特許第5865566号(P5865566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865566
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20160204BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20160204BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   H05B3/10 A
   H05B3/74
   H05B3/00 370
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-44846(P2012-44846)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-182745(P2013-182745A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391005824
【氏名又は名称】株式会社日本セラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】梅木 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】土田 淳
(72)【発明者】
【氏名】丹治 清一
(72)【発明者】
【氏名】石田 弘徳
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−050461(JP,A)
【文献】 特開2009−187948(JP,A)
【文献】 特開2009−009795(JP,A)
【文献】 特開平03−019315(JP,A)
【文献】 特開2002−373862(JP,A)
【文献】 特表2007−511052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0200289(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0078756(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0108661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/00
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス焼結体からなり、半導体ウエハが載置される載置面を有する基体と、相互に短絡しないように前記基体に埋設されている第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体と、を備えているセラミックスヒータであって、
前記載置面の法線方向について前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている指定区域が存在するように前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置され、前記指定区域において前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれのワット密度の分布態様が異なるように構成され
前記指定区域における前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれの、前記載置面に対して平行である指定方向へのワット密度の勾配極性が逆であり、
前記第1発熱抵抗体が、前記載置面において基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第1環状区域のそれぞれに配置されている第1発熱抵抗要素と、隣り合う前記第1環状区域に配置されている前記第1発熱抵抗体同士を接続する第1接続要素とにより構成され、前記第2発熱抵抗体が、前記載置面において前記基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第2環状区域のそれぞれに配置されている第2発熱抵抗要素と、隣り合う前記第2環状区域に配置されている前記第2発熱抵抗体同士を接続する第2接続要素とにより構成され、
前記第1発熱抵抗要素が、前記基準点から前記載置面の外縁に向かう方向を前記指定方向として、前記基準点から離れている前記第1環状区域に配置されているほどワット密度が高くなるように構成されている一方、前記第2発熱抵抗要素が、前記基準点から離れている前記第2環状区域に配置されているほどワット密度が低くなるように構成され、
前記第1接続要素のワット密度が前記第1発熱抵抗要素のワット密度よりも低く、かつ、前記第2接続要素のワット密度が前記第2発熱抵抗要素のワット密度よりも低いことを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
セラミックス焼結体からなり、半導体ウエハが載置される載置面を有する基体と、相互に短絡しないように前記基体に埋設されている第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体と、を備えているセラミックスヒータであって、
前記載置面の法線方向について前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている指定区域が存在するように前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置され、前記指定区域において前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれのワット密度の分布態様が異なるように構成され、
前記指定区域における前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれの、前記載置面に対して平行である指定方向へのワット密度の勾配極性が逆であり、
