特許第5865162号(P5865162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5865162制御棒駆動機構の据付方法と据付支援装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865162
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】制御棒駆動機構の据付方法と据付支援装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/20 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   G21C19/20 BGDB
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-88987(P2012-88987)
(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公開番号】特開2013-217783(P2013-217783A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 正浩
(72)【発明者】
【氏名】東石 良治
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 宏一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛明
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209253(JP,A)
【文献】 特開2001−159698(JP,A)
【文献】 特開平04−089596(JP,A)
【文献】 実開昭55−123898(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御棒に接続された中空ピストンを内部高さ方向に備え、下部にCRDフランジを備えた制御棒駆動機構のハウジングと、接続部を上部に備え、前記中空ピストンに駆動力を与える駆動機構と、水平方向と高さ方向に移動でき前記駆動機構を載置する駆動機構取り付け装置を備え、駆動機構取り付け装置により位置調整して前記ハウジング下部のCRDフランジに形成された凸部と、前記駆動機構上部の接続部に形成された凹部を、嵌合することで接続する制御棒駆動機構の据付方法において、
前記駆動機構に掛かる荷重を監視し、該荷重が前記ハウジングに取り付けられるCRDフランジに形成された凸部と前記駆動機構の接続部に形成された凹部との嵌合による摺動抵抗以上にならないように接続することを特徴とする制御棒駆動機構の据付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御棒駆動機構の据付方法において、
前記制御棒駆動機構のCRDフランジに形成された凸部と前記駆動機構の接続部に形成された凹部との嵌合による接続は、前記ハウジング下部のCRDフランジに形成された凸部内に収納されたスプラインと前記駆動機構上部の接続部に形成された凹部内に収納されたバネササエが最後まで嵌合したことを確認して行うことを特徴とする制御棒駆動機構の据付方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御棒駆動機構の据付方法において、
前記荷重が前記ハウジングに取り付けられるCRDフランジに形成された凸部と前記駆動機構の接続部に形成された凹部との嵌合による摺動抵抗以上にならないように接続することに加え、前記CRDフランジに形成された凸部と前記駆動機構の接続部に形成された凹部との接続位置を微調整しながら接続することで、前記ハウジング内のスプラインと前記駆動機構内のバネササエをかじらせず、効率的に嵌合させることを特徴とする制御棒駆動機構の据付方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の制御棒駆動機構の据付方法において、
前記駆動機構に掛かる荷重を複数点で監視することを特徴とする制御棒駆動機構の据付方法。
【請求項5】
