(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864600
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/22 20060101AFI20160204BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
F02B37/22
F02B39/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-540978(P2013-540978)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2013-543951(P2013-543951A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】US2011061310
(87)【国際公開番号】WO2012071254
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年5月27日
(31)【優先権主張番号】102010052373.9
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ヤレソワ・キエラ
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許発明第03427715(DE,C1)
【文献】
米国特許第05855117(US,A)
【文献】
特表2003−522310(JP,A)
【文献】
特開2008−298005(JP,A)
【文献】
特開2009−281197(JP,A)
【文献】
特開2003−020906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/22
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスターボチャージャ(1)であって、
コンプレッサ(2)を有し、
タービン(5)であって、
半径方向の流れ領域(11)と半軸方向の流れ領域(12)とを有するタービンホイール(6)を有し、
前記タービンホイール(6)の外周(8)で前記タービンホイール(6)を取り囲む、供給された排気ガス用の螺旋構成部(9)を有するタービンハウジング(7)を有し、
排気ガスを前記タービンホイール(6)に供給するための案内格子(10)を有し、
前記案内格子(10)が、前記チャージャの軸方向(L)に平行な方向に移動可能でありかつ前記半径方向の流れ領域(11)に付設される案内リング(13)と、前記チャージャの軸方向(L)に平行な方向に移動可能でありかつ前記半軸方向の流れ領域(12)に付設される閉鎖スリーブ(14)とを有する、
排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記案内リング(13)が、流れスロット(16)を境界付ける複数の案内ブレード(15)を有する、請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記案内ブレード(15)が流線形輪郭17を有する、請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記案内リング(13)が端側の流れ案内面(18)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記閉鎖スリーブ(14)が端側の流れ案内面(19)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項6】
前記螺旋構成部(9)が螺旋形状のガスダクト(9’)を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項7】
前記螺旋構成部(9)が、互いに隣接して配置された2つの螺旋形状のガスダクトを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の排気ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
前記タイプの排気ガスターボチャージャは、独国特許発明第3427715C1号明細書から公知である。前記チャージャは、2つの螺旋形状のガスダクトを有するタービンハウジングに半径方向のタービンホイールが配置されるタービンを有する。半径方向のタービンホイールは、半径方向の流れ領域及び半軸方向の流れ領域を有する。内燃機関の低回転速度範囲では、案内格子の制御要素は、半径方向のタービンホイールのブレードが螺旋形状のガスダクトの1つによってほぼ軸方向に作用されるように作動される。
【0003】
