特許第5864787号(P5864787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864787変性フィラー及びそれを含む官能性エラストマーコンポジット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864787
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】変性フィラー及びそれを含む官能性エラストマーコンポジット
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20160204BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20160204BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160204BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160204BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08K9/04
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08K5/36
【請求項の数】29
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2014-559874(P2014-559874)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公表番号】特表2015-508844(P2015-508844A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2012027472
(87)【国際公開番号】WO2013130099
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エー.ベルモント
(72)【発明者】
【氏名】ビジェイ アール.ティルマラ
(72)【発明者】
【氏名】ピン ジャーン
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−026661(JP,A)
【文献】 特開昭62−273267(JP,A)
【文献】 特開2011−089031(JP,A)
【文献】 特開2005−307211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の官能性エラストマー及び少なくとも1種の変性フィラーを含む、エラストマー組成物であって、前記変性フィラーが、以下のトリアゾ−ル又はその互変異性体をその上に吸着したフィラーを含む、エラストマー組成物:
【化1】

【化2】
(式中、
は、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、同一又は異なっていて、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Yは、H又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である硫黄含有官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
【請求項2】
前記トリアゾールが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、請求項1に記載のエラストマー組成物:
【化3】
(式中、Eが、wが2から8であるS、SSO、SSO、SOSO、SOSOである)。
【請求項3】
前記トリアゾールが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、請求項1に記載のエラストマー組成物:
【化4】
【請求項4】
前記トリアゾールが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、請求項1に記載のエラストマー組成物:
【化5】
(式中、Yは、H又はNHである)
【請求項5】
前記フィラーが、以下をその上に吸着して含む、請求項1に記載のエラストマー組成物:
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール、若しくは1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィド、又はこれらのいずれかの組み合わせ。
【請求項6】
少なくとも1種の官能性エラストマー、及び少なくとも1種のフィラーを含み、前記フィラーが、以下のピラゾール又はその互変異性体を、その上に吸着している、エラストマー組成物:
【化6】

【化7】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
X及びYは、独立して、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、若しくはCFであるか、又はYは、Rであり、ここで、X及びYの各々は、同一又は異なっており;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である硫黄含有官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルであり、
Eは、複数硫黄含有基である)。
【請求項7】
前記ピラゾールが、以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、請求項6に記載のエラストマー組成物:
【化8】
【請求項8】
前記ピラゾールが、以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、請求項6に記載のエラストマー組成物:
【化9】
(式中、Yは、H又はNHである)
【請求項9】
前記ピラゾールが、以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、請求項6に記載のエラストマー組成物:
【化10】
(Eが、wが2から8であるS、SSO、SSO、SOSO、SOSOである)。
【請求項10】
少なくとも1種の官能性エラストマー、及び少なくとも1種の変性フィラーを含み、前記変性フィラーが、以下を、その上に吸着している、エラストマー組成物:
a)少なくとも1種のトリアゾール;
b)少なくとも1種のピラゾール;又は、
これらの組み合わせ
ここで、前記変性フィラーは、エラストマー組成物中に存在する場合、変性されていない前記フィラーと比較して、耐摩耗性を改善し、かつa)又はb)が、硫黄含有置換基を含む。
【請求項11】
前記フィラーに結合している少なくとも1種の化学基をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の化学基が、以下を含む、請求項11に記載のエラストマー組成物:
a)少なくとも1つのトリアゾール;
b)少なくとも1つのピラゾール;
c)少なくとも1つのイミダゾール;又は、
これらのいずれかの組み合わせ。
【請求項13】
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、請求項12に記載のエラストマー組成物:
【化11】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、前記フィラーへの結合を含み
Yは、H、アルキル、アリール、又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である硫黄含有官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;かつ
Qは、(C3/4)、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である)。
【請求項14】
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、請求項12に記載のエラストマー組成物:
【化12】

【化13】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含み、及び残りのXのいずれも、前記フィラーへの結合、又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である硫黄含有官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHである場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
【請求項15】
前記少なくとも1種の化学基が、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩 N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORである官能基を少なくとも有するアルキル基又は芳香族基を含み、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C12炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数である、請求項11に記載のエラストマー組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の化学基が、X−C−S−S−C−Xであり、ここで、少なくとも一方のXは、前記フィラーへの結合であり、他方のXは、前記フィラーへの結合、又は官能基である、請求項11に記載のエラストマー組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の化学基が、少なくとも1つの芳香族スルフィド又はポリスルフィドを含む、請求項11に記載のエラストマー組成物。
【請求項18】
前記変性フィラーが、フィラー表面積(m)あたり0.01〜10マイクロモルのヘテロ環基の吸着量を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項19】
前記変性フィラーが、変性されていない前記フィラーと比較して、エラストマー組成物の耐摩耗性を改善している、請求項1〜18のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載のエラストマー組成物であって、前記変性フィラーが、変性されていない前記フィラーと比較して、前記エラストマー組成物の耐摩耗性を改善し、かつ未変性の前記フィラーと比較して、前記エラストマー組成物のヒステリシスを改善(低減)している、エラストマー組成物。
【請求項21】
少なくとも1種の官能性エラストマー、及び少なくとも1種の変性フィラーを含み、前記変性フィラーが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を、その上に結合している、エラストマー組成物:
【化14】

