特許第5865440号(P5865440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865440
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】β−Ga2O3系単結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20160204BHJP
   C30B 15/34 20060101ALI20160204BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C30B29/16
   C30B15/34
   H01L21/205
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-135457(P2014-135457)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-13934(P2016-13934A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2014年11月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物2014年第61回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集、DVD−ROM第171頁発行者名公益社団法人応用物理学会発行日平成26年3月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [刊行物等]集会名、開催場所2014年第61回応用物理学会春季学術講演会、青山学院大学相模原キャンパス発行者名公益社団法人応用物理学会開催日平成26年3月17日、18日、19日、20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [刊行物等]ウェブサイトのアドレスhttps://confit.atlas.jp/guide/event−img/jsap2014s/19p−E10−10/pdf/subject掲載日平成26年3月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000153236
【氏名又は名称】株式会社光波
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】輿 公祥
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信也
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 勝
(72)【発明者】
【氏名】山岡 優
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】増井 建和
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−227160(JP,A)
【文献】 特開2013−241316(JP,A)
【文献】 Sasaki, K., et al.,"Ga2O3 schottky barrier diodes fabricated by using single-crystal β-Ga2O3 (010) substrates",IEEE Electron Device Letters,2013年 4月,Vol. 34, No. 4,,pp. 493-495
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/16
C30B 15/34
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EFG結晶製造装置により、肩広げを行わずにβ−Ga系単結晶を製造する工程と、
前記β−Ga系単結晶からβ−Ga系単結晶基板を切り出す工程と、を備え、
前記EFG製造装置は、ルツボを閉塞する蓋上に設けられたアフターヒータ及びルツボ上にルツボの方向へ熱を反射する反射板を備えたものとすることにより、
平均転位密度を7.31×10cm−2未満としたβ−Ga系単結晶基板を製造するβ−Ga系単結晶基板の製造方法
【請求項2】
FG結晶製造装置により、肩広げを行わずにβ−Ga系単結晶を製造する工程と、
前記β−Ga系単結晶からβ−Ga系単結晶基板を切り出す工程と、を備え、
前記β−Ga系単結晶基板に、CMP及びその後にドライエッチングを施すことにより、平均転位密度を7.31×10cm−2未満としたβ−Ga系単結晶基板を製造するβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【請求項3】
前記EFG結晶製造装置は、
前記アフターヒータ及び前記反射板を備え、
前記β−Ga系単結晶基板に、CMP及びその後にドライエッチングを施すことにより、
前記平均転位密度を6.14×10cm−2以下とする、
