(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物が、アイスクリーム、ジェラート、シャーベット(sorbet)、ムース、フラン、カスタード、メレンゲ、パテ、焼いた食品、ムース、ホイップした乳製品トッピング、フローズンヨーグルト、ホイップした充填物、及びソースから成る群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の食品組成物。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の本詳細な説明
この発明の詳細な説明は、読み手の便宜上、節と小節に分割される。第I節は、本明細書に使用する種々の用語についての定義を提供する。第II節は、パートA〜Eで、微細藻類バイオマスを調製する方法を説明し、適切な生物体(A)、色素沈着を欠いているか、有意に低減された色素沈着を有する、微細藻類株を作出する方法(B)、培養条件(C)、濃縮条件(D)、および本発明によって生産したバイオマスの化学組成物(E)を含む。第III節は、微細藻類バイオマスを、本発明の藻類粉末および脱脂藻類粉末に加工する方法を説明する。第IV節は、本発明の種々の食品、および微細藻類バイオマスを他の食品原料と組み合わせる方法を説明する。
【0033】
本明細書に説明する加工のすべては、GMPまたは同等の規制に従って行うことができる。米国では、人間の食品を製造、包装、保持するためのGMP規制が、21C.F.R.110で成文化される。これらの条項、ならびにかかる条項で参照される付属条項は、引用によりその全体が全目的で本明細書中に組み込まれる。米国におけるGMP条件および他の管轄における同等の条件は、食品に混合不純物が混じっているか否か(食品に適さないような条件下で、食品が製造されているか否か)、または不衛生な条件下で、製造、包装、または保持され、その結果、汚染された可能性があるか、もしくは健康に有害な状態にされた可能性があるか否かを決定する際に適用される。GMP条件には、次に示すものを管理する規制を厳守することが含まれ得る:疾病管理;清浄度および人材育成;建物と施設の維持管理および衛生運営;適切な衛生施設および宿泊設備の供与;設備と器具の設計、構築、維持管理、および清浄度;あらゆる供給源からの汚染を防止するための適切な衛生原則に従って、すべての適切な予防措置が、食品の受入、検査、輸送、隔離、調製、製造、包装、および保存においてとられたことを確認するための適切な品質管理手順の供与;ならびに、物理的、化学的、または望ましくない微生物汚染に対して、および食品と容器の劣化に対して食品を保護するような条件下での、最終食品の保存および輸送。
【0034】
I.定義
以下に別段の定義がない限り、本明細書に使用するすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書に使用する用語の多くの一般的定義は、Singletonらの文献:Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994年);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編集、1988年);R.Riegerらの文献:The Glossary of Genetics、第5版、(R.Riegerら編集)、スプリンガースパニエル・ベルラグ(Springer Verlag)社(1991年);および、HaleとMarhamの文献:The Harper Collins Dictionary of Biology(1991年)に見出すことができる。
【0035】
「面積率」とは、試験中に生じたクロマトグラフィのピーク、分光ピーク、および他のピークの面積率の決定をいう。ピークの濃度曲線下面積、および特定のピークの面積率の決定は、当業者によって規定どおりに行う。例えば、試料中の脂肪酸分子が、脂肪酸メチルエステル(FAME)に変換されるFAME GC/FID検出法では、個別のピークは、C14:1等の他の脂肪酸と比較して、不飽和のない14個の炭素原子の脂肪酸(C14:0)でみられる。各クラスのFAMEのピーク面積は、混合物中のその成分パーセントに正比例し、試料中に含まれる全ピークの合計(すなわち、[特定のピーク下面積/全測定ピークの合計面積]×100)に基づいて算出する。本発明の油および細胞の脂質プロファイルについて言及する場合、「少なくとも4%のC8‐C14」とは、細胞中または抽出されたグリセロ脂質組成の少なくとも4%の総脂肪酸が、8、10、12もしくは14個の炭素原子を含む鎖長を有することを意味する。
【0036】
「含気食品」とは、連続相が一般に水溶液で、かつ不連続相が一般にガス(空気)である、連続相と不連続相とからなる食品を意味する。含気食品の連続相は安定性があり、これは、食品内のガス(空気)泡の安定した形成を可能にする。含気食品の非限定的な一例には、ムース、アイスクリーム、およびシャーベットが含まれる。
【0037】
「無菌」とは、他の生存生物体に汚染されていない、生物体の培養を意味する。
【0038】
「焼いた食品」とは、一般にパン屋でみられる、オーブンの使用によって調理され、通常、膨張剤を含む食品を意味する。焼いた食品には、ブラウニー、クッキー、パイ、ケーキ、およびペストリーが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
「バイオリアクタ」および「発酵槽」とは、細胞が、一般に懸濁液中で培養される発酵タンクまたは発酵容器等の密閉容器または部分的密閉容器を意味する。
【0040】
「パン」とは、小麦粉、液体、および通常膨張剤を含む食品を意味する。パンは、通常、オーブンで焼くことにより調理されるが、他の調理法も可能である。膨張剤は、本質的に、化学的かまたは有機的/生物学的であり得る。一般に、有機的な膨張剤は酵母である。膨張剤が、本質的に化学的である場合(ベーキングパウダーおよび/または重曹等)、これらの食品は、「クイックブレッド」と称される。クラッカーおよび他のクラッカー様製品は、膨張剤を含まないパンの一例である。
【0041】
「セルロース系物質」とは、セルロースの消化産物で、特に、グルコースおよびキシロースを意味する。セルロース消化は、一般に、二糖類、オリゴ糖、リグニン、フルフラール、および他の化合物等の付加的な化合物を生成する。セルロース系物質の供給源には、例えば、サトウキビバガス、甜菜パルプ、コーンストーバ、木材チップ、おが屑、およびスイッチグラスが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
「共培養」、そしてその変形である「共栽培」および「共発酵」等とは、培養条件下で同じバイオリアクタ中に2以上の型の細胞が含まれることを意味する。2以上の型の細胞は、本発明の目的のために、一般に、両方とも微生物で、一般に、両方とも微細藻類であるが、一部の例において、微細藻類でない細胞型を1つ含んでもよい。共存培養に適した培養条件には、一部の例において、2以上の細胞型の成長および/または繁殖を促進するもの、および、別の例において、残りの細胞の成長を維持しつつ、2以上の細胞の1つのみ、または1つの部分集合のみの成長および/または増殖を促進するものが含まれる。
【0043】
「補因子」とは、酵素がその酵素活性を実行するのに必要な、基質以外の分子を意味する。
【0044】
「粉砕肉」とは、肉片のサイズを低減させることによって形成され、これによって、塩可溶性タンパク質の抽出を促進し、粉砕肉が結合することを可能にする、肉製品を意味する。また、粉砕は、脂肪、筋肉および結合組織の一様な分布も生ずる。粉砕肉の非限定的な一例には、ミートパティ、ソーセージ、およびホットドッグが含まれる。
【0045】
「再成形肉」は、粉砕肉に関係し、肉を破砕し、細かな粉砕肉を加えるか、またはこれを加えないで、細切肉を「回転する」ことによって形成し、これによって、細切肉の可溶性タンパク質が小片を結合する、肉のカット、スライスまたは肉の一部の外観を有した人工品を有する。チキンナゲットは、再成形肉の非限定的な一例である。
【0046】
「従来の食品」とは、例えば、人間による消費を意図とした組成物、藻類バイオマスまたは他の藻類成分が不足し、かつ他の食用原料と共に、食品(特に、植物油、動物性脂肪および/または卵)に通常関連する原料を含む、組成物を意味する。従来の食品には、店およびレストランで売られる食品、ならびに家庭で作られる食品が含まれる。従来の食品は、他の食用成分と共に、油、または藻類が供給源でない脂肪、および/または卵の包含物を特定する、従来のレシピに従って作られることが多い。
【0047】
「調理品」とは、例えば、一定時間オーブンで加熱された食品を意味する。
【0048】
「クリーム状のサラダドレッシング」とは、安定して分散し、高い粘性および遅い注入速度を有する、サラダドレッシングを意味する。一般に、クリーム状のサラダドレッシングは不透明である。
【0049】
「栽培」、「培養」、および「発酵」およびその変形とは、培養条件を用いて、1以上の細胞(一般に、微細藻類)の成長および/または繁殖を意図的に促進することを意味する。意図した条件には、本質的に、(直接的な人間の干渉がない)微生物の成長および/または繁殖が除かれる。
【0050】
「細胞崩壊」とは、低張性環境での細胞の溶解を意味する。細胞崩壊は、浸透現象、または水分過剰の状態の細胞内部への水の移動によるものであり、その結果、細胞は、その内部の水の浸透圧に耐えることができずに破裂する。
【0051】
「脱脂藻類粉末」とは、藻類粉末に加工され、その後、抽出工程前のバイオマスに比べて少ない油を含む藻類粉末を生産するために、極性および/または無極性の抽出工程またはCO
2等のガスを使用して、油抽出工程に供した、藻類バイオマスを意味する。脱脂藻類粉末中の細胞は、主にまたは完全に溶解され、また、脱脂藻類粉末は、食物繊維の形態を含む、炭水化物を含み、タンパク質および少量の残油を含み得る。脱脂藻類粉末は、抽出法に依存して、リン脂質を含むか、またはこれを含まない。一般に、脱脂藻類粉末に残存する脂質の量は、約1重量%〜約15重量%である。
【0052】
「食物繊維」とは、微細藻類を含む、細胞壁を含む植物および他の生物体にみられる、非澱粉炭水化物を意味する。食物繊維は、可溶性(水に溶解する)、または不溶性(水に溶解不能である)であり得る。総食物繊維は、可溶性および不溶性の繊維からなる。
【0053】
「脱脂した食事」または「脱脂藻類の食事/バイオマス」とは、油抽出工程に供され、そのため、油抽出前のバイオマスに比べて、少ない油を含む藻類バイオマスを意味する。脱脂した食事中の細胞は主に溶解している。脱脂した食事には、溶媒(例えば、ヘキサン)抽出された藻類バイオマスが含まれる。
【0054】
「可消化粗タンパク質」とは、利用可能な、または胃酵素による消化後、遊離窒素(アミノ酸)に変換することができる、タンパク質の一部である。可消化粗タンパク質のインビトロ測定は、ペプシン等の胃酵素を使用し、試料を消化し、および消化後に遊離アミノ酸を測定することによって行われる。可消化粗タンパク質のインビボ測定は、飼料/食品試料中のタンパク質レベルを測定し、試料を動物に与え、および動物の排泄物中で採取した窒素の量を測定することによって行われる。
【0055】
「分散」とは、少なくとも1つの物質の微粒子が、別の物質の全体にわたって散在する混合物を意味する。分散は、種々の組成物の連続相で散在した粒子を意味する場合があるが、本明細書に使用する分散という用語は、別の物質(通常、液体)の全体にわたって散在するか、または分散する1つの物質の微細固形物を指す。エマルションは、2以上の非混和液の混合物を包含する特別の型の分散である。
【0056】
「乾燥重量」および「乾燥細胞重量」とは、水を相対的に欠いた状態で決定した重量を意味する。例えば、乾燥重量で規定された割合の特定成分を含むものとしての微細藻類バイオマスについての言及は、水を実質的にすべて除去した後、バイオマスの重量に基づいて、割合を算出することを意味する。
【0057】
「食用原料」とは、食べることが可能な物質または組成物を意味する。「食用原料」には、穀物、果実、野菜、タンパク質、ハーブ、香辛料、炭水化物、糖および脂肪が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書に使用する「原料」という用語は、食品および/または食品組成物に使用する原料を意味する。「原料」には、保存剤、風味剤、食品添加物、食品着色剤、糖代替物、および種々の食品でみられる他の原料が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
「外因的に提供された」とは、細胞に提供される分子を意味する(培養細胞における培地への提供を含む)。
【0060】
「脂肪」とは、通常の室温および圧力で一般に固体の、脂質または脂質の混合物を意味する。「脂肪」には、ラードおよびバターが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
「繊維」とは、多糖の形態の非澱粉炭水化物を意味する。繊維は、水溶性かまたは水不溶性であり得る。微細藻類の多くは、一般に細胞壁に存在する、可溶性および不溶性両方の繊維を産生する。
【0062】
「最終食品」および「最終食品原料」とは、包装、使用または消費できる状態の食品組成物を意味する。例えば、「最終食品」は、調理されているか、または「最終食品」を含む原料が、混合されているか、それ以外に、互いに統合されていてもよい。「最終食品原料」は、一般に、他の原料と組み合わせて使用し、食品を形成する。
【0063】
「固定炭素源」とは、外気温で存在し、固体または液体の形態に圧縮される、炭素を含む分子(一般に、有機分子)を意味する。
【0064】
「食品」、「食品成分」、「食品」および「食料」とは、栄養および/またはカロリー源として人間によって摂取されることが意図されるか、または期待される、組成物を意味する。食品組成物は、主に、炭水化物、脂肪、水および/またはタンパク質で構成され、実質的に人の毎日のカロリー摂取のすべてを占めている。「食品組成物」は、一般的な錠剤またはカプセル剤の重量の少なくとも10倍の最小重量であり得る(一般的な錠剤/カプセル剤の重量の範囲は、100mg以下から最大1500mgである)。「食品組成物」は、カプセル化されていないか、または錠剤形態ではない。
【0065】
「グリセロ脂質プロファイル」とは、バイオマスまたは油の特定の試料におけるグリセロ脂質の種々の炭素鎖長、および飽和レベルの分布を意味する。例えば、試料は、グリセロ脂質のおよそ60%が、C18:1で、20%がC18:0で、15%がC16:0で、5%がC14:0である、グリセロ脂質のプロファイルを有し得る。炭素の長さが、例えば「C:18」のように、一般に参照される場合、かかる言及には、任意の量の飽和を含み得る。例えば、C:18として脂質を20(重量/質量)%含む微細藻類バイオマスは、C18:0、C18:1、C18:2等を、等量または種々の量で、その合計がバイオマスの20%を構成する量を含み得る。特定の飽和型の割合への言及、例えば「18:1グリセロ脂質形態で少なくとも50%が一価不飽和した」とは、グリセロ脂質の脂肪族側鎖の少なくとも50%が18:1であるが、トリグリセリドの少なくとも50%がトリオレイン(3つの18:1鎖が単一のグリセロール骨格に結合する)であることを必ずしも意味しない。かかるプロファイルには、全側鎖の少なくとも50%が18:1である場合、18:1と他の鎖の混合したグリセロ脂質が含まれ得る。
【0066】
「適正製造基準」および「GMP」とは、21C.F.R.110(人間の食品用)および111(健康補助食品用)に示す規制によって制定された条件、または米国外の現地で制定された同等の規制方針を意味する。米国の規制は、連邦食品・医薬品・化粧品法の権力下で、米国食品医薬品局によって公布され、人間の消費用の食品および健康補助食品のメーカー、加工業者、および包装業者を規制する。
【0067】
「成長」とは、細胞サイズ、全細胞内内容物、および/または細胞集団もしくは個々の細胞の重量の増加を意味し、固定炭素源の細胞内油への変換による細胞重量の増加を含む。
【0068】
「従属栄養培養」、ならびに「従属栄養培養物」および「従属栄養発酵」等の変形とは、固定炭素源の存在下で、成長(細胞サイズ、細胞内容物、および/または細胞活性の増加)を意図的に促進することをいう。従属栄養培養は、光がない状態で行う。光がない状態における培養とは、細胞が光から有意味な量(すなわち0.1%より多い)のエネルギーを誘導しない、光が完全にない状態、またはほとんど完全にない状態における微生物細胞の培養を意味する。
【0069】
「従属栄養繁殖」およびその変形とは、固定炭素源の存在下で、繁殖(有糸分裂による細胞数の増加)を意図的に促進することをいう。従属栄養繁殖は、光がない状態で行う。光がない状態における繁殖とは、細胞が光から有意味な量(すなわち0.1%より多い)のエネルギーを誘導しない、光が完全にない状態、またはほとんど完全にない状態における微生物細胞の繁殖を意味する。
【0070】
「ホモジェネート」とは、物理的に破砕されたバイオマスを意味する。均質化は、粒子または凝集体を小さく、均一なサイズに細分化し、更なる加工に供することができる分散物の形成を含む、流体力学工程である。均質化は、種々の食品および乳製品の加工に用い、安定性、賞味期間、消化、および味を向上させる。
【0071】
「脂質収率の増加」とは、例えば、培養物1リットル当たりの細胞の乾燥重量の増加、脂質を含む細胞の割合の増加、および/または単位時間ごとの培養物の容積1リットル当たりの脂質の全体量の増加によって達成することができる、微生物培養物の脂質/油生産性の増加を意味する。
【0072】
「インサイチュ」とは、「定位置」または「当初の位置で」を意味する。例えば、培養物は、触媒を分泌する第1の微細藻類細胞型と、基質を分泌する第2の微生物細胞型とを含んでもよく、第1および第2の細胞型が、物質の更なる分離または処理を必要とせずに、共培養においてインサイチュで発生する特定の化学反応に必要な成分を産生する。
【0073】
「脂質」とは、無極性溶媒(エーテルおよびヘキサン等)中で溶解可能であり、および水には相対的にまたは完全に不溶である、任意のクラスの分子を意味する。脂質分子の大部分は、本質的に、疎水性の長い炭化水素末端からなるため、脂質分子はこれらの特性を有する。脂質の一例には、脂肪酸(飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸);グリセリドまたはグリセロ脂質(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドもしくは中性脂肪、およびホスホグリセリドもしくはグリセロリン脂質等);および、非グリセリド(スフィンゴ脂質、トコフェロール、トコトリエノール、ステロール脂質(コレステロールおよびステロイドホルモンを含む)、プレノール脂質(テルペノイド、脂肪アルコール、ワックス、およびポリケチドを含む)が含まれる。
【0074】
「溶解物」とは、溶解細胞の内容物を含む、溶液を意味する。
【0075】
「溶解」とは、原形質膜の破損、および、場合により、少なくとも一部の細胞内容物を放出するのに十分な微生物の細胞壁の破損を意味し、その完全性を損なう機械的メカニズムまたは浸透メカニズムによって達成されることが多い。
