特許第5865263号(P5865263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5865263マスクブランク及びその製造方法、並びに転写用マスク及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865263
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】マスクブランク及びその製造方法、並びに転写用マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/82 20120101AFI20160204BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20160204BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   G03F1/82
   G03F1/54
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】22
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-549867(P2012-549867)
(86)(22)【出願日】2011年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2011079779
(87)【国際公開番号】WO2012086744
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-287109(P2010-287109)
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-287110(P2010-287110)
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅広
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−281411(JP,A)
【文献】 特開平07−013328(JP,A)
【文献】 特開2012−018342(JP,A)
【文献】 特開2010−192503(JP,A)
【文献】 特開2008−116583(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を有するマスクブランクの製造方法であって、
濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記反射防止層に作用させることによって、前記反射防止層の表面に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成する処理を施すことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項2】
前記処理は、前記高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとを前記反射防止層に作用させることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記不飽和炭化水素は、炭素数1〜4の低級不飽和炭化水素であることを特徴とする請求項2に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項4】
前記処理は、前記薄膜付の基板を80℃以下で加熱しながら行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項5】
前記処理前後のマスクブランクの特性は維持され、該特性は、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、薄膜の光学特性及び薄膜の光学特性の面内均一性の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項6】
前記処理前後のマスクブランクの平坦度の変化量は30nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記表面改質層の表面粗さ(Ra)は、0.70nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記遷移金属がクロム(Cr)又はタンタル(Ta)であることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を有するマスクブランクであって、
前記反射防止層は、前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を有することを特徴とするマスクブランク。
【請求項10】
前記表面改質層の表面粗さ(Ra)は、0.70nm以下であることを特徴とする請求項に記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記遷移金属がクロム(Cr)であり、前記表面改質層の酸化物は、3価又は4価のクロム酸化物を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載のマスクブランク。
【請求項12】
前記遷移金属がクロム(Cr)であり、前記表面改質層は、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるO(酸素)1sスペクトルにおいて、結合エネルギーがそれぞれ532eV付近にある第1のピークと530eV付近にある第2のピークとに分離したときに、第2のピーク面積に対する第1のピーク面積の割合が2.0以上であることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項13】
前記表面改質層の膜厚は、3nm以下であることを特徴とする請求項9乃至12の何れかに記載のマスクブランク。
【請求項14】
請求項9乃至13の何れかに記載のマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして薄膜パターンを形成してなることを特徴とする転写用マスク。
【請求項15】
基板上に、遷移金属を含む材料からなる薄膜をパターニングしてなる薄膜パターンを有する転写用マスクの製造方法であって、
濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記薄膜パターンに作用させることによって、前記薄膜パターンの表層に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成する処理を施し、
前記処理は、前記高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとを前記薄膜パターンに作用させることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項16】
前記不飽和炭化水素は、炭素数1〜4の低級不飽和炭化水素であることを特徴とする請求項15に記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項17】
前記処理は、前記薄膜パターン付の基板を80℃以下で加熱しながら行うことを特徴とする請求項15又は16に記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項18】
前記処理前後のマスクブランクの特性は維持され、該特性は、薄膜パターンの光学濃度、露光波長に対する表面反射率、検査波長に対する表面反射率及びCDの何れか1つを含むことを特徴とする請求項15乃至17の何れかに記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項19】
前記表面改質層の膜厚は、3nm以下であることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項20】
前記遷移金属がクロム(Cr)であり、前記表面改質層の酸化物は、3価又は4価のクロム酸化物を含むことを特徴とする請求項15乃至19の何れかに記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項21】
前記遷移金属がタンタル(Ta)であることを特徴とする請求項15乃至19の何れかに記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項22】
請求項14に記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄耐性を向上させたマスクブランク及びその製造方法並びに転写用マスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスク(以下、転写用マスクと呼ぶ。)と呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
フォトリソグラフィー法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す露光工程と、所望のパターン描画に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、レジストパターンに従って前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、レジストパターンの形成されていない薄膜が露出した部位をドライエッチング又はウェットエッチングすることにより、所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが出来上がる。
【0004】
転写用マスクや転写用マスクを製造するためのマスクブランクは、その製造時または使用時に洗浄が行われる。従来、その洗浄には、一般に硫酸等の酸が用いられていた(たとえば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−248298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、転写用マスクの製造時あるいは使用時に、硫酸等の酸を用いて洗浄を行うと、洗浄後に残留した硫酸または硫酸イオンが高エネルギーの露光光と反応して硫化アンモニウムとなって析出し、転写用マスクの曇り(ヘイズと呼ばれる)の原因となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでおり、露光光がより高エネルギー化していることに伴い、硫酸等の酸を用いた洗浄によるヘイズの発生という問題は顕著になってきている。
【0007】
そこで、このような酸を用いた洗浄によるヘイズの発生を防止するために、近年、特にクロム系薄膜を備えたマスクブランクや転写用マスクに対して、オゾン水やUVオゾンによるオゾン洗浄が用いられてきている。
しかし、本発明者の検討によると、このようなオゾン洗浄は、遷移金属を含む材料からなる薄膜を溶解させ、膜減りが生じ、そのため光学特性が変化(光学濃度低下、反射率変化など)してしまうという問題が発生することが判明した。特に、遷移金属がクロムの場合には、上記問題が顕著であることが判明した。また、近年のパターンの微細化に伴い、転写用マスクの製造コストが上昇してきていることから、転写用マスクの長寿命化が図られているが、その分洗浄回数が増加することとなる。そのため、特に、光半透過膜パターン上にクロム系遮光膜パターンを有する位相シフトマスクにおいて、オゾン洗浄回数が増加することによって、遮光膜パターンの光学特性の変化の問題が顕著であることも判明した。
転写用マスクにおいて、このような光学特性の変化はマスク性能に影響を与える重要な問題であり、最終的には転写用マスクを用いて製造される半導体装置の品質を悪化させることになる。
【0008】
そこで本発明は、従来の課題を解決するべくなされたものであり、その目的とするところは、オゾン洗浄等に対する洗浄耐性を向上させ、洗浄によるマスクブランク性能やマスク性能の劣化を防止できるマスクブランク及びその製造方法並びに転写用マスク及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を有するマスクブランクの製造方法において、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを反射防止層に作用させ、反射防止層の表面に酸化度の高い金属酸化物を含む強酸化膜を形成することにより、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、薄膜の光学特性、薄膜の光学特性の面内均一性などを変化(劣化)させることなく、オゾン洗浄等に対する洗浄耐性を向上できることを見い出した。
