特許第5865166号(P5865166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5865166油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法及び浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865166
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法及び浄化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/78 20060101AFI20160204BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20160204BHJP
   C02F 3/06 20060101ALI20160204BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20160204BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C02F1/78ZAB
   C02F1/24 B
   C02F3/06
   B09B3/00 304K
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-95399(P2012-95399)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-220407(P2013-220407A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】500348745
【氏名又は名称】株式会社ナゴヤ大島機械
(73)【特許権者】
【識別番号】000191135
【氏名又は名称】株式会社日本海水
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100094709
【弁理士】
【氏名又は名称】加々美 紀雄
(72)【発明者】
【氏名】三吉 純男
(72)【発明者】
【氏名】小河 篤史
(72)【発明者】
【氏名】大島 正敬
(72)【発明者】
【氏名】船戸 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】加納 裕士
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−149964(JP,A)
【文献】 特開昭62−155989(JP,A)
【文献】 特開2005−118664(JP,A)
【文献】 特開2003−320366(JP,A)
【文献】 特開2005−066442(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0157424(US,A1)
【文献】 特開2001−129572(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/101455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00〜 1/78
C02F 3/00〜 3/34
B09C 1/00〜 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水の浄化方法であって、該被処理水を、2価鉄及び/又は0価の鉄の鉄濃度を20mg/L以上に、pHを3〜5の範囲に調整し、該調整した被処理にオゾン化酸素をミキサーにより混入し、循環処理しながら連続的にオゾンの注入を行い、オゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化することを特徴とする油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項2】
前記オゾン化酸素の注入体積比率が循環水量に対して9%以上であることを特徴とする請求項1記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項3】
前記鉄の濃度を30mg/L以上とすることを特徴とする請求項1又は2記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項4】
更に、前記オゾン化酸素を注入して浄化した被処理水中に、空気を吹き込み汚泥を浮上させ除去する浮上分離工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項5】
