【実施例】
【0038】
以下、飲料抽出用顆粒としてコーヒー顆粒を用い、コーヒー抽出液を回収するコーヒー抽出装置を例にして図面に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、コーヒー抽出装置に限られず、焙煎植物から得られる飲料用の抽出液を得るための飲料抽出装置全般に適用可能である。
【0039】
図7及び8は、家庭等で淹れる卓上のコーヒー抽出装置を示す図である。
図7は、上下に開口(2A,2B)を有する略円柱状のガラス管の顆粒収容部2を有する。使用者は、まず顆粒収容部2の底部にフィルター(下部濾材)を設置し、その上面にコーヒー顆粒Mを収容し、堆積面の上面に当接又は近接する位置に、コーヒー顆粒Mの流動を制する制動部材を配置する。制動部材としては、堆積面の上面と略一致する形状を有する金属メッシュ、不織布(ネル布、リント布など)、紙フィルターなどの網目部材が例示できる。制動部材は、顆粒Mの流動を制するという目的から、顆粒収容部2に内接する位置に設置するが、特に、網目部材の周辺部を弾力性のある素材(例えば、綿ネルなど)で構成し、制動部材を顆粒収容部2の内面に圧着できるようにするとよい(
図10参照)。
【0040】
図7に示す装置では、顆粒収容部2の下部開口2Bに3方コック9を有する抽出管が形成され、チューブを介して熱水容器(溶媒タンク)4と接続されている。この装置では、コーヒー顆粒Mを略密封状に収容した後、3方コック9を閉じた状態で熱水容器4に熱水を加え、次いで3方コック9を操作して熱水を抽出部Eに注入し(
図8A)、コーヒー顆粒Mの堆積層の最上面に近いレベルまで熱水が満たされた時点で三方コック9を閉じ、上部開口2Aから抽出部Eに向けて熱水を注入する(
図8B)。適量の熱水を上部開口から注入したら、3方コック9を操作して抽出管の下端にある回収口からコーヒー抽出液を取り出す(
図8C)。第2の方向(
図6では抽出部Eの上方で開口2Aのある側)から注入される水の量は、得られるコーヒー抽出液が抽出率20%以下、好ましくは15%以下とするのに適当な量を注入するとよい。ここで、抽出率を20%とするのは、抽出の中期から後期にかけて溶出する舌に残る渋味を回収しないためである。
【0041】
図9に示す装置では、顆粒収容部2の下部開口2B に2方コックを有する抽出管が形成されている。コーヒー顆粒Mを略密封状に収容した後、上部開口2Aに安全ピペッターを装着する。抽出管の下端にある回収口の下に熱水容器を設置し、回収口を熱水容器に入れた熱水中に挿入し、2方コックと安全ピペッターを操作して、抽出部の顆粒Mの上面に近いレベルまで熱水を吸い上げる。次に、2方コックを閉じ、安全ピペッターを取り外して、顆粒収容部2の上部開口2Aから抽出部Eに向けて熱水を注入し、再度安全ピペッターを装着し、顆粒収容部2に空気圧を加えてから2方コックを開き、抽出管の下端にある回収口よりコーヒー抽出液を回収する。
【0042】
図11に、電動式のコーヒーメーカー(コーヒー抽出装置1)を例示する。抽出装置1本体には、使用者がコーヒー抽出に使用する水を貯蔵する水タンク4と使用者がコーヒー顆粒をセットする豆貯蔵室(顆粒収容部2)とを備えている。水タンク4に貯蔵されている水は、加熱ヒーター12と一体となっている加熱パイプ12’に導かれて加熱され熱湯となり、流路切替弁9を通り、導管路8から顆粒収容部2に供給される。
図11に示す装置では、まず下部注入口2Bから顆粒収容部2に所定量の熱湯が供給された後、上部注入口2Aに所定量の熱湯が供給され、抽出液が保存容器13に溜められ、加熱ヒーター12によって保温される。
【0043】
