(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記先行技術文献では導電路と接続するコネクタの端子として、平型導体と平行な板面を有する細長い板状片と、板状片の長手方向に沿う板縁から突出する突出部とを有しており、板状片との間で平型導体を挟み込むように突出部を折り倒すことで平型導体の導電路と押圧接触させることが記載されている。しかしながら、この端子では平型導体やコネクタが振動を受けることで、折り倒されて平型導体を保持する突出部の保持力が次第に弱まって導通接触が不安定になるおそれがある。
【0007】
また、自動車のさらなる小型化、軽量化、そしてコスト面での優位性のために、導電路を銅箔ではなくアルミ箔とする平型導体が提案されている。しかしながら、アルミ箔は柔らかく押圧接触することで冷間流れが生じるため、単に突出部を折り倒して押圧接触させるだけでは継続的に安定した導通接触を得るのが難いという課題がある。また、アルミ箔の場合には酸化皮膜を破って端子を導通接触させる必要があるが、突出部を折り倒して押圧接触させるだけでは皮膜が厚いアルミ箔の酸化皮膜を破り確実な導通接触を得るのは難しい。
【0008】
本発明は以上のような従来技術を背景になされたものであり、その目的は平型導体と確実に接続する接続信頼性の高いコネクタを提供することにある。また、ワイヤーハーネスよりも小型化、軽量化が可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
即ち本発明は、絶縁性の基材に複数の導電路が形成されており、各導電路に前記基材の外部に露出する導通接触部を有する平型導体と、各導通接触部に接続される端子と、端子を保持するハウジングと、を備えるコネクタについて、端子は、ハウジングに保持される接点接続部と、導通接触部に噛み込ませて接続するカシメ接続部とを有することを特徴とするコネクタを提供する。
【0010】
本発明の端子は、導通接触部に噛み込ませて接続するカシメ接続部を有するため、平型導体やコネクタが振動を受けてもカシメ接続部によって平型導体を確実に保持して導通接触を維持することができる。また、導電路が軟質金属箔(例えばアルミ箔)で形成されている平型導体であっても、導通接触部にカシメ接続部を噛み込ませることで軟質金属箔の酸化皮膜を破り、導電路と確実に接続することができる。
【0011】
前記カシメ接続部は、平型導体の一方面と他方面から導通接触部を挟み込ませた状態で噛み合わせる突片部と保持凹部とを有することができる。これによれば突片部と保持凹部との間に導通接触部を閉じ込めるようにかしめることができる。特に導電路がアルミ箔のような軟質金属箔の場合には冷間流れが生じても突片部と保持凹部の間で閉じ込めるようにして確実な導通接触を実現できる。
【0012】
前記平型導体には、カシメ接続部を被覆する封止部材を備えることができる。これにより、端子と平型導体の接続部に水やホコリなどの異物が付着するのを阻止できる。また、導電路を形成する金属材(例えばアルミ箔)と端子の金属材(例えばリン青銅、コルソン合金)とが異種金属である場合には、導電路が端子と接触することで、異種金属接触による電食が生じるおそれがある。しかし、カシメ接続部を封止部材で封止することで電食の発生を抑えることができる。
【0013】
前記封止部材には、ハウジングに固定するロック部を設けることができる。封止部材が平型導体をハウジングに固定する部品として兼用できるので、固定用の専用部品を用意する必要がない。
【0014】
前記接点接続部は、端子が伸長する長手方向で端子片を折り返して形成することができる。
これによれば端子の幅方向に沿って折り返して接点接続部を形成する場合よりも、接点接続部を折り曲げる前の展開した状態で端子材料を端子の幅方向で小さくすることができる。
例えば端子を打ち抜き加工により形成し、運搬用のキャリア(金属薄板から端子を打ち抜いて形成する際に、複数の端子を連結している金属材)に接続された状態で複数の端子を一括して同時に平型導体に固定できると製造効率を高める上で有効である。このような場合には、展開状態の端子材料が幅方向で短ければ短いほど、狭ピッチで多数の端子を形成することができるため、ハウジングに設けた端子収容孔の狭ピッチ化と平型導体の導通接触部の狭ピッチ化に対応することができる。これにより端子の配列方向でコンパクトなコネクタとすることができる。また、端子の展開状態で端子の幅方向を短くできるため材料取りの無駄も減らすことができる。
