(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865652
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】靴用クリップ
(51)【国際特許分類】
A47G 25/00 20060101AFI20160204BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20160204BHJP
A61L 9/04 20060101ALI20160204BHJP
F26B 9/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
A47G25/00 A
A61L9/12
A61L9/04
F26B9/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-216455(P2011-216455)
(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公開番号】特開2013-75006(P2013-75006A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】砂川 貴之
【審査官】
山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−078043(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3034418(JP,U)
【文献】
特開2006−149822(JP,A)
【文献】
特表2009−521375(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3147597(JP,U)
【文献】
実開昭63−118925(JP,U)
【文献】
米国特許第04238865(US,A)
【文献】
米国特許第03153564(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/00
A61L 9/04
A61L 9/12
F26B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部を連結した一対の基板(10)のそれぞれ下端部外方に、ケース本体(30)と蓋体(40)とを備え、且つ、薬剤を収容した通気孔(h)付きの薬剤ケース(20)を一体に設け、左右に並列した靴(50)の各開口(51)より各基板(10)をそれぞれ挿入して、靴(50)の右足用靴部(50a)及び左足用靴部(50b)の隣接する一対の内側壁部を各基板(10)で挟持するとともに、右足用靴部(50a)内及び左足用靴部(50b)内にそれぞれ薬剤ケース(20)を位置させて装着させた靴用クリップにおいて、
各薬剤ケース(20)を基板(10)の下端から外方斜め上方へ突出させ、基板(10)と各薬剤ケース(20)とを、これら基板及び薬剤ケースの下端側が尖った形状となるように角度を持って形成したことを特徴とする、靴用クリップ。
【請求項2】
薬剤ケース(20)は、前後方向を向く第1周壁(31)の一端を開口し、他端を第1閉塞壁(32)で閉塞した縦長の箱型で、各基板(10)下端部外面よりそれぞれ外方斜め上方に起立して一体に形成されたケース本体(30)と、ケース本体(30)にヒンジ(41)を介して一体に連設するとともに、ケース本体(30)の一端開口を開閉可能に閉塞し、係脱可能な係止手段によりケース本体(30)に係止された蓋体(40)とからなり、ケース本体(30)の第1閉塞壁(32)及びケース本体(30)の一端開口を閉塞する蓋体(40)の第2閉塞壁(43)にそれぞれ通気孔(h)を穿設した請求項1に記載の靴用クリップ。
【請求項3】
前記係止手段を、ケース本体の一端開口縁のヒンジ(41)部分を除いて突設した係止壁(35)と、係止壁(35)外周に係脱可能に嵌合する蓋体(40)の第2周壁(42)とで構成した請求項2に記載の靴用クリップ。
【請求項4】
ケース本体(30)内に区画壁(36)で区画された少なくとも3つの収容室(R)を画成し、各収容室(R)に収容する薬剤を除湿剤、除菌剤、消臭剤のうちから選択的に収容可能に構成した請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の靴用クリップ。
【請求項5】
装着する靴(50)がブーツであり、各基板(10)はブーツの縦長部分に挿入する全体として側面視垂直線状に形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の靴用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