請求項1又は2に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【請求項4】
主面の面方位が(−201)、(101)、又は(001)である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【請求項5】
双晶を含まない、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【請求項6】
直径が2インチ以上である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【請求項7】
双晶面と主面との交線に垂直な方向の最大幅が2インチ以上の、双晶面を含まない領域を有し、平均転位密度が7.31×10cm−2未満であるβ−Ga系単結晶基板を製造する請求項1又は2に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【請求項8】
前記平均転位密度が6.14×10cm−2以下である請求項7に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−Ga系単結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EFG法によりβ−Ga単結晶を育成する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載された方法によれば、β−Ga単結晶を種結晶との接触部分から下方向に徐々に幅を広げながら、すなわち幅方向に肩を広げながら成長させることにより、種結晶よりも幅の大きな平板状の結晶を得ることができる。
【0003】
非特許文献1には、育成したβ−Ga単結晶のピット密度が9×10cm−2であることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hideo Aida, Kengo Nishiguchi, Hidetoshi Takeda, Natsuko Aota, Kazuhiko Sunakawa, Yoichi Yaguchi, “Growth of β-Ga2O3 Single Crystals by the Edge-Defined, Film Fed Growth Method”, Japanese Journal of Applied Physics, Volume 47, No. 11, pp. 8506-8509 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、高品質といえる酸化ガリウム単結晶は作られておらず、また、従来の技術では、特許文献1に開示されている程度の品質の酸化ガリウム単結晶を得ることしかできないため、より高品質な酸化ガリウム単結晶を作ることができるかどうかもわからなかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、結晶品質に優れたβ−Ga系単結晶基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、[1]〜[]のβ−Ga系単結晶基板の製造方法を提供する。
【0008】
[1]EFG結晶製造装置により、肩広げを行わずにβ−Ga系単結晶を製造する工程と、前記β−Ga系単結晶からβ−Ga系単結晶基板を切り出す工程と、を備え、前記EFG製造装置は、ルツボを閉塞する蓋上に設けられたアフターヒータ及びルツボ上にルツボの方向へ熱を反射する反射板を備えたものとすることにより、平均転位密度を7.31×10cm−2未満としたβ−Ga系単結晶基板を製造するβ−Ga系単結晶基板の製造方法
[2]EFG結晶製造装置により、肩広げを行わずにβ−Ga系単結晶を製造する工程と、前記β−Ga系単結晶からβ−Ga系単結晶基板を切り出す工程と、を備え、前記β−Ga系単結晶基板に、CMP及びその後にドライエッチングを施すことにより、平均転位密度を7.31×10cm−2未満としたβ−Ga系単結晶基板を製造するβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【0009】
[3]前記EFG結晶製造装置は、前記アフターヒータ及び前記反射板を備え、前記β−Ga系単結晶基板に、CMP及びその後にドライエッチングを施すことにより、前記平均転位密度を6.14×10cm−2以下とする、前記[1]又は[2]に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【0010】
[4]主面の面方位が(−201)、(101)、又は(001)である、前記[1][3]のいずれか1項に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【0011】
[5]双晶を含まない、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【0012】
