(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側レール部は、前記カバー部材が前記第3の位置に移動した際に前記外側スライダ部にその先端側から係合して、前記カバー部材の再度の前記第2の位置への移動を規制する係合部を有する請求項5に記載の液体投与具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、操作部材が誤って作動するのを確実に防止することができる液体投与具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
【0007】
(1) 筒状をなし、その内側に液体が充填された筒体と、
前記筒体の先端側に、該筒体と連通して、もしくは連通可能に設けられた、先端に鋭利な針先を有する針管と、
前記筒体内で摺動し得るガスケットと、
前記ガスケットを先端方向に向かって押圧して前記液体を前記針管から吐出させる押圧操作を行なう操作部材と、
前記筒体の外周側に配置され、前記押圧操作を規制可能な規制部材と、
前記針管の少なくとも前記針先を覆う第1の位置と、該第1の位置から基端方向に退避して、前記針先が露出する第2の位置とに移動可能なカバー部材とを備え、
前記操作部材および前記規制部材のうちの一方の部材には、スライダ部が設けられ、他方の部材には、前記スライダ部が摺動するレール部が設けられており、該レール部は、前記押圧操作時の操作方向と同方向に形成された縦方向レールと、該縦方向レールに連続し、前記操作方向に対し垂直な方向に形成された横方向レールとを有し、
前記カバー部材が前記第1の位置にあるときに、前記スライダ部が前記横方向レールに位置して、前記押圧操作を不能とし、
前記カバー部材が前記第1の位置から前記第2の位置に移動した際、その移動に連動して前記スライダ部が前記横方向レールから前記縦方向レールに移動し、これにより、前記押圧操作が可能となることを特徴とする液体投与具。
【0008】
(2) 前記規制部材は、円筒状をなすものであり、
前記操作部材は、前記規制部材の内側に該規制部材と同心的に配置された柱状をなすプランジャを有し、
前記スライダ部は、前記規制部材の内周部にその周方向に沿って配置され、前記レール部は、前記プランジャの外周部に前記各スライダ部にそれぞれ対応するように配置されている上記(1)に記載の液体投与具。
【0009】
(3) 前記規制部材は、円筒状をなすものであり、
前記カバー部材は、前記規制部材の外側に該規制部材と同心的に配置された円筒状をなすものであり、
前記規制部材の外周部および前記カバー部材の内周部のうちの一方には、
前記スライダ部よりも外側に位置する外側スライダ部が設けられ、他方には、前記外側スライダ部が摺動する外側レール部が設けられており、該外側レール部は、前記操作方向に対し傾斜した方向に形成された外側傾斜レールを有し、
前記カバー部材が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する過程で、前記外側スライダ部が前記外側傾斜レールを摺動することにより、前記規制部材がその軸回りに回転して、前記スライダ部が前記横方向レールから前記縦方向レールを摺動し、これにより、前記押圧操作が可能となる上記(1)または(2)に記載の液体投与具。
【0010】
(4) 前記カバー部材は、さらに、前記針先を覆い、かつ前記第2の位置へ移動が阻止された第3の位置に移動可能であり、
前記規制部材は、前記押圧操作の完了に連動して、前記カバー部材の前記第2の位置から前記第3の位置への移動を許容するよう構成された
上記(1)または(2)に記載の液体投与具。
【0011】
(5)
前記規制部材は、円筒状をなすものであり、
前記カバー部材は、前記規制部材の外側に該規制部材と同心的に配置された円筒状をなすものであり、
前記規制部材の外周部および前記カバー部材の内周部のうちの一方には、前記スライダ部よりも外側に位置する外側スライダ部が設けられ、他方には、前記外側スライダ部が摺動する外側レール部が設けられており、該外側レール部は、前記操作方向に対し傾斜した方向に形成された外側傾斜レールを有し、
前記外側レール部は、前記外側傾斜レールの基端部に連続し、前記押圧操作時の操作方向と同方向に形成された第1の外側縦方向レールと、前記外側傾斜レールの先端部に連続し、前記操作方向に対し垂直な方向に形成された外側横方向レールと、該外側横方向レールに連続し、前記押圧操作時の操作方向と反対方向に形成された第2の外側縦方向レールとを有し、
