(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細管の先端はカバーの開口の位置よりも奥側に退避した位置にあり、かつ、カバーの中間側から開口にかけた断面径がしだいに小さくなるようにカバーの先端側から開口にかけた断面形状が円弧状となるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のオゾン発生噴射装置。
冷却ジャケット部は、放電管の外周に長手方向の一部又は全部にわたって螺旋状に複数巻きで巻回された水冷パイプからなり、水冷パイプの一端がミストノズル部に接続されていることを特徴とする請求項6記載のオゾン発生噴射装置。
【背景技術】
【0002】
安全・安心な食糧生産を目指して、農薬による農産物汚染や環境汚染を生じない病害虫の殺菌・殺虫法が求められている。オゾンは強力な酸化作用、殺菌・殺虫効果を有しており、短時間で消滅し、また、オゾン処理された農産物に毒性が残らない点で、農産物についての病害虫の殺菌・殺虫用途での利用が期待されている。
【0003】
オゾン(O
3)は、強力な酸化作用により、殺菌、脱臭、漂白などの効果があるために、オゾン気体やオゾン水単独で、または、液体と混合したオゾン霧(オゾンミスト)の形態で消毒、脱臭、脱色、半導体洗浄などに利用されている。気体状態のオゾンは、空気中に放出されると水分や有機物(埃など)と反応して速やかに消滅して、他の物質に変化する。オゾンは水(H
2O)と反応すると、多くのオゾン派生生成物(OHラジカル、酸素原子ラジカル、HO
2ラジカルなど)が新しく生まれ、オゾンの殺菌力を飛躍的に高める。特に、OHラジカルやOラジカルの殺菌力は非常に高く、フッ素(F)に次ぐ殺菌効果を有する。しかし、これらの殺菌力の強いラジカル種は、周囲物質と反応して、短時間で活性力を失い消滅する。OHラジカルは、数マイクロ秒で消滅すると言われている。一般に、高濃度のオゾン気体は、電気放電により酸素ガスから生成される。このオゾン気体と水との反応で生成されるオゾン派生生成物を、高殺菌力を保持したまま瞬時に対象に噴霧できる装置開発が無農薬有機栽培を目的として農産物生産を進める上での緊急課題である。
【0004】
オゾンを水と混合して得られるオゾン水を農産物に噴霧する方法があるが、水へのオゾンの溶解度に限界(3%オゾンガスで12ppm程度)があるために長時間の噴霧が求められる上に消毒効果は低く、また、設備が大掛かりになるために消毒経費が高くなり、農業への普及は限定的である。すなわち、現在農業に用いられているオゾン消毒装置は、いずれも大規模農業での利用を目的としており、主にオゾン水を農作物に噴霧、あるいは、オゾン水を直接土壌中に注入する方式であって、大掛かりな設備で高コストであり、据え置き式であるために消毒農地に制限がある。また広い設置スペースを必要とし、さらに、例えばオゾナイザで生成されたオゾンは1個または複数の貯留チャンバ並びに分岐管を経由して後に最終的に噴霧ノズルから噴出するようになっているので、噴出口部分では低いオゾン濃度のオゾン水しか噴出されず、望ましい殺菌、殺虫機能を得ることができなかった。
【0005】
屋外で栽培されている農産物をオゾンで殺菌・殺虫するには、高濃度のオゾンを短時間内に散布して、作業能率を高めることが求められており、また、同時に作業者への健康被害を抑制するために、作業環境のオゾン濃度を基準値(0.1ppm)以下に維持する必要がある。
【0006】
また、小規模農業、ハウス栽培、山岳地などでは、農薬を使わない有機農業がおこなわれているが、消毒には植物由来の薬剤による生物的防除(除虫菊乳化剤など)などが主で殺菌殺虫効果は限定的である。このような状況のもとで、耕作地の地勢、消毒の費用の低減、作業者の労働低減などを考慮した、小型で操作容易なオゾン殺菌装置の開発が国内外で望まれるようになった。
従来、オゾンによる消毒装置として特許文献1,2の装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、オゾン含有気体と、水などの液体の2流体を噴霧ノズルから同時に噴霧して殺菌力を向上させようとするオゾン殺菌装置が開示されている。特許文献1の装置では、オゾン発生器2(以下、この段落番号0008において、特許文献1中の番号を参照する。)において生成したオゾン含有気体はその供給管を介して噴霧ノズル3に供給されるからオゾン生成後、ノズル先端までパイプで輸送される間にオゾン解離、酸素分子との再結合や不純物との反応により濃度が急激に低下して、ノズル先端では例えば約50%程度となり、噴霧ノズルまでの間にオゾン濃度が低下し、その結果殺菌効果は低減して消毒機能は限定的あるいは十分な消毒機能を保持することができなかった。一方、文献1の装置では、オゾンガスがノズル本体3aの導通路を通って圧送されその突出端部から、噴出の際の負圧力で液体を吸引して気液混合しつつノズルキャップ3bの噴出口36から噴出させるようにしているので、気流エネルギーで液体を汲み上げるから、オゾン気体を高圧で圧送しなければ下部からの液体のエゼクタ効果による吸引ができない。このため、噴出口からの流体は高速でジェット流として遠方に運ばれて拡散するために、高濃度のオゾンガスやオゾンミストを短時間の間に局所的に集中噴射することができず、殺菌効果は低減し、屋外での農作物に付着した害虫、バクテリアやウイルスを有効に殺菌、消毒することができなかった。さらに、特許文献1の装置では、オゾン含有気体の流体エネルギで容器から水等の液体を吸引して噴霧させるから、液体容器と噴霧ノズルを近接位置に設置する必要があり、噴霧ノズル部分が重量化してノズル噴射口を害虫が付着している植物の葉の害虫に向けて至近距離でオゾンガスを噴射させるような微妙な操作が行えない。さらに、オゾン発生器2の発熱の冷却用に電極部分に冷却フィンを取り付け、さらに冷却ファンを必要として装置が重量化しかつコスト高となる欠点があった。