【化15】
(式中、Zはアルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含み、及び残りのXのいずれも、前記フィラーへの結合、又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である硫黄含有官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
【請求項22】
前記フィラーが、カーボンブラック、ケイ素処理カーボンブラック、ケイ素コーティングカーボンブラック、又は金属酸化物である、請求項1〜21のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項23】
前記フィラーが、少なくとも1つの金属酸化物であり、前記フィラーへの結合を含む前記Xが、少なくとも1つのシランリンカー基を介している、請求項14、16及び21のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項24】
前記フィラーが、少なくとも1つの金属酸化物であり、前記フィラーへの結合を含む前記Xが、少なくとも1つのSi含有基、Ti含有基、Cr含有基、又はZr含有基を介している、請求項14、16及び21のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項25】
前記官能性エラストマーが、ジエンとビニル芳香族化合物とのコポリマー、ジエンと少なくとも1つのα−オレフィンとのコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレン、ブタジエンとイソプレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、ブタジエンとビニル芳香族化合物とイソプレンとのターポリマー、又はこれらの組合せであるジエンエラストマーを含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項26】
前記官能性ジエンエラストマーが、アミン官能化、シラン官能化、アミノシラン官能化、メルカプトシラン官能化、ヒドロキシル官能化、カルボキシル官能化、エポキシ官能化、若しくはスズ結合され、又はそれらが組み合わせられている、請求項1〜25のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項27】
前記官能性エラストマーが、アミン官能性スチレンブタジエンゴム、シラン官能性スチレンブタジエンゴム、アミノシラン官能性スチレンブタジエンゴム、メルカプトシラン官能性スチレンブタジエンゴム、ヒドロキシル官能性スチレンブタジエンゴム、カルボキシ官能性スチレンブタジエンゴム、エポキシ官能性スチレンブタジエンゴム、スズ結合スチレンブタジエンゴム、又はこれらの混合物である、請求項1〜24のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のエラストマー組成物を含む、製造物品。
【請求項29】
タイヤ又はその構成部品である、請求項28に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー、エラストマー組成物又はコンポジット、及びそれを作製するための方法、並びにエラストマー組成物の1つ以上の性質を改善するための方法に関する。より詳細には、本発明は、変性フィラー、及びこれらのフィラーのエラストマー組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラック及びその他のフィラーが、ゴム、プラスチック、紙、又は布地の用途で用いられる組成物のコンパウンド化及び作製において、顔料、フィラー、及び/又は強化剤として利用されてきた。カーボンブラック又はその他のフィラーの特性は、このような組成物の種々の性能特性を決定する際の重要な因子である。
【0003】
過去数十年にわたり、カーボンブラックの表面化学を変性するために大きな労力が払われてきた。有機基をカーボンブラックへ結合させるための有用なプロセス、及び得られた生成物の使用は、例えば、特許文献1〜7に記載されており、これらはすべて、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、特許文献1は、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)、アクロニトリル及びブタジエンの部分水素化コポリマー(HNBR)、又はブチルゴム組成物に用いることができる、式 〜Ar〜S〜Ar’〜又は〜Ar〜S〜Ar’’〜(式中、Ar及びAr’は、アリーレン基であり、Ar’’は、アリール基であり、nは、1から8である)の有機基が結合されたカーボンブラック生成物を開示している。
【0004】
エラストマー組成物の重要な用途は、タイヤの製造に関連し、最終製品又はその構成部品に特定の特性を付与するために、追加の成分が添加されることが多い。例えば、特許文献8には、タイヤ構成部品用のシリカ強化ゴム組成物において、ヒステリシスを悪化させることなく、硬化速度、硬化効率、硬度、静的及び動的弾性率を改善するために、ベンゾトリアゾール又はトリルトリアゾールを用いることが記載されている。これらの組成物は、ゴム100部に対して、約2から約35部のトリアゾール(好ましくは、約2から約6部のトリアゾール)を含む。いくつかの場合では、真鍮粉末及び導電性カーボンブラックも添加され、この組成物は、一工程又は複数工程にて、従来の手段で混合される。
【0005】
特許文献9は、カーボンブラック、グラファイト粉末、グラファイトファイバー、カーボンファイバー、カーボンフィブリル、カーボンナノチューブ、カーボンファブリック、ガラス状カーボン生成物、及び活性炭素の、トリアゼン変性剤との反応による処理に関する。得られたカーボンは、ゴム、プラスチック、印刷インク、インク、インクジェットインク、ラッカー、トナー及び着色剤、ビチュメン、コンクリート、その他の建築材料、並びに紙に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,559,169号明細書
【特許文献2】米国特許第5,900,029号明細書
【特許文献3】米国特許第5,851,280号明細書
【特許文献4】米国特許第6,042,643号明細書
【特許文献5】米国特許第6,494,946号明細書
【特許文献6】米国特許第6,740,151号明細書
【特許文献7】米国特許第7,294,185号明細書
【特許文献8】米国特許第6,014,998号明細書
【特許文献9】米国特許第6,758,891号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記で述べたように、フィラーは、エラストマー組成物を含む様々な材料に強化という利点を提供することができる。従来のフィラーの属性に加えて、1つ以上のエラストマー特性、特にヒステリシス及び/又は耐摩耗性を改善することができるフィラーの提供が望まれている。しかし、これまで、フィラーを用いたいくつかのエラストマー組成物では、フィラーは通常、1つの特性を改善することができるが、他の特性が犠牲になってしまう。例えば、ヒステリシスが改善され得る一方、耐摩耗性が低下するか、改善されない場合がある。したがって、好ましくは、これらの特性の1つを、他の特性を大きく悪化させることなく、向上することができるフィラーを提供することが求められている。さらにより好ましいのは、両方の特性を改善することができる、すなわち、ヒステリシスを改善し、耐摩耗性も改善することができるフィラーである。
【0008】
本発明の特徴は、1つ以上の有益な特性を高める新しい種類のフィラーを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる特徴は、エラストマー組成物において、存在する場合に、ヒステリシスを改善する能力を有することができるフィラーを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる特徴は、エラストマー組成物において、存在する場合に、耐摩耗性を改善する能力を有することができるフィラーを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、エラストマー組成物において、ヒステリシス及び耐摩耗性に関する性質のバランスを達成するための方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び利点は、本明細書に一部示されており、一部は本明細書から明らかであるか、又は本発明の実践から習得することができる。本発明の特徴及びその他の利点は、本明細書及び添付の請求項にて特に指摘される要素及び組み合わせにより、理解され、達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの利点及びその他の利点を達成するために、かつ本発明の目的に従って、本明細書にて具体的に表現され、広く記述されるように、本発明は、変性カーボンブラック、変性金属酸化物、炭素相及びケイ素含有種相を有する変性フィラーなどの変性フィラーに関する。変性フィラーは、少なくとも1つのトリアゾール、又は少なくとも1つのピラゾール、又はこれらのいずれかの組み合わせがその上に吸着されたフィラーであってよい。より具体的な式及び例は提供される。
【0014】
この変性フィラーは、所望に応じて、少なくとも1つのアルキル基及び/又は芳香族基を含む有機基を例とする有機基などの少なくとも1つの化学基が結合されていてよい。アルキル基及び/又は芳香族基は、フィラーに直接結合されていてよい。化学基は、フィラー上に吸着された基と同一であっても、類似であっても、異なっていてもよい。結合された化学基は、少なくとも1つのトリアゾール、又は少なくとも1つのピラゾール、又は少なくとも1つのイミダゾール、又はこれらのいずれかの組み合わせであってよいか、又はそれらを含んでいてよい。
【0015】
本発明はまた、その上に少なくとも1つのトリアゾールが結合された、変性カーボンブラック又は変性金属酸化物などの変性フィラーにも関する。
【0016】
本発明はさらに、本発明のいずれかの1つ以上の変性フィラー及び少なくとも1つの官能性エラストマーを含有するエラストマー組成物、並びにそれを作製するための方法にも関する。
【0017】
本発明はさらに、本発明の1つ以上の変性フィラー、及び/又は本発明の1つ以上のエラストマー組成物若しくはポリマー組成物から作製されるか、又はそれを含有する物品にも関し、タイヤ又はその部品、並びにその他のエラストマー及び/又はポリマー物品などである。
【0018】
本発明はさらに、本発明の1つ以上の変性フィラーをエラストマー組成物中に組み込むことによる、タイヤ又はその部品などのエラストマー組成物におけるヒステリシス及び/又は耐摩耗性を改善するための方法にも関する。
【0019】
前述の概略的な記述、及び以下の詳細な記述はいずれも、単に代表的及び説明的なものであり、請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図していることは理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、変性フィラー、変性フィラー及び官能性エラストマーを含有するエラストマー組成物、変性フィラー又はエラストマー若しくはその他のポリマー組成物から作製されるか、又はそれを含有する物品、それを作製するための方法、並びにヒステリシス及び/又は耐摩耗性を含むがこれらに限定されないエラストマー特性を改善する方法に関する。
【0021】
より詳細には、本発明は、一部分において、(a)1,2,4トリアゾールなどの少なくとも1つのトリアゾール;(b)少なくとも1つのピラゾール;又はこれらのいずれかの組み合わせがその上に吸着されたフィラーであるか、又はそのフィラーを含むものである変性フィラーに関する。変性フィラーは、好ましくは、エラストマー組成物中に存在する場合、変性されていない同じフィラーと比較して(すなわち、未処理又は未変性フィラーと比較して)、耐摩耗性を改善する。この試験パラメータを確認するために用いられるエラストマー組成物は、例で用いられるエラストマー組成物の1つであってよい。
【0022】
本発明はまた、一部分において:
a)いずれかの他の芳香族基の存在下、又は非存在下での、硫黄含有又は複数硫黄含有置換基を有する少なくとも1つの1,2,4トリアゾールなどの少なくとも1つのトリアゾール;又は、
b)いずれかの他の芳香族基の存在下、又は非存在下での、硫黄含有置換基を有する少なくとも1つのピラゾール、又はこれらのいずれかの組み合わせがその上に吸着されたフィラーであるか、又はそれを含むものである変性フィラーにも関する。ここでも、好ましくは、変性フィラーは、エラストマー組成物中に存在する場合、変性されていないフィラーと比較して、耐摩耗性を改善する。ここでも、この試験特性を確認するために、例で用いられるエラストマー成物の1つを用いてよい。
【0023】
本発明の目的のために、(a)及び/又は(b)の吸着とは、吸着化学基が、フィラーの表面に化学的に結合しておらず、ソックスレー抽出などの溶媒抽出によって表面から除去可能であることを意味する。例えば、フィラー上に吸着された化学基は、メタノール又はエタノール中16〜18時間で行うことができるソックスレー抽出によって除去することができ、ここで、この抽出により、すべての、又はほとんどすべての、又は実質的にすべての化学基が除去される。抽出は、1回以上繰り返してよい。吸着基の残基がフィラーの表面上に残留し得ることも考えられる。本発明の目的のために、本明細書で述べるように、溶媒による抽出は、吸着化学基の少なくとも80重量%を、一般的には、吸着化学基の少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%を除去することができる。これは、抽出及び未抽出サンプルの元素分析によって測定することができる。
【0024】
本発明の目的のために、トリアゾールは、トリアゾール含有基を有する化学基を含む。トリアゾールは、1,2,4トリアゾール又は1,2,3トリアゾールであってよい。トリアゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリトリアゾールであってよい。1,2,4トリアゾール又は1,2,4マゾール(1,2,4 Mazole)含有基が、吸着化学基として好ましい。トリアゾールの例としては、以下の式:
【化1】
若しくは
【化2】
を有するトリアゾール(若しくはその互変異性体)、又は、以下の式:
【化3】
若しくは
【化4】
を有するトリアゾール(若しくはその互変異性体)が挙げられ、
式中、Zは、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、同一又は異なっていて、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Yは、H又はNHであり;
Aは、官能基であり、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)であってよいか、又はこれらを含んでよく;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びRは、同一であっても又は異なっていてもよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;かつ
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である。SRは、SHであってよい。SRについて、RがHでない場合、kは、2から8であり、RがHである場合、kは1から8であり;
Eは、S(ここで、wは2から8である)、SSO、SSO、SOSO、SOSOなどの複数硫黄含有基(polysulfur−containing group)であり;かつ
トリアゾールは、所望に応じて、NDD’置換基によってN置換されていてよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである。
【0025】
トリアゾールのより具体的な例としては、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル‐ジスルフィド;1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール;1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル‐ジスルフィド;3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル‐トリスルフィド;4‐アミノ‐3‐ヒドラジノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の目的のために、ピラゾールは、ピラゾール含有基を有する化学種を含む。ピラゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリピラゾールであってよい。ピラゾールの例としては、以下の式:
【化5】
を有するピラゾール(若しくはその互変異性体)、又は、以下の式:
【化6】
を有するピラゾール(若しくはその互変異性体)を挙げることができ、
式中、Zは、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
X及びYは、独立して、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH,CONR、CN、CH、OH、NDD’、若しくはCFであるか、又はYは、Rであってよく、ここで、X及びYの各々は、同一又は異なっており;
Aは、官能基であり、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)であってよいか、又はこれらを含んでよく;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一であっても又は異なっていてもよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;kは、1から8の整数であり;かつQは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である。SRは、SHであってよい。SRについて、RがHでない場合、kは、2から8であり、RがHである場合、kは1から8である。Eは、S(ここで、wは2から8である)、SSO、SSO、SOSO、又はSOSOなどの複数硫黄含有基であり;かつ
D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである。
【0027】
ピラゾールのより具体的な例としては、ピラゾール‐3‐チオール、ピラゾール‐3‐イルジスルフィド、及び/又は3‐メチル‐ピラゾール‐5‐チオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で示される式のいずれについても、置換基Aに関して、より具体的な例としては、SH;Arがトリアゾール若しくはピラゾールであるAr、又はArが異なるヘテロ環であるSSArが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
述べたように、フィラー上又はフィラーの表面上に吸着されてこの種類の変性フィラーを作り出す化学基は、単一の化学基であっても、又は2つ以上の異なる種類の化学基であってもよい。1つ以上の異なる種類のトリアゾールが存在してよく、及び/若しくは1つ以上の異なる種類のピラゾールが存在してよく、又は1つ以上のピラゾールと共に1つ以上のトリアゾールなどのこれらのいずれかの組み合わせであってもよい。加えて、選択肢として、トリアゾール及び/又はピラゾール以外のその他の化学基も、吸着化学基としてフィラー上に追加的に存在してもよい。
【0030】
吸着化学基は、フィラーの露出表面の表面領域上全体に、若しくは実質的に全体にあって、変性フィラーを形成してよく、又はこれより少ない量であってもよい。例えば、吸着化学基は、フィラー表面の表面領域の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、若しくは約100%、又はフィラーの表面上の表面領域の100%を占めていてよい。
【0031】
(1若しくは複数の)吸着化学基の量は、フィラー上におけるいずれの量であってもよい。例えば、吸着化学基の総量は、窒素吸着(BET法)で測定した場合、フィラー表面積(m)あたり約0.01から約10マイクロモルのヘテロ環基であってよく、約1から約8マイクロモル/m、約2から約6マイクロモル/m、又は約3から約5マイクロモル/mを含む。
【0032】
(1若しくは複数の)吸着化学基及び/又は結合化学基を受けるフィラーは、本明細書で述べるように、従来のいずれのフィラーであってもよい。フィラーは、微粒子フィラーである。例えば、フィラーは、1種類以上のカーボンブラック、1種類以上の金属酸化物若しくは金属含有フィラー(例:ケイ素、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジウム、鉛、バリウム、セシウム、及び/若しくはモリブデンの、又はそれらを含有する、酸化物又はフィラー)、又は少なくとも1つの炭素相及び少なくとも1つの金属含有種相又はケイ素含有種相(ケイ素処理カーボンブラックとしても知られる)を含む多相凝集体などの1種類以上のその他の炭素含有フィラーであってよい。フィラーは、シリカコーティングカーボンブラック、酸化カーボンブラック、スルホン化カーボンブラック、又は有機基などの1つ以上の化学基が結合されたフィラーであってよい。カーボンブラックに関して、カーボンブラックは、ASTM‐100からASTM‐1000タイプのカーボンブラックなどのいずれのASTM‐タイプのカーボンブラックであってもよい。フィラーは、強化グレードのフィラー、タイヤグレードのフィラー、又はゴムグレードのフィラーの1種類以上であってよく、タイヤグレードのカーボンブラック又はゴムグレードのカーボンブラックなどである。フィラーのその他の例としては、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、シリケートなどが挙げられる。
【0033】
フィラーは、ファイバー、ナノチューブ、グラフェンなどのいずれの炭素含有フィラーであってもよい。
【0034】
カーボンブラックなどのフィラー又は強化剤は、キャボットコーポレーション、デグサ又はエボニックコーポレーションなどから提供されるものなど、市販のカーボンブラック及び/又はシリカのいずれであってもよい。本発明の(1若しくは複数の)変性フィラーの形成に用いることができるカーボンブラック、シリカ、又はその他のフィラーの種類に対して決定的なものはまったく存在しない。したがって、カーボンブラック及び/又はシリカなどのフィラーは、いかなる物理的、分析的、及び/又は形態学的特性を有していてもよい。適切なカーボンブラックの例としては、本明細書で列挙されるもの、並びに非導電性又は導電性ファーネスブラック、キャボットのBlack Pearls(登録商標)カーボンブラック、キャボットのVulcan(登録商標)カーボンブラック、キャボットのSterling(登録商標)カーボンブラック、キャボットのRegal(登録商標)カーボンブラック、キャボットのSpheron(登録商標)カーボンブラック、キャボットのMonarch(登録商標)カーボンブラック、キャボットのElftex(登録商標)カーボンブラック、キャボットのEmperor(登録商標)カーボンブラック、キャボットのIRX(商標)カーボンブラック、キャボットのMogul(登録商標)カーボンブラック、キャボットのCRX(商標)カーボンブラック、キャボットのCSX(商標)カーボンブラック、キャボットのEcoblack(商標)カーボンブラック、デグサのCK‐3カーボンブラック、デグサのCorax(登録商標)カーボンブラック、デグサのDurex(登録商標)カーボンブラック、デグサのEcoraxカーボンブラック、デグサのPrintex(登録商標)カーボンブラック、デグサのPurex(登録商標)カーボンブラックが挙げられる。その他の例としては、ランプブラック、有機基などの(1若しくは複数の)化学基が結合されたカーボンブラック、ケイ素処理カーボンブラック、金属処理カーボンブラック、シリカコーティングカーボンブラック、化学処理(例:界面活性剤処理)カーボンブラック、及びいずれかのグレードのカーボンブラック又はシリカが挙げられる。
【0035】
カーボンブラックは、以下の特性の1つ以上を有し得る。CTAB表面積は、10m/gから400m/gであってよく、20m/gから250m/g、又は50m/gから150m/gなどである。ヨウ素価は、10m/gから1000m/g、20m/gから400m/g、又は20から300m/g、又は50m/g、及び150m/gであってよい。DBPAは、20mL/100gから300mL/100gであってよく、30mL/100gから200mL/100g、又は50mL/100gから150mL/100gなどである。多くの適切なカーボンブラック出発物質が市販されている。市販のカーボンブラックの代表的な例としては、Regal(登録商標)、Sterling(登録商標)、及びVulcan(登録商標)の商品名でキャボットコーポレーションから市販されているカーボンブラックが挙げられる(Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)300、Regal(登録商標)90、Regal(登録商標)85、Regal(登録商標)80、Sterling(登録商標)SO、Sterling(登録商標)SO‐1、Sterling(登録商標)V、Sterling(登録商標)VH、Sterling(登録商標)NS‐1、Vulcan(登録商標)10H、Vulcan(登録商標)9、Vulcan(登録商標)7H、Vulcan(登録商標)6、Vulcan(登録商標)6LM、Vulcan(登録商標)3、Vulcan(登録商標)M、Vulcan(登録商標)3H、Vulcan(登録商標)P、Vulcan(登録商標)K、Vulcan(登録商標)J、及びVulcan(登録商標)XC72など)。他の供給業者から入手可能であるカーボンブラックを用いてもよい。出発カーボン品は、炭素相、及び酸化又は炭化金属を例とする第二相を含む二相粒子であってよい。
【0036】
カーボンブラックなどのフィラーは、低PAH量を有していてよい。カーボンブラックは、カーボンブラックが低PAH量を有するように形成してよく、又は、市販のカーボンブラックは、低PAH量を有するカーボンブラックが形成されるように、PAHを除去するために適切に処理されてよい。本発明のカーボンブラックは、例えば、ヨウ素吸収量、DBPA、粉砕後DBPA、CTAB、窒素表面積、STSA、及び/又は着色力などに関するいずれかの標準ASTMカーボンブラック規格と共に、低PAH量を有していてよい。カーボンブラックは、ASTM規格カーボンブラックであってよく、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、及び/又はN990カーボンブラックなどであり、これらは、特定のN‐シリーズカーボンブラックに対するASTM規格の特性を有する。カーボンブラックは、20m/gから150m/g、又はそれ以上の範囲のSTSAを有してよい。カーボンブラックは、低PAH量を有するいかなるASTMグレードカーボンブラックであってもよく、N110 ASTMカーボンブラックからN990 ASTMカーボンブラックなどであり、より好ましくは、N110からN500 ASTMカーボンブラックである。いかなる市販グレードのカーボンブラックも、低PAH量を有するように形成されていてよく、及び/又は本発明に基づいて低PAH量を有するように続いて処理されてよい。
【0037】
本発明の目的のために、低PAH量は、低PAH22を含むか、又はこれによって定められる。上述のように、PAH22は、米国特許出願公開第2008/159947号の図1に示されるPAHの尺度である。本発明の目的のために、低PAH量は、低PAH22によって定められてよい。適切な量の例としては、カーボンブラック中に存在するPAH22の量に関して、500ppm以下、400ppm以下、300ppm以下、200ppm以下、150ppm以下、125ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、50ppm以下、25ppm以下が挙げられる。適切な範囲としては、カーボンブラック中に存在するPAH22の総量に関して、約1ppmから約500ppm、5ppmから500ppm、15ppmから500ppm、5ppmから50ppm、5ppmから100ppm、1ppmから100ppm、又は1ppmから30ppmが挙げられる。上記で提供される範囲又は量のいずれについても、下限は、0.1ppm、1ppm、2ppm、5ppm、10ppm、又は15ppmであってよい。範囲は、厳密なものであっても、又はおおよそのもの(例:「約1ppm」など)であってもよい。ppm範囲は、すべての、又はいずれの数のPAHに対しても適用され得る(例:すべてのPAH、又はPAHの1つ以上)。本発明の目的のために、PAH22は、ベンゾ(j)フルオラントレン(Benzo(j)fluoranthrene)を除いて、米国特許出願公開第2008/159947号の図1にて識別されるPAHの尺度である。また、PAH8は、本発明の目的のために、ベンゾ(a)アントラセン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(e)ピレン、ベンゾ(b)フルオラントレン、ベンゾQフルオラントレン、ベンゾ(k)フルオラントレン、クリセン、及びジベンゾ(a,h)アントラセンの尺度である。BaPは、ベンゾ(a)ピレンを意味する。
【0038】
本発明のカーボンブラックは、約0.15から約2マイクログラム/mのPAH含有量を有してよく、0.2から1.5マイクログラム/m、又は0.3から1.25マイクログラム/m、又は0.4から1.0マイクログラム/mなどである。
【0039】
一般的に、カーボンブラックは、ファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、プラズマブラック、ケイ素含有種及び/又は金属含有種を含有するカーボン生成物などであってよい。カーボンブラックは、ショートクエンチ(short quench)又はロングクエンチ(long quench)ブラックであってよい。
【0040】
本発明の目的のために、ショートクエンチカーボンブラックを用いてよく、これは、熱分解からの形成後にカーボンブラックがショートクエンチに付されてカーボンブラック形成反応が停止されるプロセスによって形成されたカーボンブラックであると考えることができる。ショートクエンチは、CBトルエン着色度(ASTM D1618に従って試験)の値が95%以下となることを確実にするファーネスカーボンブラック製造プロセスのパラメータである。ショートクエンチカーボンブラックの例としては、Vulcan(登録商標)7H カーボンブラック、Vulcan(登録商標)J カーボンブラック、Vulcan(登録商標)10H カーボンブラック、Vulcan(登録商標)10 カーボンブラック、Vulcan(登録商標)K カーボンブラック、Vulcan(登録商標)M カーボンブラック、及びN‐121 カーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されない。ショートクエンチカーボンブラックは、ファーネスカーボンブラックであってよい。ショートクエンチカーボンブラックは、Nil 0からN798 ASTMのカーボンブラックであってよい。ショートクエンチカーボンブラックは、PAH含有量、STSA、INo(mg/g)/STSA(m/g)比、DBPなどに関して、上述のパラメータのいずれを有していてもよい。
【0041】
カーボンブラックは、酸化剤を用いて予め酸化されたカーボンブラックなどの酸化カーボンブラックであってよい。酸化剤としては、空気、酸素ガス、オゾン、NO(NOと空気との混合物を含む)、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム、カリウム、若しくはアンモニウムを含む過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、若しくは過ハロゲン酸塩(亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、若しくは過塩素酸ナトリウムなど)、硝酸などの酸化酸、及び過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、若しくは硝酸セリウムアンモニウムなどの遷移金属含有酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤の混合物、特に、酸素及びオゾンなどの気体酸化剤の混合物を用いてよい。加えて、塩素化及びスルホン化など、その他の表面修飾法を用いて、顔料表面上にイオン性若しくはイオン化可能基を導入して作製されたカーボンブラックも用いてよい。予め酸化されたカーボンブラックの作製に用いてよいプロセスは、本技術分野にて公知であり、いくつかの種類の酸化カーボンブラックが市販されている。
【0042】
ケイ素処理カーボンブラック及びその製造法に関する詳細は、例えば、いずれもその全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,830,930号;同第5,877,238号;同第6,028,137号;及び同第6,323,273B1号に提供されている。
【0043】
シリカコーティングカーボンブラックも、出発物質として適している。そのようなカーボンブラックは、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,197,274B1号に記載されている。
【0044】
ケイ素処理カーボンブラックは、例えば、硝酸及びオゾンなどの酸化剤で酸化されてよく、並びに/又は、例えば米国特許第6,323,273B1号に記載のようなカップリング剤と組み合わされてもよい。
【0045】
金属酸化物に関して、金属酸化物は、アルミナ、アルミニウム含有フィラー、酸化亜鉛、亜鉛含有フィラー、ヒュームドシリカ若しくは沈降シリカなどのシリカ又はシリカ含有フィラーであってよい。シリカは、分散シリカであってよく、それは、この用語がエラストマーで用いられるからである。より具体的な例としては、Z1 165シリカ、ローディア(ローヌ‐プーラン)のZeosil(登録商標)HDS、エボニックインダストリー(デグサ)のUltrasil(登録商標)5000 GR及び7000 GR、並びにPPGのHi‐Sil 223、Agilon 400、及びCiptane(商標)シリカが挙げられる。シリカなどの金属酸化物は、100m/gから240m/gのCTAB、及び/若しくは100から240m/gのBET;並びに/又は少なくとも2.5cm/gの全細孔体積及び/若しくは150mL/100gから400mL/100gのDOPオイル吸着量を有していてよい。
【0046】
本発明の目的のために、シリカ含有フィラーは、フィラーの重量パーセントに基づいて、少なくとも0.1重量%のシリカ含有量を有するいかなるフィラーも含む。シリカ含有フィラーが含有するシリカの重量パーセントは、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも7.5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも17.5重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は0.1重量%から100重量%、2重量%から100重量%、5重量%から99重量%、10重量%から90重量%、15重量%から90重量%、15重量%から50重量%、15重量%から35重量%、又は50重量%以下、及びその他のいずれの重量パーセントであってもよく、重量パーセントはすべて、シリカ含有フィラーの総重量に基づいている。シリカ含有フィラーは、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、シリカコーティングカーボンブラック、及び/又はケイ素処理カーボンブラックであってよいか、又はそれらを含んでよい。シリカ含有フィラーのいずいれも、有機基が結合されるなどの化学基が結合されるなど、化学的に官能化されてよい。シリカ含有フィラーのいかなる組み合わせを用いてもよい。さらに、(1若しくは複数の)シリカ含有フィラーを、選択肢として、(1若しくは複数の)カーボンブラックなどのいかなるシリカ非含有フィラーと組み合わせて用いてもよい。
【0047】
ケイ素処理カーボンブラックにおいて、ケイ素の酸化物又は炭化物などのケイ素含有種は、カーボンブラックの固有部分として、カーボンブラック凝集体の少なくとも一部を通して分布される。従来のカーボンブラックは、凝集体の形態で存在し、各凝集体は、炭素である単相から成っている。この相は、グラファイト微結晶及び/又はアモルファス炭素の形態で存在し得るものであり、通常は、この2つの形態が混在している。カーボンブラック凝集体は、シリカなどのケイ素含有種をカーボンブラック凝集体表面の少なくとも一部に堆積させることによって変性され得る。得られたものは、ケイ素コーティングカーボンブラックと記述され得る。
【0048】
本明細書にてケイ素処理カーボンブラックとして記述される物質は、コーティング又はそれ以外で変性されたカーボンブラック凝集体ではなく、実際は、2つの相を有する異なる種類の凝集体を表す。1つの相は炭素であり、さらにグラファイト微結晶及び/又はアモルファス炭素として存在し、一方第二の相は、シリカ(及び可能性として、その他のケイ素含有種)である。したがって、ケイ素処理カーボンブラックのケイ素含有種相は、凝集体の固有部分であり;凝集体の少なくとも一部の全体に分布している。種々のケイ素処理ブラックが、キャボットコーポレーションより、Ecoblack(商標)CRX2125及びCRX4210の商品名で市販されている。上述のシリカコーティングカーボンブラックは、その表面にケイ素含有種が堆積した予め形成された単相カーボンブラック凝集体から成るものであり、多相凝集体はそれとは非常に異なるものであることは理解される。そのようなカーボンブラックは、例えば米国特許第6,929,783号に記載のように、カーボンブラック凝集体の表面にシリカ官能基を配置するために、表面処理が施され得る。
【0049】
ケイ素処理カーボンブラックは、主としてカーボンブラックの凝集体表面にケイ素含有領域を含みながらも、それでもカーボンブラックの一部分であってよく、及び/又は、ケイ素処理カーボンブラックは、カーボンブラック凝集体全体に分布したケイ素含有領域を含んでもよい。ケイ素処理カーボンブラックは、酸化されてよい。ケイ素処理カーボンブラックは、ケイ素処理カーボンブラックの重量に基づいて、約0.1重量%から約50重量%のケイ素を含有してよい。これらの量は、約0.5重量%から約25重量%、又は約2重量%から約15重量%のケイ素であってよく、すべてケイ素処理カーボンブラックの重量に基づいている。
【0050】
(1若しくは複数の)吸着化学基を有する変性フィラーを形成するためのプロセスに関して、従来のいずれの吸着技術を用いてもよい。例えば、この種類の変性フィラーを形成するためにフィラー上又はフィラー表面上に所望される化学基は、適切な溶媒に溶解されて、フィラー表面に適用されてよく、ここで、続いて溶媒が、蒸発法などによって除去されてよい。別の選択肢として、変性フィラーを形成するためにフィラー表面上に吸着されるべき化学種は、溶融されてもよい。フィラーとフィラー表面上に吸着されるべき化学種との接触は、いかなる方法で行ってもよく、スプレーコーティング法などがある。フィラー上に吸着されるべき化学溶液は、ピンペレタイザー中にて一緒に混合されてよく、次に溶媒が蒸発されてよい。
【0051】
また、選択肢として、本明細書で述べる吸着化学基を有する変性フィラーは、所望に応じて、1つ以上の化学基の結合を含んでいてもよい。
【0052】
本発明の目的のために、1つ以上の化学基の結合とは、化学基が、フィラー表面上に吸着されるのではなく、吸着化学種を除去する目的で前述した抽出プロセスによって除去できないか、又は実質的に除去できないことを意味する。少なくとも1つの化学基の結合は、一般的に、共有結合によるなどの化学結合によるものである。
【0053】
化学基は、少なくとも1つの有機基であってよい。有機基は、アルキル基及び/又は芳香族基を含んでよいか、又はそれらであってよい。より具体的な例としては、C1−20アルキル基又はC6−18芳香族基が挙げられ、C1−12アルキル基又は(1若しくは複数の)C‐C12芳香族基などである。結合基の例としては、本明細書で述べる置換基Aと同じであってよい1つ以上の官能基を有するアルキル又は芳香族基を挙げることができる。アルキル基及び/又は芳香族基は、フィラーと直接結合していてよい。
【0054】
1つ以上の化学基をフィラー上に結合させてこの種類の変性フィラーを形成するための方法は、ジアゾニウム反応を含む、フィラー粒子へ化学基を結合させるための公知のいかなる結合機構を含んでもよい。
【0055】
結合化学基を有する変性フィラーは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,554,739号;同第5,707,432号;同第5,837,045号;同第5,851,280号;同第5,885,335号;同第5,895,522号;同第5,900,029号;同第5,922,118号;同第6,042,643号;同第6,398,858号;同第7,175,946号;同第6,471,763号;同第6,780,389号;同第7,217,405号;同第5,859,120号;及び同第6,290,767号;米国特許出願公開第2003‐0129529 A1号;同第2002‐0020318号;同第2002‐0011185 A1号;及び同第2006‐0084751 A1号、並びにPCT国際出願第99/23174号に記載の方法を用い、適合させることで作製することができる。これらの参考文献は、一部、顔料へ官能基を結合させるためのジアゾニウム化学の使用について記載している。単なる一例として、これらのプロセスは、本発明の変性フィラー(結合化学基を有する)の形成に適合され、使用された。
【0056】
アミノ型のトリアゾール、ピラゾール、及び/又はイミダゾールを用いてよく(例えば、本明細書の実施例のセクションに提供される)、そして、例えば上記の特許に記載のようなジアゾニウム反応を用いてこれらをフィラー上に結合させ、有機基などの、並びに結合された少なくとも1つのトリアゾール基、ピラゾール基、及び/又はイミダゾール基などの結合化学基を有するこの型の変性フィラーを形成してよい。結合されたトリアゾール、ピラゾール、及び/又はイミダゾール基は、別の型の変性フィラーの場合について以下でさらに例示され、ここでも適用可能であろう。
【0057】
変性フィラー(結合化学基を有する)は、当業者に公知である化学基を結合させるためのいかなる方法を用いて作製してもよい。例えば、変性フィラーは、上記で引用した特許/刊行物に記載の方法を用いて作製してよい。変性フィラーを作製するためのその他の方法としては、利用可能な官能基を有するフィラーを、有機基を含む試薬と反応させることを含み、例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,783号に記載のものなどである。そのような官能性フィラーは、上記で組み込まれる参考文献に記載の方法を用いて作製してよい。加えて、結合官能基を含有する変性フィラーはまた、各々についてその全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,831,194号及び同第6,660,075号、米国特許出願公開第2003‐0101901号及び同第2001‐0036994号、カナダ特許第2,351,162号、欧州特許第1 394 221号、及びPCT国際公開第04/63289号、並びにN. Tsubokawa, Polym. Sci., 17, 417, 1992に記載の方法によって作製してもよい。
【0058】
結合基の量は、変性フィラーの所望される用途及び結合基の種類に応じて様々であり得る。例えば、結合有機基の総量は、窒素吸着(BET法)で測定される場合、フィラー表面積(m)あたり約0.01から約6.0マイクロモルの基であってよく、約0.1から約5.0マイクロモル/m、約0.2から約3.0マイクロモル/m、又は約0.3から約2.0マイクロモル/mを含む。
【0059】
トリアゾール、ピラゾール、及び/又はイミダゾール基の例は、これらの基が、例えば化学結合によってフィラーへ結合すること以外は、上述の吸着化学基の場合と同じである。結合化学基の例を、以下に示す。
【0060】
本発明の目的のために、トリアゾールは、トリアゾール含有基を有する化学基を含む。トリアゾールは、1,2,4トリアゾール又は1,2,3トリアゾールであってよい。トリアゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリトリアゾールであってよい。1,2,4トリアゾール又は1,2,4トリアゾール含有基が、達成される特性の観点から、特にエラストマーコンポジットにおいて、吸着及び/又は結合トリアゾール化学基として好ましい。結合トリアゾールに関して、例としては、これらに限定されないが、以下のもの:
【化7】