このようなコーヒーメーカーにおいて、抽出部Eの形状を好ましい形状とする、すなわち顆粒収容部2が円筒形状である場合、顆粒層の軸線の沿う方向の略四角形状の断面形状において、四角形の幅(L)と高さ(H)の比(H/L)が0.1〜10(好ましくは2〜6、より好ましくは3〜6)となるように、使用者自身がコーヒー顆粒を顆粒収容部2に充填するか、専用の使い捨てユニット(コーヒー顆粒Mの層、第1及び第2の濾材10、11を一体化したもの)を充填することが好ましい。または、顆粒収容部2内に使い捨てユニットを所定位置に保持するための保持機構を設け、保持機構内の領域(抽出部E)の寸法を上記範囲となるように設計してもよい。
【0044】
図12は、注入手段が2系統設けられているコーヒー抽出装置1の実施形態を示している。すなわち、顆粒収容部52の下部から抽出溶媒を注入する第1の注入手段と、顆粒収容部52の上部から抽出溶媒を注入する第2の注入手段を備えている。第1の注入手段は、第1の供給路51と、この第1の供給路51の途中に接続された第1の供給弁51Aと、抽出溶媒を顆粒収容部52へ押し込むためのポンプ51Bからなり、第1の供給路51には、第1の抽出溶媒タンク54が連通されている。第1の供給路51は、顆粒収容部52の下部開口52Bに接続されている。このため、第1の供給弁51Aとポンプ51Bを制御することで、顆粒収容部52への下部からの抽出溶媒の供給/停止を制御することができる。なお、仮に第1の抽出溶媒タンク54に顆粒収容部52よりも高い内圧が印加されている場合には、ポンプ51Bが不要になる場合もある。
【0045】
第2の注入手段は、顆粒収容部52の上部に配置されており、具体的には蓋体53の上部開口53Aに接続された第2の供給路61と、この第2の供給路61の途中に設けられた第2の供給弁61Aとからなる。そして、第2の供給路61には第2の抽出溶媒タンク64が連通している。このため、第2の供給弁61Aを制御することで、顆粒収容部52の上部からの抽出溶媒の供給/停止を制御することができる。
【0046】
また、当該実施形態では、顆粒収容部52の底部に排出開口52B’が設けられ、この排出開口52B’には送液管路57が接続され、更に送液管路57の途中には送液弁57Aが設けられている。これら送液管路57と送液弁57A、並びに必要に応じて他の構成要素によって、回収手段が形成される。そして、送液管路57の下端は貯留タンク56に向かって開口しており、送液弁57Aを制御することにより、顆粒収容部52内の抽出液を貯留タンク56へ送液することができる。また、送液管路57に図示しないポンプを設置して、顆粒収容部52から強制的に抽出液を排出するようにしてもよい。
【0047】
以上のように構成された抽出装置1の動作について簡単に説明する。まず、コーヒー顆粒Mが顆粒収容部52に収容された状態で、第1の供給弁51Aを開放し、ポンプ51Bを起動する。これにより、第1の抽出溶媒タンク54から第1の供給路51を通って、顆粒収容部52の下部開口52Bへ抽出溶媒(例えば、お湯)が供給される。このとき、コーヒー顆粒Mは上下からそれぞれ制動部材(上部濾材)11と下部濾材10によって挟まれている。このため、抽出溶媒を供給しても、コーヒー顆粒Mの移動は制限されている。そして、抽出溶媒の供給と共に、コーヒーの成分が抽出された抽出液が顆粒収納部52に生成される。そして、収容されているコーヒー顆粒Mの量に対応する抽出溶媒が供給されると、第1の供給弁51Aが閉鎖される。
【0048】
所定時間が経過した後、第2の注入手段から抽出溶媒が注入される。同時に、送液弁57Aが開放されて抽出液は排出開口52B’から排出される。第2の注入手段からの抽出溶媒の水押し効果により抽出液がスムーズに排出される。そして、送液管路57の下方に設けられた貯留タンク56に抽出液が貯留される。この時、抽出液は、第1の注入手段による抽出媒体の供給方向とは逆の方向(下方)に向かって移動する。このため、コーヒー顆粒Mよりも上方に位置していた抽出液は、再度コーヒー顆粒Mを通過することとなる。これにより、上述したようにコーヒーの苦味成分がコーヒー顆粒Mのハニカム構造の隔壁に吸着される。第2の注入手段から所定の量の抽出溶媒が注入されたら、第2の供給弁61Aが閉鎖される。尚、コーヒー顆粒Mには所定の厚みがあるため、コーヒー顆粒Mの上方という語句の持つ意味としては、コーヒー顆粒Mの最下層よりも上という意味である。
