特許第5865720号(P5865720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865720
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】超音波画像診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-15751(P2012-15751)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-153867(P2013-153867A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 武
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0078340(US,A1)
【文献】 特開2010-94275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波振動子を有するプローブと、
前記複数の超音波振動子を介して超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部で受信された受信信号に基づいて画像を発生する画像発生部と、
前記発生された画像を表示する画像表示部と、
前記プローブに設けられ、前記プローブの位置と傾斜角度とのうちの少なくとも一方を位置情報として検知する検知部と、
前記プローブに設けられ、前記超音波を送受信する超音波送受信モードと前記プローブを入力デバイスとして用いるプローブ入力モードとの切り替えを操作者が入力操作を行うためのモード切り替えボタンと、
前記超音波送受信モードから前記プローブ入力モードへの切り替え指示が入力された時点の最終画像と、前記時点に対応する位置情報を基準位置情報として記憶する記憶部と、
前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードへの切り替え指示が入力され、且つ前記位置情報と前記基準位置情報とが略一致した時、前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードに復帰させるために前記送受信部を制御する制御部と、を具備する超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モード切り替えボタンでユーザーによるモード切り替え指示が入力された時点から前記超音波送受信モードへ復帰するまでの期間、
前記超音波の送受信を行うために前記送受信部を制御し、
前記最終画像と前記リアルタイムに表示された画像とを同時表示するために前記画像表示部を制御するよう
前記画像表示部を制御する請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記最終画像と前記リアルタイムに表示された画像との相関を表す相関係数を随時計算する相関係数計算部をさらに具備し、
前記計算された相関係数が予め定められた閾値を上回る場合、前記制御部は、前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードへ切り替えるために、前記画像表示部を制御する請求項1乃至請求項2記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
カーソル又はポインタのうち少なくとも一方に関する信号を発生するカーソル・ポインタ発生部と、をさらに具備し、
前記画像表示部は、前記発生された画像を前記カーソル又はポインタのうち少なくとも一方と共に表示し、
前記制御部は前記プローブ入力モードにおいて、前記検知部の出力に応じて、前記画像表示部の画面上で前記カーソル又はポインタの位置を移動させるために前記カーソル・ポインタ発生部を制御する請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記複数の超音波振動子それぞれで受信された複数のエコー信号それぞれを増幅するエコー信号増幅部と、
前記増幅された複数のエコー信号それぞれの位相をそろえて加算し、受信信号を発生する加算部と、をさらに具備し、
前記画像発生部は、前記加算された受信信号に基づいて画像を発生し、
前記制御部は前記プローブ入力モードにおいて、前記検知部の出力に応じて、前記複数のエコー信号それぞれの増幅率を変化させるために前記エコー信号増幅部を制御することを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記制御部は前記プローブ入力モードにおいて、前記検知部の出力に応じて、視野角と焦点深度とのうち少なくとも一方を変化させるために、前記送受信部を制御することを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項7】
前記複数の超音波振動子それぞれに対して印加するためのパルス信号を繰り返し発生するパルス信号発生部と、をさらに具備し、
前記制御部は前記プローブ入力モードにおいて、前記検知部の出力に応じて、前記パルス信号の発生周期を変化させるために前記パルス信号供給部を制御することを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項8】
前記画像に対して複数の計測機能を実行する計測処理部と、をさらに具備し、
前記制御部は前記プローブ入力モードにおいて、前記検知部の出力に応じて、複数の計測機能から特定の計測機能を選択的に動作させるために、前記計測処理部を制御することを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項9】
プローブと表示制御部とを有する超音波診断装置を制御するプログラムであって、
コンピュータに、
プローブに設けられた切り替えボタンを介して、プローブが超音波を送受信する超音波送受信モードから前記プローブを入力デバイスとして用いるプローブ入力モードに切り替えられたとき、
前記超音波を送受信するスキャンを停止させるために、モード切り替え制御部を制御する機能と、
前記スキャンの停止とともに、前記超音波画像を最終画像としてフリーズさせるために、前記表示制御部を制御する機能と、
前記スキャンの停止とともに、前記最終画像と前記プローブ入力モードに切り替えられた時点の位置情報とを基準位置情報として記憶部する機能と、
前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードへの切り替え指示が入力され、且つ前記位置情報と前記基準位置情報とが略一致したとき、前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードに復帰させるために前記送受信部を制御する機能と、
を実現させるための超音波診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な超音波画像診断装置においては、トラックボールを用いてメニュー操作、及びポインティングデバイスの操作を行っている。