【0009】
また、特許文献2は、二流体ノズルで生成した霧に、該二流体ノズルの霧出口にオゾンガスを供給することでオゾンを溶解させたうえで、霧に溶解しない残存オゾンを含む空気でオゾン霧を噴出させて、殺菌・脱臭対象面や空間に噴霧するオゾン脱臭装置を示している。この装置では、圧縮空気で水タンクの水を吸引して、霧を噴出するために、大流量の空気(34liter/min)を必要とし、そのために二流体ノズルから噴出するオゾンの濃度が大幅に低下し、また、遠方に運ばれて拡散するために、殺菌効果が低減する問題があった。
【0010】
さらに、特許文献3では、オゾン霧噴射用の主噴射口6(以下、この段落番号0010において、特許文献3中の番号を参照する。)の外側に水ミスト噴射用の補助噴射口7を設けて、気液混合部5でオゾンミストに吸収されなかった残留オゾンを霧化する方法が開示されている。この特許文献3の方法では、液体注入口4から高圧の液体を供給するために気体混合部5から気体流路2へ液体が逆流するおそれがあり、このため、オゾン発生器を損壊させ絶縁破壊を生じて、機器を故障させるばかりでなく、溶存オゾン濃度が低く(1ppm)なり、殺菌効果を低下させる問題があった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、オゾン発生器に噴霧ノズルを直結させノズル部の細管から高濃度のオゾンガスを噴霧しオゾンによる消毒、消臭、殺菌作用を生じさせるオゾン発生噴射装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は軽量、小型にして低価格で良好な操作性を可能とするオゾン発生噴射装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、消毒対象物に応じてノズル部の細管の噴射や液体の噴霧態様を変化させて対象物に適した噴霧作業を行うことのできるオゾン発生噴射装置を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、オゾン発生噴射装置を含み、小型、軽量化による背負い形のオゾン消毒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、酸素又は酸素を含む気体を一端側5aから導入させつつ電極7、10間に高電圧を印加してオゾンを発生させる放電管2と、放電管の他端側5bに直結され放電管で発生したオゾンが通過する1個又は複数の通過路24を有する接続部材3と、接続部材3の通過路24に連通して接続部材に取り付けられオゾンの流れ方向に突設する1個又は複数の細管32を含むノズル部4と、を含
み、ノズル部4の細管32を内側に包むように設けられ細管の流路径に比較して大きな大開口を有するカバー34が設けられているオゾン発生噴射装置1から構成される。
【0013】
また、細管32にはその長さが伸縮可能とされる伸縮細管40を含むとよい。
【0014】
さらに、カバー34の開口34aの位置よりも先端が突出した細管48が少なくとも1つ設けられているとよい。
【0015】
さらに、細管32の先端はカバー34の開口34aの位置よりも奥側に退避した位置にあり、かつ、カバー34の中間側から開口34aにかけた断面径がしだいに小さくなるようにカバーの先端側から開口にかけた断面形状が円弧状となるように形成されているとよい。
【0016】
また、カバー34内での1個又は複数の細管32の中途又は先端が複数又に分岐されてオゾンの到達距離抑制を行う到達距離抑制機構36が設けられているとよい。
【0017】
また、放電管2の外周に直接又は間接に接して圧送冷却液を保持する冷却ジャケット部50と、冷却ジャケット部50に直結したミストノズル部であり、細管32の外周近傍に配置され冷却ジャケット部50からの冷却液をミスト状に噴霧するミストノズル部52と、を有するとよい。
【0018】
また、冷却ジャケット部50は、放電管2の外周に長手方向の一部又は全部にわたって螺旋状に複数巻きで巻回された冷却用パイプ58からなり、冷却用パイプ58の一端がミストノズル部52に接続されているとよい。
【0019】
また、接続部材3は放電管2の他端側5bに着脱自在に連結されるとよい。
【0020】
また、本発明は、請求項
6又は7記載のオゾン発生噴射装置1と、少なくとも電源部102と、冷却ジャケット部50に冷却液を供給する冷却液タンク112と、冷却液の圧送駆動装置100と、これら電源部102と、冷却液タンク112と、冷却液の圧送駆動装置100と、を搭載する1つの背負い架台114と、を含むことを特徴とする背負い形オゾン消毒装置90から構成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明のオゾン発生噴射装置によれば、酸素又は酸素を含む気体を一端側から導入させつつ電極間に高電圧を印加してオゾンを発生させる放電管と、放電管の他端側に直結され放電管で発生したオゾンが通過する1個又は複数の通過路を有する接続部材と、接続部材の通過路に連通して接続部材に取り付けられオゾンの流れ方向に突設する1個又は複数の細管を含むノズル部と、を含む構成であるから、放電管で生成され発生したオゾン(O
3)は途中の配管等で濃度低下されることなく、ほぼそのまま各細管出口から被消毒体に向けて噴射される結果、高濃度のオゾンガスを確実に噴射することができる。また、オゾン発生器とノズルを具体的に一体型で構成するからこれらを別体で構成してオゾン発生器で生成したオゾンの圧送ポンプ、供給管、貯留器などを必要とせず、装置全体の小型、軽量化、並びに低コスト化に資する。また、1個又は複数の細管からオゾンを噴射するから指向性の良いガスの流れで確実に被消毒体に噴射させることができる。
【0022】