【0076】
「溶解する」とは、細胞膜の破損、および、場合により、少なくとも一部の細胞内容物を放出するのに十分な生物体または細胞の細胞壁の破損を意味する。
【0077】
「微細藻類」とは、葉緑体を含み、光合成を行うことができるか、またはできない、真核微生物の生物体を意味する。微細藻類には、固定炭素源をエネルギーとして代謝することができない、偏性光合成自己栄養生物、および光合成を行うことができず、固定炭素源単独で生存することができる、従属栄養生物(偏性従属栄養生物を含む)が含まれる。微細藻類には、クラミドモナス(Chlamydomonas)、および、例えば、2つの別個の細胞型の単純な多細胞光合成微生物である、ボルボックス(Volvox)等の微生物等の、細胞分裂直後、姉妹細胞から分離する単細胞生物が含まれる。また、「微細藻類」には、クロレラ属(Chlorella)、パラクロレラ属(Parachlorella)、およびドナリエラ(Dunaliella)も含まれる。
【0078】
「微細藻類バイオマス」、「藻類バイオマス」、および「バイオマス」とは、微細藻類細胞の成長および/または繁殖によって産生する物質を意味する。バイオマスは、細胞および/または細胞内容物、ならびに細胞外物質を含んでもよい。細胞外物質には、細胞によって分泌される化合物を含むが、これに限定されない。
【0079】
「微細藻類油」および「藻類油」とは、トリアシルグリセロールを含む、微細藻類によって産生する脂質成分を意味する。
【0080】
「微細化した」とは、細胞が破壊されたバイオマスを意味する。例えば、少なくとも50%の粒子サイズ(中央値粒度)が、最長寸法で10μm以下、または同等の容積の球体の径になるように、高圧化、機械的方法、剪断、超音波処理(または同等の処理)を含む、周知の方法によって破砕することができる。一般に、かかる粒子の少なくとも50%から90%以上は、最長寸法で5μm未満、または同等の容積の球体の径である。いずれの場合においても、微細化したバイオマスの平均粒子サイズは、無処理の微細藻類細胞よりも小さい。言及する粒子サイズは、均質化によって生じるものであり、実際、均質化が生じた後、および乾燥中に生じる粒子の凝集によって発生すると考えられる歪みを回避するため、乾燥前に、すぐに測定することが好ましい。レーザー回析等の粒子サイズを測定する方法の一部は、凝集した粒子(正確にいえば、個々の粒子)のサイズを検出し、また、乾燥後に、大きな見掛けの粒子サイズ(例えば、1〜100μmの平均粒子サイズ)を示し得る。粒子は、一般に形状においてほぼ球状であるので、同等の容積の球体の径および粒子の最長寸法は、ほぼ同じである。
【0081】
「微生物(microorganism)」および「微生物(microbe)」とは、微小の単細胞生物を意味する。
【0082】
本明細書に使用する「口当たり」とは、口腔における食品組成物の知覚を意味する。口当たりは、当業者によって使用され、理解される用語である。口当たりには、口に入れた場合に、食品組成物の凝集性、密度、収れん性、乾燥、脆さ(fracturability)、粒状性、粘着性、硬度、重さ、吸湿性、水分放出、口腔へのまとわりつき(mouthcoating)、粗さ、滑りやすさ、平滑性、均一性、かみ切った一片の均一性、咀嚼の均一性、粘性、および湿潤性からなる群より選択される、知覚が含まれる。
【0083】
「栄養補助食品」とは、大量のカロリーとは対照的に、特定の栄養素の提供によって、食生活の補助をすることを意図した組成物を意味する。栄養補助食品は、次に示す原料を1以上含み得る:ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、必須脂肪酸、および他の物質。栄養補助食品は、一般に、錠剤であるか、またはカプセル化されている。錠剤であるかまたはカプセル化された単一の栄養補助食品は、一般に、1日当たり15グラム以下のレベルで摂取される。栄養補助食品は、ヨーグルトまたは「スムージー」等の、食品組成物と混合することが可能な、混合用の小袋で提供することができ、通常、1日当たり25グラム以下のレベルで摂取される。
【0084】
「油」とは、微細藻類、他の植物、および/または動物を含む、生物体によって産生されるトリアシルグリセリド(またはトリグリセリド油)を意味する。別段の指定がない限り、「油」とは、「脂肪」と区別して、通常の室温および圧力で一般に液体である脂質をいう。しかしながら、ココナッツ油は、一部のヤシ油およびバーム核油と同様に、一般に、室温で固体である。例えば、「油」には、大豆、ナタネ、キャノーラ、ヤシ、パーム核、ココナッツ、トウモロコシ、オリーブ、ヒマワリ、綿実、クフェア、ピーナッツ、ナガミノアマナズナ(camelina sativa)、カラシナの種子 、カシューナッツ、オート麦、ハウチワマメ、ケナフ、キンセンカ属(calendula)、麻、コーヒー、亜麻仁、ヘーゼルナッツ、トウダイグサ属(euphorbia)、カボチャ種子、コリアンダー、アマナズナ属(camelina)、胡麻、ベニバナ、米、アブラギリ(tung oil tree)、ココア、コプラ、ケシ、ヒマ、ペカン、ホホバ、ジャトロファ属(jatropha)、マカダミア、ブラジルナッツ、およびアボカド、ならびにこれらの組合せ由来の油を含むが、これらに限定されない、植物由来の植物油または種子油が含まれる。
【0085】
「浸透圧衝撃」とは、浸透圧の急激な低下後の溶液における細胞の破裂を意味し、溶液への細胞の細胞成分の放出を誘導することに使用される場合がある。
【0086】
「低温殺菌」とは、食品中の微生物の増殖を遅くさせることを意図とした、加熱の工程を意味する。一般的に、低温殺菌は、高温(但し、沸点より低い温度)で、短時間行われる。本明細書に説明するように、低温殺菌は、食品中の好ましくない微生物の数を低減させるだけでなく、食品中に含まれる特定の酵素も不活性化することができる。
【0087】
「多糖類」および「グリカン」とは、単糖類のグリコシド結合によって作製される、炭水化物を意味する。セルロースは、特定の植物の細胞壁を構成する多糖類の一例である。
【0088】
「ポート」とは、ガス、液体、細胞等の物質の流入または流出を可能にするバイオリアクタの開口部を意味し、ポートは、通常、管に接続される。
【0089】
「主にカプセル化された」とは、例えば、微細藻類細胞を含み得る、例えば、藻類油の、50%を超える(一般に、75%を超えて90%までの)、前述した成分を、前述した容器に隔離することを意味する。
【0090】
「主に無処理の細胞」および「主に無処理のバイオマス」とは、50%を超え、多くの場合、75、90、および98%を超える無処理の細胞を含む、細胞集団を意味する。本文脈において、「無処理」とは、培養物において細胞膜の透過性を超える程度に、細胞の細胞内成分が放出するような様式で、細胞の細胞内成分を密閉する細胞膜および/または細胞壁の物理的連続性が、破壊されていないことを意味する。
【0091】
「主に溶解された」とは、50%を超える(一般に、75%を超えて90%までの)細胞が、細胞の細胞内成分が細胞膜内に完全に密閉されないまでに破壊された、細胞集団を意味する。
【0092】
「増殖」とは、成長と繁殖の両方の組合せを意味する。
【0093】
「繁殖」とは、有糸分裂または他の細胞分裂による細胞数の増加を意味する。
【0094】
「近似分析」とは、脂肪、窒素/タンパク質、粗繊維(主成分としてセルロースとリグニン)、水分、および灰分の食料分析を意味する。炭水化物(総食物繊維および遊離糖類)は、100(差の炭水化物)から、近似分析の既知の値の合計を引くことによって算出することができる。
【0095】
本明細書に使用する「賞味期間」とは、食品組成物を許容することができると考えられる時間の長さを意味する。テクスチャ、口当たり、味、風味、無菌、および他の特性を含む、食品組成物の特性は、経時的に低下する。食品組成物の賞味期間において、食品組成物の特性は低下し得るが、食品組成物は、依然として、食品組成物として許容することができると判断することができる。
【0096】
「超音波処理」とは、音波エネルギーによる細胞等の生体物質の破壊を意味する。
【0097】
「フルフラールの化学種」とは、2‐フランカルボキシアルデヒド、および同様の基本的な構造特性を有する、その誘導体を意味する。
【0098】
「ストーバ」とは、穀粒を作物から収穫した後に残る、作物の乾燥した茎および葉を意味する。
【0099】
「人間の消費に適した」とは、組成物が人間の健康に悪影響を及ぼすことなく、食事摂取で消費することができ、消化管内での消化物質の取込みによって、有意なカロリー摂取を提供できることを意味する。
【0100】
「未調理品」とは、加熱されていない組成物を意味するが、以前に加熱された成分が1以上含まれ得る。
【0101】
「V/V」または「v/v」とは、容積割合に関して、組成物中の1つの物質の容積と組成物の容積の比率を意味する。例えば、微細藻類油を5%v/v含む組成物についての言及は、組成物の容積の5%が微細藻類油からなり(例えば、容積が100mm
3の組成物は、5mm
3の藻類油を含む)、残部の容積の組成物(例えば、一例では95mm
3)が他の原料からなることを意味する。
【0102】
「W/W」または「w/w」とは、重量割合に関して、組成物中の1つの物質の重量と組成物の重量の比率を意味する。例えば、微細バイオマスを5%w/w含む組成物についての言及は、組成物の重量の5%が微細藻類バイオマスからなり(例えば、重量が100mgの組成物は、5mgの藻類バイオマスを含む)、残部の重量の組成物(例えば、一例では95mg)が他の原料からなることを意味する。
【0103】
II.微細藻類バイオマスを調製する方法
本発明は、脂質および/またはタンパク質成分を含む、人間の消費に適した高栄養の藻類バイオマス、ならびに、藻類バイオマスと、食用原料および藻類バイオマスを含んだ食品組成物とを組み合わせる方法を提供する。本発明は、1つには、藻類バイオマスを、高い油含量および/または優れた機能性で調製することができ、また、得られたバイオマスを食品に導入できるという発見から生じた。さらに、脱脂藻類のバイオマス(脱脂藻類粉末形態において)は、特異的で、驚くべき機能性を付与することができ、食品に導入することができる。また、バイオマスは、藻類由来の食物繊維(可溶性および不溶性の炭水化物の両方)、リン脂質、糖タンパク質、フィトステロール、トコフェロール、トコトリエノール、およびセレン等の、油および/またはタンパク質に加えて、複数の有益な微量養素も提供する。藻類バイオマスは、本明細書に開示するか、または当業者に周知の条件下で、成長、培養、もしくは繁殖した藻類細胞を含む。
【0104】
本節は、最初に、本発明の方法で使用するのに適した微細藻類の種類(パートA)、色素沈着を欠いているか、有意に低減された色素沈着を有する、微細藻類株を作出する方法(パートB)、次いで、バイオマスを繁殖するのに使用する、培養条件(パートC)、次いで、バイオマスを更なる処理のために調製するのに使用する、濃縮工程(パートD)、および本発明の方法に従って調製したバイオマスの化学組成物の説明(パートE)で終わる。
【0105】
A.本発明の方法で使用する微細藻類
本発明の方法に従って、適切な油および/または脂質、および/またはタンパク質を産生する、種々の微細藻類種を使用することができるが、高いレベルの適切な油および/または脂質、および/またはタンパク質を自然に産生する微細藻類が好ましい。本発明で使用する微細藻類の選択に影響を及ぼす考慮すべき事項には、食品の製造に適した油、脂質、またはタンパク質の産生に加えて、(1)細胞重量の割合としての高脂質(またはタンパク質)含量、(2)成長の容易性、(3)繁殖の容易性、(4)バイオマス処理の容易性、(5)グリセロ脂質プロファイル、および(6)藻類毒素のないまたはほとんどない(以下の実施例4は、乾燥微細藻類バイオマス、および検出可能な藻類毒素を欠くバイオマスから抽出される、油または脂質を示す)が含まれる。
【0106】
一部の実施態様において、微細藻類の細胞壁は、食品加工時に破裂して、機能成分を放出し、また、これらの実施態様において、特に、藻類バイオマスが未調理食品に使用される場合、動物(例えば、人間または他の単胃動物)の消化管で消化されやすい細胞壁を有する微細藻類株が好ましい。
【0107】
細胞壁に高いセルロース/ヘミセルロース含量を有する、微細藻類株の消化率は、一般に減少する。消化率は、当業者に公知の標準アッセイ(例えば、ペプシン消化率アッセイ)を用いて、評価することができる。
【0108】
特定の実施態様において、微細藻類は、乾燥重量で少なくとも10%以上の油を含む。別の実施態様において、微細藻類は、乾燥重量で少なくとも25〜35%以上の油を含む。一般に、これらの実施態様において、微細藻類中に多くの油が含まれるほど、バイオマスの栄養価は高くなり、そのため、乾燥重量で少なくとも40%、少なくとも50%、75%以上の油を含むように培養することができる微細藻類が特に好ましい。本発明の方法で使用する好ましい微細藻類は、従属栄養により(光がない状態において糖類で)成長することができるか、または偏性従属栄養生物である。すべての型の脂質は、好ましくない味または不快な臭気を有し得る、および不十分な安定性を示すか、または口当たりの悪さを示し得るので、すべての型の脂質が、食品および/または栄養補助食品の使用に好ましいわけではなく、また、これらの考慮すべき事項は、本発明の方法で使用する微細藻類の選択にも影響を及ぼす。
【0109】
クロレラ属(Chlorella)の微細藻類は、一般に本発明の方法で有用である。クロレラ属(Chlorella)は、単細胞緑藻類の属であり、緑藻植物門(Chlorophyta)に属する。クロレラ属(Chlorella)の細胞は、一般に、球形で、直径約2〜10μmであり、鞭毛を欠く。クロレラ属(Chlorella)の一部の種は、生来従属栄養性である。好ましい実施態様において、本発明の方法で使用する微細藻類は、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)、クロレラ・エリプソイダ(Chlorella ellipsoidea)、クロレラ・ミヌティッシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ゾフィニエネシ(Chlorella zofinienesi)、クロレラ・ルテオビリディス(Chlorella luteoviridis)、クロレラ・ケッセレリ(Chlorella kessleri)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・フスカ・var.バクオレタ・クロレラ種(Chlorella fusca var. vacuolata Chlorella sp.)、クロレラ・cf.ミヌチシマ(Chlorella cf. minutissima)、またはクロレラ・エマゾーニ(Chlorella emersonii)である。クロレラ属(Chlorella)、特に、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)は、その高脂質の組成により、本発明の方法で使用する好ましい微生物である。本発明の方法で使用するクロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)の特に好ましい種には、以下の例で例示するものが含まれる。
【0110】
本発明の方法で使用するのに適したクロレラ属(Chlorella)の他の種には、アニトラタ(anitrata)、アンタルクティカ(Antarctica)、アウレオビリディス(aureoviridis)、キャンディダ(candida)、キャプスラテ(capsulate)、デシカート(desiccate)、エリプソイダ(ellipsoidea)(CCAP211/42株を含む)、エマゾーニ(emersonii)、フスカ(var.バクオレタ(var. vacuolata)を含む)、グルコトロファ(glucotropha)、インフシオナム(infusionum)(var・アクトフィラ(var. actophila)、およびvar.アウェノフィラ(var. auxenophila)を含む)、ケッセレリ(kessleri)(UTEX397、2229、398株のいずれかを含む)、ロボフォラ (lobophora)(SAG37.88株を含む)、ルテオビリディス(luteoviridis)(SAG2203株、ならびにvar.アウレオビリディス(var. aureoviridis)およびルテスセンス(lutescens)を含む)、ミニアタ(miniata)、cf.ミヌティッシマ(cf. minutissima)、ミヌティッシマ(minutissima)(UTEX2341株を含む)、ムタビリス(mutabilis)、ノクツルナ(nocturna)、オバァリス(ovalis)、パルバ(parva)、フォトフィリア(photophila)、プリングシェイミー(pringsheimii)、プロトセコイデス(protothecoides)(UTEX1806、411、264、256、255、250、249、31、29、25、もしくはCCAP211/8D株のいずれか、またはCCAP211/17およびvar.アシジコラ(var. acidicola)を含む)、レグラリス(regularis)(var.ミニマ(var. minima)およびウンブリカタ(umbricata)を含む)、レイシグリー(reisiglii)(CCP11/8株を含む)、サッカロフィラ(saccharophila)(CCAP211/31、CCAP211/32株、およびvar.エリプソイダ(var. ellipsoidea)を含む)、サリナ(salina)、シンプレックス(simplex)、ソロキニアナ(sorokiniana)(SAG211.40B株を含む)、種(UTEX2068株、およびCCAP211/92を含む)、スファエリカ(sphaerica)、スティグマトフォラ(stigmatophora)、ツレボウシオイデス(trebouxioides)、バニエリー(vanniellii)、ブルガリス(vulgaris)(CCAP211/11K、CCAP211/80株、ならびにf.テルティア(f. tertia)およびvar.アウトトロフィカ(var. autotrophica)、ヴィリディス(viridis)、ブルガリス(vulgaris)、ブルガリス・f.テルティア(vulgaris f. tertia)、およびブルガリス・f.ヴィリディス(vulgaris f. viridis)を含む)、シャンセラ(xanthella)、およびゾフィンジエンシス(zofingiensis)からなる群より選択される種が含まれる。
【0111】