特にハンドヘルドタイプのような小型の超音波画像診断装置は持ち運びが簡単で、病院内の病室へ手軽に持ち運んで利用することができる。また、ハンドヘルドタイプの超音波画像診断装置は、屋外で利用する等の利便性が高い一方で、片手に装置本体を持った状態でもう片方の手で超音波プローブを保持するという特徴を有することになる。
また、既存技術の中に、ハウジングの位置と傾斜角度とのうち何れか一方の変化により操作パネルを遠隔操作するような装置もある(例えば、「特許文献1」参照)。さらに、既存技術の中に、超音波プローブの位置と傾斜角度とのうち何れか一方の変化により超音波画像を回転させる技術も存在する(例えば、「特許文献2」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−57562号公報
【特許文献2】特開2007−75589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波画像診断を行う際は、通常片手に超音波プローブを保持し、もう片方の手で操作パネルの操作を行う。しかし、特にハンドヘルドタイプのような小型の装置になると、片手は装置本体を保持することになり、もう片方の手で超音波プローブを保持することになる。このように両手が塞がった状態で操作パネルの操作、ポインティングデバイスの操作をするのは困難である。
【0005】
しかし、上記の公報における発明(特許文献1)は、超音波プローブ以外のデバイス(ハウジング)を用いており、また操作パネルを遠隔操作するような代替手段である。また、片方の手で装置本体を保持し、もう片方の手で超音波プローブを保持する状態で利用できるものではない。
【0006】
一方、上記の公報における発明(特許文献2)は、超音波画像の回転操作をするために被検体からプローブを離して移動させなければならない。従って、回転操作をし終わった後に走査位置を再現しようとすると、再び被検体に超音波プローブを当てて走査位置を探さなければならず、走査位置の再現に時間が掛かってしまう。
【0007】
目的は、超音波プローブを入力デバイスとして用いることにより、装置上の様々な動作を実現することである。また、メニュー等の操作を行う前後で、超音波の走査位置を簡便に再現することにより、スムーズにスキャン操作を行うことも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る超音波診断装置は、
複数の超音波振動子を有するプローブと、
前記複数の超音波振動子を介して超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部で受信された受信信号に基づいて画像を発生する画像発生部と、
前記発生された画像を表示する画像表示部と、
前記プローブに設けられ、前記プローブの位置と傾斜角度とのうちの少なくとも一方を位置情報として検知する検知部と、
前記プローブに設けられ、前記超音波を送受信する超音波送受信モードと前記プローブを入力デバイスとして用いるプローブ入力モードとの切り替えを操作者が入力操作を行うためのモード切り替えボタンと、
前記超音波送受信モードから前記プローブ入力モードへの切り替え指示が入力された時点の最終画像と、前記時点に対応する位置情報を基準位置情報として記憶する記憶部と、
前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードへの切り替え指示が入力され、且つ前記位置情報と前記基準位置情報とが略一致した時、前記プローブ入力モードから前記超音波送受信モードに復帰させるために前記送受信部を制御する制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る超音波画像診断装置の構成を示すブロック図である。
図2A】本実施形態に係るポインタ移動の動作制御に関するフローチャートである。
図2B】本実施形態に係るゲイン調整の動作制御に関するフローチャートである。
図2C】本実施形態に係る視野深度、及び画角の動作制御に関するフローチャートである。
図2D】本実施形態に係る、フリーズ画像とライブ画像との一致によるスキャン再開に関するフローチャートである。
図2E】本実施形態に係る、切り替えボタンと動作モードとの対応関係を示す図である。
図2F】本実施形態に係る、ポインタと、メニューウィンドウの表示の様子を示す模式図である。
図3A】本実施形態に係る、超音波プローブの直交2軸方向の傾斜角度の変化と様々な動作との対応を示す模式図である。
図3B】本実施形態に係り、タイムゲインコントロール(TCG)調整の制御における超音波プローブの操作とゲイン調整との対応関係を示す図である。
図3C】本実施形態に係り、Bモード画像のダイナミックレンジと画像全体のゲイン調整における、超音波プローブの操作とゲイン調整との対応関係を模式的に示す図である。
図3D】本実施形態に係り、カラードプラモード画像を生成する領域の制御における超音波プローブの操作とゲイン調整との対応関係を模式的に示す図である。
図3E】本実施形態に係り、Bモード画像の画角の変化と超音波プローブの操作との対応関係を模式的に示す図である。
図3F】本実施形態に係り、超音波プローブの操作と送信ユニットにおいて発生する送信パルスの周期との対応関係を模式的に示す図である。
図4】本実施形態に係り、フライスルー画像における画像の変化と超音波プローブの操作との対応関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波画像診断装置1を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
図1は、本実施形態に係る超音波画像診断装置1の内部構成を示すブロック図である。超音波画像診断装置1は、装置本体11と、超音波プローブ2とを有する。装置本体11は、モニター3と、入力装置4と、記憶ユニット5と、メニュー実行プログラム部6、Bモード処理ユニット7と、ドプラ処理ユニット8と、受信ユニット9と、送信ユニット10と、モード切り替え制御部12と、メニュー発生部13と、位置・傾斜角度計算部14と、ゲイン制御部15と、カーソル・ポインタ発生部16と、画像生成回路17と、システム制御部18と、表示制御部19と、走査制御部20と、視野深度制御部21と、視点移動速度・閾値決定部22と、相関係数計算部23と、を設ける。また、受信ユニット9は、増幅器91と、受信遅延回路92とを設け、送信ユニット10は、パルサ101と、送信遅延回路102と、レートパルス発生器103とを設ける。メニュー実行プログラム部6における超音波計測のための計測プログラム、フライスル―(仮想内視鏡表示)における視点移動速度・血管壁からの閾値を調整するためのフライスルー制御プログラム等は、システム制御部18に設けられたRAM等のメモリに読み出され、実行される。
【0011】
一方、超音波プローブ2は、検知部221と、超音波振動子222と、切り替えボタン223と、決定ボタン224とを設ける。
【0012】
