(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三元触媒(TWC)、NOx吸収体、酸化触媒、炭化水素トラップ、リーンNOx触媒、及びそれらの組合せからなる群から選択される触媒ウォッシュコートをさらに含む請求項1から3の何れか一項に記載のフィルター。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、特に人口の多い市街地で運転される自動車向けのディーゼルエンジンからの、通例スート(すす)と呼ばれるパティキュレートマター(PM)の排出が懸念されている。主な懸念事項は健康への影響の可能性であり、ごく最近ではナノメートル範囲の粒径を有する非常に小さな粒子に関連している。約100nmサイズのナノ粒子はしばしば集合(accumulation)モードと称され、約10nmの非常に小さな粒子は核形成(nucleation)モードと称されている。ナノ粒子は吸入されると肺に深く浸入し、そこから容易に血流に入って、体のあらゆる器官に移動し、様々な問題を引き起こす場合がある。また、ナノ粒子は、嗅腺からの神経に沿って動物の脳内に直接転位する場合があるとの証拠もある。これらの懸念事項のため、ディーゼル式乗用車及び大型車両からの排気ガス粒子の最大量は、環境影響に対する懸念と歩調を合わせて近年低減した法律で規制されている。最近まで、これらの排出規制はグラムで表されており、5mg/km(ユーロ5)の現在の欧州乗用車の規制は、かかる低レベルを達成するための排ガスフィルター装備品を必要とする。
【0003】
ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は、焼結金属、セラミック又は金属繊維等を含む様々な材料を使用して製造されており、実際の大量生産において最も一般的なタイプは、本体の長手方向に沿って延びる多くの小チャネルのモノリシックアレイの形態に製造された多孔質セラミック材料製のウォールフロー型のものである。交互チャネルは一端が塞がれ、排ガスは、ほとんどのパティキュレートの通過を防止し、浄化されたガスだけが環境に入っていくような多孔質のセラミックチャネル壁を通過するようになっている。商業生産されているセラミックウォールフローフィルターは、コーディエライト、様々な形態の炭化ケイ素及びチタン酸アルミニウムから作製されたものを含む。車両上の実用フィルターの実際の形状及び寸法、並びにチャネル壁厚及びその空孔率のような特性は、考慮される用途に依存する。
【0004】
ガスが通過するセラミックウォールフローフィルターのフィルターチャネル壁における細孔の平均寸法は、典型的には10〜50μmの範囲にあり、通常は約20μmである。これとは大いに異なって、現代の乗用車の高速ディーゼルエンジンからの殆どのディーゼルパティキュレートマターのサイズは非常に小さく、例えば10〜200nmであるので、フィルターを通過することができるはずであり、これが排ガスが初めて浄化フィルターを通過するときに実際に生じることである。しかしながら、いくらかのPMは、フィルター壁中の多孔質構造内に保持され、これが、PMの網目により孔がつながるまで徐々に大きくなり、その後このPMの網目がフィルターチャネル内壁にパティキュレートケーキを容易な形成せしめることになる。パティキュレートケーキは優れたろ過媒体であり、その存在により、非常に高いろ過効率(浄化効率)が得られる。
【0005】
エンジン性能に支障を生じせしめ、燃費悪化を引き起こすおそれのある過度の背圧の強まりを防止するために、捕集されたPMを周期的にフィルターから除去する必要がある。そこで、ディーゼル用途においては、保持されたPMはそれを空気中で燃焼させることによりフィルターから除去されるが、そのプロセス中では、利用可能な空気量と保持されたPMに着火するのに必要な高温を達成するために使用される過剰燃料の量とが非常に注意深く制御される。通常再生と称されるこのプロセスが終了する少し前に、フィルター中の最後に残存しているパティキュレートを除去すると、浄化効率が著しく低下し、多くの小粒子の燃焼物が環境中に放出される。よって、フィルターは、最初に使用されるときと、続く各再生事象後と、さらには各再生プロセスの後の部分で、浄化効率が低下する。
【0006】
以前はパティキュレート排出量の法定限度は重量基準であり、より大きく重い粒子に偏重していた。現在では、粒子数測定が導入され、ディーゼル乗用車では、2011年9月1日からの新モデルについて6.0×10
11(ユーロ5b規制値)で、ユーロ6b規制値(施行日は承認待ち)も同じであり、これにより、より小さく、環境的により危険な粒子にバイアスがかけられている。この変化についてのさらなる現実的な理由は、許容される粒子の質量が漸進的に低下し、今は非常に小さい質量を計測してそれらを判定することが実際には難しいレベルにあるためである。粒子数の法律の導入に伴い、常に浄化効率を維持することが非常に重要である−再生中とその直後の排出は、全体的に許容されるものに対して非常に顕著な寄与となり得、その結果、特に現在のディーゼル浄化システムは、新法の要求を満たすには十分ではない。
【0007】
ディーゼルエンジン、特にディーゼル乗用車のエンジンの排ガスで主流であるものより、さらに高温で作動するガソリン火花点火エンジン用フィルターに関連した問題が存在している。特に、直噴ガソリンエンジンは、比較的高レベルの排出パティキュレートマターを形成する傾向にある。ここで、温度が非常に高いと、パティキュレートマターはフィルターに保持された直ぐ後に燃焼するので、有意な量のパティキュレートケーキがフィルター中に決して形成されず、高い浄化効率は決して達成されない。
【0008】
特定の用途では、フィルターを触媒化することが知られている。例えば、(その全内容が出典明示によりここに援用される)米国特許第4477417号には、ディーゼルスートの点火温度を低下させるための触媒が開示されている。