本発明者は以上の解明事実に基づき、さらに鋭意検討を続けた結果、本発明を完成したものである。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
(構成1)
基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を有するマスクブランクの製造方法であって、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記反射防止層に作用させることによって、前記反射防止層の表面に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成する処理を施すことを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
(構成2)
前記処理は、前記高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとを前記反射防止層に作用させることを特徴とする構成1に記載のマスクブランクの製造方法である。
【0011】
(構成3)
前記不飽和炭化水素は、炭素数1〜4の低級不飽和炭化水素であることを特徴とする構成2に記載のマスクブランクの製造方法である。
(構成4)
前記処理は、前記薄膜付の基板を80℃以下で加熱しながら行うことを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載のマスクブランクの製造方法である。
(構成5)
前記処理前後のマスクブランクの特性は維持され、該特性は、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、薄膜の光学特性及び薄膜の光学特性の面内均一性の少なくとも1つであることを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載のマスクブランクの製造方法である。
(構成6)
前記処理前後のマスクブランクの平坦度の変化量は30nm以下であることを特徴とする構成1乃至5の何れかに記載のマスクブランクの製造方法である。
【0012】
(構成7)
前記表面改質層の表面粗さは(Ra)は、0.70nm以下であることを特徴とする構成1乃至6の何れかに記載のマスクブランクの製造方法である。
(構成8)
前記遷移金属がクロム(Cr)又はタンタル(Ta)であることを特徴とする構成1乃至7の何れかに記載のマスクブランクの製造方法である。
(構成9)
構成1乃至8の何れかに記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクである。
(構成10)
基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を有するマスクブランクであって、前記反射防止層は、前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を有することを特徴とするマスクブランクである。
【0013】
(構成11)
前記表面改質層の表面粗さ(Ra)は0.70nm以下であることを特徴とする構成10に記載のマスクブランクである。
(構成12)
前記遷移金属がクロム(Cr)であり、前記表面改質層の酸化物は、3価又は4価のクロム酸化物を含むことを特徴とする構成9乃至11の何れかに記載のマスクブランクである。
【0014】
(構成13)
前記遷移金属がクロム(Cr)であり、前記表面改質層は、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるO(酸素)1sスペクトルにおいて、結合エネルギーがそれぞれ532eV付近にある第1のピークと530eV付近にある第2のピークとに分離したときに、第2のピーク面積に対する第1のピーク面積の割合が2.0以上であることを特徴とする構成9乃至12の何れかに記載のマスクブランクである。
(構成14)
前記表面改質層の膜厚は、3nm以下であることを特徴とする構成9乃至13の何れかに記載のマスクブランクである。
(構成15)
構成9乃至14の何れかに記載のマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして薄膜パターンを形成してなることを特徴とする転写用マスクである。
【0015】
(構成16)
基板上に、遷移金属を含む材料からなる薄膜をパターニングしてなる薄膜パターンを有する転写用マスクの製造方法であって、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記薄膜パターンに作用させることによって、前記薄膜パターンの表層に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成する処理を施すことを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
(構成17)
前記処理は、前記高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとを前記薄膜パターンに作用させることを特徴とする構成16に記載の転写用マスクの製造方法である。
【0016】
(構成18)
前記不飽和炭化水素は、炭素数1〜4の低級不飽和炭化水素であることを特徴とする構成17に記載の転写用マスクの製造方法である。
(構成19)
前記処理は、前記薄膜パターン付の基板を80℃以下で加熱しながら行うことを特徴とする構成16乃至18の何れかに記載の転写用マスクの製造方法である。
(構成20)
前記処理前後の転写用マスクの特性は維持され、該特性は、前記薄膜パターンの光学濃度、露光波長に対する表面反射率、検査波長に対する表面反射率及びCDの何れか1つを含むことを特徴とする構成16乃至19の何れかに記載の転写用マスクの製造方法である。
【0017】
(構成21)
前記表面改質層の膜厚は、3nm以下であることを特徴とする構成16乃至20の何れかに記載の転写用マスクの製造方法である。
(構成22)
前記遷移金属がクロム(Cr)であり、前記表面改質層の酸化物は、3価又は4価のクロム酸化物を含むことを特徴とする構成16乃至21の何れかに記載の転写用マスクの製造方法である。
(構成23)
前記遷移金属がタンタル(Ta)であることを特徴とする構成16乃至21の何れかに記載の転写用マスクの製造方法である。
(構成24)
構成16乃至23の何れかに記載の転写用マスクの製造方法によって製造された転写用マスクである。
(構成25)
構成15又は24記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴する半導体デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマスクブランクの製造方法によれば、基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を成膜後、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記薄膜に作用させ、前記反射防止層の表面に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成することにより、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、薄膜の光学特性、薄膜の光学特性の面内均一性などを劣化させることなく、オゾン洗浄等に対する洗浄耐性を向上できる。
また、本発明のマスクブランクを用いて製造される転写用マスクにおいて、使用時のオゾン洗浄等に対する洗浄耐性を向上でき、洗浄によるマスク性能の劣化を防止できる。
本発明の転写用マスクの製造方法によれば、基板上に形成された遷移金属を含む材料からなる薄膜をパターニングして薄膜パターンを形成後、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記薄膜パターンに作用させ、前記薄膜パターンの表面に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成することにより、薄膜パターンの光学濃度、光学特性、CD、それらの面内均一性などを劣化させることなく、オゾン洗浄等に対する洗浄耐性を向上できる。
また、本発明の転写用マスクの製造方法によって製造される転写用マスクにおいて、使用時のオゾン洗浄等に対する洗浄耐性を向上でき、洗浄によるマスク性能の劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】マスクブランクの断面図である。
図2】マスクブランクを用いて転写用マスクを製造する工程を示す断面図である。
図3】実施例1における表面改質層のX線光電子分光法による分析結果を示したものであり、(a)は表面改質層のO1sスペクトル、(b)は高濃度オゾンガス処理を施す前の遮光膜の表層部分のO1sスペクトルである。
図4】転写用マスクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態1を詳述する。
本発明は、構成1の発明にあるように、基板上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層が表面に形成された薄膜を有するマスクブランクの製造方法であって、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記反射防止層に作用させることによって、前記反射防止層の表面に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成する処理を施すことを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
【0021】
図1は、本発明のマスクブランクの一実施の形態を示す断面図である。これによると、本実施の形態に係るマスクブランク10は、透光性基板1上に、遷移金属を含む材料からなる反射防止層21が表面に形成され、薄膜パターン(転写パターン)を形成するための薄膜2を有する構造となっている。
【0022】
上記透光性基板1は、使用する露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されない。本発明では、石英基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができるが、この中でも石英基板は、ArFエキシマレーザー又はそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、本発明には特に好適である。
【0023】
転写パターンを形成するための薄膜2は、遷移金属を含む材料からなる薄膜であり、少なくとも最上層(最表面層)は上記遷移金属を含む材料からなる反射防止層21を有する。詳しくは後述するが、例えばクロム、タンタル、タングステンなどの遷移金属単体又はその化合物を含む材料からなる遮光膜における表面反射防止層や、遮光膜等の上に設けられる反射防止機能を有するエッチングマスク膜などが挙げられる。
透光性基板1上に上記薄膜2を成膜する方法としては、例えばスパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本発明はスパッタ成膜法に限定する必要はない。
なお、図1に示すマスクブランク10は、上記薄膜2上にレジスト膜を備えていないが、本発明は、薄膜2上に任意のレジスト膜を備えた構造のマスクブランクも含まれる。
【0024】
本発明のマスクブランク10の製造方法は、上記反射防止層21の表面(表層部分)に、前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成するために、反射防止層21の表面に50〜100体積%の高濃度オゾンガスを作用させる。因みに、従来、大気中あるいは大気中よりも酸素含有量の多い雰囲気下でマスクブランクを加熱処理することにより、薄膜の表面に酸化膜を形成させて、耐薬性等を向上させる方法が知られているが、本発明者の検討によると、このような加熱処理では、マスクブランクの特性を維持したまま、遷移金属の酸化物を含む強酸化膜の生成は困難である。