超音波プローブ2により、送信ユニット10からの駆動パルスを受け、ビーム状の超音波が被検体に向けて送信される。送信された超音波は、被検体の体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。反射された球面波状の超音波は、超音波振動子222に受信される。受信された超音波は、超音波振動子222により電気信号(エコー信号)に変換される。エコー信号の振幅は、超音波が反射された不連続面を挟んで隣り合う体内組織の音響インピーダンスの差に依存する。送信された超音波が血流や心臓壁等の移動体の表面で反射された場合、エコー信号は、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分に依存した周波数偏移を受ける。
送信ユニット10により、超音波プローブ2を介して被検体の検査部位が超音波で繰り返し2次元または3次元走査される。この走査により受信ユニット9からは、検査部位に関するエコー信号が出力される。
【0013】
より詳細には、送信ユニット10は、送信ビーム形成用にパルサ101、送信遅延回路102、及びレートパルス発生器103、を設ける。レートパルス発生器103により、所定のレート周波数fr[Hz](周期;1/fr秒)で、レートパルスがチャンネル毎に繰り返し発生される。送信遅延回路102により、所定のビーム方向に向けた送信ビームを形成するのに必要な遅延時間が各レートパルスに与えられる。パルサ101により、各遅延されたレートパルスに基づくタイミングで駆動パルスが発生され、超音波プローブ2に送信される。駆動パルスを受けた超音波プローブ2により、駆動パルスに応じたビーム方向に超音波が送信される。
【0014】
また、受信ユニット9は、受信ビーム形成用にアンプ91、A/D変換器(図示しない)、メモリ(図示しない)、及び受信遅延回路92等を設ける。アンプ91により、超音波プローブ2からのエコー信号が受信される。受信されたエコー信号は、チャンネル毎に増幅される。アンプ91により、エコー信号が増幅される。受信遅延回路92により、増幅されたエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間が設けられる。整相加算部(図示しない)により、各超音波振動子222からの信号がいったん部分的に整相加算され、チャンネル数分の受信信号が減少する。整相加算部(図示しない)により、受信信号を部分的に整相加算して得られた出力信号が、Bモード処理ユニット7、及びドプラ処理ユニット8に送信される。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換されたエコー信号は、超音波振動子222それぞれに対して設けられた専用のメモリ(ディジタルメモリ)に受信時刻に応じて記憶される。受信遅延回路92により、受信時刻に応じてディジタルメモリに記憶されたエコー信号の値が読み出され、整相加算される。この整相加算処理により、所定のビーム方向の受信ビームに対応する受信信号が形成される(ディジタルビームフォーマー)。1つの受信ビームは、1つの超音波走査線に対応する。超音波走査線毎の受信信号は、Bモード処理ユニット7とドプラ処理ユニット8とに供給される。
【0015】
Bモード処理ユニット7により、受信ユニット9からの超音波走査線毎の受信信号を包絡線検波し、包絡線検波された受信信号を対数圧縮することで、受信信号の強度を輝度で表現するBモード信号のデータが生成される。生成されたBモード信号のデータは、ボリュームデータを生成するための画像生成回路17に供給される。
ドプラ処理ユニット8により、受信ユニット10からのエコー信号を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤などの移動体から得られたエコー成分が抽出される。また、ドプラ処理ユニット8により、平均速度や分散、パワー等の移動情報の強度をカラーで表現するドプラ信号のデータが生成される。生成されたドプラ信号のデータは、画像生成回路17に供給される。
【0016】
画像生成回路17は、Bモード処理ユニット7からのBモード信号に基づいて、被検体に関するBモードデータを生成する。送信ユニット10により2次元走査が行われる場合には、画像生成回路17により、2次元平面に関するデータが生成される。また、カラードプラモードによる走査を行う場合も、2次元スキャンを行う場合、2次元の表示画像のデータが発生される。送信ユニット10により3次元走査が行われる場合には、画像生成回路17により3次元空間に関するボリュームデータ(以下、Bモードボリュームデータと呼ぶことにする)が生成される。具体的には、画像生成回路17により、Bモード信号のデータを位置情報に従って専用のメモリに配置し、超音波走査線間のBモード信号のデータが補間される。この配置処理と補間処理とによって、2次元走査を行う場合には、2次元平面に関するデータが生成される。3次元走査を行う場合には、複数のボクセルから構成されるBモードボリュームデータが生成される。例えば、3次元走査を行う場合、各ボクセルは、由来するBモード信号の強度に応じたボクセル値を有する。生成されたBモードボリュームデータは、記憶ユニット5に供給される。
【0017】
また、画像生成回路17により、ドプラ処理ユニット8からのドプラ信号に基づいて、被検体に関するボリュームデータ(以下、ドプラボリュームデータと呼ぶことにする)が生成される。具体的には、画像生成回路17により、ドプラ信号のデータが位置情報に従って専用のメモリに配置され、超音波走査線間のドプラ信号のデータが補間される。この配置処理と補間処理とによって、複数のボクセルから構成されるドプラボリュームデータが生成される。各ボクセルは、由来するドプラ信号の強度に応じたボクセル値を有する。生成されたドプラボリュームデータは、記憶ユニット5に供給される。また、後述するが、フライスルー実行のためのコマンドが入力されると、血管を対象としたRAWデータが多数のボクセルデータから成るボリュームデータに変換され、血管を表すボリュームデータが生成される。
さらに、画像生成回路17により、ボリュームデータを3次元画像処理して2次元の表示画像のデータが発生される。また、画像生成回路17により、2次元スキャンを行う場合、2次元の表示画像のデータが発生される。また、カラードプラモードによる走査を行う場合も、2次元スキャンを行う場合、2次元の表示画像のデータが発生される。3次元画像処理としては、平行投影法によるボリュームレンダリングやサーフェスレンダリングがある。あるいは透視投影法によるボリュームレンダリングやサーフェスレンダリングでもよい。さらには、MIP(Maximum Intensity Projection)、MPR(Multi Planar Reconstruction)処理等でもよい。
【0018】
記憶ユニット5により、画像生成回路17からのBモードボリュームデータと、ドプラボリュームデータと、血管に関するボリュームデータと、が記憶される。また、記憶ユニット5により、関心領域(ROI:Region of Interest)の設定処理、計測のための専用プログラム、フライスルー時における実行プログラム等が記憶される。なお、本実施形態に係る超音波画像診断装置1の動作説明においてBモードボリュームデータとドプラボリュームデータとを特に区別する必要はないので、以下、Bモードボリュームデータとドプラボリュームデータとをまとめてボリュームデータと呼ぶことにする。さらに、切り替えボタン223において、モードを切り替えるための入力信号が入力された時点における位置及び傾斜角度(以下、基準位置及び基準傾斜角度と記載する)に関するデータが記憶される。