前記カバー部材が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する過程では、前記外側スライダ部が前記第1の外側縦方向レール、前記外側傾斜レールを順に摺動し、前記カバー部材が前記第2の位置にあるときには、前記外側スライダ部が前記外側横方向レールを摺動し、前記カバー部材が前記第2の位置から前記第3の位置に移動するときには、前記外側スライダ部が
前記第2の外側縦方向レールを移動する上記(4)に記載の液体投与具。
【0012】
(6) 前記外側レール部は、前記カバー部材が前記第3の位置に移動した際に前記外側スライダ部にその先端側から係合して、前記カバー部材の再度の前記第2の位置への移動を規制する係合部を有する上記(5)に記載の液体投与具。
【0013】
(7) 前記係合部は、弾性的に変形して前記カバー部材の前記第2の位置から前記第3の位置への移動を許容する上記(6)に記載の液体投与具。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カバー部材の位置に応じて、操作部材による押圧操作の可能・不能が規制手段で確実に切り換えられ、よって、操作部材の作動を規制したいときに、操作部材が誤って作動するのを確実に防止することができる。
【0015】
また、カバー部材が第1の位置から第2の位置になるまで確実に操作部材の移動が規制されるため、この間に筒体中の液体の内圧が上昇するのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の液体投与具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図7は、それぞれ、本発明の液体投与具の使用時の作動状態を順に示す側面図(一部を切欠いた図)、
図8〜
図14は、それぞれ、
図1〜
図7に示す状態の液体投与具の縦断面図、
図15は、本発明の液体投与具が備える操作部材と規制部材との位置関係を示す分解斜視図、
図16は、本発明の液体投与具が備える規制部材とカバー部材との位置関係を示す分解斜視図、
図17は、本発明の液体投与具が備える規制部材を先端側から見た図、
図18は、本発明の液体投与具が備える穿刺針を示す斜視図である。なお、以下では、説明の都合上、
図1〜
図16および
図18中の上側を「基端」または「上(上方)」、下側を「先端」「下(下方)」と言う。
【0018】
図1〜
図14に示す液体投与具10は、液体Qを生体Bに投与する(注入する)際に用いられる医療器具である。なお、液体Qとしては、その使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、造血剤、ワクチン、ホルモン製剤、抗リウマチ剤、抗ガン剤、麻酔剤、血液凝固防止剤等、主に皮下注射される薬液が挙げられる。
【0019】
液体投与具10は、内筒(筒体)1と、両頭針2と支持部材9とで構成された穿刺針50と、内筒1内で摺動し得るガスケット3と、ガスケット3の基端側に連結された操作部材11と、操作部材11の作動を規制する規制部材4と、内筒1の外周側に配置されたカバー部材6と、カバー部材6を付勢する付勢手段としてのコイルバネ60とを備えている。
【0020】
図8〜
図14に示すように、内筒1は、先端部に底部12と、当該底部12の縁部から立設した側壁13とを有する部材、すなわち、有底筒状をなす部材で構成された内筒本体14を有している。そして、内筒1の内部には、液体Qが充填可能である。
【0021】
底部12は、形状がすり鉢状をなし、その中心部に液体が通過する口部121が貫通して形成されている。
【0022】
側壁13は、形状が円筒状をなしている。
【0023】
また、内筒1は、内筒本体14の口部121を液密に封止する封止部材(封止部)15と、封止部材15をその先端側から固定する固定部材16とを有している。
【0024】
封止部材15は、円板状をなす弾性片で構成され、その基端面にリング状の凹部151が形成されている。この凹部151に、内筒本体14の口部121に突出形成されたリング状の凸部122が液密に嵌合することができる。これにより、封止部材15が内筒本体14の口部121に装着されるとともに、当該口部121を液密に封止することができる。
【0025】
固定部材16は、リング状をなす部材である。そして、この固定部材16は、封止部材15にその外周側から嵌合して、凸部122との間で封止部材15を挟持することにより、当該封止部材15を内筒本体14に対して確実に固定することができる。これにより、封止部材15の内筒本体14からの離脱が確実に防止される。なお、固定部材16の固定方法としては、その他、接着による方法や溶着による方法であってもよい。