制御棒に接続された中空ピストンを内部高さ方向に備え、下部にCRDフランジを備えた制御棒駆動機構のハウジングと、接続部を上部に備え、前記中空ピストンに駆動力を与える駆動機構と、水平方向と高さ方向に移動でき前記駆動機構を載置する駆動機構取り付け装置と、据付のための情報を提示する信号処理装置とを備え、駆動機構取り付け装置により位置調整して前記ハウジング下部のCRDフランジに形成された凸部と、前記駆動機構上部の接続部に形成された凹部を、嵌合することで接続する制御棒駆動機構の据付支援装置において、
前記信号処理装置は、前記駆動機構に掛かる荷重の情報として、予め定めた接続作業をやり直す判定値となるヘッド荷重の情報を含んで提供することを特徴とする制御棒駆動機構の据付支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御棒駆動機構の据付支援装置において、
前記信号処理装置は、前記駆動機構に掛かる荷重の情報と、前記CRDフランジの下面と前記駆動機構の接続部の上面との間の距離の情報を提供することを特徴とする制御棒駆動機構の据付支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御棒駆動機構の据付支援装置において、
前記信号処理装置は、前記駆動機構に掛かる荷重の情報と、前記CRDフランジの下面と前記駆動機構の接続部の上面との間の距離の情報を時系列的にグラフ化して提供することを特徴とする制御棒駆動機構の据付支援装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の制御棒駆動機構の据付支援装置において、
前記信号処理装置は、計測により求めた情報と、設定により与えた情報と、これら情報から算出した情報を提供することを特徴とする制御棒駆動機構の据付支援装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の制御棒駆動機構の据付支援装置において、
前記信号処理装置は、前記駆動機構に掛かる荷重の情報と、前記CRDフランジの下面と前記駆動機構の接続部の上面との間の距離の情報の関係を判断して、駆動機構取り付け装置による位置調整を行わせることを特徴とする制御棒駆動機構の据付支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の制御棒駆動機構の据付方法と据付支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器内に、複数の燃料集合体を装荷した炉心を配置している。原子炉出力は、炉心内に挿入された制御棒の引抜き操作(または挿入操作)を行うことによって制御される。このような制御棒の操作は、原子炉圧力容器の底部に設けられた制御棒駆動機構ハウジング内に設置された制御棒駆動機構によって行われる。
【0003】
例えば特許文献1で公知の制御棒駆動機構の概略図を図1に示す。制御棒駆動機構のハウジング1は、原子炉圧力容器底部100の底壁貫通孔101に据えつけられ、CRDフランジ2により後述する駆動機構10と接続される。
【0004】
ハウジング1内には、中空ピストン91と、ねじ軸3並びにナット4と、スプライン5が備えられる。このうち中空ピストン91は制御棒90と連結されている。ねじ軸3並びにナット4は、駆動機構10からの回転駆動力を直動駆動力に変換する。ねじ軸3並びにナット4は中空ピストン91に結合しており、中空ピストン91を上下動させることで制御棒90を挿入・引抜きする。スプライン5は、駆動機構10の回転軸17とねじ軸3を接続するために駆動機構10のバネササエ19と嵌合している。
【0005】
制御棒90を挿入・引抜きするため、ねじ軸3を回転させる回転駆動力は、ハウジング1下部に接続される駆動機構10により供給される。
【0006】
制御棒駆動機構の駆動機構10は、CRDフランジ2との接続部11並びにCRDフランジ2と摺動するOリング12を内部に有するスプールピース13、スプールピース13内部でねじ軸3を回転駆動する電動機と減速機14、電動機と減速機14の出力を伝達するカップリング18と回転軸17、回転軸17とねじ軸3を接続するためにスプライン5と嵌合されるバネササエ19により構成される。
【0007】
図1は組み立てられた後の制御棒駆動機構の構成を示しているが、次に制御棒駆動機構の据付作業について図2で説明する。据付作業では、既に原子炉圧力容器底部100の底壁貫通孔101に制御棒駆動機構のハウジング1が据え付けられている。ハウジング1の下端にはCRDフランジ2が取り付けられている。このハウジング1に、駆動機構10の接続部11を接続する。
【0008】
