混合物である。
【0090】
適切な無機アミンは、ヒドラジン、置換ヒドラジン及びヒドラジン反応生成物など、及びそれらの混合物である。分散ステップ中の中和剤として用いる場合、アンモニア(NH)も末端尿素の形成を伴う分散段階中の残りのNCOの消費に寄与し得る。
【0091】
ポリアルコールは、さほど好ましくないが、用いることができる。例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなど、及びそれらの混合物などの2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を有するものなどがある。
【0092】
好ましい分散体鎖延長剤は、水及びエチレンジアミンである。
【0093】
鎖延長剤の量は、典型的に利用可能なイソシアネートに対して約0.3〜約1.1当量の範囲にある。
【0094】
水分散性向上化合物
ポリウレタンは、一般的に疎水性であり、水分散性でない。したがって、水中のポリマー/プレポリマーの分散を促進するために、少なくとも1つの親水性、イオン性又は潜在的にイオン性基を有する少なくとも1つの水分散性向上化合物(すなわち、単量体)を本発明のポリウレタンポリマー及びプレポリマーに含める。本発明の1つの実施形態において、テザーアミン単量体又はその塩は、この水分散性向上化合物であり、その含量は、さらなる手段を用いずに安定な分散体を調製するのに十分である。
【0095】
本発明の他の実施形態において、とりわけテザーアミン単量体又はその塩の含量がさらなる手段を用いずに安定な分散体を調製するのに不十分である場合、さらなる水分散性向上化合物を用いることができる。これらの化合物は、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性又はそれらの組合せであり得る。例えば、カルボン酸基などのアニオン基は、不活性の形でプレポリマーに組み込み、テザーアミン化合物又はさらなる第三級アミンなどの塩形成化合物により活性化することができる。通常、カルボン酸基は、一般式(HO)Q(COOH)を有するヒドロキシカルボン酸により導入する(式中、Qは、1〜12個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐炭化水素ラジカルであり、x及びyは、1〜3である)。そのようなヒドロキシカルボン酸の例としては、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸など、及びそれらの混合物がある。ジヒドロキシカルボン酸がより好ましく、ジメチロールプロパン(dimethylolproanoic)酸(DMPA)及びジメチロールブタン酸(DMBA)が最も好ましい。カルボン酸は、例えば、エポキシ第四級アンモニウム化合物とDMPAのカルボン酸基との反応などの後重合反応によりカチオン中心に転換することができる。
【0096】
特に興味深い水分散性向上化合物は、側鎖親水性単量体である。いくつかの例は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,897,281号に示されているようなアルキレンオキシド基が2〜10個の炭素原子を有するアルキレンオキシドポリマー及びコポリマーなどである。
【0097】
そのような側鎖親水性単量体の量は、高いコロイド安定性が望まれる場合には最終ポリウレタンの重量に対して10、又は6、又は3、又は2、さらには1%以下と低くてよく、水又は極性溶媒吸収特徴が要求される場合には20、又は30、又は40、又は50%と高くてよい。
【0098】
好ましい単量体は、Evonik製のTegomer(登録商標)D−3403及びPerstorp製のYmerN120である。
【0099】
さらなる適切な水分散性向上化合物は、チオグリコール酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、スルホイソフタル酸、ポリエチレングリコールなど、及びそれらの混合物である。
【0100】
さらなる水分散性向上化合物の最適な含量は、存在するテザーアミン単量体の量、その中和の程度及び他の標的特性に依存する。
【0101】
水分散性向上化合物の使用は好ましいが、本発明の分散体は、高せん断分散法を用い、カチオン性及び非イオン性界面活性剤により安定化することによってそれらを用いることなく調製することができる。
【0102】
分岐
最終的なポリマー生成物並びにプレポリマーの分岐は、引張強さを援助し、化学的抵抗性及びクリープへの抵抗性、すなわち、伸張後のその元の長さのもの又はその近くへの回復を改善するために場合によって遂行することができる。この点については、米国特許第6,897,281号を参照のこと。好ましいプレポリマー分岐単量体は、トリメチロールプロパン及びグリセロールである。好ましい分散体分岐単量体は、ジエチレントリアミン(DETA)及びトリエチレンテトラミン(TETA)である。
【0103】
架橋剤
所望の場合、少なくとも1つの架橋性官能基を有する化合物も本発明のポリウレタンに組み込むことができる。そのような化合物の例としては、カルボキシル、カルボニル、アミン、ヒドロキシル、エポキシ、アセトアセトキシ、オレフィン及びヒドラジド基、ブロックイソシアネートなど、及びそのような基の混合物並びにそれらが由来する元の基に戻すことができる保護された形の同じ基を有するものなどがある。架橋性を備えた他の適切な化合物は、チオグリコール酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、メラミン及びその誘導体、多価金属化合物など、及びそれらの混合物である。
【0104】
プレポリマーにおける架橋性官能基を有する任意選択の化合物の量は、乾燥重量基準で最終ポリウレタン1グラム当たり典型的に約1ミリ当量まで、好ましくは約0.05〜約0.5ミリ当量、より好ましくは約0.1〜約0.3ミリ当量である。
【0105】
触媒
ウレタンプレポリマーは、触媒を使用せずに形成することができるが、触媒は、合成時間又は温度を低減するためにいくつかの事例では用いることができる。触媒の例は、有機スズ化合物、第三級アミン及び遷移金属化合物などである。適切な触媒の具体的な例は、オクタン酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、並びにトリエチルアミン及びビス(ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第三級アミン化合物、β,β−ジモルホリノジエチルエーテルなどのモルホリン化合物、カルボン酸ビスマス、カルボン酸亜鉛ビスマス、塩化鉄(III)、オクタン酸カリウム、酢酸カリウム並びにKing Industries製のジルコニウム触媒K−KAT(登録商標)XC−9213及びK−KAT(登録商標)6212などである。
【0106】
好ましい触媒は、Air Products製のDABCO(登録商標)(ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、2−エチルヘキサン酸とオクタン酸第一スズとの混合物、例えば、Elf Atochem North America製のFASCAT(登録商標)2003、及びKing Industries製のK−KAT XC−9213である。
【0107】
プレポリマーを形成するのに用いられる触媒の量は、典型的にプレポリマー反応物の総重量の百万分の約5〜約200である。
【0108】
本発明において用いる第三級アミン化合物が触媒として作用することを考慮すると、触媒の使用は一般的に必要ではない。
【0109】
イソシアネートブロッキング剤
いくつかの種類の化合物をブロッキング(保護又はマスキングとしても公知である)剤として用いることができる。それらの機能は、イソシアネート基を望まれない反応から一時的に保護することである。ブロッキング化合物の主な要件は、イソシアネートとのその反応が可逆性であることである。反応が逆転させられたとき、イソシアネート基が再生され、さらなる反応に利用可能となる。逆反応は、物理的又は化学的手段、例えば、高温、放射線、真空、触媒、活性水素を有する化合物又はそれらの組合せにより誘発させることができる。
【0110】
ブロッキング剤の例としては、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、イミダゾール、ピラゾール、酸、メルカプタン、イミド、第二級アミン、亜硫酸エステル、アセトアセテート及びマロン酸の誘導体などがある。
【0111】
