特許第5865876号(P5865876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5865876-流体圧シリンダ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865876
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20160204BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   F15B15/28 L
   F15B15/14 360
   F15B15/28 J
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-158827(P2013-158827)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31298(P2015-31298A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年8月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊雄
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0174727(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10044984(DE,A1)
【文献】 特表2007−509290(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0189937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/28
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のシリンダチューブと、
前記シリンダチューブに挿入され、前記シリンダチューブ内に摺接するピストンを挿入
側先端に有するピストンロッドと、
前記ピストンロッドと前記シリンダチューブとの相対変位を検出する変位センサと、
を備える流体圧シリンダであって、
前記シリンダチューブの底部は、前記シリンダチューブの中心軸に直角方向に形成され
るピン穴と、前記シリンダチューブの軸方向に形成され前記ピン穴を経由して貫通する貫
通孔と、を有し、
前記変位センサは、前記貫通孔内の前記ピン穴より内側に配置されるセンサ本体と、前
記ピストンロッドに軸方向に形成される軸孔内に挿入され前記センサ本体から延設される
センサロッドと、前記センサロッドに内周が対向するように前記ピストンロッドに設けら
れ前記センサロッドと相対移動可能な環状の磁石と、を有し、
前記貫通孔は、内径が他の部分より小さい縮径部と、前記縮径部より外側に配置され内
周に雌ネジが形成される雌ネジ部と、を有し、
前記センサ本体は、前記雌ネジ部に螺設されるプラグに押圧され前記縮径部に係止され
て固定される、
ことを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記センサ本体と前記プラグとの間に介装される円筒状のカラーをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記貫通孔の前記ピン穴より外側に配置され内周に雌ネジが形成される外側雌ネジ部と、
前記外側雌ネジ部に外側から螺設される外側プラグと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記プラグの押圧力は、前記カラーを介して前記センサ本体の外周部にのみ作用する、
ことを特徴とする請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項5】
前記センサ本体の前記センサロッドが延設される側と反対の側から前記カラーの内側に延出する配線をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の流体圧シリンダ。
【請求項6】
前記シリンダチューブの前記底部は、一端が前記貫通孔に開口して他端が前記底部の側面に開口する配線取出し孔をさらに有し、
前記カラーは、前記配線取出し孔に対応する位置に前記配線が挿通する孔を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧シリンダは、筒状のシリンダチューブと、シリンダチューブ内に摺動自在に嵌装されるピストンと、ピストンに連結されるピストンロッドと、シリンダチューブの開口端に嵌合されピストンロッドを摺動自在に軸支するシリンダヘッドと、を備える。
【0003】
流体圧シリンダはさらに、シリンダチューブの底部に連結される下部クレビスと、ピストンロッドのピストンとは反対側の端部に連結される上部クレビスと、を備える。流体圧シリンダは、下部クレビス及び上部クレビスを介して機器に連結される。
【0004】
特許文献1には、ピストンロッドとシリンダチューブとの相対変位を検出する磁歪式変位センサを内蔵する流体圧シリンダが記載されている。磁歪式変位センサは、センサ本体と、センサ本体から延設されるセンサロッドと、センサロッドの外周に配置される環状の磁石と、から構成される。
【0005】