また、仮に加熱処理によって本発明の課題であるオゾン洗浄に対する洗浄耐性を向上させるためには、遷移金属がクロムの場合には、少なくとも300℃の温度で数時間以上の高温度、長時間の加熱処理が必要である。したがって、仮に洗浄耐性をある程度向上できたとしても、このような高温度、長時間の加熱処理を行うと、薄膜の劣化や、マスクブランクの平坦度の変化、表面粗さの劣化、光学特性、光学特性の面内均一性等の変化を生じることは避けられず、マスクブランク性能、ひいてはマスク性能の劣化を引き起こす恐れがある。
【0025】
これに対して、上述の高濃度オゾンガスを作用させる処理によれば、低温度かつ短時間で表面改質層を形成することができるので、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、光学特性等を何ら劣化させることなく、マスクブランクの特性を維持した状態で、薄膜の反射防止層表面に強酸化膜からなる表面改質層を形成することができる。また、高濃度オゾンガス処理の処理時間に応じて、酸化反応速度が徐々に遅くなり、一定時間(約30分)以上処理を施しても酸化反応が進まなくなって、強酸化膜の膜厚が増加しなくなるため、高濃度オゾンガス処理は、特に薄膜の光学特性の面内均一性の制御性がよい。
【0026】
本発明者の考察によれば、このように薄膜における反射防止層表面に対して、高濃度オゾンガスを作用させる(供給する)処理を行うことにより、酸素を含む反射防止層表面が改質され、強酸化膜が形成されるものと考えられる。
【0027】
反射防止層表面に対して高濃度オゾンガスを作用させる方法としては、たとえば適当なチャンバー内にマスクブランクを設置し、このチャンバー内に高濃度オゾンガスを導入してチャンバー内部を高濃度オゾンガスで置換させる方法が挙げられる。また、反射防止層表面に対して直接高濃度オゾンガスを噴き付けるなどの手段で供給する方法でもよい。
【0028】
また、高濃度オゾンガスを作用させるとき、反射防止層表面に高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとを反射防止層表面近傍で混合させて供給させることが好適である。不飽和炭化水素ガスは、エチレンガスなどの炭素の二重結合を有する炭化水素(アルケン)、アセチレンなどの炭素の三重結合を有する炭化水素(アルキン)、ブチレンなどの低分子量のものを使用すると、オゾニド等の不安定な中間体が形成され、この不安定な中間体が分解される過程で、強酸化膜が形成される反応がより促進されるため好ましい。
上記不飽和炭化水素としては、例えば、エチレン、ブチレン等の炭素の二重結合を有する炭化水素(アルケン)や、アセチレン等の炭素の三重結合を有する炭化水素(アルキン)等が挙げられ、特にこのような炭素数1〜4程度の低級不飽和炭化水素が好ましい。
【0029】
高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとで処理する場合、高濃度オゾンガスだけの処理と比較して、処理時間を短時間にし、後述の基板の加熱温度を低温度にして強酸化膜を形成することが可能となる。これにより、マスクブランクの性能を劣化させることなく、均一な強酸化膜の被膜を形成することができる。
高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとの供給比率(流量比率)は、1:1〜4:1が好ましい。この範囲内であれば、高濃度オゾンカスと不飽和炭化水素ガスとの反応が良好に行われる。
【0030】
上記オゾン濃度は、50〜100体積%の範囲であるが、オゾン濃度が50体積%未満であると、処理時間が非常に長く必要になったり、あるいは、処理時間を長くしても、洗浄耐性の向上に必要な膜厚を確保できない恐れがある。また、処理時間を短時間にし、基板の加熱温度を低温度にして強酸化膜を形成することができるため、オゾン濃度は100体積%であることが好ましい。
処理時間(高濃度オゾンガスを作用させる時間)については、オゾン濃度、基板の加熱温度、表面改質層の膜厚、被覆率等を考慮して適宜決定すればよい。
【0031】
また、この高濃度オゾンガス処理は、室温で行うことができるが、薄膜における反射防止層表面に強酸化膜が形成される反応をより促進させるため、例えば基板を、50〜80℃程度加熱してもよい。この場合の加熱温度があまり高いと、薄膜の材料にもよるが、例えばクロム系材料膜の場合、100℃を超えると膜が劣化する恐れがある。
【0032】
本発明のマスクブランク10の製造方法では、処理前後(表面改質層形成前後)でマスクブランクの特性を維持することができる。上記特性は、マスクブランクの平坦度の変化量、薄膜の表面粗さ、薄膜の光学特性及び薄膜の光学特性の面内均一性の少なくとも1つである。薄膜の光学特性としては、光学濃度(OD)、露光光に対する表面反射率、検査光に対する表面反射率、透過率、位相差等である。薄膜は、光学濃度が2.5〜3.1、露光光に対する表面反射率が40%以下(好ましくは30%以下)、マスクブランクや転写用マスクの欠陥検査等に用いる検査光(例えば193nm、257nm、364nm、488nm等)に対してはコントラストが十分に確保できるように、各々調整される。また、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの場合、薄膜は、透過率が1〜30%、位相差が160°〜200°に各々調整される。本発明では、マスクブランクの上記特性が調整されている薄膜に対して、表面改質層を形成する処理を施しても、調整されたマスクブランクの特性を変化(低下)させることなく、処理前のマスクブランクの特性を維持した状態で強酸化膜を形成することができる。
【0033】
本発明のマスクブランク10の製造方法において、処理前後の平坦度の変化量(絶対値)は、30nm以下である。好ましくは、処理前後の平坦度の変化量(絶対値)は、10nm以下である。
なお、本発明に記載する平坦度とはTIR(Total Indicated Reading)で表される表面の反り(変形量)を表す値である。本発明においては142×142mmのエリア内の測定値をもって平坦度とする。例えば、6インチ基板の中心における142×142mmのエリア内の測定値である。
【0034】
本発明のマスクブランク10の製造方法において、薄膜における反射防止層の表面改質層の表面粗さ(Ra)は0.70nm以下である。本発明では、反射防止層の表層に表面改質層が形成されることによる表面粗さの劣化を防止できるため、反射防止層の表面、つまり表面改質層の表面の表面粗さをRa=0.70nm以下、さらにはRa=0.50nm以下に抑えることが可能である。
表面粗さをRa=0.70nm以下、さらにはRa=0.50nm以下にすることにより、薄膜パターンのLER(Line Edge Roughness)を小さくすることができると共に、薄膜パターンの断面形状も良好にすることができるので好ましい。本発明の高濃度オゾンガス処理によって薄膜に表面改質層を形成した場合、表面改質層形成前後において、表面粗さが変化しないか、又は小さくすることができる。
【0035】
なお、本発明において、表面粗さを示す単位Raは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定することができる。具体的な測定は、例えば1μm角の範囲内で行うが、マスクの有効エリア内で均一にこの表面粗さを有していることが好ましい。ここでマスクの有効エリアとは、6インチ基板の場合、例えば142mm角程度の範囲を有効エリアとして考えればよい。
【0036】
このように、本発明のマスクブランクの製造方法によれば、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、薄膜の光学特性、薄膜の光学特性の面内均一性等を劣化させることがないので、マスクブランクや転写用マスクの性能に影響を及ぼさない。また、表面改質層が形成された薄膜をパターニングして転写用マスクを作製する際に、薄膜のエッチング特性を低下させることはないため、転写用マスクの加工精度を低下させることもない。
また、ダブルパターニング/ダブル露光技術を用いる転写用マスクにも好適である。これらの露光技術は2枚セットの転写用マスクを用いるものであるため、2枚の転写用マスクの精度の要求が厳しいが、本発明はこのような要求を満たすことが可能となる。
【0037】
本発明のマスクブランク10は、上記薄膜2における反射防止層21の表面(表層部分)に、前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を有している。この表面改質層は、遷移金属の酸化物を含む強酸化膜であるが、この強酸化膜中にはとくに酸化度の高い金属酸化物が含まれるため、オゾン洗浄等に対する洗浄耐性を著しく向上させることができる。ここで、金属酸化物の酸化度とは、遷移金属1個当たりの酸素原子の構成数であり、本発明において、「酸化度が高い」とは、上記のように定義される酸化度が1.5又は2のものをいうものとする。例えば遷移金属がクロムである場合、3価又は4価のクロム酸化物(Cr 、CrO)などは酸化度の高い金属酸化物に含まれる。
【0038】
図3は、後述の実施例1における表面改質層のX線光電子分光法(XPS)による分析結果を示したものであり、(a)は表面改質層のO(酸素)1sスペクトル、(b)は上述の高濃度オゾンガス処理による表面改質層が形成されていない状態の遮光膜の表層部分のO1sスペクトルである。詳しくは実施例1で後述するが、実施例1は、透光性基板上にMoSi系材料からなる光半透過膜とCr系材料からなる遮光膜をこの順に積層し、高濃度オゾンガス処理により上記遮光膜の表面に表面改質層を形成した位相シフトマスクブランクに関するものである。
【0039】
上記表面改質層は、XPSによって測定されるO1sスペクトルにおいて、結合エネルギーがそれぞれ532eV付近にある第1のピークと530eV付近にある第2のピークとに分離したときに、第2のピーク面積に対する第1のピーク面積の割合が2.0以上である。上記第1のピークは、主に酸化度の高いクロム酸化物(Crなど)成分や有機系酸素成分(これらをA成分とする)によるピークであり、上記第2のピークは、主に酸化度の低いクロム酸化物(CrOなど)成分やクロム酸窒化物成分(これらをB成分とする)によるピークである。また、酸化度が1.5又は2の酸化物成分が第1のピークに現れ、1.5未満の酸化物成分が第2のピークに現れる。また、本発明において、「酸化度が高い」とは、O1sスペクトルの第1のピーク強度が9000c/s以上、好ましく10000c/s以上の場合を含む。
【0040】
この分析結果から、A成分は74%、B成分は26%であり、パターン形成用の薄膜における反射防止層の表面に上述の高濃度オゾンガス処理による表面改質層が形成されることにより、高濃度オゾンガス処理を施す前の表面改質層が形成されていない状態(上記(b)のスペクトル)と比べると、上記A成分の割合が増加(B成分の割合は減少)している。これは、CrNやCrON等のCr−N結合が高濃度オゾンガス処理によって、Cr−O結合に置き換わることによって、Cr やCrOが増加し、A成分の割合が増加していると考えられる。このようにして、薄膜における反射防止層の表面を、酸化度の高い金属酸化物を含む強酸化膜(表面改質層)とすることにより、洗浄耐性が向上するものと考えられる。
なお、高濃度オゾンガス処理を施さない場合には、薄膜の表層が自然酸化し、A成分を含む酸化膜が形成される可能性があるが、本発明の洗浄耐性を向上させる均質な強酸化膜からなる表面改質層は形成されない。
【0041】
なお、上記表面改質層の膜厚は、本発明においては特に制約はされないが、本発明のマスクブランクを用いて製造される転写用マスクでの洗浄耐性を向上させるためには、マスクを製造する際のエッチング工程での膜減り量を見込んで、少なくとも1nm以上であることが好ましい。また、マスクブランクの特性、特に光学特性の面内均一性を維持するために、3nm以下とすることが好ましい。
なお、表面改質層の存在は、例えば薄膜の断面TEM観察により確認することが可能であり、表面改質層の膜厚についても特定することが可能である。
【0042】
また、本発明は、上述のマスクブランクを用いて製造される転写用マスク、すなわち、本発明のマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして転写パターンを形成してなる転写用マスクについても提供するものである。本発明のマスクブランクを用いることにより、製造される転写用マスクでの洗浄耐性を向上させることが可能である。
【0043】
図2は、本発明のマスクブランクを用いて転写用マスクを製造する工程を示す断面図である。