前記第1発熱抵抗体が、前記載置面において基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第1環状区域のそれぞれに配置されている第1発熱抵抗要素と、隣り合う前記第1環状区域に配置されている前記第1発熱抵抗体同士を接続する第1接続要素とにより構成され、前記第2発熱抵抗体が、前記載置面において前記基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第2環状区域のそれぞれに配置されている第2発熱抵抗要素と、隣り合う前記第2環状区域に配置されている前記第2発熱抵抗体同士を接続する第2接続要素とにより構成され、
前記第1発熱抵抗要素が、前記基準点から前記載置面の外縁に向かう方向を前記指定方向として、前記基準点から離れている前記第1環状区域に配置されているほどワット密度が高くなるように構成されている一方、前記第2発熱抵抗要素が、前記基準点から離れている前記第2環状区域に配置されているほどワット密度が低くなるように構成され、
前記基準点から最も遠くに配置されている前記第1発熱抵抗要素が環状であり、かつ、前記第1発熱抵抗体に電力を供給するための一対の第1端子のそれぞれに一対の前記第1接続要素を介して接続され、これに代えて又は加えて、前記基準点から最も遠くに配置されている前記第2発熱抵抗要素が環状であり、かつ、前記第2発熱抵抗体に電力を供給するための一対の第2端子のそれぞれに一対の前記第2接続要素を介して接続されていることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のセラミックスヒータにおいて、
前記載置面の法線方向について前記基体のサイズtを用いて、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれと前記載置面との間隔が、0.4t以上であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のセラミックスヒータにおいて、
前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のうち、前記載置面の法線方向について前記載置面との間隔が長いほうの発熱抵抗体の前記指定方向についての温度勾配の極性が正であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載のセラミックスヒータにおいて、
隣り合う前記第1環状区域の間隙に前記第2環状区域の一部又は全部が重なるように、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置されていることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載のセラミックスヒータにおいて、
前記第1接続要素及び前記第2接続要素が重ならないように、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置されていることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項7】
セラミックス焼結体からなり、半導体ウエハが載置される載置面を有する基体と、相互に短絡しないように前記基体に埋設されている第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体と、を備えているセラミックスヒータであって、
前記載置面の法線方向について前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている指定区域が存在するように前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置され、前記指定区域において前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれのワット密度の分布態様が異なるように構成され
前記基体が、前記載置面の反対側において支持体に接合された状態で前記支持体により支持されるように構成され、
前記基体と前記支持体との接合区域における前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体との重なり度が、当該接合区域とは別の区域における前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体との重なり度よりも高くなるように、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置されていることを特徴とするセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハを載置する載置面の温度制御精度を高めるため、複数の発熱抵抗体がセラミックス焼結体からなる基体に埋設され、各発熱抵抗体の発熱態様が独立して制御されるマルチゾーン式のセラミックスヒータが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−009795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、載置面の中央部分をその周囲部分よりも高温若しくは低温に制御する、又は中央部分及び周囲部分を略等温に制御する等、載置面における温度分布態様の制御精度を向上させる余地がまだ残されている。
【0005】
