【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば焼却炉若しくは燃焼炉や、ディーゼルエンジン等の内燃機関においては、その使用時に、空気中の窒素と酸素とが反応することにより、或いは燃料等に含まれる窒素と酸素とが反応することにより、一酸化窒素や二酸化窒素等の窒素酸化物が生成されるため、焼却炉等や内燃機関などから排出される排ガス中には、一酸化窒素や二酸化窒素等の窒素酸化物が含まれている。このような窒素酸化物は、それ自体が人体に有害な物質であると共に、光化学スモッグや酸性雨を引き起こす大気汚染原因物質である。そのため、焼却炉等や内燃機関から排出される排ガスについては、それに含まれる窒素酸化物を還元処理することが行われている。
【0003】
従来、排ガス中の窒素酸化物を還元処理する装置としては、還元剤としてアンモニアを用いるガス処理装置が知られており、このようなガス処理装置において、高い効率で窒素酸化物を還元処理するガス処理方法として、アンモニアガスと、不活性ガス例えばアルゴンガス等の希ガス若しくは窒素ガスなどのキャリアガスとの混合ガスを調製し、この混合ガス中において誘電体バリア放電を行うことにより、アンモニアラジカルを発生させ、このアンモニアラジカルを被処理ガスに混入させることにより、当該被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理する方法が提案されている(特許文献1等参照)。
【0004】
しかしながら、上記のガス処理方法においては、以下のような問題がある。
アンモニアガスとキャリアガスとの混合ガス中において誘電体バリア放電を行う際には、キャリアガスが放電ガスとして機能するため、当該混合ガス中のアンモニアガスとキャリアガスとの割合によって放電状態に変化が生じやすく、特にアンモニアガスの濃度が高いすなわちキャリアガスの濃度が低い混合ガスにおいては、安定な放電状態を得ることができず、従って、アンモニアラジカルの発生量が変化し、被処理ガス中の窒素酸化物の還元処理において高い信頼性が得られない、という問題がある。
また、窒素ガスは、放電開始電圧が高いものであるため、消費電力を考慮すると、キャリアガスとしては、実際上、高価なアルゴンガス等の希ガスを用いることが必要であり、しかも、前述したように、安定な放電状態を得るためには、混合ガス中のキャリアガスの濃度を高くすることが必要であるため、多量の希ガスを使用しなければならず、従って、ガス処理のコストが増大する、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、信頼性が高く、しかも、小さい処理コストで被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することができるガス処理方法およびガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無触媒脱硝ガス処理方法は、窒素酸化物を含有する被処理ガスにおける当該窒素酸化物を還元処理する無触媒脱硝ガス処理方法であって、
水を含有しない、アンモニアガスとキャリアガスとの混合ガス
に、紫外線放射ランプからの紫外線を照射することにより、アンモニアラジカルを発生させ、このアンモニアラジカルを
、窒素酸化物を含有する被処理ガスに混入させ、このアンモニアラジカルが混入された被処理ガスの温度を700℃〜800℃とすることにより、当該被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することを特徴とする。
【0008】
本発明の
無触媒脱硝ガス処理方法においては、
前記紫外線放射ランプは、波長220nm以下の紫外線を放射するものであることが好ましい。
また、前記キャリアガスが窒素ガスであることが好ましい。
【0009】
本発明の無触媒脱硝ガス処理装置は、窒素酸化物を含有する被処理ガスにおける当該窒素酸化物を還元処理する無触媒脱硝ガス処理装置であって、
水を含有しない、アンモニアガスとキャリアガスとの混合ガス
に、紫外線放射ランプからの紫外線を照射することによってアンモニアラジカルを発生させるアンモニアラジカル発生部と、
このアンモニアラジカル発生部から供給されるアンモニアラジカルを
、窒素酸化物を含有する被処理ガスに混入させ、このアンモニアラジカルが混入された被処理ガスの温度を700℃〜800℃とすることによって当該被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理するガス還元処理部と