本発明で使用するクロレラ属(Chlorella)の種(および他の微細藻類属の種)は、これらのゲノムの特定の標的領域と、本明細書で同定される種のこれらの同一領域とを比較することによって、同定することができる。好ましい種は、本明細書で同定される種と同一性を示すか、またはこれと少なくとも非常に高いレベルの相同性を示す種である。例えば、特定のクロレラ属(Chlorella)の種または株の同定は、プライマーおよびゲノムの適切な領域を使用する方法、例えば、Wuらの文献:Bot. Bull. Acad. Sin. 42: 115-121 (2001)に記載する方法を用いて、核および/または葉緑体DNAの増幅および配列決定によって、達成することができる。クロレラ属(Chlorella)の種の同定は、リボソームDNA配列を使用して単離する。リボソーム内部転写スペーサー(ITS1およびITS2rDNA)、23S RNA、18S rRNA、および他の保存ゲノム領域の増幅および配列決定等の系統解析の、十分に確立された方法を、当業者が用いて、クロレラ属(Chlorella)の種だけでなく、本明細書に説明する方法で使用するのに適した油および脂質を産生する、他の微細藻類を同定することができる。藻類の同定および分類の方法の一例については、文献:Genetics, 170(4):1601-10 (2005)、およびRNA, 11(4):361-4 (2005)を参照されたい。
【0112】
したがって、ゲノムDNA比較を用いて、本発明に使用するのに適した微細藻類の種を同定することができる。例えば、23S rRNAをコードするDNA等であるが、これに限定されない、保存ゲノムDNAの領域は、例えば、本発明に使用する好ましい微細藻類に分類学的に関連し、これらの好ましい種の対応する領域と比較し得る、微細藻類種から増幅することができる。次いで、高いレベルの類似性を示す種は、本発明の方法で使用するために、選択される。クロレラ属(Chlorella)内の種間でのかかるDNA配列比較の実例を、以下に示す。一部の例において、本発明で使用するのに好ましい微細藻類は、配列番号1〜23および26〜27に示す配列のうちの少なくとも1つに対して、少なくとも65%のヌクレオチド同一性を有する23S rRNAをコードする、ゲノムDNA配列を有する。他の例において、本発明で使用するのに好ましい微細藻類は、配列番号1〜23および26〜27に示す配列のうちの少なくとも1つに対して、少なくとも75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のヌクレオチド同一性を有する23S rRNAをコードする、ゲノムDNA配列を有する。また、他の原料と組み合わせて食品組成物を配合する前の、食品組成物および/または藻類バイオマスの遺伝子型解析は、藻類バイオマスが、微細藻類の単一株を超える株からの藻類バイオマスであるか否かを決定する信頼性のある方法でもある。
【0113】
ヌクレオチドまたはアミノ酸の同一性の割合を決定するための配列比較において、一般に、1つの配列が、参照配列として作用し、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを適用する際に、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば、サブ配列配位を設計し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを設計する。次いで、配列比較アルゴリズムは、設計されたプログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一性の割合を算出する。比較のために、最適な配列のアラインメントを、例えば、SmithとWatermanの文献:Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、NeedlemanとWunschの文献:J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonとLipmanの文献:Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性検索法によって、およびこれらのアルゴリズムのコンピュータへの実装(ウィスコンシンジェネティクス・ソフトウェアパッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)、遺伝学コンピュータグループ(575,サイエンスドクター,マジソン,ウイスコンシン州)でのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または視覚的検査(Ausubelらの文献、上記参照)によって、実行することができる。配列同一性および配列類似性の割合を決定するのに適した別の例示的アルゴリズムは、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschulらの文献:J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(ウェブアドレスwww.ncbi.nlm.nih.gov)を通じて、一般に入手可能である。
【0114】
また、クロレラ属(Chlorella)に加えて、他の属の微細藻類も、本発明の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、微細藻類は、パラクロレラ・ケッセレリ(Parachlorella kessleri)、パラクロレラ・ベイエリンキイ(Parachlorella beijerinckii)、ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleabundans)、ブラクテオコッカス・グランディス(Bracteococcus grandis)、ブラクテオコッカス・シナバリナス(Bracteococcus cinnabarinas)、およびブラクテオコッカス・エリアス(Bracteococcus aerius)、ブラクテアコッカス種(Bracteococcus sp)を含む、ブラクテオコッカス属(Bracteacoccus)、またはセネデスムス・ルベッセンス(Scenedesmus rebescens)からなる群より選択される種である。微細藻類種の他の非限定的な一例には、アクナンセス・オリエンタイルス(Achnanthes orientalis);アグメネルム(Agmenellum);アンフィプロラ・ヒアリン(Amphiprora hyaline);アンフォラ・コフェイフォルミス・リネア(Amphora coffeiformis linea)、アンフォラ・コフェイフォルミス・プンクタタ(Amphora coffeiformis punctata)、アンフォラ・コフェイフォルミス・タヨロリ(Amphora coffeiformis taylori)、アンフォラ・コフェイフォルミス・テヌイス(Amphora coffeiformis tenuis)、アンフォラ・コフェイフォルミス・デリカティッシマ(Amphora coffeiformis delicatissima)、アンフォラ・コフェイフォルミス・デリカティッシマ・キャピタタ(Amphora coffeiformis delicatissima capitata)を含む、アンフォラ・コフェイフォルミス(Amphora coffeiformis)を含む、アンフォラ(Amphora);アナベナ属(Anabaena);アンキストロデスムス・ファルカタス(Ankistrodesmus falcatus)を含む、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus);ボエケロヴィア・ホオグランディ(Boekelovia hooglandii);ボロディネラ(Borodinella);ボツリョコッカス・スデティクス(Botryococcus sudeticus)を含む、ボツリョコッカス・ブラウニイ(Botryococcus braunii);ブラクテオコッカス・エリアス(Bracteoccocus aerius)、ブラクテオコッカス・グランディス(Bracteoccocus grandis)、ブラクテオコッカス・シナバリナス(Bracteoccocus cinnabarinas)、ブラクテオコッカス・マイナー(Bracteoccocus minor)、およびブラクテオコッカス・メディオヌクレタス(Bracteoccocus medionucleatus)を含む、ブラクテオコッカス(Bracteoccocus);カルテリア(Carteria);カエトセロス・グラシリス(Chaetoceros gracilis)、カエトセロス・ムエレリ(C. muelleri)、およびカエトセロス・ムエレリ・スブサルスム(Chaetoceros muelleri subsalsum)を含む、カエトセロス(Chaetoceros);クロロコッカム・インフシオナム(Chlorococcum infusionum)を含む、クロロコッカム(Chlorococcum);クロロゴニウム(Chlorogonium);クロオモナス(Chroomonas);クリソスファエラ(Chrysosphaera);クリコスファエラ(Cricosphaera);クリプテコディニウム・コーニィ(Crypthecodinium cohnii);クリプトモナス(Cryptomonas);サイクロテラ・クリプティカ(Cyclotella cryptica)およびサイクロテラ・メネグヒニアナ(Cyclotella meneghiniana)を含む、サイクロテラ(Cyclotella);ドナリエラ・バルダウィル(Dunaliella bardawil)、ドナリエラ・バイオクラタ(Dunaliella bioculata)、ドナリエラ・グラヌラテ(Dunaliella granulate)、ドナリエラ・マリタイム(Dunaliella maritime)、ドナリエラ・ミヌタ(Dunaliella minuta)、ドナリエラ・パルバ(Dunaliella parva)、ドナリエラ・ペイルセイ(Dunaliella peircei)、ドナリエラ・プリモレクタ(Dunaliella primolecta)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、ドナリエラ・テリコラ(Dunaliella terricola)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、およびドナリエラ・ヴィリディス(Dunaliella viridis)を含む、ドナリエラ(Dunaliella);エレモスファエラ・ヴィリディス(Eremosphaera viridis)を含む、エレモスファエラ(Eremosphaera);エリプソイトドン(Ellipsoidon);ユーグレナ(Euglena);フランセイア(Franceia);フラギラリア・クロトネンシス(Fragilaria crotonensis)を含む、フラギラリア(Fragilaria);グレオカプサ(Gleocapsa);グロエオサムニオン(Gloeothamnion);ヒメノモナス(Hymenomonas);イソクリシス・aff.ガルバナ(Isochrysis aff. galbana)およびイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)を含む、イソクリシス(Isochrysis);レポシンクリス(Lepocinclis);ミクラクチニウム(Micractinium)(UTEX LB2614を含む);モノラフィディウム・ミヌツム(Monoraphidium minutum)を含む、モノラフィディウム(Monoraphidium);モノラフィディウム(Monoraphidium);ナンノクロリス(Nannochloris);ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)を含む、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis);ナビクラ・アクセプタタ(Navicula acceptata)、ナビクラ・ビスカンテラエ(Navicula biskanterae)、ナビクラ・シュードテネロイデス(Navicula pseudotenelloides)、ナビクラ・ペリクロサ(Navicula pelliculosa)、およびナビクラ・サプロフィラ(Navicula saprophila)を含む、ナビクラ(Navicula);ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleabundans);ネフロクロリス(Nephrochloris);ネフロセルミス(Nephroselmis);ニツスチア・コムニス(Nitschia communis);ニツスチア・アレクサンドリア(Nitzschia alexandrina)、ニツスチア・コムニス(Nitzschia communis)、ニツスチア・デイシパタ(Nitzschia dissipata)、ニツスチア・フルスツルム(Nitzschia frustulum)、ニツスチア・ハンツスチアナ(Nitzschia hantzschiana)、ニツスチア・インコンスピクア(Nitzschia inconspicua)、ニツスチア・インテルメディア(Nitzschia intermedia)、ニツスチア・マイクロセファラ(Nitzschia microcephala)、ニツスチア・プシラ(Nitzschia pusilla)、ニツスチア・プシラ・エリプティカ(Nitzschia pusilla elliptica)、ニツスチア・プシラ・モノエンシス(Nitzschia pusilla monoensis)、およびニツスチア・クアヅラングラー(Nitzschia quadrangular)を含む、ニツスチア(Nitzschia);オクロモナス(Ochromonas);オオサイスティス・パルバ(Oocystis parva)およびオオサイスティス・プシラ(Oocystis pusilla)を含む、オオサイスティス(Oocystis);オスシラトリア・リムネティカ(Oscillatoria limnetica)およびオスシラトリア・スブレヴィス(Oscillatoria subbrevis)を含む、オスシラトリア(Oscillatoria);パラクロレラ・ベイエリンキイ(Parachlorella beijerinckii)(SAG2046株を含む)およびパラクロレラ・ケッセレリ(Parachlorella kessleri)(SAG11.80、14.82、21.11H9株のいずれかを含む)を含む、パラクロレラ属(Parachlorella);パスケリア・アシドフィラ(Pascheria acidophila)を含む、パスケリア(Pascheria);パブロバ(Pavlova);ファガス(Phagus);フォルミディウム(Phormidium);プラティモナス(Platymonas);プレウロクリシス・カーターアエ(Pleurochrysis carterae)およびプレウロクリシス・デンタテ(Pleurochrysis dentate)を含む、プレウロクリシス(Pleurochrysis);プロトテカ・スタグノラ(Prototheca stagnora)(UTEX327株を含む)、プロトテカ・ポルトリセンシス(Prototheca portoricensis)、およびプロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)(UTEX1441、1435、1436、1437、1439株を含む)を含む、プロトテカ(Prototheca);シュードクロレラ・アクアティカ(Pseudochlorella aquatica);ピラミモナス(Pyramimonas);ピロボツリス(Pyrobotrys);ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus);サルシノイド・クリソフィテ(Sarcinoid chrysophyte);セネデスムス・アルマタス(Scenedesmus armatus)およびセネデスムス・ルベッセンス(Scenedesmus rubescens)を含む、セネデスムス属(Scenedesmus);シゾシツリウム(Schizochytrium);スピロギラ(Spirogyra);スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis);スチココッカス(Stichococcus);シネココッカス(Synechococcus);テトラエヅロン(Tetraedron);テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)を含む、テトラセルミス(Tetraselmis);タラッシオシラ・ウェイッスフロギィ(Thalassiosira weissflogii);および、ヴィリデイエラ・フリデリシアナ(Viridiella fridericiana)からなる種および属の群のこれらの種が含まれる。
【0115】
すべての発酵工程は、他の微生物による汚染を受ける。本発明のバイオマスおよび藻類粉末は、汚染を最小化する条件下で、成長させ、処理される。それにもかかわらず、汚染を完全には防ぐことができない。汚染は、微細藻類の培養と繁殖、採取、藻類粉末の製造時、並びに藻類粉末および藻類バイオマスの輸送および保存時を含む、操作段階で生じ得る。汚染菌を同定してもよいし、同定しなくてもよい。
【0116】
藻類バイオマスおよび藻類粉末は、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり10,000コロニー形成単位(CFU)以下の汚染菌、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり7,500CFU以下の汚染菌、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり5,000CFU以下の汚染菌、または藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり2,500CFU以下の汚染菌を含み得る。
【0117】