【0049】
本実施形態では、2つの抽出溶媒タンク54,64を備えた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、単一の抽出溶媒タンクを設け、この抽出溶媒タンクに第1および第2の注入手段を接続するようにしてもよい。こうすることで、抽出装置1の構造をよりシンプルにすることができる。
【0050】
図13は、
図12に開示した抽出装置と大部分の構成要素を共通にしている。しかしながら、第2の注入手段において、第2の供給弁を備えていない点が異なっている。これは、前提として第2の抽出溶媒タンク64において、抽出に必要とされる抽出媒体の量がすでに計量されており、それ以上の抽出溶媒が注入されないような構造になっているものである。このため、第2の抽出溶媒タンク64から抽出溶媒を流出させるタイミングの制御は必要であるが、その量について制御する必要は無いので、第2の供給弁を省略することが可能となる。
【0051】
図14は、
図12に開示した抽出装置と大部分の構成要素を共通にしている。しかしながら、第2の注入手段が顆粒収容部52の上部側壁に接続されている点が異なっている。これは、抽出溶剤が顆粒収容部52の側壁の表面に沿って優しく流入するためである。こうすることで、抽出溶媒の注入時の勢いによるコーヒー顆粒Mの乱れ等が抑制され、安定性を維持することができる。上記のような目的を実現するために、第2の供給弁61Aは抽出溶媒の流量を所定量以下に維持し、抽出溶媒が顆粒収容部52の側壁表面から離れないようにしている。
【0052】
本発明の第1の注入及び/又は第2の注入において、過抽出の防止の観点から、顆粒Mの層全体に均一に抽出溶媒を通すように、複数の開口を備える分散板(
図15参照)を第1及び第2濾材の外側に配置してもよい。
図16は、抽出溶媒を分散させるための分散装置55A,55Bを示している。分散装置55Aは、円盤状の本体に小さな丸穴が多数形成されたものであり、丸穴は上面から下面まで貫通している。
図15(C)には、蓋体53の側から注入される抽出溶媒を広範囲に分散させるために、分散装置55Aがコーヒー顆粒Mの上方に配置された図が示されている。分散装置55Aでは、丸穴が格子状に配置されており、この各丸穴を通して抽出溶媒がコーヒー顆粒Mに供給される。また、分散装置55Bは、放射状に細長い放射状穴が形成されたものである。このため、分散装置55Bの中央部に抽出溶媒が供給されると、各放射状穴に抽出溶媒が供給され、コーヒー顆粒Mの全体にわたって抽出溶媒が分散される。尚、分散装置55A,55Bの顆粒収容部52内での高さ方向の位置は様々なケースが考えられ、例えばコーヒー顆粒Mの上面に接するようにしてもよいし、コーヒー顆粒Mの表面から上方に離間させて配置するようにしてもよい。また、分散装置55A,55Bの穴の形状や数は、上述したものに限定されるものではなく、均一に抽出溶媒を分散させることができるものであれば、どのようなものであってもよい。この分散装置には、抽出溶媒の流速を緩和する、すなわち勢いが強い抽出溶媒により顆粒Mが踊る現象を抑制する働きもある。したがって、分散装置の穴は、あまり大きな穴にしない方が好ましい。
【0053】
図16は、蓋体53の形状に特徴を有する顆粒収容部52を示す断面図である。ここで、
図16(A)は蓋体53が円錐状の形状を有する例を示している。この蓋体53は、中心部(最上部)に注入手段(図示略)が接続されるようになっており、この中心部から周縁部に向かって円錐形を形成するような傾斜面となっている。そして、注入手段からは抽出溶媒が勢いよく注入されないような供給量になっており、抽出溶媒が傾斜面を伝わって、静かに顆粒収容部52の側壁に達して注入されるようになっている。また、当該実施形態では、分散装置55Aを配置しておくことで、仮に抽出溶媒が勢いよく注入された場合でもコーヒー顆粒Mが踊ってしまうことが有効に防止される。