【0009】
よって、浄化システムに付加的な背圧を生じせしめることなく、フィルターの浄化効率を改善する手段に対して大きな必要性が存在している。
【0010】
(その全内容が出典明示によりここに援用される)欧州特許出願公開第2158956号には、ウォールフロー型のハニカムフィルターと、流入側の隔壁のみ、又は流入側及び流出側の隔壁双方に設けられた表層が開示されている。該文献には、特に2つのハニカムフィルターの実施態様と、5つのハニカムフィルターの製造方法が開示されている。第一又は第二のハニカムフィルターの表層は、好ましくは白金又はパラジウムの一方又は双方の微小粒子を担持しており、次の条件に従う:(1)表層のピーク孔径は、隔壁の基材の平均孔径と等しいか小さく、表層の空孔率は隔壁の基材のものよりも大きく;(2)表層は0.3μm以上で20μm未満のピーク孔径と、60%以上で95%未満の空孔率(測定法は水銀ポロシメトリーである)を有し;(3)表層の厚みL1は、隔壁の厚みL2の0.5%以上で30%未満であり;(4)ろ過面積当たりの表層の質量は0.01mg/cm
2以上で6mg/cm
2未満であり;(5)隔壁の基材は10μm以上で60μm未満の平均孔径と、40%以上で65%未満の空孔率を有する。5つのハニカムフィルター製造方法は、少なくとも一つの繊維状材料を含むスラリーを調製し、例えば、針様アトマイザーを使用するアトマイゼーション法により、ハニカムフィルター基体にスラリーを塗布することを含む。
【0011】
欧州特許出願公開第2158956号の著者によるデトロイト,ミシガン州2008年4月14−17日開催の2008年世界会議からの自動車技術者協会(SAE)テクニカルペーパー2008−01−0621には、炭化ケイ素ディーゼルパティキュレートフィルターに15g/lの添加量で、300nmの粒径を有するCeO
2ベース材料(貴金属含まず)の表層を使用することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、フィルターが所定量の捕集されたパティキュレートマターを含む場合、背圧を低減させながら、フィルター、特にウォールフローフィルターの浄化効率を改善する手段を提供する。フィルターは、「ベア」フィルター、又は酸化、NOxトラップ、又は選択式触媒還元活性等の触媒機能能力が導入されたものでありうる。我々は、微細な乾燥エアロゾルの形態で、適切に微細な少量の無機耐熱材料をウォールフローフィルターの流入側に導入することにより、全ての操作条件下で改善された浄化性能を達成できることができ、ディーゼル及びガソリンエンジンの排ガス用途における操作条件下、所定のパティキュレート負荷で、背圧が低くなるという重要な利益がまた得られることを見出した。
【0017】
添加された無機材料が無機材料の次の性質を機能させる作用機構は重要な変数であると考えられる:
1.適切な小さなサイズ(10μm未満、好ましくは0.2〜5.0μm)とすることができるので、ガス、好ましくは空気の流れに、エアロゾルとしてフィルターの流入側に適用することができる;
2.そのサイズは、実質的にフィルター壁の孔に入らず、それらの上に架橋網目構造を形成するようなものとすることができる。実際の最適な平均サイズは、考慮されるフィルターの特性に依存する。実際には、約15.0−20.0μmの平均孔径を持つフィルターを使用する場合、サイズは0.2μmより大きくすることができることを、我々は見出した;
3.孔の架橋網目構造が、ガス流がそれらを通過可能とし、排ガスに暴露されたときに、パティキュレートケーキの生長を容易にできるように、多孔質とすることができること。かさ密度として空孔率を表して、良好に機能するエアロゾルとして導入される前の粉末は0.1−0.6g/cm
3の範囲のかさ密度を有する;
4.無機材料が、高温、例えばディーゼルエンジンにおいて再生中に被る温度及びガソリンエンジンにおける点火失敗発生時の温度に耐えるのに十分な耐熱性を有すること。典型的には、1000℃を越える融点(軟化温度)を有していなければならない。
5.表面のテクスチャーは、粒子が絡み合う傾向があり、フィルターから容易には除去されないようなものとできる。この性質は、以下に言及する低いかさ密度に部分的に反映される。
【0018】
本発明において使用される架橋網目構造は、基体モノリスに塗布される従来のウォッシュコートとは異なる。従来のウォッシュコートでは、あるものは付着する別個の粒子であり、ウォッシュコート中の空隙は、とりわけ粒子の充填により形成される。本発明の架橋網目構造においては、相互に作用して架橋網目構造を形成する粒子の相互結合により空隙が形成される。
【0019】
フィルター材料の孔サイズと無機材料粒子のサイズは、最適の性能となるように調整される必要がある。よって、あるフィルタータイプにおいて優れた結果をもたらす特定の無機材料のサイズは、より大きな多孔質構造を有するフィルターへの使用には全く不適である場合がある。良好に機能する材料は、エアロゾルの容易な形成を促進させる空気力学的特性を有し、一般的に、1g/cm
3未満、典型的には0.05〜0.5g/cm
3の範囲、好ましくは0.1〜0.4g/cm
3の範囲のかさ密度を有し、該かさ密度は、エアロゾルの適用及び/又はフィルターへの適用に適した条件下で測定される。低いかさ密度は、フィルター壁の孔入口に架橋される場合に必要とされる性質である、互いに絡まる傾向を材料の粒子が有していることを示す。直径5.66インチ(14.4cm)で長さ7インチ(17.8cm)のフィルターに添加される材料の量は、典型的には2〜100g、好ましくは5〜50gであり、フィルターの種々のサイズに比例する量である。
【0020】