【0015】
前記接点接続部は、Z字状に連続する下片部と連結片部と上片部とを有しており、連結片部に接点突起を設けることができる。こうすることで、相手コネクタの端子等の接続対象物を連結片部と上片部、または連結片部と下片部の間に挿入して、接点突起と接続させることができる。接点突起をハウジングに対する保持部である接点接続部に設けることで、接続対象物との接点突起を別途設ける必要が無いため、よりコンパクトなコネクタとすることができる。
【0016】
前記接点接続部は、Z字状に連続する下片部と連結片部と上片部とを有しており、さらに下片部と上片部との間に側片部を設けることができる。これにより接点接続部がボックス構造になり、その内部に挿入した接続対象物との確実な導通接触を得ることができる。
【0017】
前記本発明の側片部は、下片部と上片部とに設けられ、各側片部にそれらを繋ぐ連結部を設けることができる。連結部によって下片部と上片部が結合されることで接点接続部の全体形状を維持することができる。
【0018】
前記導電路はアルミ箔で形成できる。平型導体の導電路をアルミ箔で形成すると、導電路を銅箔とするよりも平型導体の軽量化によるコネクタの小型化・軽量化及び、低コスト化を実現できる。
【0019】
前記ハウジングは、端子を抜け止めするリテーナを備えることができる。これにより、端子をハウジングに対して確実に固定することができる。
【0020】
前記封止部材は、平型導体の導通接触部に噛み込ませたカシメ接続部に付けた液状樹脂の硬化体とすることができる。カシメ接続部が複雑形状でも液状樹脂であればそれに応じて被覆して硬化することで確実に封止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコネクタによれば、平型導体の導通接触部にカシメ部を噛み込ませることができるため、平型導体と確実に接続する接続信頼性の高いコネクタとすることができる。また、ワイヤーハーネスを備える場合よりも、自動車の小型化、軽量化、低コスト化に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本明細書、特許請求の範囲、図面では、
図1〜
図25で示すハウジング2の長手方向に沿う幅方向をX方向、短手方向に沿う前後方向をY方向、ハウジング2の高さ方向をZ方向とし、高さ方向Zにおけるハウジング2の平面側を「上側」、ハウジング2の底面側を「下側」として説明する。なお、上下、左右、前後の方向の説明は本発明のコネクタの使用方向を限定するものではない。
【0024】
実施形態〔図1〜図25〕:
本実施形態のコネクタ1は、「接続対象物」としてのプラグコネクタ3の端子3a(
図14、23、24参照)と、FFC等の平型導体4とを接続するソケットコネクタの実施形態である。コネクタ1は、
図1〜
図3で示すように、多数の端子5を保持するハウジング2と、端子5をハウジング2に対して固定するリテーナ6と、平型導体4に接続する端子5と、端子5を介してプラグコネクタ3の端子3aと接続する平型導体4とを備える。
【0025】
〔ハウジング〕
ハウジング2は絶縁性樹脂で形成され、
図4で示すように、直方体でなる。このハウジング2は、端子5を保持する端子収容孔2aと、プラグコネクタ3の端子3aの挿入口2bと、平型導体4に係止するロック受け部2cとを有する。
【0026】
端子収容孔2aは、ハウジング2に高さ方向Zで複数列(本実施形態では上下2列)を並列にして設けられ、それぞれハウジング2の長手方向Xに沿う一面側に開口部2dを有する。端子収容孔2aは、平型導体4の端子5と封止部4aを収容して保持する。
プラグコネクタ3の端子3aの挿入口2bは、端子収容孔2aの開口部2dとは反対側の面に複数設けられる。挿入口2bはハウジング2の長手方向Xに沿って並列に配置され、挿入口2bの列は、ハウジング2の高さ方向Zにおける上下2列で形成されている。上列の挿入口2bは上側の端子収容孔2aに、下列の挿入口2bは下側の端子収容孔2aに、それぞれに連通する。
