(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は第一の実施形態の超音波診断装置100の構成を示すブロック図である。超音波診断装置100は、被検体101内に超音波を送信し得られた反射エコー信号を用いて診断部位について2次元超音波画像或いは3次元超音波画像を形成して表示するもので、被検体101に超音波を照射し受信する振動子素子を備えた超音波探触子102と、超音波信号を送受信する超音波送受信部103と、受信信号に基づいて2次元超音波画像(Bモード画像)或いは3次元超音波画像を構成する超音波画像構成部104と、ビデオメモリ105と、表示部106と、操作部107と、動画記録部108と、制御部109と、を備える。ここで、「動画」とは、超音波診断装置で得られた経時変化する超音波画像を示すもので、超音波画像はほぼリアルタイムで得ることができるため、超音波画像のフレームの変遷によって恰も動画のように表示される。
【0016】
以下、各構成要素を具体的に説明する。
超音波探触子102は、超音波探触子102の長軸方向に1〜mチャンネル分配列される振動子素子を備える。なお、超音波探触子102は、短軸方向にも1〜kチャンネル分配列される振動素子を備えていてもよい。この場合、短軸方向の各振動子素子(1〜kチャンネル)に与える遅延時間を変えることにより、短軸方向にも送波や受波でのフォーカスをさせる。また、短軸方向の各振動子素子に与える超音波送信信号の振幅を変えることにより送波重み付けをかける。また、短軸方向の各振動子素子からの超音波受信信号の増幅度又は減衰度を変えることにより受波重み付けをかける。さらに、短軸方向のそれぞれの振動子素子をオン、オフすることにより、口径制御ができる。
【0017】
なお、この超音波探触子102には、超音波送受信部103から供給される駆動信号に重畳して印加されるバイアス電圧の大きさに応じて超音波送受信感度つまり電気機械結合係数が変化する、例えば、CMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer:IEEE Trans. Ultrason. Ferroelect. Freq. Contr. Vol45 pp.678-690 May 1998等)を適用できる。CMUTは、半導体微細加工プロセス(例えば、LPCVD:Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により製造される超微細容量型超音波振動子である。
【0018】
超音波送受信部103は、超音波探触子102に送信信号を供給すると共に受信した反射エコー信号を処理するもので、超音波探触子102を制御し超音波ビームを出力させる送波回路と、出力された超音波ビームの被検体101内からの反射エコー信号を受信し生体情報を収集する受波回路と、これらを制御する制御回路とを備える。
【0019】
超音波画像構成部104は、超音波送受信部103で処理した反射エコー信号を
超音波画像に変換するもので、順次入力される反射エコー信号に基づいて超音波画像を形成するデジタルスキャンコンバータと、超音波画像を記憶する磁気ディスク装置及びRAMとからなる記憶装置とを備える。超音波送受信部103で受信した反射エコー信号を信号処理し、2次元超音波画像や3次元超音波画像、各種ドプラ画像に画像化して出力する。
【0020】
ビデオメモリ105は、表示部106に表示する超音波画像を保持する。
表示部106は、ビデオメモリ105に保持される超音波画像を再生表示するもので、例えばCRTモニタ、液晶モニタにより構成される。なお、表示部106は独自に表示メモリ(図示省略)を有していれば、超音波画像構成部104から出力される2次元超音波画像や3次元超音波画像、各種ドプラ画像を、ビデオメモリ105を介さず、表示メモリを用いて表示することもできる。
【0021】
操作部107は、操作者からの指示、パラメータの設定、変更を受け付ける入力手段であり、例えば、キーボードや、タッチパネル等により構成される。受け付けるパラメータは、画質に関するパラメータ、動画記録に関するパラメータである。
【0022】
動画記録部108は、ビデオメモリ105を介して表示部106に表示される超音波画像を動画データとして保持する。
【0023】