そこで、本発明は、載置面の温度分布の制御精度向上を図ることができるセラミックスヒータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のセラミックスヒータは、セラミックス焼結体からなり、半導体ウエハが載置される載置面を有する基体と、相互に短絡しないように前記基体に埋設されている第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体と、を備えているセラミックスヒータであって、前記載置面の法線方向について前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている指定区域が存在するように前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置され、前記指定区域において前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれのワット密度の分布態様が異なるように構成され、前記指定区域における前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれの、前記載置面に対して平行である指定方向へのワット密度の勾配極性が逆であり、前記第1発熱抵抗体が、前記載置面において基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第1環状区域のそれぞれに配置されている第1発熱抵抗要素と、隣り合う前記第1環状区域に配置されている前記第1発熱抵抗体同士を接続する第1接続要素とにより構成され、前記第2発熱抵抗体が、前記載置面において前記基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第2環状区域のそれぞれに配置されている第2発熱抵抗要素と、隣り合う前記第2環状区域に配置されている前記第2発熱抵抗体同士を接続する第2接続要素とにより構成され、前記第1発熱抵抗要素が、前記基準点から前記載置面の外縁に向かう方向を前記指定方向として、前記基準点から離れている前記第1環状区域に配置されているほどワット密度が高くなるように構成されている一方、前記第2発熱抵抗要素が、前記基準点から離れている前記第2環状区域に配置されているほどワット密度が低くなるように構成され、前記第1接続要素のワット密度が前記第1発熱抵抗要素のワット密度よりも低く、かつ、前記第2接続要素のワット密度が前記第2発熱抵抗要素のワット密度よりも低いことを特徴とする。
【0007】
本発明のセラミックスヒータによれば、載置面の少なくとも指定区域において、第1及び第2発熱抵抗体のそれぞれによって相互に異なる温度分布が形成されうる。「指定区域」とは、載置面の法線方向について第1及び第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている区域を意味する。「存在範囲」とは、各発熱抵抗体の外郭により輪郭の全部又はほぼ全部が定義される閉じた範囲又は領域を意味する。
【0008】
このため、第1及び第2発熱抵抗体のそれぞれに対して供給される電力の組み合わせが変更されるだけで、各発熱抵抗体により形成される温度分布が組み合わせられた結果としての温度分布がさまざまな形態に制御され、その結果として載置面の温度分布が所望の形態(例えば、載置面の中心部を外周部と比較して高温であるような温度傾斜、又はこれとは逆に載置面の中心部を外周部と比較して低温であるような温度傾斜)に高精度で制御されうる。
【0010】
前記指定区域における前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれの、前記載置面に対して平行である指定方向へのワット密度の勾配極性が逆であることで、第1及び第2発熱抵抗体のそれぞれに対する供給電力が制御されることにより、指定区域における指定方向について各発熱抵抗体により形成される温度勾配が合成された結果としての温度勾配が形成される。指定区域において各発熱抵抗体により指定方向に形成される温度勾配が反対極性である。
【0011】
「ワット密度」とは、発熱抵抗要素に電流が流れることによって発生するジュール熱量を当該発熱抵抗要素の面積で除算した値として定義される。「温度勾配の極性」とは、指定区域の指定方向について離間した異なる2点(端点)における温度差の極性(正負の別)を意味する。
【0012】
すなわち、一方の発熱抵抗体により形成される温度分布又はその極大値が指定方向に連続的又は断続的に増加するのに対して、他方の発熱抵抗体により形成される温度分布又はその極大値が指定方向に連続的又は断続的に減少する。
【0013】
このため、載置面の指定区域において指定方向について各発熱抵抗体により形成される温度勾配が同程度に制御されることにより、平坦又は均等な総合温度分布が形成される。また、一方の発熱抵抗体により形成される温度勾配が他方の発熱抵抗体により形成される温度勾配より急になるように制御されることにより、当該一方の発熱抵抗体により形成される温度勾配が強く反映された総合温度分布が形成される。このように、各発熱抵抗体により形成される指定方向に勾配を有する温度分布が組み合わせられた結果としての温度分布がさまざまな形態に制御されることにより、載置面の温度分布の制御精度の向上が図られる。
【0014】
本発明のセラミックスヒータにおいて、前記載置面の法線方向について前記基体のサイズtを用いて、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれと前記載置面との間隔が、0.4t以上であることが好ましい。
【0015】
当該構成のセラミックスヒータによれば、載置面における指定方向についての温度分布態様に対する、各発熱抵抗体の指定方向についての空間分布態様の影響が軽減される。
【0016】
本発明のセラミックスヒータにおいて、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のうち、前記載置面の法線方向について前記載置面との間隔が長いほうの発熱抵抗体の前記指定方向についての温度勾配の極性が正であることがより好ましい。
【0017】
当該構成のセラミックスヒータによれば、指定方向について温度勾配極性が正である発熱抵抗体の、当該指定方向についての空間分布態様が、載置面における指定方向についての温度分布に対して及ぼす影響を小さくすることができる。
【0019】