図2の作業では、既に固定された制御棒駆動機構のハウジング1に、その下側から駆動機構10を持ち上げ、位置合わせを行ってから取り付けを行う。この段階では、駆動機構10には電動機と減速機14は組みつけられていない。
【0009】
駆動機構10の持ち上げのために、駆動機構取り付け装置20を使用する。駆動機構取り付け装置20は、駆動機構10のスプールピース13を固定するアタッチメント22、固定した駆動機構10の鉛直方向の位置調整を行うボルト着脱機構23により構成される。
【0010】
駆動機構10を持ち上げるときには、上部側であるハウジング1下部のスプライン5と、下部側であるスプールピース13内のバネササエ19が嵌合するように、CRDフランジ2と接続部11の接続位置が調整される。その後、取り付けボルト21にて、CRDフランジ2と接続部11が固定される。
【0011】
特許文献1には、上記構造を有する制御棒駆動機構と取り付け手順が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−209253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上説明したように、制御棒駆動機構の据付作業においては、制御棒駆動機構のハウジング1に取り付けられるCRDフランジ2に、駆動機構10のスプールピース13の接続部11を接続する作業を実施する。
【0014】
このときに、CRDフランジ2に駆動機構の接続部11を近接させると、CRDフランジ2下部のスプライン5とスプールピース13内のバネササエ19が、スプールピース13に隠れてしまう。このためスプライン5とバネササエ19をかじらせることなく正しく嵌合させているか、目視で確認しながら作業することが困難であった。
【0015】
ここで正しい嵌合状態とは、図2に示すスプライン5側の凹部分にバネササエ19側の凸部分が最終位置まで挿入されることである。図1の正しい嵌合状態では、最終位置(例えば両者が接触する位置)まで挿入されている。これに対し、スプライン5とバネササエ19をかじらせ、正しく嵌合していない一例を図3に示す。図3において一点鎖線で示す部分をみると、スプライン5の凹部分の奥端にバネササエ19の凸部分が到達していないことがわかる。
【0016】
図3のように、バネササエ19とスプライン5がかじってしまうと、バネササエ19の先端がスプライン5の奥端まで到達せず、バネササエ19がスプライン5を持ち上げてしまう状態(正しく嵌合していない状態)となる。この状態の確認を目視で行うことが困難である。このため、これに気づかないまま、制御棒駆動機構のハウジング1に取り付けられるCRDフランジ2と、駆動機構10のスプールピース13の接続部11を接続すると、スプライン5を破損する恐れがある。
【0017】
また、図3のようにバネササエ19とスプライン5の嵌合が正しく行われていない状態のままCRDフランジ2と接続部11を接続した場合、駆動機構10の電動機と減速機14の駆動力を、ねじ軸3に正しく伝えることができない。この結果、駆動効率が低下する事象、あるいは回転速度やトルクが不安定になり制御棒駆動機構による制御棒の駆動が正しく行われない事象が生じる恐れが高まる。
【0018】
なお、かじりの状態は、スプライン5側の凹部分の内径とバネササエ19側の凸部分の外径の寸法差が非常に小さいために、挿入する際の極僅かな挿入角度のズレ、異物の存在により発生するものである。かじり現象が発生し、駆動が正しく行われない場合は、接続部11をCRDフランジ2より取り外し、再度の据付が必要となる。
【0019】
従って、制御棒駆動機構の据付作業において、バネササエ19とスプライン5の嵌合が正しく行われていることを、確実な方法により確認しながら作業することは、作業効率を高めることになる。
【0020】
以上のことから本発明の目的は、制御棒駆動機構の据付作業における制御棒駆動機構のハウジングに取り付けられるCRDフランジと、駆動機構の接続部の接続作業において、ハウジング下部のスプラインと駆動機構のスプールピース内のバネササエの嵌め合せが、正しく行われているか、客観的な指標により確認しながら効率良く作業できる据付方法と据付支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以上のことから本発明においては、制御棒に接続された中空ピストンを内部高さ方向に備え、下部にCRDフランジを備えた制御棒駆動機構のハウジングと、接続部を上部に備え、中空ピストンに駆動力を与える駆動機構と、水平方向と高さ方向に移動でき駆動機構を載置する駆動機構取り付け装置を備え、駆動機構取り付け装置により位置調整してハウジング下部のCRDフランジと駆動機構上部の接続部を接続する制御棒駆動機構の据付方法において、駆動機構に掛かる荷重を監視し、荷重がハウジングに取り付けられるCRDフランジと駆動機構の接続部との摺動抵抗以上にならないように接続することを特徴とする。