制御部109は、超音波診断装置100の各部を制御するとともに、動画記録部108に格納される超音波画像に対し、画像解析処理を施す。制御部109は、CPUとメモリと記憶部とを備え、記憶部に予め保持されるプログラムをメモリにロードして実行することにより、各部の制御、画像処理を行う。記憶部には、プログラムだけでなく、操作部107を介して操作者から設定された各種パラメータ、CPUが処理に用いるデータおよび処理の途中で生成するデータ等が保持される。
【0024】
次に、第一の実施形態の制御部109が実現する画像解析処理について説明する。第一の実施形態では、制御部109は、
図1に示すように、動画記録部108に動画データとして記録される超音波画像を解析し、染影動画を生成する画像解析部200を備える。操作部107は、経時的に構成される超音波画像の画素(動画データ)毎に造影剤が流入した染影開始時間の時間区分を特定する。画像解析部200は、特定された染影開始時間の時間区分に応じた色付けを決定し、決定された色付けで前記超音波画像の画素を着色して造影経過画像を生成する。即ち、動画データの各画素(ピクセル)の輝度の変化に着目し、造影剤の流入時間差に応じた染影を行った動画データを生成する。この機能を実現するため、第一の実施形態の画像解析部200は、
図2に示すように、データ記録部210と、データ処理部220とを備える。
【0025】
データ記録部210は、条件記録部211と、輝度解析結果記録部212と、染影結果記録部213と、染影パラメータ記録部214と、を備える。
【0026】
データ処理部220は、動画取得部221と、解析フレーム設定部222と、輝度解析部223と、染影部224と、動画再生部225とを備える。
【0027】
以下、各部に記録されるデータおよび各部の処理の詳細を説明する。
動画取得部221は、動画記録部108から、解析対象の動画データを取得する。動画記録部108に複数の動画データが格納されている場合は、動画取得部221は、操作者から指示された動画データを取得する。操作者は、例えば、表示部106に表示される解析対象動画データ設定領域を介して、操作部107により動画データを指定する。
【0028】
解析フレーム(範囲)設定部222は、操作者から解析対象の動画データの解析範囲の設定を受け付ける。解析範囲は、後述の輝度解析部223による輝度解析を行うフレーム範囲であり、開始フレームと終了フレームとで特定される。受け付けた解析範囲(開始フレームおよび終了フレーム)は、データ記録部210の条件記録部211に記録する。
【0029】
解析範囲は、例えば、静脈から投与した造影剤が着目する領域に流入して染影が開始されるタイミング(流入開始時間)から、造影剤が飽和するタイミングまでの間である。この解析範囲を、操作者は、例えば、表示部106に表示される解析範囲指定画面を介し、操作部107を用いて入力する。解析範囲指定画面には、例えば、動画記録部108に記録される動画データとともに、フレームを指定する領域(解析範囲指定領域)が表示され、操作者は、動画データを見ながら、解析範囲を指定する。
【0030】
この解析範囲指定画面300の一例を
図3に示す。本図に示すように、解析範囲指定画面300は、動画データ表示領域310と、解析範囲指定領域320とを備える。動画データ表示領域310には、動画記録部108に記録される動画であって、解析対象として操作者が抽出した動画データが再生表示される。
【0031】
また、解析範囲指定領域320は、操作者による解析範囲の指定を受け付ける領域である。ここでは、一例としてマルチスライダを用いる場合を示す。解析範囲指定領域320は、開始フレームを設定する開始フレームスライダ322と、終了フレームを設定する終了フレームスライダ323と、開始フレームのフレーム番号を表示する開始フレーム表示部321と、終了フレームのフレーム番号を表示する終了フレーム表示部324とを備える。各スライダと各表示部に表示されるフレーム番号とは連動し、スライダを移動することにより、表示部に表示されるフレーム番号も変化する。また、各表示部に数値を直接入力することにより、スライダの位置も変化する。なお、開始フレームおよび終了フレームは、スライダにより設定してもよいし、表示部に直接フレーム番号を入力して設定してもよい。
【0032】
