(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鍋の底面の温度である鍋底温度を測定する温度センサ、鍋を加熱する加熱手段、及び炊飯に際して吸水工程、昇温工程、沸騰維持工程を順に実行するとともに各工程において前記温度センサの出力に基づいて炊飯時の前記加熱手段による加熱量及び加熱時間を制御する制御手段を備えた炊飯機能付コンロであって、
前記鍋内の米量を推定する米量推定手段と、
前記沸騰維持工程における加熱終了時点を決定するための基準となる加熱標準時間を、前記米量推定手段により推定された米量に基づいて決定する加熱標準時間決定手段と、
前記加熱標準時間と前記沸騰維持工程における前記鍋底温度の変化量とに基づいて前記加熱終了時点を決定する加熱終了時点決定手段と、
前記沸騰維持工程の開始時点を、前記昇温工程における前記鍋底温度の勾配である昇温勾配と、前記沸騰維持工程において前記鍋底温度が所定時間維持されたときの温度である沸騰維持温度とから決定する開始時点決定手段を備え、
前記開始時点決定手段は、前記昇温工程における前記鍋底温度の時間変化を前記昇温勾配の傾きをもつ近似直線で近似したときに、前記近似直線において温度が前記沸騰維持温度となる時点を前記沸騰維持工程の開始時点として決定する炊飯機能付コンロ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鍋内の米量が正確に判断された状態で上述の制御を行った場合でも、例えば、ご飯がべちゃつくといったように良好な炊飯結果を得られない場合があることが判明した。即ち、上述の制御方法では、沸騰維持工程における加熱時間が長すぎる、または短すぎるといった問題が発生し得ることが判明した。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鍋底に当接される温度センサの温度検出値に基づいて炊飯制御を行う場合に、沸騰維持工程における加熱時間を適切に決定し、もって、良好な炊飯結果を安定的に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯機能付コンロの特徴は、鍋の底面の温度である鍋底温度を測定する温度センサ、鍋を加熱する加熱手段、及び炊飯に際して吸水工程、昇温工程、沸騰維持工程を順に実行するとともに各工程において前記温度センサの出力に基づいて炊飯時の前記加熱手段による加熱量及び加熱時間を制御する制御手段を備えた炊飯機能付コンロであって、
前記鍋内の米量を推定する米量推定手段と、
前記沸騰維持工程における加熱終了時点を決定するための基準となる加熱標準時間を、前記米量推定手段により推定された米量に基づいて決定する加熱標準時間決定手段と、
前記加熱標準時間と前記沸騰維持工程における前記鍋底温度の変化量とに基づいて前記加熱終了時点を決定する加熱終了時点決定手段と、
前記沸騰維持工程の開始時点を、前記昇温工程における前記鍋底温度の勾配である昇温勾配と、前記沸騰維持工程において前記鍋底温度が所定時間維持されたときの温度である
沸騰維持温度とから決定する開始時点決定手段を備え
、
前記開始時点決定手段は、前記昇温工程における前記鍋底温度の時間変化を前記昇温勾配の傾きをもつ近似直線で近似したときに、前記近似直線において温度が前記沸騰維持温度となる時点を前記沸騰維持工程の開始時点として決定する点にある。
【0008】
本願発明を完成するにあたって、発明者らの鋭意研究の結果、
図11に、図中Xで示すように、昇温工程から沸騰維持工程に移行した直後には、鍋底温度の変動が生じ、この変動時間の長さがばらつくために、平衡検知後に所定時間の加熱を行う単純な制御では、実際の加熱時間に誤差が生じることを見出した。さらに、炊飯鍋がコンロ上に傾いて載置されている場合には、
図10に矢印で示すように、消火のタイミング(鍋底温度が急激に上昇するタイミング)が、炊飯鍋が正常に載置されている場合と異なることが分かった。このように、複合的要因が重なることで、従来の火力制御では、加熱時間に過不足が生じることが明らかになった。