【0022】
また制御棒駆動機構のCRDフランジと駆動機構の接続部との接続は、ハウジング下部のスプラインと駆動機構内のバネササエが最後まで嵌合したことを確認して行うことを特徴とする。
【0023】
また荷重がハウジングに取り付けられるCRDフランジと駆動機構の接続部との摺動抵抗以上にならないように接続することに加え、CRDフランジと駆動機構の接続部との接続位置を微調整しながら接続することで、ハウジング内のスプラインと駆動機構内のバネササエをかじらせず、効率的に嵌合させることを特徴とする。
【0024】
また駆動機構に掛かる荷重を複数点で監視することを特徴とする。
【0025】
以上のことから本発明においては、制御棒に接続された中空ピストンを内部高さ方向に備え、下部にCRDフランジを備えた制御棒駆動機構のハウジングと、接続部を上部に備え、中空ピストンに駆動力を与える駆動機構と、水平方向と高さ方向に移動でき駆動機構を載置する駆動機構取り付け装置とを備え、駆動機構取り付け装置により位置調整してハウジング下部のCRDフランジと、据付のための情報を提示する信号処理装置27とを含む制御棒駆動機構の据付支援装置において、信号処理装置は、駆動機構に掛かる荷重の情報を提供することを特徴とする。
【0026】
また信号処理装置は、駆動機構に掛かる荷重の情報と、CRDフランジの下面と駆動機構の接続部の上面との間の距離の情報を提供することを特徴とする。
【0027】
また信号処理装置は、駆動機構に掛かる荷重の情報と、CRDフランジの下面と駆動機構の接続部の上面との間の距離の情報を時系列的にグラフ化して提供することを特徴とする。
【0028】
また信号処理装置は、計測により求めた情報と、設定により与えた情報と、これら情報から算出した情報を提供することを特徴とする。
【0029】
また信号処理装置は、駆動機構に掛かる荷重の情報と、CRDフランジの下面と駆動機構の接続部の上面との間の距離の情報の関係を判断して、駆動機構取り付け装置による位置調整を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、制御棒駆動機構のハウジングに取り付けられるCRDフランジと駆動機構の接続部の接続作業において、CRDフランジ下部のスプラインに、スプールピース内のバネササエをかじらせていないことを、客観的な指標により確認しながら、効率的に接続を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明が適用される制御棒駆動機構の概略図。
図2】制御棒駆動機構のハウジングに駆動機構を接続する作業の説明図。
図3】スプラインとバネササエが正しく嵌め合わされていない状態を示す概略図。
図4】本発明の据付作業で使用する設備について説明する図。
図5】モニタ画面の表示事例を示す図。
図6】スプラインとバネササエの嵌め合わせの手順を示したフローチャート。
図7(a)】図6の処理手順S1実行前後の位置関係を示す図。
図7(b)】図6の処理手順S2−S4実行前後の位置関係を示す図。
図7(c)】図6の処理手順S6実行前後の位置関係を示す図。
図7(d)】図6の処理手順S7実行前後の位置関係を示す図。
図7(e)】図6の処理手順S14実行前後の位置関係を示す図。
図7(f)】図6の処理手順S15実行前後の位置関係を示す図。
図7(g)】図6の処理手順S11実行前後の位置関係を示す図。
図8】本発明を適用できる軸封型の制御棒駆動機構の概要図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
本発明の好適な一実施例である制御棒駆動機構の据付作業について、CRDフランジ2とスプールピース13の接続作業におけるスプライン5とバネササエ19を嵌め合わせる作業の手順を、図を用いて以下に説明する。
【0033】
以下に説明する本発明の特徴は、制御棒駆動機構のハウジングに取り付けられるCRDフランジ2と、駆動機構の接続部11の接続作業において、駆動機構が受ける荷重を監視し、前記荷重がCRDフランジ2と接続部11の摺動抵抗以上にならないように、作業を行うことにある。
【0034】