輝度解析部223は、動画取得部221が取得した動画データの、解析フレーム設定部222が解析範囲を設定した範囲に対し、輝度解析処理を行い、各ピクセルの染影開始時間を決定する。染影開始時間は、造影剤の流入時間差を把握可能なタイミングであり、第一の実施形態では、例えば、予め定めた輝度に最初に到達する時間(閾値輝度到達時間)tαを用いる。従って、第一の実施形態の輝度解析部223は、開始フレームから、予め定めた輝度に到達するまでの時間(閾値輝度到達時間)tαを画素毎に決定し、出力する。
【0033】
図4は、特定のピクセルの閾値輝度到達時間tα決定手法を説明するための図である。
ここでは、解析範囲の開始フレームの時間をts、終了フレームの時間をteとする。本図に示すように、輝度解析部223は、ピクセル毎に、解析範囲の、輝度の最大値Imaxを抽出する。そして、輝度の最大値に予め定めた閾値α(固定値)を乗じた値Iαを求め、輝度がIαに達する閾値輝度到達時間tαとする。閾値αには、例えば、0.8を用いる。輝度解析部223は、求めた各ピクセルの閾値輝度到達時間tαを輝度解析結果として輝度解析結果記録部212に記録する。なお、このとき、閾値輝度到達時間tαだけでなく、ImaxおよびIαも輝度解析結果として記録してもよい。
【0034】
染影パラメータ記録部214には、染影パラメータとして、時間範囲毎に表示色を保持するカラーチャートが記録される。保持されるカラーチャート400の一例を
図5に示す。本図に示すように、第一の実施形態のカラーチャート400は、区分410と、カラー420とを対応づけて保持する。区分410保持部には、例えば、開始フレームからの経過時間を、所定の範囲毎に区切った時間区分が保持される。カラー420保持部には、時間区分毎の表示色を特定するRGBのそれぞれの値が保持される。
【0035】
染影部224は、動画取得部221が取得した動画データの解析範囲に対し、輝度解析部223の輝度解析結果を用い、染影処理を行う。染影処理は、各ピクセルについて、着色(色づけ)を開始するフレーム(染影開始フレーム)以降のフレームに色付けする処理である。染影開始フレームは、輝度到達時間tαに相当するフレームで、これは、輝度解析部223が算出した輝度到達時間tαと動画記録部に記録される動画データのフレームレートとから特定する。そして、解析対象の動画データの、染影開始フレーム以降のフレームの当該ピクセルを色づけする処理を施す。色づけには、輝度到達時間tαが該当する区分410に対応づけて、カラーチャート400に記録されるカラー420で特定される表示色を用いる。そして、処理後の動画データを、造影経過画像(染影動画データ)として染影結果記録部213に記録する。
【0036】
動画再生部225は、操作部107を介して操作者から指示を受けると、染影結果記録部213に記録された染影動画データを表示部106に再生表示する。
【0037】
次に、第一の実施形態の画像解析部200が染影動画データを生成する画像解析処理の流れを説明する。
図6は、第一の実施形態の画像解析処理の処理フローである。
【0038】
画像解析処理開始の指示を受け付けると、動画取得部221は、動画記録部108から、解析対象の動画データを取得する(ステップS1101)。
【0039】
解析フレーム設定部222は、動画取得部221が取得した動画データを表示部106に表示し、解析範囲を受け付ける(ステップS1102)。
【0040】
輝度解析部223は、動画データから解析範囲の動画を抽出し、輝度解析処理を行い(ステップS1103)、輝度解析結果を輝度解析結果記録部212に記録する。
【0041】
次に、染影部224は、輝度解析結果と、染影パラメータ記録部214のカラーチャート400とを用い、染影処理を行い(ステップS1104)、得られた造影経過画像(染影動画データ)を染影結果記録部213に記録する。
【0042】
動画再生部225は、操作者からの指示を待ち、造影経過画像(染影動画データ)を表示部106に表示する(ステップS1105)。
【0043】
以上説明したように、第一の実施形態によれば、超音波診断装置で経時的に構成される超音波画像の画素毎に造影剤が流入した染影開始時間の時間区分を特定する操作部107と、前記染影開始時間の時間区分に応じた色付けを決定し、決定された色付けで前記超音波画像の画素を着色して造影経過画像を生成する画像解析部200とを備えるので、超音波画像から得る造影剤の染影の途中経過を示す造影経過画像を生成することができる。
【0044】