前記第1発熱抵抗体が、前記載置面において基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第1環状区域のそれぞれに配置されている第1発熱抵抗要素と、隣り合う前記第1環状区域に配置されている前記第1発熱抵抗体同士を接続する第1接続要素とにより構成され、前記第2発熱抵抗体が、前記載置面において前記基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第2環状区域のそれぞれに配置されている第2発熱抵抗要素と、隣り合う前記第2環状区域に配置されている前記第2発熱抵抗体同士を接続する第2接続要素とにより構成され、前記第1発熱抵抗要素が、前記基準点から前記載置面の外縁に向かう方向を前記指定方向として、前記基準点から離れている前記第1環状区域に配置されているほどワット密度が高くなるように構成されている一方、前記第2発熱抵抗要素が、前記基準点から離れている前記第2環状区域に配置されているほどワット密度が低くなるように構成されていることで、各発熱抵抗体により形成される、載置面の基準点から外縁に向かう方向に勾配を有する温度分布が合成された結果としての温度分布がさまざまな形態に制御されることにより、載置面の温度分布の制御精度の向上が図られる。
【0020】
本発明のセラミックスヒータにおいて、隣り合う前記第1環状区域の間隙に前記第2環状区域の一部又は全部が重なるように、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置されていることが好ましい。
【0021】
当該構成のセラミックスヒータによれば、載置面においてその法線方向について第1及び第2発熱抵抗体が存在しない領域の低減又は解消、すなわち、各発熱抵抗体に対する電力の制御によって温度分布が制御されうる範囲の拡張が図られている。このため、当該載置面における温度分布制御の精度向上が図られる。
【0023】
前記第1接続要素のワット密度が前記第1発熱抵抗要素のワット密度よりも低く、かつ、前記第2接続要素のワット密度が前記第2発熱抵抗要素のワット密度よりも低いことで、載置面のうち、複数の第1環状区域の間隙において第1接続要素が存在する箇所(特定の位相区域)、及び複数の第2環状区域の間隙において第2接続要素が存在する箇所が局所的に高温になり、載置面の温度分布制御が困難にある事態が回避されうる。
【0024】
本発明のセラミックスヒータにおいて、前記第1接続要素及び前記第2接続要素が重ならないように、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置されていることが好ましい。
【0025】
当該構成のセラミックスヒータによれば、第1接続要素及び第2接続要素が重なっている区域の存在のために、載置面において当該区域がその周囲よりも過度に高温になり、温度分布の制御が困難となる事態が回避される。
【0026】
本発明の第2態様のセラミックスヒータは、セラミックス焼結体からなり、半導体ウエハが載置される載置面を有する基体と、相互に短絡しないように前記基体に埋設されている第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体と、を備えているセラミックスヒータであって、前記載置面の法線方向について前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている指定区域が存在するように前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置され、前記指定区域において前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれのワット密度の分布態様が異なるように構成され、前記指定区域における前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれの、前記載置面に対して平行である指定方向へのワット密度の勾配極性が逆であり、前記第1発熱抵抗体が、前記載置面において基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第1環状区域のそれぞれに配置されている第1発熱抵抗要素と、隣り合う前記第1環状区域に配置されている前記第1発熱抵抗体同士を接続する第1接続要素とにより構成され、前記第2発熱抵抗体が、前記載置面において前記基準点を重畳的に囲む相互に離間している複数の第2環状区域のそれぞれに配置されている第2発熱抵抗要素と、隣り合う前記第2環状区域に配置されている前記第2発熱抵抗体同士を接続する第2接続要素とにより構成され、前記第1発熱抵抗要素が、前記基準点から前記載置面の外縁に向かう方向を前記指定方向として、前記基準点から離れている前記第1環状区域に配置されているほどワット密度が高くなるように構成されている一方、前記第2発熱抵抗要素が、前記基準点から離れている前記第2環状区域に配置されているほどワット密度が低くなるように構成され、前記基準点から最も遠くに配置されている前記第1発熱抵抗要素が環状であり、かつ、前記第1発熱抵抗体に電力を供給するための一対の第1端子のそれぞれに一対の前記第1接続要素を介して接続され、これに代えて又は加えて、前記基準点から最も遠くに配置されている前記第2発熱抵抗要素が環状であり、かつ、前記第2発熱抵抗体に電力を供給するための一対の第2端子のそれぞれに一対の前記第2接続要素を介して接続されていることを特徴とする
【0027】
当該構成のセラミックスヒータによれば、最も外側にある環状の第i発熱抵抗要素(「i」は「1」及び「2」のいずれか一方又は両方)が、一対の第i端子に対して並列接続されている一対の発熱抵抗要素を構成する。このため、最も外側にある第i発熱抵抗要素の断面積又は幅の狭小化によるワット密度の増加が抑制される。その結果、第i発熱抵抗体の配置スペース節約を図りながら、載置面における温度分布の制御精度の向上が図られる。
【0028】
本発明の第3態様のセラミックスヒータは、セラミックス焼結体からなり、半導体ウエハが載置される載置面を有する基体と、相互に短絡しないように前記基体に埋設されている第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体と、を備えているセラミックスヒータであって、前記載置面の法線方向について前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体の存在範囲が重なっている指定区域が存在するように前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置され、前記指定区域において前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体のそれぞれのワット密度の分布態様が異なるように構成され、前記基体が、前記載置面の反対側において支持体に接合された状態で前記支持体により支持されるように構成され、前記基体と前記支持体との接合区域における前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体との重なり度が、当該接合区域とは別の区域における前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体との重なり度よりも高くなるように、前記第1発熱抵抗体及び前記第2発熱抵抗体が配置されていることを特徴とする