実施態様では、耐熱材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、クロミア、マグネシア、カルシア、チタニア、及びそれらの任意の2以上の混合酸化物からなる群から選択される酸化物をベースにすることができる。あるいは、又は加えて、耐熱材料はモレキュラーシーブを含みうる。モレキュラーシーブは、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、金属置換アルミノシリケートゼオライト又は非ゼオライト性モレキュラーシーブでありうる。非ゼオライト性モレキュラーシーブが使用される場合、その又は各非ゼオライト性モレキュラーシーブは、AlPO、MeAlPO、SAPO又はMeAPSOでありうる。CHA構造を有しているモレキュラーシーブ、例えばSAPO-34又はSSZ-13が特に好ましい。
【0021】
本発明の主な効果は、フィルター壁に触媒を含むフィルターを、触媒化した後に処理することができることを含み、フィルター壁の孔に触媒を導入するプロセスを妨害しない。さらに、触媒に有害かもしれない高温処理手順が必要とされない。触媒化工程の前にフィルターを処理する代替手段は、触媒の適用をかなり複雑なものにし得、極端な場合には、これがなされるのを妨げる。
【0022】
従って、好ましい実施態様では、フィルター基体は、フィルターの多孔質構造に浸透する触媒組成物(ウォッシュコートとして知られる)を含む。
【0023】
本発明のフィルターに使用されるウォッシュコートは触媒性ウォッシュコートであり、実施態様では、炭化水素トラップ、三元触媒(TWC)、NOx吸収体、酸化触媒、選択式触媒還元(SCR)触媒、リーンNOx触媒及びそれらの任意の2以上の組合せからなる群から選択される。例えば、特定の実施態様では、吸入面はTWCウォッシュコート又はNOx吸収体組成物でコートされ、排出面はSCRウォッシュコートでコートされる。この構成では、例えばNOx吸収体のNOx吸収能を再生させるための、エンジンの断続的なリッチ運転により、排出面上のSCR触媒のNOxを還元させるのに使用するためにTWC又はNOx吸収体にその場でアンモニアを生成させることができる。同様に、酸化触媒には炭化水素トラップ機能を含めることができる。一実施態様では、吸入面はSCR触媒でコートされない。
【0024】
触媒性ウォッシュコート、例えばTWC、NOx吸収体、酸化触媒、炭化水素トラップ、及びリーンNOx触媒は、一又は複数の白金族金属、特に白金、パラジウム及びロジウムからなる群から選択されるものを含みうる。
【0025】
TWCは、3つの同時反応:(i)一酸化炭素の二酸化炭素への酸化、(ii)未燃焼炭化水素の二酸化炭素及び水への酸化、(iii)窒素酸化物の窒素及び酸素への還元を触媒する。これらの3つの反応は、TWCが、化学量論点で又はほぼ化学量論点で運転されるエンジンからの排気を受容する場合に最も効率的に生じる。当該技術分野でよく知られているように、ガソリン燃料がポジティブ点火(例えば火花点火)内燃機関で燃焼される場合に排出される一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HO)及び窒素酸化物(NOx)の量は、主として、燃焼シリンダ内の空燃比に影響を受ける。化学量論的にバランスのとれた組成を有する排ガスは、酸化ガス(NOx及びO
2)及び還元ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に一致しているものである。化学量論的にバランスのとれた排ガス組成を生じる空燃比は典型的には14.7:1として与えられる。
【0026】
理論的には、化学量論的にバランスのとれた排ガス組成におけるO
2、NOx、CO及びHCのCO
2、H
2O及びN
2への完全な転換を達成することが可能であるべきであり、これが三元触媒の務めである。よって、理想的には、エンジンは、燃焼混合物の空燃比が、化学量論的にバランスのとれた排ガス組成を生じるように運転されるべきである。
【0027】
排ガスの酸化ガスと還元ガスとの間の組成的なバランスを定義する方法は、排ガスのラムダ(λ)値であり、これは、等式(1):
実際のエンジン空燃比/化学量論的なエンジン空燃比 (1)
に従って定義でき、ここで、ラムダ値1は、化学量論的にバランスのとれた(又は化学量論的な)排ガス組成を表し、ラムダ値>1は、過剰のO
2及びNOxを表し、組成は「リーン」と記述され、ラムダ値<1は、過剰のHC及びCOを表し、組成は「リッチ」と記述される。また、エンジンが運転される空燃比を、空燃比が生じる排ガス組成に応じて、「ストイキ(化学量論的)」、「リーン」又は「リッチ」と称することが当該技術分野ではまた一般的であり:よって、ストイキ運転されるガソリンエンジン又はリーンバーンガソリンエンジンである。
【0028】
TWCを使用するNOxのN
2への還元は、排ガス組成が化学量論的にリーンである場合に効率が低いことが理解されるべきである。同様に、TWCは、排ガス組成がリッチである場合に、CO及びHCをほとんど酸化させることができない。よって、課題は、TWCに流入する排ガスの組成を、ストイキ組成に可能な限り近く維持することである。
【0029】
もちろん、エンジンが定常状態にある場合は、空燃比が化学量論的であるようにするのは比較的容易である。しかしながら、エンジンが車両を推進するために使用される場合は、必要とされる燃料の量は、ドライバーがエンジンにかける負荷要求に応じて、一時的に変化する。これが、ストイキ排ガスが三元転換に対して生じるように空燃比を制御することを特に困難にしている。実際には、空燃比は、排ガス酸素(EGO)(又はラムダ)センサからの排ガス組成についての情報を受け取るエンジン制御ユニット、いわゆる閉ループフィードバックシステムによって制御される。このようなシステムの特徴は、空燃比の調節に付随してタイムラグが存在するために、空燃比が、ストイキ(又は制御設定)点よりわずかにリッチとわずかにリーンの間で振動(摂動)していることである。この摂動は、空燃比の大きさと応答周波数(Hz)により特徴付けられる。