[6]直径が2インチ以上である、 前記[1][5]のいずれか1項に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【0013】
[7]双晶面と主面との交線に垂直な方向の最大幅が2インチ以上の、双晶面を含まない領域を有し、平均転位密度が7.31×10cm−2未満であるβ−Ga系単結晶基板を製造する前記[1]又は[2]に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
[8]前記平均転位密度が6.14×10cm−2以下である[7]に記載のβ−Ga系単結晶基板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、結晶品質に優れたβ−Ga系単結晶基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)、(b)は、第1の実施の形態に係るβ−Ga系単結晶基板の平面図である。
図2図2(a)、(b)は、双晶を僅かに含むβ−Ga系単結晶基板の断面図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係るEFG結晶製造装置の垂直断面図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係るβ−Ga系単結晶の成長中の様子を表す斜視図である。
図5図5は、種結晶を切り出すためのβ−Ga系単結晶を育成する様子を表す斜視図である。
図6図6は、β−Ga系単結晶基板の平均転位密度の累積相対度数分布を示すグラフである。
図7図7は、第2の実施の形態に係る半導体積層構造体の垂直断面図である。
図8図8は、第3の実施の形態に係るLED素子の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施の形態〕
(β−Ga系単結晶基板の構造)
図1(a)、(b)は、第1の実施の形態に係るβ−Ga系単結晶基板1の平面図である。図1(a)は、双晶を含まないβ−Ga系単結晶基板1を表し、図1(b)は、双晶を僅かに含むβ−Ga系単結晶基板1を表す。
【0017】
β−Ga系単結晶基板1は、β−Ga系単結晶からなる。ここで、β−Ga系単結晶は、β−Ga単結晶、又は、Mg、Fe、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、In、Si、Ge、Sn、Nb等の元素が添加されたβ−Ga単結晶である。
【0018】
β−Ga系結晶は単斜晶系に属するβ−ガリア構造を有し、不純物を含まないβ−Ga結晶の典型的な格子定数はa=12.23Å、b=3.04Å、c=5.80Å、α=γ=90°、β=103.8°である。
【0019】
β−Ga系単結晶基板1の主面の面方位は、特定の面方位に限定されず、例えば、(−201)、(101)、又は(001)である。
【0020】
図1(a)に示される双晶を含まないβ−Ga系単結晶基板1の直径は、2インチ以上であることが好ましい。β−Ga系単結晶基板1は、後述する、双晶の少ない種結晶を用いて、幅方向に肩を広げない方法により育成された、双晶を含まない、又はほとんど含まないβ−Ga系単結晶から切り出されるため、2インチ以上という大型の双晶を含まない基板として切り出すことができる。
【0021】
β−Ga系単結晶は、(100)面における劈開性が強く、結晶成長の過程で(100)面を双晶面(対称面)とする双晶が生じやすい。
【0022】
図1(b)に示される双晶を僅かに含むβ−Ga系単結晶基板1は、2インチ以上の直径を有することが好ましく、幅Wsが2インチ以上の双晶面3を含まない領域2を有することがより好ましい。ここで、領域2の幅Wsは、双晶面3とβ−Ga系単結晶基板1の主面の交線に垂直な方向の最大幅である。双晶面3を含む領域をエピタキシャル結晶成長の下地として用いることは好ましくないため、領域2の幅Wsは大きい方がよい。
【0023】
図2(a)、(b)は、双晶を僅かに含むβ−Ga系単結晶基板1の断面図である。図2(a)、(b)は、β−Ga系単結晶基板1の中心を通り、双晶面3に垂直な断面を表す。図面の右側の軸は、β−Ga系単結晶基板1の母結晶であるβ−Ga単結晶のa軸、b軸、c軸の方向を表す。
【0024】
図2(a)はβ−Ga系単結晶基板1の片側に双晶面3が存在する場合の領域2の例を示し、図2(b)はβ−Ga系単結晶基板1の両側に双晶面3が存在する場合の領域2の例を示す。図2(a)、(b)には、一例として、主面4が(−201)面であるβ−Ga系単結晶基板1の断面を示す。
【0025】
(β−Ga系単結晶基板の製造方法)
図3は、第1の実施の形態に係るEFG(Edge Defined Film Fed Growth)結晶製造装置10の垂直断面図である。
【0026】
EFG結晶製造装置10は、石英管18内に設置されたGa系融液30を受容するルツボ11と、このルツボ11内に設置されたスリット12aを有するダイ12と、ダイ12の開口部12bを含む上面を露出させるようにしてルツボ11の開口部を閉塞する蓋13と、種結晶31を保持する種結晶保持具14と、種結晶保持具14を昇降可能に支持するシャフト15と、ルツボ11を載置するための支持台16と、石英管18の内壁に沿って設けられた断熱材17と、石英管18の周囲に設けられた高周波誘導加熱用の高周波コイル19と、石英管18及び断熱材17を支持する基部22と、基部22に取り付けられた脚部23とを有する。