【0029】
当該構成のセラミックスヒータによれば、基体から支持体に熱が伝わることによる、両者の接合区域の温度低下が抑制されうる。このように、載置面の温度分布に対する基体から支持体への熱伝達の影響が軽減されることにより、当該温度分布制御の精度向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態としてのセラミックスヒータの構成説明図。
図2図1のII−II線断面図。
図3】発熱抵抗要素の配置範囲を定義する環状区域に関する説明図。
図4】本発明の第1実施形態としてのセラミックスヒータの機能説明図。
図5】本発明の第2実施形態としてのセラミックスヒータの構成説明図。
図6】本発明の第3実施形態としてのセラミックスヒータの構成説明図。
図7】本発明の実施例及び比較例のセラミックスヒータの構成説明図。
図8】本発明の実施例及び比較例のセラミックスヒータの機能説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
(構成)
図1に示されている本発明の第1実施形態としてのセラミックスヒータは、略円盤状の基体10と、相互に短絡しないように基体10に埋設されている第1発熱抵抗体R1(一点鎖線参照)及び第2発熱抵抗体R2(二点鎖線参照)とを備えている。セラミックスヒータは、第1発熱抵抗体R1に対して電力を供給するための一対の第1端子T1と、第2発熱抵抗体R2に対して電力を供給するための一対の第2端子T2とをさらに備えている。
【0032】
基体10は、例えば焼結助剤として酸化イットリウムが添加されている窒化アルミニウムの焼結体によって構成されている。基体10には、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のほか、半導体ウエハをジョンセン−ラーベック力により載置面11に引き付けるための静電チャック電極及び基体10の上方にプラズマを発生させるためのプラズマ電極のうち少なくとも一方が埋設されていてもよい。
【0033】
図2に示されているように基体10の一方の端面(平面)が、半導体ウエハ等の対象物(図示略)が載置される載置面11を構成する。第1発熱抵抗体R1と載置面11との間隔(深さ)は、第2発熱抵抗体R2と載置面11との間隔よりも短い。
【0034】
基体10は、載置面11の反対側の端面12において基体10に接合されている略円筒状の支持体20により支持されている。図1において径の異なる2つの破線円により囲まれている区域S0が、基体10と支持体20との接合区域に相当する。支持体20は、例えば窒化アルミニウムの焼結体により構成されている。支持体20がセラミックスヒータの構成要素であってもよい。支持体20の中空部には一対の第1端子T1のそれぞれと第1外部電源(図示略)とを接続するための第1給電線又はロッド21と、一対の第2端子T2のそれぞれと第2外部電源(図示略)とを接続するための第2給電線又はロッド22とが配置される。
【0035】
図3に示されているように、基体10には載置面11の法線方向について当該基体10を臨んだ場合に、その径方向(又は緯度方向)に相互に離間しながら、載置面11の中心点(基準点)Oを重畳的に囲む周方向(又は経度方向)に延在する円環状の第1環状区域S11〜S15が定義されている。第1発熱抵抗体R1の存在範囲は、最も内側の第1環状区域S11の内側の円弧及び最も外側の第1環状区域S15の外側の円弧により画定される。
【0036】
基体10の半径をRとした場合、載置面11の中心点Oを原点とする円座標系(2次元ユークリッド空間R2における極座標系)における動径成分により、各第1環状区域は内側から順に[α11R,(α11+δ11)R]、[α12R,(α12+δ12)R]、[α13R,(α13+δ13)R]、[α14R,(α14+δ14)R]及び[α15R,(α15+δ15)R]のそれぞれにより表わされる。ここで、各係数の間には不等式(01)で表わされる関係がある。
【0037】
0<α11<α11+δ11<α12<α12+δ12<α13<α13+δ13<α14<α14+δ14<α15<α15+δ15<1‥(01)。
【0038】
第1発熱抵抗体R1は、モリブデン若しくはタングステン等の高融点金属又は当該金属を主成分とする導電体により構成されている。第1発熱抵抗体R1は、第1環状区域S11〜S15のそれぞれに配置されている第1発熱抵抗要素R11〜R15及びこれらを接続する第1接続要素C11〜C14により構成されている。第1発熱抵抗要素R11〜R14のそれぞれは、相互に離間している一対の略半円弧状の発熱抵抗要素により構成されている。最も外側の第1発熱抵抗要素R15は単一の略円環状の発熱抵抗要素により構成されている。
【0039】
第1発熱抵抗要素R1j(j=1〜3)を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれは、一対の第1接続要素C1jのそれぞれを介して、径方向外側に離間して隣り合う第1発熱抵抗要素R1j+1を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれに対して接続される。
【0040】
第1発熱抵抗要素R14を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれは、一対の第1接続要素C14のそれぞれを介して、径方向外側に離間して隣り合う最も外側の第1発熱抵抗要素R15を構成する単一の発熱抵抗要素に対して接続される。最も外側の第1発熱抵抗要素R15は、一対の第1端子T1間で、正確にはその内側の第1発熱抵抗要素R14を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれの間で、並列接続されている一対の発熱抵抗要素を構成する。