【0030】
典型的なTWC中の活性成分は、広い表面積の酸化物に担持された、ロジウムとの組合せで白金又はパラジウムの一方又は双方、あるいはパラジウムのみ(ロジウム不含)と、酸素貯蔵成分を含む。
【0031】
排ガス組成が設定点よりわずかにリッチである場合、未反応のCO及びHCを消費するために、すなわち反応をより化学量論的にするために、少量の酸素を必要とする。逆に、排ガスがわずかにリーンになった場合、過剰の酸素を消費させる必要がある。これは、摂動中に酸素を放出し又は吸収する酸素貯蔵成分の開発により達成された。現代のTWCにおいて最も一般的に使用される酸素貯蔵成分(OSC)は、酸化セシウム(CeO
2)、又はセリウムを含む混合酸化物、例えばCe/Zr混合酸化物である。
【0032】
NOx吸収触媒(NAC)は、例えば米国特許第5473887号(その内容が出典明示によりここに援用される)から知られており、リーン排ガス(ラムダ>1)から窒素酸化物(NOx)を吸収し、排ガス中の酸素濃度が低減する場合は、NOxを脱着させるように設計されている。脱着されたNOxは、適切な還元剤、例えばガソリン燃料によりN
2に還元され、NACそれ自体の、又はNACの下流に位置する触媒成分、例えばロジウムにより促進されうる。実際には、酸素濃度の制御は、例えば通常のエンジン運転操作よりリッチな(しかし、ストイキ又はラムダ=1の組成よりリーンな)、ストイキ、又はストイキよりリッチな(ラムダ<1)ように、NACの算出された残りのNOx吸収能に応じて断続的に、所望の酸化還元組成に調整することができる。酸素濃度は多くの手段、例えばスロットル調整、排気行程中におけるようなエンジンシリンダへの付加的な炭化水素燃料の注入、又はエンジンマニホールドの下流の排ガスへの炭化水素燃料の直接の注入により、調整することができる。
【0033】
典型的なNAC処方物は、触媒酸化成分、例えば白金、有意な量、すなわちTWCにおける促進剤のような促進剤として使用するのに必要とされるよりも実質的に多いNOx貯蔵成分、例えばバリウム、及び還元酵素、例えばロジウムを含む。この処方物に対してリーン排ガスからのNOx貯蔵に一般的に与えられる一つの機構は、
NO+1/2O
2→NO
2 (2);及び
BaO+NO
2+1/2O
2→Ba(NO
3)
2 (3)
であり、ここで、反応(2)において、一酸化窒素が白金上の活性酸化部位上で酸素と反応してNO
2を形成する。反応(3)は、無機硝酸塩の形態での貯蔵材料によるNO
2の吸着を含む。
【0034】
低酸素濃度及び/又は高温では、硝酸塩種が熱力学的に不安定になり、分解し、下記の反応(4)に従ってNO又はNO
2を生じる。適切な還元剤の存在下で、これらの窒素酸化物は、続いて、一酸化炭素、水素及び炭化水素によりN
2に還元され、これは還元触媒上で生じうる(反応(5)を参照)。
Ba(NO
3)
2→BaO+2NO+3/2O
2又はBa(NO
3)
2
→BaO+2NO
2+1/2O
2 (4);及び
NO+CO→1/2N
2+CO
2 (5);
(他の反応は、Ba(NO
3)
2+8H
2→BaO+2NH
3+5H
2O、続いてNH
3+NOx→N
2+yH
2O又は2NH
3+2O
2+CO→N
2+3H
2O+CO
2等を含む)。
【0035】
上記の(2)−(5)の反応では、反応性バリウム種が酸化物として与えられている。しかし、空気の存在下で、バリウムの殆どは炭酸塩又は場合によっては水酸化物の形態にあると理解される。従って、当業者であれば、酸化物以外のバリウム種及び排気流における触媒コート列に上記の反応スキームを適合化させることができる。
【0036】
酸化触媒は、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化及び未燃焼の炭化水素の二酸化炭素と水への酸化を促進する。典型的にな酸化触媒は、高表面積の支持体上に白金及び/又はパラジウムを含む。
【0037】
炭化水素トラップは典型的にはモレキュラーシーブを含み、例えば白金族金属、例えば白金又は白金とパラジウム双方の組合せで触媒化されうる。
【0038】
SCR触媒は、耐熱酸化物又はモレキュラーシーブ上に支持された、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド類、VIII族遷移金属、例えばFeの少なくとも一つからなる群から選択することができる。適切な耐熱性酸化物は、Al
2O
3、TiO
2、CeO
2、SiO
2、ZrO
2及びそれらの2以上を含む混合酸化物を含む。また、非ゼオライト触媒は、酸化タングステン、例えばV
2O
5/WO
3/TiO
2を含む。
【0039】
しばしば炭化水素-SCR触媒とも呼ばれるリーンNOx触媒、DeNOx触媒又は非選択式触媒還元触媒は、Pt/Al
2O
3、Cu-Pt-、Fe-、Co-又はIr-交換ZSM-5、プロトン化ゼオライト類、例えばH-ZSM-5又はH-Yゼオライト、ペロブスカイト及びAg/Al
2O
3を含む。炭化水素(HC)による選択式触媒還元(SCR)では、HCが、O
2よりもNOxと反応し、等式(6)に従って窒素、CO
2及び水を形成する:
{HC}+NOx→N
2+CO
2+H
2O (6)
【0040】
酸素との競合的な非選択的反応は、等式(7)によって与えられる:
{HC}+O
2→CO
2+H
2O (6)
よって、良好なHC-SCR触媒は、反応(7)よりも反応(6)に対して、より選択的である。
【0041】