を備えてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の
無触媒脱硝ガス処理装置においては、
ガス還元処理部に供給される被処理ガスを加熱するガス加熱処理部を有することが好ましい。
また、前記紫外線放射ランプは、波長220nm以下の紫外線を放射するものであることが好ましい。
また、前記キャリアガスが窒素ガスであることが好ましい。
【0011】
本発明において、「アンモニアラジカル」とは、アンモニアから生ずるラジカルおよびイオンを意味し、このアンモニアラジカルには、NH
2 ラジカル、NHラジカル、Nラジカル、N
+ イオン、NH
+ イオン、NH
2 + イオン、NH
3 + イオンなどが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
水を含有しない、アンモニアガスおよびキャリアガスの混合ガスに紫外線放射ランプからの紫外線を照射することにより、アンモニアラジカルを安定的に発生させることができるので、混合ガス中のアンモニアガスの濃度に関わらず、安定した量のアンモニアラジカルを被処理ガスに混入させることができ、従って、被処理ガス中の窒素酸化物の還元処理において高い信頼性が得られる。
また、キャリアガスは紫外線の吸収が小さいものであればよく、従って、キャリアガスとして安価な窒素ガスを用いることができるので、小さい処理コストで被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することができる。
また、アンモニアラジカルが混入された被処理ガスの温度が
700℃〜800℃とされることにより、高い効率で被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することができる。
また、紫外線放射ランプとして、波長220nm以下の紫外線を放射するものを用いることにより、高い効率でアンモニアラジカルを発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のガス処理方法およびガス処理装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のガス処理装置の一例における構成の概略を示す説明図である。このガス処理装置は、アンモニアガス供給源11およびキャリアガス供給源12の各々に導管13,14を介して接続されたガス混合部10と、このガス混合部10に導管15を介して接続された二重管状のガス流路部材21を有するアンモニアラジカル発生部20とを有すると共に、一端(
図1において左端)に例えば焼却炉等の被処理ガス発生源1が接続され、他端(
図1において右端)にガス排出口51が形成された、被処理ガス発生源1からの被処理ガスが流通するガス流通管50を有し、このガス流通管50には、被処理ガス発生源1から排出される被処理ガスを加熱するガス加熱処理部30が形成され、このガス加熱処理部30の下流側にアンモニアラジカル発生部20に導管26を介して接続されたガス還元処理部40が形成されている。
アンモニアラジカル発生部20においては、ガス流路部材21の内管部分に、紫外線を透過する例えば石英ガラスよりなる管状の紫外線透過窓(石英ガラス管)22が設けられ、この紫外線透過窓22を構成する石英ガラス管内に、紫外線放射ランプ25が設けられている。
【0015】
キャリアガス供給源12から供給されるキャリアガスとしては、紫外線放射ランプ25からの紫外線の吸収が小さいものであればよく、例えばアルゴンガス、ネオンガス、キセノンガス、クリプトンガス等の希ガスや、窒素ガスなどの不活性ガスを用いることができるが、安価に入手することができる点で、窒素ガスを用いることが好ましく、これにより、ガス処理コストの低減化を図ることができる。
【0016】
紫外線放射ランプ25としては、アンモニアにおけるN−H結合を切断し得るエネルギーを有する紫外線を放射するものであればよいが、アンモニアの光吸収波長域が220nm以下であることから、波長が220nm以下の紫外線を放射するものであることが好ましい。
また、アンモニアにおけるN−H結合を効率良く切断し得るために、紫外線放射ランプ25としては、アンモニアガスの吸収係数が高い波長の紫外線を放射するもの用いることが好ましい。例えば、アンモニアガスの吸収係数が10atm
-1cm
-1以上である紫外線の波長域は、150nm以下および162〜210nmである。