【0041】
対をなす第1接続要素C11〜C14のそれぞれは位相が約πだけずれて配置されている。第1接続要素C11〜C14のそれぞれは、少なくとも一部が第1発熱抵抗要素R11〜R15のそれぞれの幅δ11〜δ15よりも幅広(例えば3δ11以上)の形状とされている。
【0042】
図3に示されているように、基体10にはその径方向に相互に離間しながら、載置面11の中心点Oを重畳的に囲む円環状の第2環状区域S21〜S24がさらに定義されている。第2発熱抵抗体R2の存在範囲は、最も内側の第2環状区域S21の内側の円弧及び最も外側の第2環状区域S24の外側の円弧により画定される。本実施形態では、第2発熱抵抗体R1の存在範囲及び第2発熱抵抗体R2の存在範囲の重なり範囲(指定区域)は、第2発熱抵抗体R2の存在範囲と一致する。
【0043】
基体10の半径をRとした場合、載置面11の中心点Oを原点とする円座標系における動径成分により、各第2環状区域は内側から順に[α21R,(α21+δ21)R]、[α22R,(α22+δ22)R]、[α23R,(α23+δ23)R]及び[α24R,(α24+δ24)R]のそれぞれにより表わされる。第2環状区域S2k(k=1〜4)は、隣り合う第1環状区域S1k及びS1k+1の間隙に重なるように配置されている。すなわち、各係数の間には不等式(02)で表わされる関係がある。
【0044】
α11+δ11<α21<α21+δ21<α12,α12+δ12<α22<α22+δ22<α13,α13+δ13<α23<α23+δ23<α14,α14+δ14<α24<α24+δ24<α15‥(02)。
【0045】
第2発熱抵抗体R2は、第1発熱抵抗体R1と同様にモリブデン若しくはタングステン等の高融点金属又は当該金属を主成分とする導電体により構成されている。第2発熱抵抗体R2は、第2環状区域S21〜S24のそれぞれに配置されている第2発熱抵抗要素R21〜R24及びこれらを接続する第2接続要素C21〜C23により構成されている。第2発熱抵抗要素R21〜R23のそれぞれは、相互に離間している一対の略半円弧状の発熱抵抗要素により構成されている。最も外側の第2発熱抵抗要素R24は単一の略円環状の発熱抵抗要素により構成されている。
【0046】
第2発熱抵抗要素R1j(j=1,2)を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれは、一対の第2接続要素C2jのそれぞれを介して、径方向外側に離間して隣り合う第2発熱抵抗要素R2j+1を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれに対して接続される。
【0047】
第2発熱抵抗要素R23を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれは、一対の第2接続要素C23のそれぞれを介して、径方向外側に離間して隣り合う最も外側の第2発熱抵抗要素R24を構成する単一の発熱抵抗要素に対して接続される。最も外側の第2発熱抵抗要素R24は、一対の第2端子T2の間で、正確にはその内側の第2発熱抵抗要素R23を構成する一対の発熱抵抗要素のそれぞれの間で、並列接続されている一対の発熱抵抗要素を構成する。
【0048】
対をなす第2接続要素C21〜C23のそれぞれは位相が約πだけずれて配置されている。第2接続要素C21〜C23のそれぞれは、第1接続要素C11〜C14のそれぞれと位相が約π/4だけずれて配置されている。第2接続要素C21〜C23のそれぞれは、少なくとも一部が第2発熱抵抗要素R21〜R24のそれぞれの幅δ21〜δ24よりも幅広(例えば3δ24以上)の形状とされている。
【0049】
第1発熱抵抗要素R11〜R15のそれぞれは、径方向外側に基準点から中心点から離れている第1環状区域に配置されているほどワット密度が高くなるように構成されている。具体的には、第1発熱抵抗要素R11〜R15のそれぞれの線幅δ11〜δ15の間には不等式(03)で表わされる関係がある。
【0050】
0.5δ15<δ14<δ13<δ12<δ11 ‥(03)。
【0051】
不等式(03)においてδ15にのみ「0.5」が掛けられているのは、前記のように最も外側の第1発熱抵抗要素R15は、一対の第1接続要素C14の間で並列接続されている一対の発熱抵抗要素を構成するためである。
【0052】
第2発熱抵抗要素R21〜R24のそれぞれは、径方向外側に基準点から中心点から離れている第2環状区域に配置されているほどワット密度が低くなるように構成されている。具体的には、第2発熱抵抗要素R21〜R24のそれぞれの線幅δ21〜δ24の間には不等式(04)で表わされる関係がある。
【0053】
δ21<δ22<δ23<0.5δ24 ‥(04)。
【0054】
不等式(04)においてδ24にのみ「0.5」が掛けられているのは、前記のように最も外側の第2発熱抵抗要素R24は、一対の第2接続要素C23の間で並列接続されている一対の発熱抵抗要素を構成するためである。
【0055】
(製造方法その1)
高純度の窒化アルミニウム粉末に対して5重量%の酸化イットリウム粉末が添加された原料粉末が、溶媒(IPA)とともにボールミルにより混合された上で乾燥された結果得られた粉末が原料粉末として準備された。所定形状のMo箔(例えば厚さ0.1[mm])が第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれとして準備された。
【0056】
原料粉末が、カーボン製のモールドに形成されている円柱状のモールド空間に投入された上で押圧され、これにより得られた成形体の上に第2発熱抵抗体R2が同心に(中心が一致するように)に設置された。さらに、原料粉末がモールド空間に所定量だけ投入された上で押圧された。さらに、原料粉末がモールド空間に投入された上で押圧され、これにより得られた成形体の上に第1発熱抵抗体R1が同心に設置された。その上から原料粉末がモールド空間にさらに投入された上で押圧された。これにより、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2が埋設されている成形体が得られた。