オキシムが一般的に好ましいが、他のブロッキング剤により部分的に又は完全に置き換えることができる。オキシムは、一般式CRR’=NOHにより表すことができる(式中、R及びR’は、独立にH又はC2n+1であり得る)。R及びR’は、環式脂肪族、芳香族基及び複素環基を含むヘテロ原子を有する基も含有し得る。オキシムは、R及びR’の1つ又は両方が水素である場合にアルドキシムであり得、又はR及びR’の両方がヒドロカルビル基である場合にケトキシムであり得る。アルドキシムの例は、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、プロピオンアルドキシム、ブチルアルドキシム、ベンズアルドキシムなどである。ケトキシムの例は、アセトキシム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシムなどである。
【0112】
他の好ましいブロッキング剤は、ラクタム、第二級及び第三級アルコール、ピラゾール並びにそれらの混合物などである。他の適切なブロッキング剤のいくつかの具体的な例は、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、トリアゾール、カプロラクタム、フェノール及びその誘導体、ピラゾール、ジメチルピラゾール、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、tert−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロパノール並びに炭酸グリセリンなどである。段階的反応が望まれる場合、2つ以上のブロッキング剤の組合せ、特に異なる温度で非ブロック化するブロッキング剤の混合物を用いることができる。
【0113】
非ブロック化は、鎖延長中或いはポリマーの乾燥及び/又は硬化中に起こり得る。しばしば、乾燥又は硬化中にポリマーから蒸発するブロッキング剤を用いることが好ましい。これらの場合、アセトキシム、ブタノンオキシム、ブチルアルドキシムなどの低分子量オキシムが好ましい。
【0114】
溶媒
ウレタン作製反応の場面において有意な程度に非反応性である溶媒は、本発明において用いることができるが、揮発性有機構成成分(VOC)を導入するため、好ましくない。溶媒の使用は、プレポリマーの粘度を低減し、ヒートシンクとし、還流媒体として機能し、フィルム形成を促進するために望ましいことがあり得る。溶媒の例としては、置換ピロリジノン、アミド、エステル、エーテル、ケトエステル、ケトン、グリコールエーテルエステル、水素化フラン、第三級アルコール、芳香族及び脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素など、及びそれらの混合物がある。
【0115】
具体的な例は、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、イソブチルヘプチルケトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルカプロラクタム、N−メチルバレロラクタム、エチレングリコールモノメチルエーテルホルマール及びジプロピレングリコールジメチルエーテルなどである。
【0116】
溶媒の量は、生成させるポリマーの仕様によって広範囲に変化し得る。プレポリマー100重量部当たり約0.1〜30重量部の溶媒を用いることができる。
【0117】
水より高い沸点を有する溶媒は、一般的に水性分散体とともに残存し、乾燥及びフィルム形成中にポリマー粒子の合体を容易にする。
【0118】
いくつかの場合には、分散体から溶媒の少なくとも一部を除去することが望ましい。それは、水より低い沸点を有する溶媒を用いて行うことができる。これらの溶媒は、例えば、蒸留、真空蒸留、等方蒸留及び薄膜蒸発により分散体から除去することができる。
【0119】
可塑剤
可塑剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,576,702号に教示されているようにポリウレタンプレポリマーの粘度をそれを加工するために十分に低くするために、又はプレポリマーが分散ステップ中に凍結することを防ぐために場合によって用いることができる。可塑剤は、プレポリマーの調製中又はプレポリマーを水に分散させる前の任意の時点に例えば、プレポリマーの調製の前に別個に又は1若しくは複数の反応構成成分との混合物として加えることができる。それらはまた、分散体が形成された後に加えることができる。
【0120】
可塑剤の希釈剤としての使用は、多くの重要な機能をもたらす。第一に、他の希釈剤(NMP、アセトンなど)の使用並びにそのような他の希釈剤及び溶媒の付随する火事、汚染及び毒性危害が回避又は低減される。可塑剤は、そのような他の有機希釈剤及び溶媒の実質的な代わりに、最も好ましくはそのような他の有機希釈剤及び溶媒の完全な代わりに用いられる。そのような他の有機希釈剤及び溶媒の最大量は、総プレポリマー重量の典型的に約20重量%未満、好ましくは約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約0重量%である。さらに、可塑剤が最終生成物中に残存し、厄介な生成物精製プロセスを必要としないので、最終生成物の固体含量が増加する。可塑剤の添加は、物品を形成するための後続の加工中のポリウレタンフィルムの形成を向上させる。ほとんどの可塑剤は、疎水性であり、とりわけポリエステルベースのポリウレタンの加水分解を遅らせる傾向があるので、ポリウレタンの耐湿性が向上する。
【0121】
可塑剤は、特定のポリウレタンとの適合性及び最終組成物の所望の特性などのパラメーターに従って本発明に使用するために選択することができる。例えば、ポリエステル可塑剤は、ポリエステルベースのポリウレタンとの適合性がより高い傾向がある。
【0122】
成分の官能基と反応する反応性可塑剤を用いることができる。例えば、アミン化、カルボキシル化及びヒドロキシル化化合物などの他の化合物と反応するエポキシ基が反応性可塑剤に存在し得る。エチレン性不飽和基が反応性可塑剤に存在して、エチレン性不飽和を有する又は酸化的硬化を起こす傾向がある化合物と反応し得る。可塑剤中の他の反応性基は、カルボニル及びアセトアセトキシなどである。
【0123】
可塑剤はまた、ポリウレタンに難燃性などの特定の特性を付与するために、又は最終用途における湿潤、乳化、コンディショニング及びUV吸収などの特定の特性を向上させるために選択することができる。
【0124】
用いられる可塑剤の量は、広く変化する可能性があり、プレポリマー重量に対して1〜200%までのいずれかの値であり得る。典型的に、少なくとも3%又はそれ以上、典型的に少なくとも5%が用いられる。好ましい量は、少なくとも7%であり、最も好ましい量は、少なくとも9%である。典型的な上限レベルは、100%であり、より典型的には60%である。好ましい量は、40%未満であり、最も好ましい量は、30%未満である。木材コーティング、プラスチックコーティング、テキスタイルコーティング、不織布、紙、手袋、パーソナルケアなどの用途用の可塑剤の最適の量は、プレポリマーの所望の粘度により決定づけられ、可塑剤の最適の量は、当業者に周知のように特定の用途によって決定づけられる。
【0125】
適切な可塑剤は、アジピン酸、アゼライン酸、安息香酸、クエン酸、二量体酸、フマル酸、イソ酪酸、イソフタル酸、ラウリン酸、リノール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メリシン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リン酸、フタル酸、リシノール酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸など、及びそれらの混合物のような酸及び酸無水物のエステル誘導体などである。また適切なものは、エポキシ化油、グリセロール誘導体、パラフィン誘導体、スルホン酸誘導体など、並びにそれらの混合物と前述の誘導体である。