つまり、所定の輝度値を超えた画素について、超えた時点以降、超えたタイミングに応じた表示色に染影する。従って、染影されているか否かで所定の輝度値となったかを判別でき、かつ、カラー(表示色)によって、当該輝度値になるまでの経過時間の情報を得ることができる。
【0045】
また、ピクセル毎にこれらの情報を得ることができるので、画像全体の造影剤の流入に伴う輝度の時間変化を、操作者に示すことができる。
【0046】
従って、造影剤が組織に到達した時点からの輝度変化の様子(染影経過)を、操作者の恣意的な操作、選択の入る余地なく客観的に提示することができる。
【0047】
なお、染影部224において、染影処理を行う際、開始フレームの輝度Iminを抽出し、IαとIminとの差ΔIとを算出し(
図4参照。)、IαがIminより小さいピクセル、および、ΔIが予め定めたノイズ値rminより小さいピクセルは、算出結果をtαの代わりにゼロとしてもよい。ノイズ値rminは、予め操作者から操作部107を介して入力を受け付け、条件記録部211に設定される。これは、造影剤が還流しない領域を、カラーマップから除くためである。造影剤が還流しない領域では、正確なパラメータが算出されず、染影動画データ上にノイズとして表示される場合があるためである。本処理により、得られる染影動画データの視認性を向上させることができる。
【0048】
また、上記輝度解析処理では、閾値を用い、閾値輝度到達時間tαを特定しているが、これに限られない。解析範囲を解析し、ピクセル毎に輝度の変化のグラフを既定の関数で簡略化した直線状の近似TICを決定し、これを用いて閾値輝度到達時間Tαを決定するよう構成してもよい。また、動画記録部108の負荷低減のため、動画データの代わりに近似TICを特定可能な情報を保持するよう構成してもよい。
【0049】
また、第一の実施形態では、染影開始フレームを、閾値輝度到達時間tαに相当するフレームとしているが、これに限られない。例えば、流入開始時間、平衡輝度到達時間、消失開始時間、などに相当するフレームであってもよい。これらは、上記近似TICを用いて算出するよう構成してもよい。また、閾値輝度到達時間、流入開始時間、平衡輝度到達時間、消失開始時間等を染影開始時間を特定するパラメータとして予めデータ記録部210に保持し、輝度解析開始前に操作者が選択するよう構成してもよい。
【0050】
また、第一の実施形態の画像解析部200は、予め操作者が設定した関心領域(ROI)についてTICを算出するTIC算出部をさらに備えてもよい。この場合、表示部106に染影動画データとともに、算出したTICを表示するよう構成してもよい。
【0051】
また、動画記録部に記録される動画データから、染影動画データおよびTICのいずれを生成するか選択可能なように構成してもよい。例えば、TICを作成するROIが設定されている場合はTICを算出するといったように、自動的にTIC作成の有無を判別するよう構成してもよい。
【0052】
また、第一の実施形態による画像解析処理をTIC作成に先立って行い、表示部106に表示される染影動画データ上でTIC生成用のROIを受け付けるよう構成してもよい。このように構成することにより、視認性および客観性の高い動画データ上でROIを設定できるため、より高い精度でROIを設定できる。
【0053】
さらに、第一の実施形態の染影動画データの最終フレームのみを静止画として表示するよう構成してもよい。最終フレームを表示することにより、造影剤の流入時間の違いを一目で確認できる。
【0054】
また、カラーチャート400の区分410は、上述のように時間範囲に限られない。例えば、区分410を特定する番号を保持してもよい。この場合、染影部224が、解析フレーム設定部222により設定される解析範囲に、各区分410を等分に割り当てる。
【0055】
また、保持するカラーチャート400の種類は1種に限られない。複数のカラーチャートを備え、操作者が選択可能なように構成してもよい。また、各区分410に対応付けるカラー420は、操作者が好みの表示色を作成可能なよう構成してもよい。また、区分410の数も変更可能なように構成してもよい。区分数をより多くすることにより、詳細な観察が可能となる。
【0056】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態を説明する。第一の実施形態では解析範囲を操作者が設定していたが、第二の実施形態では、解析範囲を画像解析処理部が自動的に設定する。以下、第二の実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0057】