透光性基板1上に、上記反射防止層21を含む薄膜2を成膜し、反射防止層21の表層に表面改質層を形成したマスクブランク10を用いて、フォトリソグラフィー法により、該マスクブランクの薄膜をパターニングすることにより、薄膜パターンを形成する。すなわち、上記マスクブランク上に、例えば電子線描画用ポジ型レジスト膜3を形成し(同図(a)参照)、所望のデバイスパターンの描画を行う(同図(b)参照)。描画後、レジスト膜3を現像処理することにより、レジストパターン3aを形成する(同図(c)参照)。次に、このレジストパターン3aをマスクとして、上記反射防止層21を含む薄膜2をエッチングすることにより、反射防止層パターン21aを含む薄膜パターン2aを形成することができる(同図(d)参照)。この際のエッチング方法としては、微細パターンの形成に有効なドライエッチングを好ましく用いることができる。
残存するレジストパターンを除去して、透光性基板1上に反射防止層パターン21aを含む薄膜パターン2aを形成した転写用マスク20が出来上がる(同図(e)参照)。
【0044】
以下、本発明の実施の形態2を詳述する。
本発明は、構成16の発明にあるように、基板上に、遷移金属を含む材料からなる薄膜をパターニングしてなる薄膜パターンを有する転写用マスクの製造方法であって、濃度が50〜100体積%の高濃度オゾンガスを前記薄膜パターンに作用させることによって、前記薄膜パターンの表層に前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層を形成する処理を施すことを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
【0045】
図4は、本発明の転写用マスク200の一実施の形態を示す断面図である。これによると、本実施の形態に係る転写用マスク200は、透光性基板1上に形成された遷移金属を含む材料からなる薄膜をパターニングしてなる薄膜パターン(転写パターン)2aを有する構造となっている。なお、上記実施の形態1と同じ部材には同一の番号を付与している。
【0046】
薄膜パターン2aは、遷移金属を含む材料からなる薄膜パターンからなり、単一層の場合も積層の場合も含まれる。積層の場合は、少なくとも最上層(最表面層)は上記遷移金属を含む材料からなる。詳しくは後述するが、例えばクロム、タンタル、タングステンなどの遷移金属単体又はその化合物を含む材料からなる遮光膜や、遮光膜等の上に設けられるエッチングマスク膜などが挙げられる。また、薄膜パターン2aは、反射防止層を含んでもよい。
なお、図4に示す転写用マスク200は、ペリクルを備えていないが、本発明は、ペリクルを備えた構造の転写用マスクも含まれる。
【0047】
本発明の転写用マスク200は、上記図2の転写用マスク20の製造方法と同様にして薄膜パターン2aが形成された透光性基板1を製造する。
本発明の転写用マスク200の製造方法は、上記薄膜パターン2aの表面(表層部分及び側壁)に、前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層4aを形成するために、薄膜パターン2aの表面に50〜100体積%の高濃度オゾンガスを作用させる。因みに、従来、大気中あるいは大気中よりも酸素含有量の多い雰囲気下で転写用マスクを加熱処理することにより、薄膜の表面に酸化膜を形成させて、耐薬性等を向上させる方法が知られているが、本発明者の検討によると、このような加熱処理では、転写用マスクの特性を維持したまま、遷移金属の酸化物を含む強酸化膜の生成は困難である。また、たとえば本発明の課題であるオゾン洗浄に対する洗浄耐性を向上させるためには、遷移金属がクロムの場合には、少なくとも300℃の温度で数時間以上の高温度、長時間の加熱処理が必要であり、仮に洗浄耐性をある程度向上できたとしても、このような高温度、長時間の加熱処理を行うと、薄膜パターンの劣化や、薄膜パターンの光学濃度、表面反射率等の光学特性、CD、それらの面内均一性等の変化を生じることは避けられず、マスク性能の劣化を引き起こす恐れがある。
【0048】
これに対して、上述の高濃度オゾンガスを作用させる処理によれば、低温度かつ短時間で表面改質層を形成することができるので、薄膜パターンの光学特性、CD等を何ら劣化させることなく、転写用マスクの特性を維持した状態で、薄膜パターンの表面に強酸化膜からなる表面改質層を形成することができる。また、高濃度オゾンガス処理の処理時間に応じて、酸化反応速度が徐々に遅くなり、一定時間(約30分)以上処理を施しても酸化反応が進まなくなって、強酸化膜の膜厚が増加しなくなるため、高濃度オゾンガス処理は、特に薄膜パターンの光学特性及びCDの面内均一性の制御性がよい。
【0049】
本発明者の考察によれば、このように薄膜パターン表面に対して、高濃度オゾンガスを作用させる(供給する)処理を行うことにより、薄膜パターン表面(側面を含む)が改質され、強酸化膜が形成されるものと考えられる。
【0050】
薄膜パターン表面に対して高濃度オゾンガスを作用させる方法としては、たとえば適当なチャンバー内に転写用マスクを設置し、このチャンバー内に高濃度オゾンガスを導入してチャンバー内部を高濃度オゾンガスで置換させる方法が挙げられる。また、薄膜パターン表面に対して直接高濃度オゾンガスを噴き付けるなどの手段で供給する方法でもよい。薄膜パターンに完全なガス状態で高濃度オゾンガス処理を行う場合、パターンサイズが微細でも、パターン間にガスが入り込むため、薄膜パターン表面だけでなく側壁に対しても均一な表面改質層を形成することができる。これに対して、例えば水蒸気及び酸素等を含むプラズマ処理によって、表面改質層を形成しようとする場合には、パターン間に水蒸気等が十分に入り込むことができず、パターン側壁の表面改質層が均一に形成されにくくなる。これは、パターンサイズが微細になればなるほど顕著になると考えられる。
【0051】
また、高濃度オゾンガスを作用させるとき、薄膜パターン表面に高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとを薄膜パターン表面近傍で混合させて供給させることが好適である。不飽和炭化水素ガスは、エチレンガスなどの炭素の二重結合を有する炭化水素(アルケン)、アセチレンなどの炭素の三重結合を有する炭化水素(アルキン)、ブチレンなどの低分子量のものを使用すると、オゾニド等の不安定な中間体が形成され、この不安定な中間体が分解される過程で、強酸化膜が形成される反応がより促進されるため好ましい。
上記不飽和炭化水素としては、例えば、エチレン、ブチレン等の炭素の二重結合を有する炭化水素(アルケン)や、アセチレン等の炭素の三重結合を有する炭化水素(アルキン)等が挙げられ、特にこのような炭素数1〜4程度の低級不飽和炭化水素が好ましい。
【0052】
高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとで処理する場合、高濃度オゾンガスだけの処理と比較して、処理時間を短時間にし、後述の基板の加熱温度を低温度にして強酸化膜を形成することが可能となる。これにより、転写用マスクの性能を劣化させることなく、均一な強酸化膜の被膜を形成することができる。
高濃度オゾンガスと不飽和炭化水素ガスとの供給比率(流量比率)は、1:1〜4:1が好ましい。この範囲内であれば、高濃度オゾンカスと不飽和炭化水素ガスとの反応が良好に行われる。
【0053】
上記オゾン濃度は、50〜100体積%の範囲であるが、オゾン濃度が50体積%未満であると、処理時間が非常に長く必要になったり、あるいは、処理時間を長くしても、洗浄耐性の向上に必要な膜厚を確保できない恐れがある。また、処理時間を短時間にし、基板の加熱温度を低温度にして強酸化膜を形成することができるため、オゾン濃度は100体積%であることが好ましい。
処理時間(高濃度オゾンガスを作用させる時間)については、オゾン濃度、基板の加熱温度、表面改質層の膜厚、被覆率等を考慮して適宜決定すればよい。
【0054】
また、この高濃度オゾンガス処理は、室温で行うことができるが、薄膜パターン表面に強酸化膜が形成される反応をより促進させるため、例えば基板を、50〜80℃程度加熱してもよい。この場合の加熱温度があまり高いと、薄膜パターンの材料にもよるが、例えばクロム系材料膜の場合、100℃を超えると膜が劣化する恐れがある。
【0055】
本発明の転写用マスク200の製造方法では、処理前後(表面改質層形成前後)で転写用マスクの特性を維持することができる。上記特性は、薄膜パターンの光学特性、薄膜パターンのCD、及び光学特性又はCDの面内均一性の少なくとも1つである。薄膜パターンの光学特性としては、光学濃度(OD)、露光光に対する表面反射率、検査光に対する表面反射率、透過率、位相差等である。薄膜パターンは、光学濃度が2.5〜3.1、露光光に対する表面反射率が40%以下(好ましくは30%以下)、マスクブランクや転写用マスクの欠陥検査等に用いる検査光(例えば193nm、257nm、364nm、488nm等)に対してはコントラストが十分に確保できるように、に各々調整される。また、ハーフトーン型位相シフトマスクの場合、薄膜パターンは、透過率が1〜30%、位相差が160°〜200°に各々調整される。本発明では、転写用マスクの上記特性が調整されている薄膜パターンに対して、表面改質層4aを形成する処理を施しても、調整された転写用マスクの特性を変化(低下)させることなく、処理前の転写用マスクの特性を維持した状態で強酸化膜を形成することができる。
【0056】
本発明の転写用マスク200の製造方法において、薄膜パターンのCDバラツキは、5nm以下である。半導体デバイスの設計仕様でいうDRAM ハーフピッチ(hp)32nm世代ではウェハ上でCDバラツキを2.6nm以下とする必要があり、このためには、hp32nm世代で使用する転写マスクに求められるCDバラツキは5nm以下に抑えることが好ましいが、本発明の転写用マスク200の製造方法では、表面改質層4aを形成する処理を施しても、CDバラツキを増大させることなく、処理前のCDの面内均一性を維持することができる。
【0057】
このように、本発明の転写用マスクの製造方法によれば、薄膜パターンの光学特性、薄膜パターンのCD、それらの面内均一性等を変化(劣化)させることがないので、転写用マスクの性能に影響を及ぼさない。
また、ダブルパターニング/ダブル露光技術を用いる転写用マスクにも好適である。これらの露光技術は2枚セットの転写用マスクを用いるものであるため、2枚の転写用マスクの精度の要求が厳しいが、本発明はこのような要求を満たすことが可能となる。
【0058】
なお、上記表面改質層の膜厚は、本発明においては特に制約はされないが、本発明の転写用マスクでの洗浄耐性を向上させるためには、少なくとも0.5nm以上であることが好ましい。また、膜厚を厚くするためには、例えば上述の高濃度オゾンガス処理の処理時間を長くする必要がある上に、膜厚があまり厚いと光学特性やCD変化が大きくなる恐れがある。そのため、洗浄耐性の向上が十分に達成できる膜厚とすればよく、その観点から3nm以下とすることが好ましい。
なお、表面改質層の存在は、例えば薄膜の断面TEM観察により確認することが可能であり、表面改質層の膜厚についても特定することが可能である。
【0059】
本発明の転写用マスク200は、上記薄膜パターン2aの表面(表層部分)に、前記遷移金属の酸化物を含む強酸化膜からなる表面改質層4aを有している。この表面改質層4aは、遷移金属の酸化物を含む強酸化膜であるが、この強酸化膜中にはとくに酸化度の高い金属酸化物が含まれるため、オゾン洗浄等に対する洗浄耐性を著しく向上させることができる。ここで、金属酸化物の酸化度とは、遷移金属1個当たりの酸素原子の構成数であり、本発明において、「酸化度が高い」とは、上記のように定義される酸化度が1.5又は2のものをいうものとする。例えば遷移金属がクロムである場合、3価又は4価のクロム酸化物(Cr 、CrO)などは酸化度の高い金属酸化物に含まれる。
上述した図3のマスクブランクにおける薄膜に形成される表面改質層の評価は、転写用マスクにおける薄膜パターンに形成される表面改質層の評価にも適用できる。
【0060】
また、本発明は、上述の転写用マスクの製造方法によって製造される転写用マスクについても提供するものである。本発明の転写用マスクの製造方法によって製造される転写用マスクでの洗浄耐性を向上させることが可能である。
以上の実施の形態により説明したように、本発明は、とくに波長200nm以下の短波長の露光光を露光光源とする露光装置に用いられる転写用マスクおよびこのマスクの製造に用いるマスクブランクに好適である。本発明によれば、洗浄による光学特性変化を生じることなく、ヘイズを防止できる。例えば、以下のようなマスクブランクおよび転写用マスクに好適である。
【0061】
(1)前記薄膜が、遷移金属を含む材料からなる表面反射防止層が形成された遮光膜を含むバイナリマスクブランクおよびバイナリマスク