そのような可塑剤の具体的な例は、アジピン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ヘプチルノニル、アジピン酸ジイソデシル、SanticizerシリーズとしてSolutiaにより販売されるアジピン酸ポリエステル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジメチル、ジ安息香酸ジエチレングリコール及びジ安息香酸ジプロピレングリコール(Kalama Chemical製のK−Flex(商標)エステルなど)、ジ安息香酸ポリエチレングリコール、モノイソ酪酸安息香酸2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジイソ酪酸2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリコール酸メチル(又はエチル又はブチル)フタリルエチル、クエン酸トリエチル、フマル酸ジブチル、ジイソ酪酸2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ラウリン酸メチル、リノール酸メチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、トリメリット酸トリカプリル、トリメリット酸ヘプチルノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリイソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、パルミチン酸メチル、リン酸トリクレシル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ヘプチルノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル、o−フタル酸のn−ブチルベンジルエステルなどのフタル酸ブチルベンジル、フタル酸イソデシルベンジル、フタル酸アルキル(C/C)ベンジル、フタル酸ジメトキシエチル、フタル酸7−(2,6,6,8−テトラメチル−4−オキサ−3−オキソ−ノニル)ベンジル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リシノール酸ブチル、セバシン酸ジメチル、ステアリン酸メチル、コハク酸ジエチル、1,2−ベンゼンジカルボン酸のブチルフェニルメチルエステル、エポキシ化亜麻仁油、トリ酢酸グリセロール、約40%〜約70%のClを有するクロロパラフィン、o,p−トルエンスルホンアミド、N−エチルp−トルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルp−トルエンスルホンアミド、スルホンアミド−ホルムアルデヒド樹脂及びそれらの混合物などである。当業者に公知の他の適切な可塑剤は、ひまし油、芳香族系石油縮合物(aromatic petroleum condensate)、部分水素化テルフェニル、ジメチコンコポリオールエステル、ジメチコノールエステル、シリコーンカルボキシレートなどのシリコーン可塑剤、ゲルベエステル(guerbet esters)(単独又は他の可塑剤との混合物として)などである。
【0126】
適切なジベンゾエートエステルは、これまで述べたもの並びにスペクトルのUVCバンド又は領域におけるUV(紫外)線を吸収することが公知である好ましいp−アミノ安息香酸(PABA)エステルなどである。
【0127】
適切な反応性可塑剤の例は、トリメリット酸トリアリル(TATM)、Stepanol PD−200LV(Stepan Company製の(1)不飽和油と(2)o−フタル酸とジエチレングリコールとのポリエステルジオール反応生成物との混合物)、アルキド誘導体など、及びそれらの混合物などのエチレン性不飽和を有する組成物及び混合物などである。他の適切な反応性可塑剤は、Shell Chemical Company製のHeloxy(商標)Modifier505(ひまし油のポリグリシジルエーテル)及びHeloxy(商標)Modifier71(二量体酸ジグリシジルエーテル)などのある特定の単官能性及び多官能性グリシジルエーテルを含むエポキシ化可塑剤など、及びそれらの混合物である。
【0128】
適切な難燃性可塑剤の例は、Albright & Wilson Americas製のPliabrac(商標)TCP(リン酸トリクレシル)、Pliabrac TXP(リン酸トリキシレニル)、Antiblaze(商標)N(環状リン酸エステル)、Antiblaze TXP(タール酸、クレゾール、キシリル、リン酸フェノール)及びAntiblaze524(リン酸トリキシリル)、Great Lakes Chemicals製のFiremaster(商標)BZ54(ハロゲン化アリールエステル)、塩素化ビフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸イソデシルジフェニル(Ferro製のSantisizer(登録商標)148)、リン酸C12〜C16アルキルジフェニル(Ferro製のSantisizer(登録商標)2148)、リン酸トリフェニル、リン酸クレシルジフェニル、リン酸p−t−ブチルフェニルジフェニル、亜リン酸トリフェニルなどによって例示される環状ホスフェート、ホスファイト及びリン酸エステルなどのリンベースの可塑剤などである。リンベースの可塑剤の他の例は、トリス−(2−クロロエチル)−ホスフェート、トリス−(2−クロロイソプロピル)−ホスフェート、トリス−(1,3−ジクロロ−2−プロピル)−ホスフェート、クロロアルキル二リン酸エステル(Albright & Wilson Americas製のAntiblaze100)などの塩素化アルキルリン酸エステル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル及び亜リン酸トリイソオクチルなどのリン酸及び亜リン酸アルキル、エチルリン酸トリブトキシ(Chempoint製のKP−140)などの他の有機リン酸エステル及び有機亜リン酸エステル、塩素化ジホスフェート及び塩素化ポリホスホネートなどの他のホスフェート及びホスホネートなどである。混合物も用いることができる。
【0129】
適切な湿潤、乳化及びコンディショニング可塑剤の例としては、オレス−2リン酸、オレス−3リン酸、オレス−4リン酸、オレス−10リン酸、オレス−20リン酸、セテス−8リン酸、セテアレス−5リン酸、セテアレス−10リン酸、PPGセテス−10リン酸及びそれらの混合物などのアルキルオキシル化脂肪アルコールリン酸エステルなどがある。
【0130】
合体剤(coalescent)
合体剤の沸点は、溶媒と可塑剤の沸点の間であり、水の沸点より高い。これらの3つのカテゴリーにいくらかの重複があり、分割は、いくぶん人工的である;実際、溶媒、合体剤及び可塑剤は、沸点の連続体を形成する。合体剤は、水より遅く蒸発する傾向があり、ポリマーとともに長時間残存して、フィルムの形成を容易にする;しかし、最後には、それらは、水のように、最終的に同様に最終生成物から移動する。
【0131】
合体剤の例としては、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(EEH)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(DPnB)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EBA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DB)、エチレングリコールモノブチルエーテル(EB)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DM)などがある。
【0132】
種々雑多な添加物
ポリウレタンプレポリマー、それから製造されるポリウレタン生成物及び上述のような本発明の水性プレポリマー粒子水性分散体は、公知のポリウレタン技術に従って様々なさらなる成分及び特徴を用いて作製することができる。そのような添加物は、界面活性剤、安定剤、消泡剤、抗菌剤、抗酸化剤、レオロジー改質剤など、及びそれらの混合物である。それらは、当業者に周知のように本発明の分散体の最終の生成物への加工前及び/又は加工中に適宜場合により加えることができる。
【0133】
補助添加物
本発明の場面において好ましい添加物の具体的なサブクラスは、カチオン性ウレタンのカチオン性及び性能を向上させる補助添加物である。これらは、顔料、媒染剤、カチオン性及び非イオン性界面活性剤、定着剤、多価金属の塩及び水溶性ポリマーなどである。
【0134】
したがって、インクジェット印刷用途については、改善されたインク吸収性、染料定着性、染料発色能、耐ブロッキング性及び耐水性を有するインク受容層を提供するために、1つ又は複数の無機若しくは有機顔料及び/又は樹脂粒子を組み込むことができる。そのような顔料は、無機質又は多孔質顔料:カオリン、層間剥離カオリン、水酸化アルミニウム、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイドシリカ、ゼオライト、ベントナイト、セリサイト及びリトポンなどである。樹脂粒子及びプラスチック顔料の多孔質粒子は、ポリスチレン、ウレタン、尿素、アクリル、メラミン及びベンゾグアナミン樹脂並びにこれらの樹脂からできている中空及び多孔質粒子を含む。
【0135】