また上列の挿入口2bと、下列の挿入口2bとは、プラグコネクタ3の端子3aの配置に対応して、端子5の半ピッチ分だけ互いに長手方向Xにずらして設けられる。即ち、下側の挿入口2bは一方の側面部2eの側に寄せて形成され、上側の挿入口2bは他方の側面部2eの側に寄せて形成される。
【0027】
ロック受け部2cは、ハウジング2の短手方向Yに沿う側面部2eにそれぞれ1つずつ設けられる。端子収容孔2aが上列と下列とで半ピッチ分だけずれているので、上列には正面左側に端子収容孔2aが存在しない空き部分ができ、下列には正面右側に同様の空き部分ができる。それらの空き部分を有効活用してロック受け部2cを設けている。ロック受け部2cは、ハウジング2の端子収容孔2aの内側に向かう突起を有しており、後述する封止部4aのロック部4bに係止する。
2つのロック受け部2c、2cは、高さ方向Zにおいて異なる高さ位置に設けられ、第1のロック受け部2cは下側の端子収容孔2aと同じ高さ位置に、第2のロック受け部2cは上側の端子収容孔2aと同じ高さ位置に、それぞれ設けられる。ロック受け部2cは上側と下側とで相互に開孔高さが異なり、上側を高く下側を低くしている。
【0028】
〔リテーナ〕
リテーナ6は、
図5、
図6で示すように、端子5の接点接続部5aを挿通する挿通部6bと、ハウジング2に固定される第1の固定部6bと、第2の固定部6cと、挿通部6bに端子5が入り込む溝状に形成され、端子5の抜け方向で端子5と係止する抜止め壁6d1を有する係止部6dとを有している。
挿通部6bは、平型導体4に固定される端子5と同数並列に形成されており、略矩形の貫通孔として設けられる。この挿通部6bは、ハウジング2に固定される2つの平型導体4に対応して高さ方向Zで2列形成されている。また、ハウジング2の挿入口2bに対応して、上下2列の挿通部6bが互いに半ピッチずつ長手方向Xにずらして設けられている。挿通部6bは接点接続部5aよりも高さ方向Z及び長手方向Xでやや大きく形成されている。
第1の固定部6bと第2の固定部6cは、ハウジング2の高さ方向Zに並列に設けられている。そして、ハウジング2には、それぞれの固定部6b、6cに対応する第1の固定孔2e1と第2の固定孔2e2とが設けられている。
係止部6dには、後述する端子5の接点接続部5aの後端部が嵌め込まれて、端子5を抜け止めすることができる。この点については更に後述する。
【0029】
〔端子〕
本実施形態の端子5は、端子材料となる金属板材(例えばリン青銅、コルソン合金等)をプレス成形して形成したものであり、
図7〜
図13、
図18、
図19で示すように、平型導体4の導通接触部4cに噛み込ませて接続するカシメ接続部5bと、カシメ接続部5bから伸長する接点接続部5aと、接点接続部5aとカシメ接続部5bとを連結する連結部5cを有する。
【0030】
カシメ接続部5bは、基部5dと、基部5dの板縁から上方に屈曲する突片部5eを有する。突片部5eは略矩形でなり、高さ方向Zにおける上側部分は、板面を端子5の中心軸に向けて内向きに湾曲している(
図21(a)参照)。突片部5eの先端部には、突片部5eを基部5dに向けて折り曲げることで導通接触部4cに噛み込む複数の突部5e1が設けられる。したがって突片部5eの先端部は突部5e1が所定間隔で連続する凹凸形状のカシメ縁を形成している。
【0031】
基部5dには保持凹部5d1が設けられている。保持凹部5d1は端子5の板幅方向に伸長する略矩形の溝状凹部でなり、突部5e1に対応して複数並列に設けられている。これによって基部5dには凹部が所定間隔で連続する凹凸形状のカシメ面が形成されている。前述の突片部5eと保持凹部5d1とが、平型導体4の導通接触部4cを挟み込んだ状態で噛み合わさることで平型導体4に固定される。
【0032】
接点接続部5aは、ハウジング2の端子収容孔2aに収容されて、ハウジング2に保持される。接点接続部5aは、端子5の基部5dから伸長する端子片を、端子5の長手方向に沿って折り返して形成され、下片部5a1と、連結片部5a2と、上片部5a3とを有する。また、連結部5cの接点接続部5a側の端部には接点接続部5aを一段低くする段部5c1が形成されている。
【0033】
下片部5a1は段部5c1によって基部5dよりも一段低く形成され、板面は基部5dと平行に設けられる。
上片部5a3は下片部5a1の上方に、板面が互いに平行になるように設けられる。上片部5a3には連結片部5a2に向かう接点突起5a6が突設されている。