【化8】

【化9】
、又は
その互変異性体が挙げられ、
式中、置換基は、前述のものと同じであるが、ただし、X(又はXのうちの1つ)は、結合された状態となるためのフィラーへの結合であるか、又はそれを含む。
【0061】
このトリアゾールの式中にて、
は、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、フィラーへの結合を含み、並びに残りのXのいずれも、フィラーへの結合、又は本明細書で述べる種々の置換基A及び/若しくはRなどの官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHである場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(C3/4)であり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
トリアゾールは、所望に応じて、NDD’置換基によってN置換されていてよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルであり;かつ
Yは、H、アルキル、アリール、又はNHである。
【0062】
具体的な例において、フィラーに結合した基は、5‐メルカプト‐1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基、及び/又はトリアゾールジスルフィド基、及び/又は1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基を例とするメルカプトトリアゾリル基であってよいか、又はこれを含んでよい。フィラーに結合した基は、2‐メルカプト‐1,3,4‐チアジアゾール‐5‐イル基、及び/又はチアジアゾールジスルフィド基であってよいか、又はこれを含んでよい。置換又は無置換オキサジアゾール基、並びにジアゾールを例とするその他の置換又は無置換アゾール基が、例えば直接、フィラーに結合していてよい。
【0063】
本発明の目的のために、結合ピラゾールは、ピラゾール含有基を有する化学種であるか、又はそれを含む。ピラゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリピラゾールであってよい。ピラゾールに関して、例としては、これらに限定されないが、以下のもの:
【化10】

【化11】
、又は
その互変異性体が挙げられ、
式中、置換基は、前述のものと同じであるが、ただし、X(又はXのうちの1つ)は、結合された状態となるためのフィラーへの結合であるか、又はそれを含む。
【0064】
このピラゾール式中において、
は、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのX又はYは、フィラーへの結合を含み、及びその他のX又はYのいずれも、同一又は異なっていて、フィラーへの結合、又は本明細書で述べる種々の置換基A及び/若しくはRなどの官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である。
【0065】
本発明の目的のために、結合イミダゾールは、イミダゾール含有基を有する化学種であるか、それを含む。イミダゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリイミダゾールであってよい。イミダゾールに関して、例としては、これらに限定されないが、以下のもの:
【化12】

【化13】
、又は
その互変異性体が挙げられ、
式中、置換基は、前述のものと同じであるが、ただし、X(又はXのうちの1つ)は、結合された状態となるためのフィラーへの結合であるか、又はそれを含む。
【0066】
このイミダゾールの式中にて、
は、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
各Xは、フィラーへの結合、H、アルキル(他所にて提供される例がここで適用される)、アリール(他所にて提供される例がここで適用される)、又はNHを含むが、ただし、少なくとも1つのXは、結合を含み;
Yは、H又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である。
【0067】
結合有機基は、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR‐2、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩、N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORである官能基を少なくとも有するアルキル基又は芳香族基であってよいか、又はそれらを含んでよく、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数である。
【0068】
結合有機基は、式AyAr−を有する芳香族基であってよいか、又はそれを含んでよく、式中、Arは、芳香族基であり、Aは、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩、N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORであり、ここで、R及びRは、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数であり、yは、1から芳香族基中の−CH基の総数までの整数である。
【0069】
Arは、トリアゾール基であってよいか、若しくはそれを含んでよく、Arは、ピラゾール基であってよいか、若しくはそれを含んでよく、又はArは、イミダゾール基であってよいか、若しくはそれを含んでよい。
【0070】
結合有機基は、少なくとも1つのアミノメチルフェニル基及び/若しくはカルボキシフェニルであってよいか、又はそれらを含んでよい。
【0071】
結合有機基は、X−C−S−S−C−Xであってよいか、又はそれを含んでよく、ここで、少なくとも一方のXは、フィラーへの結合であり、他方のXは、フィラーへの結合、又は本明細書で述べる置換基Aなどの官能基である。
【0072】
結合有機基は、少なくとも1つの芳香族スルフィド又はポリスルフィドであってよいか、又はそれを含んでよい。
【0073】
選択肢として、1つ以上の追加のしかし異なる化学基が、フィラー上に結合されていてよく、結合トリアゾール、結合ピラゾール、及び/又は結合イミダゾールとは異なる1つ以上の追加の化学基などである。この結合化学基は、前述の、及び/又は上述した特許文献中のいずれの結合化学基であってもよく、結合アルキル基及び/又は結合芳香族基などであり、例えば、アミノメチルフェニル、カルボキシフェニル、又はフェニルジスルフィドフェニル(C−S−S−C)である。
【0074】
本発明の目的のために、本発明の変性フィラーのさらなる型は、変性フィラーが、少なくとも1,2,4トリアゾールなど、少なくとも硫黄含有置換基を有する1,2,4トリアゾールなどの少なくとも1つのトリアゾールを、例えばその他のいずれかの芳香族基の存在下又は非存在下にて結合されて有するフィラーを含む場合である。少なくとも1つのトリアゾールなどの結合化学基を有する変性フィラーは、変性されていない同一のフィラーと比較して、エラストマー組成物中に存在する場合、ヒステリシスを改善することができる。ここでも、この試験性質を確認するために、実施例で示されるエラストマー配合物を用いてよい。本発明のさらなる変性フィラーは、以下:
【化14】