入力装置4により、ユーザーからの各種指令や情報入力が入力される。入力装置4は、マウス等の入力デバイスを設ける。入力装置4により、表示画面上に表示されるカーソル又はポインタの座標が検出される。検出されたカーソル又はポインタの座標をシステム制御部18に出力する。入力デバイスは、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力装置4により、電磁誘導式、磁気歪式、感圧式等の座標読取り原理でタッチ指示された座標が検出される。検出された座標をシステム制御部18に出力する。また、入力装置4は、スイッチ、及びボタン等の種々の入力デバイスを設ける。本実施形態においては、入力装置4により、ユーザーによる入力デバイスの操作に従って、カーソル又はポインタ等の移動、画角の調整、焦点位置の調整、メニュー操作、ゲインの調整等の入力信号が発生される。また、入力装置4により、ユーザーによる入力デバイスの操作に従ってROIの設定指示が入力される。
システム制御部18は、超音波画像診断装置1の中枢として機能する。具体的には、システム制御部18により超音波画像診断装置1全体のハード制御が行われる。システム制御部18により、送信ユニット10と受信ユニット9とに信号の送受信の命令が送信され、又、送受信の条件に関する情報が送信される。さらに、システム制御部18により、ROIの設定処理、計測制御、視野深度制御等を行なうために、メニュー実行プログラム部6から専用プログラムが読み出されて自身が有するメモリに展開され、展開された専用プログラムに従って各部が制御される。
【0019】
表示制御部19により、ディジタルスキャンコンバーターへ、表示画像、ROIマーク、カーソル、及びポインタに関するデータが書き込まれ、読み出し制御される。ディジタルスキャンコンバーターにおいて超音波画像、カーソル、ポインタ、文字、ROI等を合わせた合成画像が生成される。
【0020】
超音波プローブ2には、超音波プローブ2の加速度を検知するための検知部221が設けられる。検知部221において検知された加速度に関するデータは、位置・傾斜角度計算部14に送信される。また、超音波プローブ2には、超音波を送受信する超音波送受信モードと超音波プローブ2を入力デバイスとするプローブ入力モードとを切り替えるための切り替えボタン223、プローブ入力モードによって入力された操作を確定するための決定ボタン224とが設けられる。
【0021】
表示の際、表示制御部19は、2次元走査を行う場合、2次元平面における例えば関心領域(ROI)等の位置を表示画像上に明示する機能を有する。一方、表示制御部19は、3次元走査の場合、ボリュームデータ内における例えば関心領域(ROI)等の位置を、表示画像上に明示する機能を有する。また、表示制御部19により、入力装置4から入力された断面位置及び断面方向の少なくとも一方に応じて、表示画像(MPR像)の断面位置と断面方向とのうち少なくとも一方が変更される。または、表示制御部19により、入力装置4から入力された視点位置と視線方向とのうち少なくとも一方に応じて、表示画像(ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、又はMIP画像)の視点位置と視線方向とのうち少なくとも一方を変更する。さらに、フライスルー実行時(フライスルー実行プログラム起動中)に、血管を表すボリュームデータにおいて、血管内に存在する視点の位置と方向とを変更する動作が、システム制御部18のもとで制御される。
【0022】
モニター3により、ディジタルスキャンコンバーターからの出力に従って、表示画像、ROIマーク等が表示画面に表示される。具体的には、モニター3には、表示画像は、表示画面の画像表示エリアに表示される。そしてモニター3には、画像表示エリアの所定位置にROIマークが表示画像に重ねて表示される。さらに、モニター3には、表示制御部19の制御に従い、超音波画像に重ねて、カーソル又はポインタが表示される。
【0023】
ROI設定部(図示しない)により、ユーザーにより入力装置4を介して入力された設定指示に応じて、ROIの候補領域に含まれるボリュームデータ内の領域にROIが設定される。一方、2次元走査を行う場合、ROI設定部により、2次元の画像上に関心領域(ROI)が設定される。また、カラードプラモードによる走査を行う場合も、2次元走査を行う場合と同様に、ROI設定部により、2次元の画像上に、色付きで関心領域が設定される。より詳細にROIの設定処理を説明する。まずROI設定部により、候補領域とボリュームデータ内の生体領域とが画像処理空間上の適当な位置に設定(数学的に定義)される。画像処理空間とは、ボリュームデータに対する種々の演算を行なうために情報処理用のメモリ上に設けられた仮想的な3次元空間である。例えば、入力装置4を介してなされた視点位置、又は視線方向の変更指示に応じてROI設定部により、この候補領域又は生体領域が画像処理空間内で移動される。
そしてユーザーにより入力装置4を介して設定指示が入力されると、ROI設定部により、候補領域に含まれるボリュームデータ内の領域(典型的には、生体領域の一部)にROIが設定される。
モード切り替え制御部12により、切り替えボタン223からのプローブ入力モードとスキャンモードとを互いに切り替えるための入力信号に基づいて、プローブ入力モードとスキャンモードとが互いに切り替えられる。例えば超音波診断装置1がスキャンモードにあるとき切り替えボタン223が操作されると、モード切り替え制御部12によりスキャンモードがプローブ入力モードへと切り替えられ、またプローブ入力モードにあるとき、切り替えボタン223がユーザーにより操作されるとスキャンモードへと切り替えられる。プローブ入力モードには、複数の機能のいずれかが、ユーザー指示のもと、スキャン前に割り当てられる。
メニュー発生部13により、プローブ入力モードに切り替えられると同時に、モニター3上に自動的にメニューウィンドウが発生される。また、入力装置4からメニューウィンドウを表示するための入力信号が入力された場合、モニター3上にメニューウィンドウが表示される。
位置・傾斜角度計算部14により、検知部221において検知された加速度の変化に関するデータを用いて、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とが随時計算される。なお、以降の実施形態では超音波プローブ2の位置と傾斜角度の2つの情報を用いて後述の制御を行う例について述べるが、例えば2つのうちの一方のみの情報を用いて後述の制御を行っても構わない。
【0024】
ゲイン決定部15により、STC制御プログラムがシステム制御部18におけるRAM等に読み出される。STC制御プログラムが実行されている場合において、位置・傾斜角度計算部14において計算された超音波プローブ2の位置と傾斜角度との変化量に基づいて、ゲイン調整量が決定される。さらに、システム制御部18により走査制御部20が制御された状態で、アンプ91に、決定されたゲイン調整量に関する制御信号が送信される。