また、接続部材は放電管の他端側に着脱自在に連結される構成とすることにより、長さ、径、伸縮構成等の複数種類の細管をそれぞれ取り付けた接続部材を用意しておくことにより、被消毒体や作業環境に応じて最適のオゾンを用いた消毒作業を行うことが可能である上に、農業消毒作業の開始、終了の迅速性を保持し得る。
【0023】
また、ノズル部の細管を内側に包むように設けられ細管の流路径に比較して大きな大開口を有するカバーが設けられた構成とすることにより、オゾンガスを作業者が直接に吸入しないようにできるとともに、オゾンの噴射後の水ミストとの適当な混合状態を形成し得る。
【0024】
また、細管にはその長さが伸縮可能とされる伸縮細管を含む構成であるから、具体的な被消毒体のオゾン噴射の必要な奥まった箇所などに噴射する場合、伸長させた状態で行なうことにより具体的な消毒箇所を確実にオゾン噴射して消毒させることができる。また、噴射方向についての複数段の到達距離のオゾンガス流により遠近方向に長い被消毒体に対しても有効に消毒効果を奏し得る。
【0025】
また、カバーの開口の位置よりも先端が突出した細管が少なくとも1つ設けられている構成とすることにより、細管から噴射されるオゾンガスの到達距離が異なるオゾンガス流を有するから、噴射方向についての複数段の到達距離のオゾンガス流により遠近方向に長い被消毒体に対しても有効に消毒効果を奏し得る。
【0026】
また、細管の先端はカバーの開口の位置よりも奥側に退避した位置にあり、かつ、カバーの中間側から開口にかけた断面径がしだいに小さくなるようにカバーの先端側から開口にかけた断面形状が円弧状となるように形成された構成とすることにより、カバーの内壁に沿って開口側に誘引される流れが形成され、この流れが細管出口からの噴射流を抑制するように作用し、弱められた流れがカバーの開口から周囲に緩やかに拡散するように放出されて、ジェット気流噴射によりオゾンガスによる殺菌作用が短時間で限定的にならないように十分に被消毒体へオゾンガスを噴射して機能を実効させることができる。
【0027】
さらに、カバー内での1個又は複数の細管の中途又は先端が複数又に分岐されてオゾンの到達距離抑制を行う到達距離抑制機構が設けられている構成であるから、分岐管から出たオゾンはカバーの内壁に直交方向に当たり、壁面に当たって反転流となり全体が乱流化する結果、それらが出口部分に流れてその直進流を妨げ抵抗となって放出後の到達距離を抑制する。これによって、オゾンガスはジェット気流でなく緩やかに広がる拡散流となり、十分なオゾンガスを局部的かつ集中的に被消毒体に対して噴射させることができる。
【0028】
また、放電管の外周に直接又は間接に接して圧送冷却液を保持する冷却ジャケット部と、冷却ジャケット部に直結したミストノズル部であり、細管の外周近傍に配置され冷却ジャケット部からの冷却液をミスト状に噴霧するミストノズル部と、を有する構成であるから、放電管の冷却水をそのままオゾンの反応用水として兼用して用いることができ、例えば冷却水とミスト水の供給源や駆動用のポンプを1つにして装置全体を小型、軽量化し得ると共に、供給配管の簡素化により低コスト化を達成し得る。
【0029】
また、冷却ジャケット部は、放電管の外周に長手方向の一部又は全部にわたって螺旋状に複数巻きで巻回された水冷パイプからなり、水冷パイプの一端がミストノズル部に接続されている構成とすることにより、放電管の冷却水をそのままオゾンの反応用水として兼用して用いる構成を放電管外周に螺旋巻回させた冷却用パイプをノズル部のミストノズルに連通させることで、具体的に実現し得る。
【0030】
また、本発明の背負い形オゾン消毒装置によれば、請求項
6又は7記載のオゾン発生噴射装置と、少なくとも電源部と、冷却ジャケット部に冷却液を供給する冷却液タンクと、冷却液の圧送駆動装置と、これら電源部と、冷却液タンクと、冷却液の圧送駆動装置と、を搭載する1つの背負い架台と、を含む構成であるから、一人の作業者でオゾン発生噴射装置の筐体を把持し、構成機器を一塊の集合体として配置させた背負い架台を背中に背負った状態で移動しながら噴霧操作できる結果、例えば野菜の葉と葉の間や向きなど、固定式の消毒装置では困難な個別、具体的な消毒作業をきめ細かな操作で、かつ一人の作業者の作業により実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下添付図面を参照しつつ本発明の実施形態に係るオゾン発生噴射装置並びに背負い形オゾン消毒装置について説明するが、本発明は以下の実施形態の構成にのみ限定されるものではない。まず、オゾン発生噴射装置の構成について説明する。なお、オゾン噴射することにより消毒、害虫駆除、消臭機能を同時に行なうことができるから、以下、「消毒」という際には、それらのすべての意味を含むものとする。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るオゾン発生噴射装置の縦断面構成説明図であり、図において、オゾン発生噴射装置1は、放電管2と、接続部材3と、ノズル部4と、を含む。放電管2は、酸素又は酸素を含む気体を一端側から導入させつつ電極間に高電圧を印加してオゾンを発生させる放電手段であり、いわゆる無声放電によりオゾンを発生させるオゾナイザあるはオゾン発生器と同様の構成である。
【0034】
実施形態において、両端を開口した中空円筒管からなる管本体5が設けられ、管本体内において該管本体5の内壁との間に例えば1mm(ミリメートル)前後の空隙6を設けて一端側から高電圧電極7が挿入されている。管本体5は、沿面放電を発生させる誘電体であり、かつオゾン生成の原料気体となる酸素の導入、発生容器であって、本実施形態においては、アルミナ(Al
2O
3)誘電体パイプが用いられている。管本体5の空隙6に酸素又は酸素を含むオゾン原料気体が導入されて放電しオゾンを生成させる。管本体5はその他、ガラス管、プラスチックその他の誘電体材料により筒管成形可能な材料を用いることができる。
【0035】