藻類バイオマスおよび藻類粉末は、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり200CFU以下の汚染酵母、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり150CFU以下の汚染酵母、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり100CFU以下の汚染酵母、または藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり50CFU以下の汚染酵母からなる群より選択される、汚染菌を含み得る。藻類バイオマスおよび藻類粉末は、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり200CFU以下の汚染カビ、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり150CFU以下の汚染カビ、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり100CFU以下の汚染カビ、または藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり50CFU以下の汚染カビからなる群より選択される、汚染菌を含み得る。藻類バイオマスおよび藻類粉末は、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり10CFU以下の汚染大腸菌群、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり8CFU以下の汚染大腸菌群、または藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり5CFU以下の汚染大腸菌群からなる群より選択される、汚染菌を含み得る。藻類バイオマスおよび藻類粉末は、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり10CFU以下の汚染大腸菌、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり8CFU以下の汚染大腸菌、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり6CFU以下の汚染大腸菌、または藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり4CFU以下の汚染大腸菌からなる群より選択される、汚染菌を含み得る。藻類バイオマスおよび藻類粉末は、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり20CFU以下の汚染ブドウ球菌、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり15CFU以下の汚染ブドウ球菌、藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり10CFU以下の汚染ブドウ球菌、または藻類バイオマスもしくは藻類粉末のグラム当たり5CFU以下の汚染ブドウ球菌からなる群より選択される、汚染菌を含み得る。藻類バイオマスおよび藻類粉末は、汚染菌を含み、汚染サルモネラ属(Salmonella)、緑膿菌(シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa))もしくはリステリア(Listeria)は、50グラムの藻類バイオマスもしくは藻類粉末で検出不能であり、25グラムの藻類バイオマスもしくは藻類粉末で検出不能であり、20グラムの藻類バイオマスもしくは藻類粉末で検出不能であり、15グラムの藻類バイオマスもしくは藻類粉末で検出不能であり、10グラムの藻類バイオマスおよび藻類粉末で検出不能である。
【0118】
汚染菌の量は、当業者に公知の試験によって測定することができる。例えば、好気性菌の全生菌数、大腸菌群と大腸菌、サルモネラ属(Salmonella)、およびリステリア(Listeria)の汚染はそれぞれ、AOAC966.23、966.24、2004.03、および999.06によって決定することができる。酵母とカビの汚染は、FDA‐BAM(第7版)に開示された方法によって測定することができる。また、ブドウ球菌および緑膿菌(シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa))の汚染は、USP31、NF26、2008等によって、測定することができる。
【0119】
一部の実施態様において、藻類粉末または藻類バイオマス等の食品組成物および食品原料は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号26、および配列番号27からなる群より選択される1以上の配列と少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の23S rRNAゲノム配列同一性を有する、藻類由来である。
【0120】
B.色素沈着を欠いているか、有意に低減された色素沈着を有する、微細藻類株を作出する方法
クロレラ等の微細藻類は、光合成または従属栄養のいずれかにより成長し得る。炭素源が固定炭素源であり、光がない状態で、従属栄養条件下で成長した場合、通常、緑色微細藻類は、黄色い色を有し、緑色色素沈着を欠いているか、または緑色色素沈着が有意に低減する。低減された(または緑色色素沈着を欠いている)緑色色素沈着の微細藻類は、食品原料として好都合であり得る。低減された(または緑色色素沈着を欠いている)緑色色素沈着の微細藻類の1つの利点は、微細藻類が、低減されたクロロフィル風味を有することである。低減された(または緑色色素沈着を欠いている)緑色色素沈着の微細藻類の他の利点は、食品原料として、微細藻類の食料への添加が、消費者にとって魅力のない可能性がある、緑色を付与しないことである。従属栄養条件下で成長した微細藻類の、低減された緑色色素沈着は、一過性である。光合成による成長に切り替えられる場合、光合成および従属栄養により成長可能な微細藻類は、緑色色素沈着が回復する。さらに、低減された緑色色素であっても、従属栄養により成長した微細藻類は、黄色い色であり、これは、消費者が、食料の色が白色または明るい色であることを期待する場合の一部の食品適用に適さない可能性がある。したがって、従属栄養により成長することができ(その結果、緑色色素沈着が低減されているか、または緑色色素沈着を欠いている)、さらに、黄色色素沈着も低減されている(その結果、食品適用のために中間色である)微細藻類株を作出するのに好都合である。
【0121】
色素沈着を欠いているか、または有意に低減された色素沈着を有する、かかる微細藻類株を作出するための1つの方法は、変異誘発、次いで所望の表現型のためのスクリーニングによるものである。複数の変異誘発法は、当技術分野で公知であり、実施されている。例えば、Uranoらの文献(Uranoら,J Bioscience Bioengineering (2000) v. 90(5): pp. 567-569)は、UV照射を用いて作出される、クロレラ・エリプソイダ(Chlorella ellipsoidea)の黄色および白色の色の突然変異株を記載する。Kamiyaの文献(Kamiya,Plant Cell Physiol. (1989) v. 30(4): 513-521)は、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、11h(M125)の無色の株を記載する。
【0122】
UV照射による変異誘発に加えて、化学的変異誘発も、低減された色素沈着を有する(または色素沈着を欠いている)微細藻類を作出するために利用することができる。メタンスルホン酸エチル(EMS)またはN‐メチル‐N’ニトロ‐N‐ニトログアニジン(NTG)等の化学的変異誘発物質は、酵母、菌類、ミコバクテリウム(mycobacterium)、および微細藻類を含む種々の微生物に対する効果的な化学的変異誘発物質であることが示されている。また、変異誘発は、複数周期で行うこともでき、その場合、微細藻類は、変異誘発物質(UVもしくは化学的変異誘発物質のいずれか、またはこれら両方)に曝露し、次いで、所望の低減された色素沈着表現型のスクリーニングをする。次いで、所望の表現型を有するコロニーを、プレート上で画線を施し、再度単離して、突然変異が、ある作出から次の作出まで安定していること、およびコロニーが純粋で、混合群からなっていないことを確認する。
【0123】
特定の例において、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)を使用して、UVおよび化学的変異誘発の組合せにより、色素沈着を欠いているか、または低減された色素沈着を有する株を作出した。クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)を、NTGによる化学的変異誘発の周期に曝露し、コロニーを、色彩突然変異株についてのスクリーニングをした。次いで、色彩突然変異を示さないコロニーを、UV照射の周期に供し、再度色彩突然変異株のスクリーニングをした。一実施態様において、色素沈着を欠いているクロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)株を単離し、これは、2009年10月13日付で、ブダペスト条約に基づいて、米国培養菌保存施設(American Type Culture Collection)(10801 ユニバーシティ大通り,マナッサス,バージニア州 20110‐2209))に寄託された、特許寄託名PTA‐10397の、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)33‐55である。別の実施態様において、低減された色素沈着を有するクロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)株を単離し、これは、2009年10月13日付で、ブダペスト条約に基づいて、米国培養菌保存施設(American Type Culture Collection)(10801 ユニバーシティ大通り,マナッサス,バージニア州 20110‐2209))に寄託された、特許寄託名PTA‐10396の、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)25‐32である。
【0124】
C.微細藻類の培地および培養条件
微細藻類を液体培地で培養し、本発明の方法に従ってバイオマスを繁殖させる。本発明の方法では、微細藻類種を、光がない状態で、固定炭素および/または固定窒素源を含有する培地で成長させる。かかる成長は、従属栄養成長として知られている。微細藻類の一部の種において、例えば、窒素制限条件下での、10〜15日以上の日数等の長期間の従属栄養成長は、細胞における高脂質含量の蓄積をもたらす。
【0125】
微細藻類培養培地は、一般に、固定炭素源(以下で論ずる)、固定窒素源(タンパク質、大豆粕、酵母エキス、コーンスティープリカー、アンモニア(純粋または塩の形態で)、ナイトレート、または硝酸塩等)、微量元素(例えば、亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガン、およびモリブデンを、例えば、ZnCl
2、H
3BO
3、CoCl
2・6H
2O、CuCl
2・2H
2O、MnCl
2・4H
2O、および(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2Oのそれぞれの形態で)、場合により、pH維持のための緩衝液、およびホスフェイト(リンの供給源;他のリン酸塩を使用することができる)を含む。他の成分には、特に、海水微細藻類のための、塩化ナトリウム等の塩が含まれる。
【0126】
特定の例において、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)を培養するのに適した培地には、プロテオース培地が含まれる。この培地は、純粋培養に適し、1gのプロテオースペプトンを1リットルのブリストル(Bristol)培地に添加することによって、1L容積の培地(pH〜6.8)を調製することができる。ブリストル(Bristol)培地は、水溶液中に、2.94mM NaNO
3、0.17mM CaCl
2・2H
2O、0.3mM MgSO
4・7H
2O、0.43mM、1.29mM KH
2PO
4、および1.43mM NaClを含む。1.5%寒天培地については、15gの寒天を、1Lの溶液に加えることができる。溶液は、蓋をして、加圧滅菌し、次いで、使用前に冷蔵温度で保存する。クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)を、乾燥重量の割合として高い油レベルに成長および繁殖させるための他の方法が記載されている(例えば、MiaoとWuの文献:J. Biotechnology, 2004, 11: 85-93、およびMiaoとWuの文献:Biosource Technology (2006) 97: 841-846(55%の油乾燥細胞重量を得るための発酵方法を示す)を参照)。高油藻類は、一般に、窒素制限下で過剰の炭素源を提供しながら、発酵時間を延長させることによって生じ得る。
【0127】
固体および液体成長培地は、一般に、種々の供給源から入手可能であり、種々の微生物株に適した特定の培地の調製についての指示は、例えば、テキサス大学オースティン校により藻類培養物コレクションについての維持管理されているサイト(UTEX)である、http://www.utex.org/にて、オンラインで見出すことができる。例えば、種々の淡水培地には、1/2、1/3、1/5、1X、2/3、2X CHEV珪藻(Diatom)培地;1:1DYIII/PEA+Gr+;Ag珪藻(Diatom)培地;アレン(Allen)培地;BG11‐1培地;ボールド(Bold)1NVおよび3N培地;ボツリョコッカス(Botryococcus)培地;ブリストル(Bristol)培地;Chuの培地;CR1、CR1‐SおよびCR1+珪藻(Diatom)培地;シアニジウム(Cyanidium)培地;シアノフィシアン(Cyanophycean)培地;デスミド(Desmid)培地;DYIII培地;ユーグレナ(Euglena)培地;HEPES培地;J培地;麦芽培地;MES培地;改良ボールド(Bold)3N培地;改良COMBO培地;N/20培地;オクロモナス(Ochromonas)培地;P49培地;ポリトメラ(Polytomella)培地;プロテオース培地;氷雪藻培地;土壌抽出物培地;土壌水;BAR、GR‐、GR−/NH4、GR+、GR+/NH4、PEA、泥炭およびVT培地;スピルリナ(Spirulina)培地;タップ(tap)培地;トレブキシア(Trebouxia)培地;ボルボカシアン(Volvocacean)培地;ボルボカシアン(Volvocacean)‐3N培地;ボルボックス(Volvox)培地;ボルボックス(Volvox)‐デキストロース培地;ワリス(Waris)培地;および、ワリス(Waris)+土壌抽出物培地が含まれる。種々の塩水培地には、次に示すものが含まれる:1%、5%および1X F/2培地;1/2、1Xおよび2X Erdschreiberの培地;1/2、1/3、1/4、1/5、1X、5/3および2X土壌+海水培地;1/4 ERD;2/3濃縮海水培地;20%アレン(Allen)+80%ERD;人工海水培地;BG11‐1+.36%NaCl培地;BG11‐1+1%NaCl培地;ボールド(Bold)1NV:Erdshreiber(1:1)および(4:1);ブリストル(Bristol)‐NaCl培地;カサノリ目(Dasycladales)海水培地;ES/10、ES/2およびES/4を含む、1/2および1X濃縮海水培地;F/2+NH4;LDM培地;改良1Xおよび2X CHEV;改良2X CHEV+土壌;改良人工海水培地;ポルフィジウム(Porphridium)培地;および、SS珪藻(Diatom)培地。
【0128】
本発明の方法と共に使用する他の好適な培地は、上で特定したURLを閲覧することによって、またはSAG、CCAP、またはCCALA等の微生物培養物を維持管理する他の組織を参考にすることによって、容易に特定することができる。SAGとは、ゲッティンゲン大学(ゲッティンゲン、ドイツ)の藻類培養物コレクションをいい、CCAPとは、スコットランド海洋科学協会(Scottish Association for Marine Science)(スコットランド、英国)によって管理された藻類および原虫類の培養物コレクションをいい、また、CCALAとは、植物学研究所の藻類研究室の培養物コレクション(トシェボニュ、チェコ共和国)をいう。
【0129】
本発明の方法で用いるのに有用な微生物は、世界中の種々の場所および環境で見出される。他の種からのこれらの単離、およびこれらの生じた進化分岐の結果、特定の種の微生物から、最適な成長、ならびに油および/または脂質、および/またはタンパク質の生成を予測するのは、困難であるかまたは不可能であり得るが、当業者は、本明細書の開示を考慮して、所定の試験により、適切な培地を容易に見出すことができる。一部の例において、特定の種の微生物は、一部の阻害成分の存在のために、または微生物の特定株が必要とする一部の必須栄養所要量の不足のために、特定の成長培地で成長することができない。以下の例は、乾燥細胞重量の割合として高レベルの脂質を蓄積する、種々の微細藻類種を培養する例示的方法を提供する。
【0130】
固定炭素源は、培地の主要成分である。本発明の目的に適した固定炭素源には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ガラクトース、キシロース、マンノース、ラムノース、アラビノース、N‐アセチルグルコサミン、グリセロール、フロリドシド、グルクロン酸、および/または酢酸塩が含まれる。本発明により微細藻類を培養するための他の炭素源には、グリセロールとグルコースの混合物、グルコースとキシロースの混合物、フルクトースとグルコースの混合物、ならびにスクロースおよび解重合された甜菜パルプの混合物等の混合物が含まれる。微細藻類培養の使用に適した他の炭素源には、黒液、コーンスターチ、解重合されたセルロース系物質(例えば、コーンストーバ、甜菜パルプ、およびスイッチグラス由来)、ラクトース、乳清、糖蜜、ジャガイモ、米、ソルガム、スクロース、甜菜、サトウキビ、および小麦が含まれる。1以上の炭素源は、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少なくとも約5mM、少なくとも約50mM、および少なくとも約500mMの濃度で供給することができる。
【0131】
したがって、種々の実施態様において、成長培地に使用する固定炭素エネルギー源には、グリセロールおよび/またはグルコース、フルクトース、および/またはキシロース等の5‐および/または6‐炭素糖が含まれ、これらは、解重合されたセルロース系物質を含む、スクロースおよび/またはセルロース系物質に由来し得る。クロレラ属(Chlorella)の複数の種および種内の複数の株は、米国特許出願公開第20090035842号、第20090011480号、第20090148918号にそれぞれ記載されるとおり、スクロース、解重合されたセルロース系物質、およびグリセロールの存在下で成長することができる。また、国際公開公報第2008/151149号も参照されたい。これらの各々は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0132】
したがって、本発明の一実施態様において、微生物は、原料として解重合されたセルロース質バイオマスを用いて培養する。サトウキビもしくは甜菜からのコーンスターチまたはスクロース等の他の原料とは対照的に、セルロース質バイオマス(解重合されるか、または他の方法による)は、人間の消費に適さず、潜在的に低コストで入手可能であるため、これは、本発明の目的に特に好都合である。微細藻類は、解重合されたセルロース系物質で増殖することができる。セルロース系物質には、一般に、セルロースが乾燥重量で40〜60%、ヘミセルロースが乾燥重量で20〜40%、およびリグニンが乾燥重量で10〜30%含まれる。適切なセルロース系物質には、草本および木質エネルギー作物、ならびに農作物、すなわち、主食または繊維製品と共に田畑から除去されていない、主に茎および葉である植物部位の残留物が含まれる。一例として、サトウキビバガス、もみ殻、トウモロコシ繊維(茎、葉、殻、および穂軸を含む)、麦わら、稲わら、甜菜パルプ、柑橘類の果肉、柑橘類の果皮等の農業廃棄物;硬材および軟材間伐、ならびに材木作業からの硬材および軟材残留物等の林業廃棄物;製材廃棄物(木材チップ、おが屑)、およびパルプ廃棄物等の木材廃棄物;都市ごみの紙片等の都市廃棄物、都市木材廃棄物、および都市の芝生刈り取り等の都市芝生廃棄物;ならびに木材建築廃棄物が挙げられる。更なるセルロース質には、スイッチグラス、雑種ポプラ材およびススキ属(miscanthus)、繊維茎、ならびに繊維ソルガム等の専用のセルロース作物が含まれる。かかる物質から生成する5‐炭素糖には、キシロースが含まれる。例えば、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)は、コーンストーバおよび甜菜パルプから、セルロース由来の糖類を使用して、従属栄養条件下で、良好に培養することができる。