前記薄膜パターンが遷移金属を含む材料からなる遮光膜であるバイナリマスク
かかるバイナリマスクブランクおよびバイナリマスクは、透光性基板上に遮光膜を有する形態のものであり、この遮光膜は、クロム、タンタル、ルテニウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料からなる。例えば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成した遮光膜が挙げられる。また、例えば、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成した遮光膜が挙げられる。また、上記遷移金属と、アルミニウム、マグネシウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ等の金属とを含む合金又はそれに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加した化合物としてもよい。
【0062】
かかるバイナリマスクブランクおよびバイナリマスクは、遮光膜を、遮光層と表面反射防止層の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層を加えた3層構造としたものなどがある。遮光膜をクロムの化合物で形成する場合には、裏面反射防止層(CrOCN等)、遮光層(CrN、CrON等)、表面反射防止層(CrOCN等)の3層構造が好ましい。遮光膜をモリブデン及びケイ素(モリブデンシリサイドを含む)の化合物で形成する場合には、遮光層(MoSi、MoSiN等)と表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造が好ましい。遮光膜をタンタルの化合物で形成する場合には、遮光層(TaN等)と表面反射防止層(TaO等)の2層構造が好ましい。
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0063】
(2)前記薄膜が、光半透過膜の上に形成され、遷移金属を含む材料からなる表面反射防止層が形成された遮光膜を含む位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスク
前記薄膜パターンが、光半透過膜の上に形成され、遷移金属を含む材料からなる遮光膜を含む位相シフトマスク
かかる位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクとしては、透光性基板上に光半透過膜を有する形態のものであって、該光半透過膜をパターニングしてシフタ部を設けるタイプであるハーフトーン型位相シフトマスク用やトライトーン型位相シフトマスク用のマスクブランクがある。かかる位相シフトマスクにおいては、転写領域の外周部分における多重露光を防止するために、転写領域の外周部分に遮光帯を有する形態とするものや、光半透過膜を透過した光に基づき転写領域に形成される光半透過膜パターンによる被転写基板のパターン不良を防止するために、透光性基板上に光半透過膜とその上の遮光膜とを有する形態とするものが挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクやトライトーン型位相シフトマスクブランクの他に、透光性基板をエッチング等により掘り込んでシフタ部を設ける基板掘り込みタイプであるレベンソン型位相シフトマスク用やクロムレス位相シフトマスク用、エンハンサー型位相シフトマスク用のブランク及び転写用マスクが挙げられる。
【0064】
上記光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものであり、この光半透過膜をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0065】
この光半透過膜は、例えば遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、これらを二種以上含む合金等が適用可能である。
【0066】
また、遷移金属を含む材料からなる表面反射防止層が形成された遮光膜は、上記(1)に記載された遮光膜と同様の材料、構造とすることができる。上記光半透過膜の材料が遷移金属及びケイ素を含む場合には、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。
また、光半透過膜上に遮光膜を有する位相シフトマスクの場合、上記光半透過膜の材料が遷移金属及びケイ素を含む場合には、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
特に、光半透過膜がモリブデン及びケイ素を含む材料からなり、上記遮光膜がクロムを含む材料からなる場合、光半透過膜に比べて遮光膜のオゾン水洗浄による洗浄耐性が低いため、転写用マスクの洗浄回数が増加すると、光半透過膜パターンの光学特性は変化しなくても遮光膜パターンが膜べりして光学特性が変化してしまうという問題が発生するが、遮光膜パターンに表面改質層が形成されることによって、遮光膜パターンの光学特性の変化を抑制することができるため、位相シフトマスクの洗浄耐性を向上させることが可能となる。
【0067】
(3)前記薄膜が、遮光膜の上に形成され、遷移金属を含む材料からなる反射防止機能を有するエッチングマスク膜を含むバイナリマスクブランクおよびバイナリマスク
前記薄膜パターンが、遮光膜の上に形成され、遷移金属を含む材料からなる材料からなるエッチングマスク膜を含むバイナリマスク
かかるバイナリマスクブランクおよびバイナリマスクは、透光性基板上に遮光膜及びエッチングマスク膜(反射防止膜)のパターンを有する形態のものである。この遮光膜は、遷移金属及びケイ素の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素及び/又はホウ素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、これらを二種以上含む合金等が適用可能である。また、上記遷移金属と、アルミニウム、マグネシウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ等の金属とを含む合金としてもよい。
【0068】
特に、遮光膜をモリブデン及びケイ素(モリブデンシリサイドを含む)の化合物で形成する場合では、遮光層(MoSi、MoSiN等)と表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造がある。また、遮光膜をタンタルの化合物で形成する場合には、遮光層(TaN等)と表面反射防止層(TaO等)の2層構造がある。エッチングマスク膜があるため、上記表面反射防止層はなくてもよい。
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0069】
また、レジスト膜の膜厚を薄膜化して微細パターンを形成するために、遮光膜上にエッチングマスク膜を設けるが、このエッチングマスク膜は反射防止機能も備えており、転写用マスクを作製したときに反射防止膜パターンとなる。このエッチングマスク膜は、遷移金属シリサイド等を含む上記遮光膜のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。
また、(1)〜(3)において、透光性基板と遮光膜との間、又は光半透過膜と遮光膜との間に、遮光膜や光半透過膜に対してエッチング耐性を有するエッチングストッパー膜を設けてもよい。
【0070】
(4)前記薄膜が、遷移金属(特に、タンタル)を含む材料からなる表面反射防止層を有する吸収体膜を含む反射型マスクブランク及び反射型マスク
前記薄膜パターンが、遷移金属(特に、タンタル)を含む材料からなる吸収体膜を含む反射型マスク
かかる反射型マスクブランク及び反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上にバッファ膜、さらにその上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。バッファ膜は、吸収体膜のパターン形成工程及び修正工程における多層反射膜の保護を目的として多層反射膜と吸収体膜との間に設けられており、バッファ膜がない構成とすることもできる。
【0071】
吸収体膜は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するものであれば良い。タンタルを含む材料としては、特にTaの単体またはTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。Taを主成分とする材料は、たとえばTaの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えばTaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、等を好適に用いることができる。上記吸収体膜は、表面反射防止層とそれ以外の下層とからなる積層構造となっており、表面反射防止層は、タンタル(Ta)の酸化物、窒化物、酸窒化物、または炭化物の何れかを含む材料で形成されることが好ましい。
【0072】
また、基板としては、SiO−TiO系ガラス、石英ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等を用いることが出来る。金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。また、単結晶シリコン基板を使用することもできる。
転写用マスクには、位相シフト効果を使用しないバイナリマスク、位相シフト効果を使用する位相シフトマスクの中では、ハーフトーン型位相シフトマスク、トライトーン型位相シフトマスク、レベンソン型位相シフトマスク、クロムレス位相シフトマスク、エンハンサーマスク、反射型マスクなどが含まれる。転写用マスクにはレチクルが含まれる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
透光性基板としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板上に、まず窒化されたモリブデン及びシリコンからなる光半透過膜を成膜した。
具体的には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N:He=5:49:46)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。次いで、上記MoSiN膜が形成された基板に対して、加熱炉を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は6.16%、位相差が184.4度となっていた。
【0074】
次に、上記光半透過膜の上に、以下の表面反射防止層を有する遮光膜を成膜した。
具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:10:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚30nmのCrOCN層を成膜した。続いて、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:N=25:5)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚4nmのCrN層を成膜した。最後に、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:5:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚14nmのCrOCN層を成膜し、合計膜厚48nmの3層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。
【0075】
この遮光膜は、上記光半透過膜との積層構造で光学濃度(OD)がArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となるように調整されている。また、前記露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率は20%であった。さらに、上記積層構造の光学濃度を面内25箇所測定し、光学濃度の面内ばらつき(面内均一性)を測定したところ、3σ(σは標準偏差)で0.02であった。なお、光学濃度は、分光光度計(島津製作所製:ss3700)を用いて測定した。