特定の実施態様では、ウォッシュコートは、少なくとも1つのモレキュラーシーブ、例えばポジティブ点火PMを捕集するための、アルミノシリケートゼオライト又はSAPOを含む。少なくとも1つのモレキュラーシーブは、例えば小さい、中程度、又は大きい孔のモレキュラーシーブとすることができる。ここでの「小さい孔のモレキュラーシーブ」とは、例えばCHA等、最大環サイズ8を含むモレキュラーシーブを意味し、ここでの「中程度の孔のモレキュラーシーブ」とは、例えばZSM-5等、最大環サイズ10を含むモレキュラーシーブを意味し、「大きい孔のモレキュラーシーブ」とは、例えばベータ等、最大環サイズ12を有するモレキュラーシーブを意味する。小さい孔のモレキュラーシーブは、SCR触媒での使用には潜在的に有利である−例えば、国際公開第2008/132452号を参照(その全内容を出典明示によりここに援用する)。
【0042】
本発明において利用される特定のモレキュラーシーブは、AEI、ZSM-5、ZSM-20、ZSM-34を含むERI、モルデナイト、フェリエライト、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu-3を含むLEV、MCM-22及びEU-1からなる群から選択される。
【0043】
実施態様では、モレキュラーシーブは、金属化されていなくとも又は周期律表のIB、IIB、IIIA、IIIB、VB、VIB、VIB及びVIII族からなる群から選択される少なくとも1つの金属で金属化されていてもよい。金属化されている場合、金属は、Cr、Co、Cu、Fe、Hf、La、Ce、In、V、Mn、Ni、Zn、Ga、及び貴金属Ag、Au、Pt、Pd及びRhからなる群から選択することができる。このように金属化されたモレキュラーシーブは、還元剤を使用するポジティブ点火排ガスにおける、窒素酸化物の還元を選択的に触媒するプロセスに使用することができる。ここで「金属化」とは、例えばFe含有ベータフレームワーク、及びCu含有CHAフレームワーク等、モレキュラーシーブのフレームワークに導入された一又は複数の金属を含むモレキュラーシーブを含むことを意味する。上述のように、還元剤が炭化水素である場合、そのプロセスは、しばしば「炭化水素選択式触媒還元(HC-SCR)」、「リーンNOx触媒作用」又は「DeNOx触媒作用」と呼ばれ、この用途向けの特定の金属は、Cu、Pt、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ag、Ce、Gaを含む。炭化水素還元剤は、エンジンマネージメント技術、例えば後期ポスト噴射又は初期ポスト噴射(いわゆる「アフター噴射」)により、排ガスに導入することができる。
【0044】
還元剤が窒素含有還元剤(いわゆる「NH
3-SCR」)である場合、特に関心ある金属はCe、Fe及びCuからなる群から選択される。適切な窒素含有還元剤には、アンモニアが含まれる。アンモニアは、例えば、フィルターの上流に配されるNACのリッチ再生中に、又はエンジン誘導性リッチ排ガスとのTWCの接触により、その場で生成されうる(上述の反応(4)及び(5)の代替反応を参照)。あるいは、窒素含有還元剤又はその前駆体は、排ガス中に直接噴射することができる。適切な前駆体には、ギ酸アンモニウム、尿素及びカルバミン酸アンモニウムが含まれる。前駆体のアンモニア及び他の副生成物への分解は、熱水又は触媒的加水分解によりなされうる。
【0045】
多孔質のフィルター基体をコートする方法は、当業者に知られており、限定されるものではないが、国際特許第99/47260号に開示されている方法、すなわち、(a)支持体の上部に封じ込め手段を配する工程と、(b)予め決定された量の液体成分を上記封じ込め手段中に注入する工程を、(a)の後に(b)又は(b)の後に(a)のいずれかの順で含み、(c)圧を印加するか又は真空によって、支持体の少なくとも一部に上記液体成分を吸引し、支持体内に上記量の実質的に全てを保持させる工程を含むモノリシック支持体をコートする方法を含む。このようなプロセス工程は、任意の焼成/か焼と共に、第一のコートの乾燥後に、モノリシック支持体の他端から繰り返すことができる。
【0046】
さらなる方法は、2010年1月4日に出願され、「Coating a Monolith Substrate With Catalyst Component」と題された英国特許出願第1000019.8号に開示されているもの、すなわち、触媒成分を含む液体を用いて、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基体をコートする方法であって、(i)ハニカムモノリス基体を実質的に垂直に保持し、(ii)基体の下端からチャネルの開口端を介して予め決定された量の液体を基体中に導入し、(iii)導入された液体を基体内に密封的に保持させ、(vi)保持された液体を含む基体を反転させ、及び(v)基体の反転された下端の基体のチャネルの開口端に真空をかけて、基体のチャネルに沿って液体を吸引する工程を含む方法を含む。ウォッシュコート粘度は適切に選択することができる。粒子径は、多孔質フィルター構造の平均孔径に従って選択することができる。よって、約11μmの平均孔径を有するウォールフローフィルターでは、2.5μmのD50を有するウォッシュコートが望ましい場合があるが、22μmの平均孔径を有するウォールフローフィルターでは、5μmのD90がより適している場合がある。
【0047】
フィルター基体の多孔質構造に浸透する触媒組成物のウォッシュコート添加量は、一般的に2.5g/in
3未満、例えば<2.0g/in
3、1.5g/in
3、<1.3g/in
3、1.2g/in
3、1.1g/in
3、1.0g/in
3、又は<0.8g/in
3等である。
【0048】
さらに好ましい実施態様では、架橋網目構造は触媒を含む。このような触媒は、TWC、NOx吸収体、酸化触媒、炭化水素トラップ及びリーンNOx触媒からなる群から選択することができ、一又は複数の白金族金属、特に白金、パラジウム及びロジウムからなる群から選択されるものを含みうる。特定の実施態様は、多孔質フィルター構造に浸透する触媒組成物と触媒を含む架橋網目構造の双方を含む。多孔質フィルター構造及び架橋網目構造の双方が触媒組成物を含む場合、多孔質フィルター構造及び架橋網目構造のそれぞれの触媒は、同じでも又は異なっていてもよい。