実施形態において、放電管2は、管本体5と管本体を介して交流高電圧が印加される高圧側と低圧側の電極(7,10)と、を含む。電極間に印加された交流高電圧により誘電体表面に放電を生起させて、供給される酸素の解離、衝突による反応でオゾンを発生させる。実施形態による沿面放電方式の放電管としては、放電管に対する電極の取り付け態様が異なるものが種々考えられるが本願のオゾン発生噴射装置の具体的適用において機能するものであれば、いずれの態様の放電管構成を用いてもよい。例えば、誘電体を交流高電圧電極側のみに配置したり、あるいは、高電圧電極と接地電極の両方の電極に誘電体を挿入するものや、接地電極を誘電体内に埋め込ませたもの(
図9参照)や、誘電体表面に線状電極を多数設置固定したものなどがある。高電圧電極7は、本実施形態において例えばステンレス製の螺子棒材が用いられており、管本体5の一端側を封止する継手部材8に螺合貫通して一端を外部に突出させた状態で支持されて、他端側を管本体5内に挿入配置されている。なお、このほか、金属棒あるいは中空のパイプなどを用いることもできる。この高電圧電極7の管本体5内に挿入された部分の外周と、管本体5の内壁と、の間に図示しない支持手段により支持されて放電ギャップとしての空隙6が形成されている。高電圧電極7は、管本体5内に配置した高圧側の内部電極であり、実施形態において、外表面をたとえば鋭い山と谷の凹凸を有する螺子形状としている。これにより、低い電圧で放電開始し、かつ放電を維持することができる。管本体5の外周には接地電極10が密着して被着されている。接地電極は、導電性金属からなり本実施形態では銅箔が被着されて形成されている。高電圧電極7と接地電極10間に高周波数の交流高電圧(例えば10−15kHz,4−10kV)が印加され、管本体の空隙6に酸素あるいは酸素を含む気体を導入させることにより、中間の管本体としての誘電体表面に沿面放電を生じさせる。高周波高電圧は商用電源を昇圧して供給することもできるが、例えば小型、軽量部材の半導体素子を用いた図示しないインバータを介して供給することにより、このオゾン発生噴射装置1を用いた消毒、消臭、殺菌装置全体をコンパクト化して装置全体の可搬性に資する。
【0036】
管本体5の一端側5aに嵌着した継手部材8には、ギャップである空隙6に連通する通路12が設けられており、通路12には連結ポート14を介して図示しない気体配管、酸素ボンベを含む酸素発生装置106が接続されて酸素又は酸素を含む気体が供給される。
【0037】
管本体5の他端は、開放されており、挿入された高電圧電極7の先端と管本体5の先端との間には空間20が設けられている。
【0038】
接続部材3は、放電管2の他端側に直結され放電管で発生したオゾンを通過させ、オゾンを外気に放出させるノズル部4に連結させる接続手段であり、特に、接続部材3は放電管2に直結接続されて放電管2内で生成したオゾンを途中で配管や貯留器などを経由することなく直接にノズル部4に接続させる。実施形態において、接続部材3は、管本体5の他端部5bと連結する連結部22を有すると共に、ノズル部4側にオゾンを通過させる1個又は複数の通過路24を備えている。接続部材3は具体的にはテフロン(登録商標)素材やセラミックスの円筒体で構成されており、管本体の一端側を着脱自在に受け入れる嵌合穴26を有した連結部22構成を有している。そして、嵌合穴26の入り口側に配置された保持部28により保持されたOリング30により、接続部材3と管本体5との内部を気密状態で連結している。管本体5が突入された接続部材3の対向肉厚部分に嵌合穴26の底部に連通して1個又は複数の通過路24がオゾンの流れ方向に沿って形成されており、放電管2で生成されたオゾンが空間20、通過路24を経由してノズル部4に供給される。
【0039】
実施形態において、接続部材3は放電管2の他端側5bに嵌着離脱自在に連結されており、被消毒体の細管の数、配置部の態様の相違に応じてノズル部4を容易に交換可能としている。
【0040】
図1において、ノズル部4は、接続部材3の通過路24に連通するように接続部材3に取り付けられてオゾンの流れ方向Fに突設する1個又は複数の細管32を含む。実施形態において細管32は、一端側基部が接続部材3の通過路出口24a部分に連結されている。これによって、接続部材3と細管32が一体化されている。このため、ノズル部4は接続部材と一体として交換可能となっている。なお、接続部材3と各細管とは着脱できるようにすることもできる。各細管32は例えば1mm前後〜数ミリメートル直径で長さが3cm(センチメートル)程度の耐オゾン性金属あるいは合成樹脂パイプ(例えばステンレスあるいはテフロン(登録商標)素材パイプ)で構成されており、一端が接続部材3の通過路24出口24aに連通している。細管32は、接続部材3の通過路出口24aからオゾンの流れ方向に長く伸長して突出形成されており、細管構成によりそれぞれ設定された方向に向けた指向性と噴射力を有するようになっている。細管32の先端出口32aからは何らの別機体等による噴出口など気流変動を生じさせるものが設けられておらず、先端出口32aからいきなり大気に開放される。また、各細管から噴出されるオゾンガスは、ほとんど大気と同じ程度の低圧力(例えば、1L/分)で噴出されるようになっている。例えば、先端出口32aに手を当ててもほとんど風圧を感じない程度となっている。したがって、高濃度のオゾンガスを細管から安定して噴射させることができる。細管32は接続部材3に一体的に突設形成されていても、あるいは1本ずつ取り付け接続されていても、さらには1本ずつ着脱可能な構成としてもよい。さらに、本実施形態において、細管32は、人の指などの操作で曲げることができ、曲げ終わった状態で形状を保持し得る程度の可撓性を有している。これによって、各細管の噴射方向を個別に設定したり、噴射速度や時間あたりの噴射量を制御することができる。また、細管32は例えば放電管2の直径の前後程度の直径の円内にそれらの出口が配置されるように、ある程度まとまった面積内に配置されるように収束して配置されている。細管の数は1本でもよいが、オゾンの機能を効果的に発揮させるためには2本以上〜数十本、特には3〜10本程度が好ましい。本実施形態において、細管32は中心部とその周囲90度離隔位置に計5個設けられている(