また、紫外線透過窓22を構成する材料として120nmより短い波長の紫外線を効率よく透過するものがなく、また、比較的安価な石英ガラスは120nmより短い紫外線によりダメージを受け、短時間に破損してしまうことから、紫外線放射ランプ25としては、波長が120nm以上の紫外線を放射するものを用いることが好ましい。
波長120〜150nmおよび波長162〜210nmの紫外線を放射する紫外線放射ランプの具体例としては、重水素ランプ(波長120〜170nm)、ArBrエキシマランプ(波長165nm)、Xeエキシマランプ(波長172nm)、ArClエキシマランプ(波長175nm)、低圧水銀ランプ(波長185nm)、ArFエキシマランプ(波長193nm)、KrBrエキシマランプ(波長207nm)などが挙げられる。
【0017】
上記のガス処理装置においては、焼却炉、燃焼炉または内燃機関などの被処理ガス発生源1からガス流通管50に被処理ガス(矢印G1で示す)が排出され、この被処理ガスはガス加熱処理部30において加熱され、この加熱された被処理ガス(矢印G2で示す)がガス還元処理部40に供給される。
一方、ガス混合部10に、アンモニア供給源11から導管13を介してアンモニアガス(矢印g1で示す)が供給されると共に、キャリアガス供給源12から導管14を介してキャリアガス(矢印g2で示す)が供給されることにより、当該ガス混合部10においてアンモニアガスとキャリアガスとが混合され、更に、ガス混合部10から導管15を介してアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガス(矢印g3で示す)がアンモニアラジカル発生部20におけるガス流路部材21内に供給される。
そして、アンモニアラジカル発生部20においては、紫外線放射ランプ25からの紫外線(矢印Lで示す)が、紫外線透過窓22を介してガス流路部材21内に供給された混合ガスに照射されることにより、例えばNH
2 ラジカル、NHラジカル、Nラジカル、N
+ イオン、NH
+ イオン、NH
2 + イオン、NH
3 + イオンなどのアンモニアラジカルが発生する。
そして、ガス還元処理部40に、アンモニアラジカル発生部20から導管26を介してアンモニアラジカルを含有する還元処理用ガス(矢印g4で示す)が供給され、当該ガス還元処理部40内において、被処理ガスに還元処理用ガスが混入されることにより、被処理ガス中の窒素酸化物が還元処理される。その後、処理済ガス(矢印G3で示す)がガス流通管50におけるガス排出口51から外部に排出される。
【0018】
以上において、アンモニアラジカル発生部20におけるアンモニア濃度の制御条件としては、以下の関係式を満たすように制御される。
アンモニアラジカル発生部20のガス流路幅Dcm、アンモニアガスの吸収係数αatm
-1cm
-1、アンモニアの濃度をX%とすると、紫外線透過窓を透過した紫外線は次の式に従ってアンモニアに吸収される。
式:紫外線吸収割合β=1−exp(−α×X÷100×D)
紫外線を有効に利用する観点から、上記紫外線吸収割合βは1.0未満が好ましい。紫外線吸収割合βが過小である場合には、紫外線が有効に使われず経済性が悪く、一方、紫外線吸収割合βが過大な場合には、アンモニアガスが充分にラジカル化されない可能性を招くことになり好ましくない。
このため、アンモニア濃度X%は、上式において、紫外線吸収割合βが1.0未満を満たすように制御されることが好ましい。
例えば,紫外線の波長が172nmとすると、アンモニアガスの吸収係数は59atm
-1cm
-1であり、D=2cmとすると、アンモニアガス濃度は2.0〜6.0%に制御されることが好ましい。このときの紫外線吸収割合は、上記式より0.91〜0.99となる。
【0019】
また、アンモニア流量は、被処理ガスの流量と被処理ガス中の窒素酸化物(NO)濃度、および目標とする脱硝率Y%によって制御される。焼却炉の場合には、一般にY=50〜80%である。すなわち、アンモニア流量は、未反応のアンモニア(リークアンモニア)が極力発生しないように、NH
3 /NOモル比=Y/100〜Y/100×1.5となるように制御されることが好ましい。
【0020】
また、アンモニアラジカル発生部20における混合ガスに対する紫外線の照射条件としては、以下のような関係式1および関係式2を満たすように制御される。
関係式1:紫外線のフォトン総数n個/min×アンモニアガスの紫外線吸収割合β
=ラジカル化されるアンモニア分子数m
1 個/min
