【実施例1】
【0032】
本発明の好適な一実施例である制御棒駆動機構の据付作業について、CRDフランジ2とスプールピース13の接続作業におけるスプライン5とバネササエ19を嵌め合わせる作業の手順を、図を用いて以下に説明する。
【0033】
以下に説明する本発明の特徴は、制御棒駆動機構のハウジングに取り付けられるCRDフランジ2と、駆動機構の接続部11の接続作業において、駆動機構が受ける荷重を監視し、前記荷重がCRDフランジ2と接続部11の摺動抵抗以上にならないように、作業を行うことにある。
【0034】
ここでスプライン5とバネササエ19の嵌め合わせが、かじることなく正常に行われる場合、バネササエの先端がスプラインの奥端に達するまでは、バネササエ上部の制御棒駆動機構の中空ピストンや制御棒の自重はバネササエに掛かることはなく、駆動機構にはCRDフランジとスプールピース内部のOリングの接触による摺動抵抗が、荷重として掛かる。
【0035】
しかしながら、バネササエとスプラインの嵌め合わせが正常に行われない場合、バネササエは、その先端がスプラインの奥端に達する前に、スプラインをかじり持ち上げてしまうため、駆動機構にはCRDフランジとスプールピース内部のOリングの接触による摺動抵抗に加え、スプライン上部の制御棒駆動機構の中空ピストンや制御棒の自重も、荷重としてかかる。
【0036】
そこで、本発明ではCRDフランジと駆動機構の接続部の接続作業においては、CRDフランジと駆動機構の接続部との面間距離と、駆動機構に掛かる荷重を監視しつつ、前記の面間距離が、バネササエの先端がスプラインに正常に嵌め合わせられる値に達する前に、前記の監視荷重が、CRDフランジとスプールピース内のOリングによる摺動抵抗以上とならないように作業を行うものである。
【0037】
まず
図4において、本発明の据付作業で使用する設備について説明する。但し、スプールピース13は、駆動機構取り付け装置20に取り付けられ、駆動機構取り付け装置20により、昇降ならびに接続位置の調整が行われ、ハウジング1下のCRDフランジ2に取り付けられるものとする。
【0038】
駆動機構取り付け装置20は、前述したようにスプールピース13を固定するアタッチメント22と、固定治具を鉛直方向に位置調整するためのボルト着脱機構23を備える。そのうえで本発明においては、アタッチメント22の下部に取り付けられスプールピース13に掛かるヘッド荷重を検出するロードセル26と信号処理装置27を新たに備えている。
【0039】
信号処理装置27は、信号処理部27aとモニタ27bで構成されている。信号処理部27aは駆動機構取り付け装置20から、位置(Z)、ヘッド荷重(W)、距離(L)の情報を取り込んで、スプライン5とバネササエ19の位置関係を推定可能な情報をモニタ27bに表示する。据付作業員は、モニタ27bの表示内容から現在状態を推定し、正しく嵌装するための一連の処理を実行する。
【0040】
信号処理装置27は、据付作業員の理解を助ける目的でモニタ表示を行うが、ここに表示される情報は、検出器を用いて直接検出した検出値情報、初期設置位置での情報や各種判定に使用する判定情報などの設定値情報、これらの情報を用いて内部演算により求めた算出値情報、位置関係などを視覚的にグラフ表示したグラフ表示情報などである。これらの情報は、種別ごとに区別されて
図5のモニタ画面事例のように表示される。なお、信号処理装置27が検出、設定のための信号入力回路あるいはキーボードなどを備えることは言うまでもない。また信号処理装置27が検出、設定、演算、表示についての処理を実行する機能を備えていることはいうまでもない。
【0041】
図5の画面事例で、表示部D1は検出値情報、表示部D2は設定値情報、表示部D3は算出値情報、表示部D4はグラフ表示情報の表示領域を表している。
【0042】
図5の画面の表示事例に示すように、表示部D1の検出値情報は具体的に言うと、ボルト着脱機構23並びにロードセル26から得た鉛直方向の位置(Z)並びにヘッド荷重(W)である。表示部D2の設定値情報は、初期面間距離(L
0)、初期荷重(W
0)、判定荷重(W
f)、初期鉛直位置(Z
0)、嵌合距離(L
f)である。また表示部D3の算出値情報は、荷重変動閾値(We),CRDフランジと駆動機構の接続部との面間距離(L=L
0−(Z−Z
0))、荷重変動(ΔW=W−W
0)である。また表示部D4のグラフ表示情報としては、たとえば面間距離(L)と荷重変動(ΔW)の推移をグラフとして表示している。なお、これらの値が具体的にどの部位のものであるかについては、後で図面を参照して説明する。
【0043】
続いて、
図6により、本実施例における制御棒駆動機構のハウジング1に取り付けられるCRDフランジ2とスプールピース13の接続作業の手順を示す。また
図7には、各処理手順前後における各部位置や状態を示している。
【0044】
まず、
図6の処理手順S1では、駆動機構取り付け装置20のアタッチメント22に固定されたスプールピース13の平面位置を、スプールピース13内のバネササエ19と、上方の制御棒駆動機構のハウジング1内のスプライン5が嵌め合う位置に調整する。
図7(a)は、駆動機構取り付け装置20を水平移動させる前後の位置関係を示しており、ハウジング1の直下に駆動機構取り付け装置20を移動させた状態を示している。
【0045】
図6の処理手順S2では、駆動機構10の鉛直位置を、スプライン5がスプールピース13に隠れない程度に調整する。また処理手順S3では、CRDフランジ2から接続部11までの面間距離(L)を初期面間距離(L
0)として測定し、スプライン5の先端がバネササエ19に嵌め合う嵌合距離(L
f)を算出する。さらに処理手順S4では、信号処理装置により、鉛直位置(Z)、ヘッド荷重(W)を確認し、それぞれ、初期鉛直位置(Z
0)、初期荷重(W
0)として設定する。
【0046】
図7(b)は、高さ方向に移動されたこと、並びに移動後の位置、荷重などの測定部位を示している。なお、ここで求められた情報である初期面間距離(L
0)、嵌合距離(L
f)、初期鉛直位置(Z