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記遮光膜の表面の表面粗さを測定したところ(測定エリア1μm×1μm)、Ra=0.56nmであった。さらに、平坦度測定装置(トロッペル社製:UltraFlat200M)を用いて、142mm×142mmにおける平坦度を測定したところ、310nmであった。
【0076】
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を成膜したマスクブランクに対し、高濃度オゾンガス(100体積%)とエチレンガスとを供給して、遮光膜の表面近傍で混合し、遮光膜の表面に高濃度オゾンガスとエチレンガスとを作用させる処理を行った。この場合のオゾンガスとエチレンガスとの流量比率は2:1とした。処理時間(オゾンガスとエチレンガスとを作用させる時間)は10分とし、基板は60℃に加熱した。
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有する位相シフトマスクブランクを作製した。
【0077】
作製された位相シフトマスクブランクの上記積層構造の薄膜の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜における表面反射防止層の表層部分に厚さ略1nmの被膜(表面改質層)が形成されていた。さらにこの被膜の組成をX線光電子分光法で表面に対する検出器の傾きを30°として詳しく分析したところ、元素組成(原子%比)は、Cr:16.6、O:40.6、N:5.5、C:37.3であった。また、クロム原子数を基準としたときの原子数比は、O/Cr=2.44、N/Cr=0.33、C/Cr=2.24である。
【0078】
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記薄膜の表面、つまり表面改質層の表面の表面粗さを測定したところ(測定エリア1μm×1μm)、Ra=0.46nmであった。つまり、上述の高濃度オゾンガスとエチレンガスによる処理を施す前の遮光膜の表面の表面粗さRa=0.56nmと比べて、表面粗さは処理前後で0.10nm減少しており(減少率は0.10÷0.56×100=18%)、表面粗さの劣化はなく、表面粗さが小さくなった。また、断面TEM観察を行ったところ、処理前後で、表面粗さの低減及びグレインサイズの低減が確認された。
【0079】
さらに、処理後の光半透過膜と遮光膜の積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率及び488nmの検査光の波長に対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。また、積層膜の光学濃度の面内ばらつきは、3σで0.02であり、処理前と変化はなかった。
また、平坦度測定装置(トロッペル社製:UltraFlat200M)を用いて、142mm×142mmにおける平坦度を測定したところ、306nmであり、平坦度変化量は4nmであり、ほとんど変化はなかった。
【0080】
このように、高濃度オゾンガス処理前後において、マスクブランクの平坦度、薄膜の表面粗さ、光学特性、光学特性の面内均一性が変化(劣化)することなく、表面改質層を形成することが確認できた。
【0081】
また、図3は、本実施例における表面改質層のX線光電子分光法による分析結果を示したものであり、(a)は表面改質層のO(酸素)1sスペクトル、(b)は上述の高濃度オゾンガスとエチレンガスによる処理を施す前の遮光膜の表層部分のO1sスペクトルである。
上記表面改質層は、XPSによって測定されるO1sスペクトルにおいて、結合エネルギーがそれぞれ532eV付近にある第1のピークと530eV付近にある第2のピークとに分離したときに、第2のピーク面積に対する第1のピーク面積の割合が2.8である。上記第1のピークは、主に酸化度の高いクロム酸化物(Crなど)成分や有機系酸素成分(A成分とする)によるピークであり、上記第2のピークは、主に酸化度の低いクロム酸化物(CrOなど)成分やクロム酸窒化物成分(B成分とする)によるピークである。この分析結果から、A成分は74%、B成分は26%であり、パターン形成用の薄膜の表面に上述の高濃度オゾンガス処理による表面改質層が形成されることにより、高濃度オゾンガス処理を施す前の表面改質層が形成されていない状態(上記(b)のスペクトル)と比べると、上記A成分の割合が増加し、B成分の割合が減少していることが分かる。また、O1sスペクトルにおいて、高濃度オゾンガス処理を施す前の第1のピーク強度が約7400c/sであるのに対して、高濃度オゾンガス処理を施した後の第1のピーク強度は約9500c/sであり、高濃度オゾンガス処理によって、第1のピークが増加していることが分かる。
【0082】
作製した本実施例の位相シフトマスクブランクを電動モータ等で回転させながら、洗浄液供給ノズルから50ppmのオゾン水(室温)を積層膜に対して75分供給することにより、オゾン洗浄を行った。なお、この方法は通常行われているオゾン洗浄よりも過酷な条件である。オゾン洗浄後、上記薄膜の光学濃度を測定したところ、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜を断面TEMで確認したが、膜減りは非常に少なく抑えられていた。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する表面反射率についても確認したが、上記オゾン水洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例の位相シフトマスクブランクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0083】
(実施例2)
実施例1において、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を積層したマスクブランクに対し、遮光膜の表面に高濃度オゾンガス(100体積%)とエチレンガスとを作用させる処理時間を30分としたこと以外は、実施例1と同様にして位相シフトマスクブランクを作製した。
作製した本実施例の位相シフトマスクブランクの上記積層構造の薄膜の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜における表面反射防止層の表層部分に厚さ約2nmの被膜(表面改質層)が形成されていた。さらにこの被膜の組成をX線光電子分光法で表面に対する検出器の傾きを30°として分析したところ、元素組成(原子%比)は、Cr:17.9、O:43.1、N:4.6、C:34.4であった。また、クロム原子数を基準としたときの原子数比は、O/Cr=2.41、N/Cr=0.26、C/Cr=1.92である。
【0084】
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記表面改質層の表面の表面粗さを測定したところ(測定エリア1μm×1μm)、Ra=0.46nmであり、上述の高濃度オゾンガスによる処理を施す前の遮光膜の表面の表面粗さRa=0.56nmと比べて、表面粗さは処理前後0.10nm減少しており(減少率は0.10÷0.56×100=18%)、表面粗さの劣化はなく、表面粗さが小さくなった。また、断面TEM観察を行ったところ、処理前後で、表面粗さの低減及びグレインサイズの低減が確認された。
【0085】
さらに、処理後の光半透過膜と遮光膜の積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率及び488nmの検査光の波長に対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。また、積層膜の光学濃度の面内ばらつきは、3σで0.02であり、処理前と変化はなかった。
また、実施例1と同様にして平坦度を測定したところ、306nmであり、平坦度変化量は4nmであり、ほとんど変化はなかった。
【0086】
また、実施例1と同様に、本実施例における表面改質層をXPSにより分析した結果、O1sスペクトルにおいて、結合エネルギーがそれぞれ532eV付近にある第1のピークと530eV付近にある第2のピークとに分離したときに、第2のピーク面積に対する第1のピーク面積の割合が2.2であった。また、この分析結果から、表面改質層中の主に酸化度の高いクロム酸化物(Crなど)成分や有機系酸素成分などのA成分の割合は69%、主に酸化度の低いクロム酸化物成分やクロム酸窒化物成分などのB成分の割合は31%であった。また、O1sスペクトルにおいて、高濃度オゾンガス処理を施した後の第1のピーク強度は約10500c/sであり、処理前よりも増加していた。
【0087】
作製した本実施例の位相シフトマスクブランクに対して実施例1と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記薄膜の光学濃度を測定したところ、3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜を断面TEMで確認したが、膜減りは非常に少なく抑えられていた。また、表面反射率についても確認したが、上記オゾン水洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例の位相シフトマスクブランクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0088】
(実施例3)
透光性基板としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、この透光性基板上に、実施例1と同様の光半透過膜を成膜し加熱後、以下の表面反射防止層を有する遮光膜を成膜した。
具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:N:He=30:30:40)とし、DC電源の電力を0.8kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚24nmのCrN膜を成膜した。続いて、アルゴン(Ar)とメタン(CH)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa,ガス流量比 Ar+CH4:NO:He=65:3:40)とし、DC電源の電力を0.3kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚24nmのCrON(C)膜を成膜し、合計膜厚48nmの2層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。なお、この遮光膜は、インライン型スパッタ装置を用いたため、CrN膜およびCrON(C)膜は膜厚方向に組成が傾斜した傾斜膜であった。
【0089】
この遮光膜は、上記光半透過膜との積層構造で光学濃度(OD)がArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となるように調整されている。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率は20%であった。さらに、上記積層構造の光学濃度を面内25箇所測定し、光学濃度の面内ばらつき(面内均一性)を測定したところ、3σ(σは標準偏差)で0.03であった。
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記遮光膜の表面の表面粗さを測定したところ(測定エリア1μm×1μm)、Ra=0.73nmであった。
【0090】
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を成膜したマスクブランクに対し、高濃度オゾンガスを供給し、遮光膜の表面に高濃度オゾンガスを作用させる処理を行った。この場合のオゾンガスの濃度は100体積%とし、処理時間(オゾンガスを作用させる時間)は10分とし、基板は60℃に加熱した。
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有する位相シフトマスクブランクを作製した。
【0091】
作製された位相シフトマスクブランクの上記積層構造の薄膜の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜における反射防止層の表層部分に厚さ略1nmの被膜(表面改質層)が形成されていた。