カーソル・ポインタ発生部16により、位置・傾斜角度計算部14において計算された超音波プローブ2の位置と傾斜角度との変化量に基づいて、カーソル又はポインタの移動方向と移動量とが計算される。計算されたカーソル又はポインタの移動方向及び移動量に関する信号が、システム制御部18の制御の元で表示制御部19に設けられたフレームメモリに送信される。なお、カーソルとは、コンピュータのユーザーインターフェースを構成する要素のひとつで、入力装置4からの指示、操作の対象を指し示すために用いられ、通常は、画面上に矢印等の小さな図形で示される。一方、ポインタについても、入力装置4からの指示、操作の対象を指し示すために用いられるものであり、操作の対象を囲う四角形又は下線等の図形で示される。
視野深度決定部21により、画角制御プログラム、視野深度制御プログラム等がシステム制御部18におけるROM等に読み出されプログラムが実行されている状態において、位置・傾斜角度計算部14において計算された超音波プローブ2の位置と傾斜角度との変化量に基づいて、送信パルスの周期が決定される。また、システム制御部18により走査制御部20が制御された状態で、送信遅延回路102とレートパルス発生器103とに決定された送信パルスの周期に関する制御信号が送信される。
決定ボタン224、入力装置4等においてメニュー実行プログラム部6の所望のプログラムを実行するための入力信号が入力されると、システム制御部18の制御の元で、超音波計測のための計測プログラム、フライスループログラム等がシステム制御部18に設けられたROM等に読み出され、所望のプログラムが実行される。
視点移動速度・閾値決定部22により、フライスルー制御プログラムが起動された状態において(フライスルー実行時)血管内に存在する視点の移動速度と血管壁からの閾値とが、システム制御部18のもとで決定される。
検知部221は、位置センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー等種々のセンサーを用いて構成される。また、それらのセンサーを組み合わせたものとして構成しても構わない。
相関係数計算部23により、後述するフリーズされた画像とライブ画像の相関が逐次計算される。
【0025】
検知部221は、超音波プローブ2に設けられ、超音波プローブ2の直交3軸方向それぞれの加速度と重力方向に関する情報をセンサーで捉え、その情報を、位置・傾斜角度計算部14に送信する。以下、説明を具体的にするために、検知部221を、静電容量方式の3次元加速度センサーとして説明する。この3次元加速度センサーにより、任意の方向の加速度が検知できる。検知された加速度に関するデータは、位置・傾斜角度計算部14に送信される。位置・傾斜角度計算部14により、送信された加速度に関するデータを用いて重力方向を特定するとともに直交3軸方向それぞれの加速度が計算される。さらに、この特定された重力方向と、計算された直交3軸方向の加速度を基に、超音波プローブ2の傾斜角度の変化量と位置変化量とが一意に特定される。
3次元加速度センサーは、微小なICチップである。ICチップ内には、加速度を検知するための可動部分が設けられる。可動部分は、櫛状の多数のフィンが配置された構造となっており、可動部分と非可動部分のフィンの間には隙間がある。可動部分及び非可動部分はシリコンで製造されており、双方のフィンが極板コンデンサーのような物理的特性を有する。
外部からの物理的な力により可動部分のフィンが稼働すると、非可動部分のフィンとの間隔が変化し、静電容量も変化する。この静電容量の変化を検知することにより、任意の方向における加速度の大きさを検知できる。
また、3次元加速度センサー内部の可動部分を構成するシリコンには重さがあり、重力の影響を受ける。この重力の影響による可動部分の影響を検知し、重力の影響を含んだ加速度に関する情報が位置・傾斜角度計算部14に送信される。位置・傾斜角度計算部14は、重力の影響を含んだ加速度に関する情報に基づいて、直交3軸それぞれの方向の加速度と傾斜角度とを計算する。
本実施形態に係る超音波プローブ2は、通常の超音波プローブ2と異なり、超音波プローブ2による操作を行うための決定ボタン224と切り替えボタン223とを設ける。切り替えボタン223は、超音波振動子222から超音波ビームを発生し被検体をスキャンするスキャンモードと、超音波画像処理装置1本体における様々な動作を実行するための超音波プローブ入力モードとを交互に切り替えるためのボタンである。スキャンモードからプローブ入力モードに切り替える際に超音波画像がフリーズされ、フリーズ画像が保存される。
【0026】
また、決定ボタン224は、プローブ入力モードによって入力された操作を確定し、所望の動作を実行するための決定ボタンである。
【0027】
スキャン中、検知部221は超音波プローブ2の加速度に関するデータを、位置・傾斜角度計算部14に対して送信し続ける。また、スキャン中、位置・傾斜角度計算部14は、超音波プローブ2の加速度に関するデータを受信し続ける。
【0028】
送信ユニット10と受信ユニット9とにより、被検体内部が超音波で走査されている間(S11)、ある特定の時刻に装置の使用者が超音波プローブ2の切り替えボタン223を押すと(S12)、押した瞬間に超音波画像はフリーズ状態になる。モード切り替え制御部12により、システムの動作モードがスキャンモードからプローブ入力モードへ切り替えられるとともに、超音波画像がフリーズ状態になる(S13)。プローブ入力モードへ切り替えられると、モード切り替え制御部12の制御のもとで、超音波によるスキャンが停止され、表示制御部19に設けられたフレームメモリの読み出し制御が停止されることにより最終画像がフリーズし、切り替えボタン223が押された時点における超音波プローブ2の位置と傾斜角度とが、基準位置と基準傾斜角度として記憶される。また、超音波画像診断装置1の画面には、メニューを選択するためのウィンドウが表示される(S15)。メニューを選択するためのウィンドウが表示された状態において、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とのうち少なくとも一方が変化すると(S16)、検知部221は、超音波プローブ2の加速度を検知する。検知された重力のデータを含む加速度に関する情報は、位置・傾斜角度計算部14に送信される。位置・傾斜角度計算部14は、受信した重力のデータを含む加速度に関する情報を基に、重力方向を特定するとともに、直交3軸方向それぞれの加速度を計算する。位置・傾斜角度計算部14は、計算された加速度に関するデータを用いて積分演算処理を行うことにより、超音波プローブ2の位置変化量と傾斜角度の変化量とが計算される(S17)。この位置変化量は、超音波プローブ2の位置変化量と傾斜角度の変化量とが変化している限り、随時計算される。また、カーソル・ポインタ発生部16は、この計算された位置変化量と傾斜角度変化量とを基に実際のカーソル又はポインタの移動方向と移動量とを計算する。カーソル又はポインタの移動量と、計算されたカーソル又はポインタの移動量に関するデータは、表示制御部19に設けられたフレームメモリに記憶される(S18)。フレームメモリに記憶されたカーソル又はポインタに関するデータは、読み出し制御により、モニター3の規格に合うように順次読み出され、モニター3の所望の位置に表示される。
【0029】
以下、説明を簡単にするため、ポインタを中心に実施形態の動作を説明する。
【0030】