0)、初期荷重(W
0)は、信号処理装置27に取り込まれた後にモニタ27bに設定値として設定される。
【0047】
図6の処理手順S5では、前述の初期荷重(W
0)並びに予め定めた接続作業をやり直す判定値となるヘッド荷重(判定荷重(W
f))により、荷重変動閾値(W
e=W
f−W
0)を算出し、信号処理装置27に設定する。なお、初期荷重(W
0)、ヘッド荷重(判定荷重(W
f))はモニタ27bの設定情報として表示され、荷重変動閾値(W
e=W
f−W
0)は、モニタ27bの算出値情報として表示される。
【0048】
以上の計測、設定段階が完了すると、次に駆動機構の高さ調整作業を実施する。
【0049】
図6の処理手順S6では、駆動機構10の高さ位置を少し上げ、スプライン5の先端をバネササエ19の奥端に近づけ、鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定する。測定された鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)は、モニタ27bの検出値情報として表示され、接近の度合いに応じて時々刻々その値を変更する。
【0050】
図7(c)は、駆動機構取り付け装置20が高さ方向に移動されて、スプールピース13で形成する内筒内に、CRDフランジ2下部の突出部が収納されるまでに達したことを示している。この状態になると、該当部位は完全に見ることができない。
【0051】
図6の処理手順S7では、継続して駆動機構10の高さ位置を少し上げ、鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定しながら、信号処理装置27にて、CRDフランジと駆動機構の接続部との面間距離(L=L
0−(Z−Z
0))、荷重変動(ΔW=W−W
0)を算出し、グラフにプロットする。
図7(d)は、更に接近してこのときの鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定することを示している。
【0052】
このようにして求めた面間距離(L=L
0−(Z−Z
0))と荷重変動(ΔW=W−W
0)から、
図6の処理手順S8、S9では、現在の位置関係を評価し、評価結果に応じて次の対応を決定する。
【0053】
まず処理手順S8で、面間距離(L)が嵌合距離(L
f)より大きく(L>L
f)、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W
e)に等しいかあるいは大きい(ΔW≧W
e)ことを判断する。条件が成立する場合(処理手順S8のYes)は、スプライン5の先端がバネササエ19の奥端に達する前の段階にあるにも拘わらず、スプライン5にはバネササエ19の上部の中空ピストン91の自重が掛かっていることになる。この状態では、荷重の係り具合から判断すると、いわゆるかじった状態にあると判断できる。
【0054】
この場合は、処理手順S14に移り、駆動機構10の高さ位置を駆動機構10の平面位置を調整できる程度に下げる。
図7(e)は、この下げた状態を表している。処理手順S14の実行後に処理手順S15では、駆動機構10の平面位置をスプライン5とバネササエ19が正常に嵌め合うように再調整し、前述した(駆動機構の高さ調整)の手順S6に戻る。
図7(f)は、処理手順S15を実行後の状態を示しており、この状態は
図7(c)の右側の状態にある。
【0055】
処理手順S8の判断「No」であるときは、引き続き処理手順S9の判断を実行する。ここでは、面間距離(L)が嵌合距離(L
f)より大きく(L>L
f)、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W
e)より小さい(ΔW<W
e)ことを判断する。この条件が成立する場合(処理手順S9のYes)は、駆動機構10の高さ位置はそのままとし、駆動機構の高さ調整の手順S7に戻る。
【0056】
(L>L
f)かつ(ΔW≧W
e)にも(L>L
f)かつ(ΔW<W
e)にも該当しない場合には、処理手順S10の処理に入る。処理手順S10では、駆動機構10の高さ位置を更に上げる。これによりスプライン5の先端がバネササエ19の奥端に到達するが、スプールピース13の接続部11は上部のハウジング1のCRDフランジ2に接触しない程度に近づける。
【0057】
その後処理手順S11では、再度、鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定し、信号処理装置27にて、CRDフランジ2と駆動機構の接続部11との面間距離(L=L
0−(Z−Z
0))、荷重変動(ΔW=W−W
0)を算出する。この状態が
図7(g)に図示されている。
【0058】
この状態で、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W
e)に等しいかあるいは大きい(ΔW≧W
e)場合には、スプライン5とバネササエ19の嵌合は正常に行われているといえる。処理手順S12では、この条件の成立を確認し、成立しているときには処理手順S13においてスプライン5とバネササエ19の嵌合は正常に行われたと判断する。この判断結果は、モニタ27bを通じて作業員に通知される。
【0059】
しかし、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W
e)より小さい(ΔW<W
e)場合には、処理手順S14に戻り、再度調整する。処理手順S14では、駆動機構10の高さ位置を、面間距離(L)が初期面間距離(L
0)に戻る(L=L
0)ように戻し、本実施例に示したCRDフランジ2とスプールピース13の接続作業を最初からやり直す。
【0060】
以上説明した信号処理装置27は、据付を正しく行わせるための情報を提供し、さらには
図6の判断結果に応じて駆動機構取り付け装置10に位置情報を与えて位置調整を行わせるものとすることができる。この信号処理装置27は、制御棒駆動機構の据付支援装置として機能している。