【0133】
一部の微生物は、セルロース系物質を処理し、セルロース系物質を炭素源として直接利用することができる。しかしながら、セルロース系物質は、一般に、利用可能な表面積を増加させるために、またはセルロースを、炭素源としての微生物利用のための調製物として最初に分解させるために、処理する必要がある。酵素消化のためにセルロース系物質を調製または前処理する方法は、当技術分野で周知である。この方法は、2つの主なカテゴリーに分けられる:(1)利用可能な表面積を増加させるために、セルロース系物質を小さな粒子に分解すること;および、(2)セルロース系物質を化学的に処理して、酵素消化に使用可能な基質を作製すること。
【0134】
利用可能な表面積を増加させる方法には、水蒸気爆発が含まれ、これは、セルロース系物質を分解するための、高温での蒸気の利用を含む。この処理の高温要件のために、セルロース系物質中の糖類の一部が失われ、そのため、酵素消化のための入手可能な炭素源を減少させ得る(例えば、Chahal, D.S.らの文献:Proceedings of the 2
nd World Congress of Chemical Engineering; (1981)、およびKaarらの文献:Biomass and Bioenergy (1998) 14(3): 277-87を参照)。アンモニア爆発は、セルロース系物質の低温での爆発を可能にするが、実施するのにコストが掛かり、また、アンモニアが、その後の酵素消化工程を妨げ得る(例えば、Dale, B.E.らの文献:Biotechnology and Bioengineering (1982); 12: 31-43を参照)。他の爆発法は、セルロース系物質を小さな断片に分解するための、超臨界二酸化炭素爆発の利用を含む(例えば、Zhengらの文献:Biotechnology Letters (1995); 17(8): 845-850を参照)。
【0135】
また、セルロース系物質を化学的に処理して、酵素消化に使用可能な基質を作製する方法も、当技術分野で公知である。米国特許第7,413,882号は、ベータ‐グルコシダーゼを発酵培養液へ分泌する遺伝子操作された微生物の使用、およびセルロース系物質を発酵培養液で処理して、セルロース系物質のグルコースへの加水分解を促進することを記載する。また、セルロース系物質は、強酸および塩基で処理して、その後の酵素消化を支援することもできる。米国特許第3,617,431号は、セルロース系物質を分解するためのアルカリ消化の使用を記載する。
【0136】
クロレラ属(Chlorella)は、解重合されたセルロース系物質等の、キシロースとグルコースの組合せを含有する培地で増殖することができ、驚くべきことに、一部の種は、グルコースまたはキシロースのいずれかのみで培養する場合よりも、グルコースとキシロースの組合せで培養する場合に、高いレベルの生産性を示す。したがって、特定の微細藻類は、炭素源として、セルロース系物質(または前処理されたセルロース系物質)またはグリセロール等の他の食用でない原料を利用し、食用油を産生することができる。これは、通常、人間の食物連鎖の一部ではない、食用でないセルロースおよびグリセロールの、高栄養の食用油への変換を可能にし(トウモロコシグルコース、ならびにサトウキビおよび甜菜からのスクロースとは対照的に)、これによって、毎日の人間の食事の一部として栄養素およびカロリーを提供することが可能になる。したがって、本発明は、食用でない原料を、高栄養の食用油、食品、および食品組成物に変換するための方法を提供する。
【0137】
分泌可能なスクロースインベルターゼを発現する生物体と共培養する微細藻類、またはスクロースインベルターゼを含有する培地、もしくは外因性スクロースインベルターゼ遺伝子を発現する(インベルターゼが分泌されているか、また、生物体もスクローストランスポータを発現しているかのいずれかの場合の)培地で培養した微細藻類は、サトウキビからの廃棄糖蜜、または他のスクロース源で増殖することができる。かかる低価値のスクロース含有廃棄物の利用は、食用油の産生において、有意なコスト削減を提供することができる。したがって、スクロース原料で微細藻類を培養し、食品組成物と栄養補助食品を配合する方法は、本明細書に説明するとおり、低栄養のスクロースを高栄養の油(オレイン酸、DHA、ARA等)、およびかかる油を含有するバイオマスに変換する手段を提供する。
【0138】
上で参照された特許公報に詳述するように、複数の異なるクロレラ属(Chlorella)の種および株は、精製試薬グレードのグリセロールだけでなく、バイオディーゼルエステル交換からの酸性および非酸性のグリセロール副産物でも非常によく増殖する。驚くべきことに、一部のクロレラ属(Chlorella)の株は、グルコースの存在下よりも、グリセロールの存在下で、迅速に細胞分裂をする。細胞に、最初に、グリセロールを供して、細胞密度を迅速に増加させ、次いで、グルコースを供して、脂質を蓄積させる、2段階の成長過程は、脂質の産生効率を改善することができる。
【0139】
乾燥細胞重量の割合として、脂質を増加させる他の方法は、微細藻類のための原料として、酢酸塩の使用を含む。酢酸塩を、脂肪酸合成(すなわち、アセチル‐CoA)を開始する代謝の時点まで直接供し、そのため、培養物中の酢酸塩の提供によって、脂肪酸産生を増加させることができる。一般に、微生物を、十分な量の酢酸塩の存在下で培養して、特に、酢酸塩のない状態での収率と比較して、微生物脂質および/または脂肪酸収率を増加させる。酢酸塩供給は、脂質として、高い割合の乾燥細胞重量を有する微細藻類バイオマスを生成するために、本明細書に提供する方法の有用な構成要素である。
【0140】
別の実施態様において、脂質収率は、脂質経路酵素(例えば、脂肪酸合成酵素)のための1以上の補因子の存在下で、脂質を産生する微細藻類を培養することによって、増加する。一般に、補因子の濃度は、補因子がない状態での微生物脂質(例えば、脂肪酸)収率を超えて、微生物脂質収率を増加させるのに十分である。特定の実施態様において、補因子は、補因子を分泌する微生物を培養物中に含めることによって、または補因子を培養培地に加えることによって、培養物に提供される。または、微細藻類は、補因子の合成に関与するタンパク質をコードする外因性遺伝子を発現するように、操作することができる。特定の実施態様において、適切な補因子には、例えば、ビオチンまたはパントテン酸塩等の脂質経路酵素によって必要とされるビタミンが含まれる。
【0141】
微細藻類からの高脂質バイオマスは、少ない量の微細藻類バイオマスを添加して、等量の脂質を食品組成物に導入することを可能にするため、低脂質バイオマスと比較して、食品への含有に好都合な物質である。これは、高脂質微細藻類からの健康的な油が、低脂質バイオマスと比較して、テクスチャおよび味等の他の属性を変えずに、食品に添加することができるので、好都合である。本発明の方法によって提供される高脂質バイオマスは、一般に、乾燥細胞重量で少なくとも25%の脂質を有する。処理条件を調整して、脂質である細胞の重量パーセントを増加することができる。例えば、特定の実施態様において、微細藻類を、グルコース等の過剰の固定炭素源を提供しながら、例えば、窒素、リン、または硫黄等の1以上の栄養素の制限濃度の存在下で培養する。窒素制限は、窒素が過剰に提供される培養物での微生物脂質収率を超えて、微生物脂質収率を増加させる傾向がある。特定の実施態様において、脂質収率の増加は、少なくとも約10%、50%、100%、200%、または500%である。微生物は、全培養期間の一部、または期間全体にわたり、制限量の栄養素の存在下で培養することができる。一部の実施態様において、栄養素の濃度は、全培養期間に少なくとも2回、制限濃度と非制限濃度との間で循環させる。
【0142】
安定した成長状態で、細胞は油を蓄積するが、細胞分裂をしない。本発明の一実施態様において、成長状態は、固定窒素源を除いて、元の成長培地のすべての成分を細胞に提供し続けることによって、維持される。固定窒素源を除いて、初めに提供されたすべての栄養素を、細胞に長期間供給すること等により、供給することによって、微細藻類細胞を培養することは、乾燥細胞重量で高い割合の脂質を生ずる。
【0143】
別の実施態様において、高脂質バイオマスは、すべての固定窒素が、少なくとも1週間または2週間等の長期間にわたって消費された後に、固定炭素源を細胞に供給することによって生成する。一部の実施態様において、細胞は、固定炭素源の存在下および固定窒素源のない状態で、20日以上にわたって油を蓄積させる。本明細書に説明する条件を用いて、または当技術分野で公知の他の条件で成長した微細藻類は、乾燥重量で少なくとも約20%の脂質を含み、多くの場合、乾燥重量で35%、45%、55%、65%、および75%以上もの脂質を含み得る。したがって、微生物脂質の産生における、脂質としての乾燥細胞重量の割合は、細胞が炭素を消費し、油を蓄積するが、細胞分裂をしない、従属栄養成長状態に細胞を保持することによって、改善することができる。
【0144】
藻類からの高タンパク質バイオマスは、食品中への含有に好都合な他の物質である。また、本発明の方法は、タンパク質として、少なくとも30%の乾燥細胞重量を有するバイオマスも提供し得る。成長条件を調整して、タンパク質である細胞の重量パーセントを増加することができる。好ましい実施態様において、微細藻類は、高窒素環境、およびグルコースまたは上述の他の炭素源等の過剰の固定炭素エネルギーで培養する。窒素が過剰に存在する条件は、窒素が過剰に提供されない培養物での微生物タンパク質収率を超えて、微生物タンパク質収率を増加させる傾向がある。最大のタンパク質産生のために、微生物は、全培養期間にわたって、過剰窒素の存在下で培養するのが好ましい。微細藻類に適切な窒素源は、有機窒素源および/または無機窒素源に由来してもよい。高タンパク質バイオマスの脂質含量は、30重量%未満、20重量%未満、または10重量%未満の脂質である。
【0145】
有機窒素源は、1900年代初め以来、微生物培養に使用されている。コーンスティープリカー等の有機窒素源の使用は、カビからのペニシリンの産生と共に普及した。研究者らは、コーンスティープリカーの培養培地への含有が、微生物の成長を促進し、生成物(ペニシリン等)の収率の増加をもたらすことを見出した。コーンスティープリカーの分析によって、それが、窒素、さらに、B複合ビタミン、リボフラビン、パントテン酸、ナイアシン、イノシトール等のビタミン、ならびにカルシウム、鉄、マグネシウム、リン、およびカリウム等の無機栄養素が多く含まれる供給源であることが分かった(LiggetとKofflerの文献:Bacteriological Reviews (1948); 12(4): 297-311)。コーンスティープリカー等の有機窒素源は、酵母、細菌、菌類、および他の微生物の発酵培地に使用されている。有機窒素源の非限定的な一例は、酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、およびコーンスティープパウダーである。好ましい無機窒素源の非限定的な一例には、例えば、(NH
4)
2SO
4およびNH
4OHが含まれるが、これらに限定されない。一実施態様において、本発明を実施するための培養培地は、無機窒素源のみを含有する。別の実施態様において、本発明を実施するための培養培地は、有機窒素源のみを含有する。さらに別の実施態様において、本発明を実施するための培養培地は、有機窒素源と無機窒素源の混合物を含有する。
【0146】
本発明の方法において、バイオリアクタまたは発酵槽は、これらの種々の段階の生理的循環によって微細藻類細胞を培養するのに使用する。一例として、脂質を産生する微細藻類細胞の接種原を、培地に導入する。細胞が繁殖を開始する前に、遅滞期間(遅滞期)が存在する。遅滞期間に続いて、繁殖速度は着実に増加し、対数または指数増殖期に入る。指数増殖期に続き、窒素等の栄養素の減少、有害物質の増加、およびクオラムセンシングメカニズムにより、繁殖が遅延する。この繁殖の遅延後に、繁殖は停止し、細胞は、静止期または安定成長状態に入り、これは、細胞に提供される特定環境に依存する。高タンパク質のバイオマスを得るために、培養物は、一般に、指数増殖期またはその直後に採取する。高脂質のバイオマスを得るために、培養物は、一般に、指数増殖期の後に十分に採取するが、指数増殖期は、窒素または他の主要な栄養素(炭素以外)を枯渇させることによって、早期に終了し、これによって、細胞に、過剰に存在する炭素源を脂質に変換することを強制する。培養物条件パラメータは、全油産生、産生した脂質の種の組合せ、および/または特定の油の産生を最適化するように、操作することができる。
【0147】
バイオリアクタには、従属栄養による成長および繁殖方法の使用に多くの長所がある。理解されるように、従属栄養成長において固定炭素源を使用する場合、光合成成長法での細胞に光を利用可能にするようにされた設備は不要であり、繁殖方法は、本明細書に説明されている。食品に使用するバイオマスを生産するために、微細藻類は、好ましくは、一例として、懸濁培養掖等の液体で、大量に発酵させる。スチール発酵槽等のバイオリアクタ(5000リットル、10,000リットル、40,000リットル以上を本発明の種々の実施態様で使用する)は、大量の培養物を収容することができる。また、バイオリアクタは、一般に、温度、pH、酸素圧、および二酸化炭素レベル等の培養条件の制御も可能にする。例えば、バイオリアクタは、一般に、例えば、管に接続したポートを使用して、酸素または窒素等のガス状成分が、液体培養物中で泡立たせるように、構成可能である。
【0148】
バイオリアクタは、微細藻類が繁殖し、その数を増加する期間を通じて、培養培地を、バイオリアクタに流入させるように構成することができる。一部の実施態様において、例えば、培地は、接種後であるが、細胞が所望の密度に到達する前に、バイオリアクタに注入することができる。別の例において、バイオリアクタは、培養の初めに培養培地で充填され、培養培地は、培養物接種後には注入されない。換言すると、微細藻類バイオマスは、微細藻類が繁殖し、その数を増加する一定期間に水性培地で培養される。しかしながら、多量の水性培養培地は、この期間を通じてバイオリアクタに流入されない。したがって、一部の実施態様において、水性培養培地は、接種後、バイオリアクタに流入されない。
【0149】
加圧ガス注入のための手段である、回転刃および回転翼、揺動機構、撹拌棒等の装置を装備したバイオリアクタを使用して、微細藻類培養物を混合することができる。混合は、連続的または断続的であってもよい。例えば、一部の実施態様において、ガス注入および培地注入の乱流様式は、微細藻類の数の所望の増加が達成されるまで、微細藻類の繁殖のために維持されない。
【0150】
上で簡潔に言及したように、バイオリアクタは、多くの場合、例えば、微細藻類培養物のガス含量を操作することを可能にする、種々のポートを装備する。例示すると、バイオリアクタの容積の一部は、液体よりむしろガスであり、バイオリアクタのガス入口は、バイオリアクタへのポンプによるガスの注入を可能にする。バイオリアクタに有益にポンプ注入することができるガスには、空気、空気/CO
2混合物、アルゴン等の希ガス、および他のガスが含まれる。バイオリアクタは、一般に、ユーザが、ガスのバイオリアクタへの注入速度を制御することを可能にするように装備される。上述したとおり、バイオリアクタへのガス流入の増加によって、培養物の混合を増加することができる。
【0151】
ガス流入の増加は、培養物の濁度にも影響する。乱流は、ガス注入ポートを、水性培養培地の位置より下に配置することによって達成することができ、その結果、バイオリアクタに入るガスは、培養物の表面の方に泡立つ。1以上のガス出口ポートは、ガスを逃すことを可能にし、これによって、バイオリアクタ中の圧力の増加を防止する。好ましくは、ガス出口ポートは、汚染菌がバイオリアクタに入ること防止する「一方向」弁に通じる。
【0152】
本明細書に説明するバイオリアクタ、培養条件、ならびに従属栄養成長および繁殖方法の特定の例は、微生物成長ならびに脂質および/またはタンパク質産生の効率を改善するための好適な方法と組み合わせることができる。
【0153】
D.発酵後の微細藻類の濃縮
上で説明した方法によって生成する微細藻類培養物は、発酵培地で微細藻類バイオマスを産出する。食品組成物として使用するバイオマスを調製するために、バイオマスは、発酵培地から濃縮または採取する。微細藻類バイオマスを発酵培地から採取した時点で、バイオマスは、水性培養培地に懸濁した、主に無処理の細胞を含む。バイオマスを濃縮するために、脱水工程を実施する。脱水または濃縮とは、バイオマスの発酵培養液または他の液体培地からの分離をいい、そのため、これは固液分離である。したがって、脱水時において、培養培地は、バイオマスから除去される(例えば、発酵培養液を、バイオマスを保持するフィルタを通して流出させることによって)か、またはバイオマスが他の方法で、培養培地から除去される。脱水のための一般的な処理には、遠心分離、ろ過、および機械的圧力の使用が含まれる。これらの処理は、個別でまたは任意の組合せで用いることができる。
【0154】
遠心分離は、混合物を分離するための遠心力の使用を含む。遠心分離時において、混合物の高密度の成分は、遠心分離機の軸から離れて移動するが、混合物のあまり密度が高くない成分は、軸の方向に移動する。有効重力を増加させることによって(すなわち、遠心分離の速度を増加させることによって)、固形体等の高密度の物質は、液体等のあまり密度が高くない物質から分離し、そのため、密度に従って分離する。バイオマス、および培養液または他の水溶液の遠心分離によって、微細藻類細胞を含む濃縮ペーストが形成する。遠心分離は、有意な量の細胞内水分を除去しない。実際、遠心分離後、バイオマス中に依然として、相当量の表面水分または自由水分が存在し(例えば、70%を超える)、そのため、遠心分離は、乾燥工程とは考えられない。
【0155】
