特許第5865736号(P5865736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865736
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20160204BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20160204BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20160204BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20160204BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   H02P7/63 303V
   H02M7/48 LZHV
   B60L9/18 J
   B60L3/00 S
   B60L11/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-48512(P2012-48512)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-187919(P2013-187919A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100155789
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕康
(72)【発明者】
【氏名】川崎 宏治
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩二
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/014392(WO,A1)
【文献】 特開2009−177899(JP,A)
【文献】 特開2011−254673(JP,A)
【文献】 特開2011−246121(JP,A)
【文献】 特開2011−155788(JP,A)
【文献】 特開2010−233384(JP,A)
【文献】 特開2005−269722(JP,A)
【文献】 特開2005−130614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
B60L 3/00
B60L 9/18
B60L 11/18
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相回転機(20)と第1蓄電手段(10,12)および第2蓄電手段(10,12)との間の電力の授受を仲介して且つ、前記多相回転機の端子のそれぞれと、高電位側入力端子および低電位側入力端子のそれぞれとの間を電子操作によって開閉する機能を有する高電位側の流通規制要素(Sup・Dup,Svp・Dvp,Swp・Dwp)および低電位側の流通規制要素(Sun・Dun,Svn・Dvn,Swn・Dwn)の直列接続体を備える直流交流変換回路(INV)と、
前記第1蓄電手段と前記第2蓄電手段とを前記流通規制要素を介すことなく並列接続する第1状態と、前記第1蓄電手段の一方の端子および前記第2蓄電手段の一方の端子を接続して且つ、前記第1蓄電手段の他方の端子を前記流通規制要素を介して前記第2蓄電手段の他方の端子に接続する第2状態との一対の状態について、それらの状態を選択的に切り替える切替回路(MR1〜MR4,MR1a,MR1b,MR1c,MR2a,MR2b,MR2c,MR2n)と、
を備え、
前記第1状態において、前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段は、前記直列接続体に並列接続されており、
前記第2状態において、前記流通規制要素を電子操作することで、前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のいずれか一方から他方への電気エネルギの移動処理を前記多相回転機を介して行う第1移動処理と、いずれか他方から一方への電気エネルギの移動処理を前記多相回転機を介して行う第2移動処理とを行なう充放電制御手段と、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記切替回路は、
前記第1蓄電手段の前記他方の端子と前記第2蓄電手段の前記他方の端子との間を開閉する第1状態用開閉手段(MR1)と、
前記第1蓄電手段の前記他方の端子と前記回転機の端子の一部に接続される前記高電位側の流通規制要素および前記低電位側の流通規制要素の接続点との間を開閉する第2状態用開閉手段(MR2)と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記切替回路は、
前記第1蓄電手段の前記他方の端子と前記第2蓄電手段の前記他方の端子との間を開閉する第1状態用開閉手段(MR1)と、
前記第1蓄電手段の前記他方の端子と前記回転機のステータコイルの端部との間を開閉する第2状態用開閉手段(MR2n)と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のうちの少なくとも一方は、2次電池であり、
前記充放電制御手段は、前記2次電池の温度が規定温度以下であることを条件に前記第1移動処理および前記第2移動処理を行なう昇温制御手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のうちの少なくとも一方は、2次電池であり、
前記充放電制御手段は、前記第1移動処理および前記第2移動処理の1周期を、前記2次電池の温度が低いほど短い時間に設定する周期可変手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のうちの少なくとも一方は、2次電池であり、
前記充放電制御手段は、前記第1移動処理および前記第2移動処理の1周期を、前記2次電池の端子電圧が低いほど短い時間に設定する周期可変手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のうちの少なくとも一方は、2次電池であり、
前記充放電制御手段は、前記第1移動処理および前記第2移動処理の1周期を、前記2次電池の充電率が低いほど短い時間に設定する周期可変手段を備えることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記充放電制御手段は、前記第1移動処理および前記第2移動処理を行なうに際して前記流通規制要素の開閉周波数を所定の音の列に沿って変動させる音制御手段を備えることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段の少なくとも一方は、車載主機としての回転機のエネルギ貯蔵手段であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