水溶性ポリマーの例としては、ポリ(ビニルアルコール)及び誘導体、部分加水分解ポリ(酢酸ビニル)、デンプン、酸化デンプン、部分発酵デンプン、エーテル化デンプン、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、ダイズタンパク質、高酸数アクリル(high−acid−number acrylic)、スチレンアクリル、スチレンマレイン酸及びジイソブチレンマレイン酸コポリマー、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリ(ビニルピリジン)並びにポリ(ビニルピロリドン)などがある。
【0136】
さらなる第四級アンモニウム化合物及び界面活性剤は、参照により本明細書に組み込まれるKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、1996年、20巻、739〜767頁にM. Deryにより記載されている。
【0137】
媒染剤の例は、ポリエチレンイミン、ポリアミン及びジシアンジアミドの縮合体などである。
【0138】
さらに、1つ又は複数の様々な他の添加物もインク受容コーティングに組み込むことができる。これらの添加物は、粘稠化、離型、浸透、湿潤、熱ゲル化、サイズ、消泡、泡止め及び発泡剤などである。他の添加物は、着色剤、蛍光漂白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消光剤、防腐剤、帯電防止剤、架橋剤、分散剤、滑剤、可塑剤、pH調整剤、流動均染剤(flow and leveling agent)、硬化促進剤及び防水剤などである。
【0139】
他のポリマーとのブレンド
本発明の分散体は、当業者に周知の方法により適合性ポリマー及びポリマー分散体と組み合わせることができる。そのようなポリマー、ポリマー溶液及び分散体は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、John Wiley & Sons、第3版、20巻、H. F. Markら編、207〜230頁(1982年)におけるA. S. Teot、「Resins、Water−Soluble」に記載されているものを含む。
【0140】
ハイブリッド(ビニル/アクリル)
エチレン性不飽和単量体及び他のフリーラジカル重合性単量体は、通常のフリーラジカル源により重合させて、ポリウレタン粒子内でビニル及び/又はアクリルポリマーを形成し、ハイブリッドアクリル−ウレタン分散体を形成することができる。ビニルポリマーは、不飽和単量体又はそれらの単量体由来のポリマーの実質的な部分に由来するポリマーの包括的用語である。アクリル(しばしばビニルのサブセットとみなされる)は、アクリル酸、アクリレート(アクリル酸のエステルである)及びメタクリレート及びエタクリレート並びにそれらからのポリマーなどのアルカクリレートを指す。さらなるフリーラジカル重合性材料(不飽和単量体)は、ビニル又はアクリル単量体に加えて共重合させることができる。これらの他の単量体は、無水マレイン酸、マレイン酸及び炭素−炭素二重結合がエチレン性不飽和単量体とほぼ同様に反応性(及び共重合性)である他の単量体などの単量体であり得る。ジエンは、エチレン性不飽和であるとみなされ、広いカテゴリーのビニル単量体及び狭いカテゴリーのアクリル単量体の両方と共重合する。単量体の大部分(例えば、総フリーラジカル重合性単量体の>50重量%、より望ましくは>75重量%、好ましくは>85重量%)は、ビニル又はより狭い実施形態においてアクリル単量体であると予期される。
【0141】
ポリウレタン粒子内の重合は、ポリウレタン複合物の水性分散体を形成させ、次にこれらの分散体の存在下での乳化又は懸濁重合によりさらなる単量体を重合させることにより行わせることができる。ハイブリッドポリマーを作製する他の様式は、エチレン性不飽和単量体をポリウレタンプレポリマーに含めること(プレポリマーを形成するための反応物とともに及び/又はウレタンプレポリマーを分散させる前の任意の時点に)とこれらの単量体をプレポリマーを水性媒体に分散させる前、その間及び/又は後に重合させることである。1つの実施形態において、組み合わされたウレタン及びビニル(又はより狭い実施形態においてアクリル)の100部に対するビニル単量体からのポリマー(単数又は複数)の重量パーセントは、全体を100重量部とするためのウレタンプレポリマー又はポリマーの補足的量を用いて、少なくとも1、5又は10重量パーセントである。少量のウレタンプレポリマー又はポリマーが望まれる他の実施形態において、ウレタンプレポリマー又はポリマーは、組み合わせた重量の少なくとも0.1、0.5、1.5又は10重量パーセントであり、ビニル(又はより狭い実施形態においてアクリル)ポリマーは、補足的量である。
【0142】
1つのアプローチにおいて、エチレン性不飽和単量体は、プレポリマーの形成中希釈剤として作用する。ビニル単量体をポリウレタン構成成分の希釈剤として用いる場合、ビニル単量体は、ポリウレタン及びビニル構成成分(重合が起こったか否かによって、単量体又はポリマー)の組み合わせた重量の約5又は10重量パーセントから約50重量パーセントを形成する。本発明のポリウレタンとアクリルとのハイブリッドは、これらのアプローチのいずれかにより作製することができる。この種の技術は、米国特許第4,644,030号、米国特許第4,730,021号、米国特許第5,137,961号及び米国特許第5,371,133号に教示されている。他のウレタン−アクリルハイブリッドは、ウレタンポリマーが水系ポリマー分散体又は乳濁液中に分散されている合成合金ウレタン−アクリルとしてしばしば公知である。これは、国際公開第98/38249号及び米国特許第6,022,925号に教示されている。
【0143】
テザーアミン基を有するウレタンを含有する水性分散体を作製するための他のアプローチは、ポリウレタンプレポリマーを形成し、次にこのプレポリマーを本発明の水性分散体に分散させることである。或いは、本発明のテザーアミン基を含有するプレポリマーは、任意の他のポリマーの水性分散体に分散させることができる。
【0144】
ナノ複合材料
様々なナノサイズの粒子状固体を本発明のポリウレタン分散体及びポリウレタン分散体からの乾燥生成物に組み込むことが望ましい場合がある。国際公開第2006/079098号及び米国特許第7,598,315号(同等物)は、ナノ粒子を水の非存在下又は存在下でウレタンプレポリマーとどのように組み合わせるか、及びウレタンとナノ粒子の望ましい組合せを達成するために様々な形のウレタンを様々な微細粒子の形のナノ粒子とどのようにブレンドするかを教示している。
【0145】
プロセス
ポリウレタン粒子の水性分散体は、水の実質的な非存在下でポリウレタンプレポリマーを形成し、次にこのプレポリマーを水性媒体に分散させることにより本発明により作製する。これは、任意の方式で行うことができる。典型的に、プレポリマーの形成は、プレポリマーの成分を塊状又は溶液重合させることにより行う。
【0146】
ポリウレタンプレポリマー混合物が形成されたならば、それを水性媒体に分散させて、分散体又は溶液を形成させる。水性媒体へのプレポリマーの分散は、塊状又は溶液重合により作製された他のポリウレタンプレポリマーを水に分散させるのと同じ様式で、任意の通常の技法により行うことができる。通常、これは、プレポリマーブレンドを混合しながら水と組み合わせることにより行う。溶媒重合を用いる場合、所望の場合、溶媒及び他の揮発性構成成分を最終分散体から場合によって蒸留して除去することができる。プレポリマーが乳化剤(界面活性剤)を添加せずに安定な分散体を形成するのに十分な水分散性向上化合物(カチオン性及び任意選択の非イオン性単量体など)を含む場合、分散体は、所望の場合、そのような化合物を用いずに、すなわち、界面活性剤を実質的に含めずに作製することができる。このアプローチの利点は、ポリウレタンから作製したコーティング又は他の生成物が、より低い感水性、より良好なフィルム形成及びより少ない発泡を示すことである。
【0147】
米国特許第6,140,412号に開示されているものと比べた本発明の組成物のさらなる便益は、著しくより高い固体含量が可能であることである。
【0148】
1つの実施形態において、本発明の分散体は、典型的に少なくとも約20重量%、好ましくは少なくとも約25重量%、なおより好ましくは少なくとも約30、31.25、35又は40重量%の総固体(例えば、又はすなわち、ポリウレタン固体)を有する。
【0149】
本発明の分散体は、テザーアミンプレポリマー混合物を、他のポリマー又は複数のポリマーのあらかじめ形成させた水性分散体に分散させることによって形成させることができる。言い換えると、プレポリマー混合物を本発明により分散させる水性媒体は、それ自体、乳化及び懸濁重合技法により作製されたものを含む他のポリマー又は複数のポリマーのあらかじめ形成させた水性分散体であり得る。