【0009】
そこで、本願に係る炊飯機能付コンロでは、沸騰維持工程の開始時点を、昇温工程における鍋底温度の勾配(昇温勾配)と、沸騰維持工程における沸騰維持温度とから決定するように構成している。
具体的には、昇温工程における鍋底温度の時間変化を昇温勾配の傾きをもつ近似直線で近似したときに、近似直線において温度が沸騰維持温度となる時点を沸騰維持工程の開始時点として決定する。この判定は、沸騰維持工程がある程度進行してから遡って行う。これにより、鍋内の水が沸騰し始めたタイミングを合理的に決定することができる。また、沸騰維持工程における加熱標準時間を米量に基づいて決定している。このような構成により昇温工程から沸騰維持工程に移行した直後における鍋底温度の変動に影響されず、適切に沸騰維持工程における加熱時間を決定することができ、もって、良好な炊飯結果を安定的に得ることができる。
【0010】
さらに、前記制御手段が、前記吸水工程において前記加熱手段を所定時間、米量推定用熱量で動作させる第1吸水工程を実行し、
前記米量推定手段が、前記第1吸水工程における前記鍋底温度の勾配である吸水勾配を求め、前記吸水勾配と前記米量推定用熱量とを用いて熱バランス方程式を解くことにより、米量を推定すると良い。
【0011】
このような構成によれば、吸水工程における加熱時間を利用して、米量の推定を合理的
に行うことが出来る。よって、米量を適切に推定することで良好な炊飯結果を安定的に得ることができる。
【0013】
本発明に係る炊飯機能付コンロの特徴は、鍋の底面の温度である鍋底温度を測定する温度センサ、鍋を加熱する加熱手段、及び炊飯に際して吸水工程、昇温工程、沸騰維持工程を順に実行するとともに各工程において前記温度センサの出力に基づいて炊飯時の前記加熱手段による加熱量及び加熱時間を制御する制御手段を備えた炊飯機能付コンロであって、
前記鍋内の米量を推定する米量推定手段と、
前記沸騰維持工程における加熱終了時点を決定するための基準となる加熱標準時間を、前記米量推定手段により推定された米量に基づいて決定する加熱標準時間決定手段と、
前記加熱標準時間と前記沸騰維持工程における前記鍋底温度の変化量とに基づいて前記加熱終了時点を決定する加熱終了時点決定手段と、
前記沸騰維持工程の開始時点を、前記昇温工程における前記鍋底温度の勾配である昇温勾配と、前記沸騰維持工程において前記鍋底温度が所定時間維持されたときの温度である沸騰維持温度とから決定する開始時点決定手段を備え、
前記加熱終了時点決定手段が、
前記加熱標準時間内に、前記鍋底温度が加熱終了用閾値に達した場合には、前記加熱標準時間が経過した時点を、前記加熱終了時点とし、
前記加熱標準時間内に、前記鍋底温度が前記加熱終了用閾値に達しなかった場合には、前記鍋底温度が前記加熱終了用閾値に到達した時点を、前記加熱終了時点とする点にある。
【0014】
このような構成によれば、例えば、炊飯鍋がコンロ上に傾いて載置されている場合のように、炊飯に必要な加熱時間が、加熱標準時間よりも長くなる場合でも、適切に沸騰維持工程における加熱時間を決定することができ、もって、良好な炊飯結果を安定的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.炊飯機能付コンロの構成
以下では、本願発明に係る炊飯機能付コンロの一例として、
図1に示すガスコンロ1を説明する。ガスコンロ1は、被載置物を載置するための五徳6を備え、五徳6に載置された炊飯用鍋4の底面の温度である鍋底温度を測定する温度センサ2、炊飯用鍋4を加熱するガスバーナー3、及び炊飯時のガスバーナー3による加熱量及び加熱時間を制御する制御手段5を備えている。制御手段5は、マイクロプロセッサ及び半導体メモリを含むマイクロコンピュータを主要な機器として構築される。ここで、ガスバーナー3が、本願発明における「加熱手段」に相当する。
【0017】