【化15】
、又は
その互変異性体を含む結合トリアゾールをその上に有するフィラーであるか、又はそれを含み:
式中、Zは、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、フィラーへの結合を含み、並びに残りのXのいずれも、フィラーへの結合、又は本明細書で述べる種々の置換基A若しくはRなどの官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CH3/4であり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
トリアゾールは、所望に応じて、NDD’置換基によってN置換されていてよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである。
この型の変性フィラーは、いずれの吸着化学基を有していても、又は有していなくてもよい。
【0075】
本明細書全体を通して、フィラー上への結合化学基に関して、化学基は、化学基からフィラーへの少なくとも1つの結合を通して結合されている。本明細書において、置換基Xは、結合を表してよいか、又は結合を含んでよい。本発明の目的のために、置換基Xは、結合、並びに、例えばフィラーへの結合を達成する目的のその他の置換基又は元素を含んでよいことは理解されたい。例えば、Xは、結合であってよいか、又は結合から成っていてよい。別の選択肢として、Xは、結合を含んでよい。例えば、Xは、リンカー基を含む結合であってよい。リンカー基は、シランリンカー基、又はシランカップリング剤由来のものであってよい。リンカー基は、Si含有基、Ti含有基、Cr含有基、及び/若しくはZr含有基、又はシリカを例とする金属酸化物フィラーなどのフィラーへの化学基の結合を促進するその他の適切なリンカー基であってよいか、又はそれを含んでよい。本発明の目的のために適合することができるそのようなリンカーの例としては、いずれもその全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,947,436号;同第5,159,009号;及び同第5,116,886号に示されているものが挙げられる。
【0076】
本発明において、本発明の変性フィラーの種々の型(吸着及び/又は結合基)について、変性フィラーの作製は、少なくとも1つのエラストマーなど、エラストマー組成物を形成するための成分などのその他の成分がフィラーに導入される前に行ってよく、行うべきである。言い換えると、本発明で用いられる(1若しくは複数の)化学基は、少なくとも1つのエラストマー、若しくは少なくとも1つのポリマー、及び/又は配合物のその他の成分との混合、又は配合、又はそれ以外での接触を行う前に、(1若しくは複数の)フィラーへ予め吸着及び/又は予め結合される。本発明者らは、少なくとも1つのエラストマー及び/又は少なくとも1つのポリマーとの配合を試みるなど、フィラーの変性をその他の成分の存在下(例:in situ)で試みる場合、本明細書によって達成される種々の特性、すなわち、ヒステリシス及び/又は耐摩耗性が、減少してしまうか、又はまったく達成されない可能性があることを見出した。
【0077】
本発明の目的のために、本発明の変性フィラーのいずれの組み合わせを用いてもよい。例えば、本明細書で述べるように、様々な型の変性フィラーについて記載してきた。例えば、本発明の変性フィラーの1つの型は、吸着基を有し、所望に応じて結合化学基も有していてよいフィラーである。本発明の別の型は、結合化学基を有し、いずれの吸着基も持たないフィラーを含む。したがって、1つの選択肢として、エラストマー配合物などの配合物は、本発明の種々の変性フィラーの組み合わせを含んでよく、例えば、1つ以上の吸着化学基を有するいくつかの変性フィラーを、結合化学基を有する1つ以上の他の変性フィラーと組み合わせて用いてよい。したがって、エラストマー又はポリマー配合物などの配合物中に、いかなる組み合わせの変性フィラーを用いてもよい。
【0078】
本発明の目的のために、変性フィラーが吸着化学基及び結合化学基を有する場合、吸着化学基のフィラー上への配置は、化学基の結合の前、結合の間、及び/若しくは結合後に行ってよく、又は、2つ以上の吸着基及び/若しくは2つ以上の結合基がフィラー上に存在する場合は、いかなる順序で行ってもよい。
【0079】
本発明は、さらに、エラストマー組成物、又はエラストマーコンポジットに関し、さらにはゴム組成物又はコンポジットも考慮される。エラストマー組成物は、少なくとも1つの官能性エラストマー及び少なくとも1つの本発明の変性フィラー、並びに所望に応じて、エラストマー配合物に用いられる1つ以上の従来の成分を含有する。2つ以上の種類の変性フィラーを用いてよい。
【0080】
代表的な官能性エラストマーとしては、これらに限定されないが、官能性ゴム又は官能性ポリマー(例:ホモポリマー、コポリマー、及び/又はターポリマー)、例えば1,3‐ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、アルキルがメチル、エチル、プロピルなどであってよい2,3‐ジアルキル‐1,3‐ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン等の官能性ゴム又は官能性ポリマーが挙げられる。官能性エラストマーは例えば官能性ジエンエラストマーになることができる。ジエンエラストマーは、基本エラストマー又はゴム材料であることができ、これらは本発明のエラストマーコンポジットの調製において官能性エラストマー成分として用いることができ、かつ官能化することができる。このジエンエラストマーは、例えばポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリイソプレン、ジエンとビニル芳香族化合物とのコポリマー、ジエンと少なくとも1つのα−オレフィンとのコポリマー、ブタジエンとイソプレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、ブタジエンとビニル芳香族化合物とイソプレンとのターポリマー、又はこれらの組合せとなることができる。(官能化されていない)基本エラストマーは、示差走査熱分析(DSC)によって測定される場合、約−120℃から約0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し得る。例としては、これらに限定されないが、溶液SBR(SSBR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム及び塩素化ゴムなどのその誘導体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエンコポリマー、並びにこれらのいずれかの油展誘導体が挙げられる。前述のいずれのもののブレンドも用いてよい。特に適する合成ゴムとしては:19部のスチレンと81部のブタジエンとのコポリマー、30部のスチレンと70部のブタジエンとのコポリマー、43部のスチレンと57部のブタジエンとのコポリマー、及び50部のスチレンと50部のブタジエンとのコポリマーなどの、約10から約70重量パーセントのスチレンと約90から約30重量パーセントのブタジエンとのコポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどの共役ジエンのポリマー及びコポリマー、並びにそのような共役ジエンと、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2‐ビニル‐ピリジン、5‐メチル‐2‐ビニルピリジン、5‐エチル‐2‐ビニルピリジン、2‐メチル‐5‐ビニルピリジン、アリル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アクリル酸及びジアルキルアクリル酸アミドなどのアルファメチレンカルボン酸並びにそのエステル及びアミドなどのそれと共重合可能であるエチレン性基含有モノマーとのコポリマーが挙げられる。基本エラストマーとして本発明での使用に適するものとしては、さらに、エチレンと、プロピレン、1‐ブテン、及び1‐ペンテンなどのその他の高級アルファオレフィンとのコポリマーである。
【0081】
官能性エラストマーは、弾性ポリマーに結合させた1若しくは複数の官能基を有するように変性させたエラストマーであってもよい。例えば、その結合は、エラストマーポリマーの構造への化学的結合であってもよい。官能基は、例えば末端端部に、かつ/又はポリマー骨格、主鎖若しくはその側鎖に吊下げて結合されても、そして/あるいはエラストマーの他のいずれかの位置に結合されてもよい。官能基は、有機基であっても、有機金属基であっても、金属基であっても、又はそのいずれかの組み合わせであってもよい。官能基には、例えばアミン基、シラン基、アミノシラン基、メルカプトシラン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、スズ結合基等、又はそれらのいずれかの組み合わせが含まれてもよい。これらのタイプの基の一以上で官能化され得るジエンエラストマーは、例えばスチレン−ブタジエンゴムであっても、又はいかなる他のジエンエラストマーであってもよい。官能性ジエンエラストマーは、アミン官能化、シラン官能化、アミノシラン官能化、メルカプトシラン官能化、ヒドロキシル官能化、カルボキシル官能化、トリアゾール官能化、エポキシ官能化、若しくはスズ結合されていてもよく、又はそれらの組み合わせのいずれかであってもよい。エラストマーは、単一のタイプの官能基で官能化されても、又は多官能性にするための異なったタイプの官能基を有していてもよい。エラストマー分子中の官能基の数は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、若しくは少なくとも4つであっても、又はそれ以上であってもよい。(コ)ポリマーラバー又はエラストマーに接着した、多官能性エラストマーのカルボキシル基、アミン基、シラン基、アミノシラン基、メルカプト基、ヒドロキシル基、若しくはエポキシ基のいずれかの含量、又はその合計量は、例えば少なくとも約0.5ミリ当量/kg(meq/kg)、約0.5〜約200meq/kgのラバー(コ)ポリマー(例えば、ジエンエラストマー)、約1〜約100meq/kgのラバー(コ)ポリマー、約2〜約50meq/kgのラバー(コ)ポリマーであっても、又は他の量であってもよい。エラストマー中の官能基の含量は、例えば電位滴定法、又は他の既知の、官能基に好適な技術によって測定され得る。
【0082】
アミン官能性エラストマーは、市販されており、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明のエラストマー配合物の官能性エラストマー成分を使用できる。アミン官能性エラストマーは、例えば、Zeon Chemical(Louisville,KY)製のBR1256Hブタジエンラバー及びStyron LLC(Berwyn,PA)製のSLR4601溶液スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)として入手可能である。
使用できるアミン官能性エラストマーとしては、例えば米国特許出願公開第2011/0048605A1号(その全体を参照により本明細書中に援用する)に示されているものが挙げられる。アミン基は、例えば、第一級アミン基、第二級アミン基であっても、又はモノマー又はラバー(コ)ポリマーと反応するか、若しくは結合する大きな有機官能基の一部を形成していてもよい。
シラン官能性エラストマーは、市販されており、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明に使用できる。使用できるシラン官能性エラストマーとしては、例えば米国特許第6,013,718号(その全体を参照により本明細書中に援用する)に示されているものが挙げられる。これらのシラン官能性ラバー配合物は、例えばオルガノシランに基づいていてもよい。
ジエンポリマーと反応できるオルガノシラン官能化剤の例は、例えば式RSiXに相当する直鎖ジハロシランであってもよく、式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なって、1〜10個の炭素原子を含むアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル又はビニル基を意味し、Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素又は臭素を意味する。ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロフェニルメチルシラン、及びジクロロビニルメチルシランは、ジハロシラン化合物として含まれてもよい。
アミノシラン官能性エラストマーは、市販されており、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明に使用できる。アミノシラン官能性エラストマーは、例えば、日本合成ゴム(JSR)社(名古屋、日本)製のHPR355溶液スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)として入手可能である。使用できるアミノシラン官能性エラストマーとしては、例えば米国特許第7,342,070B2号(その全体を参照により本明細書中に援用する)に示されているものが挙げられる。これらのアミノシラン官能性ラバー配合物は、ジオレフィンコポリマーラバーを共役させてもよい。メルカプトシラン官能性エラストマーは、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明に使用できる。
使用できるメルカプトシラン官能性エラストマーとしては、例えば米国特許出願公開第2011/0082253A1号及び同第2010/0186868A1号(その全体を参照により本明細書中に援用する)に示されているものが挙げられる。
ヒドロキシル官能性エラストマーは、市販されており、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明に使用できる。ヒドロキシル官能性エラストマーは、例えばZeon Chemical(Louisville,KY)製のNS612及びNS616溶液スチレン−ブタジエンゴム(SSBRs)として入手可能である。
カルボキシル官能性エラストマーは、市販されており、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明に使用できる。カルボキシル基又はカルボキシル基は、少なくとも1つの−COOH構造を含んでいる基を指し得る。カルボキシル官能性エラストマーは、例えばLanxess(Orange、TX)製のVP PBR4003溶液スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)として入手可能である。
使用できるカルボキシル官能性エラストマーとしては、例えば米国特許第7,396,870B2号(その全体を参照により本明細書中に援用する)に示されているものが挙げられる。エポキシ官能性エラストマーは、市販されており、当該技術分野で知られていて、そしてそれは、本発明に使用できる。
エポキシ基又はエポキシ基は、少なくとも1つのオキシラン又はエトキシリン基を含んでいる基を指し得る。エポキシ化天然ゴムが使用されてもよく、例えば、それは、約5モル%〜約60モル%、又は約20〜約55モル%、あるいは、他の値のエポキシ化度を有する。
エポキシ官能性エラストマーは、例えば、Mardec Berhad製のEkoprena 25 ENR等のENR25ゴム(25モル%のエポキシ化天然ゴム)として市販されている。使用できるエポキシ官能性エラストマーとしては、例えば米国特許第6,969,739B2号(その全体を参照により本明細書中に援用する)に示されているものが挙げられる。
エラストマーは、スズカップリング試薬等の金属カップリング試薬を用いて官能化されてもよい。スズカップリング試薬を用いて官能化されたエラストマーは、例えば、Firestone Polymers(Akron OH)製のDuradene(商標)M739ポリマー、及びZeon Chemical(Louisville,KY)製のNS−116Rとして入手可能である。官能性ジエンエラストマー等の官能性エラストマーを製造するための方法は、公知であり、上記の援用特許文献に示されているもの等の方法を含んでもよい。
使用できる官能性エラストマーの他の例としては、米国特許第7,836,928号及び同第7,754,819号(共にその全体を参照により本明細書中に援用する)に説明されているものが挙げられる。また、官能性エラストマーは、ホモポリマーであっても、コポリマーであっても、又はターポリマーであってもよい。
【0083】
(鎖の間、かつ/又は末端に機能を有し得る)本発明による官能性ジエンエラストマーは、配合物中でそれら自体で使用されても、又は天然ゴム若しくは天然ゴムと合成エラストマーに基づく混合物等のタイヤで慣習的に使用されるもの等の他のいずれかのエラストマーと混ぜ合わせて使用されても、あるいは、鎖に沿って異なった機能により、場合により部分的に又は完全に官能化され得る別のジエンエラストマーと共に使用されてもよい。
エラストマー配合物のための本明細書中に示した変性フィラーの添加量が、官能性エラストマーを使用した配合物に適用される。以下でさらに言及されるように、官能性ラバー配合物は、官能性エラストマー及びフィラー、並びにカップリング試薬に加えて、種々の加工助剤、エキステンダーオイル、老化防止剤、及び/又は他の添加剤を含んでいてもよい。
【0084】
選択肢として、連続フィードされるラテックス、及びカーボンブラックスラリーなどのフィラーは、凝集タンク内に導入され、攪拌されてよい。これは、「湿式混合」法としても知られる。ラテックス及びフィラースラリーは、凝集タンク内で混合及び凝集されて、「ウェットクラム(wet crumb)」と称される小ビーズとされてよい。米国特許第4,029,633号;同第3,048,559号;同第6,048,923号;同第6,929,783号;同第6,908,961号;同第4,271,213号;同第5,753,742号;及び同第6,521,691号に記載の種々のプロセス及び技術を、フィラーとエラストマーとのこの組み合わせ、及びラテックスの凝集に用いてよい。これらの特許文献の各々は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の変性フィラーが用いられること以外はこれらの特許文献及びプロセスで述べられる種々の技術、配合物、並びにその他のパラメータを用いることで、この種のエラストマー配合物を本発明の変性フィラーと共に用いることができる。
【0085】
代表的な天然ゴムラテックスとしては、これらに限定されないが、フィールドラテックス、ラテックス濃縮物(例えば、蒸発、遠心分離、又はクリーミングによって作製される)、スキムラテックス(例:遠心分離によるラテックス濃縮物作製後に残された上清)、及びこれらのいずれかの2つ以上のいずれかの割合でのブレンドが挙げられる。ラテックスは、選択された湿式マスターバッチプロセス(wet masterbatch process)、及び意図する目的又は最終ゴム製品の用途に対して適切なものであるべきである。ラテックスは、通常、水性キャリア液体中にて提供される。適切なラテックス又はラテックスブレンドの選択は、本開示の有益性、及び本業界にて一般的に十分に認識されている選択基準の知識が与えられる場合、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0086】
エラストマーコンポジットは、少なくとも約40phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、少なくとも約65phr、若しくは少なくとも約70phrのカーボンブラック、例えば、約40から約70phr、約50から約75phr、約55から約80phr、60から約85phr、65から約90phr、70から約90phr、40から約60phr、50と約65phrとの間、55から約80phr、約60から約90phr、約65から約80phr、若しくは約70から約80phr、のフィラー充填量で作製されてよい。
【0087】
1つ以上のカップリング剤を本発明で用いてよい。カップリング剤は、1つ以上のシランカップリング剤、1つ以上のジルコネートカップリング剤、1つ以上のチタネートカップリング剤、1つ以上のニトロカップリング剤、又はこれらのいずれかの組み合わせであってよいか、又はそれを含んでよい。カップリング剤は、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(例:エボニックインダストリーからのSi 69、ストラクトール社(Struktol Company)からのStruktol SCA98)、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(例:エボニックインダストリーからのSi 75及びSi 266、ストラクトール社からのStruktol SCA985)、3‐チオシアナートプロピル‐トリエトキシシラン(例:エボニックインダストリーからのSi 264)、ガンマ‐メルカプトプロピル‐トリメトキシシラン(例:エボニックインダストリーからのVP Si 163、ストラクトール社からのStruktol SCA989)、ガンマ‐メルカプトプロピル‐トリエトキシシラン(例:エボニックインダストリーからのVP Si 263)、ジルコニウムジネオアルカノラートジ(3‐メルカプト)プロピオナート‐O(zirconium dineoalkanolatodi(3−mercapto) propionato−O)、N,N’‐ビス(2‐メチル‐2‐ニトロプロピル)‐1,6‐ジアミノへキサン、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ,ウイルトン,コネチカット州、からのNXTシランカップリング剤(チオカルボキシレート官能シラン:3‐オクタノイルチオ‐1‐プロピルトリエトキシシラン)、及び/又は化学的に類似するか、若しくは1つ以上の同じ化学基を有するカップリング剤であってよいか、又はそれを含んでよい。商品名によるカップリング剤のさらなる具体例としては、エボニックインダストリーからのVP Si 363が挙げられるが、これに限定されない。カップリング剤は、エラストマーコンポジット中に、いかなる量で存在してもよい。例えば、カップリング剤は、エラストマーコンポジット中に、シリカなどのフィラー100部あたり少なくとも0.2部(質量基準)、シリカなどのフィラー100部あたり約0.2から60部、シリカなどのフィラー100部あたり約1から30部、シリカなどのフィラー100部あたり約2から15部、又はシリカなどのフィラー100部あたり約5から10部の量で存在してよい。
【0088】
本発明のプロセスのいずれにおいても、1つ以上の酸化防止剤を用いてよい。酸化防止剤(老化防止剤の一例)は、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イミダゾール系酸化防止剤、カルバミン酸金属塩、(1若しくは複数の)パラ‐フェニレンジアミン、及び/又は(1若しくは複数の)ジヒドロトリメチルキノリン、高分子化キニン酸化防止剤、及び/又はワックス、及び/又はエラストマー配合物で用いられるその他の酸化防止剤であってよい。具体例としては、N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N’‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(6‐PPD、例:住友化学株式会社より入手可能なANTIGENE 6C、及び大内新興化学工業株式会社より入手可能なNOCLAC 6C)、精工化学株式会社製の「Ozonon」6C、重合1,2‐ジヒドロ‐2,2,4‐トリメチルキノリン、R.T.バンダービルトより入手可能であるAgerite Resin D、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)などが挙げられるが、これらに限定されない。その他の代表的な酸化防止剤は、例えば、ジフェニル‐p‐フェニレンジアミン、及び、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるThe Vanderbilt Rubber Handbook (1978), pages 344‐346に開示されるものなどのその他のものであり得る。酸化防止剤及びオゾン化防止剤はまとめて、老化防止剤である。これらの老化防止剤は、実例として、アミン、フェノール、イミダゾール、ワックス、イミダゾールの金属塩、及びこれらの組み合わせなどの化学官能基を含む。本発明で有効である具体的な老化防止剤としては、実例として、N‐イソプロピル‐N’‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン、N‐(1‐メチルヘプチル)‐N’‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン、6‐エトキシ‐2,2,4‐トリメチル‐1,2‐ジヒドロキノリン、Ν,Ν’‐ジフェニル‐p‐フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’‐ビス(a,a’‐ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’‐ジクミル‐ジフェニルアミン、2,5‐ジ‐tert‐ブチル‐ヒドロキノン、2,2’‐メチレン‐ビス(4‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、2,2’‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐メチルシクロへキシルフェノール)、4,4’‐チオ‐ビス(3‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、4,4’‐ブチリデン‐ビス(3‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、トリス(ノニル化フェニル)ホスファイト、トリス‐(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト、2‐メルカプトベンズイミダゾール、及び亜鉛2‐メルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。例は、少なくとも1つのアミン及び1つのイミダゾールを含む。所望に応じて、重合キノリンを用いてよい。酸化防止剤の相対量は、0.5から3部のアミン、0.5から2.5部のイミダゾール、及び0.5から1.5部の所望に応じて用いてよい重合キノリンを含んでよい。老化防止剤のアミンは、4,4’‐ビス(アルファ‐ジメチルベンジル)ジフェニルアミンであってよく、イミダゾールは、亜鉛2‐メルカプトトルイミダゾールであってよく、及び重合キノリンは、重合1,2‐ジヒドロ‐2,2,4‐トリメチルキノリンであってよい。一般的に、老化防止剤(例:(1若しくは複数の)酸化防止剤)は、通常、ポリマー又はゴム系100重量部あたり0.1から20重量部(phr)存在する。酸化防止剤の典型的な量は、例えば、約1から約5phrを含み得る。
【0089】
ゴム組成物は、タイヤ又はタイヤ部品用であってよく、親水性フィラーを用いてよい。親水性フィラーは、フィラーに結合した有機基を有していてよく、この有機基は、置換若しくは無置換のアゾール基であるか、又はそれを含む。この基は、メルカプトトリアゾールを例とするトリアゾール、及び/又はトリアゾールジスルフィドであてよい。この基は、チオール置換チアジアゾールを例とするチアジアゾールであってよい。
【0090】
変性フィラーは、ゴム、加工助剤、促進剤、架橋及び硬化剤、酸化防止剤、オゾン化防止剤、フィラー、樹脂など、従来のタイヤ配合成分及び添加剤と組み合わされてタイヤ配合物が作製されてよい。加工助剤としては、これらに限定されないが、メルカプタン、合成オイル、石油及び植物油、樹脂、ロジンなどの、可塑剤、粘着性付与剤、エキステンダー、化学コンディショナー、均質剤、及びペプタイザーが挙げられる。促進剤としては、アミン、グアニジン、チオウレア、チウラム、スルフェンアミド、チオカルバメート、キサンテート、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。架橋及び硬化剤としては、過酸化物、硫黄、硫黄ドナー、促進剤、酸化亜鉛、及び脂肪酸が挙げられる。フィラーとしては、クレイ、ベントナイト、二酸化チタン、タルク、硫酸カルシウム、シリカ、シリケート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0091】
本発明の変性フィラーをエラストマーコンポジットのその他の成分と組み合わせるには、従来のいかなる混合手順を用いてもよい。ゴムのコンパウンド化に用いられる典型的な手順は、Maurice Morton, RUBBER TECHNOLOGY 3rd Edition, Van Norstrand Reinhold Company, New York 1987, and 2nd Edition, Van Nordstrand Reinhold Company, New York 1973に記載されている。本発明の変性カーボンブラック生成物及びエラストマーを含む成分の混合物は、好ましくは、120℃から180℃の間の温度にて、熱機械的に一緒に混合される。
【0092】
例えば、本発明のエラストマーコンポジットは、バンバリー、インターメッシュミキサー、押出機などの密閉式ミキサーによる、ミルによる、又はその他の適切な装置を利用することによる一段階又は多段階の混合を例えば用いて均質なブレンドを生成させる適切な技術によって得ることができる。具体的な実施においては、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる1996年9月24日公開の米国特許第5,559,169号に記載のものなどの技術が用いられる。
【0093】
硬化は、本技術分野で公知の技術によって行われてよい。例えば、本発明の変性フィラーは、硫黄硬化、過酸化物硬化などが行われたゴム組成物に用いられてよい。
【0094】
(1若しくは複数の)本発明の変性フィラーは、ヒステリシス及び/又は耐摩耗性などの1つ以上のエラストマー特性を改善することができる。ヒステリシスの改善は、タンデルタ特性の測定によって評価することができる。
【0095】
摩耗指数は、内部コントロール組成物の摩耗速度を、本発明の変性フィラーを用いて作製したゴム組成物の摩耗速度で除した比である。単純化のために、以下の例では相対摩耗指数値が用いられる。相対摩耗指数は、本発明の変性フィラーによるゴム組成物の摩耗指数を未処理フィラーによるゴム組成物の摩耗指数で除した比として定義される。本発明の変性フィラーが他の処理と組み合わせて用いられる例では、相対摩耗指数は、第二の処理と組み合わせて用いられる本発明の変性フィラーによるゴム組成物の摩耗指数を、同じ第二の処理で処理されたフィラーによるゴム組成物の摩耗指数で除した比として定義される。一般的に、タイヤトレッドの作製では、十分な耐摩耗性及び 及び/又は低減された転がり抵抗を有するタイヤトレッドを作製するフィラーを用いることが望ましい。通常、タイヤのトレッド摩耗特性は、この耐摩耗性と関連する。耐摩耗性が高いほど、タイヤが摩耗することなく持続されるマイル数が増加する。ゴム組成物に対する摩耗データは、ランボーン型試験機に基づく摩耗試験機を用いて測定してよい(例えば、米国特許第4,995,197号を参照)。摩耗速度(立方センチメートル/センチメートル移動)は、通常14%又は21%スリップで測定され、スリップは、サンプルホイールと回転砥石との間の相対速度に基づく。
【0096】
また、本発明の変性フィラーは、未処理フィラーと比較してより低い相対最大tanδ(デルタ)値で例えば示されるヒステリシスを改善することができることも見出された。より低い相対最大tanδ(デルタ)値は、それが転がり抵抗の低下及びタイヤのトレッド部における熱蓄積の低減を反映することから、望ましいものである。転がり抵抗の低下は、自動車の燃費を向上させるものであり、タイヤのトレッド部に用いられるエラストマーコンポジットの所望される属性である。
【0097】
tanδは、レオメトリックス(Rheometrics)の動的分光器モデルARES‐2Kにより、10Hzの一定振動数及び一定温度にて、及び歪みせん断モードにより測定した。0.1%から60%の二倍歪み振幅(double strain amplitude)で歪み掃引を行った。ディケードあたり10点の測定を行い、tanδの最大測定値を報告した。相対最大tanδ値は、本発明の変性フィラーによるゴム組成物の測定最大tanδを、未処理フィラーによるゴム組成物の最大tanδで除した比として定義される。本発明の変性フィラーが他の処理と組み合わせて用いられる例では、相対最大tanδは、第二の処理と組み合わせて用いられる本発明の変性フィラーによるゴム組成物の測定最大tanδを、同じ第二の処理で処理されたフィラーによるゴム組成物の測定最大tanδで除した比として定義される。
【0098】
本発明において、本明細書で述べるように吸着化学基を有するフィラーであってよい変性フィラーは、エラストマー組成物にて耐摩耗性を改善する能力を有し、これは、エラストマー組成物が同じフィラーであるが未変性であるフィラーを含有する場合と比較することができる。言い換えると、2つのエラストマー組成物を形成することができ、1つは、吸着化学基を有するように変性されたフィラーAである本発明の変性フィラーを含有するものであり、これは、同じフィラーAであるが、いかなる吸着化学基によっても変性されていないもの(例:未変性フィラーA)と比較することができる。この比較を行うと、エラストマー組成物中に存在する本発明の変性フィラーは、耐摩耗性を改善することができる。例えば、耐摩耗性を、未変性フィラーと比較して、5%から200%など、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも200%増加させることができる。
【0099】
本発明において、本明細書で述べるように結合化学基を有するフィラーであってよい変性フィラーは、エラストマー組成物にてヒステリシスを改善する能力を有し、これは、エラストマー組成物が同じフィラーであるが未変性であるフィラーを含有する場合と比較することができる。言い換えると、2つのエラストマー組成物を形成することができ、1つは、結合化学基を有するように変性されたフィラーBである本発明の変性フィラーを含有するものであり、これは、同じフィラーBであるが、いかなる結合化学基によっても変性されていないもの(例:未変性フィラーB)と比較することができる。この比較を行うと、エラストマー組成物中に存在する本発明の変性フィラーは、ヒステリシスを改善することができる。例えば、ヒステリシスを、未変性フィラーと比較して、1%から50%など、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%低減させることができる。
【0100】
耐摩耗性及びヒステリシスに関する上述の有益性は、本発明において、同時に達成することができ、又は個々に制御することもできる。より具体的には、本明細書で述べる吸着化学基及び本明細書で述べる結合化学基を有する変性フィラーを用いることにより、ヒステリシスの改善(低減)及び耐摩耗性の増加を行うことができる。ヒステリシス及び耐摩耗性に関して達成される改善の種類の例(すなわち、前述の改善パーセント)は、組み合わせて達成することができ、上述のヒステリシス及び耐摩耗性に対する種々のパーセントのいかなる組み合わせも達成可能である。
【0101】
本発明の変性フィラーは、インク、コーティング、トナー、プラスチック、ケーブルなど、従来のフィラーと同じ用途に用いることができる。
【0102】
本発明は、本発明の代表例であることを意図する以下の例によってさらに明らかとなるであろう。
【実施例】
【0103】
例1 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。21.7gの水による2.60g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1301gの水、5.00gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び5.14gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて約5分間かけて添加した。混合を、70℃にて50分間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpHを8.1に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.53重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、0.89重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0104】
例2 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。23.1gの水による2.61g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1301gの水、4.31gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び5.14gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて10分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpHを7.5に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.41重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、0.89重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0105】
例3 − 比較カーボンブラック生成物の作製
本例は、APDSのジアゾニウム塩を用いて変性したカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。直径8インチ及び長さ8インチの混合チャンバーを有するバッチペレタイザーを、60℃に加熱し、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックの300gを投入した。4‐アミノフェニルジスルフィド(19.0g)及び209gの水を添加した。少し混合した後、27.9%硫酸の29.0gを添加した。少し混合した後、20%のNaNO2水溶液の52gを、間に少しの攪拌を入れながら、数回に分けて5分間かけて添加した。水(50g)を添加し、混合を、60℃にて30分間継続し、生成物をペレタイザーから取り出し、4Lの水に懸濁し、ろ過した。生成物をエタノールで洗浄し、次に4Lの水に懸濁した。NaOH溶液によりpHを8に調節し、この混合物をろ過し、ろ液の導電率が225μS/cmとなるまで洗浄した。生成物を70℃にて空気乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.60重量%のSと比較して、1.61重量%のSを有していた。
【0106】
例4 − 比較カーボンブラック生成物の作製
本例は、ATPのジアゾニウム塩を用いて変性したカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。直径8インチ及び長さ8インチの混合チャンバーを有するバッチペレタイザーを、60℃に加熱し、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックの300gを投入した。4‐アミノチオフェノール(9.67g)及び240gの水を添加した。少し混合した後、27.9%硫酸の14.5gを添加した。少し混合した後、20%のNaNO2水溶液の26gを、間に少しの攪拌を入れながら、数回に分けて5分間かけて添加した。水(50g)を添加し、混合を、60℃にて30分間継続し、生成物をペレタイザーから取り出し、4Lの水に懸濁し、ろ過した。生成物を4Lの水に懸濁した。NaOH溶液によりpHを9に調節し、この混合物をろ過し、ろ液の導電率が250μS/cm未満となるまで洗浄した。生成物を70℃にて空気乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.60重量%のSと比較して、1.09重量%のSを有していた。
【0107】
例5 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。11.9gの水による1.29g NaNO2の溶液を、150gの中間体サンプルX、1301gの水、2.17gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び2.58gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて5分間かけて添加した。混合を、70℃にて75分間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpHを7.5に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.07重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、0.80重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0108】
例6 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。1300gの水、150gのカーボンブラック、及び100gのClorox 次亜塩素酸ナトリウム溶液の懸濁液を混合し、90℃に加熱した。カーボンブラックは、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gであった。混合を70分間継続し、この懸濁液を70℃に冷却した。0.166gの濃H2SO4により、pHを4.9に調節した。3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール(4.32g)及び5.15gの70%メタンスルホン酸を添加した。21.6gの水による2.60g NaNO2の溶液を、10分間かけて添加した。混合を70℃にて65分間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液にてpH7.6に調節した。生成物をろ過で回収し、2Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.38重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、0.87重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0109】
例7 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。12.0gの水による1.30g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、2.16gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び2.58gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて6分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。スルファニル酸(6.49g)を添加し、次に、22.3gの水による2.59g NaNO2の溶液を、5分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH水溶液によりpHを7.5に調節した。生成物を回収し、0.45ミクロンの膜を有するミリポア加圧フィルターを用いてメタノールで洗浄した。得られた分散液を、70℃にて乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のS及び0.34重量%のNと比較して、1.37重量%のS及び0.58重量%のNを有していた。
【0110】
例8 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。21.8gの水による2.62g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1301gの水、4.31gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び5.15gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて15分間かけて添加した。混合を、70℃にて65分間継続した。スルファニル酸(6.49g)を添加し、次に、23.1gの水による2.59g NaNO2の溶液を、約10分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH水溶液によりpHを7.5に調節した。生成物を回収し、50/50 水/メタノールで洗浄し、0.45ミクロンの膜を有するミリポア加圧フィルターを用いてメタノールで洗浄した。得られた分散液を、70℃にて乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のS及び0.34重量%のNと比較して、1.31重量%のS及び0.64重量%のNを有していた。
【0111】
例9 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。22.4gの水による2.60g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1301gの水、4.31gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び5.16gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて10分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。スルファニル酸(3.24g)を添加し、次に、11.7gの水による1.32g NaNO2の溶液を、4分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH水溶液により中和した。生成物を回収し、0.45ミクロンの膜を有するミリポア加圧フィルターを用いてメタノールで洗浄した。得られた分散液を、70℃にて真空乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のS及び0.34重量%のNと比較して、1.24重量%のS及び0.62重量%のNを有していた。
【0112】
例10 − ケイ素処理カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のケイ素処理カーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が113、STSAが128m2/g、DBPAが107mL/100g、及びケイ素含有量が2.64重量%のケイ素処理カーボンブラックを用いた。22.4gの水による2.60g NaNO2の溶液を、150gのケイ素処理カーボンブラック、1305gの水、4.32gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び5.16gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて10分間かけて添加した。混合を、70℃にて65分間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpH7.5に調節した。生成物をろ過により回収し、2Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.04重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのケイ素処理カーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.35重量%のSと比較して、0.54重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0113】
例11 − ケイ素処理カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のケイ素処理カーボンブラック生成物の作製を説明するものである。1300gの水、150gのケイ素処理カーボンブラック、及び100gのClorox 次亜塩素酸ナトリウム溶液の懸濁液を混合し、90℃に加熱した。ヨウ素価が113、STSAが128m2/g、DBPAが107mL/100g、及びケイ素含有量が2.64重量%のケイ素処理カーボンブラックを用いた。混合を65分間継続し、この懸濁液を70℃に冷却した。0.042gの濃H2SO4により、pHを5.1に調節した。3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール(4.32g)及び5.17gの70%メタンスルホン酸を添加した。22.1gの水による2.62g NaNO2の溶液を、10分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpH7.6に調節した。生成物をろ過により回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.00重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.35重量%のSと比較して、0.54重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0114】
例12 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。22.5gの水による2.60g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、4.33gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び5.14gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて10分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpHを7.5に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄した。生成物を、実質的に同じ方法で作製したさらなる2バッチ分のものと共に1つにまとめた。この混合物の一部を70℃にて真空乾燥し、例26で用いた。生成物は、1.49重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、0.88重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0115】
例13 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。35.0gの水による3.91g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1299gの水、4.31gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び7.71gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて5分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpHを7.5に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.45重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、1.03重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0116】
例14 − カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明のカーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。46.8gの水による5.21g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、4.32gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、及び10.3gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて10分間かけて添加した。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH溶液によりpHを7.6に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.38重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、1.30重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0117】
比較例A
この物質は、例1〜9で用いたヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックである。
【0118】
中間体サンプルX
Process All 4HVミキサー(4L)に、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを600g投入した。この物質を、10分間混合し、55〜75℃に加熱した。過酸化水素水溶液(30%、675g)を、20分間かけて添加した。混合を、75℃にてさらに30分間継続した。生成物を130℃にて一晩空気乾燥した。
【0119】
比較例B
中間体サンプルXの150g分を、1300gの水と混合した。NaOH水溶液によりpHを7.7に調節し、ろ過し、70℃にて真空乾燥した。
【0120】
比較例C
1302gの水、150gのカーボンブラック、及び100gのClorox 次亜塩素酸ナトリウム溶液の懸濁液を混合し、90℃に加熱した。カーボンブラックは、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gであった。混合を1時間継続し、この懸濁液を室温に冷却した。NaOH水溶液にてpH7.5に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。
【0121】
比較例D
22.3gの水による2.62g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、及び6.49gのスルファニル酸の攪拌混合物へ、70℃にて10分間かけて添加した。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。混合を、70℃にて1時間継続した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH水溶液によりpHを7.4に調節した。生成物に、溶出液の導電率が350μS/cmとなるまでダイアフィルトレーションを施した。得られた分散液を70℃にて真空乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.65重量%のSと比較して、1.00重量%のSを有していた。
【0122】
比較例E
この物質は、ヨウ素価が113、STSAが128m2/g、DBPAが107mL/100g、及びケイ素含有量が2.64重量%のケイ素処理カーボンブラックである。
【0123】
比較例F
1300gの水、150gのケイ素処理カーボンブラック、及び100gのClorox 次亜塩素酸ナトリウム溶液の懸濁液を混合し、90℃に加熱した。ヨウ素価が113、STSAが128m2/g、DBPAが107mL/100g、及びケイ素含有量が2.64重量%のケイ素処理カーボンブラックを用いた。混合を1時間継続し、この懸濁液を室温に冷却した。NaOH水溶液にてpH7.5に調節した。生成物をろ過で回収し、2Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。
【0124】
比較例G
901gのメタノール、150gのカーボンブラック、及び4.32gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオールの懸濁液を、10分間混合した。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、生成物を、70℃にて真空乾燥した。
【0125】
エラストマーコンポジットの性能特性
上記の例に従って作製したカーボンブラック又はカーボンブラック生成物を用いてエラストマーコンポジットの組成物を作製し、これを以下の表A及びBに示す。すべての例において、特に断りのない限り、数値は重量部を表す。
【0126】
ここで用いたエラストマーコンポジットは、Duradene(商標)739ポリマーをカーボンブラック又はカーボンブラック生成物と混合することによって作製した。Duradene(商標)739ポリマー(ファイヤストーンポリマー(Firestone Polymers、アクロン,オハイオ州)は、20%のスチレン及び60%のビニルブタジエンを有する溶液重合スチレン‐ブタジエンコポリマーである。エラストマーコンポジットに用いられる成分を、Barbender Plasti‐corder EPL‐Vミキサーにより、第一段階はローター速度60rpm及び開始温度80℃にて、続いての第二段階では、硬化剤(ヴァラシュスケーメジジーチー,チェコ共和国より購入した硫黄 ASTM QA;ソルーシア社,セントルイス,ミズーリ州、より購入したSantocure CBS及びPerkacit MBT)を添加し、ローター速度50rpm及び開始温度50℃にて、二段階混合に従って混合した。第一段階の成分は、合計で5分間混合され、その後、オープンミルに3回通した。第二段階混合の前に、ミルで処理された第一段階混合からのコンパウンドを、2時間室温で保持した。次に、第二段階にて、硬化剤を2分間混合した。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
表Iに、未処理カーボンブラック(例29)と比較した性能結果を示す(カーボンブラック生成物を含むエラストマーコンポジット(本発明の例15及び16)について、相対tanデルタと14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0130】
【表3】
【0131】
変性カーボンブラックを含んだ両サンプル(例15及び16)共に、改善された(低減した)相対最大tanデルタ値及び増加した相対摩耗指数を示した。上記で考察したように、相対最大tanデルタ値の低減は、それが繰り返し歪みを受けた場合のエラストマーコンポジット中の熱の蓄積の低減を反映することから、望ましいものである。相対摩耗指数の増加も望ましく、それは、改善された耐摩耗性を反映する。
【0132】
ATTのジアゾニウム塩を用いて得られた結果とは対照的に、表IIのデータは、これまでに開示されたフェニル含有剤:4,4‐アミノフェニルジスルフィド(APDS)又は4‐アミノチオフェノール(ATP)のジアゾニウム塩を用いて変性されたカーボンブラック生成物を用いたエラストマーコンポジットの性能に関するものである。表IIはまた、未処理カーボンの性能データも示す。
【0133】
【表4】
【0134】
表I及び表IIに示すデータを調べることで、これまでに知られている処理剤から得られる物質の性能と比較して、ATTのジアゾニウム塩から得られるカーボンブラック生成物は、耐摩耗性が大きく改善されており、一方tanデルタは同等の改善が維持されることが明らかとなる。これは、トリアゾール基のフィラーとの結合及び吸着によってなされるものであると考えられる。
【0135】
ATTをその他の処理と組み合わせて用いることで得られたカーボンブラック生成物を含むエラストマーコンポジットの性能を調べるために、いくつかの実験を行った。
【0136】
例えば、表IIIは、ATT変性と共に、又はそれを伴わずに、過酸化水素で過酸化処理を行ったカーボンブラックについての比較データを示す。
【0137】
【表5】
【0138】
表IVは、ATT変性と共に、又はそれを伴わずに、次亜塩素酸ナトリウムで過酸化処理を行ったカーボンブラックについての比較データを示す。
【0139】
【表6】
【0140】
表Vは、ATTと共に、又はそれを伴わずに、スルファニル酸のジアゾニウム塩で処理したカーボンブラックを用いて作製したエラストマーコンポジットについての結果を示す。
【0141】
【表7】
【0142】
二重相ケイ素含有フィラー(すなわち、ケイ素処理カーボンブラック)又は過酸化処理したケイ素含有フィラーである出発物質を用いたエラストマーコンポジットについてのデータを、表VI‐A及びVI‐Bにそれぞれ示す。
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
すべての場合において、ATTのジアゾニウム塩から作製されたカーボンブラック生成物は、コントロールよりも低いtanデルタ値を有していた。いくつかの場合では、耐摩耗性の中程度から強い程度の改善も見られた。
【0146】
また、ATTのジアゾニウム塩を用いて得られた結合トリアゾール基を有するカーボンブラック生成物を用いたエラストマーコンポジットと、米国特許第6,014,998号に記載のように、ATTが結合しているのではなく、ゴムとのコンパウンド化時にカーボンブラックと物理的に混合されるものであるエラストマー組成物とを比較するための実験も行った。表VIIは、例12、13、及び14に従って作製されたカーボンブラック生成物、並びに比較例A及びGからのカーボンブラックを用いて得られた性能データを示す。
【0147】
表VIIに示される結果を調べると、本明細書で開示される実施形態に従うカーボンブラック表面への結合が(例:例26、27、及び28)、所望される性能属性を特に改善することが明らかに示される。さらに、これらの例は、結合レベルが、エラストマーコンポジットの最適性能を得るために変動させることができる重要なパラメータであることも示している。物理的に吸着させたATTを有するカーボンブラックから作製されたコンパウンド(例35)は、耐摩耗性の改善を示した。コンパウンド化中にATTを添加した未処理カーボンブラックからの結果(例36)は、本発明のカーボンブラック生成物で作製したものよりも劣っていた。
【0148】
【表10】
【0149】
例37:3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの作製
氷酢酸(2.60g)を、15%過酸化水素水溶液の4.89gに添加した。得られた溶液を、5.01gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、65.2gの水、及び4.33gの40% NaOHから作製した溶液へ、20分間かけて添加した。添加する間、氷浴を用いて、この反応混合物を18℃〜22℃の間に保持した。75分間の攪拌後、生成物をろ過し、水で洗浄し、次に70℃にて真空乾燥した。
【0150】
例38:3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド硫酸塩の作製
濃H2SO4を、180.0gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール及び2958gの水の攪拌混合物へ添加した。30%過酸化水素溶液(87.8g)を添加し、攪拌を一晩継続した。過酸化物試験紙により、すべての過酸化物が消費されたことが示された。生成物は、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド硫酸塩の溶液である。
【0151】
例39:1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィドの作製
氷酢酸(7.89g)を、15%過酸化水素水溶液の18.7gに添加した。得られた溶液を、16.5gの1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール、160gの水、及び16.3gの40% NaOHから作製した溶液へ、ゆっくり添加した。添加する間、氷浴を用いて、温和な反応温度とした。室温にて一晩攪拌後、生成物をろ過し、水で洗浄し、次に70℃にて真空乾燥した。
【0152】
例40から45:変性フィラーの作製
これらの例は、吸着基を有する本発明の変性フィラーの作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。列挙した化合物を約1Lの溶媒に溶解し、150gのカーボンブラックと約15分間混合した。次に、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、70℃にて真空乾燥した。いくつかのサンプルの一部に、メタノールによるソックスレー抽出を一晩施し、硫黄の分析を行って吸着を確認した。得られたS分析から、吸着化合物がほぼ完全に除去されたことが示され、したがって、結合ではなく吸着であることが確認された。
【0153】
【表11】
【0154】
例46:変性フィラーの作製
5.00gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、0.70gの硫黄、及び5.34gのN‐メチルピロリドンを、攪拌しながら100℃に加熱した。サンプルの加熱によって、固体物質の一部をスパチュラで崩した。100℃にて1時間加熱した後には、すべての硫黄が反応した。サンプルを冷却し、得られた固体を5gの水で洗浄し、乾燥した。HPLC/MS分析により、生成物である3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルトリスルフィドは、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド及び3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオールも含有していることが示された。生成物(8.67g及び52% 非揮発性分)を熱ジメチルホルムアミドに溶解し、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックの137gと混合した。約15分間の攪拌後、混合物を室温まで冷却し、ろ過した。固体を1Lの水で3回洗浄し、70℃にて真空乾燥した。吸着基がフィラー上に存在することが確認された。
【0155】
例47:変性フィラーの作製
4‐アミノ‐3‐ヒドラジノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール(5.48g)を、1Lの水及び3.0gのNaOHの溶液へ溶解した。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラック(150g)を添加し、この混合物を攪拌した。濃硫酸の7.2gを添加して、pHを7.2まで低下させた。この混合物をろ過し、約3.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。吸着基がフィラー上に存在することが確認された。
【0156】
例48:変性フィラーの作製
本例は、参照カーボンブラックのPAH22含有量 710ppmと比較して、PAH22含有量が25ppmである本発明の変性フィラーの作製を説明するものである。カーボンブラックは、ヨウ素価が137及びDBPAが120mL/100gであった。150gのカーボンブラック、4.32gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、及び1Lのメタノールの混合物を15分間攪拌した。メタノールをロータリーエバポレーターで除去し、生成物を70℃にて真空乾燥した。吸着基がフィラー上に存在することが確認された。
【0157】
例49:変性フィラーの作製
20LのRossミキサーに、11.26kgの水、及び3.00kgのカーボンブラック、及び1543gの0.243mmol/g 3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド硫酸塩溶液を投入した。カーボンブラックは、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gであった。70℃に加熱後、20%のNaNO2水溶液の259gを10分間かけて添加した。この混合物を70℃にて1時間攪拌し、室温まで冷却した。40%のNaOH水溶液(37.6g)を添加し、混合物をさらに5分間攪拌した。この混合物をろ過し、生成物を、導電率が約5000uS/cmとなるまで水で洗浄した。生成物を100℃にて乾燥した。生成物は、1.35重量%のSを有していた。メタノールによる一晩のソックスレー抽出を施した後のこの変性カーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.75重量%のSと比較して、1.04重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0158】
例50:変性フィラーの作製
この変性カーボンブラック生成物は、例49と実質的に同じ方法で作製した。
【0159】
例51:変性フィラーの作製
本例は、本発明の変性フィラーの作製を説明するものである。直径8インチ及び長さ8インチの混合チャンバーを有するバッチペレタイザーを、50℃に加熱し、ヨウ素価が149及びDBPAが125mL/100gの綿状(fluffy)カーボンブラックの224gを投入した。水(17g)及び0.235mmol/gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド硫酸塩溶液 132gを添加し、この混合物を500rpmにて1分間混合した。4.21重量%のNaNO溶液(107g)を噴霧添加し、処理をさらに5分間継続した。生成物をオーブンにて100℃で乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を一晩施した後のこの変性カーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.47重量%のSと比較して、0.79重量%のSを有していた。このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0160】
例52:変性フィラーの作製
本例は、本発明の変性フィラーの作製を説明するものである。ヨウ素価が70及びDBPAが118mL/100gのカーボンブラックを用いた。13.2gの水による1.56g NaNOの溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、及び0.241mmol/gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド硫酸塩溶液 47.5gの攪拌混合物へ、70℃にて約5分間かけて添加した。混合を、70℃にて65分間継続した。この混合物を室温まで冷却し、40% NaOH水溶液の1.28gによりpHを7.4に調節した。生成物をろ過で回収し、2Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。このカーボンブラック生成物(120.0g)を663gのメタノールに懸濁し、3.4gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドを添加した。15分間の攪拌後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去し、生成物を70℃にて真空乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を一晩施した後のこの変性カーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの1.31重量%のSと比較して、1.41重量%のSを有していた。このサンプルは、したがって、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0161】
例53:変性フィラーの作製
本例は、本発明の変性カーボンブラック生成物の作製を説明するものである。それは、参照カーボンブラックのPAH22含有量 710ppmと比較して、PAH22含有量が25ppmであった。カーボンブラックは、ヨウ素価が137及びCOANが120mL/100gであった。24.7gの水による2.60g NaNOの溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、4.31gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、及び5.14gの70% メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて6分間かけて添加した。混合を、70℃にて66分間継続した。この混合物を室温まで冷却した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。メタノールによるソックスレー抽出を一晩施した後のこの変性カーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.48重量%のSと比較して、0.77重量%のSを有していた。このサンプルは、結合及び吸着トリアゾールを有していた。
【0162】
例54:カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明の変性カーボンブラック生成物の作製を説明するものである。1302gの水、150gのカーボンブラック、及び100gのClorox 次亜塩素酸ナトリウム溶液の懸濁液を混合し、90℃に加熱した。カーボンブラックは、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gであった。混合を60分間継続し、この懸濁液を70℃に冷却した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド(3.44g)を、約0.8Lの溶媒に溶解し、120gのカーボンブラックと約15分間混合した。次に、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、70℃にて真空乾燥した。サンプルの一部にメタノールによるソックスレー抽出を一晩施し、硫黄の分析を行った。得られたS分析から、化合物をほぼ完全に除去することができ、したがって、トリアゾールはフィラー上に吸着されていたことが示される。
【0163】
例55:変性ケイ素処理カーボンブラック生成物の作製
本例は、本発明の変性ケイ素処理カーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が64、STSAが120m2/g、DBPAが157mL/100g、及びケイ素含有量が10重量%であるケイ素処理カーボンブラックを用いた。このケイ素処理カーボンブラック(150g)を、メタノール約1L中の4.31g 3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの溶液と共に、15分間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、生成物を70℃にて真空乾燥した。フィラー上に吸着された基が確認された。
【0164】
例56:変性シリカ生成物の作製
本例は、本発明の変性シリカ生成物の作製を説明するものである。Zeosil 1165シリカ(ローディアの製品)を、メタノール約1L中の7.93g 3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの溶液と共に、15分間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、生成物を70℃にて真空乾燥した。フィラー上に吸着された基が確認された。
【0165】
例57から66:変性フィラーの作製
これらの例では、ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。NaNOの10重量%水溶液を、300gのカーボンブラック、2600gの水、示した化合物、及び70% メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて約5分間かけて添加した。混合を、70℃にて約1時間継続した。この混合物を室温まで冷却した。表に示すように、いくつかの生成物について、ろ過に続いて、水での洗浄により(A)、又は水での洗浄、続いてエタノール次に水での洗浄により(B)、精製した。いくつかの生成物について、2若しくは3回の水の交換を行って(C)、又は水、続いてエタノール、次に水により(D)、遠心分離によって精製した。生成物を70℃にて真空乾燥した。生成物は、結合有機基を有していた。
【0166】
【表12】
【0167】
例67から76:変性フィラーの作製
本発明のこれらの例において、例57から66の結合基を有するカーボンブラック生成物上に、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドを吸着させた。各々の場合において、カーボンブラック生成物を、エタノール1L中の4.3g 3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの溶液と共に、15分間攪拌した。エタノールをロータリーエバポレーターで除去し、生成物を70℃にて真空乾燥した。
【0168】
【表13】
【0169】
例77:変性フィラーの作製
本例は、本発明の変性フィラーの作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。35.3gの水による3.88g NaNO2の溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、6.86gの4‐アミノベンジルアミン、及び17.05gの70% メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて約10分間かけて添加した。混合を、70℃にて60分間継続した。この混合物を室温まで冷却し、5.44gの40% NaOH水溶液でpH8.4に調節した。生成物をろ過で回収し、2.5Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。このカーボンブラック生成物(120.1g)を、660gのメタノールに懸濁し、3.47gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドを添加した。15分間の攪拌の後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去し、生成物を70℃にて真空乾燥した。フィラー上の吸着基が確認された。
【0170】
例78:ベンゾイミダゾール‐2‐イルジスルフィドの作製
10.0gの2‐メルカプトベンゾイミダゾール、88gのエタノール、及び6.68gの40% NaOH水溶液から作製した溶液を、79gのエタノール中の8.54gのヨウ素の溶液と混合した。得られた混合物をろ過し、回収した生成物をエタノールで洗浄し、70℃にて真空乾燥した。
【0171】
例79:2‐アミノ‐1,3,4‐チアジアゾール‐5‐イルジスルフィドの作製
10.0gの2‐アミノ‐1,3,4‐チアジアゾール‐5‐チオール、81gのエタノール、及び7.78gの40% NaOH水溶液から作製した溶液を、75gのエタノール中の9.48gのヨウ素の溶液と混合した。得られた混合物をろ過し、回収した生成物をエタノールで洗浄し、70℃にて真空乾燥した。
【0172】
例80:1,2,3‐トリアゾール‐4‐チオールの作製
濃HCl(12.06g)を、104gのエタノール中の14.98gの5‐メルカプト‐1,2,3‐トリアゾールナトリウム塩の溶液へ添加した。固体をろ過で除去し、得られた1,2,3‐トリアゾール‐4‐チオールの溶液を直接用いた。
【0173】
例81:(1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルメチル)ジスルフィドの作製
J.Am.Chem.Soc.77 1540 (1955)に記載の方法に類似の方法により、3‐クロロメチル‐1,2,4‐トリアゾールを作製した。国際公開第2008151288号に記載の方法に類似の方法により、3‐クロロメチル‐1,2,4‐トリアゾールを、30容量部の還流エタノール中、1当量のチオウレアと15時間反応させた。反応生成物を、12%のNaOH水溶液により、50℃にて20分間加水分解した。0.5当量の12及びNaIの添加により、(1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルメチル)ジスルフィドが得られた。
【0174】
比較例82
この物質は、例52で用いた、ヨウ素価が70及びDBPAが118mL/100gのカーボンブラックである。
【0175】
比較例83
この物質は、水と共にペレット化して100℃で乾燥した、例51で用いたヨウ素価が149及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックである。
【0176】
比較例84
この物質は、例55で用いた、ヨウ素価が64、STSAが120m2/g、DBPAが157mL/100g、及びケイ素含有量が10%のケイ素処理カーボンブラックである。
【0177】
比較例85
これは、例56で用いたZeosil 1165シリカである。
【0178】
比較例86
この物質は、例53で用いたカーボンブラックである。これは、参照カーボンブラックのPAH22含有量 710ppmと比較して、PAH22含有量が25ppmであった。このカーボンブラックは、ヨウ素価が137及びCOANが120mL/100gであった。
【0179】
比較例87
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの4.31g、及びヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックの150gの乾燥混合物を、ワーリングブレンダーにて30秒間混合した。
【0180】
例88から100:物質の作製
これらの例は、種々の物質の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。示した化合物を約1Lの溶媒に溶解し、150gのカーボンブラックと約15分間混合した。次に、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、70℃にて真空乾燥した。
【0181】
【表14】
【0182】
例101:比較物質の作製
本例は、比較物質の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。ベンゾイミダゾール‐2‐イルジスルフィド(5.62g)を約1Lの熱ジメチルホルムアミドに溶解し、150gのカーボンブラックと約15分間混合した。この混合物を冷却し、ろ過した。生成物を水で3回洗浄し、70℃にて真空乾燥した。
【0183】
例102:比較物質の作製
本例は、比較物質の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。2‐アミノ‐1,3,4‐チアジアゾリル‐5‐イルジスルフィド(4.95g)を約700mLのジメチルスルホキシドに溶解し、150gのカーボンブラックと約15分間混合した。水(500g)を添加し、この混合物を冷蔵庫に3日間保存した。この混合物をろ過し、4Lの水で洗浄し、70℃にて真空乾燥した。
【0184】
例103:比較物質の作製
本例は、比較カーボンブラック生成物の作製を説明するものである。ヨウ素価が119及びDBPAが125mL/100gのカーボンブラックを用いた。21.3gの水による2.59g NaNOの溶液を、150gのカーボンブラック、1300gの水、4.33gの3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、及び5.15gの70%メタンスルホン酸の攪拌混合物へ、70℃にて5分間かけて添加した。混合を、70℃にて65分間継続した。この混合物を室温まで冷却した。生成物をろ過で回収し、3Lの水、2Lのメタノールで洗浄し、70℃にて真空乾燥した。生成物は、1.06重量%のSを有していた。メタノールによるソックスレー抽出を施した後のこのカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理カーボンブラックの0.75重量%のSと比較して、0.97重量%のSを有していた。したがって、このサンプルは、結合トリアゾールを有しており、残留抽出可能物質は表面に残っている。
【0185】
エラストマーコンポジットの性能特性
以下の例は、エラストマーコンポジットを形成するための、本発明の変性フィラー又は比較フィラーのエラストマー配合物における使用に関するものである。フィラーに応じて、いくつかの異なるエラストマー配合物を用いた。特に断りのない限り、エラストマーコンポジットの作製方法は、前述の例15〜36と同じとした。
【0186】
配合物(特に断りのない限り、単位はphr):
配合物AA(配合物AAは、例29、40、42、45、88、82、52、41、43、54、89、90、46、102、87、91〜96、47、97、98、44、49、57、67、58、68、59、69、60、70、61、71、62、72、63、73、64、74、65、75、66、76、77、83、51、86、53、48、100、102、103、及び99で用い、ここでは、カーボンブラックをフィラーとして、又は変性されたフィラーとして用いた。)
Duradene 739 100
(示した例番号の)カーボンブラック 50
酸化亜鉛 3
ステアリン酸 2
Santoflex 6PPD 1
硫黄 1.75
Santocure CBS 1.25
Perkacit MBT 0.2
【0187】
配合物BB(配合物BBは、表XIVのATT及びATT2の例に用い、ここで、化学基(トリアゾール)は、比較例として、コンパウンド化の間に添加した。)
これらのサンプルは、コンパウンド化の間にトリアゾールを添加したものである:
配合物BB #1 #2
Duradene 739 100 100
(示した例番号の)カーボンブラック 50 50
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール 1.45
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド 1.44
酸化亜鉛 3 3
ステアリン酸 2 2
Santoflex 6PPD 1 1
硫黄 1.75 1.75
Santocure CBS 1.25 1.25
Perkacit MBT 0.2 0.2
【0188】
配合物CC(配合物CCは、例85、56、84、及び55で用い、ここでは、フィラーは、シリカ又はケイ素処理カーボンブラックであった(本発明又はその比較例)。)
配合物CC #1 #2 #3 #4
Duradene 739 100 100 100 100
SiO2(例85) 56
例56 56
ケイ素処理フィラー(例84) 50
例55 50
ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド
4.48 4.48 2 2
酸化亜鉛 3 3 3 3
ステアリン酸 2 2 2 2
Santoflex 6PPD 1 1 1 1
硫黄 1.5 1.5 1.5 1.5
Santocure CBS 1.7 1.7 1.4 1.4
ジフェニルグアニジン(DPG) 1.5 1.5 0.7 0.7
【0189】
表VIIIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)と比較した、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール又は3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの吸着化合物を有する本発明の変性フィラーを含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0190】
【表15】
【0191】
変性カーボンブラックを含んだ両サンプル(例)共に、改善された(低減した)相対tanデルタ値及び増加した相対摩耗指数を示した。上記で考察したように、相対tanデルタ値の低減は、それが繰り返し歪みを受けた場合のエラストマーコンポジット中の熱の蓄積の低減を反映することから、望ましいものである。相対摩耗指数の増加も望ましく、それは、改善された耐摩耗性を反映する。
【0192】
表IXに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)及び1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィドではない吸着化合物を有する比較カーボンブラックと比較した、1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィドの吸着化合物を有する本発明のカーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0193】
【表16】
【0194】
本発明の1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィド吸着化合物を有する変性カーボンブラックを含有するサンプルは、大きく改善された増加した相対摩耗指数及びコントロールと類似するtanデルタ値を示した。1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィドではない吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が大きく低下する結果となった。
【0195】
表Xに、性能結果を提供する(未変性シリカ(例85)と比較した、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの吸着化合物を有する本発明のシリカ生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0196】
【表17】
【0197】
本発明の吸着化合物を有する変性シリカを含有するサンプルは、コントロールと比較して、大きく改善された増加した相対摩耗指数及び僅かに増加しただけであるtanデルタ値を示した。
【0198】
表XIに、性能結果を提供する(未変性ケイ素処理カーボンブラック生成物(例84)と比較した、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの吸着化合物を有する本発明の変性ケイ素処理カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0199】
【表18】
【0200】
本発明の吸着化合物を有する変性ケイ素処理カーボンブラック生成物を含有するサンプルは、コントロールと比較して大きく改善された増加した相対摩耗指数を示した。
【0201】
表XIIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック生成物(例82)と比較した、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィドの吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0202】
【表19】
【0203】
吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するサンプルは、同じフィラーを用いたコントロールと比較して、大きく改善された増加した相対摩耗指数及びtanデルタ値の改善を示した。さらに、吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物は、トレッドコンパウンドに一般的に用いられる未処理カーボンブラック(例29)と比較して、改善された増加した相対摩耗指数及びtanデルタの著しい改善を示した。
【0204】
表XIIIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)及び異なる吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物と比較した、吸着化合物を有する本発明のカーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0205】
【表20】
【0206】
本発明の吸着化合物を有する変性カーボンブラックを含有するサンプルは、コントロールと比較して、大きく改善された増加した相対摩耗指数を示した。本発明の吸着化合物を有する酸化ブラックを含有するサンプルは、未変性カーボンブラックを含有するコントロールと比較して、大きく改善された増加した相対摩耗指数を示した。異なる吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が実質的に変化しないか、又は低下する結果となった。
【0207】
表XIVに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)を含有するエラストマーコンポジット、及び3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオールがカーボンブラック上に予め吸着させることなくミキサーに添加されたコンパウンドについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0208】
【表21】
【0209】
示されるように、カーボンブラック上に予め吸着させることなく、化合物をミキサーに直接添加すると、摩耗指数値が不良であるコンパウンドが得られた。
【0210】
表XVに、性能結果を提供する(異なる吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物、未変性カーボンブラック(例29)、及びカーボンブラック上に予め吸着させることなくその化合物をカーボンブラックと予め乾式混合しておいたコンパウンドと比較した、吸着化合物を有する本発明のカーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0211】
【表22】
【0212】
本発明の吸着化合物を有する変性カーボンブラックを含有するサンプルは、コントロールと比較して、大きく改善された増加した相対摩耗指数及び改善されたtanデルタ値を示した。異なる吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が低下する結果となった。吸着ではなく、予めカーボンブラックと化合物を乾式混合したものからは、不良な摩耗指数値を有するコンパウンドが得られた。
【0213】
表XVIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)及び吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0214】
【表23】
【0215】
吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が低下する結果であるか、又は未処理カーボンブラックに類似の結果であった。
【0216】
表XVIIに、未変性カーボンブラック(例29)と比較した、吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0217】
【表24】
【0218】
吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が低下する結果であった。
【0219】
表XVIIIに、性能結果を与える(未変性カーボンブラック(例29)及び異なる吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物と比較した、吸着化合物を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0220】
【表25】
【0221】
本発明の吸着化合物を有する変性カーボンブラックを含有するサンプルは、大きく改善された増加した相対摩耗指数、及びコントロールと類似のtanデルタ値を示した。異なる吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が低下する結果となった。
【0222】
表XIXに、未変性カーボンブラック(例29)と比較した、吸着化合物を有する本発明のカーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0223】
【表26】
【0224】
本発明の変性カーボンブラックを含有するサンプルは、改善された相対摩耗指数を示した。
【0225】
表XXに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)と比較した、結合有機基及び吸着化合物を有する本発明のカーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0226】
【表27】
【0227】
本発明の変性カーボンブラックを含有するサンプルは、改善されたtanデルタ性能、及び改善された相対摩耗指数を示した。
【0228】
表XXIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック、及び結合有機基は持つが吸着化合物は持たないカーボンブラックと比較した、吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0229】
【表28】
【0230】
吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物(例67〜71)を含有するサンプルは、同じ結合有機基のみを有するカーボンブラックと比較して、改善された増加した相対摩耗指数を示した。
【0231】
表XXIIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック、及び結合有機基は持つが吸着化合物は持たないカーボンブラックと比較した、吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0232】
【表29】
【0233】
吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物(例72〜76)を含有するサンプルは、同じ結合有機基のみを有するカーボンブラックと比較して、改善された増加した相対摩耗指数を示した。
【0234】
表XXIIIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラックと比較した、吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0235】
【表30】
【0236】
吸着化合物及び結合有機基を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するサンプルは、未変性カーボンブラックのものと比較して、改善され低減されたtanデルタ値及び改善された増加した相対摩耗指数を示した。
【0237】
表XXIVに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラックと比較した、結合有機基及び吸着化合物を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0238】
【表31】
【0239】
変性カーボンブラックを含有するサンプルは、改善されたtanデルタ性能、及び改善された相対摩耗指数を示した。
【0240】
表XXVに、結合有機基に加えて吸着化合物を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに14%相対スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。この表はまた、吸着化合物を有する第二のカーボンブラック生成物の性能結果も示す。未処理の参照カーボンブラックは、低PAH含有量である。
【0241】
【表32】
【0242】
本発明の吸着化合物(例53)及び結合有機基を有する変性カーボンブラックを含有するサンプルは、未処理カーボンブラックと比較して、大きく改善された増加した相対摩耗指数及び改善されたtanデルタ性能を示した。本発明の吸着化合物を有する変性カーボンブラック(例48)を含有するサンプルは、未処理カーボンブラックと比較して、改善された増加した相対摩耗指数を示した。
【0243】
表XXVIに、未変性カーボンブラック(例29)及び吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0244】
【表33】
【0245】
吸着化合物を有する比較カーボンブラック生成物は、摩耗指数が低下するか、又は未処理カーボンブラックのそれと類似する結果となった。
【0246】
表XXVIIに、性能結果を提供する(未変性カーボンブラック(例29)、及び吸着化合物を用いて作製され、続いてそれが実質的に除去された比較カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての、相対tanデルタ、並びに14%及び21%スリップにおける相対摩耗指数)。
【0247】
【表34】
【0248】
吸着化合物を持たなくなった比較カーボンブラック生成物を含有するサンプルは、摩耗性能が改善されなかった。
【0249】
表XXIXに、未変性カーボンブラック(例29)と比較した、吸着化合物を有する本発明の変性カーボンブラック生成物を含有するエラストマーコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに14%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0250】
【表35】
【0251】
本発明の吸着化合物を有する変性カーボンブラックを含有するサンプルは、コントロールと比較して、改善された増加した相対摩耗指数及び改善されたtanデルタ値を示した。
【0252】
これらの残りの例について、表XXXIIIに用いた配合を示す。エラストマーコンポジットに用いられる成分を、BR バンバリーミキサーによる二段階混合で混合し、第一段階はローター速度80rpm及び開始温度50℃にて、続いての第二段階では、硬化剤(硫黄、BBTS)を添加し、ローター速度50rpm及び開始温度50℃にて行った。第一段階の成分は、合計で6分間混合し、その後、オープンミルに6回通した。第二段階混合の前に、ミルで処理された第一段階混合からのコンパウンドを、少なくとも2時間室温で保持した。次に、第二段階にて、硬化剤を2分間混合した。表XXXに、未変性カーボンブラック(例29)及び未変性シリカと比較した、本発明の変性カーボンブラック生成物を含有する天然ゴムコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに7%及び14%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0253】
【表36】
【0254】
本発明の変性カーボンブラックは、カーボンブラックサンプルと比較して、低減された望ましいtanデルタ指数、及びシリカと比較して、増加した望ましい摩耗指数を有していた。7%スリップにおいて、本発明の変性カーボンブラックは、未処理カーボンブラックと未処理シリカとの間の好ましい中間的な性質であった。
【0255】
表XXXIに、未変性カーボンブラック(例29)と比較した、本発明の変性カーボンブラック生成物を含有する天然ゴム/ポリブタジエンコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに7%及び14%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0256】
【表37】
【0257】
本発明の変性カーボンブラックは、カーボンブラックサンプルと比較して、低減された望ましいtanデルタ指数、及びコントロールに類似する7%スリップにおける摩耗指数値を有していた。
【0258】
表XXXIIに、未変性カーボンブラック(例29)と比較した、本発明のカーボンブラック生成物を含有するポリイソプレンコンポジットについての性能結果(相対tanデルタ、並びに7%及び14%スリップにおける相対摩耗指数)を提供する。
【0259】
【表38】
【0260】
本発明の変性カーボンブラックは、カーボンブラックサンプルと比較して、低減された望ましいtanデルタ指数を有していた。本発明の変性カーボンブラック生成物を含むサンプルの結果は、tanデルタ指数と7%スリップにおける摩耗指数とを好ましく兼ね備えるものである。
【0261】
【表39】
【0262】
官能性エラストマー及び変性フィラーを含むエラストマーコンポジットの性能特性
様々な官能性エラストマー及び変性カーボンブラック又は先の例に従って調製したカーボンブラック生成物を含むエラストマーコンポジットの配合物は、例114、118、120、122、124、128、132、133、及び134として以下の表XXXV、XXXVI、XXXVIII、XXXIX、XLI、XLII、XLIII、及びXLIVに示されている。これらの表中に示した比較例として、例111、112、113、115、116、117、119、121、123、125、126、127、129、130、及び131において官能性のないエラストマーを使用した、かつ/又は異なったタイプのフィラーを使用したエラストマーコンポジット配合物を調製した。ヒステリシス、耐摩耗性、及びその他を含めた様々な特性を、示した例及びその配合物の比較例について測定した。これらの実験のためのエラストマーコンポジットを、表A及びBに示した調合物に関して先に記載した原則的に同じ二段階コンパウンド化プロトコール及び装置を用いて調製した。(以下の表に説明した)エラストマーコンポジットに関して使用される成分を、BR1600 Banburyミキサー(1200ml容量、Farrel Corporation)による三段階混合に従って混合した。第一段階は、50rpmのローター速度及び50Cの開始温度にて、ポリマーとカーボンブラックを加え、続いて、硬化剤を除いた残りの成分を加え、そして、150Cの温度まで上げることを伴い、その材料は、4回のクロスカット及び2本のエンドロールを使用してすりつぶされる。第二段階は、80rpmのローター速度及び50Cの開始温度にてただ混合することが続き、その温度を150Cにした。そして、材料を、4回のクロスカット及び2本のエンドロールを使用して粉砕した。そして、混合の第三段階は、50rpmのローター速度及び50Cの開始温度にて硬化剤の添加を行い、その温度を110Cまで上げた。この場合も先と同様に、材料を、4回のクロスカット及び2本のエンドロールを使用して粉砕した。
【0263】
すべての例において、別段の指定がない限り、数値は、重量部を表す。
【0264】
表XXXIVは、カルボキシル官能化を伴わないスチレン−ブタジエンゴム(VSL5025−2)、及びカルボキシル官能化を伴ったスチレン−ブタジエンゴム(VP PBR4003)であるエラストマーの特性に示す。例111〜114のエラストマー配合物を、比較例A及び例50のフィラーを使用したこれらのSBRを用いて調製した。
【0265】