また、ろ過は、脱水のために使用してもよい。本発明に適したろ過の一例としては、クロスフローろ過としても知られている、タンジェント流ろ過(TFF)がある。タンジェント流ろ過は、膜システムおよび流れ力を使用して、固体を液体から分離する、分離技術である。例示的な好適ろ過方法については、マックスセル(A/Gテクノロジーズ社製)0.45μMの中空繊維フィルタの使用について記載する、Gereshの文献:Carb. Polym. 50; 183-189 (2002)を参照されたい。また、例えば、100kD、300kD、1000kD膜(カタログ番号P2C01MC01)、0.1μM膜(カタログ番号P2VVPPV01)、0.22μM(カタログ番号P2GVPPV01)、および0.45μM膜(カタログ番号P2HVMPV01)と共に使用する、ミリポアペリコン(Millipore Pellicon)(登録商標)装置も参照されたい。残余分は、好ましくは、フィルタを有意なレベルで通過せず、また、残余分中の生成物は、好ましくは、フィルタ材に付着しない。また、TFFは、中空繊維ろ過システムを用いて行うことができる。少なくとも約0.1マイクロメートルの細孔サイズ、例えば、約0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.22、0.45、または少なくとも約0.65マイクロメートルの細孔サイズを備える、フィルタが適切である。TFFの好ましい細孔サイズは、発酵培養液中の溶質および残屑を通過させるが、微生物細胞を通過させない。
【0156】
また、脱水は、バイオマスに直接適用した機械的圧力によっても達成され、液体発酵培養液を微生物バイオマスから分離して、バイオマスを十分に脱水することができるが、細胞の主要な溶解を生じない。微生物バイオマスを脱水するための機械的圧力は、例えば、ベルトフィルタプレスを用いて適用することができる。ベルトフィルタプレスは、2つの伸ばしたベルト間で、狭まるロール径の蛇行路を通過するスラリー(例えば、発酵槽またはバイオリアクタから直接得られる微生物バイオマス)に、機械的圧力を適用する、脱水装置である。ベルトフィルタプレスは、実際に3つのゾーンに分割することができる:自由排水/液体が、多孔質ベルトによる重力によって排水される、重力ゾーン;固形物を、圧力適用のために供する、くさびゾーン;および、調節可能な圧力を、重力により排出された固形物に適用する、圧力ゾーン。
【0157】
濃縮後、微細藻類バイオマスは、本明細書の以下に説明するように、加工して、真空パックケーキ、藻類フレーク、藻類ホモジェネート、藻類粉、藻類粉末、または藻類油を生産することができる。
【0158】
E.微細藻類バイオマスの化学組成
本明細書に説明する培養方法によって生成する微細藻類バイオマスは、微細藻類油および/またはタンパク質、ならびに微生物によって生成されるか、または発酵時に、培養培地の微生物によって導入される他の成分も含む。
【0159】
乾燥重量で高い割合の油/脂質蓄積を有する、微細藻類バイオマスは、当技術分野で公知の方法を含む、種々の培養の方法を用いて生成されている。高い割合の蓄積された油/脂質を有する、微細藻類バイオマスは、本発明によって有用である。高い鉄(Fe)濃度を用いて、独立栄養条件下で成長した静置培養における乾燥細胞重量(DCW)で最大56.6%の脂質を有する、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)培養物が記載されている(Liらの文献:Bioresource Technology 99(11):4717-22 (2008)。また、フォトバイオリアクタで、窒素飢餓条件下で成長した、DCWで60%の脂質およびDCWで39.8%の脂質をそれぞれ有する、ナンノクロロプシス(Nanochloropsis)種、およびカエトセロス・カリストランス(Chaetoceros calcitrans)培養物も記載されている(Rodolfiらの文献:Biotechnology & Bioengineering (2008))。光合成によりおよび低窒素条件下で成長する場合、DCWでおよそ30%の脂質を有する、パリエトクロリス・インシサ(Parietochloris incise)培養物が記載されている(Solovchenkoらの文献:Journal of Applied Phycology 20:245-251 (2008))。窒素飢餓状態の一定の従属栄養条件下で成長する場合、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)は、DCWで最大55%の脂質を産生することができる(MiaoとWuの文献:Bioresource Technology 97:841-846 (2006))。低窒素培地条件下で、撹拌槽反応器で成長する場合、クロレラ・エマゾーニ(Chlorella emersonii)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、およびクロレラ・ミヌティッシマ(Chlorella minutissima)を含む、他のクロレラ属(Chlorella)の種は、DCWで最大63%の油を蓄積することが記載されている(Illmanらの文献:Enzyme and Microbial Technology 27:631-635 (2000))。DCWでさらに高い割合の脂質が報告されており、これらは、NaClを増加させた条件下で成長した、デュマリエラ・ターティオレクタ(Dumaliella tertiolecta)培養物における70%の脂質(Takagiらの文献:Journal of Bioscience and Bioengineering 101(3): 223-226 (2006))、およびボツリョコッカス・ブラウニイ(Botryococcus braunii)培養物における75%の脂質(Banerjeeらの文献:Critical Reviews in Biotechnology 22(3): 245-279 (2002))を含む。
【0160】
従属栄養成長は、比較的低いクロロフィル含量をもたらす(開放池または閉鎖型フォトバイオリアクタ系等の光合成系と比較して)。低減されたクロロフィル含量は、一般に、微細藻類の官能特性を改善し、そのため、多くの藻類バイオマス(または藻類バイオマスから製造した油)を食品に導入することを可能にする。また、従属栄養により成長した微細藻類(例えば、クロレラ属(Chlorella))中に見出される低減されたクロロフィル含量も、光合成により成長した微細藻類と比較して、バイオマス中の緑色を低減する。したがって、低減されたクロロフィル含量は、光合成により成長した微細藻類を含有する食品に関連する、望ましくないことが多い緑色の着色を回避し、藻類バイオマスの食品への導入、または藻類バイオマスの食品への導入の増加を可能にする。少なくとも一実施態様において、食品は、光合成により成長した微細藻類と比較して、低減されたクロロフィル含量の、従属栄養により成長した微細藻類を含む。一部の実施態様において、微細藻類粉末または藻類バイオマスのクロロフィル含量は、500ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、10ppm未満、2ppm未満、または1ppm未満である。
【0161】
本明細書で説明する培養方法によって生成し、本発明によって有用な、高い油含量の微細藻類バイオマスおよび藻類粉末は、DCWで少なくとも10%の微細藻類油を含む。一部の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、DCWで少なくとも15%、25%〜35%、30〜50%、50〜55%、50〜65%、54〜62%、56〜60%、少なくとも75%、または少なくとも90%の微細藻類油を含む。
【0162】
本明細書に説明する(またはバイオマスもしくは藻類粉末から抽出した)バイオマスの微細藻類油は、1以上の特異的な脂肪酸エステル側鎖を有する、グリセロ脂質を含み得る。グリセロ脂質は、1つ、2つ、または3つの脂肪酸分子とエステル結合したグリセロール分子からなり、これは、種々の長さであり、種々の飽和度を有し得る。藻類油の特定の混合物は、藻類の単一種内で、または微細藻類の2以上の種からのバイオマス(または藻類油)と混合することのいずれかによって調製することができる。
【0163】
したがって、油組成、すなわち、グリセロ脂質の脂肪酸成分の特性および割合もまた、微細藻類の少なくとも2つの特異的な種からのバイオマス(または油)を組み合わせることによって、操作することができる。一部の実施態様において、微細藻類の少なくとも2つの特異的な種は、種々のグリセロ脂質プロファイルを有する。特異的な種の微細藻類は、本明細書に説明するように、好ましくは従属栄養条件下で、共に、または別個に培養して、それぞれの油を生成することができる。種々の種の微細藻類は、細胞のグリセロ脂質に、種々の割合の特異的な脂肪酸成分を含有し得る。
【0164】
一部の実施態様において、微細藻類油は、特にトリグリセリドの形態で、18:1(オレイン酸)油等の一価不飽和油から主になる。一部の例において、藻類油は、少なくとも20重量%の一価不飽和油である。種々の実施態様において、藻類油は、少なくとも25重量%または容量%、50重量%または容量%、75重量%または容量%以上の18:1等の一価不飽和油である。一部の実施態様において、一価不飽和油は、18:1、16:1、14:1、または12:1である。一部の例において、藻類油は、60〜75%、64〜70%、または65〜69%の18:1油である。一部の実施態様において、微細藻類油は、少なくとも10重量%もしくは容量%、20重量%もしくは容量%、25重量%もしくは容量%、または50重量%もしくは容量%以上のエステル化されたオレイン酸またはエステル化されたアルファ‐リノレン酸を含む。少なくとも一実施態様において、藻類油は、10重量%もしくは容量%未満、5重量%もしくは容量%未満、3重量%もしくは容量%未満、2重量%もしくは容量%未満、または1重量%もしくは容量%未満のエステル化されたドコサヘキサエン酸(DHA(22:6))(特にトリグリセリドの形態)を含むか、またはエステル化されたドコサヘキサエン酸を実質的に含まない。クリプテコディニウム・コーニィ(Crypthecodinium cohnii)等の、高DHA含有微細藻類の生産の一例については、米国特許第7,252,979号、第6,812,009号、および第6,372,460号を参照されたい。一部の実施態様において、微細藻類粉末または藻類バイオマス中の抽出油または油の脂質プロファイルは、2%未満の14:0;13〜16%の16:0;1〜4%の18:0;64〜70%の18:1;10〜16%の18:2;0.5〜2.5%の18:3;および、炭素鎖長20以上の2%未満の油である。
【0165】
また、微細藻類バイオマス(およびバイオマスから抽出した油)は、微細藻類によって産生した、または培養培地からバイオマスに導入した、他の成分も含み得る。これらの他の成分は、使用する培養条件および微細藻類の種(ならびに、該当する場合、微細藻類油をバイオマスから回収するのに用いる抽出方法)に依存して、種々の量で含まれ得る。一般に、高タンパク質微細藻類バイオマス中のクロロフィル含量は、高脂質微細藻類バイオマス中のクロロフィル含量よりも高い。一部の実施態様において、微細藻類バイオマス中のクロロフィル含量は、200ppm未満または100ppm未満である。他の成分には、リン脂質(例えば、藻類レシチン)、炭水化物、可溶性および不溶性繊維、糖タンパク質、フィトステロール(例えば、β‐シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、およびブラシカステロール)、トコフェロール、トコトリエノール、カロテノイド(例えば、α‐カロテン、β‐カロテン、およびリコピン)、キサントフィル(例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、α‐クリプトキサンチン、およびβ‐クリプトキサンチン)、タンパク質、多糖類(例えば、アラビノース、マンノース、ガラクトース、6‐メチルガラクトース、およびグルコース)、ならびに種々の有機化合物または無機化合物(例えば、セレン)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0166】
一部の例において、バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも10ppmのセレンを含む。一部の例において、バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも25%w/wの藻類多糖を含む。一部の例において、バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも15%w/wの藻類糖タンパク質を含む。一部の例において、バイオマス、藻類粉末、またはバイオマス由来の油は、藻類バイオマスまたは藻類粉末のグラム当たり0〜200、0〜115、または50〜115mcgの総カロテノイドを含み、また、特定の実施態様において、総カロテノイドの20〜70または50〜60mcgは、ルテインである。一部の例において、バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも0.5%の藻類リン脂質、または藻類粉末または藻類バイオマスのグラム当たり約0.25%〜約1.5%の総リン脂質を含む。一部の例において、バイオマス、藻類粉末、または藻類バイオマス由来の油は、少なくとも0.10、0.02〜0.5、または0.05〜0.3mg/gの総トコトリエノールを含み、また、特定の実施態様において、0.05〜0.25mg/gは、アルファトコトリエノールである。一部の例において、バイオマス、藻類粉末、または藻類バイオマス由来の油は、0.125mg/g〜0.35mg/gの総トコトリエノールを含む。一部の例において、藻類粉末または藻類バイオマス由来の油は、少なくとも5.0、1〜8、2〜6、または3〜5mg/100gの総トコフェロールを含み、また、特定の実施態様において、2〜6mg/100gは、アルファトコフェロールである。一部の例において、藻類粉末または藻類バイオマス由来の油は、5.0mg/100g〜10mg/100gのトコフェロールを含む。
【0167】
一部の例において、高脂質バイオマスと比較して、微細藻類バイオマスの他の成分の組成は、高タンパク質バイオマスでは異なる。特定の実施態様において、高タンパク質バイオマス、藻類粉末、または油は、0.18〜0.79mg/100gの総トコフェロールを含み、また、特定の実施態様において、高タンパク質バイオマス、藻類粉末、または油は、約0.01〜0.03mg/gのトコトリエノールを含む。一部の例において、高タンパク質藻類粉末または油バイオマスは、さらに、1〜3g/100gの総ステロールも含み、また、特定の実施態様において、1.299〜2.46g/100gの総ステロールを含む。クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)中のトコトリエノールおよびトコフェロールの組成についての詳細な説明は、以下に示す実施例に含まれる。
【0168】
一部の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、乾燥重量で20〜45%の炭水化物を含む。別の実施態様において、バイオマスまたは藻類粉末は、乾燥重量で25〜40%または30〜35%の炭水化物を含む。炭水化物は、食物繊維、ならびにスクロースおよびグルコース等の遊離糖であり得る。一部の実施態様において、微細藻類バイオマス中の遊離糖は、乾燥重量で1〜10%、2〜8%、または3〜6%である。特定の実施態様において、遊離糖成分はスクロースを含む。
【0169】
一部の例において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも5%の可溶性繊維を含む。別の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも10%の可溶性繊維、または少なくとも20%〜35%の可溶性繊維を含む。一部の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも5%の不溶性繊維を含む。別の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも5%から少なくとも10%、または少なくとも10%〜25%、または少なくとも25%〜50%の不溶性繊維を含む。総食物繊維は、水溶性繊維と不溶性繊維の合計である。一部の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも20%の総食物繊維を含む。別の実施態様において、微細藻類バイオマスまたは藻類粉末は、少なくとも25%、50%、55%、60%、75%の総食物繊維を含む。
【0170】
一実施態様において、総繊維の単糖含量(遊離糖を差し引いた総炭水化物)は、1〜20%のアラビノース;5〜50%のマンノース;15〜80%のガラクトース;および、10〜70%のグルコースである。別の実施態様において、総繊維の単糖含量は、約1〜2%のアラビノース;約10〜15%のマンノース;約20〜30%のガラクトース;および、55〜65%のグルコースである。
【0171】
III.微細藻類バイオマスの藻類粉末及び最終食品原料への加工
本発明の方法に従って産生された濃縮微細藻類バイオマスは、それ自体が最終食品原料であり、それ以上修飾することなく、又は最小限の修飾により、食品として利用され得る。代替として、凍結乾燥、すなわち、真空にした冷凍乾燥室でバイオマスを凍らせる「フリーズドライ」加工でバイオマスを乾燥させてもよい。冷凍乾燥室を真空にすることで、バイオマス由来の水が昇華(初乾)及び脱離(再乾)する。しかし、本発明は、本発明の方法を濃縮微細藻類バイオマスに応用する結果もたらされる、強化されたタンパク質を有する、多様な微細藻類由来の最終食品原料を提供する。藻類粉末は、本明細書に開示されている、又は、当業者に周知の状況下で、藻類細胞を生育、培養若しくは繁殖させ、本明細書に開示のように、藻類粉末に加工することを含む。
【0172】
微細藻類バイオマスを、主としてインタクト形態で、又は、ホモジェネート形態で乾燥させることで、本明細書に記載の方法及び組成物でのバイオマスの加工又は利用をさらに促進するのに有利となる。乾燥とは、主としてインタクトなバイオマスから湿分/水分を取り除く、又はその表面から取り除く、又はの付着若しくは表面上の湿分/水を取り除くこと、又は同質化(例えば、微粒子化)されたバイオマスのスラリーから表面水分を除去することを指している。藻類のバイオマスを乾燥したかどうか、もし乾燥したなら、どのような乾燥方法を使用したかで、食品に異なるテクスチャ及び風味を付与することができる。本明細書に記載の培養微細藻類から生成されたバイオマスを乾燥させることで、最終食品又は最終食品原料にとって望ましくない成分となり得る水を除去することとなる。いくつかの場合においては、バイオマスを乾燥させることで、微細藻類油抽出過程をより効率的に促進し得る。
【0173】
一つの実施形態においては、藻類粉末を産生するため、まず濃縮微細藻類バイオマスを破壊し、それから噴霧又はフラッシュ乾燥(すなわち、空気乾燥過程に晒す)して、主として溶解細胞を含有する粉末を形成する。別の実施形態では、藻類粉末に含まれる油を実質上すべて抽出し、主として炭水化物(食物繊維を含む)、タンパク質及び残油又は脂質から成る脱脂藻類粉末とする。
【0174】
いくつかの実施形態で、微細藻類バイオマス又は藻類粉末は、乾燥すると湿分が15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2〜6重量%、又は3〜5重量%となる。
【0175】
A.