【0027】
EFG結晶製造装置10は、さらに、ルツボ11上のβ−Ga系単結晶32が育成される領域を囲むように設けられたIr等からなるアフターヒーター20と、アフターヒーター20上に蓋のように設けられたIr等からなる反射板21を有する。アフターヒーター20及び反射板21は、EFG結晶製造装置10から自由に着脱することができる。
【0028】
ルツボ11は、Ga系原料を溶解させて得られたGa系融液30を収容する。ルツボ11は、Ga系融液30を収容しうるIr等の高い耐熱性を有する材料からなる。
【0029】
ダイ12は、ルツボ11内のGa系融液30を毛細管現象により上昇させるためのスリット12aを有する。ダイ12は、ルツボ11と同様に、Ir等の高い耐熱性を有する材料からなる。
【0030】
蓋13は、ルツボ11から高温のGa系融液30が蒸発することを防止し、蒸発物がルツボ11外の部材に付着することを防ぐ。
【0031】
高周波コイル19は、石英管18の周囲に螺旋状に配置され、図示しない電源から供給される高周波の電流により、ルツボ11及びアフターヒーター20を誘導加熱する。これにより、ルツボ内のGa系原料が溶解してGa系融液30が得られる。
【0032】
断熱材17は、ルツボ11の周囲に所定の間隔を有して設けられている。断熱材17は、保温性を有し、誘導加熱されたルツボ11等の急激な温度変化を抑制することができる。
【0033】
アフターヒーター20は、誘導加熱により発熱し、反射板21は、アフターヒーター20及びルツボ11から発せられた熱を下方に反射する。アフターヒーター20は、ホットゾーンの径方向(水平方向)の温度勾配を低減することができ、反射板21は、ホットゾーンの結晶成長方向の温度勾配を低減することができることが、本願発明者により確認されている。
【0034】
アフターヒーター20及び反射板21をEFG結晶製造装置10に設けることにより、β−Ga系単結晶32のX線ロッキングカーブの半値幅及び平均転位密度を低減できる。このため、X線ロッキングカーブの半値幅及び平均転位密度が小さいβ−Ga系単結晶基板1をβ−Ga系単結晶32から得ることができる。
【0035】
図4は、第1の実施の形態に係るβ−Ga系単結晶32の成長中の様子を表す斜視図である。図4においては、β−Ga系単結晶32の周囲の部材の図示を省略する。
【0036】
β−Ga系単結晶32を育成するには、まず、ルツボ11内のGa系融液30をダイ12のスリット12aを通してダイ12の開口部12bまで上昇させ、種結晶31をダイ12の開口部12bにあるGa系融液30に接触させる。次に、Ga系融液30に接触させた種結晶31を鉛直方向に引き上げ、β−Ga系単結晶32を成長させる。
【0037】
種結晶31は、双晶面を含まない、又はほぼ含まないβ−Ga系単結晶である。種結晶31は、育成するβ−Ga系単結晶32と幅及び厚さがほぼ等しい。このため、幅方向W及び厚さ方向Tに肩を広げることなく、β−Ga系単結晶32を育成することができる。
【0038】
β−Ga系単結晶32の育成は幅方向Wに肩を広げる工程を含まないため、β−Ga系単結晶32の双晶化が抑えられる。なお、厚さ方向Tへの肩広げは、幅方向Wの肩広げと異なり、双晶が生じにくいため、β−Ga系単結晶32の育成は厚さ方向Tに肩を広げる工程を含んでもよいが、厚さ方向Tへの肩広げを行わない場合は、β−Ga系単結晶32のほぼ全体が基板を切り出すことのできる平板状の領域となり、基板製造のコストを低減することができるため、図4に示されるように、β−Ga系単結晶32の厚さを確保するために厚さの大きい種結晶31を用いて、厚さ方向Tへの肩広げを行わないことが好ましい。
【0039】
また、β−Ga系単結晶を肩を広げて育成する場合、肩広げの角度によって結晶の配向性の劣化や転位の増加が起こるおそれがあるが、β−Ga系単結晶32の育成は少なくとも幅方向Wに肩を広げる工程を含まないため、肩広げに起因する結晶の配向性の劣化や転位の増加を抑えることができる。
【0040】
種結晶31の水平方向に向いた面33の面方位と、β−Ga系単結晶32の主面34の面方位が一致する。このため、例えば、β−Ga系単結晶32から主面4の面方位が(−201)であるβ−Ga系単結晶基板1を切り出す場合は、種結晶31の面33の面方位が(−201)である状態でβ−Ga系単結晶32を育成する。
【0041】
次に、β−Ga系単結晶32と同等の幅を有する幅広の種結晶31を四角柱状の幅の小さい種結晶を用いて形成する方法について述べる。
【0042】
図5は、種結晶31を切り出すためのβ−Ga系単結晶36を育成する様子を表す斜視図である。
【0043】
種結晶31は、β−Ga系単結晶36の双晶面を含まない、又はほとんど含まない領域から切り出される。このため、β−Ga系単結晶36の幅(幅方向Wの大きさ)は、種結晶31の幅よりも大きい。
【0044】