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記表面改質層の表面の表面粗さを測定したところ(測定エリア1μm×1μm)、Ra=0.64nmであった。つまり、上述の高濃度オゾンガスによる処理を施す前の遮光膜の表面の表面粗さRa=0.73nmと比べて、表面粗さは処理前後で0.09nm減少しており(減少率は0.09÷0.73×100=12%)、表面粗さの劣化はなく、表面粗さが小さくなった。また、断面TEM観察を行ったところ、処理前後で、表面粗さの低減及びグレインサイズの低減が確認された。
【0092】
さらに、処理後の光半透過膜と遮光膜の積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率及び488nmの検査光の波長に対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。また、積層膜の光学濃度の面内ばらつきは、3σで0.02であり、処理前とほとんど変化はなかった。
【0093】
作製した本実施例のマスクブランクに対して実施例1と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記薄膜の光学濃度を測定したところ、3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜を断面TEMで確認したが、膜減りは非常に少なく抑えられていた。また、表面反射率についても確認したが、上記オゾン洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例のマスクブランクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0094】
(実施例4)
透光性基板としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板上に、遮光膜として、MoSiON膜(裏面反射防止層)、MoSi膜(遮光層)をそれぞれ形成した。
具体的には、MoとSiとの混合ターゲット(Mo:Si=21mol%:79mol%)を用い、ArとOとNとHeをスパッタリングガス圧0.2Pa(ガス流量比 Ar:O:N:He=5:4:49:42)とし、DC電源の電力を3.0kWで、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜を6nmの膜厚で形成し、次いで、同じターゲットを用い、Arをスパッタリングガス圧0.1Paとし、DC電源の電力を2.0kWで、モリブデン及びシリコンからなる膜を31nmの膜厚で形成した。
【0095】
次に、上記MoSi系遮光膜の上に、以下のCr系の反射防止膜兼エッチングマスク膜を成膜した。
具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)と酸素(O)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:N:O=30:35:35)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚17nmのCrON層を成膜した。
【0096】
遮光膜及びエッチングマスク膜の合計膜厚は54nmとした。なお、遮光膜及びエッチングマスク膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率は16%であった。
【0097】
以上のようにして、ガラス基板上にMoSi系遮光膜とCr系エッチングマスク膜を積層したマスクブランクに対し、Cr系エッチングマスク膜の表面に高濃度オゾンガスとエチレンガスの混合ガスを作用させる処理を行った。この場合のオゾンガスとエチレンガスとの流量比率は2:1とした。処理時間(オゾンガスとエチレンガスとを作用させる時間)は10分とし、基板は60℃に加熱した。
以上のようにして、ガラス基板上にパターン形成用MoSi系遮光膜およびCr系エッチングマスク膜を有するバイナリマスクブランクを作製した。
【0098】
作製されたバイナリマスクブランクの上記Cr系エッチングマスク膜の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、エッチングマスク膜の表層部分に厚さ略1nmの被膜(表面改質層)が形成されていた。
また、断面TEM観察を行ったところ、処理前後で、表面粗さの低減及びグレインサイズの低減が確認された。
さらに、処理後の遮光膜とエッチングマスク膜の積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対するエッチングマスク膜の表面反射率及び488nmの検査光の波長に対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。
【0099】
作製した本実施例のマスクブランクに対して実施例1と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記薄膜の光学濃度を測定したところ、3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜を断面TEMで確認したが、膜減りは非常に少なく抑えられていた。また、表面反射率についても確認したが、上記オゾン洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例のマスクブランクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0100】
(比較例1)
実施例1において、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を積層したマスクブランクに対し、遮光膜における表面反射防止層の表面に高濃度オゾンガスとエチレンガスとを作用させる処理を省いたこと以外は、実施例1と同様にして位相シフトマスクブランクを作製した。
作製した本比較例の位相シフトマスクブランクの上記遮光膜の表層部分の組成をX線光電子分光法で表面に対する検出器の傾きを30°として詳しく分析したところ、元素組成(原子%比)は、Cr:18.5、O:36.1、N:8.5、C:36.9であった。また、クロム原子数を基準としたときの原子数比は、O/Cr=1.94、N/Cr=0.46、C/Cr=1.99である。
【0101】
光半透過膜及び遮光膜の光学濃度は、3.0であった。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率は20%であった。
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、上記遮光膜の表面の表面粗さを測定したところ(測定エリア1μm×1μm)、Ra=0.56nmであった。
【0102】
また、本比較例における上記遮光膜をXPSにより分析した結果を前述の図3の(b)に示しているが、O1sスペクトルにおいて、結合エネルギーがそれぞれ532eV付近にある第1のピークと530eV付近にある第2のピークとに分離したときに、第2のピーク面積に対する第1のピーク面積の割合が1.4であった。この分析結果から、主に酸化度の高いクロム酸化物(Crなど)成分や有機系酸素成分などを含むA成分の割合は58%、主に酸化度の低いクロム酸化物(CrOなど)成分やクロム酸窒化物成分などを含むB成分の割合は42%であった。前述の実施例の結果と対比すると、相対的にA成分の割合が低く、B成分の割合が高い。
【0103】
作製した本比較例のマスクブランクに対して実施例1と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記薄膜の光学濃度を測定したところ、2.8と非常に大きく低下していた。また、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmに対する遮光膜の表面反射率についても確認したところ、35%となっていた。これにより、オゾン洗浄耐性が低いことがわかった。
【0104】
(実施例5)
実施例1と同様にして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜積層構造のパターン形成用薄膜を有する位相シフトマスクブランクを作製した。なお、この位相シフトマスクブランクは、実施例1の高濃度オゾンガス処理は施していない。
次に、上記の位相シフトマスクブランクを用いて、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。
まず、上記マスクブランク上に、レジスト膜として、電子線描画用化学増幅型ネガレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 SLV08)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。上記レジスト膜を塗布後、所定の加熱乾燥処理を行った。レジスト膜の膜厚は165nmとした。
【0105】
次に上記マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。次に、上記レジストパターンをマスクとして、遮光膜のエッチングを行った。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガスを用いた。続いて、光半透過膜(MoSiN膜)のエッチングを行って光半透過膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとして、SFとHeの混合ガスを用いた。
【0106】
次に、残存するレジストパターンを剥離して、再び全面に上記と同じレジスト膜を形成し、マスクの外周部に遮光帯を形成するための描画を行い、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、遮光帯領域以外の遮光膜をエッチングにより除去した。
残存するレジストパターンを剥離して、位相シフトマスクを得た。なお、光半透過膜の透過率及び位相差、光半透過膜及び遮光膜の積層膜からなる光学濃度はマスクブランク製造時と殆ど変化はなかった。
【0107】
以上のようにして、得られた位相シフトマスクに対し、高濃度オゾンガス(100体積%)とエチレンガスとを供給して、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンからなる薄膜パターンの表面近傍で混合し、薄膜パターンの表面に高濃度オゾンガスとエチレンガスとを作用させる処理を行った。この場合のオゾンガスとエチレンガスとの流量比率は2:1とした。処理時間(オゾンガスとエチレンガスとを作用させる時間)は10分とし、基板は60℃に加熱した。
【0108】
作製された位相シフトマスクの上記積層構造の薄膜パターンの断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜パターンの表層部分及び側壁に厚さ略1nmの被膜(表面改質層)が均一に形成されていた。この表面改質層は、実施例1のマスクブランクにおいて、10分の高濃度オゾンガス処理をした場合に、遮光膜表面に形成された表面改質層とほぼ同じものであった。
【0109】
また、処理後の光半透過膜パターンと遮光膜パターンの積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの検査光の波長257nmに対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。さらに、処理後の光半透過膜パターンのCD及びCDバラツキ、透過率及び位相差も、処理前と変化はなかった。
このように、高濃度オゾンガス処理前後において、薄膜パターンの光学特性、CD及びCDバラツキが変化(劣化)することなく、表面改質層を形成することが確認できた。
【0110】
作製した本実施例の位相シフトマスクを電動モータ等で回転させながら、洗浄液供給ノズルから50ppmのオゾン水(室温)を積層膜に対して75分供給することにより、オゾン洗浄を行った。なお、この方法は通常行われているオゾン洗浄よりも過酷な条件である。オゾン洗浄後、上記積層膜の光学濃度を測定したところ、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜パターンを断面TEMで確認したが、CD変化は非常に少なく抑えられていた。また、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの検査光の波長257nmに対する表面反射率についても確認したが、上記オゾン水洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例の位相シフトマスクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0111】