【表40】
【0266】
【表41】
【0267】
表XXXVIは、選択されたコンパウンド化成分を示し、そして、異なったフィラー、かつ/又は非官能性エラストマーを含む例111〜113の配合物と比較した、官能性エラストマーと本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例114のエラストマー配合物についての性能試験結果を提供する。
【0268】
【表42】
【0269】
官能性エラストマー及び本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例114のサンプルは、高熱ヒステリシス、高熱での反発、及び300%伸長での引っ張り弾性率における改善(低下)を示した。
【0270】
表XXXVIIは、アミノシラン官能化を伴わない(PBR4041)、及びアミノシラン官能化を伴った(HPR355)、又はスズ結合官能化を伴った(Duradene(商標)739)、又はヒドロキシル官能化を伴った(NS−612)、又はアミン官能化を伴った(SLR4601)スチレン−ブタジエンエラストマーの特性を示す。例115〜124のエラストマー配合物を、表XXXVIIIに示した様々なフィラーを使用したこれらのスチレン−ブタジエンゴムによって調製した。フィラー成分は、先の例111〜114で使用したものと同じである。
【0271】
【表43】
【0272】
【表44】
【0273】
表XXXIXは、選択されたコンパウンド化成分を示し、そして、異なったフィラー、かつ/又は非官能性エラストマーを含む例115、116、117、118、121、及び123の配合物と比較した、官能性エラストマーと本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例118、120、122、及び124のエラストマー配合物についての性能試験結果を提供する。
【0274】
【表45】
【0275】
官能性エラストマー及び本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例118、120、122、及び124のサンプルは、例えば、スズ結合スチレン−ブタジエンの使用により高熱ヒステリシスの低下と高熱での反発の増大、そして、ミノシラン官能性及びアミン官能性スチレン−ブタジエンゴムの使用による高熱ヒステリシスの低下と高熱での反発の増大を示した。
【0276】
表XLは、官能化を伴わない(SMR20)及びエポキシ官能化(ENR25)を伴った天然ゴムの特性を示す。例125〜128のエラストマー配合物を、表XLIに示した様々なフィラーを使用したこれらのエラストマーを用いて調製した。フィラー成分は、先の例111〜124で使用したものと同じである。
【0277】
【表46】
【0278】
【表47】
【0279】
表XLIIは、選択されたコンパウンド化成分を示し、そして、異なったフィラー、かつ/又は非官能性エラストマーを含む例125〜127の配合物と比較した、官能性エラストマーと本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例128のエラストマー配合物についての性能試験結果を提供する。
【0280】
【表48】
【0281】
官能性エラストマー及び本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例128のサンプルは、エポキシ化天然ゴムの使用により高熱でのヒステリシスの低下を示した。
【0282】
表XLIIIは、先の例111〜128で使用したものと同じフィラー成分を使用し、スズ結合官能化を伴ったスチレン−ブタジエンゴム(Duradene(商標)739)を用いて調製した例129〜134のエラストマー配合物を示す。
【0283】
【表49】
【0284】
表XLIVは、選択されたコンパウンド化成分を示し、そして、異なったフィラーを含む例129〜131の配合物と比較した、官能性エラストマーと本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例132〜134のエラストマー配合物についての性能試験結果を提供する。
【0285】
【表50】
【0286】
官能性エラストマー及び本発明の変性カーボンブラック生成物を含む例132〜134のサンプルは、充填範囲の全体にわたって、ヒステリシス特性、300%弾性率、及び摩耗特性における改善を示した。
【0287】
出願人らは、引用されるすべての参考文献の全内容を本開示に明確に組み込むものである。さらに、量、濃度、又はその他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は上側の好ましい値と下側の好ましい値のリストのいずれかとして与えられる場合、それは、範囲が別個に開示されるかどうかに関わらず、いずれかの範囲上限若しくは好ましい値、及びいずれかの範囲下限若しくは好ましい値のいずれのペアから形成される範囲についても、そのすべてを明確に開示するものとして理解されたい。数値の範囲が本明細書にて列挙される場合、特に断りのない限り、その範囲は、その端点、並びにその範囲内のすべての整数及び分数を含むことを意図している。範囲を定める場合に列挙される具体的な数値に本発明の範囲が限定されることを意図するものではない。
【0288】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察、及び本明細書に開示される本発明の実践から、当業者には明らかであろう。本明細書及び例は、単なる代表例と見なされ、本発明の実際の範囲及び趣旨は、以下の態様及びその均等物によって示されることを意図している。
本発明の実施態様として、次の態様を挙げることができる:
《態様1》
少なくとも1種の官能性エラストマー及び少なくとも1種の変性フィラーを含む、エラストマー組成物であって、前記変性フィラーが、以下のトリアゾ−ル又はその互変異性体をその上に吸着したフィラーを含む、エラストマー組成物:
【化1】