また、β−Ga系単結晶36の厚さ(厚さ方向Tの大きさ)は、種結晶31の厚さより小さくてもよいが、その場合は、β−Ga系単結晶36から直接種結晶31を切り出すのではなく、β−Ga系単結晶36から切り出した種結晶を用いて厚さ方向Tに肩を広げて育成したβ−Ga系単結晶から種結晶31を切り出す。
【0045】
β−Ga系単結晶36の育成には、β−Ga系単結晶32の育成に用いられるEFG結晶製造装置10とほぼ同じ構造のEFG結晶製造装置100を用いることができるが、β−Ga系単結晶36の幅、又は幅と厚さがβ−Ga系単結晶32と異なるため、EFG結晶製造装置100のダイ112の幅、又は幅と厚さは、EFG結晶製造装置10のダイ12と異なる。ダイ112の開口部112bの大きさは、ダイ12の開口部12bと通常は等しいが、等しくなくてもよい。
【0046】
種結晶35は、育成するβ−Ga系単結晶36よりも幅の小さい四角柱状のβ−Ga系単結晶である。
【0047】
β−Ga系単結晶36を育成するには、まず、ルツボ11内のGa系融液30をダイ112のスリットを通してダイ112の開口部112bまで上昇させ、種結晶35の水平方向の位置がダイ12の幅方向Wの中心から幅方向Wにずれた状態で、種結晶35をダイ112の開口部112bにあるGa系融液30に接触させる。このとき、より好ましくは、種結晶35の水平方向の位置がダイ112の幅方向Wの端の上にある状態で、種結晶35をダイ112の上面を覆うGa系融液30に接触させる。
【0048】
次に、Ga系融液30に接触させた種結晶35を鉛直方向に引き上げ、β−Ga系単結晶36を成長させる。
【0049】
上述のように、β−Ga系単結晶は、(100)面における劈開性が強く、結晶成長の肩広げの過程で(100)面を双晶面(対称面)とする双晶が生じやすい。そのため、β−Ga系単結晶32からなるべく大きな双晶を含まない結晶を切り出すために、(100)面がβ−Ga系単結晶32の成長方向に平行になるような方向、例えばb軸方向やc軸方向、にβ−Ga系単結晶32を成長させることが好ましい。
【0050】
特に、β−Ga系単結晶はb軸方向へ成長しやすい性質を有するため、β−Ga系単結晶32をb軸方向に成長させることがより好ましい。
【0051】
また、育成するβ−Ga系単結晶が幅方向への肩広げ工程において双晶化するときは、種結晶に近い領域に双晶面が生じやすく種結晶から離れた位置では双晶面が生じにくい。
【0052】
本実施の形態のβ−Ga系単結晶36の育成方法は、このようなβ−Ga系単結晶の双晶化の性質を利用したものである。本実施の形態によれば、種結晶35の水平方向の位置がダイ12の幅方向Wの中心から幅方向Wにずれた状態でβ−Ga系単結晶36を成長させるため、種結晶35の水平方向の位置がダイ12の幅方向Wの中心にある状態でβ−Ga系単結晶36を成長させる場合と比較して、種結晶35からの距離が大きい領域がβ−Ga系単結晶36中に生じる。このような領域には双晶面が生じにくいため、幅広の種結晶31を切り出すことができる。
【0053】
なお、上記の種結晶35を用いたβ−Ga系単結晶36の育成、及びβ−Ga系単結晶36からの種結晶の切り出しには、特願2013−102599に開示された技術を適用することができる。
【0054】
次に、育成したβ−Ga系単結晶32からβ−Ga系単結晶基板1を切り出す方法の一例について述べる。
【0055】
まず、例えば、厚さが18mmのβ−Ga系単結晶32を育成した後、単結晶育成時の熱歪緩和と電気特性の向上を目的とするアニールを行う。このアニールは、例えば、窒素等の不活性雰囲気において、1400〜1600℃の温度を6〜10時間保持することにより行われる。
【0056】
次に、種結晶31とβ−Ga系単結晶32の分離を行うため、ダイヤモンドブレードを用いて切断を行う。まず、カーボン系のステージに熱ワックスを介してβ−Ga系単結晶32を固定する。切断機にステージに固定されたβ−Ga系単結晶32をセッティングし、切断を行う。ブレードの粒度は#200〜#600(JISB4131による規定)程度であることが好ましく、切断速度は毎分6〜10mmくらいが好ましい。切断後は、熱をかけてカーボン系ステージからβ−Ga系単結晶32を取外す。
【0057】
次に、超音波加工機やワイヤー放電加工機を用いてβ−Ga系単結晶32の縁を円形に加工する。また、円形に加工されたβ−Ga系単結晶32の縁にオリエンテーションフラットを形成してもよい。
【0058】
次に、マルチワイヤーソーにより、円形に加工されたβ−Ga系単結晶32を1mm程度の厚さにスライスし、β−Ga系単結晶基板1を得る。この工程において、所望のオフセット角をつけてスライスを行うことができる。ワイヤーソーは固定砥粒方式のものを用いることが好ましい。スライス速度は毎分0.125〜0.3mm程度が好ましい。
【0059】
次に、加工歪緩和、及び電気特性向上、透過性向上を目的とするアニールをβ−Ga系単結晶基板1に施す。昇温時には酸素雰囲気でのアニールを行い、昇温後に温度を保持する間は窒素雰囲気等の不活性雰囲気に切替えてアニールを行う。保持温度は1400〜1600℃が好ましい。