ここでスプライン5とバネササエ19の嵌め合わせが、かじることなく正常に行われる場合、バネササエの先端がスプラインの奥端に達するまでは、バネササエ上部の制御棒駆動機構の中空ピストンや制御棒の自重はバネササエに掛かることはなく、駆動機構にはCRDフランジとスプールピース内部のOリングの接触による摺動抵抗が、荷重として掛かる。
【0035】
しかしながら、バネササエとスプラインの嵌め合わせが正常に行われない場合、バネササエは、その先端がスプラインの奥端に達する前に、スプラインをかじり持ち上げてしまうため、駆動機構にはCRDフランジとスプールピース内部のOリングの接触による摺動抵抗に加え、スプライン上部の制御棒駆動機構の中空ピストンや制御棒の自重も、荷重としてかかる。
【0036】
そこで、本発明ではCRDフランジと駆動機構の接続部の接続作業においては、CRDフランジと駆動機構の接続部との面間距離と、駆動機構に掛かる荷重を監視しつつ、前記の面間距離が、バネササエの先端がスプラインに正常に嵌め合わせられる値に達する前に、前記の監視荷重が、CRDフランジとスプールピース内のOリングによる摺動抵抗以上とならないように作業を行うものである。
【0037】
まず図4において、本発明の据付作業で使用する設備について説明する。但し、スプールピース13は、駆動機構取り付け装置20に取り付けられ、駆動機構取り付け装置20により、昇降ならびに接続位置の調整が行われ、ハウジング1下のCRDフランジ2に取り付けられるものとする。
【0038】
駆動機構取り付け装置20は、前述したようにスプールピース13を固定するアタッチメント22と、固定治具を鉛直方向に位置調整するためのボルト着脱機構23を備える。そのうえで本発明においては、アタッチメント22の下部に取り付けられスプールピース13に掛かるヘッド荷重を検出するロードセル26と信号処理装置27を新たに備えている。
【0039】
信号処理装置27は、信号処理部27aとモニタ27bで構成されている。信号処理部27aは駆動機構取り付け装置20から、位置(Z)、ヘッド荷重(W)、距離(L)の情報を取り込んで、スプライン5とバネササエ19の位置関係を推定可能な情報をモニタ27bに表示する。据付作業員は、モニタ27bの表示内容から現在状態を推定し、正しく嵌装するための一連の処理を実行する。
【0040】
信号処理装置27は、据付作業員の理解を助ける目的でモニタ表示を行うが、ここに表示される情報は、検出器を用いて直接検出した検出値情報、初期設置位置での情報や各種判定に使用する判定情報などの設定値情報、これらの情報を用いて内部演算により求めた算出値情報、位置関係などを視覚的にグラフ表示したグラフ表示情報などである。これらの情報は、種別ごとに区別されて図5のモニタ画面事例のように表示される。なお、信号処理装置27が検出、設定のための信号入力回路あるいはキーボードなどを備えることは言うまでもない。また信号処理装置27が検出、設定、演算、表示についての処理を実行する機能を備えていることはいうまでもない。
【0041】
図5の画面事例で、表示部D1は検出値情報、表示部D2は設定値情報、表示部D3は算出値情報、表示部D4はグラフ表示情報の表示領域を表している。
【0042】
図5の画面の表示事例に示すように、表示部D1の検出値情報は具体的に言うと、ボルト着脱機構23並びにロードセル26から得た鉛直方向の位置(Z)並びにヘッド荷重(W)である。表示部D2の設定値情報は、初期面間距離(L)、初期荷重(W)、判定荷重(W)、初期鉛直位置(Z)、嵌合距離(L)である。また表示部D3の算出値情報は、荷重変動閾値(We),CRDフランジと駆動機構の接続部との面間距離(L=L−(Z−Z))、荷重変動(ΔW=W−W)である。また表示部D4のグラフ表示情報としては、たとえば面間距離(L)と荷重変動(ΔW)の推移をグラフとして表示している。なお、これらの値が具体的にどの部位のものであるかについては、後で図面を参照して説明する。
【0043】
続いて、図6により、本実施例における制御棒駆動機構のハウジング1に取り付けられるCRDフランジ2とスプールピース13の接続作業の手順を示す。また図7には、各処理手順前後における各部位置や状態を示している。
【0044】
まず、図6の処理手順S1では、駆動機構取り付け装置20のアタッチメント22に固定されたスプールピース13の平面位置を、スプールピース13内のバネササエ19と、上方の制御棒駆動機構のハウジング1内のスプライン5が嵌め合う位置に調整する。図7(a)は、駆動機構取り付け装置20を水平移動させる前後の位置関係を示しており、ハウジング1の直下に駆動機構取り付け装置20を移動させた状態を示している。