【化2】
(式中、
は、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、同一又は異なっていて、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
《態様2》
前記官能性エラストマーが、官能性ジエンエラストマーである、態様1に記載のエラストマー組成物。
《態様3》
前記官能性ジエンエラストマーが、ジエンとビニル芳香族化合物とのコポリマー、ジエンと少なくとも1つのα−オレフィンとのコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリイソプレン、ブタジエンとイソプレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、ブタジエンとビニル芳香族化合物とイソプレンとのターポリマー、又はこれらの組合せであるジエンエラストマーを含む、態様2に記載のエラストマー組成物。
《態様4》
前記官能性ジエンエラストマーが、官能性スチレンブタジエンゴムである、態様2に記載のエラストマー組成物。
《態様5》
前記官能性ジエンエラストマーが、アミン官能化、シラン官能化、アミノシラン官能化、メルカプトシラン官能化、ヒドロキシル官能化、カルボキシル官能化、エポキシ官能化、若しくはスズ結合され、又はそれらが組み合わせられている、態様2に記載のエラストマー組成物。
《態様6》
前記官能性エラストマーが、アミン官能性スチレンブタジエンゴム、シラン官能性スチレンブタジエンゴム、アミノシラン官能性スチレンブタジエンゴム、メルカプトシラン官能性スチレンブタジエンゴム、ヒドロキシル官能性スチレンブタジエンゴム、カルボキシ官能性スチレンブタジエンゴム、エポキシ官能性スチレンブタジエンゴム、スズ結合スチレンブタジエンゴム、又はこれらの混合物である、態様1に記載のエラストマー組成物。
《態様7》
前記トリアゾールが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様1に記載のエラストマー組成物:
【化3】
(式中、Eが、wが2から8であるS、SSO、SSO、SOSO、SOSOである)。
《態様8》
前記トリアゾールが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様1に記載のエラストマー組成物:
【化4】
《態様9》
前記トリアゾールが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様1に記載のエラストマー組成物:
【化5】
(式中、Yは、H又はNHである)
《態様10》
前記フィラーが、以下をその上に吸着して含む、態様1に記載のエラストマー組成物:
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール、若しくは1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィド、又はこれらのいずれかの組み合わせ。
《態様11》
少なくとも1種の官能性エラストマー、及び少なくとも1種のフィラーを含み、前記フィラーが、以下のピラゾール又はその互変異性体を、その上に吸着している、エラストマー組成物:
【化6】