【0049】
本発明の効果は、1.2g/in
3未満、例えば<1.0g/in
3、<0.8g/in
3、<0.7g/in
3、<0.6g/in
3、<0.5g/in
3、<0.3g/in
3等の単位体積当たりの耐熱材料粉末添加量で、得ることができる。
【0050】
架橋網目構造が触媒を含むフィルターは、多くの理由から有利である。典型的には、ウォッシュコートがフィルター構造の壁面に浸透するように、触媒組成物がフィルター基体にウォッシュコートされる。しかしながら、例えばウォールフローフィルターのようなフィルター基体の多孔質構造は完全ではなく、いくつかのウォッシュコートは、触媒活性が不可能になる「デッドエンド」孔に捕集されるようになる。これが触媒を全体としてあまり効率的ではないものとする。架橋網目構造に触媒を含めることにより、触媒を、より効率的に利用することができる。よって、フィルターの多孔質構造に浸透する触媒組成物と、架橋網目構造の双方を含むことが決定される場合でさえ、従来のフィルター基体と同じ触媒活性を達成するために、より少ない量の触媒組成物を使用することができ、ここで触媒はフィルター基体の多孔質構造に全体的に位置させられる。
【0051】
さらなる顕著な利点は、背圧を同じく増加させることなく、従来の触媒化フィルター基体と同じ触媒活性が得られることである。例えば、欧州特許出願公開第1663458号(その全内容を出典明示によりここに援用する)はSCRフィルターを開示しており、ここで、フィルターはウォールフローモノリスであり、SCR触媒組成物は、ウォールフローモノリスの壁面に浸透する。欧州特許出願公開第1663458号は、一般的に、ウォールフローフィルターの壁面が、一又は複数の触媒材料を、その上又はその内部(すなわち、双方ではない)に含むことができることを開示している。開示によれば、ウォールフローモノリス基体への触媒スラリーの分散を記述するために使用される場合、「浸透する」とは、触媒組成物が、基体の壁面を通して分散されることを意味する。特許請求の範囲では、>1.3g/in
3のウォッシュコート添加量が必要とされている。本発明は、低い背圧で、同じウォッシュコートの添加を可能にする。
【0052】
一実施態様では、フィルターの多孔質構造に浸透し、及び/又は架橋網目構造を構成する触媒は、適切な還元剤の存在下でリーンバーン内燃機関の排ガス中の窒素酸化物の還元を促進する。適切な還元剤は、炭化水素、例えばエンジン燃料及び窒素含有還元剤、特にアンモニア及びその前駆体尿素を含む。還元剤を使用する窒素酸化物を触媒的に還元する方法は、「選択式触媒還元」又は「SCR」と呼ばれる。窒素含有還元剤を使用する方法が特に好ましい。
【0053】
驚くべきことに、粉末は、ウォールフローフィルターに導入されると、保持され、容易には振るい出されない。何らかの理論に縛られることを望むものではないが、我々は、この相互の絡み合いはファンデルワールス力に起因すると考える。しかしながら、粉末を適所に結合させる必要がある場合、これは、例えば、ポリジメチルシロキサンでの処理により実施することができ、十分高い温度で加水分解されたときに、粉末と反応可能な反応性シリカを形成し、粒子を固結される。
【0054】
上述の耐熱材料は、特定のプロセスでは、本来的に触媒的でありうる。しかしながら、好ましい実施態様によれば、耐熱材料は、貴金属、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni及びCu及びそれらの任意の2以上の混合物からなる群から選択される金属促進剤を含む。好ましい触媒は、CuCHA、例えばCu-SAPO-34、Cu-SSZ-13及びFe-ベータゼオライトを含み、ここで、Feがモレキュラーシーブ構造のフレームワーク中に存在するか、及び/又はフレームワーク構造に、例えばイオン交換されて、結合等している。
【0055】
エアロゾルは、例えば上述のポリジメチルシロキサン等、架橋網目構造を含むフィルターが点火された後に、絡み合った粒子を一緒に結合させるための添加剤を含みうる。
【0056】
多孔質基体は、金属、例えば焼結金属、又はセラミック、例えば炭化ケイ素、コーディエライト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、コーディエライト、ムライト、例えば針状ムライト(例えば、その全内容を出典明示によりここに援用する国際公開第01/16050号を参照)、ポルサイト、サーメット、例えばAl
2O
3/Fe、Al
2O
3/Ni、又はB
4C/Fe、又はそれらの任意の2以上のセグメントを含む複合物でありうる。好ましい実施態様では、フィルターは、複数の流入チャネルと複数の流出チャネルを有するセラミック多孔質基体を含むウォールフローフィルターであり、各流入チャネル及び各流出チャネルは、多孔質構造のセラミック壁により一部が京成され、各流入チャネルは、多孔質構造のセラミック壁により、流出チャネルから離間している。このフィルター配置は、SAE810114(その全内容を出典明示によりここに援用する)に開示されており、さらなる詳細について、この文献を参照することができる。あるいは、フィルターはフォーム、又はいわゆる部分フィルター、例えば欧州特許出願公開第1057519号(その全内容を出典明示によりここに援用する)、又は国際公開第01/080978号(その全内容を出典明示によりここに援用する)に開示されているものでありうる。
【0057】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明に係る方法により得ることができるフィルターを提供する。本発明に係るフィルターを得る方法は、以下の実施例2に開示されている。
【0058】