車載主機としての回転機(20)のエネルギを貯蔵するための第1蓄電手段(12)および該第1蓄電手段とは相違する第2蓄電手段(20)間に介在する電力変換回路(INV)を操作することで、前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のいずれか一方から他方への電気エネルギの移動処理である第1移動処理と、前記他方から前記一方への電気エネルギの移動処理である第2移動処理とを行なう充放電制御手段(30)を備え、
前記充放電制御手段は、前記第1移動処理および前記第2移動処理を行なうに際し、前記電力変換回路を構成するスイッチング素子の開閉周波数を所定の音の列に沿って変動させる音制御手段を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相回転機と一対の蓄電手段との間の電気エネルギの授受を仲介する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載主機としての回転機のエネルギを貯蔵するための蓄電手段として、リチウムイオン2次電池等の2次電池が用いられている。2次電池は、一般に、温度が過度に低い場合、最大出力が著しく低下し、主機としての回転機に十分な電力を供給することが困難となる。
【0003】
そこで従来、たとえば下記特許文献1に見られるように、車載主機に接続されるインバータと2次電池との間に昇降圧コンバータを備え、昇降圧コンバータの操作による昇圧制御と降圧制御とを繰り返すことで2次電池の昇温制御を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−312160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記昇降圧コンバータは、車載主機に接続されるインバータと2次電池との間に必ず備えられるものではない。そして、昇降圧コンバータを備えないものにあっては、昇温制御を行なうことができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、多相回転機と一対の蓄電手段との間の電気エネルギの授受を仲介する新たな電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0008】
発明は、多相回転機(20)と第1蓄電手段(10,12)および第2蓄電手段(10,12)との間の電力の授受を仲介して且つ、前記多相回転機の端子のそれぞれと、高電位側入力端子および低電位側入力端子のそれぞれとの間を電子操作によって開閉する機能を有する高電位側の流通規制要素(Sup・Dup,Svp・Dvp,Swp・Dwp)および低電位側の流通規制要素(Sun・Dun,Svn・Dvn,Swn・Dwn)の直列接続体を備える直流交流変換回路(INV)と、前記第1蓄電手段と前記第2蓄電手段とを前記流通規制要素を介すことなく並列接続する第1状態と、前記第1蓄電手段の一方の端子および前記第2蓄電手段の一方の端子を接続して且つ、前記第1蓄電手段の他方の端子を前記流通規制要素を介して前記第2蓄電手段の他方の端子に接続する第2状態との一対の状態について、それらの状態を選択的に切り替える切替回路(MR1〜MR4,MR1a,MR1b,MR1c,MR2a,MR2b,MR2c)と、を備え、前記第1状態において、前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段は、前記直列接続体に並列接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、第1状態において、第1蓄電手段および第2蓄電手段を直流交流変換回路の直流電圧源として利用することができる。そして、第2状態においては、流通規制要素の電子操作によって、多相回転機のコイルを介して第1蓄電手段と第2蓄電手段とを電気的に接続することができる。このため、多相回転機のコイルを電力変換手段のインダクタとして利用することができる。したがって、第2状態において、流通規制要素の電子操作によって、第1蓄電手段と第2蓄電手段との間の電力の授受を行なうことができる。
【0010】
第2の発明は、車載主機としての回転機(20)のエネルギを貯蔵するための第1蓄電手段(12)および該第1蓄電手段とは相違する第2蓄電手段(20)間に介在する電力変換回路(INV)を操作することで、前記第1蓄電手段および前記第2蓄電手段のいずれか一方から他方への電気エネルギの移動処理である第1移動処理と、前記他方から前記一方への電気エネルギの移動処理である第2移動処理とを行なう充放電制御手段(30)を備え、前記充放電制御手段は、前記第1移動処理および前記第2移動処理を行なうに際し、前記電力変換回路を構成するスイッチング素子の開閉周波数を所定の音の列に沿って変動させる音制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、音制御手段を備えることで、充放電制御手段によって生じる音を人に不快感を与えないものとしたり、人に注意を促すものとしたり、車両のほかの電子機器の音を打ち消すものとしたりすることができる。
【0012】
なお、本発明にかかる以下の代表的な実施形態に関する概念の拡張については、代表的な実施形態の後の「その他の実施形態」の欄に記載してある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
図2】同実施形態にかかる昇圧処理を示す回路図。
図3】同実施形態にかかる降圧処理を示す回路図。
図4】同実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す流れ図。
図5】同実施形態にかかる充放電周波数と発熱量との関係を示す図。
図6】同実施形態にかかる昇温制御を示すタイムチャート。
図7】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
図8】第2の実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す流れ図。
図9】同実施形態にかかる充放電周波数と発熱量との関係を示す図。
図10】第3の実施形態にかかる降圧処理を示す回路図。
図11】同実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す流れ図。
図12】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
図13】同実施形態にかかる充放電周波数と発熱量との関係を示す図。
図14】同実施形態にかかる昇温制御を示すタイムチャート。
図15】第4の実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す流れ図。
図16】同実施形態にかかる昇温制御を示すタイムチャート。
図17】第5の実施形態にかかるシステム構成図。
図18】同実施形態にかかる昇圧処理を示す回路図。
図19】同実施形態にかかる降圧処理を示す回路図。
図20】第6の実施形態にかかる音制御手段の原理を説明する図。