【0150】
水性ポリウレタン分散体を作製する他の公知の様式も本発明の分散体を作製するために用いることができる。それらの総説は、Progress in Organic Coatings、9巻、281〜340頁(1981年)におけるD. Dieterichによるものを含めていくつかの刊行物に見いだすことができる。プロセスの例は、以下のものを含む。
【0151】
せん断混合−乳化剤(界面活性剤などの外部乳化剤、或いはポリウレタン骨格の一部若しくはそれへのペンダントとしての及び/又はポリウレタン骨格の終端基としての非イオン性、アニオン性、カチオン性及び/又は両性イオン基を有する内部乳化剤)を用いてせん断力によりプレポリマーを分散させる。
【0152】
アセトンプロセス−アセトン、MEK及び/又は非反応性であり、容易に蒸留される他の極性溶媒の存在下又は非存在下でプレポリマーを形成させる。プレポリマーを必要に応じて前記溶媒でさらに希釈し、活性水素含有化合物で鎖を延長させる。水を鎖延長ポリウレタンに加え、溶媒を蒸留により除去する。このプロセスの変形形態は、水中への分散の後にプレポリマーを鎖延長させることである。
【0153】
溶融分散プロセス−イソシアネート末端プレポリマーを形成させ、次に過剰のアンモニア又は尿素と反応させて、末端尿素又はビウレット基を有する低分子量オリゴマーを形成させる。このオリゴマーを水に分散させ、ホルムアルデヒドによるビウレット基のメチロール化により鎖を延長させる。
【0154】
ケタジン及びケチミンプロセス−ヒドラジン又はジアミンをケトンと反応させて、ケタジン又はケチミンを形成させる。これらをプレポリマーに加え、イソシアネートに対して不活性のままとする。プレポリマーを水に分散させるとき、ヒドラジン又はジアミンが遊離し、分散が起こっているときに鎖延長が起こる。
【0155】
連続プロセス重合−イソシアネート末端プレポリマーを形成させる。このプレポリマーをポンプにより高せん断混合ヘッド(単数又は複数)を経て送出し、水に分散させ、次に前記混合ヘッド(単数又は複数)において鎖延長させるか、又は前記混合ヘッド(単数又は複数)において同時に分散させ、鎖延長させる。これは、プレポリマー(又は中和されたプレポリマー)、任意選択の中和剤、水並びに任意選択の鎖延長剤及び/又は界面活性剤からなる複数の流れにより遂行される。
【0156】
逆送プロセス(reverse feed process)−水及び任意選択の中和剤(単数又は複数)及び/又は延長剤アミン(単数又は複数)を撹拌しながらプレポリマーに入れる。プレポリマーは、水及び/又はジアミン鎖延長剤を加える前に中和することができる。
【0157】
本発明のポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,582,698号に記載されているようにコア−シェル及び他の形態の形成をもたらす2プレポリマープロセスによっても調製することができる。
【0158】
用途
本発明の組成物及びそれらの配合物は、インクジェット印刷用途において紙受容コーティング、サイズ剤及びインクバインダーとして有用である。それらは、卓越した印刷能力及び品質をもたらす。
【0159】
カチオン性バインダーはアニオン性基材に対する卓越した付着性を有するので、他の用途領域は、ガラス繊維サイジングである。同じ理由のため、本発明のポリマーは、改善された特性を有する接着剤及び一般的な紙サイジング添加物に適応させることができる。
【0160】
カチオン性ポリマーが広く用いられる他の用途は、電着である。
【実施例】
【0161】
本発明をさらに十分に説明するために、以下の実施例を示す。これらの実施例において、以下の試薬を用いた。
【0162】
氷酢酸、EMD製
DBA−Air Products and Chemicals製のジブチルアミン
DeeFo97−3−Ultra Additives製の消泡剤
DeeFo XHD−47J−Ultra Additives製の消泡剤
Dee Fo PI−40−Ultra Additives製の消泡剤
EDA−エチレンジアミン
H12MDI−Desmodur(登録商標)WとしてBayer Corporation製の1,1’−メチレンビス−(4−イソシアナトシクロヘキサン)
Aldrich Chemical Company,Inc.製のジエタノールアミン
DMPA−Geo Specialty Chemicals Inc.製のジメチロールプロパン酸
FASCAT(登録商標)2003−Elf Atochem North America製の2−エチルヘキサン酸及びオクタン酸第一スズ
HCl−J.T.Baker製の塩酸
HDI−ヘキサメチレンジイソシアネート
ヒドラジン溶液−Bayer Corporation製の35重量%水溶液
IPDI−Bayer Corporation製のイソホロンジイソシアネート
Jeffcat(登録商標)DPA−Hunstman製の3−ジメチルアミノプロピルアミノ−1,1’−ビス−(プロパン−2−オール)
Jeffcat(登録商標)ZF−10−Hunstman製のN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル
MDI−ジフェニルメチレンジイソシアネート
N−MeDEA−Alfa Aesar製のN−メチルジエタノールアミン
Piothane67−1000HNA=Panalom Industries製のポリ(ヘキサンジオールネオペンチルグリコールアジピン酸)ポリエステル(Mn=1,000)
PPG−1025−Bayer Corporation製のポリプロピレングリコール(平均Mn=1025g/モル)
PPG−2025−Bayer Corporation製のポリプロピレングリコール(平均Mn=2025g/モル)
PTHF650−ポリテトロヒドロフラン(平均Mn=650g/モル)、Invista製のTerathane(登録商標)650
PTHF1000−ポリテトロヒドロフラン(平均Mn=1,000g/モル)、Invista製のTerathane(登録商標)1000
PTHF2000−ポリテトロヒドロフラン(平均Mn=2,000g/モル)、Invista製のTerathane(登録商標)2000
PTHF2900−ポリテトロヒドロフラン(平均Mn=2,900g/モル)、Invista製のTerathane(登録商標)2900
Tegomer(登録商標)D−3403=Evonik製のトリメチロールプロパンモノエトキシレートメチルエーテル(Mn=1,220g/モル)
TDI−トルエンジイソシアネート
Ageflex(登録商標)FM1Q80MC−Ciba製の塩化メチルで四級化したN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
Arquad(登録商標)16−29−Akzo Nobel製の塩化トリメチルヘキサデシルアンモニウム
V−50(登録商標)−Aldrich製の2,2’−アゾ−ビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩
メチレンビスアクリルアミド
アクリルアミド
スチレン
エチルアクリレート
tert−ブチルヒドロキシペルオキシド
エリソルビン酸。
【0163】
さらに、これらの実施例を実施するに際して以下の解析及び試験手順を用いた。
【0164】
固体含量。総固体は、Moisture/Solids Analyzer LabWare 9000(商標)(CEM Corporation)により測定した。
【0165】
pH。pHの数値は、Acumet Basic pH Meter(Fisher Scientific)を用いて測った。
【0166】
粘度。Brookfield粘度試験を、Brookfield RV粘度計及び軸#3〜#6(粘度による)を用いて20rpmで、周囲温度(約77°F)で実施した。
【0167】
粒径。分散体の粒径及び粒度分布を次の機器によって得た:ガウス分布により平均した強度を用いるSubmicron Particle Sizer AutodilutePAT Model370(NICOMP Particle Sizing Systems);Zetasizer Software6.12及びNanoTrak(登録商標)粒径解析装置によるデータ解析付きMalvern Zetasizer Nano−S90。
【0168】
イソシアネート(NCO)滴定。プレポリマーの試料(約3グラム)を250ml三角フラスコに量り入れる。トルエン(50ml)及びトルエン中2Mジブチルアミン溶液(20ml)を加え、プレポリマーが完全に溶解するまで混合物を熱板上で加熱する。フラスコをイソプロパノールで200mlまで満たす。ブロモフェノールブルー指示薬(6〜7滴)を加え、青色から淡黄色に変色するまで溶液を1N HCl溶液で滴定する。