【0026】
また、内筒本体14、固定部材16、カバー部材6、支持部材9、操作部材11、規制部材4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。
【0027】
また、封止部材15、ガスケット3を構成する弾性材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0028】
内筒1の先端側には、穿刺針50が配置されている。穿刺針50は、両頭針2と支持部材9とで構成されている。
【0029】
両頭針2は、中空の針管であり、先端に鋭利な先端側針先(針先)21を有し、基端にも鋭利な基端側針先23を有する。この両頭針2は、先端側針先21で生体Bを穿刺することができ、基端側針先23で内筒1の封止部材15を刺通することができる。
【0030】
両頭針2の内腔部(中空部)は、基端側針先23が内筒1の封止部材15を刺通した状態で、内筒1と連通しており、内筒1からの液体Qが通過する流路22として機能する。そして、さらに先端側針先21で生体Bを皮膚から所定の深さまで穿刺した状態で、当該生体Bに流路22を介して液体Qが注入される。
【0031】
なお、両頭針2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料が挙げられる。
【0032】
このような構成の両頭針2は、支持部材9を介して内筒1に装着されている。支持部材9は、両頭針2を内筒1に対しその中心軸方向に沿って移動可能に支持するものである。この支持部材9は、円板状をなす固定部(支持部)91と、固定部91の縁部から基端方向に向かって立設した壁部92とで構成されている。
【0033】
固定部91は、その中心部で両頭針2を支持、固定することができる。なお、両頭針2の固定部91で支持される箇所は、両頭針2の長手方向の途中である。
【0034】
壁部92は、固定部91の縁部に沿ったリング状をなす部分である。
図18に示すように、壁部92の基端内周部には、内側に向かって突出した複数(
図8に示す構成では4つ)の係合部921が形成されている。各係合部921は、それぞれ、壁部92の周方向に沿って等間隔に配置されている。各係合部921は、それぞれ、穿刺針50の内筒1に対する位置に応じて、当該内筒1の底部12の縁部に凹没して形成された第1の係合部123または第2の係合部124に係合することができる(
図8、
図9、
図11〜
図14参照)。そして、各係合部921が第1の係合部123に係合する状態、各係合部921が各係合部921に係合する状態のいずれの状態でも、穿刺針50が内筒1の先端部から離脱するのが防止される。
【0035】
前述したように、穿刺針50は、支持部材9を介して内筒1に対しその中心軸方向に沿って移動可能に支持されている。これにより、穿刺針50は、基端側針先23が内筒1の封止部材15から離間した(または刺通仕切らない)
図8〜
図10に示す離間状態と、基端側針先23が封止部材15を刺通した
図11〜
図14に示す刺通状態とを取り得る。よって、刺通状態となるまで両頭針2からの液体Qの不本意な漏出が防止される。
【0036】
なお、離間状態では、各係合部921が第1の係合部123に係合しており、刺通状態では、各係合部921が各係合部921に係合している。
【0037】
ガスケット3は、内筒1の軸方向に沿って摺動可能に収納されている。なお、このガスケット3と内筒1とで囲まれた空間には、液体Qが予め充填されている。そして、ガスケット3が先端方向に向かって移動することにより、内筒1内の液体Qを、当該内筒1に連通した状態の両頭針2から押し出すことができる。
【0038】
このガスケット3は、外形形状が円盤状をなし、その外周部に2つの突部31、32が突出形成されている。突部31と突部32とは、ガスケット3の軸方向に沿って離間している。また、突部31、32は、それぞれ、ガスケット3の周方向に沿ったリング状をなし、その外径は、外力を付与しない自然状態で、内筒1の内径よりも若干大きい。これにより、突部31、32は、それぞれ、内筒1の側壁13の内周部133に対し密着しつつ摺動することができ、よって、液密性を確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【0039】