半径方向のタービンホイールの回転速度が予め規定された回転速度を越えた場合、半径方向のタービンホイールにほぼ軸方向に以前に作用したダクトが閉鎖され、また排気ガスを公知の方法で半径方向のタービンのブレードに対して半径方向に供給できるように他の螺旋形状のガスダクトが案内格子によって作動される。
【0004】
したがって、公知の排気ガスターボチャージャは、2つの螺旋形状のガスダクトを有するタービンハウジングを有し、これらのダクトには、各々、案内格子の別個に作動可能な1つの制御要素が付設され、この結果、1つのガスダクトが半径方向のタービンホイールにほぼ軸方向に作用するか、あるいは他のガスダクトが排気ガスを半径方向のタービンホイールのブレードに対して半径方向に供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、効率が公知のターボチャージャに対してさらに向上される、請求項1の前提部に規定されたタイプの排気ガスターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0007】
タービンホイールの半径方向の流れ領域に付設される軸方向に移動可能な案内リングを設ける結果、本発明による排気ガスターボチャージャが設けられたエンジンの低回転速度において、排気ガス流れをタービンホイールの半径方向の流れ領域のみに作用させることが可能であり、これに対し、閉鎖スリーブはタービンホイールの半軸方向の流れ領域を覆う。これにより、低回転速度におけるターボチャージャの応答挙動が改善される。
【0008】
対照的に、高回転速度において、半径方向の流れ領域及び半軸方向の流れ領域の両方に、エンジンの前記高回転速度における排気ガス流れが衝突できるように、半軸方向の流れ領域が閉鎖スリーブによって開放されかつ案内リングが引っ込められ、これによって、より低い流れ抵抗、したがって排気ガスターボチャージャの効率の増大が得られる。
【0009】
案内格子には、案内リング及び閉鎖スリーブの形態の互いに独立して軸方向に移動させことができる2つの構成要素が設けられるので、旋回可能な構成要素が設けられる公既知の案内格子に関して設計の単純化も達成される。
【0010】
排気ガスターボチャージャの案内格子を作動するために、公知の制御装置(例えば制御カプセル又は電気アクチュエータ)使用してもよく、この場合、例えば、タービンホイール又はロータシャフトの回転速度、あるいはほかに内燃機関の吸気システム内の給気圧力を制御変数として使用してもよい。
【0011】
従属請求項は、本発明の有利な改良形態に関する。
【0012】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、添付図面に基づき例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による排気ガスターボチャージャの著しく単純化した概略図である。
【
図2】本発明による排気ガスターボチャージャのタービンホイールの著しく単純化した概略図である。
【
図3】低エンジン回転速度における本発明による排気ガスターボチャージャの案内格子の位置の著しく単純化した概略図である。
【
図4】排気ガスターボチャージャの案内格子の案内リング及び閉鎖スリーブの単純化した概略斜視図である。
【
図5】高エンジン回転速度における案内格子の位置を説明するための本発明による排気ガスターボチャージャの一部の
図3に対応する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、コンプレッサハウジング4にコンプレッサホイール3を有するコンプレッサ2を有する排気ガスターボチャージャ1の著しく単純化した形態を示している。コンプレッサホイール3は、ロータシャフト20を介してタービン5のタービンホイール6に接続される。タービンホイール6は、半径方向の流れ領域11及び半軸方向の流れ領域12を有し、螺旋構成部9を備えるタービンハウジング7に配置される。図示した例では、螺旋構成部9は、タービンホイール6の周りを取り囲むように配置される単一の螺旋形状のガスダクト9’である。
【0015】
排気ガスをタービンホイール6に供給するための案内格子10は、螺旋構成部9又はガスダクト9’に配置される。設計及び前記案内格子10の機能について、
図3〜
図5に基づき以下に詳細に説明する。
【0016】
他の点では、排気ガスターボチャージャ1は、他のすべての従来の構成要素、特に従来の構成要素を作動するための案内格子10用の制御及び調整装置を有することも自明であるが、本発明の原理を説明するために必要でないので、詳細に図に示さない。
【0017】
図2は、概略的に単純化した図でタービンホイール6の半部を示している。タービンホイール6は、従来のように複数の案内ブレードを有し、そのうちホイールブレード6’が
図2に示されている。ホイールブレード6’の各々は、本発明の他の実施形態によれば、半径方向の流れ領域11、及びこの流れ領域に隣接して半軸方向の流れ領域12を有する。前記領域は、各々の場合に、同時に流れ方向を示す3つの矢印で