第二の実施形態の超音波診断装置100は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、第二の実施形態の画像解析部200のデータ処理部220aは、解析フレーム設定部222の代わりに、解析フレーム決定部226を備える。
図7は、第二の実施形態のデータ処理部220aの機能ブロック図である。
【0058】
第二の実施形態の解析フレーム決定部226は、動画記録部108に記録された動画データから、輝度解析部223で解析するフレーム範囲(解析範囲)を決定する解析範囲決定処理を実行する。上述のように、解析範囲は、流入開始時間から消失時間までであり、解析フレーム決定部226は、それぞれに相当する開始フレームおよび終了フレームを決定し、出力する。
【0059】
第二の実施形態では、例えば、動画に付されるヘッダ情報の中のフラッシュ時間を流入開始時間とする。すなわち、この流入開始時間に対応するフレームを開始フレームとする。なお、フラッシュ時間は、造影剤を壊す超音波を発生させた時刻である。
【0060】
また、フレーム毎に全画素の信号強度(輝度)の合計値を算出し、隣接するフレームの合計値との差が所定以上となったフレームを、開始フレームとしてもよい。
【0061】
また、隣接するフレームとの信号強度の合計値の差が所定の範囲内に納まる状態が所定の時間T以上継続した場合、所定の時間T直後のフレームを終了フレームとする。
【0062】
決定した結果は、解析範囲として、記憶部210の範囲記録部に記録する。
【0063】
第二の実施形態の画像解析部200の他の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0064】
次に、第二の実施形態の画像解析部200による画像解析処理の流れを説明する。
図8は、第二の実施形態の画像解析部200による画像解析処理の処理フローである。
【0065】
画像解析処理開始の指示を受け付けると、解析フレーム決定部226は、動画記録部から動画データを取得する(ステップS1201)。そして、解析範囲を決定する解析範囲決定処理を実行する(ステップS1202)。
【0066】
輝度解析部223は、動画データから解析範囲の動画を抽出し、輝度解析処理を行い(ステップS1203)、輝度解析結果を輝度解析結果記録部212に記録する。
【0067】
次に、染影部224は、輝度解析結果と、染影パラメータ記録部214のカラーチャート400とを用い、染影処理を行い(ステップS1204)、得られた染影動画データを染影結果記録部213に記録する。
【0068】
動画再生部225は、操作者からの指示を待ち、染影動画データを表示部106に再生表示する(ステップS1205)。
【0069】
以上説明したように、第二の実施形態によれば、既に説明した第一の実施形態の効果に加えて、次の特別な効果を奏することができる。
つまり、予め定めた条件に合致する範囲を、輝度解析を行う解析範囲として自動的に決定する。従って、操作者が手動で解析範囲を決める場合に比べて予め定めた条件に合致した解析範囲を精度よく高速に決定できる。
【0070】
また、第二の実施形態によれば、第一の実施形態の効果に加え、解析の前提となる解析範囲が精度良く定められるため、解析結果の精度も向上する。
【0071】
なお、第二の実施形態においても、予め定めた特定の領域、または、全画素の画素値の合計を用いて近似TICを生成し、この近似TICを用いて解析範囲(開始フレームおよび終了フレーム)を決定するよう構成してもよい。この場合、解析フレーム決定部226が、近似TICを生成する。
【0072】
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態について説明する。第三の実施形態では、生成した輝度解析結果および染影動画データを、基になる動画データと関連付けて保持する。そして、既に処理済みの動画データに対し画像解析処理が指示された場合、処理を行う代わりにデータ記録部から抽出する。
【0073】