(実施例6)
実施例5において、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を積層した位相シフトマスクに対し、薄膜パターンの表面に高濃度オゾンガス(100体積%)とエチレンガスとを作用させる処理時間を30分としたこと以外は、実施例5と同様にして位相シフトマスクを作製した。
作製した本実施例の位相シフトマスクの上記積層構造の薄膜パターンの断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜の表層部分及び側壁に厚さ約2nmの被膜(表面改質層)が均一に形成されていた。この表面改質層は、実施例2のマスクブランクにおいて、30分の高濃度オゾンガス処理をした場合に、遮光膜表面に形成された表面改質層とほぼ同じものであった。
【0112】
また、処理後の光半透過膜パターンと遮光膜パターンの積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの検査光の波長257nmに対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。さらに、処理後の光半透過膜パターンのCD及びCDバラツキ、透過率及び位相差も、処理前と変化はなかった。
このように、高濃度オゾンガス処理前後において、薄膜パターンの光学特性、CD及びCDバラツキが変化(劣化)することなく、表面改質層を形成することが確認できた。
【0113】
作製した本実施例の位相シフトマスクに対して実施例5と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記積層膜の光学濃度を測定したところ、3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜パターンを断面TEMで確認したが、CD変化は非常に少なく抑えられていた。また、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの検査光の波長257nmに対する表面反射率についても確認したが、上記オゾン水洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例の位相シフトマスクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0114】
(実施例7)
実施例3と同様にして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜積層構造のパターン形成用薄膜を有する位相シフトマスクブランクを作製した。なお、この位相シフトマスクブランクは、実施例3の高濃度オゾンガス処理は施していない。
次に、上記の位相シフトマスクブランクを用いて、実施例5と同様にして、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。
以上のようにして、得られた位相シフトマスクに対し、高濃度オゾンガスを供給し、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンからなる薄膜パターンの表面に高濃度オゾンガスを作用させる処理を行った。この場合のオゾンガスの濃度は100体積%とし、処理時間(オゾンガスを作用させる時間)は10分とし、基板は60℃に加熱した。
【0115】
作製された位相シフトマスクの上記積層構造の薄膜パターンの断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜パターンの表層部分及び側壁に厚さ略1nmの被膜(表面改質層)が均一に形成されていた。
また、処理後の光半透過膜パターンと遮光膜パターンの積層膜の光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの検査光の波長257nmに対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。さらに、処理後の光半透過膜パターンのCD及びCDバラツキ、透過率及び位相差も、処理前と変化はなかった。
このように、高濃度オゾンガス処理前後において、薄膜パターンの光学特性、CDが変化(劣化)することなく、表面改質層を形成することが確認できた。
【0116】
作製した本実施例の位相シフトマスクに対して実施例5と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記積層膜の光学濃度を測定したところ、3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記薄膜パターンを断面TEMで確認したが、CD変化は非常に少なく抑えられていた。また、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの検査光の波長257nmに対する表面反射率についても確認したが、上記オゾン洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例の位相シフトマスクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0117】
(実施例8)
透光性基板としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、この透光性基板上に、以下の遮光膜を成膜した。
具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:10:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚39nmのCrOCN層を成膜した。続いて、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:NO:He=27:18:55)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚16nmのCrON層を成膜した。最後に、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:5:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚14nmのCrOCN層を成膜し、合計膜厚69nmの3層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。
この遮光膜は、光学濃度(OD)がArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となるように調整されている。
【0118】
以上のようにして、ガラス基板上に遮光膜のパターン形成用薄膜を有するバイナリマスクブランクを作製した。
次に、上記のバイナリマスクブランクを用いて、バイナリマスクを作製した。
まず、上記マスクブランク上に、レジスト膜として、電子線描画用化学増幅型ネガレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 SLV08)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。上記レジスト膜を塗布後、所定の加熱乾燥処理を行った。レジスト膜の膜厚は200nmとした。
【0119】
次に上記マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。次に、上記レジストパターンをマスクとして、遮光膜のエッチングを行った。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガスを用いた。
次に、残存するレジストパターンを剥離して、バイナリマスクを得た。なお、遮光膜の光学濃度及び表面反射率はマスクブランク製造時と殆ど変化はなかった。
【0120】
以上のようにして、得られたバイナリマスクに対し、高濃度オゾンガス(100体積%)とエチレンガスとを供給して、遮光膜パターンの表面近傍で混合し、遮光膜パターンの表面に高濃度オゾンガスとエチレンガスとを作用させる処理を行った。この場合のオゾンガスとエチレンガスとの流量比率は2:1とした。処理時間(オゾンガスとエチレンガスとを作用させる時間)は10分とし、基板は60℃に加熱した。
【0121】
作製されたバイナリマスクの上記遮光膜パターンの断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜パターンの表層部分及び側壁に厚さ略1nmの被膜(表面改質層)が均一に形成されていた。この表面改質層は、上述のマスクブランクにおいて、10分の高濃度オゾンガス処理をした場合に、遮光膜表面に形成された表面改質層とほぼ同じものであった。
【0122】
また、処理後の遮光膜パターンの光学濃度は3.0であり、処理前と変化はなかった。また、露光光の波長193nmに対する表面反射率についても確認したが、処理前と殆ど変化は認められなかった。さらに、処理後の遮光膜パターンのCDは、処理前と変化はなかった。
このように、高濃度オゾンガス処理前後において、遮光膜パターンの光学特性、CDが変化(劣化)することなく、表面改質層を形成することが確認できた。
【0123】
作製した本実施例のバイナリマスクに対して実施例1と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記遮光膜パターンの光学濃度を測定したところ、3.0となっており、光学濃度の低下はほとんどなかった。また、上記遮光膜パターンを断面TEMで確認したが、CD変化は非常に少なく抑えられていた。また、露光光の波長193nmに対する表面反射率についても確認したが、上記オゾン水洗浄前と殆ど変化は認められなかった。つまり、本実施例のバイナリマスクは、極めて高いオゾン洗浄耐性を備えていることが確認できた。
【0124】
(比較例2)
実施例5において、ガラス基板上に光半透過膜パターンと遮光膜パターンを積層した位相シフトマスクに対し、薄膜パターンの表面に高濃度オゾンガスとエチレンガスとを作用させる処理を省いたこと以外は、実施例5と同様にして位相シフトマスクを作製した。
作製した本比較例の位相シフトマスクの上記薄膜パターンの断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、遮光膜パターンの表層部分及び側壁には表面改質層は形成されていなかった。また、光半透過膜パターン及び遮光膜パターンの積層膜の光学濃度は、3.0であった。
作製した本比較例の位相シフトマスクに対して実施例5と同じ条件でオゾン洗浄を行った後、上記積層膜の光学濃度を測定したところ、2.8と非常に大きく低下していた。これにより、本比較例における位相シフトマスクは、オゾン洗浄耐性が低いことがわかった。
【0125】
(実施例9)
実施例5と同様の手順で作製された遮光帯を有するハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。このハーフトーン型位相シフトマスクに対し、実施例5と同じ条件でオゾン洗浄を行った。この準備したハーフトーン型位相シフトマスクを用いて、転写対象物である半導体ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写する工程を行った。露光装置には、ArFエキシマレーザーを光源とする輪帯照明(Annular Illumination)が用いられた液浸方式のものが用いられた。具体的には、露光装置のマスクステージに、ハーフトーン型位相シフトマスクをセットし、半導体ウェハ上のArF液浸露光用のレジスト膜に対して、露光転写を行った。露光後のレジスト膜に対して、所定の現像処理を行い、レジストパターンを形成した。
さらに、レジストパターンを用いて、半導体ウェハ上に、DRAMハーフピッチ(hp)32nmのライン&スペース(L&S)パターンを含む回路パターンを形成した。
得られた半導体ウェハ上の回路パターンを電子顕微鏡(TEM)で確認したところ、DRAMハーフピッチ(hp)32nmのL&Sパターンの仕様を十分に満たしていた。すなわち、このハーフトーン型位相シフトマスクは、半導体ウェハ上にDRAMハーフピッチ(hp)32nmのL&Sパターンを含む回路パターンを転写することが十分に可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0126】
1 透光性基板
2 薄膜
3 レジスト膜
10 マスクブランク
20 転写用マスク
21 反射防止層
図1
図2
図3
図4