また、ガスケット3の基端面には、操作部材11のプランジャ82の先端部が挿入されて(嵌合して)連結する凹部33が開口している。
【0040】
操作部材11は、ガスケット3を先端方向に向かって押圧して液体Qを両頭針2から吐出させる押圧操作(吐出操作)を行なう部材である。操作部材11は、ガスケット3と連結される操作部材本体8と、押圧操作を行なうときに把持される把持部材(把持部)7とを有している。
【0041】
図15に示すように、操作部材本体8は、円板状をなす天板81と、天板81の下面に円柱状に突出形成されたプランジャ82とを有している。
【0042】
天板81の縁部側には、当該天板81から先端方向に向かって形成された爪部83が複数配置されている。そして、円筒状をなす把持部材7の外周部71にその周方向に沿ってリング状に突出形成されたリブ711に各爪部83が係合することにより、操作部材本体8と把持部材7とが互いに固定されることとなる(
図1〜
図14参照)。そして、操作部材11を操作する際に、例えば片方の手の人差し指から小指までを把持部材7の外周部71に掛け、親指を操作部材本体8の天板81に掛けて、その操作を確実に行なうことができる。
【0043】
図8〜
図14に示すように、液体投与具10では、内筒1の外周側に円筒状をなす規制部材4が配置され、さらに、規制部材4の外周側に円筒状をなすカバー部材6が配置されている。これらの部材同士は、同心的に配置されている。また、規制部材4は、内筒1に対しその中心軸回りに回動可能に支持されており、カバー部材6は、内筒1に対しその中心軸方向に沿って移動可能に支持されている。
【0044】
カバー部材6は、第1の位置(
図1、
図2、
図8、
図9参照)と、第2の位置(
図3〜
図6および
図10〜
図13参照)と、第3の位置(
図7および
図14参照)とに移動することができる。第1の位置では、カバー部材6は、両頭針2の少なくとも先端側針先21を覆うことができる。これにより、先端側針先21による誤穿刺や、先端側針先21が損傷を受けるのを確実に防止することができる。また、この第1の位置から基端方向に移動した(退避した)第2の位置では、先端側針先21が露出する。これにより、先端側針先21で生体Bを穿刺することができる。また、第2の位置から先端方向に向かって移動した第3の位置では、両頭針2の少なくとも先端側針先21を再度覆うことができるとともに、第2の位置へ移動が阻止される。
【0045】
このカバー部材6は、コイルバネ60の付勢力により、第2の位置から第1の位置(第3の位置)に移動する方向に向かって付勢されている。
【0046】
図8〜
図14に示すように、コイルバネ60は、圧縮状態でカバー部材6に収納されている。このコイルバネ60は、その先端601がカバー部材6のリング状の先端壁部63に当接し、基端602が内筒1のリブ43に当接している。そして、これらの間で、コイルバネ60が圧縮されている。これにより、カバー部材6を第2の位置から第1の位置へ向かう方向に確実に付勢することができる。このようなコイルバネ60の付勢力により、液体投与具10の使用前後で、穿刺針50の先端側針先21をカバー部材6で覆うことができ、よって、当該先端側針先21による誤穿刺等を確実に防止することができる。
【0047】
なお、コイルバネ60の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料を用いることができる。
【0048】
また、規制部材4は、操作部材11に対し、押圧操作規制状態(
図8、
図9参照)と、押圧操作可能状態(
図11〜
図13参照)とを取り得る。押圧操作規制状態は、カバー部材6が第1の位置にあるときに、操作部材11による押圧操作を規制することができる状態である。押圧操作可能状態は、カバー部材6が第1の位置から第2の位置に移動した際に、操作部材11による押圧操作を可能とする(許可する)状態である。
【0049】
さらに、規制部材4は、カバー部材6に対し、第1の移動可能状態(
図1〜
図3参照)と、第2の移動可能状態(
図6参照)と、移動規制状態(
図7参照)とを取り得る。移動可能状態は、カバー部材6が第1の位置から第2の位置への移動するのを可能とする(許可する)状態である。第2の移動可能状態は、押圧操作の完了に連動して、カバー部材6が第2の位置から第3の位置へ移動するのを可能とする(許容する)状態である。移動規制状態は、カバー部材6が一旦第2の位置に退避して第3の位置に移動してから再度第2の位置へ移動するのを規制する状態である。
【0050】
以下、これらの状態を取るための構成について説明する。