藻類粉末
本発明の藻類粉末は、機械的に溶解及び均質化及びホモジェネート噴霧乾燥又はフラッシュ乾燥で粉末状に(又は別の空気乾燥システムを利用して乾燥)した濃縮微細藻類バイオマスをから調整される。藻類粉末の産生には、油を排出させるために細胞を溶解し、細胞壁及び細胞内成分を微細化するか、又は少なくとも粒子サイズを減少させることが必要となる。ホモジェネーション直後又はその可及的直後に測定する粒子の平均的サイズは、好ましくは、わずか10μm、わずか25μm、又は僅か100μmである。いくつかの実施形態で、粒子の平均的サイズは、1〜10μm、1〜15μm、10〜100μm又は1〜40μmである。いくつかの実施形態で、粒子の平均的サイズは、10μmより大きく100μmまでである。いくつかの実施形態で、粒子の平均的サイズは、0.1μm〜100μmである。
【0176】
クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)細胞の平均的サイズは、約5μm〜15μmである。本明細書に記載の通り、藻類粉末に調整すると、粒子の平均的サイズは10μm未満となる。実施例8に記載したように、均質化状態にすることで異なる粒子サイズが生じた。 当業者であれば、均質化状態では、サイズの異なる粒子が生じるとの認識を有するであろう。
【0177】
バイオマス粒子(藻類バイオマス粒子)又は藻類粉末粒子を含む個々の細胞は、様々なレベルで集塊する。一つの実施形態においては、集塊した藻類粉末粒子又は集塊した藻類バイオマス粒子のサイズは、約1,000μm、750μm未満、500μm未満、250μm未満、又は100μm未満である。
【0178】
微細化の議論で述べたように、特に、個別の粒子というよりも、塊を測定するレーザー分化等の技術を用いて測定する場合、粒子の平均的サイズは、凝集により粒子サイズの測定がひずむ可能性があるのを回避するため、又は最小限にとどめるため、均質化直後又はその可及的直後に(例えば、2週間以内)測定するのが好ましい。実際、均質化の結果生じた乳濁液であれば、通常は、粒子サイズに物質的変化を伴うことなく、少なくとも2週間冷蔵庫に貯蔵することができる。 レーザー分化等、粒子サイズ測定のいくつかの技術では、個別の粒子というよりも、粒子の塊のサイズを測定する。測定された粒子の塊は、個別の粒子の平均サイズ(例えば、1〜100ミクロン)よりも大きい。水に分散させた微細藻類粉末の光学顕微鏡検査により、個々の粒子及び粒子の塊の両方を見ることができる。オリジナルの均質化を反復するのではなく、藻類粉末を水の中で十分に混ぜ合わせ(例えば、手動攪拌器)、分散させると、塊が破壊する可能性があり、この場合もまたレーザー識別により、通常は、平均がわずか10μmである粒子サイズを検知することができる。電子顕微鏡写真による粒子サイズの自動解析用ソフトウェアが市販されており、粒子サイズの測定に利用することができる。本明細書においては、他の場合と同じように、平均的粒子サイズは、当分野で認められている平均の測定法、例えば、平均値(mean)、幾何平均(geometric mean)、中央値(median)又は最頻値(mode)等を指し得る。粒子サイズは、粒子の最長寸法又は等体積粒子相当の直径を含む、当分野で認められる測定により測定することができる。典型的な粒子はほぼ球形であるため、これら測定は本質的には同じとなり得る。
【0179】
均質化の後に得られた油、水及び微細化粒子は、乾燥前に油が分散して分離しないよう乳化する。例えば、加圧粉砕器を使用して、制限オリフィス弁を通じてスラリーを含む細胞をくみ上げて、細胞を溶解する。高圧(最大1500バール)をかけると、既存のノズルを介して即座に拡大する。細胞分散は、3つの異なるメカニズムにより達成される。すなわち、弁上での衝突、オリフィスにおける高液体剪断、及び排出に伴う突然の圧力低下により引き起こされる細胞の爆発である。本方法は、細胞内分子を解放する。ニロ(Niro)社の(GEAグループのニロ・ソアビ(Niro Soavi)社)のホモジェナイザー(又は、その他任意の高圧ホモジェナイザー)を使用して細胞を、長さがほぼ0.2〜5ミクロンの粒子にすることができる。高圧下(約1000バー)で、藻類バイオマスを加工すると、典型的には、細胞の90%超が溶解し、粒子サイズが5ミクロン未満に低下する。
【0180】
代替として、ボールミルを使用することもできる。ボールミルでは、ビーズ等の小さな研磨粒子を用いて、懸濁液中で細胞を攪拌する。ビーズの間での摩擦及びビーズとの衝突という剪断力により細胞は壊れる。ビーズは細胞を粉砕し、細胞内の内容物を解放する。一つの実施形態においては、、藻類バイオマスは、Dyno−mill ECM Ultra型ボールミル(CB Mills社)を用いて粉砕され、安定した乳濁液を形成する。また、攪拌機(例えば、高速ブレンダー又はワーリングブレンダー等)、フレンチプレス、又は弱い細胞壁の場合は遠心分離器の利用により、細胞を粉砕することができる。ボールの大きさ及び刃の仕様を含む、好適なボールミルについては、米国特許第5,330,913号に記載されている。
【0181】
均質化により即座に生成される産物は、油及び水に浮遊するオリジナルの細胞よりも小さいサイズの粒子のスラリーである。粒子とは、細胞破片のことである。油と水は、細胞により解放される。均質化前の細胞を含む水性媒体により、追加の水が供給され得る。粒子は、微細化されたホモジェネート形態であることが望ましい。そのままにしておけば、より小さい粒子の一部は結合するかもしれない。しかし、小さい粒子の等分散でさえ、微結晶セルロース等の微結晶安定剤で播種することにより保つことが可能である。
【0182】
藻類粉末を形成するために、スラリーを噴霧乾燥又はフラッシュ乾燥させて水分を除去して、細胞破片及び油を含む乾燥パウダー様物質とする。粉末の含油量(すなわち、パウダー様物質である粉砕された細胞)は、乾燥粉末の少なくとも10重量%、25重量%又は50重量%であり得、この粉末は、テクスチャ及び外観上、油ぎっているというよりも乾燥しており(例えば、可視的に油を認めることができない)、また、振るとさらさらと揺れる状態であり得る。多様な流動化剤(沈降シリカ、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウム、ナトリウムケイ酸アルミニウム等のシリカ由来産生物)もまた、添加可能である。これらの物質を、高脂肪、吸湿性又は粘着性粉末に応用することで、乾燥後及びパッケージ化されたものが凝固するのを防ぎ、乾燥粉末の流動性を促進し、乾燥器表面に物質が粘着し、蓄積して、酸化するのを低減することができる。すべて、FDA指定の最大レベルにて食品利用の承認を得ている。乾燥後、粉末の水分又は湿分内容物は、典型的に、10重量%、5重量%、3重量%%又は1重量%未満である。また、空気乾燥器等、他の乾燥器を使用して藻類粉末を産生することもできる。
【0183】
藻類粉末の含油量は、藻類バイオマスに占める油の割合により異なる。藻類粉末は、多様な含油量の藻類バイオマスから産生することができる。ある実施形態では、藻類粉末は、同じ含油量の藻類バイオマスから産生される。他の実施形態では、藻類粉末は、異なる含油量の藻類バイオマスから産生される。後者の場合、多様な含油量の藻類バイオマスを組み合わせて均質化ステップを実施した。他の実施形態では、多様な含油量の藻類粉末をまず産生し、それから、最終的に所望の油量を含む藻類粉末を獲得するために、多様な割合で混ぜ合わせる。さらなる実施形態では、異なる脂質プロフィールの藻類バイオマスを組み合わせ、均質化して藻類粉末を産生する。別の実施形態では、異なる脂質プロフィール藻類粉末をまず産生し、それから、最終的に所望の脂質プロフィールを含む藻類粉末を獲得するために、多様な割合で混ぜ合わせる。
【0184】
本発明の藻類粉末又は藻類バイオマスは、幅広い食品の調整に有益である。油量、繊維量、及び微細化粒子のため、藻類粉末又は藻類バイオマスは、多機能食品原料である。
【0185】
B.脱脂藻類粉末
いくつかの場合においては、藻類粉末(又は、任意の粉砕された微細藻類バイオマス)を、油抽出過程にかけて脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスを産生することができる。微細藻類の油は、液化により抽出できる(例えば、Sawayamaら、Biomass and Bioenergy、17:33−39(1999)及びInoueら、Biomass Bioenergy、6(4):269−274(1993)を参照のこと);油液化については、(例えば、Minowaら、Fuel、74(12):1735−1738(1995)を参照のこと);又は、超臨界CO
2抽出については、(例えば、Mendesら、Inorganica Chimica Acta、356:328−334(2003)を参照のこと)。超臨界CO
2抽出を使用して、実質的に全ての油を抽出させた脱脂藻類粉末には、抽出過程の機能としてリン脂質が含まれる。極性溶剤及び非極性溶剤双方の利用を含む、その他の油抽出法では、実質的に微細藻類粉末からすべての油を抽出するのみならず、リン脂質をも抽出する。脱脂藻類粉末は、事前抽出された藻類粉末のタンパク質及び炭水化物を保持する。脱脂藻類粉末に含まれる炭水化物には、食物繊維(不溶性及び可溶性繊維双方)の形式の炭水化物が含まれる。
【0186】
脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスは、リン脂質の有無にかかわらず、機能的食品原料として有益である。リン脂質を含有する脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスには、高度な乳化能が存在する。リン脂質有り及び無しの脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスには、多大な水分保持能が存在し、よって、多様な食品への応用に有益である。脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスは、不溶性及び可溶性繊維双方の形式で炭水化物を含有するため、食物繊維の良い資源となり得る。
【0187】
IV.微細藻類バイオマス又はそれから抽出された物質と他の食品原料との混合
一つの態様では、本発明は、少なくとも0.1%w/wの藻類バイオマス及び、1又は複数の食用原料を含む1又は複数の他の原料を含む食品組成物であって、前記藻類バイオマスには、乾燥重量で少なくとも10%の油が含まれ、任意選択的に、少なくとも90%の油がグリセロ脂質である食品組成物に関する。いくつかの実施形態で、藻類バイオマスには、乾燥重量で少なくとも25%、40%、50%又は60%の油が含まれる。いくつかの場合においては、藻類バイオマスには、乾燥重量で10〜90%、25〜75%、40〜75%又は50〜70%の油が含まれ、任意選択的に、少なくとも90%の油がグリセロ脂質である。少なくとも一つの実施形態において、油の少なくとも50重量%が一価不飽和グリセロ脂質油である。いくつかの場合においては、少なくとも50重量%の油が、グリセロ脂質形態で18:1脂質である。いくつかの場合においては、5重量%未満の油が、ドコサヘキサエン酸(DHA)(22:6)である。少なくとも一つの実施形態では、油の1重量%未満がDHAである。低レベルの多価不飽和脂肪酸(PUFA)を有する藻類の脂質量は、バイオマスの化学的安定性を増強するのに好ましい。好ましい実施形態では、藻類バイオマスは、従属栄養の状況下で成長し、緑色素を低下させる。他の実施形態では、微細藻類は、色素欠如又は色素低減の色彩突然変異体である。別の実施形態では、食品組成物には、少なくとも0.1% w/wの藻類バイオマス及び1又は複数の他の食用原料が含まれ、任意選択的に、1又は複数のその他の原料が含まれる。
【0188】
別の態様において、本発明は、1又は複数の食用原料を含む、少なくとも0.1%w/wの藻類バイオマス及び1又は複数のその他の原料を含む食用組成物であって、藻類バイオマスが、乾燥重量で少なくとも30%のタンパク質、少なくとも40%のタンパク質、乾燥重量で少なくとも45%のタンパク質、乾燥重量で少なくとも50%のタンパク質、乾燥重量で少なくとも55%のタンパク質、乾燥重量で少なくとも60%のタンパク質、又は乾燥重量で少なくとも75%のタンパク質を含む、食用組成物に関する。いくつかの場合においては、藻類バイオマスは、乾燥重量で30〜75%又は40〜60重量%のタンパク質を含有する。いくつかの実施形態においては、少なくとも40%の粗タンパク質消化可能であり、少なくとも50%の粗タンパク質が消化可能であり、少なくとも60%の粗タンパク質が消化可能であり、少なくとも70%の粗タンパク質が消化可能であり、少なくとも80%の粗タンパク質が消化可能であり、又は少なくとも90%の粗タンパク質が消化可能である。いくつかの場合においては、藻類バイオマスは、従属栄養の状況下で生育する。少なくとも一つの実施形態では、藻類バイオマスは、窒素充実条件下において生育する。他の実施形態では、微細藻類は、色素が欠乏又は減少する色彩突然変異体である。別の実施形態では、食品組成物には、少なくとも0.1%w/wの藻類バイオマス及び1又は複数のその他の食用原料が含まれ、かつ任意選択的に、1又は複数のその他の原料が含まれる。
【0189】
いくつかの場合においては、藻類バイオマスは、主としてインタクトな細胞を含む。いくつかの実施形態で、食品組成物は、主として又は完全にバイオマスの細胞内に包含された油を含有する。いくつかの場合においては、食品組成物は、主としてインタクトな微細藻類細胞を含む。いくつかの場合においては、藻類油は、主として、バイオマスの細胞に包含されている。他の場合は、バイオマスは、主として、溶解細胞 (例えば、ホモジェネート)を含む。先に述べたように、当前記ホモジェネートは、スラリー、画分、粉状、又は粉末として提供され得る。
【0190】
食品組成物のいくつかの実施形態では、藻類バイオマスはさらに、少なくとも10ppmセレンを含む。いくつかの場合においては、バイオマスはさらに、少なくとも15%w/wの藻類多糖類を含む。いくつかの場合においては、バイオマスはさらに、少なくとも5%w/wの藻類糖タンパク質を含む。いくつかの場合においては、バイオマスは、カロテノイド総量として、バイオマス1gあたり0〜115mcgのカロテノイドを含む。いくつかの場合においては、バイオマスは、少なくとも0.5%w/wの藻類リン脂質を含む。全ての場合において、ここで述べたように、これらの成分は真の細胞成分であって、細胞外成分ではない。
【0191】
いくつかの場合においては、食品組成物の藻類バイオマスには、抗酸化剤特性を有する成分が含まれる。強力な抗酸化剤特性は、カロテノイド、亜鉛等の必須ミネラル、銅、マグネシウム、カルシウム、及びマンガン含むがこれらに限定されない、藻類バイオマスに存在する複数の抗酸化剤に起因し得る。藻類バイオマスにはまた、トコトリエノールとトコフェロール等の他の抗酸化剤が含がまれることも分かっている。これらビタミンE群のメンバーは、重要な抗酸化剤であり、脳卒中誘発性損傷に対する保護効果、動脈閉塞の逆転、乳癌及び前立腺癌細胞の増殖阻害、コレステロール値の低下、II型糖尿病のリスク低減、及び緑内障の損傷に対する保護効果等、その他の健康効果を有する。トコトリエノールとトコフェロールの天然資源は、椰子、ひまわり、トウモロコシ、大豆、及びオリーブ油から生産される油に存在するが、本明細書に記載の組成物は、従来より既知の物質よりもかなり高いトコトリエノール値を有する。
【0192】
いくつかの場合においては、本発明の食品組成物は、総量で少なくと5mg/100g、少なくとも7mg/100g又は少なくとも8mg/100gのトコトリエノールを含有する藻類油を含む。いくつかの場合においては、本発明の食品組成物は、総量で少なくとも0.15mg/g、少なくとも0.20mg/g又は少なくとも0.25mg/gのトコトリエノールを含有する藻類油を含む。
【0193】
上記の組成物及び/又は方法の特定の実施形態では、微細藻類は、カロテノイドを産生することができる。いくつかの実施形態では、微細藻類により産生されたカロテノイドは、脂質又は微細藻類で産生された油と共に抽出可能である(すなわち、油又は脂質がカロテノイドを含有する)。いくつかの実施形態では、微細藻類で産生されたカロテノイドは、キサントフィルである。いくつかの実施形態では、微細藻類で産生されたカロテノイドは、カロテンである。いくつかの実施形態では、微細藻類で産生されたカロテノイドは、カロテンとキサントフィルの混合物である。様々な実施形態では、微細藻類で産生されたカロテノイドは、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、α-カロテン、トランスβ-カロテン、シス-β-カロテン、リコピン及びそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される、少なくとも1つのカロテノイドを含む。クロレラ・プロトセコイデス由来油のカロテノイド特性の非限定的例として、以下の実施例に含まれる。
【0194】
食品組成物のいくつかの実施形態では、藻類バイオマスは、優良製造規範(GMP)の下で培養及び乾燥させた藻類由来である。いくつかの場合においては、藻類バイオマスは、穀類、果物、野菜、タンパク質、脂質、ハーブ及び/又は香辛料原料を無制限に含む、1又は複数の他の食用原料と組み合わされる。いくつかの場合においては、食品組成物は、サラダドレッシング、卵製品、焼いた食品、パン、バー、パスタ、ソース、スープの飲み物、飲料、冷菓、バターやスプレッドである。特定の実施形態では、食品組成物は、錠形又は粉末ではない。いくつかの場合においては、本発明に従った食品組成物の重さは、少なくとも50g、又は少なくとも100gである。
【0195】
バイオマスは、1又は複数の他の食用原料と合わせて、食品を作ることができる。バイオマスは、単一の藻類資源(例えば、株)又は、複数の資源由来の藻類バイオマス(例えば、異なる株)から作ることができる。バイオマスはまた、異なる組成物特性を有する単一の藻類種から作ることもできる。例えば、製造業者は、含油量の高い微細藻類とタンパク質量の高い微細藻類を混ぜ合わせ、最終食品原料で所望される、厳密な含油量及びタンパク質量に到達できる。その組合せは、市販又は食品サービス利用のための最終食品を作るために、製造業者により行われる。代替として、製造業者は、藻類バイオマスを製品として販売することができ、消費者は、藻類バイオマスを、例えば、従来の調理法にアレンジを加える等により食料品に取り入れることができる。いずれの場合も、藻類バイオマスは、典型的に従来の食品に利用されている油、脂肪、卵等の全て又は一部の代替として利用される。
【0196】