動画データは、動画記録部に記録される際、動画データ単位に固有の識別番号(ID番号)が付与される。第三の実施形態では、上記画像解析部200で生成される輝度解析結果および染影動画データに、その基とした動画データのID番号を付与して管理する。従って、動画取得部221は、解析対象の動画データを取得する際、ID番号も共に取得する。
【0074】
第三の実施形態の超音波診断装置100の構成は基本的に第一の実施形態または第二の実施形態と同じである。ただし、第三の実施形態の画像解析部200のデータ処理部220bは、
図9に示すように、さらに、記録確認部227を備える。この記録確認部227は、解析対象の動画データから生成した染影動画データがデータ記録部210に保持されているかを確認し、保持されている状態に応じて各部に指示を行う。
【0075】
以下、第一の実施形態の構成を基本に、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて、第三の実施形態の各部の詳細を説明する。説明は、第三の実施形態の画像解析部200による画像解析処理の流れに沿って行う。
図10は、第三の実施形態の画像解析処理の処理フローである。
【0076】
画像解析処理開始の指示を受け、動画取得部221がID番号とともに解析対象の動画データを取得すると(ステップS1301)、記録確認部227は、ID番号を抽出し、染影結果記録部213を参照し、当該ID番号に対応づけたデータの有無を判別する(ステップS1302)。
【0077】
当該ID番号に対応づけて染影後データが保持されていない場合は、記録確認部227は、輝度解析結果記録部212を参照し、当該ID番号に対応づけたデータの有無を判別する(ステップS1303)。当該ID番号に対応づけて輝度解析結果が保持されていない場合は、記録確認部227は、解析フレーム設定部222にID番号を通知する。解析フレーム設定部222は、当該通知を受けると、解析範囲を受け付け(ステップS1304)、ID番号とともに輝度解析部223に通知する。
【0078】
通知を受けた輝度解析部223は、解析対象動画データの解析範囲に対し輝度解析処理を行い(ステップS1305)、輝度解析結果をID番号に対応づけて輝度解析結果記録部212に記録する。また、ID番号とともに、輝度解析処理を終えたことを染影部224に通知する。
【0079】
通知を受けた染影部224は、動画取得部221が取得した動画に対し、ID番号に対応づけて輝度解析記録部に記録される輝度解析結果を用いて染影処理を行い(ステップS1306)、染影動画データをID番号に対応づけて染影結果記録部213に記録する。
【0080】
また、ID番号とともに染影処理を終えたことを動画再生部225に通知する。通知を受けた動画再生部225は、ID番号に対応する染影動画データを染影結果記録部213から抽出し、表示部106に再生表示する(ステップS1307)。
【0081】
一方、ステップS1303でID番号に対応づけて輝度解析結果が保持されている場合、記録確認部227は、ID番号とともに染影部224に輝度解析処理は終了済みであることを通知する。通知を受けた染影部224は、ステップS1306へ移行し、染影処理を行う。
【0082】
また、ステップS1302でID番号に対応づけて染影動画データが保持されている場合、記録確認部227は、ID番号と再生の指示とを動画再生部225に通知する。通知を受けた動画再生部225は、ステップS1307へ移行し、通知されたID番号に対応づけて保持される染影動画データを染影結果記録部213から取得し、表示部106に再生表示する。
【0083】
以上説明したように、第三の実施形態によれば、既に説明した第一及び第二の実施形態の効果に加えて、次の特別な効果を奏することができる。
【0084】
つまり、一旦解析された動画データはデータ記録部210に保持しておき、その後、同じ動画データに対し解析の指示がある場合は、データ記録部210から抽出して表示する。従って、同じデータに何度も第三の実施形態の画像解析処理を行うことがない。このため、その分、全体の処理時間を短縮することができる。
【0085】
第三の実施形態は、特に、腫瘍の経過観察などで、以前取得した動画像も同様の解析を施して表示させたい場合などに有効である。
【0086】
なお、上記実施形態では、データ記録部210に処理対象動画データから生成された輝度解析結果、染影動画データがある場合は、それぞれの処理を行わないよう構成しているが、これに限られない。記録確認部227は、これらのデータがデータ記録部210にある場合は、再度の処理の要否を尋ねるよう構成してもよい。