図21】同実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す流れ図。
図22】第7の実施形態にかかるシステム構成図。
図23】同実施形態にかかる平滑コンデンサの充電処理を示す回路図。
図24】同実施形態にかかる平滑コンデンサの充電処理を示す回路図。
図25】上記実施形態の変形例にかかる回路図。
図26】上記実施形態の変形例にかかる回路図。
図27】上記実施形態の変形例にかかる回路図。
図28】上記変形例にかかる放電処理を示す回路図。
図29】上記変形例にかかる充電処理を示す回路図。
図30】上記実施形態の変形例にかかる回路図。
図31】上記変形例にかかる放電処理を示す回路図。
図32】上記変形例にかかる充電処理を示す回路図。
図33】上記実施形態の変形例にかかる回路図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換装置を車載主機に接続される電力変換装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すモータジェネレータ20は、車載主機としての多相回転機であり、ロータ20rが駆動輪に機械的に連結されている。本実施形態では、モータジェネレータ20として、U相のステータコイルwu、V相のステータコイルwvおよびW相のステータコイルwwが中性点で連結された3相回転機を例示している。
【0016】
モータジェネレータ20の各端子(ステータコイルwu,wv,wwのうち中性点側ではない端部)は、インバータINVを介して高電圧バッテリ10に接続可能とされている。高電圧バッテリ10は、モータジェネレータ20のエネルギ貯蔵手段である。特に、高電圧バッテリ10は、電池セルC1〜Cnの直列接続体としての組電池である
ここで、電池セルC1〜Cnとしては、たとえばリチウムイオン2次電池等とすればよい。
【0017】
インバータINVは、高電位側のスイッチング素子S¥p(¥=u,v,w)および低電位側のスイッチング素子S¥nの直列接続体を3組備えており、これらが互いに並列接続されたものである。これら高電位側のスイッチング素子S¥pおよび低電位側のスイッチング素子S¥nの接続点は、モータジェネレータ20のU相、V相およびW相の端子(ステータコイルwu、wv、wwの端部)に接続される。
【0018】
上記スイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)として、本実施形態では、IGBTを例示しており、スイッチング素子S¥#には、ダイオードD¥#が逆並列に接続されている。ダイオードD¥#は、スイッチング素子S¥#を保護する機能のみならず、低電位側から高電位側への電流のみを許容する整流手段としての機能を有している。そして、スイッチング素子S¥#およびダイオードD¥#によって、高電位側および低電位側のいずれか一方から他方と他方から一方との双方向の電流の流通経路となる流通規制要素を構成する。
【0019】
インバータINVの高電位側の入力端子には、リレーMR1を介して高電圧バッテリ10の正極が接続されている。また、インバータINVの高電位側の入力端子および低電位側の入力端子間には、平滑コンデンサ12が接続されている。
【0020】
上記高電圧バッテリ10の正極は、リレーMR2を介して高電位側のスイッチング素子Supと低電位側のスイッチング素子Sunとの接続点に接続されている。ここで、本実施形態では、リレーMR1,MR2として、いずれも可動接点形の電磁形リレーを想定している。
【0021】
上記スイッチング素子S¥#は、制御装置30からの操作信号g¥#によって電子操作される。また、リレーMR1,MR2は、制御装置30からの操作信号m1,m2によって電子操作される。
【0022】
制御装置30は、インバータINVを操作することで、モータジェネレータ20の制御量を制御する装置である。さらに、制御装置30は、高電圧バッテリ10の温度が低い場合、その温度を上昇させるべく、高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理と、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理とを行なう。これは、高電圧バッテリ10の充放電による内部抵抗での発熱を狙った昇温制御である。昇温制御は、温度センサ32によって検出される高電圧バッテリ10の温度THや、監視装置34によって検出される高電圧バッテリ10の各電池セルCi(i=1〜n)の電圧(セル電圧Vi)に基づき行われる。
【0023】
ここで、高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理は、図2に示すように、高電圧バッテリ10の電圧を昇圧して平滑コンデンサ12に印加する昇圧処理となる。ここでは、まず、リレーMR1を開状態として且つリレーMR2を閉状態とする。そして、リレーMR2によって高電圧バッテリ10に接続されないレッグであるV相およびW相について、下側アームのスイッチング素子Svn,Swnをオン操作する。これにより、高電圧バッテリ10、リレーMR2,モータジェネレータ20、スイッチング素子Svn,Swnを備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20に電気エネルギが蓄えられる。次に、スイッチング素子Svn,Swnをオフ操作することで、モータジェネレータ20、ダイオードDvp,Dwp、平滑コンデンサ12、高電圧バッテリ10およびリレーMR2を備えるループ経路に電流が流れ、平滑コンデンサ12が充電される。
【0024】
一方、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理は、図3に示すように、平滑コンデンサ12の電圧を降圧して高電圧バッテリ10に印加する降圧処理となる。ここでは、まず、リレーMR2によって高電圧バッテリ10に接続されないレッグであるV相およびW相について、上側アームのスイッチング素子Svp,Swpをオン操作する。これにより、平滑コンデンサ12、スイッチング素子Svp,Swp、モータジェネレータ20、リレーMR2、高電圧バッテリ10を備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20に電気エネルギが蓄えられる。次に、スイッチング素子Svp,Swpをオフ操作することで、モータジェネレータ20、リレーMR2,高電圧バッテリ10、ダイオードDvn,Dwnを備えるループ経路に電流が流れる。
【0025】
このように、高電圧バッテリ10と平滑コンデンサ12との間で電気エネルギの移動処理を行なうことで、高電圧バッテリ10のエネルギ消費を抑制しつつ、これを昇温することができる。
【0026】
図4に、本実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置30によって実行される。なお、この処理は、本実施形態にかかる昇温制御手段を構成する。
【0027】