ポインタがメニュー中の例えば“計測”の項目に合ったところで、超音波プローブ2の決定ボタン224を押すと(S19)、超音波計測をするためのウィンドウが起動する。計測用のメニューウィンドウが表示されると再び計測用のメニューウィンドウの中の複数の項目から、例えば、“距離計測”等が選択される。
例えば、“距離計測”が選択された場合、超音波振動子222と患部との間の2点間の距離を測るためのウィンドウが表示される。このウィンドウ上でのポインタの移動方向及び移動量も、先ほどの“計測”に関するメニュー選択の場合と同様に、超音波プローブ2の加速度を検知し、検知された加速度を基に計算された位置変化量と傾斜角度変化量を基に制御される(S20)。
所望の操作が終了し、ユーザーが切り替えボタン223を押すことにより、超音波画像がフリーズしたプローブ入力モードから超音波を走査するスキャンモードへ切り替えを開始する(S21A)。切り替えボタン223が押された状態で、超音波プローブ2の傾斜角度と位置とが、始めに切り替えボタン223を押した時点において記憶していた基準位置と基準傾斜角度とにおおよそ一致したと位置・傾斜角度計算部14が判断した時点で(S22A)モード切り替え制御部12により、システムの動作モードがプローブ入力モードからスキャンモードに切り替えられる。また、プローブ入力モードに切り替えられるとフリーズされた超音波画像の解除が行われる(S23A)。
【0031】
図2Dは、フリーズ画像とライブ画像との一致によるスキャン再開に関するフローチャートである。プローブ入力モードであるとき(S41)切り替えボタン223を操作すると(S42)、システム制御部18は、超音波プローブ2による即時スキャンを開始させるために、送信ユニット10と受信ユニット9とを制御する。(S43)、モニター3に超音波画像(ライブ画像)を表示し、ライブ画像がリアルタイム更新される。ライブ画像をリアルタイム表示する際に、保存したフリーズ画像とライブ画像とを並列表示させるために、システム制御部18は、表示制御部19を制御する(もしくは透明度を変えて重畳表示する。)(S44)。フリーズ時に記憶した基準位置・基準傾斜角度と現在のプローブの位置・傾斜角度とが一致すると(S45)、プローブ入力モードから超音波送受信モードへ切り替えられる(S46)。超音波送受信モードへ切り替えられると、システム制御部18の制御のもとで、表示制御部が制御される。表示制御部の制御のもと、並列表示(もしくは重畳表示)が解除され、ライブ画像単独表示に切り替えられる。なお、基準位置と基準傾斜角度とを記憶する動作を省略しても構わない。この場合、相関係数計算部22により、フリーズ画像とライブ画像の相関が逐次計算され、相関係数が閾値を超えた(すなわち、フリーズ画像とライブ画像とが一致した場合)に並列表示を解除してライブ画像単独表示に切り替えてもよい。この動作により、フリーズ画像とライブ画像とを見比べながら、フリーズ時の超音波プローブ2の位置を探すことができる。操作者の感覚に頼ってフリーズ時の超音波プローブ2の位置を再現する場合に比べ操作性が向上する。
【0032】
図2Eは、本実施形態1に係る切り替えボタン223と、超音波画像のフリーズとの対応関係を示す図である。システムの動作モードがスキャンモードにあるとき切り替えボタン223を押すと、モード切り替え制御部12によりスキャンモードからプローブ入力モードへと動作モードが切り替えられる。モードが切り替えられると同時に、切り替えボタン223を押した時点における超音波プローブ2の位置と傾斜角度とに関する情報(基準位置、基準傾斜角度が記憶部112において記憶される。また、超音波プローブ2の基準位置と基準傾斜角度とに関する情報が記憶されると同時に超音波画像がフリーズされる。超音波画像がフリーズされたプローブ入力モードにおいて、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とのうち少なくとも一方が変化すると、モニター3内のポインタ等が移動する。
【0033】
操作者がモニター3内のポインタ移動やプローブ入力モードを用いた操作を終え、再びスキャンモードへ遷移する場合を考える。システムの動作モードがプローブ入力モードにあるとき切り替えボタン223を押した後、すぐに超音波画像のフリーズが解除されると、プローブ入力モードでの操作によって変化した超音波プローブ2の位置と傾斜角度とに応じた超音波画像がモニター3に表示されるため、操作者はプローブ入力モードに切り替える前に走査していた超音波プローブ2の位置と傾斜角度とがわからなくなってしまう。そこで、切り替えボタン223を押してもすぐには超音波画像のフリーズを解除せずに、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とが、以前切り替えボタン223を押した時点で記憶していた基準位置と基準傾斜角度とにおおよそ一致したところで、始めてフリーズが解除される。また、プローブ入力モードへ切り替えられたと同時に、超音波画像のフリーズが解除される。
【0034】
また別の実施形態として、プローブ入力モードにあるとき切り替えボタン223を操作すると、モニター3中に超音波プローブ2の模式図を表示し、更に超音波プローブ2の模式図の上に矢印画像を表示しても構わない。矢印画像はフリーズ画像を保存した際の超音波プローブ2の基準位置・基準傾斜角度への方向をユーザーへナビゲートするためのものである。位置をナビゲートする矢印と傾斜角度をナビゲートする矢印とをそれぞれ表示する。
【0035】
プローブ入力モード中の任意の時刻における超音波プローブ2の位置・傾斜角度と基準位置・基準傾斜角度との差分に基づいて、矢印の方向と長さを変化させて基準位置・基準傾斜角度がユーザーに示される。例えば位置をナビゲートする矢印は、超音波プローブ2の現在位置に対する基準位置の方向を矢印により表示する。現在位置と基準位置との差が大きい場合は矢印が長く、小さい場合は矢印が短くなるようにその表示が制御される。切り替えボタン223を押した時点で記憶した基準位置・基準傾斜角度と現在のプローブの位置・傾斜角度とが一致すると、プローブ模式図と矢印との表示を解除しスキャンモードへ切り替える。
【0036】
この動作により、矢印画像を見ながらフリーズ時の超音波プローブ2の位置を探すことができる。操作者の感覚に頼ってフリーズ時の超音波プローブ2の位置を再現する場合に比べ操作性が向上する。
【0037】
図2Fは、ポインタと、メニューウィンドウの表示の様子を示す模式図である。図2Fに示されるように、超音波画像は、画面の左側等所定の場所に示され、メニューウィンドウは、画面の右側に示される。メニューウィンドウは、“計測”、“画角制御”、“STC制御”等複数の選択メニューが表示される。例えば、“計測”のメニューを選択すると、“計測”のサブメニューである“距離計測”等の項目を選択するためのサブメニューウィンドウが表示される。
図3Aは、本実施形態に係る超音波プローブ2の傾斜角度の変化と、機能の割り当てとの対応関係を模式的に示す図である。決定ボタン224が入力された時点における超音波プローブ2の基準位置(3次元座標データ)と基準傾斜角度とを予め記憶ユニット5に記憶しておき、基準位置と基準傾斜角度とからの直交2軸方向(すなわち4方向)それぞれの位置と傾斜角度とのうち少なくとも一方の変化に応じて超音波画像診断装置本体1の様々な動作が制御される。動作機能には、例えば、ゲイン調整、画角の調整、タイムゲインコントロール調整等超音波画像診断装置1における様々な動作機能が割り当てられる。傾きの方向に対して割り当てられる動作は、ユーザーが、プローブ入力モードへ移行する前に予め設定する。