更に、生物分解処理を行う工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項6】
前記被処理水が、地下水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項7】
前記被処理水が、油汚染土壌に付着した油分を洗浄した際の洗浄水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
【請求項8】
油汚染土壌の浄化方法であって、油汚染土壌を水により洗浄し、洗浄水と洗浄された土壌に分離し、洗浄後の少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する洗浄水を請求項1〜5のいずれかに記載の浄化方法により浄化することを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【請求項9】
少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水の浄化装置であって、攪拌機を備えた反応槽と、反応槽に接続された被処理水の循 環ラインとを備え、該循環ラインに循環ポンプを設置し、循環ポンプのサクション側にオゾン化酸素を注入する装置を備え、ポンプの吐出側にその混合を促進してオゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化するミキサーを備えることを特徴とする油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化装置。
【請求項10】
更に、前記オゾン化酸素を注入して浄化した被処理水中に、空気を吹き込み汚泥を浮上させ除去する浮上分離槽を備えることを特徴とする請求項9に記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化装置。
【請求項11】
更に、生物分解処理を行う生物処理槽を備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する水の浄化方法、並びに油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する水の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境破壊の要因又は生物体に対して悪影響を及ぼす要因となる汚染物質が土壌や地下水において検出されており、これらの物質による環境汚染が問題とされている。汚染土壌・地下水の浄化には様々な方法が用いられており、従来は汚染土壌(以下、地下水を含む)を掘削等により地上に取り出して外部で水や溶媒により洗浄、熱処理して無害化する方法が多く用いられていた。しかし、汚染土壌を洗浄した際に出る油が濃縮された洗浄水については、特別管理廃棄物として処理するケースがほとんどであった。揮発性有機化合物については活性炭吸着処理がなされているが、ランニングコストが高くなる。
【0003】
汚染物質で汚染された土壌の原位置浄化方法として、地下水を浄化し、再度地下に戻して、汚染土壌を洗浄する方法が考えられるようになった。
地下水の油を油水分離装置で取り除ける場合もあるが、廃棄物は特管廃棄物となり非常に厄介なケースが多い。また、エマルジョン化して水と分離できないこともあり、再度地下に戻す前に油分解を行うことが求められる。
【0004】
生物学的な浄化方法は、重金属類以外の汚染物質、例えば油や揮発性有機化合物等の汚染物質の浄化に好適に用いられ、微生物の分解能力を利用して汚染土壌を修復する浄化技術でありバイオレメディエーションと呼ばれる。これは、汚染土壌、地下水中に元々存在する微生物を利用して土壌中の汚染物質を分解する方法であり、現地に存在する微生物を利用する場合(バイオスティミュレーション)と、微生物を注入する場合(バイオオーグメンテーション)とがある。何れの場合も、必要に応じて微生物の増殖及び生存に必要な栄養剤等を補給し、微生物の分解活性を高めて分解を促進するようにしている。このバイオレメディエーションは、汚染土壌の掘削や汚染物質の抽出の必要がなく、原位置において土壌を浄化できることから低コストで広範囲に利用できるため汚染土壌の浄化に有効な技術として近年注目されている。
【0005】
一方、重質油の分解にはフェントン酸化法が使われることがあった。この方法は2価鉄と過酸化水素を土壌に添加して生成する水酸化ラジカルによって重質油を分解する技術であり、例えば特許文献1(特開2009−148708号公報)に示されている。
【0006】