図1b参照)。これによって、放電管2で生成され発生したオゾン(O
3)は途中の配管等で濃度低下されることなく、ほぼそのまま各細管出口32aから被消毒体に向けて噴射され、高濃度のオゾンガスを確実に噴射することができる。実施形態において、酸素発生装置からの送圧力でオゾンガスは各細管32から噴射されるもので、噴射圧力は低圧力のガスとして噴射される。また、接続部材3の壁面から突設し先端が大気に開放する細管構成であるから、オゾン発生器側への逆流を生じさせない。細管本発明の装置は、オゾン発生器・噴射ノズル一体型の装置ということができる。
【0041】
本実施形態において、さらに、ノズル部4の細管32を内側に包むように設けられ細管の流路径に比較して大きな大開口を有するカバー34が設けられている。カバー34は細管32の外周に同心状に配置される後述するミストノズル部からの液体ミストとオゾンとが混合しないように、細管32の出口部分までの行程長さにわたってシールドするミストシールドカバーであり、高濃度のオゾンによる消毒、消臭効果を作業者が被消毒体に対するノズル部分の角度や距離等を考慮して効率的に噴射できるようにし得る。また、カバー34で内側の細管32を覆うことで細管に直結する放電管側への液体の逆流防止機能を万全にすることができる。カバー34は、接続部材3と一体で製作してもよいし、あるいは、接続部材3に対して着脱可能に取り付けるものでも良い。カバー34は、接続部材3との接続部分から一方側に延長して内側に細管32を包むように袋状に形成しており、中間部から先端部側にかけて次第に開口を小さくするように樽型あるいは紡錘形状とされている。カバーの形状は
図1のように接続部材3との接続部分である基部側から開口を有する先端側にかけて全体が円弧状に断面曲線状のカバー形状としてもよいが中途まで直筒状に形成され先端寄り位置から次第に開口を小さくするように形成したものでもよい(
図8参照)。また、中間部を波形状に形成しても良い。さらに、
図1、2において、各細管32の先端はカバー34の開口34aの位置よりも奥側に退避した位置に設定されている。これによって、オゾンガスが細管出口32aから噴射される際にカバー34の内壁に沿って開口34aに誘引される流れkが形成され、この流れが細管出口32aからの噴射流を抑制するように作用し、弱められた流れがカバーの開口34aから周囲に拡散するように放出されて、ジェット気流噴射によりオゾンガスによる殺菌作用が短時間で限定的にならないように十分に被消毒体へオゾンガスを噴射して機能を実効させることができる。また、カバー34をその中間部から先端部側にかけて次第に噴射側の開口を小さくするように樽型あるいは紡錘形状とすることで、外部から外気がカバー体内に侵入しにくくさせ、これによって、オゾン濃度低下を生じにくくする。
【0042】
図3、
図4は、ノズル部4の他の例44B、44Cを示している。
図3のノズル部44Bは、カバー34の全体形状は、
図1のものと同様に全体が円弧状に断面曲線状のカバー形状とし中央部が膨出し両端側が断面開口をしだいに小さくした樽形あるいは紡錘形状で形成されている。ノズル部44Bは、カバー34内での1個又は複数の細管の中途又は先端が複数又に分岐されてオゾンの到達距離抑制を行う到達距離抑制機構36が設けられている。
図3のノズル部44Bでは、1つの細管からさらに上下直角方向の2個の直角分岐管38a、38bと1個の直進分岐管38cの3方向に管が分岐している。2個の直角分岐管38a、38bから出たオゾンはカバー34の内壁に直交方向に当たり、壁面に当たって反転流lとなり全体が乱流q化する。したがって、この乱流qは直進分岐管38cの出口部分に流れてその直進流を妨げ抵抗となって放出後の到達距離を抑制する。したがってカバー開口34aから出るオゾンガスはジェット気流でなく緩やかに広がる拡散流となり、これによって、十分なオゾンガスを局部的かつ集中的に被消毒体に対して噴射させることができる。
図3の例では、直角分岐管38a、38bからの流れにより直進分岐管38cの噴射流の抑制を能動的に作用して行なわせる。低圧オゾンガス流とカバー34形状による緩やかな拡散流の生成は重畳的に作用する。
【0043】
さらに、
図4のノズル部44Cでは、細管32にはその長さが伸縮可能とされる伸縮細管40を含む。
図4のノズル部44Cでは、例えば、本体細管41aと本体細管41aに二重筒状に接続され、ある程度の摩擦力で摺動可能とされる摺動細管41bとで伸縮細管40が形成されている。摺動細管41bは本体細管41aから抜け出ない一定位置までは管の長手方向に伸縮摺動し任意位置で摩擦力で係止される。細管の全体長さをこれにより変化させることができる。伸縮細管40は複数の細管のうち一部のみについて構成してもよい。伸縮細管40を設けることにより、具体的な被消毒体のオゾン噴射必要な奥まった箇所などに噴射する場合、伸長させた状態で行なうことにより具体的な消毒箇所を確実にオゾン噴射して消毒させることができる。
【0044】
さらに、
図5ないし
図7は、ノズル部4の他の例46A〜46Cを示している。
図5において、ノズル部46Aは、
図1ないし
図4と同様の樽形あるいは紡錘形のカバー34内に5本の細管32がオゾンの流れ方向を長手方向として接続部材3に一端を連結されて設けられ、カバー34内に収束されている。このノズル部46Aは、カバー34の開口34aの位置から先端が突出した突出細管48aが少なくとも1つ設けられている。ノズル部46Aでは、開口34aからの突出長さの異なる少なくとも2本の突出細管48aが開口34aから先端を突出させて設けられている。また、その他の細管34は、開口34aよりも奥側に退避した位置に先端が存するように設けられている。このノズル部46Aでは、細管から噴射されるオゾンガスの到達距離が異なるオゾンガス流を有するから、噴射方向についての複数段の到達距離のオゾンガス流により遠近方向に長い被消毒体に対しても有効に消毒効果を奏し得る。