【0051】
図15、
図16に示すように、規制部材4(一方の部材)の内周部の基端部には、その周方向に沿ってリング状に形成されたリブ41が突出している。そして、このリブ41には、スライダ部となる、内側に向かって突出した内側突部(内側フォロア部)42が複数(本実施形態では4つ)形成されている。これらの内側突部42は、リブ41(規制部材4の内周部)の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0052】
また、規制部材4の外周部には、その軸方向の途中に、当該外周部の周方向に沿ってリング状に形成されたリブ43が突出している。そして、このリブ43には、内側突部42よりも外側に位置する外側スライダ部となる、外側に向かって突出した外側突部(外側フォロア部)44が複数(本実施形態では2つ)形成されている。これらの外側突部44は、リブ43(規制部材4の外周部)の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0053】
図15に示すように、規制部材4の内側に規制部材4と同心的に配置されたプランジャ82(他方の部材)には、その外周部に、内側突部42が摺動する内側レール部(レール部)として、内側突部42と同数の内側溝部(内側カム溝)84が形成されている。これらの内側溝部84は、各内側突部42にそれぞれ対応するように複数配置されており、対応する1つの内側突部42が挿入される。
【0054】
なお、内側突部42および内側溝部84の形成数は、1つでもよいが、本実施形態のように複数あるのが好ましい。これにより、規制部材4が安定して回動することができる。
【0055】
各内側溝部84の構成は、それぞれ、同じであるため、1つの内側溝部84について代表的に説明する。
【0056】
内側溝部84は、内側縦溝(縦方向レール)841と、内側横溝(横方向レール)842と、内側傾斜溝843とで構成されている。
【0057】
内側縦溝841は、操作部材11による押圧操作時の操作方向と同方向に向かって、すなわち、プランジャ82の軸方向(長手方向)に沿って形成されている。
【0058】
内側横溝842は、押圧操作時の操作方向に対し垂直な方向に向かって、すなわち、プランジャ82の周方向に沿って形成されている。この内側横溝842は、内側縦溝841の長手方向の途中と交差して、すなわち、連通して(連続して)いる。
【0059】
内側傾斜溝843は、プランジャ82の軸方向に対して傾斜した方向に沿って形成されている。この内側傾斜溝843は、その先端部が内側縦溝841の基端部と交差している。
【0060】
また、隣接する内側溝部84の内側横溝842同士は、互いに連通しており、4つの内側溝部84の内側横溝842が全体としてリング状の溝を構成している。
【0061】
図8、
図9に示すように、カバー部材6が第1の位置にあるときには、内側突部42は、内側横溝842に位置している。これにより、操作部材11による押圧操作を規制する押圧操作規制状態となる。
【0062】
図11〜
図13に示すように、カバー部材6がコイルバネ60の付勢力に抗して第1の位置から第2の位置に移動した際には、その移動に連動して、内側突部42は、内側横溝842から内側縦溝841に移動して、当該内側縦溝841(内側縦溝841と内側横溝842との交差部、内側縦溝841と内側傾斜溝843との交差部も含む)に位置する。これにより、操作部材11による押圧操作が可能となる押圧操作可能状態となる。なお、内側突部42の内側横溝842から内側縦溝841への移動は、規制部材4が回転することにより行なわれ、その回転力は、規制部材4の外側突部44が、後述するカバー部材6の外側溝部61を移動することにより生じる。
【0063】
図14に示すように、カバー部材6がコイルバネ60の付勢力により第2の位置から第1の位置に戻るまでは、内側突部42は、内側縦溝841から内側傾斜溝843に移動して、当該内側傾斜溝843を進む。なお、このときも、規制部材4は前記と同方向に回転することとなる。
【0064】
図16に示すように、カバー部材6には、外側突部44が摺動する外側レール部として、外側突部44と同数の外側溝部(外側カム溝)61が形成されている。これらの外側溝部61は、各外側突部44にそれぞれ対応するように複数配置されており、対応する1つの外側突部44が挿入される。
【0065】
なお、外側突部44および外側溝部61の形成数は、1つでもよいが、本実施形態のように複数あるのが好ましい。これにより、内側突部42および内側溝部84がそれぞれ複数形成されているのと相まって、規制部材4がより安定して回動することができる。