靴の保管時等に、左右を揃えて整理し易い様な目的で、或いはブーツの様に形状維持が比較的難しい場合に形状維持をも兼ねての靴用クリップが提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
【0003】
上記特許文献1に記載されたクリップは、出掛け先にてブーツを脱いだ際、だらりと広がり見た目にもよくない等の不都合を解消するために提案され、二股に分かれた本体足部のそれぞれの内側に、自在に長さ調節のできる伸縮棒を取り付け、足部の上部中央に持ち手を設け、足部で左右のブーツの内側壁相互を挟み、伸縮棒を相応に延ばして安定させる如く構成している。
【0004】
また、ブーツの保形性を得るため、加えてブーツ内の脱臭効果を図るためのブーツスタンドも提案されている。(例えば、特許文献2を参照)
【0005】
特許文献2に記載されたブーツスタンドは、板状部材の上下に亘って形成されるとともに、板状部材の幅方向に列状に配設された複数の折曲部を介して板状部材を多角筒形状に折り曲げてブーツの筒脚部内に挿入される本体部と、板状部材に形成され本体部の多角筒形状を保持する本体保持部と、板状部材の下端部に形成され、本体部をブーツの筒脚部内に挿入した際にブーツのつま先方向に開口する通気用切欠部とを備えている。また、袋状の脱臭剤或いは芳香剤を内部底部に一緒に挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−253228号公報
【特許文献2】実用新案登録第3155556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ブーツを含む靴の整理が行い易く、一対物として常時揃えておくことができるとともに、ブーツ等の型崩れのし易い部分を備えたものにあってはその保形性も備え、しかも、消臭効果、除菌効果、除湿効果等の単数及び複数を同時に発揮でき、また、その使用操作が極めて簡単であり、その構造も極めて簡単な靴用クリップを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、上端部を連結した一対の基板10のそれぞれ下端部外方に、ケース本体30と蓋体40とを備え、且つ、薬剤を収容した通気孔h付きの薬剤ケース20を一体に設け、左右に並列した靴50の各開口51より各基板10をそれぞれ挿入して、靴50の
右足用靴部50a及び
左足用靴部50bの隣接する一対の内側壁部を各基板10で挟持するとともに、
右足用靴部50a内及び
左足用靴部50b内にそれぞれ薬剤ケース20を位置させて装着させ
た靴用クリップにおいて、
各薬剤ケース20を基板10の下端から外方斜め上方へ突出させ、基板10と各薬剤ケース20とを、これら基板及び薬剤ケースの下端側が尖った形状となるように角度を持って形成したことを特徴とする、靴用クリップ。
【0009】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、薬剤ケース20は、前後方向を向く第1周壁31の一端を開口し、他端を第1閉塞壁32で閉塞した縦長の箱型で、各基板10下端部外面よりそれぞれ外方斜め上方に起立して一体に形成されたケース本体30と、ケース本体30にヒンジ41を介して一体に連設するとともに、ケース本体30の一端開口を開閉可能に閉塞し、係脱可能な係止手段によりケース本体30に係止された蓋体40とからなり、ケース本体30の第1閉塞壁32及びケース本体30の一端開口を閉塞する蓋体40の第2閉塞壁43にそれぞれ通気孔hを穿設した。
【0010】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第2の手段に於いて、前記係止手段を、ケース本体の一端開口縁のヒンジ41部分を除いて突設した係止壁35と、係止壁35外周に係脱可能に嵌合する蓋体40の
第2周壁42とで構成した。
【0011】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第3手段のいずれかの手段に於いて、ケース本体30内に区画壁36で区画された少なくとも3つの収容室Rを画成し、各収容室Rに収容する薬剤を除湿剤、除菌剤、消臭剤のうちから選択的に収容可能に構成した。
【0012】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれかの手段に於いて、装着する靴50がブーツであり、各基板10はブーツの縦長部分に挿入する全体として側面視