本実施形態においては、ガスバーナー3は、鉛直方向から見て円周上に複数の炎孔を備えるように構成され、形成される燃焼火炎で炊飯用鍋4の底面を加熱するように構成されている。また、温度センサ2は、接触式の温度センサであり、ガスバーナー3の中央(鉛直方向に見て、ガスバーナー3の炎孔の内側)に鉛直方向上方に突出するように構成されている。
【0018】
制御手段5は、炊飯に際して、吸水工程A、昇温工程B、沸騰維持工程Cを順に実行するように構成され、各工程において温度センサ2の出力に基づいて、ガスバーナー3の制御を行う。以下では、制御手段5による炊飯時のガスバーナー3の火力制御について詳しく説明する。
【0019】
2.炊飯用鍋を用いた火力制御
図3に、本願発明に係る制御手段5の火力制御の概要を示す。グラフの縦軸は鍋底温度Tを、横軸は、炊飯開始時を0としたときの経過時間を表している。また、グラフ下部には、各工程におけるガスバーナー3の火力を示している。図示するように、制御手段5は、ガスバーナー3の火力及び加熱時間を制御することで、炊飯開始から時間の経過に従って、いわゆる吸水工程A、昇温工程B、沸騰維持工程Cを順に実行するように構成されている。本実施形態においては、むらし工程Dでは、制御手段5はガスバーナー3を消火したままとしている。
【0020】
ここで、吸水工程Aは、炊飯用鍋4内の炊飯物である米に所定量の水を吸水させる工程を、昇温工程Bは、炊飯用鍋4内の水を沸騰するまで昇温する工程を、沸騰維持工程Cは、鍋内の水の沸騰を維持する工程を意味する。以下では、これらの工程A〜Cについて順に説明する。
【0021】
2−1.吸水工程
本実施形態においては、制御手段5は、吸水工程Aにおいて、ガスバーナー3を所定時間、米量推定用熱量Qで動作させる第1吸水工程A1と、ガスバーナー3を第1吸水工程A1に比べ弱い熱量で動作させる第2吸水工程A2とを実行する。第1吸水工程A1は、温度変化量から炊飯用鍋4内の米量Wrを推定するために、一定の火力で炊飯用鍋4を加熱する工程であり、第2吸水工程A2は、米の吸水を促進するために炊飯用鍋4内の水温を適温に保つように第1吸水工程A1に比べ弱火にして(本実施形態では火力を「微弱」にして)、炊飯用鍋4を加熱する工程である。
【0022】
2−1−1.米量の推定
図2に示すように、制御手段5は、第1吸水工程A1において炊飯用鍋4内の米量を推定する米量推定手段51を備えている。より詳しくは、米量推定手段51は、温度センサ2の出力に基づいて第1吸水工程A1における鍋底温度Tの勾配である吸水勾配d1を求め、吸水勾配d1と米量推定用熱量Qとを用いて熱バランス方程式を解くことにより、米量Wrを推定する。本実施形態においては、第1吸水工程A1における鍋底温度Tの変化を近似直線で表し、吸水勾配d1として、その近似直線の傾きを用いている。また、米量推定用熱量Qは第1吸水工程A1において一定の熱量であるとしている。より具体的には、例えば、ガスバーナー3の火力を最大とした状態の熱量とすることができる。
【0023】
熱バランス方程式による米量の推定方法を以下に述べる。ガスバーナー3の火力をQ
in[W]、炊飯用鍋4使用時のガスバーナー3の熱効率をηとし、
C
pW
pΔT
p+C
wW
wΔT
w+C
rW
rΔT
r=Q
inη … (1)
κ=W
w/W
r (=水重量「g」/米重量「g」) … (2)
ここで、
C
p,W
p,ΔT
p:炊飯用鍋4の比熱[J/g℃]、重量[g]、昇温速度[℃/s]
C
w,W
w,ΔT
w:水の比熱[J/g℃]、重量[g]、昇温速度[℃/s]
C
r,W
r,ΔT
r:米の比熱[J/g℃]、重量[g]、昇温速度[℃/s]
(1)式及び(2)式より、米量Wrは、
Wr=(Q
inη−C
pW
pΔT
p)/(C
wκΔT
w+C
rΔT
r) …(3)
となる。
さらに、米と水は完全混合であると考えるとΔT
w=ΔT
r、炊飯用鍋4の内表面の温度は水と同じ温度T
w、外表面の温度は温度センサ2の出力(鍋底温度T)と同じと考えるとΔT
p=(1/2)ΔTw(1+1/a)(aは、鍋底温度Tと炊飯用鍋4内の水温の関係を示す既知の係数)となるので、(3)式から米量Wrを推定することができる。