【0066】
各外側溝部61の構成は、それぞれ、同じであるため、1つの外側溝部61について代表的に説明する。
【0067】
外側溝部61は、第1の外側縦溝(第1の外側縦方向レール)611と、第2の外側縦溝(第2の外側縦方向レール)612と、第3の外側縦溝613と、第1の外側傾斜溝(外側傾斜レール)614と、第2の外側傾斜溝615と、外側横溝(外側横方向レール)616と、外側係合部617とで構成されている。なお、第1の外側縦溝611〜外側横溝616は、それぞれ、カバー部材6の内周部から外周部まで、すなわち、円筒状をなすカバー部材6の壁部を貫通した貫通孔である。
【0068】
第1の外側縦溝611は、操作部材11による押圧操作時の操作方向と同方向に向かって、すなわち、プランジャ82の軸方向に沿って形成されている。
【0069】
第2の外側縦溝612は、第1の外側縦溝611に対してプランジャ82の周方向に沿って離間した位置に、押圧操作時の操作方向と反対方向に向かって、すなわち、第1の外側縦溝611と平行に形成されている。
【0070】
第3の外側縦溝613は、第1の外側縦溝611と第2の外側縦溝612との間に、押圧操作時の操作方向と反対方向に向かって形成されている。
【0071】
第1の外側傾斜溝614は、第1の外側縦溝611と第3の外側縦溝613との間に、押圧操作時の操作方向に対し傾斜した方向に沿って形成されている。この第1の外側傾斜溝614は、その先端部が第3の外側縦溝613の先端部と交差しており、基端部が第1の外側縦溝611の先端部と交差している。
【0072】
第2の外側傾斜溝615は、押圧操作時の操作方向に対し傾斜した方向に沿って形成され、その先端部が第1の外側縦溝611の基端部と交差している。
【0073】
外側横溝616は、第2の外側縦溝612と第3の外側縦溝613との間に、押圧操作時の操作方向に対し垂直な方向に沿って形成されている。この外側横溝616は、その一端部が第2の外側縦溝612に基端部と交差し、他端部が第3の外側縦溝613の先端部および第1の外側傾斜溝614の先端部と交差している。
【0074】
外側係合部617は、第2の外側縦溝612を画成するカバー部材6の壁部の一部で構成された弾性片である。この外側係合部617は、第2の外側縦溝612の基端部に配置され、カバー部材6が第1の位置に戻った際に外側突部44にその先端側から係合することができる(
図7参照)。また、弾性片で構成された外側係合部617は、弾性的に変形することができ、よって、カバー部材6が第2の位置から第3の位置へ移動する際に、外側突部44が外側係合部617を超えることができ、よって、その移動を許容することができる。
【0075】
図1〜
図3に示すように、外側突部44は、第2の外側傾斜溝615、第1の外側縦溝611、第1の外側傾斜溝614を順に移動することができる。これにより、カバー部材6が第1の位置から第2の位置に移動するのが可能な第1の移動可能状態となる。
【0076】
また、外側突部44が第1の外側傾斜溝614を移動する際には、規制部材4が回転することができる。前述したように、この回転により、内側突部42が内側横溝842から内側縦溝841に移動することができ、よって、操作部材11による押圧操作が可能な押圧操作可能状態となる。
【0077】
図4〜
図6に示すように、カバー部材6が第2の位置にあるときには、外側突部44が外側横溝616を移動することができる。なお、この移動は、規制部材4が回転することにより行なわれ、その回転力は、内側突部42が内側傾斜溝843を移動することにより生じる。
【0078】
また、
図6に示すように、外側突部44が外側横溝616を移動しきると、それに続いて、第2の外側縦溝612を移動することができる。これにより、カバー部材6が第2の位置から第3の位置へ移動するのが可能な第2の移動可能状態となる。
【0079】
図7に示すように、カバー部材6が第2の位置から第1の位置に戻るときには、外側突部44が第2の外側縦溝612を移動する。そして、この外側突部44は、外側係合部617に係合することとなる。これにより、カバー部材6が再度第2の位置へ移動するが規制される移動規制状態となる。
【0080】
また、外側溝部61は、前述したように貫通孔であり、外側突部44が露出することができる。