現地浄化による主だった方法は、汚染土壌にバクテリアあるいは過酸化水素などを注入して、地下で反応を起こさせるものである。バクテリアは浄化が完了するまでに時間がかかり、重油には使えないという課題がある。フェントン法は反応が早く、細かに注入点を区分しないと無駄が多くなる可能性があった。
油を地下水から汲み上げて、油水分離槽で油を分離して、地下水に戻す方法も汚染した土壌からの油の分離という点、汚染負荷量を減らし、浄化を早める点で有効であるが、廃棄物が発生する点では欠点を補えていない。また、高濃度の鉄などといっしょに汲み上げられるケースが多く、油水分離槽や保安フィルターが鉄のフロックで閉塞してしまい、維持管理が煩雑になるケースが見受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−148708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、油類及び/又は揮発性有機化合物で汚染された水を高速に化学分解せしめ、さらに、地下に返送または河川に放流することができるまで浄化することができる油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法並びに浄化装置を提供することを目的とする。
更には、油汚染土壌の洗浄水を再利用できるまで迅速に浄化することができる浄化方法及び浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水を、2価鉄及び/又は0価の鉄を鉄濃度20mg/L以上に、pHを3〜5の範囲に調整し、該調整した被処理液にオゾン化酸素をミキサーにより混入し、循環処理しながら連続的にオゾンの注入を行うことにより、油類及び揮発性有機化合物含有水を迅速に浄化することができることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水の浄化方法であって、該被処理水を、2価鉄及び/又は0価の鉄の鉄濃度を 20mg/L以上に、pHを3〜5の範囲に調整し、該調整した被処理にオゾン化酸素をミキサーにより混入し、循環処理しながら連続的にオゾンの注入を行いオゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化することを特徴とする油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(2)前記オゾン化酸素の注入体積比率が循環水量に対して9%以上であることを特徴とする前記(1)記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(3)前記鉄の濃度を30mg/L以上とすることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(4)更に、前記オゾン化酸素を注入して浄化した被処理水中に、空気を吹き込み汚泥を浮上させ除去する浮上分離工程を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(5)更に、生物分解処理を行う工程を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(6)前記被処理水が、地下水であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(7)前記被処理水が、油汚染土壌に付着した油分を洗浄した際の洗浄水であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化方法。
(8)油汚染土壌の浄化方法であって、油汚染土壌を水により洗浄し、洗浄水と洗浄された土壌に分離し、洗浄後の少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する洗浄水を前記(1)〜(5)のいずれかに記載の浄化方法により浄化することを特徴とする油汚染水の浄化方法。
(9)少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水の浄化装置であって、攪拌機を備えた反応槽と、反応槽に接続された被処理水 の循環ラインとを備え、該循環ラインに循環ポンプを設置し、循環ポンプのサクション側にオゾン化酸素を注入する装置を備え、ポンプの吐出側にその混合を促進してオゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化するミキサーを備えることを特徴とする油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化装置。