=還元される窒素酸化物(NO)分子数m
2 個/min×反応選択率γ
関係式2:脱硝率Y%=m
2 ×γ/被処理ガス中の窒素酸化物の分子数×100
すなわち、目標とする脱硝率Y%および反応選択率γによって、m
2 が決定され、そのm
2 を得るための紫外線の照射条件が以下の関係式3で決定される。
関係式3:m
2 =n×β=ランプ出力/hν×紫外光出力面積×β
ここで、hはプランク定数、νは紫外線の波長である。
ランプ出力mW/cm
2 は一定であり、アンモニアガスの紫外線吸収割合βは上述のように制御されるから、紫外線の照射条件は、反応選択率γと紫外光出力面積(紫外線ランプを点灯するランプ本数)で制御される。
【0021】
また、ガス還元処理部40における被処理ガスの温度、すなわちアンモニアラジカルを含む還元処理用ガスが混入された被処理ガスの温度は600℃以上であることが好ましく、より好ましくは650〜800℃である。この被処理ガスの温度が650℃未満である場合には、好適な脱硝率を得ることが困難となることがある。一方、被処理ガスの温度が800℃を超える場合には、アンモニアと窒素酸化物とが熱的な還元反応を開始するため、本発明の効果は得られ難くなることがある。
また、被処理ガス発生源1から排出された被処理ガスが高温、具体的にはガス還元処理部40において還元処理用ガスが混入された状態で600℃以上となる温度である場合には、当該被処理ガスをガス加熱処理部30において加熱することなしにガス還元処理部40に供給することができる。
【0022】
また、アンモニアラジカルによる被処理ガスにおける窒素酸化物の還元処理時間、具体的には、ガス還元処理部40における被処理ガスの混合時間は、2.0秒間以上であることが好ましく、より好ましくは4.0〜6.0秒間である。この時間が過小である場合には、脱硝率50%以上を得ることが困難となることがある。
【0023】
このようなガス処理装置およびガス処理方法によれば、アンモニアラジカル発生部20において、アンモニアガスおよびキャリアガスの混合ガスに紫外線放射ランプ25からの紫外線を照射することにより、アンモニアラジカルを発生させるので、混合ガス中のアンモニアガスの濃度に関わらず、安定かつ高効率にアンモニアラジカルを被処理ガスに混入させることができ、従って、被処理ガス中の窒素酸化物の還元処理において高い信頼性が得られる。
また、キャリアガスは紫外線の吸収が小さいものであればよく、従って、キャリアガスとして安価な窒素ガスを用いることができるので、小さい処理コストで被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することができる。
また、ガス還元処理部40におけるアンモニアラジカルが混入された被処理ガスの温度が600℃以上であることにより、高い効率で被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することができる。
また、紫外線放射ランプ25として、波長220nm以下の紫外線を放射するものを用いることにより、アンモニアラジカル発生部20において高い効率でアンモニアラジカルを発生させることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
図2に示す構成の実験用ガス処理装置を作製した。この実験用ガス処理装置は、アンモニアガス供給源11、窒素ガス供給源12aおよびアルゴンガス供給源12bの各々に導管13,14a,14bを介して接続されたガス混合部10と、このガス混合部10に導管15を介して接続された二重管状のガス流路部材21を有するアンモニアラジカル発生部20とを有すると共に、一端(
図2において左端)に被処理ガス供給装置2が接続された、被処理ガス供給装置2からの被処理ガスが流通するガス流通管50を有し、このガス流通管50には、被処理ガス供給装置2から供給される被処理ガスを加熱するガス加熱処理部30が形成され、このガス加熱処理部30の下流側にアンモニアラジカル発生部20に導管26を介して接続されたガス還元処理部40が形成されている。また、ガス還元処理部40の下流側には、処理済ガス中における窒素酸化物の濃度を測定するガス濃度測定器55が設けられ、このガス濃度測定器55の下流側には、処理済ガス中に含まれるアンモニア等を除去する湿式気体浄化装置56が設けられている。