【0054】
図16(B)は、蓋体53の形状が部分球形状の場合である。図に示すように、中心部(最上部)に注入手段が接続されるのは
図16(A)の場合と同様であるが、
図16(B)の例では、注入手段から注入された抽出溶媒は部分球形状の球面を伝わって、静かに顆粒収容部52の側壁に達する。特に、蓋体53の内側表面に角部が形成されていないため、抽出溶媒の剥離は生じにくく、抽出溶媒を静かに優しく注入することが可能である。
【0055】
図17は、抽出溶媒をシャワー状に供給することができる注入端63を有する第2の注入手段を備えたコーヒー抽出装置1である。第2の注入手段の注入端63は、シャワーヘッドのような構造を有しており、顆粒収容部52の全体に均一に抽出溶媒を注入できるようになっている。なお、
図17においては、重力によって抽出溶媒を注入するような構造に見えるが、本発明はこれに限定されるものでは無い。すなわち、注入端63の穴を小さくすると共に加圧用のポンプ(図示略)などを接続して、多数の細い抽出溶媒流れを形成するようにしてもよい。更には、注入端63の穴を小さくすると共に、加圧力を高めて霧状の抽出溶媒の状態で注入するようにしてもよい。
【0056】
図18は、本願発明を家庭用の電動式コーヒーメーカー(コーヒー抽出装置)1に応用した例を示す図である。ここで、当該抽出装置1は、各構成要素を収容する抽出装置本体1Aと、抽出装置本体1A内に収納されている抽出溶媒タンク54と、当該抽出溶媒タンク54に供給路51,61を介して接続されている顆粒収容部52とを備えている。
【0057】
抽出溶媒タンク54は、内部に抽出溶媒(お湯)を収容しており、2つの供給路51,61から顆粒収容部52へ抽出溶媒を注入することができるようになっている。本実施形態の供給路51,61は、顆粒収容部52の下部開口52Bから抽出溶媒を注入する第1の供給路51と、顆粒収容部52の上部から抽出溶媒を注入する第2の供給路61とからなる。第1の供給路51と下部開口52Bとの間には、流路切替弁59が設けられており、下部開口52Bからの抽出溶媒の注入及び下部開口52Bからの抽出液の排出を切り替えることができるようになっている。
【0058】
また、第2の供給路61は、顆粒収容部52の上部の側壁に接続されており、顆粒収容部52の内壁面に沿って抽出溶媒を優しく注入できるようになっている。ここで、第2の供給路61には供給弁61Aが設けられていないが、第2の供給路61の途中に設けても良いし、抽出溶媒タンク54と一体に設けるようにしてもよい。また、流路切替弁59の下方には送液管路57が設けられており、ガラス製のコーヒーサーバーやコーヒーカップなどへ抽出液を注ぐことができるようになっている。
【0059】
図19は、
図18の抽出装置1と多くの点で共通する構成要素を備えている。しかしながら、コーヒー顆粒Mが横向きの姿勢となり、このコーヒー顆粒Mを境として左右に抽出室が形成されている点が異なる。このような構成の相違に起因して、コーヒー顆粒Mの左側の抽出室に開口している第1の供給路51と、コーヒー顆粒Mの右側の抽出室に開口している第2の供給路61とが設けられている。そして、これら第1および第2の供給路51,61は、流路切替弁59を介して抽出溶媒タンク54に接続されており、この流路切替弁59を制御することで各供給路51,61のからの抽出溶媒の注入を制御することができる。第2の供給路61の開口端は、空気中に浮いたような位置に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、顆粒収容部52の内壁面に接するような位置に開口端を位置決めし、抽出媒体が優しく注入されるようにしてもよい。