【0060】
次に、β−Ga系単結晶基板1のエッジに所望の角度にて面取り(べベル)加工を施す。
【0061】
次に、ダイヤモンドの研削砥石を用いて、所望の厚さになるまでβ−Ga系単結晶基板1を研削する。砥石の粒度は#800〜1000(JISB4131による規定)程度であることが好ましい。
【0062】
次に、研磨定盤とダイヤモンドスラリーを用いて、所望の厚さになるまでβ−Ga系単結晶基板を研磨する。研磨定盤は金属系やガラス系の材質のものが好ましい。ダイヤモンドスラリーの粒径は0.5μm程度が好ましい。
【0063】
次に、ポリッシングクロスとCMP(Chemical Mechanical Polishing)用のスラリーを用いて、原子レベルの平坦性が得られるまでβ−Ga系単結晶基板1を研磨する。ポリッシングクロスはナイロン、絹繊維、ウレタン等の材質のものが好ましい。スラリーにはコロイダルシリカを用いることが好ましい。CMP工程後のβ−Ga系単結晶基板1の主面の平均粗さはRa0.05〜0.1nmくらいである。
【0064】
さらに、CMP工程後、β−Ga系単結晶基板1に塩素系ガス等を用いたドライエッチングを施すことが好ましい。このドライエッチングにより、CMPによりβ−Ga系単結晶基板1の表面に生じた研磨ダメージを除去することができる。
【0065】
(β−Ga系単結晶基板の転位密度)
【0066】
図6は、β−Ga系単結晶基板1の平均転位密度の累積相対度数分布を示すグラフである。
【0067】
図6にプロットされたマーク◇、△、○は、アフターヒーター20及び反射板21を有するEFG結晶製造装置10により育成されたβ−Ga系単結晶32から切り出されたβ−Ga系単結晶基板1の値である。
【0068】
図6にプロットされたマーク◆、●は、アフターヒーター20及び反射板21を有しないEFG結晶製造装置10により育成されたβ−Ga系単結晶32から切り出された、β−Ga系単結晶基板1の値である。
【0069】
マーク◇、◆は、上記のβ−Ga系単結晶基板1の製造方法におけるCMP工程までを実施したβ−Ga系単結晶基板1の値である。また、マーク△、○、●は、そのCMP工程後の塩素系ガスを用いたドライエッチングまでを実施したβ−Ga系単結晶基板1の値である。このドライエッチングのエッチング深さは、マーク△に係るβ−Ga系単結晶基板1に対して4μm、マーク○、●に係るβ−Ga系単結晶基板1に対して10μmである。
【0070】
図6に係る平均転位密度を測定したβ−Ga系単結晶基板1の主面4は、いずれも(−201)面である。
【0071】
転位密度は、β−Ga系単結晶基板1の主面4のエッチピットの密度を計測することにより得られたものである。β−Ga系単結晶基板1の主面4の表面の転位密度とエッチピットの密度とは、ほぼ等しいことが確認されている。
【0072】
エッチピットの計測は、各基板の主面4にリン酸エッチングを施した後に行った。リン酸エッチングを実施すると、欠陥が存在する部分においてはエッチング速度が大きくなるため、窪み(エッチピット)が生じる。このエッチピット部の欠陥評価を行った結果、エッチピット部にほぼ1対1で対応する転位が観察された。このことから、エッチピット密度から転位密度を推定できることが明らかになった。
【0073】
上記の平均転位密度は、各基板の主面4上の5点(中心点及びその周囲の4点)におけるエッチピットの密度(1cmあたりの個数)を、光学顕微鏡を用いて計測し、それらを平均したものである。
【0074】
図6は、CMP工程の後にドライエッチングを施すことにより、β−Ga系単結晶基板1の転位密度を低減できることを示している。また、ドライエッチングのエッチング深さが4μmの場合よりも、10μmの場合の方が、転位密度を低減できることを示している。
【0075】
また、図6は、CMP工程の後にドライエッチングを施す場合には、β−Ga系単結晶32を育成するEFG結晶製造装置10がアフターヒーター20及び反射板21を有する場合に、有しない場合と比較して、転位密度が低くなることを示している。
【0076】
なお、CMP工程の後にドライエッチングを施さない場合に、EFG結晶製造装置10がアフターヒーター20及び反射板21を有することによる転位密度の低減が見られないのは、転位密度がCMPによる研磨ダメージの影響を強く受けているためと考えられる。上述のように、CMP後にドライエッチングを実施すれば、このようなCMPによる研磨ダメージを除去することができる。
【0077】
なお、アフターヒーター20及び反射板21による単結晶育成時の温度勾配の低減効果、並びにCMP工程後のドライエッチングの効果は主面4の面方位に依らずに発揮されるため、β−Ga系単結晶基板1の主面4の面方位が(−201)以外である場合、例えば(101)、又は(001)である場合であっても、主面4の面方位が(−201)面である場合と同様に平均転位密度が低下する傾向があり、ほぼ等しい平均転位密度を有すると考えられる。
【0078】
以下の表1に、図6に示される各測定点の数値を表す。
【0079】
【表1】
【0080】