アンモニアラジカル発生部20においては、ガス流路部材21の内管部分に、石英ガラスよりなる管状の紫外線透過窓(石英ガラス管)22が設けられ、この紫外線透過窓22を構成する石英ガラス管内に、キセノンエキシマランプよりなる紫外線放射ランプ25が設けられている。また、紫外線が酸素に吸収されることによって、アンモニアガスに対する紫外線照射量が低下することを防止するため、紫外線放射ランプ25と紫外線透過窓(石英管) 22との間は、紫外線を吸収しない窒素ガスで満たされている。
被処理ガス供給装置2は、被処理ガス調製部3と、一酸化窒素ガス供給源4と、酸素ガス供給源5と、窒素ガス供給源6とを有し、一酸化窒素ガス供給源4、酸素ガス供給源5および窒素ガス供給源6の各々は、導管7,8,9を介して被処理ガス調製部3に接続されている。
【0025】
〈実験例1〉
上記の実験用ガス処理装置を用いて、被処理ガス供給装置2から供給される、酸素ガス、窒素ガスおよび一酸化窒素ガスよりなる被処理ガスのガス処理を行い、下記の条件により、被処理ガスにおける窒素酸化物の還元処理を行った。
【0026】
[被処理ガス]
被処理ガス供給装置2から供給される被処理ガスは、一酸化窒素ガスの濃度が1640ppm、酸素ガスの濃度が8.3%のものであり、被処理ガスの流量は3.0L/minである。
[混合ガス]
ガス混合部10から供給される混合ガスは、アンモニアガス2.0モル%とアルゴンガス98.0モル%との混合ガスであり、この混合ガスの流量は0.38L/minである。
また、一酸化窒素ガスに対するアンモニアガスのモル比(単位時間当たりに供給される被処理ガス中の一酸化窒素ガスの量に対する単位時間当たりに供給される混合ガス中のアンモニアガスの量の体積比率)は、1.5である。
[紫外線照射条件]
紫外線放射ランプ25として用いたキセノンエキシマランプは、紫外線の放射照度が、紫外線透過窓(石英管) 22の表面において26mW/cm
2 のものである。また、アンモニアラジカル発生部20における各部の寸法は以下のようである。
紫外線透過窓(石英ガラス管)22の外径d1=4cm
ガス流路部材21の内径d2=8cm
紫外線透過窓(石英ガラス管)22の外面とガス流路部材21の内面とのギャップD=2cm
ガス流路部材21における有効ガス流路長W=10cm
[ガス還元処理部内の温度]
ガス還元処理部40内の温度については、500〜800℃の範囲で段階的に変更してガス処理を行った。
[還元処理時間]
ガス還元処理部40における被処理ガスの混合時間は、5.9秒間である。
【0027】
そして、ガス濃度測定器55によって処理済ガス中の窒素酸化物ガスの濃度を測定し、下記式により、脱硝率を求めた。結果を
図3に示す。
【0028】
【数1】
【0029】
〈比較実験例1〉
アンモニアラジカル発生部20において混合ガスに紫外線を照射せずに、当該混合ガスをガス還元処理部40に供給したこと以外は、実験例1と同様の条件により、被処理ガスのガス処理を行い、処理済ガス中の窒素酸化物ガスの濃度を測定して脱硝率を求めた。結果を
図3に示す。
【0030】
図3の結果から明らかなように、実験例1に係るガス処理方法によれば、被処理ガス中の窒素酸化物の還元処理を高い信頼性で行うことができることが確認された。ガス還元処理部における被処理ガスの温度が高いほど、被処理ガス中の窒素酸化物が高い効率で還元処理されることが確認された。
【0031】
〈実験例2〉
キャリアガスとして、アルゴンガスに代えて窒素ガスを用いたこと以外は、実験例1と同様の条件により、被処理ガスのガス処理を行い、処理済ガス中の窒素酸化物ガスの濃度を測定して脱硝率を求めた。結果を
図4に示す。
【0032】
図4の結果から明らかなように、実験例2に係るガス処理方法によれば、キャリアガスとしてアルゴンガスを用いた実験例1に係るガス処理方法と同等の脱硝率が得られることから、キャリアガスとして窒素ガスを好適に用いることができることが確認された。
【0033】
〈実験例3〉
混合ガスの流量を0.38L/minから0.25L/minに変更することにより、一酸化窒素ガスに対するアンモニアガスのモル比を1.5から1.0に変更したこと以外は、実験例1と同様の条件により、被処理ガスのガス処理を行い、処理済ガス中の窒素酸化物ガスの濃度を測定して脱硝率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1の結果から明らかなように、実験例3に係るガス処理方法によれば、実験例1に係るガス処理方法より高い脱硝率が得られ、従って、窒素酸化物に対するアンモニアガスの供給量比を高くすることにより、高い効率で窒素酸化物の還元処理を行うことができることが確認された。