この一連の処理では、まず温度センサ32によって検出される高電圧バッテリ10の温度THが、規定温度Tth以上であるか否かを判断する。ここで、規定温度Tthは、高電圧バッテリ10の出力可能な電力が、車両の走行開始に要求される出力未満となる温度の上限値に応じて設定すればよい。ここで、車両の走行開始に要求される出力とは、車載主機のためのエネルギ貯蔵手段として高電圧バッテリ10のみを備える車両にあっては、車両の発進に要求される出力とすればよい。また、たとえば内燃機関を主機としてさらに備えて且つ、内燃機関の起動手段がモータジェネレータ20であるハイブリッド車にあっては、内燃機関の起動に要求される出力とすればよい。
【0028】
ステップS10において、規定温度Tth未満であると判断される場合、車両の発進に先立ち、高電圧バッテリ10の昇温制御が必要と考えられることから、ステップS12に移行する。ステップS12においては、リレーMR1を開状態として且つ、リレーMR2を閉操作する。なお、この処理は、車両の発進に先だって行われることを想定しており、リレーMR1は特段の事情がない限り開状態となっていると考えられる。
【0029】
続くステップS14においては、先の図2に示した高電圧バッテリ10の放電処理と、先の図3に示した高電圧バッテリ10の充電処理とからなる一対の処理について、その1周期の逆数(充放電周波数fbb)を設定する。ここでは、セル電圧Viの最低値Vminと、温度THとに基づき、充放電周波数fbbを可変設定する。この処理は、本実施形態にかかる周期可変手段を構成する。
【0030】
これは、電池セルCiの端子電圧を下限値以上とするとの条件下、高電圧バッテリ10の発熱量を極力大きくするための設定である。すなわち、充放電周波数fbbを低周波とするほど、先の図2に示した高電圧バッテリ10の放電期間が長くなり、ひいては平滑コンデンサ12の充電電圧が高くなる。このため、高電圧バッテリ10の充電電流量が大きくなり、図5に示すように、発熱量が大きくなる。ただし、高電圧バッテリ10の放電期間が長くなると、図5に高電圧バッテリ10を構成する電池セルCiを7セルとした簡易なシミュレーション結果にて例示するように、充放電に伴う端子電圧の最低値が低下するため、端子電圧の下限値(図中、17.5V)以上との制約に抵触するおそれがでてくる。
【0031】
そこで、セル電圧Viの最低値Vminが低いほど、充放電周波数fbbを上昇させる。これは、充放電周波数fbbが小さいほど、先の図2に示した高電圧バッテリ10の放電期間が長くなり、ひいては放電量が大きくなることに鑑みたものである。すなわち、放電量が大きいほど電池セルCiの端子電圧が低下する一方、電池セルCiの端子電圧には下限値が存在する。このため、端子電圧が下限値を下回らない範囲で実現可能な充放電周波数fbbの最低値は、最低値Vminが低いほど高くなる。
【0032】
また、温度THが低いほど、充放電周波数fbbを上昇させる。これは、温度THが低いほど、高電圧バッテリ10の内部抵抗が大きくなるため、先の図2に示した高電圧バッテリ10の端子電圧が低くなることに鑑みたものである。ここで、電池セルCiの端子電圧には下限値があることから、端子電圧が下限値を下回らない範囲で実現可能な充放電周波数fbbの最低値は、温度THが低いほど高くなる。
【0033】
なお、本実施形態では、充放電周波数fbbを、モータジェネレータ20が回転しない高周波数とする。具体的には、モータジェネレータ20の駆動時における電気角周波数の最大値の「1/5」以上(望ましくは、「1/4」以上)に設定する。充放電周波数fbbを高周波とすることで、停止状態からロータ20rが回転を開始することが困難となり、停止状態を維持することができる。
【0034】
続くステップS16においては、スイッチング素子Svn,Swnをオン・オフ操作する。ここで、スイッチング素子Svn,Swnのオン・オフの周期や、周期に対するオン時間の時比率は、スイッチング素子Svn,Swnに流れる電流が許容最大電流以下となるように設定される。
【0035】
続くステップS18では、ステップS16の処理の継続時間が「1/fbb」となったか否かを判断する。これは、先の図2に示した処理を行なう期間と、先の図3に示した処理を行なう期間とを等しくしたための設定である。そして、ステップS18において肯定判断される場合、ステップS20において、スイッチング素子Svp,Swpをオン・オフ操作する。ここで、スイッチング素子Svp,Swpのオン・オフの周期や、周期に対するオン時間の時比率は、スイッチング素子Svp,Swpに流れる電流が許容最大電流以下となるように設定される。この処理は、「1/2fbb」に渡って継続される(ステップS22)。そして、「1/2fbb」だけ継続した後、ステップS10に戻る。
【0036】
なお、ステップS10において肯定判断される場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0037】
図6に、充放電周波数fbbを「50Hz」とし、高電圧バッテリ10を構成する電池セルCiを7個とした場合について、バッテリの端子電圧や、これに対する平滑コンデンサの電圧、さらには充放電電流のシミュレーション結果を示す。ここで、7セルの端子電圧は17.5V〜30V弱で変動しているが、これは実際の高電圧バッテリ10の端子電圧を意味するものではない。これは、あくまでシミュレーションの便宜上、高電圧バッテリ10を7セルで構成したと仮定した結果に過ぎない。
【0038】
図7に、本実施形態にかかる効果を示す。図示されるように、「−20°C」の高電圧バッテリ10を4.6分で「−1°C」程度まで上昇させることができた。
【0039】
以下、本実施形態にかかる効果のいくつかを記載する。
【0040】
(1)高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理と、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理とによって、高電圧バッテリ10を昇温することができる。
【0041】
(2)セル電圧Viの最低値Vminが低いほど充放電周波数fbbを上昇させることで、セル電圧Viを下限値以上とする旨の制約の下、高電圧バッテリ10の発熱量を極力大きくすることができる。
【0042】
(3)温度THが低いほど充放電周波数fbbを上昇させることで、セル電圧Viを下限値以上とする旨の制約の下、高電圧バッテリ10の発熱量を極力大きくすることができる。
【0043】
(4)昇温制御に、主機用のモータジェネレータ20やインバータINVを用いた。この場合、定格電流等が大きいため、昇温に必要な電流を十分に流すことができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0044】
図8に、本実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置30によって実行される。なお、図8において、先の図4に示した処理に対応するものについては、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0045】