連結片部5a2は、下片部5a1の前端側と、上片部5a3の後端側とを連結する。連結片部5a2には、前側に傾斜部5a4が形成され、後側に水平部5a5が形成される。プラグコネクタ3の端子3aの挿入方向における傾斜部5a4の後端部には、プラグコネクタ3の端子3aと接触する接点突起5a6が形成されており、上片部5a3の接点突起5a6とともに接点を構成する。
【0034】
以上のような下片部5a1と上片部5a3には側片部5g、5gが形成されている。
下片部5a1の側片部5gには「連結部」としての突状の係止部5g1が設けられている。上片部5a3には係止部5g1の形状に対応した凹部でなる「連結部」としての係止受け部5g2が設けられる。係止部5g1が係止受け部5g2に係止することで、接点接続部5aの袋状ないしボックス構造の全体形状が維持している。
【0035】
このように係止部5g1が係止受け部5g2に係止した状態で、接点接続部5aはボックス構造を形成する。そして、上片部5a3と連結片部5a2との間にはプラグコネクタ3の端子3aを収容する空間部5hが形成される。端子挿入口2iから空間部5hに差し込んだプラグコネクタ3の端子3aは傾斜部5a4にガイドされて接点突起5a6、5a6へと挿入することができる。このとき接点接触部5aはボックス構造であるため、その内側のどの位置に端子3aが差し込まれても確実に導通接触することができる。
【0036】
〔平型導体〕
平型導体4は、
図15、20で示すように、絶縁性の基材4eと、絶縁性の基材4eに設けられる複数の導電路4dと、各導電路4dに設けられ、絶縁性の基材4eの外部に露出する導通接触部4cとを備える。
平型導体4は、導電路4dの上面と下面が絶縁性の基材4eで被覆されて形成されている。導電路4dが外部に露出する導通接触部4cは、平型導体4の一方の基材4e(本実施形態では下側の基材)に導電路4dを被覆しない部分を設けることで形成されている。また、導電路4dは絶縁性の基材4eよりも厚く形成されている。
導通接触部4cには平型導体4の端子5が接続され、隣接する導通接触部4cの間には端子5の突片部5eを挿通する取付孔4fが形成されている。また、ハウジング2の上下の端子収容孔2aに収容される平型導体4は、互いに左右対称に形成される。
【0037】
基材4eは、例えばポリエステル系樹脂のような絶縁性樹脂で形成される。
導電路4dは、基材4eにハウジング2の長手方向Xに沿って平行に配設され、隣接する導電路4dは基材4eによって絶縁されている。本実施形態の導電路4dは軟質金属箔、具体的にはアルミ箔で形成されているため、例えば自動車の電気系統の接続で多用されているワイヤーハーネスや、銅箔でなる導電路4dを有するFFC等と比較して、自動車の軽量化、小型化、低コスト化に寄与できる。
【0038】
取付孔4fは、平型導体4を貫通して形成され、この取付孔4fを端子5の突片部5eが挿通して、端子5が平型導体4に固定される。
【0039】
平型導体4の導通接触部4cと突片部5eは封止部4aによって密封される。封止部4aはすべての端子5の突片部5eによるカシメ接続部分を完全に覆うことができるように、平型導体4の両面をその幅方向に亘って密封する直方体形状として形成されている。アルミ材料は異種金属接触による電食が生じやすい性質を有しており、本実施形態のようにコルソン合金でなる端子5との接触部分では電食の発生を予防する必要がある。そこで、端子5の接点接続部5aとアルミ箔でなる導電路4dとが接触した状態で封止部4aで封止することで、それらの接触部分に水分が触れることを抑制して電食が生じないようにしている。また、平型導体4の各端子5によるカシメ接続部分には応力が加わることから、その部分が捩れて波打つような状態になり、そのままでは接点接続部5aを真っ直ぐハウジング2に挿入できないおそれがある。しかしながら本実施形態のように硬質の封止部4aで平型導体4の幅方向に亘ってカシメ接続部分を覆うことで、平型導体4が捩れて波打つような不都合は生じない。
【0040】
封止部4aは液状樹脂の硬化体により形成することができる。硬化体となる樹脂としては、一例として、紫外線硬化型接着剤等の活性エネルギー線硬化型樹脂、ホットメルト接着剤等の熱可塑性樹脂を使用することができる。本実施形態の封止部4aはホットメルト接着剤の硬化体にて形成している。封止部4aの素材樹脂として透明樹脂を使用すると、カシメ接続部5bの状態を外部から視認することができる。