図3Bは、タイムゲインコントロール調整の制御における超音波プローブ2の操作とゲイン調整との対応関係を示す図である。
図3Bに示すように、タイムゲインコントロール調整モードでは、モニター3には、超音波画像の脇に複数のノブ画像Nが表示される。ノブ画像Nは、超音波が反射する深さを各段階に分け、その段階毎に表示される。
このタイムゲインコントロール調整モードにおいて、ユーザーの操作により超音波プローブ2が上下方向に傾けられると、ゲイン値の変更対象となる深さが変更される。具体的には、ゲイン値の変更対象となる深さが、超音波プローブ2の上下方向の傾きに比例させて段階単位で変更される。表示画面上では、その段階に対応するノブ画面Nがアクティブ色に変更される。
超音波プローブ2がユーザーにより左右に傾けられると、変更対象となっている深さから反射した超音波のエコー信号に対するゲイン値が変更される。具体的には、変更対象となっている深さから反射した超音波のエコー信号に対するゲイン値が、超音波プローブ2の左右方向の傾斜角度に比例させて増減される。表示画面上では、変更対象となった深さに並ぶBモード画像上の画素の輝度が、変更されたゲイン値分増幅されて表示される。また、変更対象となっている深さに対応するノブ画像Nが、ゲイン値の増加又は減少分だけ移動されて変更される。
また、タイムゲインコントロール調整モードにおいて変更対象となる深さを、一度超音波プローブ2を上下方向に傾けることにより選択された状態においては、変更対象となる深さの段階は、上下方向へ傾けられた回数に応じて順々に深く又は浅く変更される。例えば、超音波プローブ2を上方向に1回傾けると、1段階浅い位置に対応するノブ画像Nがアクティブ色に変更される。
図2Bは、超音波プローブ2を入力デバイスとした場合におけるゲイン調整に関するフローチャートである。まず、送信ユニット10と受信ユニット9とにより、被検体を対象として超音波が送受信された状態で(S21)、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とが変化した場合(S22)、位置・傾斜角度計算部14において、超音波プローブ2の位置変化量と傾斜角度変化量とが随時計算される。計算された位置変化量と傾斜角度変化量とに基づいて、ゲイン決定部15により、ゲイン調整量が決定される(S23)。走査制御部20の制御のもとで、増幅器91によりゲインの量が調整される(S24)。
図3Cは、Bモード画像のダイナミックレンジと画像全体のゲインの制御における超音波プローブ2の操作とゲイン調整との対応関係を模式的に示した図である。
図3Cに示すように、ダイナミックレンジ調整モードでは、ユーザーの操作により超音波プローブ2が上下方向に傾けられると、ダイナミックレンジが変更される。一方、ユーザーの操作により超音波プローブ2が左右方向に傾けられると、ゲインが変更される。例えば、ユーザーの操作により超音波プローブ2が上方向に傾けられると、その傾きの程度に比例してダイナミックレンジが広がり、ユーザーの操作により超音波プローブ2を下方向に傾けられると、その傾きの程度に比例してダイナミックレンジが狭まる。また、ユーザーの操作により超音波プローブ2が左方向に傾けられると、その傾きの程度に比例して画像全体の輝度が下がり、ユーザーの操作により超音波プローブ2が右方向に傾けられると、その傾きの程度に比例して画像全体の輝度が上がる。
図3Dは、カラードプラモード画像を生成する領域の制御における超音波プローブ2の操作とゲイン調整との対応関係を模式的に示した図である。
図3Dに示されるように、血流情報検出領域の設定モードにおいては、関心領域(ROI)の対角が超音波プローブ2の動作によって指定される。ユーザーの操作により超音波プローブ2が上下方向、又は左右方向に傾けられると、その傾きの程度に対応する位置に対角の一角を指定するマーカMが移動する。マーカMを移動させて、決定ボタン224が押下されると、マーカMの位置が対角のうちの一角として確定する。この対角で示される幅及び深さの関心領域(ROI)が血流情報検出領域として設定される。その血流情報検出領域がカラードプラモード画像生成のために走査される。また、その血流情報検出領域に対応するエコー信号がカラードプラモード画像生成のために信号処理される。なお、一例として2つの対角を指定することにより関心領域(ROI)を設定する例を示したが、実施形態はこれに限られない。例えば多角形の各頂点を、決定ボタン224を押下する度に指定しても構わないし、決定ボタン224を押下したまま超音波プローブ2を傾けることによりマーカMを移動させ、マーカMの移動軌跡を関心領域(ROI)として指定するものであっても構わない。
【0038】
図3Eは、Bモード画像の視野角調整と、超音波プローブ2の操作との対応関係を示す模式図である。
図3Eに示されるように、視野角調整モードでは、超音波プローブ2を上下方向に傾けると、超音波の視野角が変更される。例えば、ユーザーの操作により超音波プローブ2が上方向に傾けられると、その傾きの程度に比例して視野角が広がり、ユーザーの操作により超音波プローブ2が下方向に傾けられると、その傾きの程度に比例して視野角が狭まる。
図3Fは、超音波プローブ2の操作と送信ユニット10において発生する送信パルスの周期との対応関係を模式的に示す図である。
図3Fに示されるように、ユーザーの操作により超音波プローブ2が上方向に傾けられると、超音波振動子222に対して送信されるパルス信号の周期が大きくなる。逆に、ユーザーの操作により超音波プローブ2が下方向に傾けられると、超音波振動子222それぞれに対して送信されるパルス信号の周期が小さくなる。このパルス信号の周期を変化させることにより、視野角、焦点位置が変化する。
また、図2Cは、本実施形態2に係る視野深度の動作制御に関するフローチャートである。
受信ユニット9と送信ユニット10との2つのユニットにより被検体内部が超音波で走査されている間(S31)、切り替えボタン223により、スキャンモードからプローブ入力モードへ切り替えるための信号が入力されると(S32)、モード切り替え制御部12により、システムの動作モードがスキャンモードからプローブ入力モードに切り替えられる(S33)。また、モード切り替え制御部12の制御のもとで、スキャンが停止され、表示制御部19により最終画像がフリーズし、切り替えボタンが入力された時点での基準位置及び基準傾斜角度が記憶される(S34)。超音波プローブ2の位置又は傾斜角度のうち少なくとも一方が変化した場合(S35)、視野角制御プログラム等がシステム制御部18に設けられたROM等のメモリに読み出されプログラムが実行された状態において、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とのうち少なくとも一方の変化量に基づいて、レートパルスの発生周期が計算される(S36)。計算されたレートパルス発生周期に関する制御信号は、システム制御部18のもとで走査制御部20が制御された状態において、送信遅延回路102とレートパルス発生器103とに送信される(S37)。レートパルス発生周期を更新した後に切り替えボタン223が操作されると、モード切替制御部12はプローブ入力モードからスキャンモードへとシステムの動作モードを切り替え、スキャンを再開する。再開したスキャンにおいてはレートパルス発生周期が更新されているため、発生周期に応じた視野深度で超音波画像を表示させることができる。