【0169】
物理的特性。ASTM D882「薄プラスチックシーティングの引張特性の標準試験法」をこの試験に採用した。試料は、改造され、TestWorks4ソフトウエアにより実行されるMTS ReNew Elite Controllerが装着されたInstron(登録商標)Model4301で最大抗張力及び伸びについて試験した。ジョーのギャップを1インチに設定し、1分当たり2インチの速度で試験を実施した。ピーク荷重及び破断時ひずみを各試料について記録した。各試料について3〜6回の測定を実施し、平均結果を報告した。
【0170】
分子量。分子量分布は、Waters Model515 Pump、Alcott Model708オートサンプラー及び40℃に保持されたWaters Model2410屈折率検出器を装着したWatersゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した。GPC条件は、温度−40℃、カラムセット−2xPhenogel 5u Linear(2)+50A Phenogel、300x7.8mm、移動相−250ppmブチル化ヒドロキシトルエンで安定化されたテトラヒドロフラン(THF)、流量−1.0ml/分、注入体積−100μl、試料濃度約0.25%、及びWaters Empower Pro Softwareを用いたデータ取得であった。およそ0.05グラムのポリマーを、0.45ミクロンポリテトラフルオロエチレン使い捨てフィルター(Whatman)でろ過した20mlの安定化HPLCグレードのTHFに溶解し、GPCに注入した。すべての試料がTHFに完全に溶けた。Polymer Laboratories製のEasiCal(登録商標)ポリスチレン標準を用いて分子量校正曲線を確立した。
【0171】
インクジェット受容コーティング配合物におけるカチオン性ポリウレタン分散体の評価。
【0172】
以下の試験手順を評価に用いた。
【0173】
ヘイズ−超透明ポリエステルフィルムMelinex(登録商標)606PET上に作製したコーティングの比較により与えられる1〜5の主観的評定。5の値−最良、超透明フィルムに与えられる;1の値は、最悪であり、完全に不透明なフィルムに与えられる。
【0174】
光沢−Melinex534白色フィルム上に作製したコーティングについて60°の角度でGardner Haze Meterで測定。より高い値がより良好である。
【0175】
耐水性−3滴の水を原色、等和色及び黒色のバンド上にのせ、10秒間放置し、指でこすり、乾燥する。次にそれらを主観的に比較し評定し、5の評定は、無損傷を表し、1の評定は、画像の完全な破壊を表す。存在する場合にはより大きい水による損傷を引き起こすインク中の溶媒の消散を可能にするために、試験の前に、印刷を印刷後最低限48時間にわたり熟成させなければならない。
【0176】
視感密度−原色(青緑、赤紫及び黄色)及び複合黒の視感密度をQEA PIAS II画像解析装置を用いて測定した。密度は、対数測定値であり、1.0の値は、光の90%を意味し、2.0は、99%を意味する等である。より高い数がより良好である。
【0177】
BIY不規則性(Raggedness)及びぼやけ(Blur)−ヒトの眼は、黄色がうまく見えず、CMYK黒色が最も暗い色である。黄色の100%の被覆率の背景上に印刷された黒色の直線は、両方の場合に最大量のインクが印刷されるため、線の色泣き(bleeding)又はにじみなしに印刷するのが最も困難な線である。BIY不規則性は、ミリメートル単位で測定された黒色の線の平均にじみ又はうねりであり、BIYぼやけは、これもミリメートル単位で測定された最大濃度から背景までのテーパの平均距離である。これらは、QEA PIAS II画像解析装置によっても測定される。
【0178】
L,a,b−L,a,bは、コーティング又は基材の背景色の色空間解析である。一般的に、L値は、測定の強度を示し、L値が高いほど良好である。a値は、赤−緑軸上の位置を表し、ゼロに近いことが基材上の印刷の色調節を達成するのをより容易にすること以外はあまり重要でない。b値は、青−黄軸上の位置を表し、決定的である。正のb値は、黄色の背景色を表し、これはしばしば容認できない。したがって、ゼロ又は負のb値が望ましい。L,a,b値は、QEA PIAS II画像解析装置により測定した。
【0179】
モトル及び粒状性−理想的には、ベタ画像は、密度の変動がない。粒状性は、小スケールで、この場合には1.27mmのセルにおける画像密度の変動である。モトルは、1.27mmの1つのセルから隣接するセルへの密度の変動である。これらは、QEA PIAS II画像解析装置を用い、粒状性については小アパーチャー(8mm)を、モトルについては大アパーチャー(33mm)を用いて測定する。値が低いほど、印刷がより均一である。
【0180】
インク乾燥時間−印刷後に印刷物をどの程度速やかに取り扱い、積み重ねることができるかを判定する。原色(CMYK)、等和色(青、緑及び赤)及びCMYK黒色のベタバンド(solid bands)をEpson R340及びEpson 4880印刷機で印刷する。印刷物が印刷機から排出されたとき、それらをコピー紙で吸い取り、それらが裏移りするかどうかを確認する。印刷時間及び可視裏移りの長さを測定することにより、各種の色及び黒色の乾燥時間を計測することができる。これを秒として記録する:数が低いほど、インク乾燥時間はより良好(より速い)である。
【0181】
耐ブロック性試験−耐ブロック性(乾燥)について試験するために、1平方メートル当たりおよそ25グラムのコーティング重量を得るためにコーティング試料をポリエステルフィルム(Grafix製の8.5x11”Dura−Lar Clear)上に引き伸ばす。標準画像を、Dura Brite Ultra Inkを用いてEpson Stylus C88+印刷機で色管理せずに被覆ポリエステルフィルム上に印刷する。画像が印刷され終えた後直ちに、1枚のBoise X−9、20lb、92光沢コピー紙を用いてインクの乾燥について試験する。コピー紙を印刷済み試料上の乾燥時間バーの上部にかぶせ、10.4kgステンレススチールローラー(TMIにより製造、www.testingmachines.com、モデル#61−04−01)をコピー紙の上部にわたって引っ張る。コピー紙を反転させるとき、どれほどのインクがコピー紙に移されたかに基づいて対照試料と比較することにより、インクの乾燥のレベルを判定することができる。
【0182】
湿潤摩擦試験−湿潤摩擦抵抗性について試験するために、耐ブロック性試験で述べたように試料を調製する。印刷済み試料を試験前に少なくとも24時間乾燥する。1滴のDM水で湿らせた2積層綿Crockmeter Square(Testfabrics,Inc.)を指に巻きつけ、乾燥時間バーにわたって圧力をかけて一方向にこする。比較し、対照試料との比較の結果をランクづけする。
【0183】
乾燥摩擦試験−乾燥Crockmeter Squareで湿潤摩擦試験手順と同様に実施する。
【0184】
以下の実施例は、本発明を例示するために提示する。
【0185】
(実施例1)
PPG1025(400グラム)とIPDI(321グラム)を乾燥窒素のブランケットのもとで215〜225°F(102〜107℃)で約1時間反応させた。反応混合物を170°F(77℃)に冷却し、78グラムのJeffcat DPAを加えた。反応混合物を175〜185°F(79〜85℃)で40分間撹拌して、NCO末端プレポリマーを生成させた。混合物を123°F(51℃)に冷却し、43グラムの氷酢酸を撹拌しながら15分間にわたり加えた。中和プレポリマーの一部(650グラム)を混合しながら0.8グラムのDEE FO PI−40を含有していた53°F(12℃)の1,170グラムの水に約10〜15分間にわたって加えて、カチオン性NCO末端ポリウレタンプレポリマーの水性分散体を形成した。残りのNCOを水と一夜反応させ、それにより、36.8%の総固体含量、7.1のpH及び53nmの粒度分布の平均直径(Malvernにより測定し、強度平均ガウス分布として報告)を有するカチオン性ポリウレタンの低粘度で、混じりけのない(凝固物及び凝集物なし)安定水性分散体が生成された。
【0186】
(比較例A)
N−メチルジエタノールアミンをJeffcat DPAの代わりに用いたことを除いて、実施例1と同じ条件を用いた。以下の成分及び量を用いた。
【0187】
【表1】
75ミクロンフィルターソックを通過できなかった非常に粗い分散体が得られた。
【0188】
(実施例2)
実施例1と同じ条件を用い、以下の成分及び量を用いた。
【0189】