(10)更に、前記オゾン化酸素を注入して浄化した被処理水中に、空気を吹き込み汚泥を浮上させ除去する浮上分離槽を備えることを特徴とする前記(9)に記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化装置。
(11)更に、生物分解処理を行う生物処理槽を備えることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載の油類及び/又は揮発性有機化合物含有水の浄化装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水を迅速に浄化することができる。
従って、油類及び/又は揮発性有機化合物で汚染された土壌に井戸を掘って、そこから地下水を揚水して、高濃度に油、揮発性有機化合物等で汚染された地下水を現地に設置した反応槽にて高速に化学分解せしめ、さらに、鉄フロックを分離して再び地下に返送することで、汚染土壌の修復を高速に行う方法と装置を提供することができる。
本発明の浄化方法は、地下水中の油類及び揮発性有機化合物の浄化に適用できるだけでなく、油類及び/又は揮発性有機化合物で汚染された土壌の洗浄水の浄化や廃水中の油類及び揮発性有機化合物の浄化にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】油類及び/又は揮発性有機化合物が含まれる地下水を浄化する際に用いる本発明の浄化装置の一例を示す概略図である。
図2】油類及び/又は揮発性有機化合物が含まれる地下水を浄化する際に用いる本発明の浄化装置のバッチ処理方式の一例を示す概略図である。
図3図2に示す浄化装置に生物分解処理を組み合わせた装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の浄化方法は、少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水を、2価鉄及び/又は0価の鉄を鉄濃度20mg/L以上、pHを3〜5の範囲に調整し、該調整した被処理にオゾン化酸素をミキサーにより混入し、循環処理しながら連続的にオゾンの注入を行いオゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化することにより、油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する水を浄化する。
被処理水のpHを3〜5に調整して、オゾンを注入することにより2価鉄及び0価の鉄が酸化され3価の鉄となると共に、水酸化ラジカルが生じ、該水酸化ラジカルが油分を分解し、被処理水を浄化することができる。また、オゾンが水に溶解した時に発生するスーパーオキシドにより3価の鉄は2価に還元され、鉄は再利用される。
【0014】
少なくとも油類及び/又は揮発性有機化合物を含有する被処理水としては、油類や揮発性有機化合物により汚染された土壌から汲み上げた地下水、汚染した土壌の洗浄水(微細粒子を含む)、及び油類及び/又は揮発性有機化合物等を含む廃水等が挙げられる。
油類としては、原油、重油、軽油、灯油、ガソリン、潤滑油、汎用油(マシン油)、スピンドル油、ダイナモ油、シリンダー油、タービン油、油圧作動油(ブレーキフルードなど)、軸受け油、ギヤー油、摺動面潤滑油、冷凍機油、コンプレッサー油、熱媒体油、熱処理油、グリース、エンジンオイル、切削油、絶縁油、圧延油などの石油または石油を原料とする有機物、合成油、動植物油等が挙げられる。
揮発性有機化合物としては、常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質であり、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン、テトラクロロエチレン、ベンゼン等が挙げられる。
【0015】
本発明では、前記油類及び/又は揮発性有機化合物を含んだ地下水もしくは廃水、または洗浄水を反応槽に導入し、pHを3〜5、さらに好ましくは3〜4に調整し、溶解性2価及び/又は0価の鉄が20mg/L以上になるように調整し、前記油や揮発性有機化合物と水、さらには反応により不溶化する可能性がある鉄が分離しないように混合しながらオゾンを溶解する反応槽によって油、揮発性有機化合物の分解を行う。
【0016】
被処理水の2価鉄及び/又は0価の鉄の鉄濃度は20mg/L以上であり、より好ましくは30mg/L以上である。鉄濃度が20mg/L未満であると、油の分解反応速度が著しく低下する。
被処理水の鉄濃度が高い場合は、油分解後にpHを中性に調整して、河川放流等をする前に汚泥として処理水から鉄を分離することができる。汚染地下水中には鉄が高濃度に存在するケースがあるので、その場合は、地下水中に含まれる鉄は除去することが好ましい。逆に地下水中に0価または2価の鉄が含まれない場合は、濃度20mg/L以上になるよう鉄源を添加する。