【0024】
なお、上式においては、Q
inが本願発明における米量推定用熱量Qに相当し、ΔT
w(=ΔT
r)が本願発明における吸水勾配d1に相当する。
【0025】
ここで、米量推定手段51は、
図5に示すように、ガスバーナー3の火力を、間欠的に複数段階に変更して、それぞれの火力で加熱した期間における勾配を求め、求まった複数の勾配に基づいて、米量Wrの推定の際に用いる吸水勾配d1を決定しても構わない。具体的には、
図5の例では、ガスバーナー3の火力を、強火、中火、弱火の3段階に変化させ、各火力における熱バランス方程式を解くことで、各火力における勾配d11、d12、及びd13を求め、これらの平均値d1x=(d11+d12+d13)/3を、米量Wrの推定の際に用いる吸水勾配d1としている。このような構成とすることで、米量Wrの推定に関わる外乱要因を抑え、より正確に米量Wrを推定することができる。
【0026】
2−1−2.加熱標準時間の決定
制御手段5は、さらに、沸騰維持工程Cにおける加熱終了時点teを決定するための基準となる加熱標準時間Δtc(
図3参照)を、米量推定手段51により推定された米量Wrに基づいて決定する加熱標準時間決定手段52を備えている。ここで、加熱標準時間Δtcは、炊飯用鍋4がガスコンロ1上に正しく載置されていた場合に、沸騰維持工程Cに必要とされる理想的な加熱時間を表す。
【0027】
本実施形態においては、加熱標準時間決定手段52は、米量推定手段51から推定された米量Wrを用いて、予め作成されたデータベース53に基づき加熱標準時間Δtcを決定するように構成されている。なお、本実施形態においては、データベース53は制御手段5が備える構成としたが、データベース53は制御手段5とは別に備えられる構成でも構わない。
【0028】
図4に、データベース53が備えるデータの一例を表で示す。表中、Kは炊飯用鍋4内の水量Ww/米量Wrを示し、表中の数値は、各条件における加熱標準時間Δtc[s]を示している。この加熱標準時間Δtcが、沸騰維持工程Cにおける加熱時間の基準となる。
【0029】
2−2.昇温工程
本実施形態においては、制御手段5は、昇温工程Bにおけるガスバーナー3の火力を第1吸水工程A1と同様としている。
図2に示す開始時点決定手段54は、昇温工程Bにおける鍋底温度Tの勾配である昇温勾配d2を求めるように構成されている。
【0030】
2−3.沸騰維持工程
制御手段5は沸騰維持工程Cにおいて、炊飯用鍋4内の水が沸騰したと推定された段階で所定の熱量で炊飯用鍋4を加熱する第1沸騰維持工程C1と、第1沸騰維持工程C1に比べ低い熱量で炊飯用鍋4を加熱する第2沸騰維持工程C2とを実行する。本実施形態においては、第1沸騰維持工程C1における熱量は、第1吸水工程A1における熱量と同様としている。具体的には、第1沸騰維持工程C1及び第1吸水工程A1とも火力を「強火」としている。また、第2沸騰維持工程C2は火力を「弱火」としている。
【0031】
2−3−1.沸騰維持工程の開始時点の決定
ここで、昇温工程Bから沸騰維持工程C(第1沸騰維持工程C1)に移るタイミングにおいては、
図3に示すように、鍋底温度Tの変動が見られる。このため沸騰維持工程Cの開始時点t
0は、単に鍋底温度Tを計測するだけでは決定することが難しい。
【0032】
このため、本願発明に係る制御手段5は、沸騰維持工程Cの開始時点t
0を、昇温工程Bにおける鍋底温度Tの勾配である昇温勾配d2と、沸騰維持工程Cにおいて鍋底温度Tが所定時間維持されたときの温度である沸騰維持温度T1とから決定する開始時点決定手段54を備えている。すなわち、制御手段5は、沸騰維持工程Cがある程度進行してから、遡って沸騰維持工程Cの開始時点t
0を決定するように構成されている。この点が、本願発明と従来技術との大きな違いとなっている。
【0033】
ここで、昇温勾配d2は、昇温工程Bにおける鍋底温度Tの変化率を意味する。具体的には、昇温工程Bにおける鍋底温度Tの変化を近似直線で表し、その近似直線の傾きを昇温勾配d2としている。本実施形態においては、昇温勾配d2を、沸騰維持工程Cにおける所定時間の範囲における近似直線(図中、破線で示す直線L