【0041】
封止部4aは、平型導体4のハウジング2の端子収容孔2aに挿入した状態でロック受け部2cに係止するロック部4bを有する。ロック部4bは、ハウジング2のロック受け部2cに対応する突起を有しており、ハウジング2においてロック受け部2cが形成される一方の側面部2eの側に設けられる。
【0042】
〔端子の組立方法の説明〕
本実施形態の端子5は、打ち抜きと曲げのプレス加工によって形成される。金属薄板を打ち抜いた状態では
図16で示すようにカシメ接続部5b、連結部5c、接点接続部5aが直線上に展開した状態となる。この状態で突片部5eを基部5dに対して折り曲げて起き上がらせる。そして接点接続部5aは、カシメ接続部5bから直線上に伸長する端子片を端子5の長手方向(ハウジング2の短手方向Y)に沿ってZ字状に折り返して形成する(
図17)。
こうすることで、端子の幅方向に沿って折り返して接点接続部5aを形成する場合よりも、接点接続部5aを折り曲げる前の展開した状態で端子材料を端子5の幅方向で小型化することができる。
【0043】
図17で示すように、端子5をキャリアCa(金属薄板から端子を打ち抜いて形成する際に、複数の端子を連結している金属材)から切断せずに繋げたままにしておくと、多数の端子5を平型導体4に一括して固定できて効率的である。この場合には、キャリアに接続した展開状態の端子片が幅方向で短ければ短いほど、端子5を狭ピッチで形成することができて好ましい。この点で、端子5の幅方向で端子片を長く形成し、それを折り畳む横折り構造とすると、隣接する端子片のキャリアへの接続間隔が長くなり狭ピッチを実現するのが困難である。
そこで展開状態の端子片の幅を小さくすべく、本実施形態では
図16で示すように、接点接続部5aを端子5の長手方向で端子片を折り畳む縦折り構造(Z字状のボックス構造)としている。これによってハウジング2の端子収容孔2aの狭ピッチ化と平型導体4の導通接触部4cの狭ピッチ化に対応できるようにし、端子5の配列方向でコンパクトなコネクタ1とすることができる。また、端子5の展開状態で端子5の幅方向を短くできるため材料取りの無駄も減らすことができる。
【0044】
〔端子の平型導体への固定方法の説明〕
端子5を平型導体4に固定するには、先ず奇数個目に配置する端子5を形成したキャリアCaと、偶数個目に配置する端子5を形成したキャリアCaとを用意し、それらを順に平型導体4に固定する。
具体的には、先ず奇数個目の端子5のキャリアCaについて、端子5の一方の突片部5eを平型導体4の1つの取付孔4fに挿通し、他方の突片部5eを隣接する取付孔4fに挿通してから、突片部5eを後述するように基部5eの上にある導通接触部4cに向けて折り曲げてかしめる。次に、偶数個目の端子5のキャリアも同様にカシメ接続する。本実施形態ではこのようにして多数の端子5を平型導体4に狭ピッチで固定している。
【0045】
本実施形態のコネクタ1は上記固定方法に関連して次の利点がある。
即ち、端子5の長手方向で2つの突片部5eの位置がずれているので、相互に干渉することなく折り曲げてカシメ接続することができる。2つの突片部5eは、基部5dを中心とする両側に設けているので、導通接触部4cを基部5dの中心軸に沿って真ん中に位置決めして保持することができる。
また、端子収容孔2aに対する端子5の挿抜方向(ハウジング2に対する平型導体4の挿抜方向)に沿って2つの突片部5eで固定できるため、挿抜力が作用してもカシメ接続部5bによる導通接触部4cに対する確実な導通接触を維持することができる。
さらに、端子5を複数のキャリアCaに分けて形成し、キャリアCaごとに平型導体4に端子5を固定するため、キャリアCaの隣接する端子5どうしの間の空き部分に、他のキャリアCaに形成した端子5を配置することが可能であり、狭ピッチのコネクタ1を実現することができる。
【0046】
〔カシメ接続の説明〕
次に、上記固定方法においてカシメ接続部5bで導通接触部4cをカシメ接続する方法について説明する。
まず、
図21(a)で示すように板面が起立している突片部5eの上側を、