【0057】
原料粉末のモールド空間に対する投入量は、当該成形体の焼結により得られるセラミックスヒータにおける第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれの埋設位置に応じて適当に調節される(図1及び図2参照)。
【0058】
その上で、当該成形体がホットプレス焼結法によって焼結された。すなわち、モールド空間の軸方向について所定の圧力下で、窒素等の非酸化性雰囲気下で高温に維持された。このようにして得られた焼結体が研削加工によって整形されることによりセラミックスヒータが製造された。
【0059】
(製造方法その2)
第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2並びにこれらを間に挟む3つの原料粉末の成形体が重ね合わせられた状態で、まとめてホットプレス焼結されることによりヒータ付き静電チャックが製造されてもよい。
【0060】
高純度の窒化アルミニウム粉末に対して5重量%の酸化イットリウム粉末が添加された原料粉末が、バインダー、分散剤及び溶媒(IPA)とともにボールミルにより混合されてスラリーが調製され、このスラリーからスプレードライ法によって得られた顆粒が原料粉末として準備された。
【0061】
原料粉末がCIP成形された上で研削加工されることにより、径Rが同一の3つの略円盤状の成形体が作製された、当該成形体のそれぞれが脱脂された。静電チャック電極及び発熱抵抗体のそれぞれとしてMo箔(例えば厚さ0.1[mm])が準備された。
【0062】
その上で、カーボン製のモールドに形成されている円柱状のモールド空間に、成形体、第1発熱抵抗体R1、成形体、第2発熱抵抗体R2及び成形体が、下から順に積み重ねられるように同心に設置される。成形体は鋳込み成形によって作製されてもよい。
【0063】
そして、当該同心に積み重ねられた成形体等がホットプレス焼結法によって焼結された。このようにして得られた焼結体が研削加工によって整形されることによりセラミックスヒータが製造された。
【0064】
得られたセラミックスヒータの載置面11の法線方向について基体10のサイズtは20[mm]とし、第1発熱抵抗体R1と載置面11との距離は8[mm]、第2発熱抵抗体R2と載置面11との距離は16[mm]とした。
【0065】
(機能)
図4(a)には、第1発熱抵抗体R1に対する電力W1及び第2発熱抵抗体R2に対する供給電力W2が同じである場合に、基体10の径方向について形成される温度分布が実線で示されている。第1発熱抵抗体R1により形成される温度勾配が一点鎖線で示され、第2発熱抵抗体R2により形成される温度勾配が二点鎖線で示されている。図4(b)には、第1発熱抵抗体R1に対する電力W1が第2発熱抵抗体R2に対する供給電力W2よりも高く制御された場合に基体10の径方向について形成される温度分布が実線で示されている。図4(c)には、第1発熱抵抗体R1に対する電力W1が第2発熱抵抗体R2に対する供給電力W2よりも低く制御された場合に基体10の径方向について形成される温度分布が実線で示されている。
【0066】
図4(a)から、載置面11の第2発熱抵抗体R2の存在範囲(指定区域)を含む区域において、径方向(指定方向)について各発熱抵抗体により形成される温度勾配同程度に制御されることにより、平坦又は均等な温度分布が形成されることがわかる。また、図4(b)及び(c)から、一方の発熱抵抗体により形成される温度勾配が他方の発熱抵抗体により形成される温度勾配より急になるように制御されることにより、当該一方の発熱抵抗体により形成される温度勾配が強く反映された温度分布が形成されることがわかる。
【0067】
このように、各発熱抵抗体により形成される指定方向に勾配を有する温度分布が組み合わせられた結果としての温度分布がさまざまな形態に制御されることにより、載置面11の温度分布の制御精度の向上が図られる。
【0068】
(第2実施形態)
(構成)
本発明の第2実施形態としてのセラミックスヒータは、本発明の第1実施形態としてのセラミックスヒータとほぼ同様の製造方法により得られ、構成もほぼ同様であるため、共通する構成については説明を省略する。本発明の第2実施形態としてのセラミックスヒータにおいては、図5に示されているように基体10と支持体20との接合区域S0において、最も内側の第1発熱抵抗要素R11及び第2発熱抵抗要素R21が重なるように配置されている。すなわち、当該接合区域S0における第1発熱抵抗体R1と第2発熱抵抗体R2との重なり度が、それとは別の区域におけるそれよりも高くなるように、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2が配置されている。
【0069】
(機能)
当該構成のセラミックスヒータによれば、基体10から支持体20に熱が伝わることによる、両者の接合区域S0の温度低下が抑制されうる。このように、載置面11の温度分布に対する基体から支持体への熱伝達の影響が軽減されることにより、当該温度分布制御のさらなる精度向上が図られる。
【0070】
(他の実施形態)
基体10、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2等のそれぞれの形状及び配置態様はさまざまに変更されてもよい。例えば、最も外側の第1発熱抵抗要素R15図1参照)が、一対の第1端子T1間で他の発熱抵抗要素と直列接続されている単一の円弧状(半円弧状)の発熱抵抗要素により構成されていてもよい。これに代えて又は加えて、最も外側の第2発熱抵抗要素R24が、一対の第2端子T2間で他の発熱抵抗要素と直列接続されている単一の円弧状(半円弧状)の発熱抵抗要素により構成されていてもよい。
【0071】
また、図6に示されているように基体10が略矩形板状に形成され、これに合わせて第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれの形状及び配置態様が設計されてもよい。説明のため、基体10の直交する2辺のそれぞれに平行にx軸及びy軸が定義される。
【0072】