図7に示すように、移動規制状態では、外側突部44と、外側突部44に係合した状態の外側係合部617とが、操作部材11の把持部材7で覆われる。これにより、外側突部44と外側係合部617との係合が不本意に解除されるのを確実に防止することができ、よって、カバー部材6が第1の位置に確実に留まることができる。このカバー部材6により、先端側針先21が覆われ、誤穿刺等を防止することができる。
【0081】
図8〜
図14に示すように、穿刺針50は、内筒1に対しその軸方向に沿って移動することができる。そして、規制部材4は、カバー部材6が第1の位置にあるときに、穿刺針50(支持部材9)の移動を規制する穿刺針移動規制状態を取ることもできる。次に、この穿刺針移動規制状態を取るための構成について説明する。
【0082】
図17に示すように、規制部材4の内周部の先端部には、内側に向かって突出した内側突部(第2の内側突部)45が複数(本実施形態では4つ)形成されている。これらの内側突部45は、規制部材4の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0083】
図18に示すように、穿刺針50の支持部材9の壁部92の外周部には、内側突部45と同数の段差部922が形成されている。各段差部922は、それぞれ、壁部92の外周部に外側に向かった段差を生じさせるように形成されている。
【0084】
カバー部材6が第1の位置にあるときには、各段差部922に、それぞれ、その基端側から内側突部45が係合する(
図18中の実線で示す「内側突部45」参照)。これにより、穿刺針50の移動が規制される穿刺針移動規制状態となり、よって、液体投与具10の使用前に不本意に両頭針2が内筒1の封止部材15を刺通するのが防止され、両頭針2からの液体Qの漏れが防止される。
【0085】
そして、穿刺針移動規制状態から、前述したように規制部材4が回転することにより、各段差部922から内側突部45が外れて(
図18中の二点鎖線で示す「内側突部45」参照)、穿刺針移動規制状態が解除される。これにより、穿刺針50が基端側に移動可能な状態となり、よって、両頭針2が内筒1の封止部材15を刺通することができる。
【0086】
次に、液体投与具10の使用方法と、その使用時の作動状態とについて、
図1〜
図14を参照しつつ説明する。
【0087】
[1]
図1、
図8に示す未使用状態(初期状態)の液体投与具10を用意する。この未使用状態の液体投与具10では、カバー部材6は、第1の位置にあり、両頭針2の先端側針先21を覆っている。なお、この未使用状態では、コイルバネ60の付勢力により、カバー部材6で先端側針先21が覆われた状態が維持されている。これにより、先端側針先21による誤穿刺を確実に防止することができる。
【0088】
また、
図8に示すように、穿刺針50は、両頭針2の基端側針先23が内筒1の封止部材15から離間しており、封止部材15を未だ刺通していない。この基端側針先23が内筒1の封止部材15から離間した状態は、穿刺針移動規制状態の規制部材4によって確実に維持されている。これにより、薬液Qの投与が開始されるまで、液体Qの無菌状態を維持することができる。
【0089】
また、規制部材4は、各内側突部42がそれぞれ操作部材11のプランジャ82の内側横溝842に位置しており、操作部材11に対して押圧操作規制状態となっている。これにより、操作部材11による押圧操作が規制される(不能となる)。
【0090】
さらに、規制部材4は、各外側突部44がそれぞれ第2の外側傾斜溝615に位置しており、カバー部材6に対して移動可能状態となっている。
【0091】
[2] 次に、未使用状態の液体投与具10の操作部材11の把持部材7を把持して、
図2、
図9に示すように、カバー部材6の先端壁部63を生体Bに当接させ、そのまま、操作部材11を先端方向に向かって押圧する。これにより、カバー部材6は、コイルバネ60の付勢力に抗して、第1の位置から第2の位置へ移動し始める。また、その移動過程では、各外側突部44がそれぞれ第2の外側傾斜溝615を進む。これにより、規制部材4が回転して、穿刺針移動規制状態が解除され、よって、穿刺針50が基端側に移動可能な状態となる。
【0092】
[3]
図2に示す状態から操作部材11をさらに先端方向に向かって押圧すると、各外側突部44がそれぞれ第1の外側縦溝611を進むこととなり(
図3参照)、カバー部材6が穿刺防止位置から穿刺可能位置へ移動する。このとき、両頭針2の先端側針先21が、カバー部材6の先端壁部63の開口部631から突出して、先端側針先21での生体Bに対する穿刺が行なわれる(
図3、
図10参照)。
【0093】