センサ本体は、シリンダチューブの底部の外側に配置される。センサロッドは、一端がピストンロッドに形成される中空部内に挿入され、他端がシリンダチューブの底部に設けられる孔を介してセンサ本体に連結される。磁石は、センサロッドの外周に面するようにピストンロッドの中空部に環状に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−71363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術では、センサ本体がシリンダチューブの底部の外側に配置されるので、下部クレビスを有するブラケットの一部を中空にして内部にセンサ本体を収納している。よって、センサ本体の長さ分だけ流体圧シリンダの取付長さが長くなるので機器への搭載性が低下する。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、変位センサを内蔵する流体圧シリンダの搭載性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有底筒状のシリンダチューブと、シリンダチューブに挿入され、シリンダチューブ内に摺接するピストンを挿入側先端に有するピストンロッドと、ピストンロッドとシリンダチューブとの相対変位を検出する変位センサと、を備える流体圧シリンダであって、シリンダチューブの底部は、シリンダチューブの中心軸に直角方向に形成されるピン穴と、シリンダチューブの軸方向に形成されピン穴を経由して貫通する貫通孔と、を有し、変位センサは、貫通孔内のピン穴より内側に配置されるセンサ本体と、ピストンロッドに軸方向に形成される軸孔内に挿入されセンサ本体から延設されるセンサロッドと、センサロッドに内周が対向するようにピストンロッドに設けられセンサロッドと相対移動可能な環状の磁石と、を有し、貫通孔は、内径が他の部分より小さい縮径部と、縮径部より外側に配置され内周に雌ネジが形成される雌ネジ部と、を有し、センサ本体は、雌ネジ部に螺設されるプラグに押圧され縮径部に係止されて固定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサ本体がシリンダチューブの底部に形成される貫通孔内に配置され、雌ネジ部に螺設されるプラグに押圧され縮径部に係止されて固定される。よって、変位センサを内蔵する流体圧シリンダの取付長さが長くなることを抑制して、流体圧シリンダの搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における流体圧シリンダ100を示す断面図である。
【0014】
流体圧シリンダ100は、有底筒状のシリンダチューブ1と、シリンダチューブ1内に摺動自在に嵌装されるピストン2と、シリンダチューブ1への挿入側先端にピストン2が連結されるピストンロッド3と、シリンダチューブ1の開口端に嵌合されピストンロッド3を摺動自在に軸支するシリンダヘッド4と、ピストンロッド3とシリンダチューブ1との相対変位を検出する変位センサ5と、を備える複動型の流体圧シリンダ100である。
【0015】
シリンダチューブ1は、内部に流体室を画成する中空形状のチューブ11と、チューブ11の底部に設けられるボトム部12と、から構成される。流体室は、ピストン2によってボトム部12側のピストン側室R1とシリンダヘッド4側のロッド側室R2とに区画される。ピストン側室R1はボトム部12に形成される給排ポート13に連通し、ロッド側室R2はシリンダヘッド4に形成される給排ポート41に連通する。
【0016】
ピストン側室R1に作動流体が供給されることでピストン2及びピストンロッド3が図1の左方へ摺動し、流体圧シリンダ100は伸長作動する。一方、ロッド側室R2に作動流体が供給されることでピストン2及びピストンロッド3が図1の右方へ摺動し、流体圧シリンダ100は収縮作動する。
【0017】
シリンダチューブ1のボトム部12には、シリンダチューブ1の中心軸に対して直角方向に貫通形成されるピン穴14が設けられる。また、ピストンロッド3のピストン2とは反対側の端部にも、同様にピストンロッド3の中心軸に対して直角方向に貫通形成されるピン穴42が設けられる。これらのピン穴14、42はクレビスとして機能し、流体圧シリンダ100が搭載される機器との連結に用いられる。流体圧シリンダ100が例えば作業機械のブームに連結された場合には、流体圧シリンダ100の伸縮作動に応じてブームを昇降させることができる。
【0018】
シリンダチューブ1のボトム部12にはさらに、ボトム部12を軸方向に外側から内側までピン穴14を経由して貫通する貫通孔15が形成される。すなわち、貫通孔15は、図1の右端からピストン側室R1までを貫通するように形成され、途中でピン穴14と直交する。貫通孔15の内径は、ピン穴14の内径より小さくなるように設定される。
【0019】
貫通孔15は、ピストン側室R1側から順に、内径が他の部分より小さい縮径部16と、後述するセンサ本体51が保持されるセンサ保持部17と、内周に雌ネジが形成される雌ネジ部18と、ピン穴14より外側に配置され内周に雌ネジが形成される外側雌ネジ部19と、を有する。
【0020】
シリンダチューブ1のボトム部12にはさらに、一端がセンサ保持部17に開口し他端がボトム部12の側面に開口する配線取出し孔20が形成される。
【0021】
ピストン2は内周に雌ネジが形成される円筒状部材であり、ピストンロッド3の挿入側先端の外周に形成される雄ネジに対してピストンロッド3の先端側から螺設して固定される。ピストンロッド3には、先端面からピストンロッド3の軸方向に穿設される軸孔31が形成される。軸孔31の先端面からの深さは、ピストンロッド3のストローク長より長く設定される。軸孔31の開口部には、内径が軸孔31より大きい拡径部32が形成される。
【0022】
変位センサ5は、センサ本体51と、センサ本体51から延設されるセンサロッド52と、センサロッド52の外周に配置される環状の磁石53と、を有する。
【0023】
センサ本体51は、貫通孔15内のセンサ保持部17に配置され縮径部16に軸方向に当接する。センサ本体51の後方から延出する配線54は、ボトム部12の配線取出し孔20を通って外部へ引き出される。
【0024】
センサロッド52は、貫通孔15を抜けてピストンロッド3の軸孔31内に挿入される。センサロッド52の外径は軸孔31の内径より小さく設定され、センサロッド52とピストンロッド3とは相対変位可能である。
【0025】