図21(b)で示すように端子5の内側に向けて折り曲げる。このとき注意すべき点は、突片部5eの板面が導通接触部4cの表面と平行に重ね合わさるように、突片部5eを根元から折り倒さないことである。こうすると突片部5eの突部5e1を導通接触部4cに噛み込ませることができなくなる。
次に、
図21(b)で示すように突片部5eの先端側を高さ方向Zに沿って、基部5dの側に向けて折り曲げる。すると
図21(c)で示すように突片部5eがロール状に折り曲げられて突部5e1が導通接触部4cと向き合うようになり噛み込ませることができるようになる。
【0047】
突部5e1を導通接触部4cに噛み込ませて基部5dの保持凹部5d1に嵌め合わせたカシメ接続の模式図を
図20に示す。
【0048】
保持凹部5d1は、短手方向Yにおける断面形状が矩形に形成されており、突部5e1は先端に向けて先細る台形状に形成されている。また、ハウジング1の短手方向Yにおける保持凹部5d1の長さは、同じ方向での突部5e1の長さよりも長くしている。こうすることで突部5e1によって押圧される導通接触部4cを保持凹部5d1と突部5e1の隙間から逃がしつつ、この隙間に導通接触部4cを閉じ込めることができる。
【0049】
突部5e1の高さ方向Zの長さは保持凹部5d1の深さ方向の長さよりも長く形成されている。そのため、突部5e1を保持凹部5d1に入り込ませた状態で、底部5dにおける隣接する保持凹部5d1の間の部分5d2と、突片部5eにおいて隣接する突部5e1の間の部分5e2との間に空間5fが形成される。また、導電路4dの厚み方向の長さは、保持凹部5d1の深さ方向の長さよりも長く、突部5e1の高さ方向Zの長さよりも短く形成されている。こうすることで、上記の隙間から導電路4dが押し出され、上記空間5fに入り込んで閉じ込められる。よって導電路4dはカシメ接続部5bと導通接触部4cとが確実に固定される。
【0050】
以上のようなカシメ接続部5bによるカシメ接続は、導電路4dの材質が軟質金属箔、特にアルミ箔である平型導体4である場合に好適な導通接続方法となる。
即ち、平型導体4のアルミ箔でなる導電路4dには、厚い酸化皮膜が形成されており、これを破らなければ導通接続の信頼性を得るのが難しい。
これに対して本実施形態では、カシメ接続部5bの突部5e1を前述のように導通接触部4cに噛み込ませることで酸化皮膜を破ることができ、導電路4dと確実に接続することができる。
【0051】
アルミ箔は銅箔と比較して柔らかいため、常温で応力緩和(いわゆる冷間流れ)が生じやすい。したがって単に端子5の突片部5eで導通接触部4cを押圧したり挟み込んだとしても、押圧部分に作用する応力が時間の経過とともに小さくなってしまう。すると端子5と導通接触部4cの導通接触が不安定になり、電気接触抵抗が増加するおそれがある。
これに対して本実施形態では、カシメ接続部5bを導通接触部4cに噛み込ませて、突片部5eによって導通接触部4cを保持凹部5d1に対して押圧して、複数の突部5e1(突片部5eの凹凸形状の先端部)と保持凹部5d1との間にアルミ箔でなる導通接触部4cを閉じ込める。こうすることで、応力が高くなる部分(突部5e1の先端と保持凹部5d1とで押圧接触する部分)とそうでない部分(隣接する突部5e1どうしの隙間で押圧接触されない部分)とを交互に設けて、前者から冷間流れするアルミ箔については後者の隙間部分に閉じ込めることができるため、応力緩和による導通接触の不安定を生じにくくすることができる。こうして本実施形態のコネクタ1では、アルミ箔でなる導電路4dとカシメ接続部5bとの接続を確実に維持することができる。
【0052】
〔封止方法の説明〕
以上のように端子5を平型導体4に固定した後は、カシメ接続部5bと導通接触部4cとのカシメ接続部分を平型導体4の上下両面から封止部4aにより封止する。具体的には封止部4aを形成する金型や治具に平型導体4をセットした状態で封止部4aを形成するキャビティに液状のホットメルト接着剤を注入してから、冷却硬化させるようにする。液状のホットメルト接着剤を使うことでカシメ接続部分の形状に応じてホットメルト接着剤を行き渡らせることができ、確実に且つ容易に密封することができる。
【0053】
封止部4aを形成した後は不要になるキャリアCaを切断する。これによって端子5を固定し封止部4aを形成した平型導体4が完成する。
なお、このように形成される平型導体4は、ハウジング2のロック受け部2cに係止するロック部4bを、封止部4aのどちらの側面に形成するかによって2種類となる。