B)の傾きから求めている。ここで、所定時間の範囲としては、鍋底温度Tの変動が生じる昇温工程Bと沸騰維持工程Cとの境目を除くように設定するのが望ましい。昇温勾配d2は、開始時点決定手段54によって昇温工程Bにおいて導出される。
【0034】
沸騰維持温度T1は、沸騰維持工程Cにおいて鍋底温度Tが平衡状態となったときの温度を意味する。このため、沸騰維持温度T1は、沸騰維持工程C開始時の鍋底温度Tの変動が落ち着いた後に、開始時点決定手段54により導出される。
【0035】
開始時点決定手段54は、昇温勾配d2及び沸騰維持温度T1を導出した後、昇温勾配d2及び沸騰維持温度T1に基づき沸騰維持工程Cの開始時点t
0を導出する。本実施形態においては、
図3に示すように、開始時点t
0として、昇温勾配d2の傾きをもつ近似直線において鍋底温度Tが沸騰維持温度T1となる時点(図中、直線L
Bと、T=T
1である直線L
Tとの交点)を求めている。
【0036】
2−3−2.沸騰維持工程の加熱終了時点の決定
本願発明に係る制御手段5は、上述のようにして、沸騰維持工程Cの開始時点を正確に決定することができるため、加熱標準時間Δtcに従って、適切に炊飯用鍋4を加熱することができる。しかしながら、炊飯用鍋4が、傾斜してガスコンロ1に載置されている場合などには、加熱標準時間Δtcでは、加熱時間が過不足するおそれがある。
【0037】
このため、本願発明に係る制御手段5は、さらに、加熱標準時間Δtcと沸騰維持工程Cにおける鍋底温度Tの変化量とに基づいて加熱終了時点teを決定する加熱終了時点決定手段55を備えている。より詳しくは、加熱終了時点決定手段55は、基本的には、ガスバーナー3を消火する加熱終了時点teを、
図6に示すように、開始時点t
0から加熱標準時間Δtcが経過した理想消火時点(t
0+Δtc)としている。一方、鍋底温度Tの変化量が特定の条件(消火時点変更条件)を満たす場合には、加熱終了時点teを、適宜変更するように構成されている。
以下では、加熱終了時点決定手段55が加熱終了時点teを変更する場合の条件についてより詳しく説明する。
【0038】
図7に、消火時点変更条件を満たす場合の一例を示す。
図7において、破線は、理想的な火力制御時の鍋底温度Tの変化を示し(
図6と同じ)、実線は、消火時点変更条件を満たす鍋底温度Tの変化を示している。この例においては、消火時点変更条件は、沸騰維持工程Cの開始時点t
0から数えて加熱標準時間Δtc内に、鍋底温度Tが加熱終了用閾値Thrに達した場合を意味する。図示するように、この場合、鍋底温度Tが加熱終了用閾値Thrに達した場合でも、この終了条件を無視して、加熱終了時点決定手段55は、沸騰維持工程Cの開始時点t
0から加熱標準時間Δtcが経過した時点を、加熱終了時点teとするように構成されている。
このようにすることにより、何等かの理由で、鍋底温度Tが高く検出されることに起因する加熱不足を解消できる。
【0039】
図8に、
図7の場合とは異なる消火時点変更条件を満たす場合の一例を示す。
図7と同様に、
図8において、破線は理想的な場合を示し(
図6と同じ)、実線は、消火時点変更条件を満たす場合を示している。この例においては、消火時点変更条件は、沸騰維持工程Cの開始時点t
0から数えて加熱標準時間Δtc内に、鍋底温度Tが加熱終了用閾値Thrに達しなかった場合を意味する。図示するように、この場合、加熱標準時間Δtcの経過を無視して、加熱終了時点決定手段55は、鍋底温度Tが加熱終了用閾値Thrに到達した時点を、加熱終了時点teとするように構成されている。
鍋底温度Tが適切な温度変化を示すまで加熱を持続し、加熱不足を解消できる。
【0040】
3.制御フロー