垂直線状に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、靴の整理が行い易く、一対物として常時揃えておくことができるとともに、消臭効果、除菌効果、除湿効果等の薬剤効果等を発揮でき、特に通気性の悪いブーツに好適である。従って、靴の整理と靴内のケアとを同時に行なえるという利点がある。また、クリップ本体Aはワンパーツで構成されているため、小パーツ化が図れる。
【0014】
薬剤ケース20は、前後方向を向く第1周壁31の一端を開口し、他端を第1閉塞壁32で閉塞した縦長の箱型で、各基板10下端部外面よりそれぞれ外方斜め上方に起立して一体に形成されたケース本体30と、ケース本体30にヒンジ41を介して一体に連設するとともに、ケース本体30の一端開口を開閉可能に閉塞し、係脱可能な係止手段によりケース本体30に係止された蓋体40とからなり、ケース本体30の第1閉塞壁32及びケース本体30の一端開口を閉塞する蓋体40の第2閉塞壁43にそれぞれ通気孔hを穿設した場合には、薬剤ケース20内への薬剤の収容が容易に行える。また、各基板10と各薬剤ケース20とが角度を持って形成されているため、下端部が尖った状態となり、靴50、特に長いブーツへの装着がより容易となる。
【0015】
前記係止手段を、ケース本体の一端開口縁のヒンジ41部分を除いて突設した係止壁35と、係止壁35外周に係脱可能に嵌合する蓋体40の
第2周壁42とで構成した場合には、係止壁35により蓋体40をケース本体30に対して常時所定位置に嵌合させることができ、しかも、その係脱が極めて容易であるとともに、一旦係止した蓋体40は安定してケース本体30に固定される。
【0016】
ケース本体30内に区画壁36で区画された少なくとも3つの収容室Rを画成し、各収容室Rに収容する薬剤を除湿剤、除菌剤、消臭剤のうちから選択的に収容可能に構成した場合には、一方の薬剤ケース20に収容する薬剤として、除湿効果、除菌効果、消臭効果という3つの作用を一遍に発揮することができ、また、必要に応じて、必要な一つ或いは複数の薬効を選択することもでき、変化に富んだ対応が可能である。
【0017】
装着する靴50がブーツであり、各基板10はブーツの縦長部分に挿入する全体として側面視
垂直線状に形成されている場合には、同様に靴の整理が行い易く、一対物として常時揃えておくことができるとともに、しかも型崩れのし易い部分を変形なく維持しておく保形効果を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】靴用クリップの斜視図である。(第1実施例)
【
図2】靴用クリップの側面図である。(第1実施例)
【
図3】靴用クリップの使用を説明する説明図である。(第1実施例)
【
図4】靴用クリップの斜視図である。(第2実施例)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は靴用クリップ1の第1実施例を示す。尚、以下の説明に於いて、便宜的に
図2に於ける上方を上部、下方を下部とし、左方を前部、右方を後部として説明し、以下上下前後はそれに従う。
【0021】
クリップ本体Aは合成樹脂製で、上端部を連結し、間隔をあけて縦に並設した一対の基板10を備え、各基板10のそれぞれ下端部外方に一対の薬剤ケース20を一体に設けている。
【0022】
図示例では、上端部を上方に凸の円弧板状をなす正面視形状の頂壁11で連結した一対の平行する右基板10a及び左基板10bを備えている。また、頂壁11から間隔をあけた下方に上方に凸の円弧板状をなす横壁12を架設している。
【0023】
各薬剤ケース20は薬剤を収容して揮散させるもので、ケース本体30と蓋体40とを備え、また、薬剤を揮散させるための通気孔hを備えている。ケース本体30は、前後方向を向く第1周壁31の一端を開口し、他端を第1閉塞壁32で閉塞した縦長の箱型で、内部に薬剤を収容する収容室Rを画成している。また、各基板10下端部外面よりそれぞれ外方斜め上方に起立して一体に形成されている。蓋体40は、ケース本体30にヒンジ41を介して一体に連設するとともに、ケース本体30の一端開口を開閉可能に閉塞し、係脱可能な係止手段によりケース本体30に係止される。
【0024】
図示例に於いて、薬剤ケース20は右基板10aに一体に連設した右薬剤ケース20aと、左基板10bに一体に連設した左薬剤ケース20bとを備えている。左右の薬剤ケース20は左右対称に形成されて対称である以外実質的に同様構成となっている。
【0025】