図6、表1に示されるように、本実施の形態の基板の製造方法の特徴である、アフターヒーター20及び反射板21を有するEFG結晶製造装置10による単結晶育成、並びにCMP工程の後のドライエッチングのいずれも実施されない場合のβ−Ga系単結晶基板1の転位密度の最小値は7.31×10cm−2である。
【0081】
そして、アフターヒーター20及び反射板21を有するEFG結晶製造装置10による単結晶育成、並びにCMP工程の後のドライエッチングのいずれかを実施した場合は、β−Ga系単結晶基板1の転位密度を7.31×10cm−2よりも小さくすることができる。
【0082】
特に、アフターヒーター20及び反射板21を有するEFG結晶製造装置10による単結晶育成、並びにCMP工程の後のドライエッチングの両者を実施することが好ましい。この場合、例えば、ドライエッチングのエッチング深さが10μmであるときは、β−Ga系単結晶基板1の転位密度を6.14×10cm−2、1.42×10cm−2、又は7.52×10cm−2とすることができる。
【0083】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に係るβ−Ga系単結晶基板1を含む半導体積層構造体についての形態である。
【0084】
(半導体積層構造体の構造)
図7は、第2の実施の形態に係る半導体積層構造体40の垂直断面図である。半導体積層構造体40は、β−Ga系単結晶基板1と、β−Ga系単結晶基板1の主面4上にエピタキシャル結晶成長により形成された窒化物半導体層42を有する。また、図7に示されるように、β−Ga系単結晶基板1と窒化物半導体層42の格子不整合を緩和するために、β−Ga系単結晶基板1と窒化物半導体層42との間にバッファ層41を設けることが好ましい。
【0085】
β−Ga系単結晶基板1は、SiやSn等の導電型不純物を含んでもよい。β−Ga系単結晶基板1の厚さは、例えば、400μmである。β−Ga系単結晶基板1は、第1の実施の形態で示したように、転位密度が低い。このため、β−Ga系単結晶基板1上にエピタキシャル成長により形成される窒化物半導体層42も、転位が少ない。
【0086】
バッファ層41は、AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)結晶からなる。バッファ層41は、β−Ga系単結晶基板1上にアイランド状に形成されてもよいし、膜状に形成されてもよい。バッファ層41は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。
【0087】
また、バッファ層41は、AlGaInN結晶の中でも、特にAlN結晶(x=1、y=z=0)からなることが好ましい。バッファ層41がAlN結晶からなる場合、β−Ga系単結晶基板1と窒化物半導体層42との密着性がより高まる。バッファ層41の厚さは、例えば、1〜5nmである。
【0088】
バッファ層41は、例えば、β−Ga系単結晶基板1の主面4上に400〜600℃程度の成長温度でAlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)結晶をエピタキシャル成長させることにより、形成される。
【0089】
窒化物半導体層42は、AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)結晶からなり、特に、高い品質の結晶が得られやすいGaN結晶(y=1、x=z=0)からなることが好ましい。窒化物半導体層42の厚さは、例えば、5μmである。窒化物半導体層42は、Si等の導電型不純物を含んでもよい。
【0090】
窒化物半導体層42は、例えば、β−Ga系単結晶基板1の主面4上にバッファ層41を介して、1000〜1100℃程度の成長温度でAlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)結晶をエピタキシャル成長させることにより、形成される。
【0091】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、第2の実施の形態に係る半導体積層構造体40を含む半導体素子についての形態である。以下に、その半導体素子の一例として、LED素子について説明する。
【0092】
(半導体素子の構造)
図8は、第3の実施の形態に係るLED素子50の垂直断面図である。LED素子50は、β−Ga系単結晶基板51と、β−Ga系単結晶基板51上のバッファ層52と、バッファ層52上のn型クラッド層53と、n型クラッド層53上の発光層54と、発光層54上のp型クラッド層55と、p型クラッド層55上のコンタクト層56と、コンタクト層56上のp側電極57と、β−Ga系単結晶基板51のバッファ層52と反対側の面上のn側電極58とを有する。
【0093】
また、バッファ層52、n型クラッド層53、発光層54、p型クラッド層55、及びコンタクト層56から構成される積層体の側面は、絶縁膜59に覆われる。
【0094】