図9に、本願発明に係る制御手段5の火力制御のフローの一例を示す。ガスコンロ1に米と水が入れられた炊飯用鍋4が載置され、ガスコンロ1に設けられたスイッチなどにより炊飯がスタートすると、制御手段5は、まずガスバーナー3の火力を強に設定する(ステップ#1)。次に、スタートから60秒が経過するまで待機し(ステップ#2:No)、60秒が経過すると(ステップ#2:Yes)、この60秒間における鍋底温度Tの変化に基づき吸水勾配d1を導出する(ステップ#3)。
【0041】
さらに、吸水勾配d1に基づいて炊飯用鍋4内の米量Wrを推定し、推定された米量Wrとデータベース53とを用いて、加熱時間Δt1と加熱時間Δt2とを決定する(ステップ#4)。ここまでの制御が、
図3における第1吸水工程A1に相当する。
【0042】
続いて、制御手段5は、ガスバーナー3の火力を微弱に設定する(ステップ#5)。加熱時間Δt1秒が経過するまで待機する(ステップ#6:No)。ここまでの制御が、
図3における第2吸水工程A2に相当する。
【0043】
さらに、加熱時間Δt1秒が経過すると(ステップ#6:Yes)、ガスバーナー3の火力を強にする(ステップ#7)。そして、その時点での鍋底温度Tを開始温度T
aとし、その時点の時刻を開始時刻t
aとして記憶する(ステップ#8)。開始時刻t
aから所定時間が経過した時点で、当該所定時間における温度勾配を、昇温勾配d2として導出し、切片bを、Ta−d2・taとして導出する(ステップ#9)。
【0044】
続いて、現在の鍋底温度Tを、直前温度T
0として記憶する(ステップ#10)。次に、鍋底温度Tから直前温度T
0を引いた値が3以下かを調べる(ステップ#11)。値が3より大きい場合には、ステップ#10からやり直す(ステップ#11:No)。値が3以下の場合(ステップ#11:Yes)には、60秒が経過するまで待機する(ステップ#12:No)。60秒が経過すると(ステップ#12:Yes)、その時点の時刻を開始時刻tbとして記憶するとともに、沸騰維持工程Cの開始時点t
0を(直前温度T
0−切片b)/吸水勾配d1として導出する。
【0045】
開始時点t
0から加熱時間Δt2が経過するまで(すなわち、開始時点t
0導出後、Δt2−(tb−t
0)秒が経過するまで)待機し(ステップ#14:No)、経過後(ステップ#14:Yes)、現在の鍋底温度Tを、沸騰維持温度T1として記憶する(ステップ#15)。ここまでの制御が、
図3における昇温工程B及び第1沸騰維持工程C1に相当する。
【0046】
続いて、制御手段5は、ガスバーナー3の火力を弱に設定する(ステップ#16)。そして、鍋底温度Tが、沸騰維持温度T1+30℃より小さい間は待機する(ステップ#17:No)。終了判定用温度T1+30℃と等しくなった場合(ステップ#17:Yes)には、さらに、現在の時刻が、理想消火時点(開始時点t
0+加熱標準時間Δtc)以降となるまで待機し(ステップ#18:No)、理想消火時点(開始時点t
0+加熱標準時間Δtc)以降となれば(ステップ#18:Yes)、ガスバーナー3を消火する(ステップ#19)。以上で、制御手段5による火力制御を終了する。
【0047】
このような制御を行うことで、本願発明に係るガスコンロ1は、昇温工程から沸騰維持工程に移行した直後の鍋底温度Tの変動や、炊飯用鍋4の傾きの影響を抑え、良好な炊飯結果を安定的に得ることができる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、米量推定手段51が、熱バランス方程式を用いて米量Wrを推定したが、その他の方法で米量Wrを推定しても構わない。例えば、ガスコンロ1に設けられたスイッチ類などにより、米量をガスコンロ1の使用者が入力し、その値を、炊飯用鍋4内の米量Wrとして扱っても構わない。
【0049】
(2)上記実施形態においては、加熱終了時点決定手段55が、加熱標準時間Δtc内に、鍋底温度Tが加熱終了用閾値Thrに達した場合及び、加熱標準時間Δtc内に、鍋底温度Tが加熱終了用閾値Thrに達しなかった場合に、加熱終了時点teを適宜変更するように構成したが、加熱終了時点teを変更する場合は、これらの条件に限らない。例えば、これらの条件のうち一方のみを採用する構成としても構わない。