【0045】
図6の処理手順S2では、駆動機構10の鉛直位置を、スプライン5がスプールピース13に隠れない程度に調整する。また処理手順S3では、CRDフランジ2から接続部11までの面間距離(L)を初期面間距離(L)として測定し、スプライン5の先端がバネササエ19に嵌め合う嵌合距離(L)を算出する。さらに処理手順S4では、信号処理装置により、鉛直位置(Z)、ヘッド荷重(W)を確認し、それぞれ、初期鉛直位置(Z)、初期荷重(W)として設定する。
【0046】
図7(b)は、高さ方向に移動されたこと、並びに移動後の位置、荷重などの測定部位を示している。なお、ここで求められた情報である初期面間距離(L)、嵌合距離(L)、初期鉛直位置(Z)、初期荷重(W)は、信号処理装置27に取り込まれた後にモニタ27bに設定値として設定される。
【0047】
図6の処理手順S5では、前述の初期荷重(W)並びに予め定めた接続作業をやり直す判定値となるヘッド荷重(判定荷重(W))により、荷重変動閾値(W=W−W)を算出し、信号処理装置27に設定する。なお、初期荷重(W)、ヘッド荷重(判定荷重(W))はモニタ27bの設定情報として表示され、荷重変動閾値(W=W−W)は、モニタ27bの算出値情報として表示される。
【0048】
以上の計測、設定段階が完了すると、次に駆動機構の高さ調整作業を実施する。
【0049】
図6の処理手順S6では、駆動機構10の高さ位置を少し上げ、スプライン5の先端をバネササエ19の奥端に近づけ、鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定する。測定された鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)は、モニタ27bの検出値情報として表示され、接近の度合いに応じて時々刻々その値を変更する。
【0050】
図7(c)は、駆動機構取り付け装置20が高さ方向に移動されて、スプールピース13で形成する内筒内に、CRDフランジ2下部の突出部が収納されるまでに達したことを示している。この状態になると、該当部位は完全に見ることができない。
【0051】
図6の処理手順S7では、継続して駆動機構10の高さ位置を少し上げ、鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定しながら、信号処理装置27にて、CRDフランジと駆動機構の接続部との面間距離(L=L−(Z−Z))、荷重変動(ΔW=W−W)を算出し、グラフにプロットする。図7(d)は、更に接近してこのときの鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定することを示している。
【0052】
このようにして求めた面間距離(L=L−(Z−Z))と荷重変動(ΔW=W−W)から、図6の処理手順S8、S9では、現在の位置関係を評価し、評価結果に応じて次の対応を決定する。
【0053】
まず処理手順S8で、面間距離(L)が嵌合距離(L)より大きく(L>L)、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W)に等しいかあるいは大きい(ΔW≧W)ことを判断する。条件が成立する場合(処理手順S8のYes)は、スプライン5の先端がバネササエ19の奥端に達する前の段階にあるにも拘わらず、スプライン5にはバネササエ19の上部の中空ピストン91の自重が掛かっていることになる。この状態では、荷重の係り具合から判断すると、いわゆるかじった状態にあると判断できる。
【0054】
この場合は、処理手順S14に移り、駆動機構10の高さ位置を駆動機構10の平面位置を調整できる程度に下げる。図7(e)は、この下げた状態を表している。処理手順S14の実行後に処理手順S15では、駆動機構10の平面位置をスプライン5とバネササエ19が正常に嵌め合うように再調整し、前述した(駆動機構の高さ調整)の手順S6に戻る。図7(f)は、処理手順S15を実行後の状態を示しており、この状態は図7(c)の右側の状態にある。
【0055】
処理手順S8の判断「No」であるときは、引き続き処理手順S9の判断を実行する。ここでは、面間距離(L)が嵌合距離(L)より大きく(L>L)、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W)より小さい(ΔW<W)ことを判断する。この条件が成立する場合(処理手順S9のYes)は、駆動機構10の高さ位置はそのままとし、駆動機構の高さ調整の手順S7に戻る。