鉄濃度を調整する際に被処理水に添加して用いる鉄源としては、2価の鉄を供給できる化合物を用いることができる。例えば、硫酸第一鉄、重炭酸第一鉄等が挙げられる。
【0017】
2価鉄及び/又は0価の鉄の鉄濃度は、比色法により測定することができる。前記鉄濃度の測定は、被処理水のpHを3〜4とし、0価の鉄を2価鉄として溶解した後に、2価鉄の濃度をo−フェナントロリン法による比色法で測定する。即ち、前記2価鉄及び/又は0価の鉄の鉄濃度は、被処理水中含有される2価鉄及び0価の鉄の合計の濃度である。
本発明においては、被処理水のpHを3.4〜3.6として2価鉄及び/又は0価の鉄の鉄濃度を測定した。
【0018】
また、被処理水のpHは3〜5、さらに好適にはpHは3〜4に調整する。pHが5を越える場合は、溶解性鉄が不溶化して反応に供しなくなる。pHが3未満になるとランニングコストがアップする。
本発明においては、pHを3〜5とすることにより、鉄が溶解するので、油分解槽や保安フィルターが鉄のフロックで閉塞してしまうことを防止することができ、維持管理が容易である。
pHの調整剤としては、一般的な酸、アルカリを用いることができ、例えば、硫酸、苛性ソーダが好ましい。
【0019】
前記鉄濃度及びpHを調整した被処理液にオゾン化酸素をミキサーにより混入し、循環処理しながら連続的にオゾンの注入を行う。オゾン化酸素をミキサーにより混入し、連続的にオゾンの注入を行うことにより、オゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化することができ反応を効率よく進めることができる。
循環処理しながらオゾン化酸素を注入しても被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化させることができない場合は、反応を効率よく進めることができない。オゾンを含む被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化する手段としては、ミキサー以外に、超音波や乳化剤等の薬品の使用などが挙げられるが、コストが安価で大型化ができる点でミキサーが良い。
また、ミキサーを用いても循環処理をしないでオゾン化酸素の注入を行った場合は、被処理水中の油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化させることが困難であり、反応を効率よく進めることができない。
【0020】
反応を効率よく進めるための全循環量としては、油類及び揮発性有機化合物の濃度により異なるが、反応槽の容量に対して1倍の量から60倍量が好ましい。
前記全循環量とは、下記式で表される反応時間あたり容量であり、循環水量とは循環させた循環水の単位時間当たりの容量である。
全循環量=循環水量×反応時間
例えば、被処理水5Lを10Lの反応槽に入れ、循環水量20L/minで1.2分間反応させた場合、全循環量は24Lとなり、反応槽の2.4倍の量となる。
また、オゾン化酸素の注入比率は、循環水量に対して体積比で9%以上であることが好ましく、より好ましくは、9%〜15%であり、10%〜12%が特に好ましい。
オゾン化酸素の注入体積比率が循環水量に対して9%未満であると、オゾンを含む被処理水中に油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化することが難しく、被処理水に含有される油類及び揮発性有機化合物の濃度が高い場合は、効率が悪くなる場合がある。
【0021】
また、被処理水に含有される油類及び揮発性有機化合物が、分解が難しい物質であればあるほど、濃度が高いほど、循環水中のオゾンの濃度は高い方が反応性が向上するため好ましい。逆に、油類及び揮発性有機化合物が希薄になり、分子量が小さくなると、濃度の高いオゾンは未反応になり、無駄になる。従って経済性を考慮し、オゾンの濃度を抑えることが好ましい。
オゾン化酸素は、例えば酸素を供給してオゾン化するPSA付きオゾン発生器等により発生させることができる。油類及び揮発性有機化合物の濃度が高い場合は、オゾン濃度の高いオゾン化酸素を用いることが好ましい。また、被処理水中のn−ヘキサン抽出物濃度が300mg/L〜十万mg/L程度を超える場合であっても、オゾンが4〜5vol%含有されているオゾン化酸素を用いることで十分な処理が可能である。
オゾン化酸素は気体であり、上記体積比における体積は、標準状態(1気圧、0℃)における体積である。
【0022】
油類及び揮発性有機化合物は溶解した反応性の高いオゾンによって化学分解され、水と炭酸ガスにまで分解される。一部は低分子化された状態で残る場合もあるが、低分子化された状態で残った分については生物処理により分解が可能となる。生物処理を使う場合は、不溶化した鉄(FeOOH)を浮上分離して、その処理水を生物分解処理し、地下水に戻したり、放流することもできる。