図2に示されており、前記領域から、排気ガスがタービンホイール6又はそのホイールブレード6’に供給される。このことから、半径方向の流れ領域11に半径方向の流れが接近し、この場合、半径方向は、チャージャの長手方向軸線Lに対して少なくともほぼ直角に整列していることが明らかである。
【0018】
矢印12で表された半軸方向の接近流れは、
図2に詳細に示したように、軸方向の流れ成分をもたらす方向である。
【0019】
図3は、ホイールブレード6’を有するタービンホイール6の上方部分を示しており、この場合、タービンホイール6を取り囲む螺旋構成部9も概略的に単純化した形態で示されている。図示した実施形態では、螺旋構成部9は、既述したように、1つのみの螺旋形状のガスダクト9’を有する。
【0020】
タービンホイール6又はそのホイールブレード6’に排気ガスを供給するための案内格子10は、タービンハウジング7(
図3に詳細に図示せず)に配置される。本発明によれば、前記案内格子10は、
図4に斜視図で示されかつ
図4に示した2つの構成要素13と14の上方部分である案内リング13を有する。
【0021】
案内リング13は、タービンハウジング7で、チャージャ軸線Lに対して平行に、軸方向に移動可能に案内され、
図3に示した位置に移動されることができる。前記位置において、案内リング13は、矢印Rで示したように、タービンホイール6への排気ガスの半径方向流入を可能にする。
図3及び
図4に示した第2の構成要素は、閉鎖スリーブ14であり、この閉鎖スリーブは、
図3では、タービンホイール6への矢印Rで表した接近流れのみが可能であるように、半軸方向の流れ領域12を覆う位置に配置される。案内格子10の前記位置は、本発明による排気ガスターボチャージャ1に設けられるエンジンの低回転速度において想定される。
【0022】
図4から理解できるように、軸方向に移動可能な案内リング13に複数の案内ブレード15が設けられ、すべての代表例として、その1つが
図4の前記参照番号15によって示されている。案内ブレード15の間に、
図3に矢印Rで表された上述の半径方向の接近流れを可能にする流れスロット16が設けられる。
【0023】
このため、案内ブレード15は、流線形輪郭17を有することが好ましく、その端面の和は端側の流れ案内表面18を形成する。
【0024】
対照的に、閉鎖スリーブ14は、略円筒状の構造の閉鎖した遮断要素であり、この遮断要素は、
図3に示したその閉位置で、タービンホイール6の半軸方向の流れ領域12への接近流れを可能にしない。閉鎖スリーブ14は同様に端側の流れ案内面19を有する。
【0025】
図5は、再びタービンホイール6を示しており、タービンホイールブレード6’及び螺旋構成部9の一方は、この場合、単一の螺旋形状のガスダクト9’を有する。この場合、案内リング13及び閉鎖スリーブ14がとる位置は、高エンジン回転速度で想定される位置である。この場合、
図5は、前記位置においてタービンホイール6の半軸方向の流れ領域12も開放され、この結果、矢印Rで表された半径方向の接近流れ及び
図5に矢印Hで表された半軸方向の流れの両方が可能になるように、案内リング13及び閉鎖スリーブ14がタービンハウジング(同様に
図5に詳細に図示されていない)内に引っ込められることを示している。この場合、半軸方向の流れ領域12の方向の流れ案内は、端側の流れ案内面18と19によって実現される。
【0026】
この場合、冒頭部で既述したように、案内格子10を作動するための制御/調整装置は、図に詳細に示していないが、設けられることが自明であり、この場合、例えばタービンホイールの回転速度又は制御変数としてエンジンのインテークパイプ内の圧力も考慮することができる公知の装置を使用することが可能である。
【0027】
同様に、互いに隣接して配置された2つの螺旋形状のガスダクトを螺旋構成部9に設けることが可能である。案内格子10の配置は、これによって影響を受けず、また閉鎖スリーブ14が、タービンホイール6の半軸方向の流れ領域12に付設されたダクトのみを覆いかつ開放することのみを保証すればよい。
【0028】
上述の本発明の開示とは別に、この場合、
図1〜
図5の概略図がさらに明示的に参照される。
【符号の説明】
【0029】
1 排気ガスターボチャージャ
2 コンプレッサ
3 コンプレッサホイール
4 コンプレッサハウジング
5 タービン
6 タービンホイール
6’ ホイールブレード
7 タービンハウジング
8 外周
9 螺旋構成部
9’ 螺旋形状のガスダクト
10 案内格子
11 半径方向の流れ領域
12 半軸方向の流れ領域
13 案内リング
14 閉鎖スリーブ
15 案内ブレード
16 流れスロット
17 流線形輪郭
18 流れ案内面
19 流れ案内面
20 ロータシャフト
21 軸受ハウジング
R 排気ガスの半径方向の流れ
H 排気ガスの半軸方向の流れ