【表2】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、37.5%の総固体含量、pH6.2、34cP Brookfield粘度及び装置の検出範囲より小さい粒径(<20nm)を有していた。
【0190】
(実施例3)
PTHF1000(1,536グラム)、H12MDI(747グラム)及びIPDI(633グラム)を乾燥窒素のブランケットのもとで215〜225°F(102〜107℃)で約1時間反応させた。反応混合物を170°F(77℃)に冷却し、314グラムのJeffcat DPAを加えた。反応混合物を175〜185°F(79〜85℃)で40分間撹拌して、NCO末端プレポリマーを生成させた。混合物を145°F(63℃)に冷却し、69グラムの氷酢酸を撹拌しながら15分間にわたり加えた。部分的に中和したプレポリマーの一部(3,060グラム)を混合しながら98グラムの氷酢酸と5グラムのDeeFo97−3を含有していた65°F(18℃)の4,000gの水に約10〜15分間にわたって加えて、カチオン性NCO末端ポリウレタンプレポリマーの水性分散体を形成した。残りのNCOを水と一夜反応させ、それにより、以下の特性を有するカチオン性ポリウレタンの混じりけのない(凝固物及び凝集物なし)安定水性分散体が生成された:総固体含量−43.6%、pH4.7及びBrookfield粘度−70cP。粒度分布の平均直径は26nmであった(Malvernにより測定し、強度平均ガウス分布として報告)。重量平均分子量は、42,500g/モルと測定された。最大抗張力は、3,750psi(標準偏差=170psi)と測定され、破断点伸び−620%(標準偏差=30%)及び100%伸び時のモジュラス−1,025psi(標準偏差=35psi)。
【0191】
この実施例の結果として得られた生成物をインクジェット印刷用途におけるLubrizolから入手可能なアニオン性ポリウレタン分散体Sancure(登録商標)861と比較した。乾燥及び湿潤耐摩耗性、青緑、赤紫、黄及び黒色インクの粒状性及びモトルはすべて、この実施例のカチオン性ポリウレタンで優れていた。
【0192】
(実施例4)
以下の成分及び量を用いたことを除いて、合成を実施例3と同じ様式で行った。
【0193】
【表3】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、以下の特性を有していた:総固体含量44.3%、pH5.6、Brookfield粘度64cP、平均粒径34nm、重量平均分子量44,950g/モル、最大抗張力−1,250psi(標準偏差=90psi)、破断点伸び−1,080%(標準偏差=70%)及び100%伸び時のモジュラス−370psi(標準偏差=40psi)。
【0194】
(実施例5)
以下の成分及び量を用いたことを除いて、合成を実施例3と同じ様式で行った。
【0195】
【表4】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、総固体含量45.0%、pH5.3、Brookfield粘度58cP、平均粒径45nm及び重量平均分子量79,100g/モルを有していた。
【0196】
(実施例6)
以下の成分及び量を用いたことを除いて、合成を実施例3と同じ様式で行った。
【0197】
【表5】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、以下の特性を有していた:総固体含量41.8%、pH6.0、Brookfield粘度60cP、平均粒径25nm、最大抗張力−4,400psi(標準偏差=30psi)、破断点伸び−420%(標準偏差=40%)及び100%伸び時のモジュラス−1,800psi(標準偏差=80psi)。
【0198】
(実施例7)
以下の成分及び量を用いたことを除いて、合成を実施例1と同じ様式で行った。
【0199】
【表6】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、総固体含量40.9%、pH6.6、Brookfield粘度42cP及び平均粒径30nmを有していた。
【0200】
(実施例8)
実施例3と同じ条件を用い、以下の成分及び量を用いた。
【0201】
【表7】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、総固体含量39.3%、pH5.8、Brookfield粘度45cP及び平均粒径58nmを有していた。
【0202】
(比較例B)
N−メチルジエタノールアミンをJeffcat DPAの代わりに用いたことを除いて、実施例8と同じ条件を用いた。以下の成分及び量を用いた。
【0203】
【表8】
最初に得られた白色乳状分散体は、約3時間で不安定化し、白色固体塊状物に凝固した。
【0204】
(実施例9)
実施例3と同じ条件を用い、以下の成分及び量を用いた。
【0205】
【表9】
カチオン性ポリウレタンの得られた安定な水性分散体は、総固体含量43.2%、pH5.6、Brookfield粘度42cP及び平均粒径640nmを有していた。約7グラムの湿潤凝固物を75ミクロンソックフィルターによりろ別した。
【0206】
(比較例C)
N−メチルジエタノールアミンをJeffcat DPAの代わりに用いたことを除いて、実施例9と同じ条件を用いた。以下の成分及び量を用いた。
【0207】
【表10】
得られた白色乳状分散体を調製の約30分後に75ミクロンソックフィルターでろ過した。ろ過は非常に遅く、約20グラムの凝固物がフィルターにより収集された。4時間で、分散体は、完全に不安定化し、白色固体塊状物に凝固した。ろ過後に分散体の一部をDM水により42%の理論的固体含量から34%に希釈した。希釈分散体は、分散体を作製してから8時間後に固化した。
【0208】
(実施例10)
Jeffcat ZF−10をJeffcat DPAの代わりに用いたことを除いて、実施例1と同じ条件を用いた。以下の成分及び量を用いた。
【0209】
【表11】
カチオン性ポリウレタンの得られた混じりけのない安定な水性分散体は、総固体含量35.1%、pH6.8、Brookfield粘度25cP及び平均粒径65nmを有していた。
【0210】
この実施例の生成物は、非粘着性接着剤と述べたほうがよい独特の特性を実証した。このポリマーから作製したフィルムは、非常に良好な耐ブロッキング性、すなわち、非粘着性を有し、それにもかかわらず、ガラス及び皮膚などの様々な基材に容易に付着する。これは多分、ハードセグメントの比較的高い含量と鎖端に位置するアミンを有するポリマーのカチオン性の結果である。
【0211】
(実施例11)
実施例10のカチオン性ポリウレタン分散体を用いて、超低遊離界面活性剤含量及び非常に狭い粒度分布を有するアクリル−ウレタンハイブリッドを以下の手順に従って調製した。
【0212】
水浴中に浸し、撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素入口チューブを装着した5L四頚ガラスフラスコに、1800グラムのDM水及び実施例11の21グラムの分散体を加えた。窒素雰囲気中で、容器内容物の温度を72℃とし、44グラムのDM水中3.7グラムのV−50開始剤溶液を加えた。直後に、以下の単量体プレエマルジョン混合物の添加を2.5時間にわたって開始した:375グラムのDM水、21グラムのメチレンビスアクリルアミド、3.8グラムのArquad16−29、14グラムのアクリルアミド、4.6グラムのAgeflex FM1Q80MC、248グラムのスチレン及び1200グラムのエチルアクリレート。同時に、445グラムのDM水中11グラムのV−50溶液を一定の速度で3.5時間にわたって添加し始めた。温度を4時間にわたり72℃に保持した。V−50溶液を加え終えてから30分後に、内容物を57℃に冷却し、4.5グラムのDM水中1.6グラムの70%tert−ブチルヒドロキシペルオキシド及び0.5グラムのArquad16−29の溶液を加えた。20分の混合の後に、46グラムのDM水中2.2グラムのエリソルビン酸の溶液を加えた。
【0213】
カチオン性アクリル−ポリウレタンハイブリッドの結果として得られた水−希薄水性分散体は、以下の特性を有していた:総固体含量−34.8%、pH4.1、粒径−216nm(PDI=1.1)。ガラス転移温度は、+11℃と測定された。
【0214】
(実施例12)
実施例1、3、9、10に基づく予言的ハイブリッドアクリル−ウレタン