【0056】
(L>L)かつ(ΔW≧W)にも(L>L)かつ(ΔW<W)にも該当しない場合には、処理手順S10の処理に入る。処理手順S10では、駆動機構10の高さ位置を更に上げる。これによりスプライン5の先端がバネササエ19の奥端に到達するが、スプールピース13の接続部11は上部のハウジング1のCRDフランジ2に接触しない程度に近づける。
【0057】
その後処理手順S11では、再度、鉛直位置(Z)とヘッド荷重(W)を測定し、信号処理装置27にて、CRDフランジ2と駆動機構の接続部11との面間距離(L=L−(Z−Z))、荷重変動(ΔW=W−W)を算出する。この状態が図7(g)に図示されている。
【0058】
この状態で、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W)に等しいかあるいは大きい(ΔW≧W)場合には、スプライン5とバネササエ19の嵌合は正常に行われているといえる。処理手順S12では、この条件の成立を確認し、成立しているときには処理手順S13においてスプライン5とバネササエ19の嵌合は正常に行われたと判断する。この判断結果は、モニタ27bを通じて作業員に通知される。
【0059】
しかし、荷重変動(ΔW)が荷重変動閾値(W)より小さい(ΔW<W)場合には、処理手順S14に戻り、再度調整する。処理手順S14では、駆動機構10の高さ位置を、面間距離(L)が初期面間距離(L)に戻る(L=L)ように戻し、本実施例に示したCRDフランジ2とスプールピース13の接続作業を最初からやり直す。
【0060】
以上説明した信号処理装置27は、据付を正しく行わせるための情報を提供し、さらには図6の判断結果に応じて駆動機構取り付け装置10に位置情報を与えて位置調整を行わせるものとすることができる。この信号処理装置27は、制御棒駆動機構の据付支援装置として機能している。
【実施例2】
【0061】
本発明の第二の好適な実施例である制御棒駆動機構の据付作業について、CRDフランジ2とスプールピース13の接続作業におけるスプライン5とバネササエ19を嵌め合わせる作業の手順を、図4を用いて以下に説明する。
【0062】
実施例1と同様に、図4のスプールピース13は、駆動機構取り付け装置10に取り付けられ、駆動機構取り付け装置10により、昇降ならびに接続位置の調整が行われ、CRDフランジ2に取り付けられる。
【0063】
ここでは、駆動機構取り付け装置20のロードセル26が複数配置されていることを利用し、信号処理装置27では、プールピース13に掛かる荷重の大きさだけでなく、荷重の方向も検出する。
【0064】
このようにすることで、スプライン5の先端がバネササエ19の奥端に嵌め合う前に、スプライン5がバネササエ19をかじってしまい、駆動機構10の高さ位置を一旦下げ、駆動機構10の平面位置をスプライン5とバネササエ19が正常に嵌め合うように調整する必要がある状況において、信号処理装置27により得られたスプライン5に掛かる荷重の方向を確認することで、駆動機構10の平面位置の調整作業を、実施例1に比べ、より効率的に実施することができる。
【実施例3】
【0065】
勿論、本発明は、軸封型の制御棒駆動機構の据付作業にも適用することができる。図8は、軸封型の制御棒駆動機構を示している。
【0066】
なお、軸封型の制御棒駆動機構は、図1のカップリング18が無く、回転軸17と電動機と減速機14が直結されており、軸封機構24により原子炉圧力容器底部100からの炉水をシールし、軸封機構24のベアリング25により回転軸17を保持する構造となっている。
【符号の説明】
【0067】
1:ハウジング
2:CRDフランジ
3:ねじ軸
4:ナット
5:スプライン
10:駆動機構
11:接続部
12:Oリング
13:スプールピース
14:電動機と減速機
17:回転軸
18:カップリング
19:バネササエ
20:駆動機構取り付け装置
21:取り付けボルト
22:アタッチメント
23:ボルト着脱機構
24:軸封機構
25:ベアリング
26:ロードセル
27:信号処理装置
90:制御棒
91:中空ピストン
100:原子炉圧力容器底部
101:底壁貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図7(e)】
図7(f)】
図7(g)】
図8