図示されるように、本実施形態では、周期可変手段を変更する。すなわち、図中、ステップS14aに示されるように、本実施形態では、充放電周波数fbbを、電池セルCiの充電率の最小値SOCminと、温度THとに応じて可変設定する。詳しくは、充電率の最小値SOCminが低いほど充放電周波数fbbを高周波とする。これは、図9に、高電圧バッテリ10を構成する電池セルCiが7個であるとした簡易なシミュレーション結果に示されるように、充電率が低いほど、充放電に伴う端子電圧の最低値が低下することに鑑みたものである。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0046】
図10に、本実施形態にかかる平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理を示す。図示されるように、本実施形態では、スイッチング素子Supをオン操作することで、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10へ電気エネルギを移動させる。
【0047】
図11に、本実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置30によって実行される。なお、図11において、先の図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0048】
図示されるように、本実施形態では、ステップS20aにおいて、スイッチング素子Supをオン・オフ操作する。ここで、一度のオン時間は、スイッチング素子Supを流れる電流量がスイッチング素子Supの許容最大電流以下となるように設定される。
【0049】
このように、本実施形態では、ステータコイルwu,wv,wwを介すことなく、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10へと電気エネルギを充電するため、充電電流を大きくすることが容易である。このため、昇温効果を高めることが容易となる。
【0050】
図12に、本実施形態の効果を示す。図13は、本実施形態にかかる充放電周波数fbbと発熱量等の関係についてのバッテリを7個の電池セルとした場合の簡易なシミュレーション結果を示す。また、図14は、昇温制御に際してバッテリを7個の電池セルとした場合の端子電圧等の推移を示す。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0051】
上記実施形態では、先の図2に示した処理によって平滑コンデンサ12の充電処理を「1/2fbb」の時間に渡って継続した後、直ちにスイッチング素子Supをオン操作した。しかし、この場合、スイッチング素子Supをオン操作した際に、先の図2の下方に示した経路に電流が流れている場合には、モータジェネレータ20からダイオードDup,Dunを介して平滑コンデンサ12へと流れる電流も存在することとなり、損失の増大につながるおそれがある。
【0052】
そこで本実施形態では、図15に示すように、昇圧制御にかかる処理を変更する。図15は、本実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す。なお、図11において、先の図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0053】
図示されるように、本実施形態では、平滑コンデンサ12の充電処理を「1/2fbb」の時間に渡って継続した後、平滑コンデンサ12の充電処理を終了し、モータジェネレータ20の各ステータコイルwu,wv,wwに流れる電流iu,iv,iwがゼロとなるまで待機する(ステップS24)。これにより、スイッチング素子Supをオン操作することで、モータジェネレータ20やダイオードDvp,Dwpに電流は流れず、平滑コンデンサ12の放電電流の流通経路は、スイッチング素子Supを備える経路に限定される。
【0054】
図16は、本実施形態にかかる昇温制御を、高電圧バッテリ10を構成する電池セルCiを7個と仮定して簡易的にシミュレートした結果である。図示されるように、本実施形態では、スイッチング素子Svn,Swnのオン・オフ操作の終了後、スイッチング素子Supのオン操作までに待機時間Twが存在する。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0055】
図17に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図17において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上、同一の符号を付している。
【0056】
本実施形態では、高電圧バッテリ10と平滑コンデンサ12との間の電気エネルギの移動処理に際して、高電圧バッテリ10の正極との接続対象を、モータジェネレータ20の中性点とする。
【0057】
図18に、高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理を示す。ここでは、まず、リレーMR1を開状態として且つリレーMR2を閉状態とする。そして、下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnをオン操作する。これにより、高電圧バッテリ10、リレーMR2,モータジェネレータ20、スイッチング素子Sun,Svn,Swnを備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20に電気エネルギが蓄えられる。次に、スイッチング素子Sun,Svn,Swnをオフ操作することで、モータジェネレータ20、ダイオードDup,Dvp,Dwp、平滑コンデンサ12、高電圧バッテリ10およびリレーMR2を備えるループ経路に電流が流れ、平滑コンデンサ12が充電される。
【0058】
図19に、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理を示す。ここでは、まず、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpをオン操作する。これにより、平滑コンデンサ12、スイッチング素子Sup,Svp,Swp、モータジェネレータ20、リレーMR2、高電圧バッテリ10を備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20に電気エネルギが蓄えられる。次に、スイッチング素子Sup,Svp,Swpをオフ操作することで、モータジェネレータ20、リレーMR2,高電圧バッテリ10、ダイオードDun,Dvn,Dwnを備えるループ経路に電流が流れる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
上記第3の実施形態では、基本的に車両の発進前に昇温制御を行なうことを想定した。この場合、昇温制御による電磁ノイズがユーザに知覚されるおそれがある。特に、車載主機としてモータジェネレータ20のステータコイルwu,wv,wwを利用した電気エネルギの移動処理を行なう場合、移動処理に伴う磁気ノイズが車室内等に伝達されやすい傾向にあることが発明者らによって見出されている。