また、カバー部材6の移動とともに、当該カバー部材6の先端壁部63が穿刺針50の支持部材9を基端方向に向かって押圧し始める(
図10参照)。
【0094】
[4]
図3に示す状態から操作部材11を先端方向に向かって押圧し続けると、各外側突部44がそれぞれ第1の外側傾斜溝614を進む(
図4参照)。これにより、規制部材4が回転して、内側突部42が内側縦溝841まで移動することとなり、押圧操作可能状態となる(
図11参照)。
【0095】
また、このとき、カバー部材6の先端壁部63が穿刺針50の支持部材9を基端方向に向かってさらに押圧する。これにより、両頭針2の基端側針先23で、内筒1の封止部材15を刺通することができ、よって、生体Bを穿刺した両頭針2と、内筒1とが連通する(
図11参照)。
【0096】
[5] さらに、
図4、
図11に示す状態から操作部材11を先端方向に向かって押圧し続けると、内側突部42が内側縦溝841、内側傾斜溝843を順に進むこととなり、ガスケット3が内筒1の底部12に当接する移動限界まで移動して、液体Qを両頭針2から排出することができる(
図12、
図13参照)。これにより、液体Qの投与が完了する。
【0097】
なお、内側突部42が内側傾斜溝843を進むことにより、規制部材4が回転する。これにより、外側突部44が外側横溝616を進んで、第2の外側縦溝612に至る(
図5、
図6参照)。
【0098】
[6] 次に、
図7、
図14に示すように、液体投与具10を生体Bから離間させる。これにより、カバー部材6は、コイルバネ60の付勢力により先端方向に向かって付勢されることとなり、外側突部44が第2の外側縦溝612を進み、第1の位置に戻る。
【0099】
このとき、規制部材4は、外側突部44が外側係合部617に係合することができ、よって、カバー部材6に対して移動規制状態となる。これにより、カバー部材6が再度第2の位置へ移動するのが確実に規制され、先端側針先21による誤穿刺が防止される。
【0100】
このように、液体投与具10では、生体Bに対する穿刺が行なわれてから、液体Qの投与が行なわれる。すなわち、液体投与具10では、「穿刺」、「投与」の順番で確実に使用することができる。従って、生体Bに対する穿刺が行われる前に、操作部材11によって液体Qを吐出させる押圧操作が誤って行なわれるのを確実に防止することができる。
【0101】
なお、液体投与具10では、液体Qの投与中に、その投与を停止することができる。この場合、液体投与具10を生体Bから離間させれば、カバー部材6は、コイルバネ60の付勢力により先端方向に向かって付勢されることとなり、外側突部44が第3の外側縦溝613を進み、第1の位置に戻ることができる。
【0102】
以上、本発明の液体投与具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、液体投与具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0103】
また、穿刺針は、前記実施形態では両頭針である針管を有するものであるが、これに限定されず、基端側針先が省略された針管を有するものであってもよい。この場合、針管は、予め(未使用状態で既に)内筒と連通している。
【0104】
また、前記実施形態では、内側突部が操作部材および規制部材のうちの規制部材に形成され、内側突部が挿入される内側溝部が操作部材のプランジャに形成されている。本願発明では、これに限定されず、内側突部が操作部材のプランジャに形成され、内側溝部が規制部材に形成されていてもよい。
【0105】
前記実施形態では、外側突部が規制部材およびカバー部材のうちの規制部材に形成され、外側突部が挿入される外側溝部がカバー部材に形成されている。本願発明では、これに限定されず、外側突部がカバー部材に形成され、外側溝部が規制部材に形成されていてもよい。
【0106】
また、外側溝部では、第3の外側縦溝を省略することができる。
【0107】
また、前記実施形態では、規制部材は円筒状をなすものとして説明したが、円筒の高さ方向が短く、実質的に中心に孔を有する円盤状(ドーナツ形状)であってもよく、本願明細書の規制部材の説明における「円筒状」の概念には円盤状のものも含まれるものとする。
【0108】
また、外側レール部および内側レール部は、それぞれ、前記実施形態では溝で構成されているが、外側スライダ部および内側スライダ部がレールに沿って滑動可能であればこれに限定されず、例えば、外側レール部および内側レール部がそれぞれ凸条(リブ)や段差で構成されていてもよい。