ここで、β−Ga系単結晶基板51、バッファ層52、及びn型クラッド層53は、第1の実施の形態の半導体積層構造体40を構成するβ−Ga系単結晶基板1、バッファ層41、及び窒化物半導体層42をそれぞれ分割又はパターニングしたものである。β−Ga系単結晶基板51、バッファ層52、及びn型クラッド層53の厚さは、例えば、それぞれ400μm、5nm、5μmである。
【0095】
β−Ga系単結晶基板51は、導電型不純物を添加することにより導電性を付与することができるため、LED素子50のような、厚さ方向に通電する縦型の半導体素子に用いることができる。また、β−Ga系単結晶基板51は、広範囲の波長の光に対して透明であるため、LED素子50のような発光素子において、β−Ga系単結晶基板51側から光を取り出すことができる。
【0096】
半導体積層構造体40の窒化物半導体層42から形成されるn型クラッド層53は、転位が少ないため、n型クラッド層53上にエピタキシャル成長により形成される発光層54、p型クラッド層55、及びコンタクト層56も、転位が少ない。このため、LED素子50は、リーク特性、信頼性、駆動特性等に優れる。
【0097】
発光層54は、例えば、3層の多重量子井戸構造と、その上の厚さ10nmのGaN結晶膜からなる。各多重量子井戸構造は、厚さ6nmのGaN結晶膜と厚さ2nmのInGaN結晶膜からなる。発光層54は、例えば、成長温度700〜800℃で各結晶膜をn型クラッド層53上にエピタキシャル成長させることにより形成される。
【0098】
p型クラッド層55は、例えば、厚さ100nmの、濃度5.0×1019/cmのMgを含むGaN結晶膜である。p型クラッド層55は、例えば、成長温度900〜1050℃でMgを含むGaN結晶を発光層54上にエピタキシャル成長させることにより形成される。
【0099】
コンタクト層56は、例えば、厚さ10nmの、濃度1.5×1020/cmのMgを含むGaN結晶膜である。コンタクト層56は、例えば、成長温度900〜1050℃でMgを含むGaN結晶をp型クラッド層55上にエピタキシャル成長させることにより形成される。
【0100】
バッファ層52、n型クラッド層53、発光層54、p型クラッド層55、及びコンタクト層56の形成においては、Ga原料としてTMG(トリメチルガリウム)ガス、In原料としてTMI(トリメチルインジウム)ガス、Si原料としてMtSiH(モノメチルシラン)ガス、Mg原料としてCpMg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)ガス、N原料としてNH(アンモニア)ガスを用いることができる。
【0101】
絶縁膜59は、SiO等の絶縁材料からなり、例えば、スパッタリングにより形成される。
【0102】
p側電極57及びn側電極58は、それぞれコンタクト層56及びβ−Ga系単結晶基板51にオーミック接合する電極であり、例えば、蒸着装置を用いて形成される。
【0103】
LED素子50は、ウェハ状態のβ−Ga系単結晶基板51(β−Ga系単結晶基板1)上に、バッファ層52、n型クラッド層53、発光層54、p型クラッド層55、コンタクト層56、p側電極57、及びn側電極58を形成した後、β−Ga系単結晶基板51をダイシングによって、例えば、300μm角のチップサイズに分離することにより得られる。
【0104】
LED素子50は、例えば、β−Ga系単結晶基板51側から光を取り出すLEDチップであり、キャンタイプのステムにAgペーストを用いて実装される。
【0105】
なお、上述のように、第1の実施の形態の半導体積層構造体40を含む半導体素子として、発光素子であるLED素子50を一例として挙げたが、半導体素子はこれに限定されるものではなく、レーザーダイオード等の他の発光素子や、トランジスタ等の他の素子であってもよい。半導体積層構造体40を用いて他の素子を形成する場合であっても、LED素子50と同様に、エピタキシャル成長により半導体積層構造体40上に形成される層の転位が少ないため、高品質の素子を得ることができる。
【0106】
(実施の形態の効果)
上記第1の実施の形態によれば、転位密度が低く、かつ、双晶を含まない、又はほとんど含まない、結晶品質に優れたβ−Ga系単結晶基板を得ることができる。
【0107】
上記第2の実施の形態によれば、結晶品質に優れたβ−Ga系単結晶基板を用いることにより、β−Ga系単結晶基板上に高品質の結晶膜をエピタキシャル成長させ、結晶品質に優れた半導体積層構造体を得ることができる。
【0108】
上記第3の実施の形態によれば、結晶品質に優れた半導体積層構造体を用いることにより、半導体積層構造体上に高品質の結晶膜をエピタキシャル成長させ、結晶品質に優れた高性能の半導体素子を得ることができる。
【0109】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0110】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0111】
1…β−Ga系単結晶基板、 2…双晶面を含まない領域、 3…双晶面、 4…主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8