【0087】
また、例えば、染影動画データがある場合は、再度染影処理を行うか否かに加え、他の染影パラメータを用いて染影処理を行うといった選択肢を用意してもよい。このように構成することにより、輝度解析処理を行うことなく、異なる染影パラメータで染影した染影動画データを得ることができる。
【0088】
なお、表示部106は、複数の染影動画データを同時に表示可能なよう構成してもよい。これによって、複数の領域を同時に観察が可能となり、操作者への負担が軽減できる。
【0089】
また、複数の動画表示エリアを設け、各染影動画データを並列に表示してもよいし、複数の染影動画データを合成し、1つの動画データとして表示してもよい。合成は、例えば、フレーム毎に、各ピクセルの画素値の差をとり、差に応じた表示色を用いるなどの手法により行う。
【0090】
例えば、RFA(ラジオ波熱凝固療法:radiofrequency ablation)治療の前後での染影動画を同時に表示する場合など、合成による手法が有効である。この場合、治療前に取得した動画データから生成した染影動画データと、治療後に取得した動画データから生成した染影動画データとで、異なるカラーチャート400を用いる。例えば、治療前の動画データには、青の濃淡の染影パターンを、治療後の動画データには、赤の濃淡の染影パターンを用いる。このように構成することにより、治療前のみ造影剤の流入が認められる血管は青、治療後のみ造影剤の流入が認められる血管は赤、前後で流入が認められる血管は青と赤がブレンドされた紫に表示され、対比しやすくなり、一目で治療効果の確認ができる。
【0091】
また、表示部106に表示する染影動画データは、染影結果記録部213から直接選択可能なように構成してもよい。この場合、操作者が直接ID番号を選択するよう構成してもよいし、または、操作者が指定しやすい患者名、撮像日時といったデータと、動画データのIDとを対応付けたテーブルを備え、患者名、撮像日時などの情報を指定するよう構成してもよい。
【0092】
なお、第三の実施形態では、輝度解析結果、染影動画データを、それらを作成する基とした動画データのID番号を用いて管理しているが、これに限られない。例えば、動画データのID番号とは独立した画像解析部200内独自の管理番号を用いてもよい。この場合、動画データのID番号と管理番号との対応テーブルをさらに備え、記録確認部227はこのテーブルを手掛かりに処理を行う。
【0093】
なお、上記各実施形態の超音波診断装置100は、外部装置とデータの送受信を行う送受信インタフェースと、送受信インタフェースを介して、生成した輝度解析結果、染影動画データを外部装置に送信する機能とを備えていてもよい。また、輝度解析結果および染影動画データが識別番号に関連付けて保持される場合、送受信インタフェースと、送受信インタフェースを介して指定された識別番号により特定される輝度解析結果および/または染影動画データを送信する機能と、を備えていてもよい。また、送受信インタフェースと、送受信インタフェースを介して外部装置で生成した染影パラメータを受け付け、染影パラメータ記録部に記録する手段とを備えていてよい。
【0094】
また、上記各実施形態では、超音波診断装置100が画像解析部200を備えるよう構成しているが、画像解析部200は、超音波診断装置100から独立した情報処理装置であって、超音波診断装置100とデータの送受信が可能な情報処理装置上に構成されていてもよい。
【0095】
このように構成することで、例えば、造影検査終了後に病院の処理能力の高いPC上で輝度解析処理を行うといった運用も可能となる。従って、輝度解析処理の自由度が、時間的にも空間的にも増大する。
【0096】
また、画像解析部200全ての機能ではなく、例えば、データ記録部210全てまたはその一部を、外部記憶装置に備えるよう構成してもよい。外部記憶装置は、例えば、外付けハードディスク、USBメモリ、CD-ROMなどである。
【0097】
例えば、染影パラメータ記録部214を外部記憶装置に備えることにより、他の表示に用いた染影パラメータに変更することが容易となる。他の解析と統一感のある染影動画を提供できる。
【0098】
また、輝度解析結果記録部212および染影結果記録部213を外部記憶装置に備えることにより、これらのデータの可搬性を高めることができる。