【0039】
上記の実施形態においては、超音波プローブ2を入力デバイスとした場合に、ゲイン調整、カラードプラモード領域の調整、視野角の調整、タイムゲインコントロール調整について説明した。しかし、これらの調整動作に限られるものではなく、操作パネルにより操作できる機能に広く適用可能である。
フライスルーにおいては、収集したボリュームデータを元に構成した3次元画像のうち特に血管領域を扱う。フライスルーにおいては、視点を移動させながら、任意の方向から血管内を観察することができる。フライスルー機能を用いて、血管の中を、血管壁から一定距離を保って移動しながら血管内部の様子を任意の視点から観察することができる。フライスルー実行中に、装置の使用者は、通常、自動的に血管内を移動する画像を観察するだけで良い。なお、入力装置4のトラックボール、ロータリーエンコーダを用いて、自動で血管中を進行方向に移動する速度を変更することが可能である。また、血管中における画像の視点は、血管壁から一定の距離を保つ必要がある。そのため、血管が急に狭くなった場所においては全方位の壁面から決められた距離を保つことができなくなる場合がある。この場合、血管が急に狭くなった場所で視点移動が停止してしまうという特性がある。フライスルー中において画面が停止した場合、又は画面が停止することを防ぐ場合、壁面からの距離の閾値を変更することで、視点を先に移動させることが可能である。この閾値の変更機能と、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とのうち少なくとも一方の変化とを対応付ける。以下、特に、超音波プローブ2の傾斜角度の変化に応じてフライスルー中における視点速度、閾値のパラメータを変化させる場合について述べる。超音波プローブ2の位置と傾斜角度とのうち少なくとも一方が変化すると、加速度に関する情報が位置・傾斜角度計算部14に送信される。位置・傾斜角度計算部14において、加速度に関する情報に基づいて、重力方向を加味した積分演算等を行うことにより、超音波プローブ2の位置と傾斜角度とが随時計算される。視点移動速度・閾値決定部22は、計算された位置と傾斜角度とに基づいて、フライスルー中における血管内に存在する視点速度と、視点が移動可能となるための血管壁と視点との最小距離(閾値)と、のうち少なくとも一方を決定する。
【0040】
また、フライスルー画像表示中に、超音波プローブ2を傾けた方向によって視点方向を変化させることも可能である。視点方向を変化させている間は、視点の移動方向と移動速度とは変化させないか、あるいは視点移動を停止させる。
【0041】
超音波プローブ2をユーザーの操作により、上方向に傾けると、視線方向が、超音波プローブ2を傾ける以前の視線方向から、超音波プローブ2の傾きに応じて、上に移動する。逆に、ユーザーの操作により、超音波プローブ2を下方向に傾けると、視線方向が、超音波プローブ2を傾ける以前の視線方向から、超音波プローブ2の傾きに応じて、下に移動する。また、ユーザーの操作により、超音波プローブ2を左方向に傾けると、視線方向が、超音波プローブ2を傾ける以前の視線方向から、超音波プローブ2の傾きに応じて、左に移動する。ユーザーの操作により、超音波プローブ2を右方向に傾けると、視線方向が、超音波プローブ2を傾ける以前の視線方向から、超音波プローブ2の傾きに応じて、右に移動する。
【0042】
図4は、フライスルー画像における画像の変化と超音波プローブ2の操作との対応関係を模式的に示す図である。
図4に示されるように、フライスルー画像表示中においては、超音波プローブ2の上下方向の傾斜角度に比例して血管中を走行する視点の移動速度を増減させ、左右方向の傾斜角度の程度に比例して視点の壁面からの閾値を増減させる。例えば、超音波プローブ2をユーザーの操作により上方向に傾けると、傾きの程度に応じて血管中の視点の移動速度を増加させ、ユーザーの操作により超音波プローブ2を下方向に傾けると、傾きの程度に応じて血管中の視点の移動速度を減少させる。また、ユーザーの操作により超音波プローブ2を左方向に傾けると、傾きの程度に応じて血管中に存在する視点の血管壁からの距離を増加させ、ユーザーの操作により超音波プローブ2を右方向に傾けると、傾きの程度に応じて血管中に存在する視点の血管壁からの距離を減少させる。
上記記載の超音波プローブ2の通常の操作は、超音波プローブ2を当てている位置をできるだけ変えないで超音波プローブ2の傾斜角度を変化させるものとして記載した。超音波プローブ2を当てている位置をできるだけ変えないで超音波画像診断装置1の様々な動作を実行するためには、体表に当てている超音波プローブ2の位置を変えないで、超音波プローブ2を上下左右方向に傾ける必要がある。この場合、傾斜角度の変化を主に検知する必要性から、ジャイロセンサー、加速度センサーが最適である。しかし、これらのセンサーに限られるものではない。より位置、傾斜角度の検知精度を上げるため、位置センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーを組み合わせても良い。
以上述べたように、超音波プローブ2を走査する側の手の動きにより超音波プローブ2の傾斜角度を変化させる等の動作を行うことで超音波画像診断装置1のポインタ移動等の操作することが可能となる。これにより、ハンドヘルドタイプのような装置の操作性を向上させることができる。
また、超音波プローブ2をコマンド入力デバイスとして共有した場合において、切り替えボタン223を押し、ポインタ移動を(例えば、超音波画像上のポインタ移動)を行い、所望の動作を行った後においても、超音波プローブ2の位置と傾斜角度と被検体の超音波画像の表示位置との関係を、切り替えボタン223を押す前の状態に保つことで、超音波検査をスムーズに移行させる超音波画像診断装置を提供することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1…超音波画像診断装置、2…超音波プローブ、3…モニター、4…入力装置、5…記憶ユニット、6…メニュー実行プログラム、7…Bモード処理ユニット、8…ドプラ処理ユニット、9…受信ユニット、10…送信ユニット、11…装置本体、12…モード切り替え制御部、13…メニュー発生部、14…位置・傾斜角度計算部、15…ゲイン制御部、16…カーソル・ポインタ発生部、17…画像生成回路、18…システム制御部、19…表示制御部、20…走査制御部、21…視野深度制御部、22…視点移動速度・閾値決定部、23…相関係数計算部、91…増幅器、92…受信遅延回路、101…パルサ、102…送信遅延回路、103…レートパルス発生器、221…検知部、222…超音波振動子、223…切り替えボタン、224…決定ボタン
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4