図6(a)に示されているセラミックスヒータにおいて、第1発熱抵抗体R1(実線参照)及び第2発熱抵抗体R2(破線参照)のそれぞれは、+x方向(図中右方向)に延びた後、+y方向(図中上方向)にずれた箇所に折り返して−x方向に延びるという蛇行パターンが繰り返されたような形状とされている。第1発熱抵抗体R1のうちx軸に水平に延びる6つの線状又は帯状部分のそれぞれが第1発熱抵抗要素を構成する。第2発熱抵抗体R2のうちx軸に水平に延びる6つの線状又は帯状部分のそれぞれが第2発熱抵抗要素を構成する。
【0073】
図6(b)に示されているセラミックスヒータにおいて、第1発熱抵抗体R1(実線参照)及び第2発熱抵抗体R2(破線参照)のそれぞれは、ジグザグ状に折り返しが繰り返されたような形状とされている。第1発熱抵抗体R1のうち5つの線状又は帯状部分のそれぞれが第1発熱抵抗要素を構成する。第2発熱抵抗体R2のうち5つの線状又は帯状部分のそれぞれが第2発熱抵抗要素を構成する。
【0074】
図6(a)(b)のいずれにおいても、第1発熱抵抗要素が配置されている第1区域同士の間隙に、第2発熱抵抗要素が配置されている第2区域が重なるように配置されている。第1発熱抵抗要素はその位置を表わすy座標値が大きいほど(図中上方にあるほど)ワット密度が高くなるように構成されている。その一方、第2発熱抵抗要素はその位置を表わすy座標値が大きいほどワット密度が低くなるように構成されている。
【0075】
当該構成のセラミックスヒータによれば、第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体のそれぞれの電力の組み合わせが制御されることにより、指定方向としての+y方向について載置面の温度分布が所望の形態に高精度で制御されうる(図4(a)〜(c)参照)。
【0076】
厚さtの基体10における第1発熱抵抗体R1の載置面11からの間隔β1t(0<β1<1)と、第2発熱抵抗体R2の載置面11からの間隔β2t(0<β2≠β1<1)とが変更されることにより、指定方向について載置面11の温度分布が制御されてもよい。
【0077】
例えば、当該間隔β1t及びβ2tがともに比較的短く調節されることにより(例えば0.15≦β1<β2≦0.40)、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれの指定方向についてのワット密度分布曲線の形状を、載置面11における指定方向についての温度分布曲線の形状に比較的明確に反映させることができる(図4(a)の一点鎖線及び二点鎖線参照)。
【0078】
その一方、当該間隔β1t及びβ2tがともに比較的長く調節されることにより(例えば0.40≦β1<β2≦0.85)、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれの指定方向についてのワット密度分布曲線の形状を、載置面11における指定方向についての温度分布曲線の形状に比較的ぼやかして反映させることができる(図4(b)の二点鎖線及び図4(c)の一点鎖線参照)。
【0079】
(実験結果)
実施例1のセラミックスヒータとして、図7(a)に示されているように略円盤状の基体10において定義されている円形状の中央領域A1並びにこれを重畳的に囲む径方向に相互に離間している4つの円環状の領域A2〜A5のうち、領域A1、A3及びA5のそれぞれに単一の第1発熱抵抗体R1を構成する一又は複数の第1発熱抵抗要素が配置されている一方、領域A2及びA4のそれぞれに単一の第2発熱抵抗体R2を構成する一又は複数の第2発熱抵抗要素が配置されている構成が採用された。
【0080】
実施例2のセラミックスヒータとして、図7(b)に示されているように基体10において定義されている円形状の中央領域A1並びにこれを重畳的に囲む径方向に相互に離間している2つの円環状の領域A2及びA3のうち、領域A1及びA3のそれぞれに単一の第1発熱抵抗体R1を構成する一又は複数の第1発熱抵抗要素が配置されている一方、領域A2に単一の第2発熱抵抗体R2を構成する一又は複数の第2発熱抵抗要素が配置されている構成が採用された。
【0081】
比較例のセラミックスヒータとして、図7(c)に示されているように基体10において定義されている円形状の中央領域A1及びこれを囲む円環状の領域A2のうち、領域A1に単一の第1発熱抵抗体R1を構成する一又は複数の第1発熱抵抗要素が配置されている一方、領域A2に単一の第2発熱抵抗体R2を構成する一又は複数の第2発熱抵抗要素が配置されている構成が採用された。比較例のセラミックスヒータにおいては、実施例1及び2のセラミックスヒータと異なり、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれの存在範囲が重なっていない。
【0082】
図8には、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2に対する供給電力が異なるそれぞれの場合における、実施例1、実施例2及び比較例のそれぞれの径方向についての載置面の温度分布の測定結果が、一点鎖線、二点鎖線及び破線のそれぞれにより示されている。図8(a)には、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれに対する供給電力が2200[W]に制御された場合の測定結果が示されている。図8(b)には、第1発熱抵抗体R1及び第2発熱抵抗体R2のそれぞれに対する供給電力が1350[W]に制御された場合の測定結果が示されている。
【0083】
各発熱抵抗体に対する供給電力が2200[W]に制御された場合、載置面の最高温度及び最低温度の差は、比較例では9.8[℃]であるのに対して、実施例1では2.5[℃]、実施例2では6.4[℃]とこれよりも小さかった(図8(a)参照)。各発熱抵抗体に対する供給電力が1350[W]に制御された場合、載置面の最高温度及び最低温度の差は、比較例では4.9[℃]であるのに対して、実施例1では0.9[℃]、実施例2では3.5[℃]とこれよりも小さかった(図8(b)参照)。
【符号の説明】
【0084】
10‥基体、20‥支持体、R1‥第1発熱抵抗体、R2‥第2発熱抵抗体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8