磁石53は、ピストンロッド3の拡径部32に設けられ、2つの環状のスペーサ55によって挟持される。磁石53及び2つのスペーサ55は拡径部32に嵌合され、スナップリング56によって拡径部32内に固定される。磁石53の内径はセンサロッド52の外径より大きく設定され、センサロッド52とピストンロッド3とが相対変位する場合における磁石53の摩耗が防止される。
【0026】
変位センサ5は、センサ本体51からセンサロッド52内の磁歪線に励起パルスを送出する。励起パルスに磁石53の外部磁場が作用すると機械的な歪みパルスが発生する。変位センサ5は、励起パルスを送出してから歪みパルスが戻ってくるまでの時間に基づいて、センサ本体51と磁石53との距離を演算する。これにより、変位センサ5は、ピストンロッド3とシリンダチューブ1との相対位置、つまり流体圧シリンダ100のストローク量を検出する。
【0027】
貫通孔15内のセンサ保持部17におけるセンサ本体51より外側には、円筒状のカラー6が設けられる。カラー6は、配線取出し孔20に対応する位置に配線を挿通させる孔(図示せず)を有する。
【0028】
貫通孔15の雌ネジ部18には、外周に雄ネジが形成されるプラグ7が螺設される。プラグ7は略円柱状であり、軸方向外側の面にプラグ締め付け用の六角穴(図示せず)を有する。センサ本体51は、プラグ7が軸方向外側から締め付けられることでカラー6を介して押圧され縮径部16によって係止されて固定される。なお、プラグ7の締め付け用の穴の形状は、六角形に限らずその他の形状であってもよい。
【0029】
貫通孔15のピン穴14より外側には、外側プラグ8が設けられる。外側プラグ8は、外周に雄ネジが形成されるネジ部81と、ネジ部81より大径の大径部82と、を有する。外側プラグ8のネジ部81を貫通孔15の外側雌ネジ部19に螺設することで貫通孔15は閉塞される。
【0030】
プラグ7は、雌ネジ部18に締め付けられた状態でピン穴14より軸方向内側に位置する。また、外側プラグ8は、外側雌ネジ部19に締め付けられた状態でネジ部81の先端がピン穴14より軸方向外側に位置する。これにより、流体圧シリンダ100を機器に搭載する際に、プラグ7及び外側プラグ8がピン穴14に挿通されるピンと干渉することが防止される。
【0031】
流体圧シリンダ100は以上のように構成され、流体室への作動流体の給排によって伸縮作動する。流体圧シリンダ100が伸縮すると、これに応じてセンサロッド52とピストンロッド3とが相対的に変位する。これにより、磁石53とセンサ本体51との軸方向の距離が変化するので、ピストンロッド3とシリンダチューブ1との相対位置が検出され、流体圧シリンダ100のストローク量が検出される。
【0032】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0033】
センサ本体51がボトム部12に形成される貫通孔15内に配置され、雌ネジ部18に螺設されるプラグ7に押圧され縮径部16に係止されて固定される。よって、センサ本体51をシリンダチューブ1に内蔵しながら、流体圧シリンダ100の取付長さが長くなることを抑制して、流体圧シリンダ100の搭載性を向上させることができる。
【0034】
さらに、センサ本体51及びセンサロッド52を貫通孔15の外側から挿入することができるので、流体圧シリンダ100を分解することなく、外側プラグ8及びプラグ7を取り外すだけでセンサ本体51及びセンサロッド52を取り外すことができる。よって、センサ本体51及びセンサロッド52の点検及び交換をより簡易に行うことができる。
【0035】
さらに、センサ本体51はプラグ7によって縮径部16に押圧固定されるので、センサ本体51が流体室から圧力を受けた場合に軸方向に移動することを防止することができる。
【0036】
さらに、センサ本体51をボトム部12の外側に配置してクレビスを設けたブラケット内に収容する場合と比べて、流体圧シリンダ100の引張強度を向上させることができる。
【0037】
さらに、センサ本体51とプラグ7との間に円筒状のカラー6を設けたので、センサ本体51とプラグ7との間にセンサ本体51から延出する配線54を取り出すための空間を画成することができる。
【0038】
さらに、プラグ7の締め付け力がカラー6を介してセンサ本体51の外周部にのみ作用するので、センサ本体51の中心部の強度を上げることなく確実にセンサ本体51をボトム部12に固定することができる。
【0039】
さらに、カラー6に設けられる配線54を挿通させる孔と配線取出し孔20との周方向位置を保持した状態で、プラグ7を回転させてセンサ本体51を押圧固定することができる。
【0040】
さらに、貫通孔15のピン穴14より外側に外側プラグ8が螺設されるので、工具によってプラグ7にアクセスする場合を除いて、貫通孔15のピン穴14より外側を閉塞しておくことができる。よって、ボトム部12全体の剛性を向上させることができる。
【0041】
さらに、流体圧シリンダ100と当該流体圧シリンダ100が搭載される機器とが連結される場合には、ピン穴14に、カラー、ピンブッシュ、ブッシュ、ピン等が挿入される。この場合、ピン穴14に挿入されたカラー、ピンブッシュ、ブッシュ、ピン等によって、プラグ7が抑えられるので、プラグ7が貫通孔15から抜け出ることを防止することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0043】
例えば、上記実施形態では、プラグ7を雌ネジ部18に締め込むことでカラー6を介してセンサ本体51を縮径部16に押圧しているが、このセンサ本体51と縮径部16との当接部にOリングを介装してもよい。これにより、ピストン側室R1の作動流体がセンサ本体51より軸方向外側に漏出することを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダチューブ
2 ピストン
3 ピストンロッド
5 変位センサ
6 カラー
7 プラグ
8 外側プラグ
12 ボトム部(底部)
14 ピン穴
15 外側雌ネジ部
16 縮径部
18 雌ネジ部
15 貫通孔
31 軸孔
51 センサ本体
52 センサロッド
53 磁石
100 流体圧シリンダ
図1