廃水処理の場合は、本発明の浄化方法によりn−ヘキサン抽出物濃度(n−H濃度)が300mg/L程度まで低減できれば、その後で、水質汚濁法により日量50m3/日以上の特定有害物質を扱う工場等で義務付けられている排水の処理を行う既設の微生物処理による活性汚泥処理設備に投入して処理することが可能である。
【0023】
本発明の浄化方法により、油濃度がn−H濃度数万ppmの被処理水が、10分程度の処理でn−H濃度百ppm以下に処理することができ、さらに長時間の処理で5ppm以下にすることも可能である。ランニングコストとしては高反応性オゾンによる反応とバクテリアによる分解で役割分担を行う方が安価な場合がある。その場合は前記高反応性オゾンによる反応で得られた処理水には高濃度の酸素が残留しているので、そのまま微生物処理が可能で、pHを中性として除鉄の後に、生物処理を行い、n−H濃度を5mg/L以下とすることができる。
【0024】
被処理水中の油類及び揮発性有機化合物の濃度が高い場合は、高反応性オゾンによる油類及び揮発性有機化合物の分解は、2段階処理とし、第1段階目では前記オゾンの濃度を高濃度とした処理とし、更に第2段階目でオゾンの濃度を第1段階目より低濃度として処理することが好ましく、このようにすることにより、反応時間を短縮することができる。
第1段階目のオゾンを高濃度とする際のオゾンの濃度は、好ましくはオゾンを3〜5.5vol%、より好ましくはオゾンを4〜5vol%含有するオゾン化酸素を用いて、オゾンの濃度を循環水中5.8〜18mg/L(オゾン化酸素注入時)とすることが好ましく、8.1〜16.5mg/Lとすることがより好ましい。第2段階目のオゾンを低濃度とする際のオゾンの濃度は、n−H濃度が300mg/L程度とすると、好ましくはオゾンを0.1〜3vol%、より好ましくはオゾンを0.1〜2.5vol%含有するオゾン化酸素を用いて、オゾンの濃度を循環水中0.3〜9.7mg/L(オゾン化酸素注入時)とすることが好ましく、0.3〜8.1mg/L程度とすることがより好ましい。高濃度の場合の循環水中のオゾンの濃度は11〜13mg/Lが更に好ましく、低濃度の場合の循環水中のオゾンの濃度は5〜6mg/Lが更に好ましい。
低い方の濃度はコストと反応性を考慮し、即ち、濃度が低い方が動力費を安価にできるが、反応性が悪くなり、濃度を高くすると未反応オゾンが生じ、無駄になるということから、循環水中5〜6mg/Lがさらに好ましい。
上記のように、オゾン化酸素中のオゾンの濃度はオゾン発生器により発生させるオゾン化酸素中のオゾンの濃度を変えることにより調整することができる。
反応槽の攪拌は攪拌機による攪拌の他に、循環ポンプによって鉄が不溶化して浮上してしまわないように攪拌してもよい。
【0025】
生物処理を併用する場合は、油類及び揮発性有機化合物を高反応性オゾンにより低分子化して得られた処理水を、pHを中性に調整して鉄を分離後、微生物と、リンや窒素、微量アミノ酸等の栄養塩を投入し、酸素を混ぜ合わせることでn−H濃度5mg/L以下まで油の分解を実施することができる。
【0026】
本発明の浄化装置は、攪拌機を備えた反応槽と、反応槽に接続された被処理水の循環ラインとを備え、該循環ラインに循環ポンプを設置し、循環ポンプのサクション側にオゾン化酸素を注入する装置を備え、ポンプの吐出側にその混合を促進するミキサーを備える。
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な浄化装置を例示的に詳しく説明する。但しこの装置に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は油類及び/又は揮発性有機化合物が含まれる地下水を浄化する際に用いる浄化装置の一例を示した概略図である。土壌汚染により地下水まで汚染が広がり、地下水を浄化する場合は、地下水を揚水ポンプ1により汲み上げ、高濃度反応槽4に受ける。地下水中に2価鉄及び/又は0価の鉄が最低20mg/L含まれない場合は、反応槽に2価鉄もしくは0価の鉄を添加し20mg/L以上に調整し、pHを3〜5に調整して、攪拌機6によって攪拌混合を行う。
【0028】
高濃度反応槽4には循環ライン5が接続されており、循環ポンプ3により、油を含む被処理水が循環し、オゾン発生器2により循環ポンプ3のサクション側にオゾン化酸素を注入し、ポンプの吐出側に混合を促進するミキサー20を備える。
ミキサーはポンプによりある程度、微細化された泡をさらに細かくして、液体に混合するためにポンプの吐出側に備えることが好ましい。大きな泡がミキサーに入ると、配管の抵抗になったり、ミキサーの効率が低下する問題があるため、ポンプで細かくしてからミキシングすることが好ましい。