【0060】
顆粒収容部52には底面に下部開口52Bが形成されており、この下部開口52Bには送液弁57Aが接続されている。送液弁57Aは顆粒収容部52からの抽出液の排出を制御するためのものであり、この送液弁57Aが接続される下部開口52Bは。コーヒー顆粒Mの左側の抽出室に開口している。
【0061】
以上のように構成された抽出装置1の動作を説明すると、まず、流路切替弁59の作用により、抽出溶媒タンク54から第1の供給路51に抽出溶媒が供給される。そして、第1の供給路51に供給された抽出溶媒は、第1の供給路51の開口端から左側の抽出室へ注入される。この時、第1の供給路51の開口端は顆粒収容部52の内壁面付近に設けられているため、抽出媒体が内壁面を伝って優しく注入されるようになっている。このため、当該第1の供給路51からの抽出溶媒の注入によってコーヒー顆粒Mが乱れることは無い。そして、抽出媒体の注入に伴って、コーヒー成分が抽出された抽出液は、右側の抽出室へも流れ込む。
【0062】
一方、流路切替弁59を切り替えることによって、第1の供給路51への抽出溶媒の供給は停止する。この状態で、所定時間経過した後に、更に流路切替弁59が動作し、第2の供給路61への抽出溶媒の供給が開始される。当該抽出溶媒の供給により、右側の抽出室の抽出液は徐々に左側の抽出室へ移動することとなる。この時、下部開口52Bに接続された送液弁57Aが開放され、顆粒収容部52に存在している抽出液が排出される。
【0063】
図20は、顆粒収容部52の底面形状を改良したものの断面図である。ここで、
図20(A)は
図18のコーヒーメーカーに使用される顆粒収容部52である。この図に示すように、顆粒収容部52の底面は、下部開口52Bを中心とした逆円錐形領域52Cとなっている。これにより、抽出液が円滑に下部開口52Bに集まり、貯留タンクへ排出することができる。但し、逆円錐形領域52Cに滞留する抽出液は、排出の際にコーヒー顆粒Mを通過することが無い。このことは、当該領域53C内の抽出液は苦味成分が除去されないことを意味する。このため、そのような抽出液の量を最小化するために、逆円錐形の傾斜をできるだけ緩いものにする必要がある。また、
図20(B)は、
図22のコーヒーメーカーに使用される顆粒収容部52である。
図20(A)のものと基本的な考え方は同一であるが、こちらは抽出溶媒が左右方向に移動するものであるため、下部開口52Bも左側に寄っている。このため、逆円錐形の領域52Cも左側に寄っている。
【0064】
図21は、顆粒収容部52の底面に傾斜溝52Dを形成した例である。顆粒収容部52の底面自体は傾斜していないが、傾斜溝52Dは顆粒収容部52の周縁部から中心部に向かって徐々に深くなるように形成されている。このため、コーヒー顆粒Mを通過した抽出液が傾斜溝52Dを伝わって下部開口52Bに集まることとなる。また、
図20で開示した逆円錐形の領域に比べ、抽出液が滞留できる領域が傾斜溝52D部分に限定されるため、苦味成分が吸着されない抽出液の量を最小限に抑えることができる。尚、52Dが溝ではなく凸部を形成し、凸部の間を傾斜溝(流路)としてもよい。
【0065】
図22は、サイフォンを利用したコーヒー抽出装置1の例である。図に示すように、基本的な構成は従来のサイフォンと類似している。しかしながら、上容器72内のコーヒー顆粒Mには上下に制動部材11と下部濾材10が設けられている点が異なる。これは、コーヒー顆粒Mの移動を制限して、苦味成分の吸着効果を高めるためである。当該実施形態では、下容器76に水が蓄えられて加熱される。水が加熱されることでお湯となり、サイフォン現象によりお湯が上容器72に上昇する。その際、コーヒー顆粒Mの領域をお湯が下方から上方に向かって通過する。そして、加熱を停止することで、抽出液が上容器72から下容器76へ移動することとなる。抽出液がコーヒー顆粒Mを再度通過するときに、苦味成分がコーヒー顆粒Mに吸着される。