【0054】
〔平型導体のハウジングへの挿入方法の説明〕
平型導体4に端子5を固定し封止部4aを形成した後は、ハウジング2にそれを固定する。そのために先ずリテーナ6をハウジング2の底面のリテーナ差込口2fに挿入する。するとリテーナ6は、第1の固定部6bがハウジング2の第1の固定孔2e1に嵌め込まれて固定されるが、この状態では未だ完全に固定されていない仮止め状態である。この仮止め状態で、下段の端子収容孔2aに下段用の平型導体4の端子5の接点接続部5aを挿入し、そのまま封止部4aを端子収容孔2aに押し込む。
すると端子5の接点接続部5aはリテーナ6の挿通部6bを通過してから、リテーナ6のロック部4bがハウジング2のロック受け部2cに係止する。その後、さらに封止部4aを端子収容孔2aに押し込むことで、ロック部4bの突起がロック受け部2cを通過してロック受け部2cに復元力が作用してロック受け部2cとロック部4bとが互いに係止する(
図22参照)。これにより平型導体4がハウジング2に対して固定される。
その後、上段の端子収容孔2aにも同様の方法で上段用の平型導体4の接点接続部5aを挿入する。
【0055】
〔リテーナによる平型導体の抜け止めの説明〕
上述のとおり、リテーナ6の第1の固定部6bをハウジング2の第1の固定孔2e1に固定した仮止め状態では、ハウジング2の底面からリテーナ6が突出している(
図23参照)。この状態から、リテーナ6をハウジング2の底部と面一になるように押し上げる(
図24参照)。すると、
図25で示すように、リテーナ6の第1の固定部6bが第1の固定孔2e1の内側で上方に移動し、それと同時に第2の固定部6cがハウジング2の第2の固定孔2e2に係合する。その際、端子5の連結部5cの先端側の段部5c1の外側に、下から上に変位してきたリテーナ6の係止部6dが嵌り込む。これにより段部5c1が係止部6dの抜止め壁6d1に対して平型導体4の抜け方向で係止できるようになり、平型導体4がハウジング2に抜け止めることになる。これにより平型導体4のハウジング2への接続が完了する。
【0056】
以上のような本実施形態のコネクタ1はソケットコネクタであり、接続対象物となるプラグコネクタ3と接続される。即ち、プラグコネクタ3の端子3aが挿入されることで導通接続される。
【0057】
変形例:
上記実施形態では平型導体4の両面を覆う封止部4aを例示したが、カシメ接続部5bと導通接触部4cとの接触部分を覆うことができれば何れか一面だけでもよい。
【0058】
上段と下段の封止部4aとでロック部4bを設ける側面を変えているが、ハウジング2の長手方向のサイズを大きくしてロック受け部2cを設けるならば、同一の側面にあるいは両側面に設けるようにしてもよい。この意味では上記実施形態のコネクタ1は上下二段で端子収容孔2aを半ピッチずらすハウジング構造において、それらの変形例よりも、コネクタ1とハウジング2の長手方向のサイズの小型化を実現している。
【0059】
封止部4aとして液状のホットメルト接着剤を硬化させた硬化体として設ける例を示したが、封止部4aに対応する固体の封止部材を用意し、接着剤等を使って平型導体4に後付けするものとしてもよい。この場合、カシメ接続部分への形状追従性や密封性を高めるために熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体によって封止部材を構成してもよい。
【0060】
上記実施形態では、平型導体4としてFFCを例示したが、例えばFPC(Flexible printed circuits)としても良い。また、導電路4dとしてアルミ箔を例示したが、例えば銅箔等の他の金属としても良い。
【0061】
底部5dの板厚が厚く保持凹部5d1を深く設けることができる場合には、上記とは反対に、保持凹部5d1の深さ方向の長さを突部5e1の高さ方向Zの長さよりも長くすることでも同様の作用・効果を得ることができる。この場合には、上記の空間5fに入り込んだ導電路4dによって、保持凹部5d1を形成する壁部分が挟み込まれて固定される。
【0062】
上記実施形態では、平型導体4の下面に導電路4dが外部に露出する導通接触部4cを設ける例を示したが、平型導体4の上面に導電路4dが外部に露出する導通接触部4cを設ける構成としても良い。