【0060】
そこで本実施形態では、スイッチング素子Svn,Swnやスイッチング素子Supのオン・オフの一周期の逆数(スイッチング周波数fsw)を操作量として、電磁ノイズによって生じる音を制御する。これは、図20に示す関係を利用するものである。すなわち、ドレミでいう「ラ」の音は、「440Hz×2^n:n=0,1,2…」であり、「レ」の音は、「587.33Hz×2^n:n=0,1,2,3…」である。このため、電磁ノイズを利用して演奏したい音楽を予め定めておき、その楽譜に沿って、スイッチング周波数fswを変動させることで、音楽を奏でることができる。ちなみに、図20における440Hz以外に付与された「係数」は、440Hzによる除算値を示している。
【0061】
図21に、本実施形態にかかる昇温制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置30によって、たとえば所定周期でくり返し実行される。なお、図21において、先の図4に示した処理に対応するものについては、便宜上、同一のステップ番号を付している。なお、図21に示す処理は、昇温制御手段を構成するとともに、音制御手段を構成する。
【0062】
この一連の処理では、ステップS12の処理が完了する場合、ステップS26において、スイッチング周波数fswを設定する。この処理は、上記楽譜の音に応じた周波数を設定する処理である。ここで、たとえばスイッチング周波数fswを「1.76kHz〜14.08kHz」の範囲に予め設定する場合、「ラ」の音は、「1.76kHz×2^n:n=0〜3」とすることで実現することができる。
【0063】
スイッチング周波数fswが設定されると、高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理と、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理とを、「1/fbb」の期間にわたって行った後、ステップS28において、温度THが規定温度Tth以上であるか否かを判断する。そして、ステップS28において否定判断される場合、ステップS30において音を変更するタイミングであるか否かを判断する。これは、上記楽譜に従って判断されるものである。
【0064】
そして、ステップS30において否定判断される場合には、ステップS14に戻る一方、ステップS30において肯定判断される場合には、ステップS26に戻る。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0065】
図22に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図22において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上、同一の符号を付している。
【0066】
本実施形態では、インバータINVの高電位側の入力端子と高電圧バッテリ10の正極との間を開閉するリレーMR1aに加えて、インバータINVの低電位側の入力端子と高電圧バッテリ10の負極との間を開閉するリレーMR1bを備える。また、U相のステータコイルwuと中性点との間を開閉するリレーMR3と、W相のステータコイルwwと中性点との間を開閉するリレーMR4とを備える。さらに、車両の外部の商用電源40と中性点との間を開閉するリレーMR5と、商用電源40とステータコイルwwおよびリレーMR4間を開閉するリレーMR6とを備える。
【0067】
こうした構成によれば、トランス等の絶縁型コンバータを用いることなく、商用電源40の電気エネルギを高電圧バッテリ10に充電することが可能となる。
【0068】
すなわち、高電圧バッテリ10に商用電源40の電気エネルギを充電するに際しては、まず、リレーMR1a,MR1b,MR2を開操作し、高電圧バッテリ10と平滑コンデンサ12との間の絶縁を保った状態で、スイッチング素子Svn,Swnをオン・オフ操作することで、平滑コンデンサ12を充電する。これは、図23図24に示す態様で行われる。
【0069】
すなわち、図23に示すように、商用電源40の端子のうち、ステータコイルww側が正である場合、スイッチング素子Svn,Swnをオン操作することで、商用電源40、ステータコイルww、スイッチング素子Swn,ダイオードDvn、ステータコイルwvを備えるループ経路に電流が流れ、ステータコイルwv,wwに電気エネルギが蓄えられる。次に、スイッチング素子Svn,Swnをオフ操作することで、ステータコイルww、ダイオードDwp,平滑コンデンサ12、ダイオードDvn、ステータコイルwv、および商用電源40を備えるループ経路に電流が流れ、平滑コンデンサ12が充電される。図24は、商用電源40の出力電圧の極性が逆の場合を示している。
【0070】
こうして平滑コンデンサ12が充電された後、リレーMR5,MR6を開操作し、先の図3に示した要領で、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10に電気エネルギを移動させることで、商用電源40と高電圧バッテリ10との絶縁を維持しつつ、商用電源40の電気エネルギを高電圧バッテリ10に充電することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0071】
「切替回路について」
(a)上下アームの接続点に接続する高電圧バッテリの電極
上記第1の実施形態(図1)において例示したものに限らず、たとえば図25に示されるものであってもよい。図25に示す例では、インバータINVの低電位側の入力端子および高電圧バッテリ10の負極間を開閉するリレーMR1と、U相の高電位側のスイッチング素子Supおよび低電位側のスイッチング素子Sunの接続点および高電圧バッテリ10の負極間を開閉するリレーMR2とを備える。この場合、リレーMR1が開且つリレーMR2が閉となる第2状態において、スイッチング素子Svp,Swpをオン状態とすることで、高電圧バッテリ10、スイッチング素子Svp,Svn、モータジェネレータ20、リレーMR2を備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20のコイルにエネルギが蓄積される。その後、スイッチング素子Svp,Swpをオフ状態とすることで、モータジェネレータ20、高電圧バッテリ10、平滑コンデンサ12、ダイオードDvn,Dwnを備えるループ経路に電流が流れ、平滑コンデンサ12が充電される。これに対し、スイッチング素子Sunをオン状態とすることで、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10に電気エネルギを移動させることができる。
【0072】
(b)第2状態において高電圧バッテリ10に接続される上下アームの接続点のレッグ数
上記第1の実施形態(図1)では、1レッグ(U相)としたがこれに限らない。たとえば、U相およびV相の上記接続点と高電圧バッテリ10の正極とを接続してもよい。この場合、W相のスイッチング素子Sw#のオン・オフ操作によって昇圧処理や降圧処理を行なうことができる。
【0073】
(c)中性点と接続される高電圧バッテリ10の電極
上記第5の実施形態(図17)において例示したものに限らず、たとえば図26において例示したものであってもよい。この場合、上側アームのスイッチング素子S¥pをオン・オフ操作することで、高電圧バッテリ10の電圧を昇圧して平滑コンデンサ12に充電する昇圧処理を行なうことができる。また、下側アームのスイッチング素子S¥nをオン・オフ操作することで、平滑コンデンサ12の充電電圧を降圧して高電圧バッテリ10に充電する降圧処理を行なうことができる。
【0074】
(d)高電圧バッテリ10に接続されるモータジェネレータ20の端子
中性点に限らない。たとえばデルタ結線されたモータジェネレータにおけるいずれか1つの端子としてもよい。この場合、その1つの端子とモータジェネレータのステータコイルを介することなく接続されるレッグ以外のレッグについて、スイッチング素子S¥#をオン・オフ操作することで、上記第5の実施形態と同様、昇圧処理や降圧処理を行なうことができる。
【0075】
(e)第2状態における第1蓄電手段および第2接続手段と同電位となる端子
第1状態において同電位となる端子と同じものに限らない。たとえば、図27に例示される構成によって実現されるものであってもよい。図27におけるリレーMR7は、高電圧バッテリ10の負極とインバータINVの低電位側入力端子間を開閉する。また、リレーMR8は、高電圧バッテリ10の負極とモータジェネレータ20の中性点との間を開閉する。リレーMR10は、インバータINVの高電位側入力端子と平滑コンデンサ12との間を開閉する。リレーMR9は、モータジェネレータ20の中性点と、平滑コンデンサ12およびリレーMR10間を開閉する。この構成では、第1状態において、リレーMR7,MR10が閉且つ、リレーMR8,MR9が開であり、第2状態において、リレーMR7,MR10が開且つ、リレーMR8,MR9が閉である。
【0076】
そして第2状態では、図28に示す態様にて高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理がなされる。すなわち、上側アームのスイッチング素子S¥pをオン操作することで、高電圧バッテリ10、上側アームのスイッチング素子S¥p、モータジェネレータ20を備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20のステータコイルwu,wv,wwに電気エネルギが蓄えられる。次に、上側アームのスイッチング素子S¥pをオフ操作することで、モータジェネレータ20、平滑コンデンサ12、下側アームのダイオードD¥nを備えるループ経路に電流が流れ、平滑コンデンサ12が充電される。
【0077】
その後、図29に示す態様にて、下側アームのスイッチング素子S¥nをオン操作することで、平滑コンデンサ12、モータジェネレータ20、下側アームのスイッチング素子S¥nを備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20のステータコイルwu,wv,wwに電気エネルギが蓄えられる。次に、下側アームのスイッチング素子S¥nをオフ操作することで、モータジェネレータ20、上側アームのダイオードD¥p、および高電圧バッテリ10を備えるループ経路に電流が流れ、高電圧バッテリ10が充電される。
【0078】
なお、図28に示した処理による平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理によれば、平滑コンデンサ12の充電電圧の絶対値は、高電圧バッテリ10の端子電圧よりも小さい値から大きい値まで任意に制御できる。このため、高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理は、必ずしも昇圧処理とはならず、降圧処理となる場合もある。また、図29に示した平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理についても、必ずしも降圧処理とならず、昇圧処理となる場合もある。
【0079】
(f)流通規制要素を構成する直流交流変換回路
単一のインバータINVに限らず、たとえば、図30に示す一対のインバータINVa,INVbであってもよい。図30では、高電圧バッテリ10に、インバータINVaの高電位側入力端子および低電位側入力端子が接続されるとともに、高電圧バッテリ10の負極にインバータINVbの低電位側の入力端子が接続され、高電圧バッテリ10の正極にリレーMR1bを介してインバータINVbの高電位側入力端子が接続されている。一方、リレーMR1aは、インバータINVaの高電位側入力端子と平滑コンデンサ12aとの間を開閉する。また、リレーMR3は、インバータINVaに接続されたモータジェネレータ20aの中性点と、インバータINVbに接続されたモータジェネレータ20bの中性点との間を開閉する。こうした構成において、リレーMR1a,MR1bを開として且つリレーMR3を閉とすることで、第2状態を実現することができる。
【0080】
第2状態においては、図31に示す態様にて高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理がなされる。すなわち、インバータINVaの上側アームのスイッチング素子S¥pとインバータINVbの下側アームのスイッチング素子S¥nとをオン操作する。これにより、高電圧バッテリ10、インバータINVaの上側アームのスイッチング素子S¥p、モータジェネレータ20a,20b、インバータINVbの下側アームのスイッチング素子S¥nを備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20a,20bに電気エネルギが蓄えられる。次に、インバータINVaの上側アームのスイッチング素子S¥pとインバータINVbの下側アームのスイッチング素子S¥nとをオフ操作する。これにより、モータジェネレータ20a,20b、インバータINVbの上側アームのダイオードD¥p、平滑コンデンサ12b、インバータINVaの下側アームのダイオードD¥nを備えるループ経路に電流が流れ、平滑コンデンサ12bが充電される。
【0081】
次に、図32に示す態様にて、平滑コンデンサ12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理がなされる。すなわち、まず、インバータINVaの下側アームのスイッチング素子S¥nとインバータINVbの上側アームのスイッチング素子S¥pとをオン操作する。これにより、平滑コンデンサ12b、インバータINVbの上側アームのスイッチング素子S¥p、モータジェネレータ20b,20a、インバータINVaの下側アームのスイッチング素子S¥nを備えるループ経路に電流が流れ、モータジェネレータ20a,20bに電気エネルギが蓄積される。次に、インバータINVaの下側アームのスイッチング素子S¥nとインバータINVbの上側アームのスイッチング素子S¥pとをオフ操作する。これにより、モータジェネレータ20b,20a、インバータINVaの上側アームのダイオードD¥p、高電圧バッテリ10、インバータINVbの下側アームのダイオードD¥nを備えるループ経路に電流が流れ、高電圧バッテリ10が充電される。
【0082】
なお、図31に示した処理による平滑コンデンサ12bへの電気エネルギの移動処理によれば、平滑コンデンサ12の充電電圧の絶対値は、高電圧バッテリ10の端子電圧よりも小さい値から大きい値まで任意に制御できる。このため、高電圧バッテリ10から平滑コンデンサ12への電気エネルギの移動処理は、必ずしも昇圧処理とはならず、降圧処理となる場合もある。また、図32に示した処理による平滑コンデンサ12bから高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理は、平滑コンデンサ12bの充電電圧が高電圧バッテリ10の端子電圧よりも低い場合であっても可能である。このため、高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理は、必ずしも降圧処理とはならず、昇圧処理となる場合もある。
【0083】
(g)第1蓄電手段、第2蓄電手段の数
双方が単一であることは必須ではなく、たとえば図33に示されるように、高電圧バッテリ10に並列に複数(ここでは、3個を例示)のインバータINVa〜INVcを接続し、これらのそれぞれの平滑コンデンサ12a,12b,12cを利用してもよい。すなわち、この場合、リレーMR1a,MR1b,MR1cを開状態として且つリレーMR2a,MR2b,MR2cを閉状態とすることで、第2状態が実現される。そして、各インバータINVa〜INVcを先の図2に示した要領で操作することで、平滑コンデンサ12a〜12cが充電される。次に、各インバータINVa〜INVcを先の図3に示した要領で操作することで、平滑コンデンサ12a〜12cから高電圧バッテリ10への電気エネルギの移動処理を行なうことができる。
【0084】
「流通規制要素について」
IGBTとこれに逆並列接続されたダイオード(スイッチング素子S¥#およびダイオードD¥#)に限らない。たとえば、MOS電界効果トランジスタであってもよい。この場合、その流通経路の両端(ソースおよびドレイン)の一方から他方と他方から一方との双方に電流を流すことができるため、理論上は、ダイオードは必須ではない。このため、たとえば先の図2において、スイッチング素子Svn,Swnをオフ操作するとともに、スイッチング素子Svp,Swpをオン操作することで、スイッチング素子Svp,Swpを介して、モータジェネレータ20に蓄えられたエネルギを放出することもできる。
【0085】
「直流交流変換回路について」
たとえば、回転機が5相回転機であるなら、直流交流変換回路としても、5相のものを用いればよい。
【0086】
「第1状態用開閉手段について」
電磁形リレーとしては、可動接点形のものに限らず、たとえば誘導形のものであってもよい。また、電磁形リレーに限らず、たとえば半導体リレー等であってもよい。
【0087】
「第2状態用開閉手段について」
電磁形リレーとしては、可動接点形のものに限らず、たとえば誘導形のものであってもよい。また、電磁形リレーに限らず、たとえば半導体リレー等であってもよい。
【0088】
「音制御手段について」
昇温制御手段の機能を併せ持つものに限らない。たとえば、車両に未確認の人が接近した場合等に、盗難防止を目的として非常アラームを鳴らすに際し、音制御手段を利用してもよい。この場合、音制御手段は、所定の楽譜に従って流通規制要素の開閉周波数(fsw)を変動させるものである必要はない。
【0089】
また、たとえば、車両発進時等、車両内の他の電子機器の音がユーザに知覚されやすい状況において、これをキャンセルさせるノイズキャンセリング処理を行なうものとしてもよい。この場合も、音制御手段は、所定の楽譜に従って流通規制要素の開閉周波数(fsw)を変動させるものとはならず、開閉周波数を周囲の音の周波数fswに一致させるものとなる。ただし、この場合、音制御手段によって生じる音は周囲の音と逆位相とする必要がある。
【0090】
操作対象としては、直流交流変換回路に限らない。たとえば上記特許文献1に見られるように、バッテリとインバータとの間に介在する昇圧コンバータであってもよい。
【0091】
「充放電制御手段について」
第1蓄電手段および第2蓄電手段のいずれか一方から他方への電気エネルギの移動処理(第1移動処理)といずれか他方から一方への電気エネルギの移動処理(第2移動処理)との一対の期間について、それらの長さを相違させてもよい。
【0092】
第1蓄電手段および第2蓄電手段のいずれか一方から他方への電気エネルギの移動処理(第1移動処理)といずれか他方から一方への電気エネルギの移動処理(第2移動処理)との1周期を固定値としてもよい。すなわち、周期可変手段は必須ではない。
【0093】
「直流交流変換回路について」
車載主機としての回転機の端子に電圧を印加するものに限らない。たとえば、車載補機用の回転機の端子に電圧を印加するものであってもよい。ただし、この場合、高電圧バッテリ10の充放電電流が小さくなることから、図33に例示したように、複数の直流交流変換回路を併用することが望ましい。
【0094】
「充放電制御によって回転機が回転しない設定について」
上記実施形態では、充放電周波数fbbを高周波とすることで、モータジェネレータ20が回転しないように設定したがこれに限らない。たとえば、モータジェネレータ20が駆動輪に常時連結された構成の場合、ブレーキの制動力よりもモータジェネレータ20のトルクの方が小さくなるように充放電電流の絶対値を制限するようにしてもよい。
【0095】
また、モータジェネレータ20が回転しない設定は必須ではない。たとえばモータジェネレータ20の極対数が大きい場合、先の図2の昇圧処理によって固定される回転角度と先の図3の降圧処理によって固定される回転角度との機械角の差は非常に小さくなる。このため、たとえば、モータジェネレータ20が駆動輪に常時連結されている構成であっても、機械的な遊びによってこの回転変動が吸収されると考えられる。また、たとえば、モータジェネレータ20と駆動輪との機械的な連結を遮断するクラッチを備える構成にあっては、極対数に無関係に、クラッチを遮断状態として充放電処理をすることで、モータジェネレータ20のロータの変動を許容することも可能である。
【0096】
「そのほか」
上記第5の実施形態(図17)において、リレーMR1を備えなくてもよい。すなわち、モータジェネレータ20に駆動時には、インバータINVの入力端子に接続される直流電圧源を平滑コンデンサ12とし、高電圧バッテリ10を平滑コンデンサ10の充電手段としてもよい。これについては、たとえば特開2010−28941号公報や、特開2010−41867号公報に記載された技術を採用すればよい。
【符号の説明】
【0097】
10…高電圧バッテリ、20…モータジェネレータ、30…制御装置、INV…インバータ。
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