【0066】
使用する水の量は、コーヒー顆粒Mの容積の顆粒の容積に対して0.3倍〜2倍量程度が許容範囲であるが、望ましくは0.5〜1.5倍量程度である。また、コーヒー顆粒Mの軸線の沿う方向の略四角形状の断面形状において、四角形の幅(L)と高さ(H)の比(H/L)は0.1〜10が許容範囲であるが、2〜6程度が望ましい。更に、お湯の供給速度(下容器→上容器、上容器→下容器)は、SV(space velocity)=3〜100程度が許容範囲であるが、7〜34程度が望ましい。なお、内圧変化に基づくサイフォン現象を利用した通液の場合、供給速度が速すぎて、目的とする苦味成分の吸着が十分に行われない可能性がある。また、抽出液の温度が低下してしまう欠点や、抽出率が極端に低くてコスト高になってしまうという欠点がある。このため、全ての水が上容器72に移動したところで、手動により上部から抽出溶媒(お湯)の供給(第2の注入)をするようにしてもよい。
【0067】
図23は、円柱状のコーヒー顆粒Mを用いたサイフォン式のコーヒー抽出装置(コーヒーメーカー)1である。このコーヒー抽出装置1は、コーヒー顆粒Mと、このコーヒー顆粒Mの上部に位置する上容器72と、コーヒー顆粒Mの下部に位置する下容器76とを備えている。また、コーヒー抽出装置1内には、抽出溶媒タンク(水タンク)74が設けられ、この抽出溶媒タンク74の水が加熱されて、供給路71を介して上容器72に供給できるようになっている。更に、下容器76の下方には、当該下容器76を加熱するための加熱手段75が設置されている。
当該コーヒー抽出装置1の動作を説明すると、コーヒー顆粒Mは、下部濾材10と制動部材11によってコーヒー粉が動かないように挟まれた略円柱状の管(コーヒー管)である。そして、下容器76に水(コーヒー顆粒Mの容積の0.3〜2倍程度の量)を充填しておく。その後、コーヒー管を下容器76と上容器72との間に設置する。コーヒーメーカーには、その内部に下容器76とは別の水タンク74が装備されている。
【0068】
上記のような状態で、加熱手段75によって下容器76内の水が加熱される。下容器76内の水が加熱されることによるサイフォン効果により、下容器76からコーヒー管内のコーヒー顆粒Mを通ってお湯が上容器72に向かって上昇する。この時、供給路71は閉じている。下容器76の水のほとんどが上容器72に移動したら、供給路71が開放されて、水タンク74から加熱されたお湯が上容器72に供給される。抽出液と供給されたお湯とは共に混合され、下容器76へ移動する過程でコーヒー管を通過する。このとき、苦味成分はコーヒー顆粒Mのハニカム構造に吸着されて、すっきりした味わいのコーヒーが抽出されることとなる。なお、次の抽出工程は、コーヒー管を新たなものに取り換えることによって行われる。
【0069】
図24は、コーヒー管が上下方向に移動する形式のコーヒーメーカー1である。先ず、
図24(A)の状態においては、コーヒー管(コーヒー顆粒M)は、上容器72内において上方に位置決めされている。そして、コーヒー管の下部には開口部が形成されている。一方、コーヒー管の底面は弁が設けられており、閉じた状態が維持されている。この状態で、供給路71からお湯が供給される。供給されたお湯は、上容器72内に供給されると共に、コーヒー管の開口部を通ってコーヒー顆粒Mに侵入する。これにより、コーヒー顆粒Mからコーヒーが抽出される。
次に、
図24(B)に示すように、コーヒー管を下方に位置決めする。それと同時に、コーヒー管の底面の弁が開放される。これにより、上容器72の抽出液がコーヒー管を通って下容器76へ移動する。その際に、全ての抽出液はコーヒー顆粒Mを通過するために、苦味成分が吸着されることとなる。このように、コーヒー管を上下に移動することで、抽出液がコーヒー顆粒Mを通過するように構成することができる。