【0045】
さらに、
図6のノズル部46Bは、
図1ないし
図4と同様の樽形あるいは紡錘形のカバー34内に5本の細管32がオゾンの流れ方向を長手方向として接続部材3に一端を連結されて設けられ、このノズル部46Bの細管32にはその長さが伸縮可能とされる少なくとも1つの伸縮細管40を含む。そして、これらの伸縮細管の少なくとも1つは、カバー34の開口34aの位置から先端が突出して設けられている。本体細管41aと本体細管41aに二重筒状に接続され、ある程度の摩擦力で摺動可能とされる摺動細管41bとで伸縮細管40が形成されている。摺動細管41bは本体細管41aから抜け出ない一定位置までは管の長手方向に伸縮摺動し任意位置で摩擦力で係止される。伸縮細管40は複数の細管のうち一部のみについて構成してもよい。ノズル部46Bにおいても、細管から噴射されるオゾンガスの到達距離が異なるオゾンガス流を有するから、噴射方向についての複数段の到達距離のオゾンガス流により遠近方向に長い被消毒体に対しても有効に消毒効果を奏し得るが、特に、カバー34の開口34aの位置から先端が突出した伸縮細管40により、遠近方向について、オゾン噴射必要な奥まった箇所などに噴射する場合にさらに有効な被消毒体に対する消毒効果を奏し得る。
【0046】
さらに、
図7のノズル部46Cは、
図1ないし
図4と同様の樽形あるいは紡錘形のカバー34内に5本の細管32がオゾンの流れ方向を長手方向として接続部材3に一端を連結されて設けられ、このノズル部46Cは、カバー34の開口34aの位置から先端が突出した突出細管48aが少なくとも1つ設けられている。ノズル部44Cのカバー34の全体形状は、
図1のものと同様に全体が円弧状に断面曲線状のカバー形状とし中央部が膨出し両端側が断面開口をしだいに小さくした樽形あるいは紡錘形状で形成されている。
図7のノズル部46Cでは、カバー34内での1個又は複数の細管の中途又は先端が複数又に分岐されてオゾンの到達距離抑制を行う到達距離抑制機構36が設けられている。
図7のノズル部46Cでは、カバー34の開口34aより奥側に先端位置を有する細管49の先端からさらに上下直角方向の2個の直角分岐管49a、49bの2方向に管が分岐している。2個の直角分岐管49a、49bから出たオゾンはカバー34の内壁に直交方向に当たり、壁面に当たって反転流となり全体が乱流化する。したがって、この乱流はカバー34の開口34a側に流れて他の細管(図示せず)からの直線流の到達距離抑制機能を行うと共に、開口34aから緩やかな流れとなってカバー34の外側に流出する。このノズル部46Cにおいては、カバー開口34aから出るオゾンガスはジェット気流と緩やかに広がる拡散流を同時に噴射させることができ、これによって、遠近方向並びに3次元的な広がり方向についても十分なオゾンガスを局部的かつ集中的に被消毒体に対して噴射させることができる。
【0047】
なお、カバー34は、
図1ないし
図7のように、接続部材3との接続部分から一方側に延長して内側に細管32を包むように袋状で断面全体が円弧形状で、樽型あるいは紡錘形状とすることなく、例えば、
図8(細管は図示省略)のように、接続部材3との接続部分から一方側に延長して内側に細管32を包むように途中まで直筒状とし中間位置からしだいにその先端部開口を小さくするように形成したものでもよい。
【0048】
図1に戻って、放電管2の外周には冷却液を保持する冷却ジャケット部50が配設されており、さらに、冷却ジャケット部50の冷却液をミスト化してオゾンガスの外周部分に噴射するミストノズル部52が設けられている。冷却ジャケット部50は、放電による発熱で熱せられる放電管2を冷却する。放電管2は、外周に配置させた冷却ジャケット部50とともに円筒状の筐体54内に収容されており、この筐体54部分を作業者が把持してオゾンガスによる消毒作業を行なえる。詳しくは、円筒状の筐体54は、放電管2の管本体5の先端よりもやや長い長さで形成されており、その管本体他端部側となる先端部分に凹部56を設け、その凹部空隙に他端5bを突出するように管本体5が位置決めされて設置されている。具体的には、この凹部56内に細管32を担持する接続部材3が嵌合し、Oリング30により気密保持されて管本体5内と接続部材3の通過路24とが連通する。
【0049】
実施形態において、冷却ジャケット部50は、放電管2の外周に長手方向全長にわたり、かつ、放電管の接地電極10に当接して螺旋状に複数回に巻回された冷却用パイプ58からなり、冷却用パイプ58に接続された液体供給管、ポンプを介して水等の液体が供給され放電管2の外周を表面から冷却する。なお、冷却ジャケット部50は、実施形態のように、冷却用パイプの螺旋巻き態様に限ることなく、接地電極10に密着して上から管本体5の外周全体あるいは一部を覆うように設けられたいわゆるジャケット式の冷却構造とすることもできる。また、冷却ジャケット部50は、放電管の外周に間接的に接して圧送冷却液を保持する構成としてもよい。
【0050】
さらに、
図1実施形態において、円筒状の筐体54の管本体他端部5b側にノズル保持部66にミストノズル68を保持させたミストノズル部52が設けられている。ミストノズル部52は、冷却ジャケット部50に直結し、かつ細管32の外周近傍に配置されて冷却ジャケット部50からの冷却液をミスト状にしてオゾンガスと同じ流れ方向に向けて噴霧する液体の噴霧手段であり、実施形態では、上述のように例えば水を噴霧化して水ミストSを細管32の外周部分において噴射させる。具体的には、円筒状の筐体54の管本体他端部5b側において、冷却ジャケット部の被覆部分から拡大したノズル保持部66が設けられており、ノズル保持部66におけるオゾンガスの流れ方向端面に多数の微細孔68aの出口を露出させてミストノズル68が細管32の配置箇所の外周の外側において同心状に配置されている。実施形態において、