上述の発明の実施例のいずれか、特に、実施例1、3、4、9及び10の実施中に、フリーラジカル重合性単量体及びそれらの混合物を、プレポリマーを水に分散させる前又は後などのその調製のいずれかのポイントでプレポリマーに加えることができる。最もよく用いられる単量体は、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル及びスチレンである。添加単量体の量は、典型的にプレポリマーの重量に対して約5〜約70重量%である。例えば、約20〜50重量%の50:50重量ブレンドのメチルメタクリレート−ブチルアクリレート混合物を用いることができる。少量のBHTなどの重合阻害剤の添加及び酸素枯渇空気によるプレポリマーのブランケティングは、操作の安全性及び信頼性に有益である。単量体で希釈されたプレポリマーを本発明の教示に従って水に分散させた後、フリーラジカル重合は、フリーラジカル開始剤の使用により、特に、中程度の温度で重合を実施することを可能にする酸化還元配合剤(redox combinations)により付与することができる。伝統的な酸化還元系は、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素及び過硫酸ナトリウムのような過酸化物並びに重亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、Bruggemann Chemicals製のBruggolite(商標)FF6、テトラメチルエチレンジアミン及びメルカプタンのような還元剤に基づいている。鉄含有化合物などの促進剤も用いることができる。
【0215】
さらなる不飽和単量体をプレポリマーを水に分散させた後の任意の時点に加えることができる。
【0216】
述べた手順により、高い総固体含量及び低い粘度を有するカチオン性ビニル−ウレタンハイブリッドの水性分散体が得られる。
【0217】
(実施例13)
PTHF1000(279グラム)、H12MDI(136グラム)及びIPDI(115グラム)を乾燥窒素のブランケットのもとで215〜225°F(102〜107℃)で約1時間反応させた。反応混合物を170°F(77℃)に冷却し、57グラムのJeffcat DPAを加えた。反応混合物を175〜185°F(79〜85℃)で40分間撹拌した。混合物を150°F(66℃)に冷却し、ヘッドスペースから窒素パージを除去し、65グラムのメチルメタクリレートを、その後、13グラムの氷酢酸を加えた。部分的に中和したプレポリマーの一部(420グラム)を混合しながら13グラムの氷酢酸と0.6グラムのDeeFo97−3を含有していた65°F(18℃)の830gの水に約10〜15分間にわたって加えて、水性分散体を形成させた。約50分間の混合の後、7グラムの3.5%tBHP溶液を窒素のブランケットのもとで加え、10分間混合した。次にエリソルビン酸の2%溶液11グラムを混入した。1時間後、tBHP及びエリソルビン酸の添加を繰り返した。残りのNCOを水と50℃で一夜反応させた後に、以下の特性を有する混じりけのない(凝固物及び凝集物なし)安定な水性分散体が生成された:総固体含量−31.9%、pH5.6、Brookfield粘度−10cP、粒度分布の平均直径−34nm(Malvernにより測定し、強度平均ガウス分布として報告)、残留メチルメタクリレート−400ppm。
【0218】
(実施例14)
スチレンをメチルメタクリレートの代わりに用いたことを除いて、実施例13と同じ条件を用いた。以下の特性を有する混じりけのない安定な水性分散体が生成された:総固体含量−31.7%、pH5.6、Brookfield粘度−8cP、粒度分布の平均直径−37nm(Malvernにより測定し、強度平均ガウス分布として報告)、残留スチレン−200ppm。
【0219】
(実施例15)
メチルメタクリレートに加えて、65グラムのブチルアクリレートを加えたことを除いて、実施例13と同じ条件を用いた。以下の特性を有する混じりけのない安定な水性分散体が生成された:総固体含量−31.2%、pH5.8、Brookfield粘度−8cP、粒度分布の平均直径−39nm(Malvernにより測定し、強度平均ガウス分布として報告)、残留ブチルアクリレート−150ppm、及び検出できるメチルメタクリレートなし。
【0220】
(実施例16)
PTHF1000(217グラム)、Tegomer D−3403(150グラム)及びIPDI(203グラム)を乾燥窒素のブランケットのもとで190〜205°F(88〜96℃)で約1時間反応させた。反応混合物を140°F(60℃)に冷却し、29グラムのJeffcat DPAを加えた。反応混合物を175〜185°F(79〜85℃)で40分間撹拌して、NCO末端プレポリマーを生成した。混合物を140°F(60℃)に冷却し、プレポリマーの一部(400グラム)を混合しながら0.6グラムのDEE FO97−3を含有していた70°F(21℃)の650グラムの水に約5分間にわたって加えて、水性分散体を形成させた。残りのNCOを水と95〜105°F(35〜41℃)で反応させ、それにより、39.4%の総固体含量、8.4のpH、55cPのB.V.及び59nmの粒度分布の平均直径(Malvernにより測定し、強度平均ガウス分布として報告)を有する非イオン的に安定化されたカチオン性ポリウレタンの安定水性分散体を生成させた。
【0221】
この実施例の結果として得られた非イオン的に安定化されたカチオン性分散体をLubrizolから入手可能なアニオン性ポリウレタン分散体Sancure(登録商標)861及びインクジェット印刷用途における実施例3の生成物と比較した。青緑、赤紫、黄及び黒色インクの画像密度並びに耐ブロック性はすべて、この実施例のポリウレタンで優れていた。
【0222】
(実施例17)
次の材料を反応器に入れた:Piothane67−1000HNA(109.9グラム)、Tegomer D3403(376.2グラム)及びDesmodur W(274.2グラム)。混合物を104.4℃(220°F)まで徐々に加熱し、この温度に60分間保持した。反応混合物を80℃(176°F)に冷却した。Jeffcat DPA(23.5グラム)を10分間にわたって加え、反応混合物を上昇させ、90℃(194°F)に60分間保持した。残りのイソシアネート(NCO)は、DBA及び1.0M HClによる滴定により5.39%であることを見いだした。反応混合物を80℃(176°F)に冷却した後、硫酸ジエチル(16.2グラム)を10分間にわたり加えた。反応混合物を80℃(176°F)に約60分間保持した。プレポリマーの一部(628グラム)を20℃(68°F)の水(1422グラム)を含有する他の反応器に約10分間にわたって入れた。プレポリマーの分散が完了したとき、反応混合物を一夜撹拌させることにより、水との反応による鎖延長を進行させた。
分散体の特性:総固体=30.5%、pH=8.28、Brookfield粘度=50cP、粒径=30.3nm。
【0223】
(実施例18)
以下の材料を反応器に入れた:Terethane(登録商標)2000(342.5グラム)、Tegomer D3403(154.2グラム)、Desmodur W(222.3グラム)、ジステアリン酸ペンタエリスリトール(30.8グラム)及びJeffcat DPA(21.1グラム)。混合物を104.4℃(220°F)まで徐々に加熱し、この温度に110分間保持した。残りのイソシアネート(NCO)は、DBA及び1.0M HCLによる滴定により3.59%であることを見いだした。反応混合物を71℃(160°F)に冷却した後、硫酸ジエチル(29.1グラム)を10分間にわたり加えた。反応混合物を71℃(160°F)に約35分間保持した。
【0224】
プレポリマーの一部(638グラム)を20℃(68°F)の水(1382.7グラム)を含有する他の反応器に約15分間にわたって入れた。プレポリマーの分散が完了したとき、水中エチレンジアミン16.7%(58.9グラム)を30分間にわたり加えた。反応混合物を一夜撹拌させた。
分散体の特性:総固体=30.6%、pH=7.28、Brookfield粘度=14cP、粒径=59.5nm。
【0225】
(実施例19)
20グラムの乾燥固体を含有する実施例3の分散体に、0.06グラムの水性25%リン酸を加えた。10ミルの湿潤コーティングをMylar P300−7Cシート上に施し、一夜風乾した。促進熱熟成を149℃(300°F)の対流オーブン中で60分間実施した。実施例3の非修飾分散体を比較のために用いた。非加熱フィルムのL値(白色度の尺度)は、73.8と測定された。300°Fで1時間の熟成後に、比較フィルムのL値は、63.4であり、リン酸を含むフィルムについては、L値は、72.1と測定された。この実施例は、カチオン性ポリウレタンの熱安定性における少量のリン酸の高い有効度を実証する。
【0226】
ある特定の代表的な実施形態及び詳細を対象発明を例示する目的のために示したが、対象発明の範囲を逸脱することなく、それにおいて様々な変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかである。