(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程1が、トナー粒子を絶縁性液体中に分散したのち、トナー粒子を湿式粉砕しトナー粒子分散液(A)を得る工程である、請求項1〜8いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散した液体現像剤の製造方法であって、
工程1:トナー粒子を塩基性分散剤存在下で絶縁性液体中に分散し、トナー粒子分散液(A)を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子分散液(A)を遠心分離し、上澄み液を除去してトナー粒子分散液(B)を得る工程、
工程3:トナー粒子分散液(B)をそのままで、あるいは絶縁性液体と混合して、トナー粒子分散液の固形分濃度が45〜55質量%のものをトナー粒子分散液(C)とする工程、及び、
工程4:トナー粒子分散液(C)中のトナー粒子を再分散させ、液体現像剤を得る工程
を含み、
樹脂が酸価が3〜100mgKOH/gのポリエステルを含有し、
トナー粒子分散液(A)の固形分濃度が10〜40質量%であり、
絶縁性液体の25℃における粘度が3〜60mPa・sである、液体現像剤を得ることができるという優れた効果を奏するものである。
【0014】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
液体現像剤中のトナー成分の濃度を高くすると、現像剤の粘度が上昇するとともに、0.1μm未満の粒子径を有する粒子(トナー微粒子)の含有量が増加する。本発明の方法により得られる液体現像剤においては、トナー粒子において樹脂の酸価を特定の範囲に設計することにより、トナー粒子の凝集や樹脂の膨潤が抑制されるため、トナー粒子分散液の粘度を低減できる。さらに、絶縁性液体の粘度、遠心分離に供するトナー粒子分散液(A)の固形分濃度を適切な範囲にすることにより、遠心分離によって0.1μm未満の粒子径を有する粒子(トナー微粒子)を効率よく除去することができる。さらに、遠心分離後のトナー粒子分散液を適切な固形分濃度範囲になるように再分散することにより、0.1μm未満の粒子径を有する粒子(トナー微粒子)の含有量が少なく固形分濃度が高い液体現像剤を得ることができると考えられる。
【0015】
<工程1>
工程1は、樹脂と顔料とを含有するトナー粒子を塩基性分散剤存在下で絶縁性液体中に分散し、トナー粒子分散液(A)を得る工程である。
【0016】
トナー粒子には少なくとも樹脂と顔料とを含有する。樹脂と顔料以外に、離型剤、荷電制御剤等が含まれていてもよい。
【0017】
[樹脂]
本発明において用いられる樹脂は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルを含有する。ポリエステルの含有量は、樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、樹脂として、ポリエステルのみを用いることがさらに好ましいが、本願の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル以外の他の樹脂が含有されていてもよい。ポリエステル以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0018】
本発明において、ポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを縮重合することにより得られるものが好ましい。
【0019】
2価のアルコールとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15のジオールや、式(I):
【0021】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。炭素数2〜20の2価のアルコールとして、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0022】
アルコール成分としては、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ高固形分濃度の液体現像剤を得る観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がよりさらに好ましい。
【0023】
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上の多価アルコールが挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0024】
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0025】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数9〜10の3価以上の多価カルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜8のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられる。
【0026】
液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、カルボン酸成分としては、テレフタル酸、フマル酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0027】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0028】
ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.80〜1.10がより好ましい。
【0029】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。
【0030】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。また、エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。また、重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられ、重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0031】
ポリエステルの軟化点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、105℃以下がよりさらに好ましい。また、後述する工程2において遠心分離後上澄み液を除去してトナー粒子分散液(B)を得る際にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、85℃以上がよりさらに好ましい。これらの観点から、70〜160℃が好ましく、75〜130℃がより好ましく、80〜120℃がさらに好ましく、85〜105℃がよりさらに好ましい。
【0032】
ポリエステルのガラス転移温度は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい。また、後述する工程2において遠心分離後上澄み液を除去してトナー粒子分散液(B)を得る際にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。これらの観点から、40〜80℃が好ましく、45〜75℃がより好ましく、50〜70℃がさらに好ましい。
【0033】
ポリエステルの酸価は、トナー粒子分散液(A)の粘度を低減する観点、遠心分離により微粉を除去し液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点、及び液体現像剤の固形分濃度を向上させる観点から、100mgKOH/g以下であり、50mgKOH/g以下が好ましく、35mgKOH/g以下がより好ましい。また、同様の観点から、3mgKOH/g以上であり、8mgKOH/g以上が好ましく、12mgKOH/g以上がより好ましく、25mgKOH/g以上がさらに好ましい。同様の観点から、ポリエステルの酸価は、3〜100mgKOH/gであり、8〜50mgKOH/gが好ましく、12〜50mgKOH/gがより好ましく、25〜35mgKOH/gがさらに好ましい。ポリエステルの酸価は、カルボン酸成分とアルコール成分の当量比を変化させる、樹脂製造時の反応時間を変化させる、3価以上のカルボン酸化合物の含有量を変化させる、等の方法で調整することができる。
【0034】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0035】
[顔料]
顔料としては、トナー用着色剤として用いられている顔料のすべてを使用することがで
き、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアント
ファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッ
ド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソイ
ンドリン、ジスアゾエロー等を用いることができる。本発明のトナーは、黒トナー、カラ
ートナーのいずれであってもよい。
【0036】
顔料の含有量は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下がよりさらに好ましい。また、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。これらの観点から、5〜100質量部が好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜50質量部がさらに好ましく、15〜30質量部がよりさらに好ましい。
【0037】
本発明では、トナー材料として、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0038】
[トナー粒子の製造方法]
工程1のトナー粒子を得る方法としては、樹脂や顔料とを含有するトナー原料を溶融混練し得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系樹脂分散液と水系顔料分散液を混合し樹脂粒子と顔料粒子を合一させる方法、及び水系樹脂分散液と顔料を高速攪拌する方法等が挙げられる。液体現像剤の現像性を向上させる観点及び低温定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練したのち粉砕する方法が好ましい。
【0039】
トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、本発明の液体現像剤の製造方法においては、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点、及び粉砕及び分級後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機を用いて行うことが好ましい。
【0040】
樹脂、顔料を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。これらの混合機の中では、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
【0041】
ヘンシェルミキサーでのトナー原料の混合は、攪拌の周速度、及び混合時間を調整することで行う。攪拌の周速度は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、10〜30m/secが好ましい。また、攪拌時間は、顔料の樹脂中での分散性を向上させる観点から、1〜10分が好ましい。
【0042】
オープンロール型混練機とは、溶融混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、溶融混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。本発明で使用するオープンロール型混練機は、ロールの軸方向に沿って設けられた複数の原料供給口と混練物排出口を備えており、生産効率の観点から、連続式オープンロール型混練機であることが好ましい。
【0043】
本発明で用いるオープンロール型混練機は、少なくとも温度の異なる2本の混練用ロールを有していることが好ましい。ロール温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0044】
本発明において、混練機の混練物排出部の温度は、トナー原料の混合性を向上させる観点から、いずれのロールにおいても、樹脂の軟化点以下に設定することが好ましい。
【0045】
加熱ロールにおける混練の上流側と混練の下流側の設定温度は、上流側で混練物のロールへの張り付きを良好にして、下流側で強く混練する観点から、上流側の設定温度が下流側よりも高いことが好ましい。
【0046】
混練の上流側の設定温度が低い方のロール(冷却ロールともいう)において、混練の上流側の設定温度は、混練の下流側の設定温度と同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
オープンロール型混練機のロールは、互いに周速度が異なっていることが好ましく、前記の加熱ロールと冷却ロールを備えたオープンロール型混練機においては、トナーの低温定着性を向上させる観点から、加熱ロールが周速度の高い方のロール(高回転側ロール)、冷却ロールが周速度の低い方のロール(低回転側ロール)であることが好ましい。
【0048】
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/minであることが好ましく、5〜75m/minがより好ましい。低回転側ロールの周速度は2〜100m/minが好ましく、4〜60m/minがより好ましく、4〜50m/minがさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0049】
2本のロールの間隙(クリアランス)は、混練の上流側端部で好ましくは0.1〜3mm、より好ましくは0.1〜1mmである。
【0050】
また、各ロールの構造、大きさ、材料等について特に限定はなく、ロール表面は、混練に用いられる溝を有しており、この形状は直線状、螺旋状、波型、凸凹型等が挙げられる。
【0051】
原料混合物の供給速度及び平均滞留時間は、用いるロールのサイズや原料の組成等により異なるので、これらの条件により最適な条件を選択すればよい。
【0052】
オープンロール型混練機による溶融混練により得られた溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、分級工程等の通常の方法を経て、本発明のトナー粒子を得ることができる。
【0053】
粉砕工程では、粉砕後の分級工程で微粉が除去され、体積中位粒径がやや大きくなるので、目標とするトナーの体積中位粒径よりも、粉砕工程後の体積中位粒径が例えば0.5〜1.0μm程度小さくなるように粉砕することが望ましい。
【0054】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕、分級工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0055】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
【0056】
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
【0057】
分級工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0058】
[トナー粒子分散液(A)の製造方法]
さらに、上記で得られたトナー粒子を塩基性分散剤の存在下で絶縁性液体中に分散してトナー粒子分散液(A)を得る。液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点、及びトナー粒子の絶縁性液体への分散性を向上させトナー粒子分散液(A)の粘度を低減する観点から、トナー粒子を絶縁性液体中で分散したのち、トナー粒子を湿式粉砕してトナー粒子分散液(A)を得るのが好ましい。
【0059】
[塩基性分散剤]
分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させるために用いるもので、本発明では、樹脂、特にポリエステルへの吸着性を向上させる観点から、吸着基として塩基性吸着基を有する塩基性分散剤が好ましい。
【0060】
塩基性分散剤は、同一分子中に塩基性吸着基と分散基をもつ構造を有するものが好ましく、塩基性吸着基を主鎖、分散基を側鎖にもつ構造を有するものがより好ましい。塩基性吸着基としては、アミノ基、アミド基、イミノ基、ピロリドン基、ピリジン基等が挙げられ、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、アミノ基、アミド基及びイミノ基が好ましい。分散基としては、絶縁性液体と相溶する基が好ましく、具体的には炭化水素鎖又はヒドロキシ炭化水素鎖を持つものがより好ましい。このような塩基性分散剤の中でも、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、ポリイミンとカルボン酸の縮合物が好ましい。
【0061】
ポリイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられるが、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0062】
カルボン酸としては、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、炭素数10〜30のカルボン酸が好ましく、炭素数12〜24のカルボン酸がより好ましく、炭素数16〜22のカルボン酸がさらに好ましい。また、飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸が好ましく、直鎖の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸がより好ましい。また、カルボン酸はヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的なカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の直鎖飽和脂肪族カルボン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の直鎖不飽和脂肪族カルボン酸、メバロン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸(及びその縮合体)等が挙げられる。この中でも、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、ヒドロキシカルボン酸が好ましく、その中でも、12-ヒドロキシステアリン酸がより好ましい。
【0063】
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の具体例としては、ソルスパース11200、ソルスパース13940(以上、いずれも日本ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0064】
塩基性分散剤の添加量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子100質量部に対して、4質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましい。また、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、塩基性分散剤の添加量は、4〜25質量部が好ましく、6〜20質量部がより好ましく、8〜15質量部がさらに好ましい。
【0065】
[絶縁性液体]
本発明で用いる絶縁性液体は、25℃における粘度が3〜60mPa・sのものである。
【0066】
絶縁性液体の25℃における粘度は、トナー粒子分散液(A)の粘度を低減する観点、及び液体現像剤の固形分濃度を向上させる観点から、5〜55mPa・sが好ましく、5〜35mPa・sがより好ましく、5〜20mPa・sがさらに好ましく、5〜15mPa・sがよりさらに好ましく、また、遠心分離によりトナー微粒子を除去し、液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点から、5〜55mPa・sが好ましく、8〜55mPa・sがより好ましく、10〜40mPa・sがさらに好ましく、12〜20mPa・sがよりさらに好ましい。絶縁性液体を2種以上組み合わせて用いる場合には、組み合わせた絶縁性液体混合物の粘度が上記範囲内であればよい。なお、絶縁性液体の25℃における粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0067】
絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、誘電率3.5以下、体積抵抗率10
7Ωcm以上の液体が好ましい。
【0068】
絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられる。特に、臭気、無害性及びコストの点から、流動パラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素が好ましい。市販の具体例としては、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上、いずれもエクソン化学社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上、いずれも出光石油化学社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-260(以上、いずれも松村石油社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)、ライトール(Sonneborn社製)等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
トナー粒子、絶縁性液体、及び塩基性分散剤の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
【0070】
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液(A)の生産性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、ウルトラディスパー(浅田鉄工社製)、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミックス社製)、クリアミックス(エム・テクニック社製)、ケイディーミル(キネティック・ディスパージョン社製)等が好ましい。
【0071】
トナー粒子と絶縁性液体及び塩基性分散剤を高速攪拌混合装置により混合することによって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子懸濁液を得ることができ、次の湿式粉砕によるトナー粒子分散液(A)の生産性が向上する。
【0072】
[湿式粉砕]
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
【0073】
湿式粉砕に使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、ウルトラディスパー(浅田鉄工社製)、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、T.K.ホモミクサー(プライミックス社製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機及び混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0074】
これらの中では、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくする観点、及びトナー粒子の絶縁性液体への分散性を向上させトナー粒子分散液(A)の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
【0075】
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
【0076】
工程1で得られるトナー粒子分散液(A)中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒子径を小さくし、液体現像剤の画質を向上させる観点から、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。これらの観点から、トナー粒子分散液(A)中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、0.1〜5μmが好ましく、0.15〜2μmがより好ましく、0.2〜1μmがさらに好ましい。なお、トナー粒子分散液中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0077】
工程1で得られるトナー粒子分散液(A)の25℃における粘度は、遠心分離によりトナー微粒子を除去し、液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点から、15〜600mPa・sが好ましく、35〜450mPa・sがより好ましく、50〜300mPa・sがさらに好ましく、80〜200mPa・sがよりさらに好ましく、また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、15〜600mPa・sが好ましく、15〜350mPa・sがより好ましく、15〜250mPa・sがさらに好ましく、20〜150mPa・sがよりさらに好ましい。なお、工程1で得られるトナー粒子分散液(A)の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0078】
工程1で得られるトナー粒子分散液(A)の固形分濃度は、遠心分離によりトナー微粒子を除去し、液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点から、10質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。また、トナー粒子分散液(A)の粘度を低減し、液体現像剤の固形分濃度を向上させる観点、及び遠心分離によりトナー微粒子を除去し、液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点から、40質量%以下であり、38質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。これらの観点から、トナー粒子分散液(A)の固形分濃度は、10〜40質量%であり、15〜38質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。
【0079】
<工程2>
工程2は、工程1で得られたトナー粒子分散液(A)を遠心分離し、上澄み液を除去してトナー粒子分散液(B)を得る工程である。
【0081】
本発明に用いる遠心分離機としては特に制限はなく、一般に、遠心沈降機や遠心濾過・脱水機が知られているが、遠心沈降機が好ましい(例えば、化学工学会編「化学工学便覧」、改訂六版、丸善(株)、平成11年2月25日、798頁参照)。
【0082】
遠心沈降機としては、例えば、遠心沈降管型、円筒型、分離板型、バスケット型、スクリデカンター型等の遠心沈降機が挙げられる。これらの中では、遠心沈降管型が、操作性に優れている点で、好ましい。
遠心分離装置としては、himac CR22G、himac CR7(以上、いずれも日立工機社製)、H-9R(コクサン社製)、7780II(久保田商事社製)等が挙げられる。
【0083】
遠心分離機の運転方法にも特に制限はない。(i)原液分散体を供給しながら分離液層を分取する連続式、及び(ii)原液分散体を供給した後、分離液層が形成されたところで該液層を分取するバッチ式のいずれの運転方法であってもよい。
【0084】
遠心分離の際の相対遠心加速度は、トナー粒子分散液(A)中のトナー微粒子を十分に分離し、液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点、遠心分離後のトナー粒子分散液(B)と上澄み液とが再混合するのを防止し、液体現像剤の固形分濃度を向上させる観点、及び液体現像剤の生産性を向上させる観点から、500〜50000Gが好ましく、1000〜25000Gがより好ましい。
【0085】
ここで、遠心加速度は、下記式により定義される。
遠心加速度(m/sec
2)=N
2π
2r/900
(式中、Nは1分あたりの回転数(min
-1)、rは回転先端部までの半径(m)、πは円周率を示す。)
相対遠心加速度は、下記式により定義される。
相対遠心加速度(G)=遠心加速度/重力加速度
すなわち、単位「G」は、地平面上の重力の強さを基準とし、その何倍の強さの力がかかっているかを意味し、重力加速度(9.8m/sec
2)の倍数で示される。
【0086】
遠心分離時間は、液体現像剤の生産性を向上させる観点から、5〜200minが好ましく、10〜150minがより好ましい。
【0087】
遠心分離の際の相対遠心加速度と遠心分離時間との積は、トナー粒子分散液(A)中のトナー微粒子を十分に分離し、液体現像剤中のトナー微粒子を低減する観点、遠心分離後のトナー粒子分散液(B)と上澄み液とが再混合するのを防止し、液体現像剤の固形分濃度を向上させる観点から、好ましくは700G・h以上、より好ましくは1500G・h以上であり、また液体現像剤の生産性を向上させる観点から、好ましくは100000G・h以下、より好ましくは50000G・h以下である。これらの観点から、相対遠心加速度と遠心分離時間の積は、700〜100000G・hが好ましく、1500〜50000G・hがより好ましい。
【0088】
遠心分離操作では粒子径の大きい粒子は小さい粒子に比べて沈降する速度が速いことから、特定の条件を選ぶことで、トナー粒子分散体が濃縮されたトナー粒子分散液(B)からなる下層と、絶縁性液体の上澄み液である上層とに分けることができ、トナー粒子のうち0.1μm未満の粒子径の粒子(トナー微粒子)の多くを上層の上澄み液中にとどめることができる。このように遠心分離により分取することによって、効率的に0.1μm未満の粒子径の粒子の含有量を低減したトナー粒子分散液(B)を得ることができる。
【0089】
工程2で得られるトナー粒子分散液(B)の固形分濃度は、液体現像剤の固形分濃度を高める観点から、45質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。なお、トナー粒子分散液(B)の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0090】
<工程3>
工程3は、工程2で得られたトナー粒子分散液(B)をそのままで、あるいは絶縁性液体と混合して、トナー粒子分散液の固形分濃度が45〜55質量%のものをトナー粒子分散液(C)とする工程である。
【0091】
トナー粒子分散体が濃縮されたトナー粒子分散液(B)を再分散し液体現像剤を得るにあたり、本工程において、再分散可能な固形分濃度に調整する。
【0092】
工程3で得られるトナー粒子分散液(C)の固形分濃度は、次の工程4においてトナー粒子を再分散することができ、更に、液体現像剤の現像性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、45〜55質量%であり、48〜55質量%が好ましい。工程2で得られたトナー粒子分散液(B)の固形分濃度により、そのままトナー粒子分散液(C)としてもよく、必要に応じて絶縁性液体を混合して希釈してもよい。なお、トナー粒子分散液(C)の固形分濃度は、次式により算出される。
【0094】
[絶縁性液体]
トナー粒子分散液(B)を希釈する際に使用する絶縁性液体としては、工程1で使用できるものが挙げられる。工程1で使用したものを用いるのが好ましい。
【0095】
<工程4>
工程4は、トナー粒子分散液(C)中のトナー粒子を再分散させ、液体現像剤を得る工程である。
【0096】
上述のように、遠心分離操作では粒子径の大きい粒子は小さい粒子に比べて沈降する速度が速いことから、トナー粒子分散体が濃縮されたトナー粒子分散液(B)からなる下層内においても、トナー粒子の粒径及び濃度に分布が生じている。従って、工程4を行うことにより、高い固形分濃度のトナー粒子が絶縁性液体中に均一に分散した液体現像剤を得ることができる。
【0097】
トナー粒子分散液(C)中のトナー粒子を再分散させ均一化する際に使用する装置としては、前記の攪拌混合装置、混練機等の例に加えて、ペイントシェーカー等の混合機等、超音波分散機等の分散機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0098】
以上の工程を経て得られる液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、2.5μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、0.8μm以下がさらに好ましく、0.6μm以下がよりさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。これらの観点から、液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、0.1〜2.5μmが好ましく、0.1〜1.5μmがより好ましく、0.15〜0.8μmがさらに好ましく、0.2〜0.6μmがよりさらに好ましい。なお、トナー粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0099】
また、液体現像剤中の0.1μm未満の粒子径を有するトナー粒子(トナー微粒子)の含有量は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、液体現像剤中の全トナー粒子中、3.0体積%以下が好ましく、2.0体積%以下がより好ましく、1.0体積%以下がさらに好ましく、0.5体積%以下がよりさらに好ましい。
【0100】
本発明の方法ではトナー粒子の凝集を抑制することができるため、小粒径のトナー粒子を高濃度で含有し、粘度の低い液体現像剤を得ることができる。
【0101】
工程(3)で得られるトナー粒子分散液(C)の固形分濃度が液体現像剤の固形分濃度に相当する。すなわち、液体現像剤の固形分濃度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、45〜55質量%であり、48〜55質量%が好ましい。なお、液体現像剤の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0102】
液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、750mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましく、200mPa・s以下がさらに好ましく、180mPa・s以下がよりさらに好ましく、150mPa・s以下がよりさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、20mPa・s以上が好ましく、40mPa・s以上がより好ましく、80mPa・s以上がさらに好ましく、100mPa・s以上がよりさらに好ましく、120mPa・s以上がよりさらに好ましい。これらの観点から、液体現像剤の25℃における粘度は、20〜750mPa・sが好ましく、40〜500mPa・sがより好ましく、80〜200mPa・sがさらに好ましく、100〜180mPa・sがよりさらに好ましく、120〜150mPa・sがよりさらに好ましい。なお、液体現像剤の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0103】
本発明の製造方法により得られる液体現像剤は、そのまま高固形分濃度の液体現像剤として使用することができるだけでなく、更に絶縁性液体等で希釈して使用することもできる。
【実施例】
【0104】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0105】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0106】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0107】
〔絶縁性液体、トナー粒子分散液(A)及び液体現像剤の25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」(CBC社製)を用いて、25℃にて粘度を測定する。
【0108】
〔トナー粒子分散液(A)、トナー粒子分散液(B)及び液体現像剤中の固形分濃度〕
トナー粒子分散液(A)、トナー粒子分散液(B)又は液体現像剤10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」(コクサン社製)を用いて、回転数25000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
【0109】
【数2】
【0110】
〔トナー粒子分散液(A)及び液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D
50)、0.1μm未満の粒子径を有する粒子の含有量(体積%)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーG(エクソンモービル社製)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D
50)を測定する。得られた体積粒度分布から0.1μm未満の粒子径を有する粒子の含有量(体積%)を計算する。
【0111】
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が100℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Aを得た。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0112】
樹脂製造例2
表1に示すフマル酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒、エステル化助触媒及び重合禁止剤を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、フマル酸を添加し、180℃にて反応させ、軟化点が85℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Bを得た。
【0113】
樹脂製造例3
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。210℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加し、210℃で反応を行い、軟化点が100℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Cを得た。
【0114】
樹脂製造例4
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。200℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加し、200℃で反応を行い、軟化点が104℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Dを得た。
【0115】
樹脂製造例5
表1に示す原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が107℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Eを得た。
【0116】
樹脂製造例6
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加し、180℃で反応を行い、軟化点が99℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する樹脂Fを得た。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例及び比較例で用いた絶縁性液体を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
実施例1〜7、比較例1〜4
[工程1]
表3に示す樹脂を各85質量部及び顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー15:3)15質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、1500r/min(21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0121】
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長: 55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度75r/min(32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)周速度35r/min(15.0m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
【0122】
上記で得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック社製)により微粉砕後、分級し、体積中位粒径(D
50)が10μmのトナー粒子を得た。
【0123】
上記で得られたトナー粒子35質量部と表2及び3に示す絶縁性液体58質量部、塩基性分散剤「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール社製、有効分50%)7質量部を1L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミックス社製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、トナー粒子分散液を得た。
【0124】
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて(体積充填率90体積%)、6連式サンドミル「TSG-6」(アイメックス社製)で回転数2150r/min(8m/sec)にて表3に示す体積中位粒径になるまで湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、トナー粒子分散液(A)を得た。トナー粒子分散液(A)の0.1μm未満の粒子径を有する粒子の含有量(体積%)及び粘度を表3に示す。
【0125】
[工程2]
工程1で得られたトナー粒子分散液(A)を300mL容のポリアミド製チューブに入れ、遠心分離装置「himac CR22G」(日立工機社製)で表4に示す条件(相対遠心加速度・時間)で遠心分離を行った。遠心分離終了後、上澄み液をデカンテーションにて除去し、比較例4を除いて表4に示す固形分濃度のトナー粒子分散液(B)を得た。比較例4においては分離せず、トナー粒子分散液(B)は得られなかった。
【0126】
[工程3]
工程2で得られた実施例1〜7、比較例3のトナー粒子分散液(B)を50mL容のポリエチレン製容器に入れ、測定した固形分濃度をもとに、表5に示す絶縁性液体を用いて50質量%になるように希釈し、トナー粒子分散液(C)を得た。工程2で得られた比較例1、2のトナー粒子分散液(B)についてはそのままトナー粒子分散液(C)とした。
【0127】
[工程4]
工程3で得られた実施例1〜7、比較例1〜3のトナー粒子分散液(C)を超音波洗浄機「US-600」(エスエヌディ社製)で分散後、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間分散し、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0128】
実施例8
実施例2の工程1において、絶縁性液体cの使用量を88質量部に、絶縁性液体cと混合するトナー粒子の使用量を10質量部に、塩基性分散剤「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール社製、有効分50%)の使用量を2質量部に、それぞれ変更した以外は実施例2と同様に工程1を行い、トナー粒子分散液(A)を得た。続いて、実施例2と同様に工程2、3、4を行い、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0129】
実施例9
実施例2の工程1において、絶縁性液体cの使用量を76質量部に、絶縁性液体cと混合するトナー粒子の使用量を20質量部に、塩基性分散剤「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール社製、有効分50%)の使用量を4質量部に、それぞれ変更した以外は実施例2と同様に工程1を行い、トナー粒子分散液(A)を得た。続いて、実施例2と同様に工程2、3、4を行い、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0130】
比較例5
実施例2の工程1において、絶縁性液体cの使用量を46質量部に、絶縁性液体cと混合するトナー粒子の使用量を45質量部に、塩基性分散剤「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール社製、有効分50%)の使用量を9質量部に、それぞれ変更した以外は実施例2と同様に工程1を行い、トナー粒子分散液(A)を得た。続いて、実施例2と同様に工程2を行ったが分離しなかった。
【0131】
比較例6
実施例2の工程1において、絶縁性液体cの使用量を40質量部に、絶縁性液体cと混合するトナー粒子の使用量を50質量部に、塩基性分散剤「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール社製、有効分50%)の使用量を10質量部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様に工程1を行い、トナー粒子分散液(A)を得た。続いて、実施例2と同様に工程2を行ったが分離しなかった。
【0132】
実施例10〜15
実施例2と同様に工程1を行い、トナー粒子分散液(A)を得た。トナー粒子分散液(A)の0.1μm未満の粒子径を有する粒子の含有量(体積%)及び粘度を表3に示す。次に、表4に示す遠心分離条件で工程2を行い、表4に示す固形分濃度のトナー粒子分散液(B)を得た。続いて実施例2と同様に工程3、4を行って、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0133】
実施例16、比較例7〜9
実施例1〜4のトナー粒子分散液(B)について、工程3で希釈を行わずにトナー粒子分散液(C)とし、工程4を行ったところ、実施例1〜3のトナー粒子分散液(C)はトナー粒子を再分散させることができなかった(比較例7〜9)。実施例4のトナー粒子分散液(C)については、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た(実施例16)。
【0134】
実施例17
実施例2の工程1において、トナー粒子分散液(A)の体積中位粒径が1.5μmになるまで分散した以外は実施例1と同様に工程1、2、3、及び4を行い、表5に示す物性を有する液体現像剤を得た。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
表5から明らかなように、比較例1〜3と対比して、実施例1〜17の液体現像剤は、固形分濃度が高く0.1μm未満の粒子径を有する粒子の含有量(体積%)が少ないことが分かる。比較例4〜6において、工程2において分離することができなかった。また、比較例7〜9において、トナー粒子分散液(C)の固形分濃度が55質量%を超えるため、工程4で再分散できなかった。