さらなる態様によれば、本発明は、リーンバーン内燃機関から排出される排ガスからパティキュレートマターをろ過するためのフィルターを提供し、該フィルターは、吸入面及び排出面を有する多孔質基体を含み、吸入面は、第一の平均孔径の細孔を含む多孔質構造により、排出面から離間されており、フィルター基体は、フィルターの多孔質構造に浸透する触媒組成物を含み、吸入面は、多孔質構造の孔上に耐熱材料の相互結合粒子を含む架橋網目構造を含む。
【0059】
配置は、単位体積当たりの重量、例えばg/in
3で表される同一の触媒添加量に対して、本発明に係るフィルター基体が、流入及び流出フィルター面によって定まるフィルター基体の多孔質構造に浸透する同一の触媒添加量を含むフィルターよりも、使用中に低い背圧を有するようなものである。
【0060】
さらなる態様によれば、本発明は、リーンバーン内燃機関の排ガスを処理するための本発明のフィルターの使用を提供し、ここで排ガスはパティキュレートマターを含む。好ましい実施態様では、エンジンは車両のための原動力として使用される。
【実施例】
【0061】
比較例1−酸化触媒で触媒化されたフィルター−耐熱材料を添加せず
パティキュレートマターを含むディーゼル排ガスを、最大50ppmの硫黄を含む標準的なフォアコートポンプディーゼル燃料で運転されるディーゼルパティキュレートジェネレータ(DPG)から得た。この装置はCambustion社により製造され、その設計と運転モードの詳細は、我々の欧州特許出願公開第1850068A1号(その全内容を出典明示によりここに援用する)に与えられている。DPGユニットは、250kg/hrのガス質量流量、約240℃に維持されるインラインのパティキュレート炭化ケイ素フィルターを用いて、10g/hrのパティキュレート生成速度で運転した。
【0062】
使用したフィルターは、円形断面(直径5.6インチ)及び7.2インチ(18.3cm)長を有する炭化ケイ素セラミック製押出しセグメント(約35×35mm)から作製された標準生産型の触媒化炭化ケイ素フィルターであった。内部チャネルの寸法は1.16mm×1.16mmであった。チャネル壁厚は0.305mmであり、45%の空孔率を有していた。水銀ポロシメトリー測定法から推定した平均孔径は18μmであった。フィルターは、その長さに沿って明確に区分される2つの領域において異なる触媒処方物を用いて触媒化した。前方の2.6インチ(6.6cm)長の領域は、フィルターのこの部分における全金属添加量が立方フィート当たり約127g(2.08g/l)となるように、2:1の比率で白金とパラジウムを含んでいた。後方の4.6インチ(11.68cm)の領域は、フィルターのこの部分における全金属充填量が立方フィート当たり約6g(0.10g/l)となるように、2:1の比率で白金とパラジウムをまた含んでいた。フィルターは、上に記載したように、国際公開第99/47260号又は英国特許出願第1000019号に開示された方法に従って調製された。
【0063】
このフィルターのパティキュレートマターの添加中は、ガス流量は250kg/時間で、温度は240℃であり、背圧は差圧検出器により測定され、10秒毎にコンピュータに記録された。フィルターを通過する粒子は、Cambustion DMS500高速粒子質量分析器を使用して検出され、粒度分布は毎秒測定され、コンピュータに記録された。
図1は、粒子数によって、このフィルターの初期の不良な浄化効率と、フィルターに収集されるパティキュレートマター量が増加するにつれて如何にしてこれが徐々に改善されるかを示している。約250秒後、約3×10
13の粒子がフィルターを通過したと算出された。再生後、凝集式粒子数測定器(CPC)を使用する同型フィルターでの一連の別の実験により、初期の浄化効率が70%未満であったことが確認された。
図2は、フィルターに保持されるパティキュレートマターの量が増加するにつれて、フィルターにかかる背圧が増加し、背圧の不均衡に大きい部分は、フィルター中における比較的少量のパティキュレートマターの蓄積から生じていることを示している。
【0064】
実施例2−耐熱材料を添加した酸化触媒でのフィルターの触媒化
水性分散液の形態で約2μmの平均粒子径を有していることがMalvern Mastersizer2000により特徴付けられた乾燥ゼオライト粉末(ZSM−5、13g)を、実施例1で使用されたフィルターの流入側に、そこに捕集されたパティキュレートマターを、650℃に3時間維持された電気炉中で空気で燃焼させることにより完全に除去した後に、分配した。吸入面の架橋網目構造が導入されるフィルターをDPG装置に配し、該装置を、乱流空気流がフィルター基体の上流側に入るように、燃料なし、すなわちディーゼルパティキュレートの生成がないファンのみのモードで運転した。ゼオライトを、フィルター中に運ばれるエアロゾルを形成するように、フィルターの上流の導管のハウジングに配されたボスを介して、上流の乱流空気流内に250メッシュのふるいを通してそれを添加して、フィルターの流入側に均一に分散させた。エアロゾルの粒子径は、Cambustion DMS500により、約0.2μmを中心に分散していることが決定され、水性分散液として、一次粒子のかなりの凝集が存在していることが示唆された。ついで、フィルターに、DPGを使用して実施例1におけるようなパティキュレートマターを添加した。浄化効率を、Cambustion DMS500を使用して、先に記載したようにしてモニターし、結果を
図3に示した。浄化効率は、ゼオライト粉末の添加がないものと比較して劇的に改善されていた。さらに、背圧対パティキュレート添加曲線も、粉末が存在しない場合と比較して、劇的に低下しており、この効果は、フィルターにおけるパティキュレートマター保持の初期段階中において背圧の増加が少ないためであった。
【0065】