図示例に於ける右薬剤ケース20aは、前後方向を向く縦長楕円筒状の第1周壁31の前端を開口し、後端を第1閉塞壁32で閉塞した縦長な箱型で、右基板10a下端部外面に第1周壁31の内側下部を一体に連結し、外方斜め上方に起立して一体に形成されている。第1周壁31の開口縁には、蓋体40を開閉可能に連結するヒンジ41を形成する第1ヒンジ形成片34を一対突設しており、また、ヒンジ41部分を除いた開口縁部分、即ち、ケース本体30の前面開口縁の上縁、左側縁、下縁に亘って、蓋体40の係止手段を構成する係止壁35を突設している。
【0026】
蓋体40は、前後方向を向く縦長楕円筒状の第2周壁42の前端縁より第2閉塞壁43を延設している。また、第2周壁42の後端縁より突設した一対の第2ヒンジ形成片44を、ケース本体30の第1ヒンジ形成片34と回動可能に一体に連結してそれぞれ一対のヒンジ41を構成している。そして、ケース本体30に対して開閉可能に設けている。また、第1周壁31の基板10側外面には指掛け用の突部45を突設している。そして、第2周壁42を係止壁35の外周に離脱可能に嵌合させてケース本体30の前端開口を閉塞している。従って、この係止壁35と第2周壁42とで蓋体40をケース本体に係止する係止手段を構成している。尚、係止手段としては本例のものに限らず、例えば、ケース本体30に突設した係止突起と、該係止突起に係合する蓋体40に設けたフックとで構成してもよい。
【0027】
左薬剤ケース20bは、上記した如く右薬剤ケース20aと左右対称に形成されているため、同符号を付して説明を省略する。
【0028】
左右の薬剤ケース20は、ケース本体30の第1閉塞壁32及び蓋体40の第2閉塞壁43にそれぞれ通気孔hを穿設している。図示例の場合には、円形透孔形態の通気孔hを多数穿設しているが、通気孔hの形状、数等は適宜選択して採用できる。また、通気孔hは第1閉塞壁32と第2閉塞壁43とのみに設ける場合に限らず、第1周壁31、第2周壁42にも設けることも可能である。
【0029】
収容室R内に収容する薬剤として、除湿剤、除菌剤、消臭剤等を使用できる。尚、収容する薬剤はこれに限らない。収容された薬剤は、外気と接触させるための通気孔hを介して外部に揮散される。使用される薬剤として、例えば、固形のもの、或いは、フィルム等で揮散が可能な状態に包装したもの等を使用できるがこれに限らない。
【0030】
この様に構成された靴用クリップ1を靴50に装着した状態を説明する。
図3に於いて靴50はブーツであり、靴用クリップ1はブーツ用のもので、並列した左右一対の
右足用靴部50a及び
左足用靴部50bの各開口51より薬剤ケース20及び基板10をそれぞれ挿入し、
右足用靴部50a及び
左足用靴部50bの隣接する一対の内側壁部を左基板10bと右基板10aとで挟持する。この際、左右の薬剤ケース20にそれぞれ収容された薬剤は、それぞれ
右足用靴部50a及び
左足用靴部50b内に収納されている。尚、本例に於いて、靴クリップ1は正面視で左右を決めているため実際のブーツの左右と反対になっている。当然後ろ向きに装着することもでき、その場合には左右の名称が同じとなる。
【0031】
図4は第2実施例を示し、本例は
図1の例に於いて、ケース本体30内に区画壁36で区画された少なくとも3つの収容室Rを画成し、各収容室Rに収容する薬剤を除湿剤、除菌剤、消臭剤のうちから選択的に収容可能に構成した例を示す。
【0032】
尚、
図4では左右のケース本体30内を2つの区画壁36で、それぞれ上から第1収容室R1、第2収容室R2、第3収容室R3の三つの収容室Rに区画し、各収容室Rにそれぞれ三種類の薬剤を嵌合させる如く構成となっている。即ち、第1収容室R1には除湿剤を、第2収容室R2には除菌剤を、第3収容室R3には消臭剤をそれぞれ収容する如く構成しているが、これに限られるものではなく、収容室Rの数は必要に応じて選択することができ2つでも4つ以上でも可能である。
【0033】
また、使用方法としても、必ずしも収容室Rの数だけ嵌合する場合に限らず必要に応じて収容装着することができる。また、その収容薬剤の内容も必要に応じて選択でき、左右同じでなく相違するものを装着しても良く、この場合も必要に応じて適宜選択することができる。その他の構成は
図1の例と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0034】
1:靴用クリップ
A:クリップ本体
10…基板
10a…左基板、10b…右基板
11…頂
壁
12…横壁
20:薬剤ケース
20a…左薬剤ケース、20b…右薬剤ケース
30…ケース本体
31…第1周壁、32…第1閉塞壁、34…第1ヒンジ形成片、35…係止壁、
36…区画壁
40…蓋体
41…ヒンジ、42…第2周壁、43…第2閉塞壁、44…第2ヒンジ形成片、
45…指掛け用の突部
50…靴
50a…
右足用靴部、50b…
左足用靴部
51…開口
h…通気孔
R…収容室
R1…第1収容室、R2…第2収容室、R3…第3収容室