【0029】
ポンプによる循環水量及びオゾンの注入量は被処理水の有機物負荷から決定し、オゾン化ガス濃度を選定する。オゾン化酸素の注入体積比率は、循環水量に対して9%以上が好ましい。例えばオゾン化酸素ガスは使用する機器によりオゾン濃度4.67vol%(100g/m3N)のオゾン化酸素ガスが得られる。時間1kgのオゾンを供給する場合は、オゾン化酸素ガスのオゾン濃度を100g/m3Nとすると、10m3N/hrのオゾン化酸素ガス量となり、循環水量は最大111m3/hrと計算される。オゾン化酸素の注入体積比率が0.9/10未満の場合はオゾン化酸素の混合率が低くなり、被処理水中に油類及び揮発性有機化合物をエマルジョン化することが難しくなり、難分解性の有機物を分解するだけの酸化力不足が生じる。
【0030】
反応時間は処理する油類及び揮発性有機化合物の濃度によるが、数分から1時間程度である。濃度が低下してくると、反応効率が低下するため、2槽構造として高濃度、高効率で運転できる槽と、低濃度でゆっくり反応させる槽を区分することが好ましい。1槽で長時間かけて処理しても構わない。図1は2槽構造の例であり、高濃度の油や揮発性有機化合物を分解して、n−H濃度で数百ppmまで処理した後、後段の低濃度反応槽7に受け、同様に攪拌機11で混合しながら、反応槽に接続した循環ライン9にオゾン発生器8により低濃度オゾンを注入し、循環ポンプ10にて循環処理を行う。処理液のn−H濃度が例えば5mg/L以下になるように反応槽7の容量を決定する。その後pH調整19にてpHを6以上として鉄を不溶化物として析出させ、浮上分離槽15にて鉄フロックを浮上分離する。浮上分離槽15では循環ライン14にコンプレッサー17にて空気を注入し、循環ポンプにて循環して微細化された空気で鉄フロックを浮上させる。循環ラインから処理水を得る。浮上した鉄フロックは汚泥掻き寄せ機12にて除去して汚泥受け13から排出される。排出された汚泥は明記していないが脱水機にて処理しても構わない。
【0031】
また、図2に示すように、連続処理ではなく、バッチ処理で十分油を分解してから鉄汚泥を分離して処理水を得るようにしてもよい。
バッチ処理の場合、反応槽4の大きさは処理水のn−H濃度が例えば5mg/L以下になる大きさとし、処理時間が最大1時間程度になるようにオゾン発生器2の大きさを決定する。
【0032】
本発明の浄化方法及び浄化装置の効率を高めるには、生物処理と組み合わせることが重要になる。処理水のn−H濃度を5mg/Lまで低減するためには、被処理水のn−H濃度、分解性にも関連するが、オゾン処理により300ppm程度まで分解し、引き続き、例えば図3のような形態で生物分解で十分対応が可能となる。処理水18を生物処理25に受け入れ、ろ材21に付着している油分解菌によりn−H濃度5mg/L以下まで分解する。分解は好気的に行い、ブロワ22にて空気を供給しながら、エアー攪拌を行い、水流を発生して槽内の攪拌を行う。ろ材は繊維状のものやプラスチック状、多孔質状のものが好適ではあるが、それに限定するものではない。
【実施例】
【0033】
次に実施例によってこの発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
冷却油で汚染された汚染水5Lを10Lの反応槽に入れ、図2の形態で冷却油の分解を行った。冷却油で汚染された汚染水の初期の全体のn−ヘキサン抽出物濃度(n−H濃度)は16000mg/L、TOC(トータルオーガニックカーボン)38000mg/Lであり、2価及び0価の鉄の鉄濃度が33mg/Lであった。
硫酸を用いて被処理水のpHを3に調整し、オゾン化酸素を2NL(ノルマルリットル)/minで注入した。2NL/minのオゾン化酸素量に対して、循環水量は20L/minであり、オゾン化酸素の注入体積比率は循環水量に対して1/10であった。反応時間は1.2分、オゾン注入量は10gO3/hrとしたので200mgであった。その結果、上部の油層約500mLのn−H濃度は120mg/L、下部4.5Lのn−H濃度は43mg/L、全体のn−H濃度は50.7mg/Lであり、油分の99.7%が分解された。
冷却油が水と炭酸ガスに分解されたことを確認するため、上部に蓋を設けて、その一部にノズルを固定し、ノズルから反応後のガスを採取できるようにした。供給しているオゾンは酸素ガスから発生させたオゾンガスであり、供給ガスにはほとんど炭酸ガスは含まれない。反応ガスの炭酸ガス濃度を測定すると、炭酸ガス濃度66%となり、油分が分解されていることがわかった。
また、反応時間を15分にした場合、全体のn−H濃度は4mg/Lとなった。