ついで、フィルターを、電気炉において650℃で3時間、空気中で再生し、パティキュレートマターの添加プロセスを繰り返した。パティキュレートマターの添加及び再生の全サイクルを全3回繰り返したところ、測定された最終浄化効率は、パティキュレートマターの添加中、全ての時点で非常に高いままであった−実験誤差内で、浄化効率は、ゼオライト粉末がフィルター中に添加された後の最初の添加中と同じ(99%より多い)であった。
【0066】
図4は、数回のフィルター添加/再生サイクル後の背圧/パティキュレートマター添加曲線を示す。背圧は、粉末が添加されない初期の挙動よりも、かなり低いままであった。よって、この添加された少量の無機粉末は、浄化効率を劇的に改善し、通常の使用中のフィルターの背圧に非常に望ましい低下をもたらした。
【0067】
比較例3−選択式触媒還元触媒を用いて触媒化されたフィルター−耐熱材料の添加なし
水銀ポロシメトリーにより推定された平均孔径14μm、空孔率42%、0.305mmのチャネル壁厚を有する円形断面(直径5.66インチ(14.4cm))及び6インチ(15.24cm)長の炭化ケイ素フィルターを、銅交換された(2.5重量%の銅)チャバサイトゼオライトアンモニアSCR触媒の分散液を用いて、フィルターの長さ全体にわたって、それがチャネル壁に0.5g/in
3(8.2g/cm
3)含むように処理した。
【0068】
ついで、フィルターに、DPGを使用して、実施例1のパティキュレートマターを添加した。浄化効率及び背圧変化を、先に記載したようにしてモニターし、結果をそれぞれ
図5及び6に示した。
【0069】
実施例4−耐熱性添加材料と共に選択式触媒還元触媒を用いて触媒化されたフィルター
比較例3で使用されたものと同じフィルターを、電気炉で650℃で加熱し、全てのパティキュレートマターを燃焼させ、ついで冷却されたとき、ゼオライト(11g、ZSM−5)を、実施例2に記載したものと同じ方法を使用して、フィルターの流入側上にエアロゾルとして均一に分散させた。パティキュレートマターの添加中の浄化性能及び背圧を、先のようにして測定し、結果を、それぞれ
図7及び
図8に示した。
【0070】
ついで、フィルターを、1リットルの酸化触媒(95g/ft
3、2:1の重量比の白金とパラジウムで、平方インチ当たり350セルのコーディエライトモノリシックフロースルー基体にコート)の下流のベンチ搭載Euro IV適合、2リットル直噴、コモンレールエンジン(例えば、乗用車に適したもの)の排ガスシステムに、フィルターの向きを粉末処理チャネルがフィルターのガス流入側になるようにして、装備した。エンジンは、次のような2工程サイクルを使用して運転した。
【0071】
工程1:エンジン速度3000rpm、エンジン負荷290Nm、持続時間30分、酸化触媒の流入口でのガス温度は560℃、酸化触媒及び流入口を出てからフィルターまでのガス温度は545℃であった。
【0072】
工程2:エンジン速度1800rpm、エンジン負荷75Nm、インシリンダーディーゼル燃料ポスト噴射、継続時間30分、酸化触媒への流入口のガス温度490℃、酸化触媒及び流入口を出てからフィルターまでのガス温度は600℃であった。
【0073】
50ppmの硫黄含有量の標準的なディーゼル燃料を使用した。工程1及び2を、全20時間の間、連続して繰り返した。ついで、フィルターを排気システムから取り除き、電気炉において650℃で3時間処理することにより、あらゆるパティキュレートマターを取り除いた。比較例1に先に記載されたようにして、パティキュレートマターの添加中、DPGを使用して浄化効率及び背圧をモニターし、結果をぞれぞれ
図9及び10に示した。
【0074】
ゼオライトの添加により達成される浄化効率及び背圧の有意な改善は、フィルターが、約40000kmに等価な間、エンジンについてエージングがなされた後でさえも保持されていた。
【0075】
実施例5−選択式触媒還元触媒で触媒化されたフィルター−触媒化耐熱材料を添加
比較例3と同じ寸法及びSCR触媒を有するフィルターを、DPGについて試験し、浄化効率及び背圧性能が比較例3と同様であったことを見出した。ついで、パティキュレートマターを、電気炉において650℃で燃焼させることにより完全に除去し、ついで、冷却されたとき、銅交換された(2.5重量%の銅)チャバサイトゼオライト(36g)及びゼオライトZSM5(6g)の混合物を、実施例2に記載されたものと同じ方法を使用し、フィルターの吸入面側にエアロゾルとして均一に分散させた。
【0076】
触媒化材料の添加の前後の浄化効率及び背圧性能を、それぞれ
図11及び12に示す。
【0077】
浄化効率及び背圧の双方における有意な改善の達成と同様に、触媒化された材料の添加がフィルターのNOx触媒性能を増加させることになり、これが
図13に示されている。これらの結果は、10%の酸素(O
2)、10%の水蒸気、残りが窒素(N
2)中、800℃で16時間のリーン熱水エージング後に得られ、顕著な改善を示している。酸化触媒とフィルターとの間の排ガス中に尿素液(Adブルー)を噴射するために尿素噴射器を取り付けた実施例4に記載のものと同じエンジンセットアップを使用して、エージング部分を試験した。<10ppmの硫黄のディーゼル燃料を使用した。初期段階後、所望のフィルター流入温度を達成するために、一連のエンジン負荷でエンジンを運転した。試験条件は以下の通りであった。「アルファ」はNH
3/NOx比として定義される。エンジンのエンジン制御策中にプログラムされた排ガス再循環バルブ位置を、EGRを止めるために無視して、工程3−5を、合理的な期間(時間ではない)で終了させた。一連の工程1〜5の全体は、順次直ぐに実施した。
【0078】
図13において、右から左へのピークが工程1から5を表している。
図11及び12にそれぞれ示されているような、浄化効率及び触媒化材料の添加の前後におけるフィルターの背圧性能の改善に加えて、
図13は比較例3のフィルター(「標準的SCRフィルター」と標識)と比較したNOx転換活性の顕著な改善を示していることが分かる。