図1(b)に示すように、細管32を外囲するカバー34のさらに外側において相互に略90度離隔位置に4箇所のノズル要素69が配置されており、それぞれが水ミストを噴射させる。さらに、この実施形態において、ミストノズル68の配置箇所はカバー34を支持する接続部材3の外周位置にあって、オゾン流れ方向についてはカバー34より後退した位置にあるが、より前方側で例えばカバー34の外面位置に配置させてもよい。ミストノズル68は、嵌合式あるいはねじ込み式その他の方法により着脱交換可能とするとよい。この場合、ミストノズル68はノズルから噴出される液体ミストの態様を、ドーナツ状のミスト、小さな範囲に集中的に噴射する円形ミスト、小区分に分散したミスト等を生成できる複数のノズル器体を用意し、これらを選択的に用いることにより具体的な被消毒体に対応した消毒作業を行うことができる。本実施形態において、さらに有利な点は、放電管2の冷却用の冷却液を液体ミストとして用いるようにしたことであり、具体的には、本実施形態において、ノズル保持部66に冷却液の通液用のパイプ58に一端が連通接続する複数の分岐配管70が配置されており、この分岐配管70の他端側がミストノズル部52のそれぞれのノズル要素69に連通されノズル要素の微細孔68aから液体ミストが噴射される。これによって、放電管の冷却水をそのままオゾンの反応用水として兼用して用いることができ、例えば冷却水とミスト水の供給源や駆動用のポンプを1つにして装置全体を小型、軽量化し得ると共に、供給配管の簡素化により低コスト化を達成し得る。また、本実施形態では、ミストノズル68に供給される液体(水)は、低圧力水が供給されるから、細管32からオゾン発生手段側への液体逆流を生じなくさせることができる。
【0051】
なお、液体(水)ミストを生成するミストノズル68に供給される液体は、必ずしも放電管2の冷却用の冷却ジャケット部50から供給される液体を用いる必要はなく、例えば図示しないポンプにより圧送される液体をミストノズル68に供給して液体ミストを生成させるようにしてもよい。また、液体による放電管の冷却に限らず、冷却ファン等の空冷による冷却機構を備えたものとしてもよい。さらに、条件設定により発生するオゾンの分解を生起させない放電管構成とできれば、冷却機構自体を設けなくとも良い。
【0052】
次に、本実施形態のオゾン発生噴射装置1の作用について説明する。まず、装置全体の作用について
図1、2により説明すると、図示しない酸素発生装置で発生した酸素が気体配管、継手部材の連結ポート14、通路12を通って放電管2の空隙6に供給される。また、図示しないポンプ等の圧送駆動装置から水が液体供給管を介して冷却用のパイプ58に供給される。
【0053】
放電管の高電圧電極7と接地電極10間に高周波の交流高電圧が印加されると多数のパルス性マイクロ放電により酸素分子の解離と、酸素原子、酸素分子、三体の衝突と、によりオゾンが生成される。酸素発生装置の圧送圧力によりオゾンは
図1上、右から左側への矢印F方向に流れ、管本体の他端の空間20を経由して接続部材3の複数の通過路24を通って各細管32から高濃度オゾンを噴射させる。このとき、複数の細管32は収束されてオゾンの流れ方向と同じ方向を長手として設けられているから、それぞれの点状の小さな管出口から緩やかな低速の流れでオゾンが噴射される。この間、管本体外面側の接地電極10に当接して螺旋状に巻きつけられた冷却用パイプ58内に供給される水により放電により発熱した放電管を冷却する。さらに、冷却パイプ58内の水はノズル保持部66の分配配管70を経由して各ミストノズル68に分岐され、それぞれの微細孔68aの出口から細管すなわちカバー34の外周において、細管の出口の領域に対して同心状に水ミストとして噴霧させる。細管から噴射されたオゾンは、細管の出口の領域の外側で噴霧される水ミストとともに被消毒体に向けて噴射され、あるいは噴霧される。このとき、80μmから100μm程度の粒径の液体ミストが装置1の直前方に広がり、さらにこのミスト内にオゾンが緩やかに分散した状態で被消毒体に噴射される。
【0054】
カバー34の形状や、細管32の取付態様や構造を種々変更することにより、さらに、被消毒体の状態に応じた噴射作業を行える。例えば
図3、
図7のように、1個又は複数の細管の中途又は先端が複数又に分岐させてカバー34の内壁に直接に当てることにより反転流を生じて全体を乱流化させ到達距離抑制機構を形成させる。この乱流により直進流の抵抗成分を生じさせ、外部の空気の奥側への流入及びオゾンとの混入を防ぎながら高濃度オゾンを維持したままで緩やかに広がる拡散流としてカバー外に噴射させ、十分なオゾンガスを局部的かつ集中的に被消毒体に対して噴射させることができる。
【0055】
また、
図4,6に示すように個々の細管自体が伸縮しうる構成として細管の全体長さを変化させ得るようにすることにより、凹凸のある箇所に対して噴射する際に十分なオゾン噴射が可能となる。
【0056】
また、
図5ないし
図7のように、カバー34の開口34aの位置から先端を突出した突出細管48aを設けると、細管から噴射されるオゾンガスの到達距離が異なるオゾンガスを噴射させることができるから、遠近方向に長い被消毒体に対しても有効に消毒作業を遂行し得る。
【0057】
以上、詳述した実施形態の構成は本発明において限定的なものではない。例えば細管の数、細管の径の大小のものを混在させること、細管やカバーの素材、放電管や電極あるいは筐体の素材は機能実現に差支えがない範囲で任意に改変しても本発明に包含される。
【0058】
次に
図10ないし