オゾンとの反応時間を1.2分として、上層のn−H濃度120mg/Lと下層のn−H濃度43mg/Lを混合して、油分解菌が付着した活性汚泥を植種した繊維ろ材を200mL充填した反応槽800mLに移し替え、下部からの散気によって空気を供給し、分解実験を行った。
上記油分解菌が付着した活性汚泥は、パラフィン油でn−H濃度を300mg/Lに調整した原水を毎日600mlずつ入れ替え、バッチ処理で20日間馴養を行い微生物を増殖させたものを用いた。
分解実験では、オゾンとの反応後の処理水のpHを6〜7に調整し、20日間馴養した微生物を用いた処理を1日行った後の処理水全体のn−H濃度は4.8mg/Lであった。上部の油層のn−H濃度が120mg/L程度まで分解できれば、滞留時間1日の生物処理において分解できることがわかった。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、更にテトラクロロエチレンが20mg/L含まれる冷却油で汚染された汚染水を用いて実施例1の条件でオゾンによる浄化を行ったところ、反応時間1.2分で上部のn−H濃度が150mg/L、下部が39mg/Lまで処理された。処理水全体におけるテトラクロロエチレンとその代謝産物であるトリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン。1,1−ジクロロエチレンの濃度はそれぞれ0.01mg/L未満となった。
【0035】
(実施例3)
n−H濃度16000mg/L、2価及び0価の鉄の鉄濃度が33mg/Lの油が混入した地下水20Lの油の分解処理を、図1に示す形態で行った。滞留時間2分の高濃度反応槽処理と滞留時間40分の低濃度反応槽処理、滞留時間40分の汚泥分離槽処理を組合わせた。
高濃度反応槽は40Lのタンクで、被処理水のpHを3に硫酸を用いて調整し、75L/minの循環水量、オゾン濃度110g/m3のオゾン化酸素ガスを用い7.3NL/minのオゾン化酸素を供給した(48gオゾン/hrの発生)。高濃度反応槽における、全循環量は150Lであり、反応槽の3.75倍となった。7.3NL/minのオゾン化酸素量に対して、循環水量は75L/minであり、オゾン化酸素の注入体積比率は循環水量に対し0.97/10であった。反応時間は2分、オゾン注入量は48gO3/hrとしたので1.6gであった。また、オゾン化酸素注入時の循環水中のオゾンの濃度は、10.7mg/Lであった。
低濃度反応槽は800Lのタンクにオゾン濃度54g/m3のオゾン化酸素を用い、31NL/minのオゾン化酸素を供給した(100gオゾン/hrの発生)。循環水量は300L/minであった。低濃度反応槽における全循環量は12000Lとなり反応槽の15倍であった。31NL/minのオゾン化酸素量に対して、循環水量は300L/minであり、オゾン化酸素の注入体積比率は循環水量に対し10.3%であった。反応時間は40分、オゾン注入量は100gO3/hrとしたので66gであった。また、オゾン化酸素注入時の循環水中のオゾンの濃度は5.58mg/Lであった。
汚泥分離槽には800Lのタンクとして、pHを中性に調整後、高分子凝集剤を2ppmになるように添加して、60L/minの循環ポンプで、6L/minの空気を供給し、鉄汚泥を浮上分離した。
これにより、分離水のn−H濃度は4.6mg/Lとなった。
【0036】
(比較例1)
実施例1の条件でpHを調整せず6として、オゾンによる浄化を1.2分間行った。上部500mLのn−H濃度が155000mg/L、下部4.5Lのn−H濃度が300mg/Lとなった。実施例1と同様に反応ガスの炭酸ガス濃度を測定すると、1.4%であり若干の分解が確認できたが、実施例1より遙かに少なかった。
【0037】
(比較例2)
実施例1の条件で鉄濃度のみ10mg/Lに変更して、オゾンによる浄化を1.2分間行った。上部500mLのn−H濃度が150000mg/L、下部4.5Lのn−H濃度が220mg/Lとなった。
【0038】
(比較例3)
実施例1の条件でミキサーを用いず、オゾン化酸素を注入した処理を1.2分間行った。n−H濃度は上部500mL部分が110000mg/L、下部4.5Lのn−H濃度は180mg/Lであって、約30%の除去率にとどまった。
【0039】
(比較例4)
実施例1と同様な、n−H濃度16000mg/Lの汚染水5Lを35%過酸化水素を用いて分解した。35%過酸化水素230mLを6回注入し、また、鉄は400mg/L添加することによりn−H濃度51mg/Lの処理水が得られた。
実施例1ではオゾン注入量が200mgであったので、活性酸素は約67mg、これに対してフェントン法では活性酸素が約220mg必要であったと考えられるため、約3倍程度多く必要になる。
図1
図2
図3