【化7】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
X及びYは、独立して、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、若しくはCFであるか、又はYは、Rであり、ここで、X及びYの各々は、同一又は異なっており;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルであり、
Eは、複数硫黄含有基である)。
《態様12》
前記ピラゾールが、以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、態様11に記載のエラストマー組成物:
【化8】
《態様13》
前記ピラゾールが、以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、態様11に記載のエラストマー組成物:
【化9】
(式中、Yは、H又はNHである)
《態様14》
前記ピラゾールが、以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、態様11に記載のエラストマー組成物:
【化10】
(Eが、wが2から8であるS、SSO、SSO、SOSO、SOSOである)。
《態様15》
少なくとも1種の官能性エラストマー、及び少なくとも1種の変性フィラーを含み、前記変性フィラーが、以下を、その上に吸着している、エラストマー組成物:
a)少なくとも1種のトリアゾール;
b)少なくとも1種のピラゾール;又は、
これらの組み合わせ
ここで、前記変性フィラーは、エラストマー組成物中に存在する場合、変性されていない前記フィラーと比較して、耐摩耗性を改善する。
《態様16》
a)が存在し、それが1,2,4トリアゾールである、態様15に記載のエラストマー組成物。
《態様17》
b)が存在する、態様15に記載のエラストマー組成物。
《態様18》
a)又はb)が、硫黄含有置換基を含む 、態様15に記載のエラストマー組成物。
《態様19》
前記フィラーに結合している少なくとも1種の化学基をさらに含む、態様1〜18のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様20》
前記化学基が、少なくとも1種の有機基である、態様19に記載のエラストマー組成物。
《態様21》
前記有機基が、以下を含む、態様19に記載のエラストマー組成物:
a)少なくとも1つのトリアゾール;
b)少なくとも1つのピラゾール;
c)少なくとも1つのイミダゾール;又は、
これらのいずれかの組み合わせ。
《態様22》
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様21に記載のエラストマー組成物:
【化11】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、前記フィラーへの結合を含み
Yは、H、アルキル、アリール、又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;かつ
Qは、(C3/4)、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である)。
《態様23》
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様21に記載のエラストマー組成物:
【化12】