図12により、上述のオゾン発生噴射装置1を用いた背負い形オゾン消毒装置90について説明する。
図10において、背負い形オゾン消毒装置90は、オゾン発生噴射装置1と、電源部102と、冷却液タンク112と、冷却液の圧送駆動装置100と、背負い架台114と、を含む。
【0059】
図10において、背負い架台114は、背負い形オゾン消毒装置90の主要な構成要素をすべて一塊の集合体として人の背中に背負う状態で装着する際の架台手段であり、該背負い架台114に各構成要素を直接又は間接に固定あるいは締着させて固定化させる。背負い架台114に対する装置の各要素の取り付けは、フックやベルト、バンド等索条類による締着により固定される。背負い架台2は、例えばL形あるいは立方体形に一体組み付けた図示しない外殻フレームに人の背中に対面する側に設けた取付プレート部116と、取付プレート部116に側面視L字をなすように取り付けられた底プレート部118と、を含み、外フレーム全体を被覆するように図示しない被覆カバーで全体が被覆されて搭載した機器類は外部から見えないようにされている。
【0060】
図10において、112は冷却液タンク、100はポンプからなる液体圧送駆動装置、120a、120bはリチウムイオンバッテリー、102はインバータ103(
図11参照)を含む電源部、106は酸素発生供給装置(PSA:Pressure Swing Adsorption)、122は電気基盤類、124は横桟部材、126a、126bは縦桟部材、60は液体(水)の供給管、130は酸素供給用配管であり、各水の供給管及び酸素供給用配管は、オゾン発生噴射装置1に接続されている。冷却液は水ミスト用のミスト液を兼用するが、冷却液タンク112に例えば15L〜20L程度の水が収容されているので、背負った状態で安定させるために背負い架台114の下部中央に固定的に設定されている。また、リチウムイオンバッテリーは4個設置する場合には、重量バランスを考慮して左右に2個づつ配置される。これらの位置決めは横桟部材124、縦桟部材126を介して背負った状態で移動しないように位置決めされている。また、
図11は、背負い形オゾン消毒装置90の概略ブロック構成図であり、電源部102のリチウムリチウムイオン電池120の直流電力はインバータ103を含む変換装置により変換されて交流電力が酸素発生装置106、オゾン発生噴射装置1にそれぞれ供給される。このとき、オゾン発生噴射装置1にはインバータ103により高周波の交流高電圧に変換された電力が供給される。オゾン発生噴射装置1に接続された酸素発生装置106からの酸素が供給される放電管2において、無声放電により高濃度オゾンガスが生成され、そのままノズル部4から噴射される。
【0061】
次に、
図11により本実施形態の背負い形オゾン消毒装置の作用について説明すると、電源部102のリチウムリチウムイオン電池120の直流電力はインバータ103を含む変換装置により変換されて交流電力が酸素発生装置106、オゾン発生噴射装置1、にそれぞれ供給される。このとき、オゾン発生噴射装置1にはさらに高周波高圧電力が供給される。酸素発生装置106からの酸素が供給されるオゾン発生噴射装置1において、高電圧電極と接地電極間に交流高周波の高圧電力が印加されると、無声放電により高濃度オゾンガスが生成され、酸素発生装置からの圧送力により接続部材3の通過路24を経由して細管32から高濃度オゾンガスが噴射される。このとき、カバー34や細管の種々の例示形態により、オゾンとミスト水を近接位置で同時に被消毒物に向けて噴霧される。オゾンは水と反応すると、多くのオゾン派生生成物(OHラジカル、酸素原子ラジカル、HO
2ラジカル)を新たに生成し、オゾンの殺菌力を高める。このとき、
図12に示すように、作業者Mはオゾン発生噴射装置1の筐体54を把持し、構成機器を一塊の集合体として配置させた背負い架台114を背中に背負った状態で移動しながら噴出操作できる。したがって、例えば野菜の葉と葉の間や向きなど、固定式の消毒装置では困難な個別、具体的な消毒作業をきめ細かな操作で、かつ一人の作業者の作業により実現することができる。
【0062】
本考案の背負い形オゾン消毒装置は、酸素源があれば消毒コストが農薬に比して格段に低く、また、小型軽量で高濃度オゾンが得られる空冷式の誘電体表面放電電極を用いるので、低ガス流量で高濃度のオゾンを安定して生成することができる。
【0063】
なお、
図12において、110は筐体54に取り付けたスイッチ部であり、スイッチ投入により電源部102、コントローラ108を介して酸素発生装置106、ポンプ100が始動しオゾン発生噴射装置1、冷却用のパイプ58に供給される。また、128は、人が背中に背負うための紐あるいはベルト等の背負いベルトである。
【0064】
以上の第2実施形態の構成は限定的なものではなく、架台の外観形状や架台に対して付加的な機器を搭載しても本発明の範囲に含まれる。
【0065】
本願発明者は、本発明のオゾン発生噴射装置及び背負い形オゾン消毒装置の実施形態の装置の開発段階の原型モデルを用いて実際のフィールドにおいて消毒実験を行った。
【0066】
◇野菜に付着するアブラムシ殺虫において、オゾン濃度68g/m
3、酸素ガス流量2liter/min、霧用の水流速0.3liter/minの条件において、処理時間約20秒で死亡率98%を得た。
【0067】
オゾン発生管と噴霧ノズルを一体化した構成により、消毒装置全体の各部品の機能的な配置ができ、ノズル支持棒と噴霧ノズル部の小型化が可能になり、総重量15kg(水タンク空の場合)を実現した。
【0068】
接続部材を介したノズル部の着脱構成の導入により、農業消毒作業の迅速性と安全性を確保できるようになった。
【0069】
化学農薬を用いない無農薬消毒法であり、消毒時に飛散するオゾンガスの濃度は、環境安全基準以下に保持されるので、環境汚染や作業者への農薬障害を心配しなくても良くなった。