【化13】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含み、及び残りのXのいずれも、前記フィラーへの結合、又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHである場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
《態様24》
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様23に記載のエラストマー組成物:
【化14】
(少なくとも1つのXが、前記結合であり、その他のXが、H、NH、又はOHである)
《態様25》
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のトリアゾール又はその互変異性体を含む、態様21に記載のエラストマー組成物:
【化15】
(式中、EはSであり、
Xは、H、OH、若しくはNHであるか、又は前記フィラーへの結合を含み、かつ、
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含む)。
《態様26》
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合し、かつ1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基である、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様27》
前記トリアゾールが、前記フィラーに結合し、かつ3‐メルカプト‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル基である、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様28》
前記ピラゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、態様21に記載のエラストマー組成物:
【化16】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
各Xは、H、アルキル、アリール、NHであるか、又は前記フィラーへの結合を含むが、ただし、少なくとも1つのXは、結合を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;かつ
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である)。
《態様29》
前記ピラゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のピラゾール又はその互変異性体を含む、態様21に記載のエラストマー組成物:
【化17】

【化18】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのX又はYは、前記フィラーへの結合を含み、他のいずれのX又はYは、同一又は異なっていて、結合又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である)。
《態様30》
前記イミダゾールが、前記フィラーに結合している、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様31》
前記イミダゾールが、前記フィラーに結合しており、かつ以下のイミダゾール又はその互変異性体を含む、態様21に記載のエラストマー組成物:
【化19】

【化20】
(式中、Zはアルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
各Xは、前記フィラーへの結合、H、アルキル、アリール、又はNHを含むが、ただし、少なくとも1つのXは、結合を含み;
Yは、H又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びRは、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC−C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である)。
《態様32》
前記有機基が、脂肪族基又は芳香族基を含む、態様1に記載のエラストマー組成物。
《態様33》
前記有機基が、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩 N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORである官能基を少なくとも有するアルキル基又は芳香族基を含み、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C12炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数である、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様34》
前記有機基が、式AyAr−を有する芳香族基を含み、式中、Arは、芳香族基であり、Aは、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩 N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORであり、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数であり、yは、1から前記芳香族基中の−CH基の総数までの整数である 、態様12に記載のエラストマー組成物。
《態様35》
前記Arが、トリアゾール基を含む、態様34に記載のエラストマー組成物。
《態様36》
前記Arが、ピラゾール基を含む、態様34に記載のエラストマー組成物。
《態様37》
前記Arが、イミダゾール基を含む、態様34に記載のエラストマー組成物。
《態様38》
前記有機基が、少なくとも1種のアミノメチルフェニル基である、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様39》
前記有機基が、X−C−S−S−C−Xであり、ここで、少なくとも一方のXは、前記フィラーへの結合であり、他方のXは、前記フィラーへの結合、又は官能基である、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様40》
前記有機基が、少なくとも1つの芳香族スルフィド又はポリスルフィドを含む、態様21に記載のエラストマー組成物。
《態様41》
前記変性フィラーが、フィラー表面積(m)あたり0.01〜10マイクロモルのヘテロ環基の吸着量を有する、態様1〜40のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様42》
前記変性フィラーが、フィラー表面積(m)あたり0.01〜6マイクロモルの結合量を有する、態様21〜40のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様43》
前記変性フィラーが、変性されていない前記フィラーと比較して、エラストマー組成物の耐摩耗性を改善している、態様1〜42のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様44》
前記耐摩耗性が、少なくとも10%向上している、態様43に記載のエラストマー組成物。
《態様45》
前記耐摩耗性が、少なくとも50%向上している、態様43に記載のエラストマー組成物。
《態様46》
前記耐摩耗性が、少なくとも75%向上している、態様43に記載のエラストマー組成物。
《態様47》
前記耐摩耗性が、少なくとも100%向上している、態様43に記載のエラストマー組成物。
《態様48》
態様19〜40のいずれか一項に記載のエラストマー組成物であって、前記変性フィラーが、変性されていない前記フィラーと比較して、前記エラストマー組成物の耐摩耗性を改善し、かつ未変性の前記フィラーと比較して、前記エラストマー組成物のヒステリシスを改善(低減)している、エラストマー組成物。
《態様49》
前記ヒステリシスが、少なくとも5%改善(低減)している、態様48に記載のエラストマー組成物。
《態様50》
前記ヒステリシスが、少なくとも10%改善(低減)している、態様48に記載のエラストマー組成物。
《態様51》
前記ヒステリシスが、少なくとも20%改善(低減)している、態様48に記載のエラストマー組成物。
《態様52》
前記耐摩耗性が、少なくとも10%向上しており、かつ前記ヒステリシスが、少なくとも5%改善(低減)している、態様48に記載のエラストマー組成物。
《態様53》
前記耐摩耗性が、少なくとも50%向上しており、かつ前記ヒステリシスが、少なくとも10%改善(低減)している、態様48に記載のエラストマー組成物。
《態様54》
前記耐摩耗性が、少なくとも75%向上しており、かつ前記ヒステリシスが、少なくとも15%改善(低減)している、態様48に記載のエラストマー組成物。
《態様55》
少なくとも1種の官能性エラストマー、及び少なくとも1種の変性フィラーを含み、前記変性フィラーが、以下のトリアゾール又はその互変異性体を、その上に結合している、エラストマー組成物:
【化21】

【化22】
(式中、Zはアルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含み、及び残りのXのいずれも、前記フィラーへの結合、又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
《態様56》
前記トリアゾ−ルが、以下のトリアゾール又はその互変異性体である、態様55に記載のエラストマー組成物:
【化23】
《態様57》
前記トリアゾ−ルが、以下のトリアゾール又はその互変異性体である、態様55に記載のエラストマー組成物:
【化24】
《態様58》
前記変性フィラーが、フィラー表面積(m)あたり0.1〜6モルの結合量を有する、態様19〜40及び55〜57のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様59》
前記変性フィラーが、変性されていない前記フィラーと比較して、エラストマー組成物の耐摩耗性を改善している、55〜57のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様60》
前記ヒステリシスが、少なくとも5%低減する、態様59に記載のエラストマー組成物。
《態様61》
前記ヒステリシスが、少なくとも10%低減する、態様59に記載のエラストマー組成物。
《態様62》
前記ヒステリシスが、少なくとも20%低減する、態様59に記載のエラストマー組成物。
《態様63》
前記フィラーが、カーボンブラック、ケイ素処理カーボンブラック、ケイ素コーティングカーボンブラック、又は金属酸化物である、態様1〜62のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様64》
前記フィラーが、カーボンブラックである、態様1〜62のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様65》
前記フィラーが、シリカである、態様1〜62のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様66》
前記フィラーが、少なくとも1つの金属酸化物であり、前記フィラーへの結合を含む前記Xが、少なくとも1つのシランリンカー基を介している、態様22〜25、28〜31、39及び55〜57のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様67》
前記フィラーが、少なくとも1つの金属酸化物であり、前記フィラーへの結合を含む前記Xが、少なくとも1つのSi含有基、Ti含有基、Cr含有基、又はZr含有基を介している、態様22〜25、28〜31、39及び55〜57のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
《態様68》
態様1〜67のいずれか一項に記載のエラストマー組成物を含む、製造物品。
《態様69》
タイヤ又はその構成部品である、態様68に記載の物品。
《態様70》
タイヤトレッド又はタイヤサイドウォールである、態様68に記載の物品。
《態様71》
変性フィラーを硬化前のエラストマー組成物に導入することを含む、エラストマー組成物の耐摩耗性、ヒステリシス又はその両方を改善するための方法であって、前記変性フィラーは、以下のトリアゾール又はその互変異性体を、その上に吸着している、方法:
【化25】

【化26】
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
同一であるか又は異なっているXは、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHである場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。