一つの態様では、本発明は、少なくとも0.1%w/wの藻類バイオマス及び1又は複数の他の食用原料を含む食品組成物であって、前記藻類バイオマスは、乾燥重量で所望の重量%のタンパク質と脂質を得るために、乾燥重量で少なくとも40%のタンパク質を含有する藻類バイオマスと、乾燥重量で40%の脂質を含有する藻類バイオマスを混ぜ合わせることにより調整する、食品組成物に関する。いくつかの実施形態では、バイオマスは、藻類の同じ株由来である。代替として、乾燥重量で少なくとも40重量%の脂質を含有し、そのうちDHAとして1%未満の脂質を含有する藻類バイオマスを、藻類バイオマス乾燥重量で少なくとも20%の脂質を含有し、そのうちDHAとして少なくとも5%の脂質を含有する藻類バイオマスと混ぜ合わせ、乾燥重量で少なくとも10%の脂質及び1%のDHAを含む凝集体中に含む乾燥バイオマスの混合物を得る。
【0197】
一つの態様では、本発明は、GMP状況下で、乾燥重量で少なくとも15%の油を含有し、前記藻類油の50%超が一価不飽和脂質である、藻類バイオマスを提供するために、藻類培養物を乾燥させて藻類バイオマスを産生する方法に関する。
【0198】
一つの態様では、本発明は、藻類油の50%超が18:1脂質である、GMP状況下で製造された、乾燥重量で少なくとも15%油を含有する藻類バイオマスに関する。一つの態様では、本発明は、GMP状況下で製造された、乾燥重量で少なくとも40%の油を含有する藻類バイオマスに関する。一つの態様では、本発明は、GMP状況下で製造された、乾燥重量で少なくとも55%の油を含有する藻類バイオマスに関する。いくつかの場合においては、藻類バイオマスは、単一用量用のバイオマス錠形としてパッケージ化されている。いくつかの場合においては、藻類バイオマスは、藻類バイオマスを他の食用原料と混ぜ合わせるよう指示したラベル付きのパッケージ、さもなければ表示義務のあるラベルを付きでパッケージ化されている。
【0199】
一つの態様では、本発明は、食品組成物又は食料品を生成するために、上記の微細藻類及び/又はそれから生成された物質を、下記の少なくとも1つの最終食品原料と混ぜ合わせる方法に関する。様々な実施形態では、本発明により生成される食品組成物には、卵製品(粉末又は液体)、パスタ製品、ドレッシング製品、マヨネーズ製品、ケーキ製品、パン製品、エネルギーバー、乳製品、ジュース製品、スプレッド、又はスムージーが含まれる。いくつかの場合においては、食品組成物は、錠剤又は粉末ではない。様々な実施形態では、食品組成物の重さは、少なくとも10g、少なくとも25g、少なくとも50g、少なくとも100g、少なくとも250g、又は少なくとも500g又はそれ以上である。いくつかの実施形態で、微細藻類バイオマス及び/又はそれから生成される産物の組合せにより生成される食品組成物は、未調理製品である。他の場合では、食品組成物は調理済製品である。
【0200】
他の場合では、食品組成物は調理済製品である。いくつかの場合においては、食品組成物は、藻類バイオマスによる油を除いて、25%未満の油又は脂肪を含有する。飽和トリグリセリド形式の脂肪(TAG又はトランス脂肪)は、マーガリン等のスプレッドを製造する時に行われるように、植物油を水素化する際に作られる。藻類バイオマスに含有される脂肪には、トランス脂肪は含まれない。いくつかの場合においては、食品組成物は、バイオマスによる油を除いて、10重量%未満の油又は脂肪を含む。少なくとも一つの実施形態では、食品組成物は、バイオマスによる油を除いて、油ゼロか又は脂肪ゼロである。いくつかの場合においては、食品組成物は、バイオマスによる油以外の油を含まない。いくつかの場合においては、食品組成物は、卵も卵製品も含まない。
【0201】
一つの態様では、本発明は、従来の食品中の脂肪又は油が、完全に又は一部、少なくとも10重量%の油を含有する藻類バイオマスで置き換えられた食品組成物を製造する方法に関する。一つの実施形態においては、前記方法には、バイオマス中の藻類油の比率を利用した藻類バイオマスの置換量と、従来の食品中の油量又は脂肪量とを決定すること、並びに、藻類バイオマスを、少なくとも1つの他の食用原料と、及び、従来の食品中に含有されるのよりも少ない油量又は脂肪量と組み合わせて食品組成物を形成することが含まれる。いくつかの場合においては、少なくとも1つの他の材料と組み合わされる藻類バイオマスの量は、従来の食品中の油及び/又は脂肪の質量又は体積の1〜4倍である。
【0202】
いくつかの実施形態で、上記の方法はさらに、油又は脂肪を混ぜた少なくとも1つの食用原料を含有する従来の食品の調理方法を提供すること、及び、従来の食品の脂肪又は油の質量又は体積の1〜4倍の藻類バイオマスを少なくとも1つの他の食用原料と合わせることを含む。いくつかの場合においては、本方法はさらに、GMP状況下で藻類バイオマスを産生することを含む。
【0203】
いくつかの場合においては、微細藻類バイオマス及び/又はそれから生成される産物に産生される食品組成物には、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、若しくは少なくとも50%w/w又はv/vの微細藻類バイオマス若しくは微細藻類油が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書の記載に従って産生される食品組成物には、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、若しくは少なくとも95%w/wの微細藻類バイオマス又はそれから生成される産物が含まれる。いくつかの場合においては、食品組成物には、重量濃度若しくは体積濃度で5〜50%、10〜40%、若しくは15〜35%の藻類バイオマス又はそれから生成される産物が含まれる。
【0204】
上記の通り、微細藻類バイオマスは、従来であれば食品に含まれている他の成分と置き換えることもできる。いくつかの実施形態で、食品組成物には、バイオマスによる微細類油又は微細藻類資源由来の微細類油を除いて、50重量%未満、40重量%未満、又は30重量%未満の油又は脂肪が含まれる。いくつかの場合においては、食品組成物には、バイオマスによる微細類油又は微細藻類資源由来の微細類油を除いて、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、又は5重量%未満の油又は脂肪が含まれる。少なくとも一つの実施形態では、食品組成物には、バイオマスによる微細類油又は微細藻類資源由来の微細類油を除いて、油ゼロ又は脂脂肪ゼロである。いくつかの場合においては、食品組成物には、卵、バター、若しくはその他の脂肪、又は、通常は、それに匹敵する従来食品には含まれている、少なくとも1つの他の成分が含まれない。ある食品には、乳製品(例えば、バター、クリーム及び/又はチーズ)が含まれない。
【0205】
食品組成物を調整するために使用される藻類バイオマスの量は、従来食品中の置換対象となる非藻類油、脂肪、卵等の量、及び藻類バイオマス中の油の割合に依る。よって、少なくとも一つの実施形態において、本発明の方法は、バイオマス中の含油量に比して、及び、通常は従来の食品中の少なくとも1つの他の食用原料と組み合わせる油及び/又は脂肪の量に比して、少なくとも1つの他の食用原料と組み合わせる藻類バイオマスの量を決定すること含む。例えば、もし藻類バイオマスの50%w/wが微細藻類油で、従来の調理法における油又は脂肪の完全な代替物となるならば、例えば、2:1の割合で油を置き換えることができる。割合は質量で測定できるが、実用的目的から、しばしば、計量用カップ又はスプーンを用いて体積を測定する方がより簡単であり、置換は体積により行うことができる。一般的な場合、置換対象の油又は脂肪の体積又は質量は、藻類バイオマスの体積又は質量(100/100−X)で置換され、式中、Xはバイオマス中の微細藻類油の割合である。一般に、従来の調理法における油及び脂肪は、全体として、藻類バイオマスに置換することが可能である。ただし、全体の置換は必要なく、所望の割合の油及び/又は脂肪を保持しつつ、残りを味及び栄養上の必要に従って置換することができる。藻類バイオマスには、乳化剤として機能するタンパク質及びリン脂質が含まれるため、卵などの品物は、全体として、又は一部として、藻類バイオマスと置き換えることができる。もし、全体として、卵をバイオマス又は藻類粉末と置き換えるなら、時に、追加の乳化剤を加えることで食品組成物中の乳化剤を強化すること、及び/又は、本来なら卵に提供されるはずのこれら成分の喪失を補完するために水分又は他の液体を加えることが望ましい、又は必要である。いくつかの実施形態では、追加の乳化剤を加えることが必要かもしれない。代替として、食品組成物によっては、乳化剤を加える必要がない場合もある。
【0206】
簡潔にするために、置換の割合は、バイオマス又は藻類粉末の質量又は体積に対する置換される油、脂肪及び/又は卵の質量又は体積として提供される。いくつかの方法では、従来の調理法における油、脂肪及び/又は卵の質量又は体積は、油、脂肪及び/又は卵の質量又は体積の5〜150%、25〜100%又は25〜75%に置き換えられる。置換の割合は、食品、食品の所望の栄養特性、食品の全体的感触と外観、及びバイオマス又は藻類粉末の含油量などの要因に依る。
【0207】
調理済食物においては、割合(すなわち、重量又は体積)は、調理前又は調理後に決定され得る。藻類バイオマス又は藻類粉末の割合は、液体の蒸発のため、調理過程で増加する。一部の藻類バイオマス細胞は、調理過程で溶解する場合があるため、調理済食品において直接藻類バイオマスの量を測定するのは困難である可能性がある。しかし、最終食品の重量又は体積の割合で、生製品に入れられたバイオマスの質量又は体積から間接的に量を決定することは可能であり、また、特定のカロテノイド等、藻類バイオマスによってのみ送達されるゲノム配列又は化合物等、藻類バイオマスに特異的なコンポーネントを解析する手法によっても量を決定できる。
【0208】
いくつかの場合においては、藻類バイオマス又は藻類粉末を、少なくとも1つの他の食用原料と、従来の食品中に存在する油、脂肪、又は卵等の成分比を超過する量で組み合わせることが望ましい。例えば、従来の食品中の油及び/又は脂肪の質量又は体積に代えて、0.25倍、0.5倍、0.75倍、1倍、2倍、3倍、4倍、又はそれ以上の倍数量の藻類バイオマス又は藻類粉末を使用してもよい。本発明の方法のいくつかの実施形態では、従来の食品調理法の中で、油又は脂肪と組み合わせた少なくとも1つの他の食用原料を含み、かつ従来の食品中の脂肪又は油の質量又は体積の0.25〜4倍の質量又は体積を有する藻類バイオマス又は藻類粉末を少なくとも1つの他の食用原料と組み合わせることを含む、従来の食品調理法を提供することが含まれる。
【0209】
藻類バイオマス又は藻類粉末(主としてインタクト又は均質化された又は微少化された)及び/又は藻類油は、少なくとも1つの他の食用原料と組み合わされて食品を形成する。一部の食品においては、藻類バイオマス及び/又は藻類油は、1〜20、2〜10、又は4〜8の他の食用原料と結合する。食用原料は、果物、野菜、豆類、肉、魚、穀物(例えば、小麦、米、麦、コーンミール、大麦)、ハーブ、香辛料、水、野菜スープ、ジュース、ワイン及び酢等を含むが、こられに限定されない、主要な食品群全てから選択することができる。いくつかの食品組成物においては、少なくとも2、3、4、又は5個の食品群が、藻類バイオマス又は藻類油と同様に表される。
【0210】
油、脂肪、又は卵等はまた、食品組成物として組み合わせることはできるが、先に述べたように、通常は、低減した量で(例えば、従来の食品と比較して、質量又は体積が50%未満、25%未満、又は10%未満の油、脂肪、又は卵等)で存在する。本発明の一部食品は、藻類バイオマス又は藻類油により提供されるもの以外の油を含まない。一部食品は、藻類バイオマスにより提供されるもの以外の油を含まない。一部食品は、藻類バイオマス又は藻類油により提供される藻類の以外の脂肪を含まない。一部食品は、藻類バイオマスにより提供される以外の脂肪を含まない。一部食品は、藻類バイオマス又は藻類油により提供される以外の油も脂肪も両方ともを含まない。一部食品は、藻類バイオマスにより提供される以外の油も脂肪も両方とも含まない。一部食品は、卵を含まない。いくつかの実施形態では、微細藻類により提供される油は、培養状態又は株の選択により、特定の脂肪酸成分又は脂肪酸値を含むよう設定することは可能である。
【0211】
いくつかの場合においては、食品組成物の産生に使用される藻類バイオマス又は藻類粉末は、少なくとも2つの明確に異なる種類の微細藻類の混合を含む。いくつかの場合においては、少なくとも2つの明確に異なる種類の微細藻類は、別々に培養される。少なくとも 一つの実施形態では、少なくとも2つの明確に異なる種類の微細藻類は、異なるリセロ脂質プロフィールを有する。いくつかの場合においては、本明細書に記載の方法はさらに、従属栄養の状況下で藻類粉末類を培養し、藻類からバイオマスを産生することを含む。いくつかの場合においては、少なくとも2つの明確に異なる種類の微細藻類の全ては、乾燥重量で少なくとも10%、又は少なくとも15%の油を含有する。いくつかの場合においては、食品組成物は、同種のバイオマスによる2つの明確に異なる調整物を混ぜ合わせたものを含有し、そのうち1つの調整物は、乾燥重量で少なくとも30%の油を含有し、他方の調整物は、乾燥重量で少なくとも15%未満の油を含有する。いくつかの場合においては、食品組成物は、同じ種類のバイオマスの2つの明確に異なる調整物を混ぜ合わせたものを含有し、そのうちの1つの調整物は、乾燥重量で少なくとも50%の油を含有し、他方の調整物は、乾燥重量で少なくとも15%未満の油を含有し、さらに、その種類がクロレラ・プロトセコイデスである。
【0212】
本来なら従来の食品中に存在する油、脂肪、又は卵等の代わりとして藻類バイオマス又は藻類粉末を使用するのと同様に、藻類バイオマス又は藻類粉末を、通常はスムージー等の油を含有する食物の補助食品として使用することができる。油と、主に炭水化物である製品との組み合わせは、炭水化物の血糖インデックスを低下させることにより、油に関連する利点及び油と炭水化物の組み合わせによる利点を有し得る。バイオマスに包含される油を提供することは、油を酸化から保護する点において有利であり、また、味及びスムージーなテクスチャを改良することもできる。
【0213】
藻類バイオマス又は藻類粉末から抽出された油は、バイオマスそのものと同じように、すなわち、従来の調理法において油、脂肪、又は卵等の代替として使用することができる。前記油を使用することで、約1:1w/w又はv/vで、従来の油及び/又は脂肪を置き換えることができる。前記油を使用することで、任意選択的に追加の水及び/又は乳化剤と併せて、卵1個につき小さじ約1さじ分の藻類油に置き換えることにより、卵を置換することができる(平均的な58gの卵は、約11.2%が脂肪であり、藻類油の濃度は、約0.915g/mlで、小さじ1さじの体積は約5ml=小さじ1.2配分の藻類油/卵)。前記油はまた、ドレッシング、ソース、スープ、マーガリン、クリーマー、ショートニング等に取り込むことができる。前記油は、所望の味、テクスチャ、及び/又は外観を提供するのに油と他の食品原料の組み合わせが必要な場合、特に食品にとって有益である。食品中の、重量又は体積による含油量は、少なくとも5、10、25、40又は50%であり得る。
【0214】
少なくとも一つの実施形態では、藻類バイオマス又は藻類粉末から抽出された油は、また、食品製造業者、レストラン及び/又は消費者により調理用油として使用され得る。係る場合、藻類油は、ベニバナ油、キャノーラ油、オリーブ油、ブドウ種子油、コーン油、ヒマワリ油、ヤシ油、パーム油、または任意の他の従来から使用されてきた食用油等、従来の調理用油の代わりとなり得る。藻類バイオマス又は藻類粉末から得られる油は、他の種類の油と同様、調理用に安定性を向上させるために(例えば、煙点の上昇)さらなる精製にかけられ得る。前記油は、遊離脂肪酸を除去するために苛性ソーダで中和することができる。遊離脂肪酸は、除去可能なソーダ油滓を形成する。油の色は、カーボンブラックと漂白土等の化学薬品で漂白することにより除去することができる。漂白土及び化学薬品は、濾過により油から分離することができる。前記油はまた、蒸気処理により脱臭することもできる。
【0215】
主としてインタクトなバイオマス、均質化又は微細化されたバイオマス(スラリー、画分、粉末又は粉)及び精製された藻類油全てを他の食品原料と組み合わせて、他の食品を産生することができる。全ては、好ましい栄養特性(比較的高い一価不飽和含有量)を有する油の資源である。主として、インタクトで、均質化され、微細化されたバイオマスはまた、高品質のタンパク質(バランスのとれたアミノ酸組成物)、炭水化物、繊維及び上記のその他の栄養素を供給する。これら任意の製品を取り込んだ食品は、菜食主義者又はベジタリアン式で産生され得る。タンパク質資源として微細藻類バイオマス又は藻類粉末(主としてインタクトな又は均質化された(若しくは微細化された)又はその両方のいずれか)を使用することのもう一つの有利な点は、大豆、卵又は乳製品等の主要なアレルギー源由来でない菜食主義者/ベジタリアン式タンパク質資源であることである。
【0216】
本発明に従って、藻類バイオマス又は藻類粉末及び/又は藻類油と組み合わせるその他の食用原料として、穀物、果物、野菜、タンパク質、肉、ハーブ、香辛料、炭水化物及び脂肪が含まれるが、これらに限定されない。藻類バイオマス又は藻類粉末及び/又は藻類油と組み合わせる他の食用原料は、産生される食品及び食品の所望の味、テクスチャ及びその他の特性に依る。
【0217】
一般に、藻類油のこれら資源は任意の食品に使用され得るが、好ましい資源は、一部には、油存在の目的が、食品のテクスチャ、外観又は味のためというよりもむしろ、本質的に栄養又はカロリーのためであるかどうか、又は代替的に、他の食品原料と組み合わされる油が、その食品の栄養面若しくはカロリー面の特性を改善すると同様に又は改善する代わりに、食品の所望の味、食感若しくは外観に寄与することを意図しているかどうかによる。
【0218】
食品は、所望の通りに、従来の手順で調理することができる。調理の長さ及び温度次第で、調理過程で一部の細胞壁が破壊され、油が排出され、その結果他の成分と混合される場合がある。しかし、少なくとも一部の藻類細胞は、しばしば、調理によってもそのままである。代替として、食品は、無調理のまま使用することができる。この場合、藻類壁はそのままで、油の酸化を保護する。
【0219】
藻類バイオマス又は藻類粉末は、主としてインタクトな細胞の形態で、又はホモジェネート粉末として提供されれば、乾燥材料として提供され、細紛等の他の乾燥材料との混合が促進され得るという点で、油とは異なる。一つの態様では、藻類バイオマス又は藻類粉末は、乾燥重量で25%〜40%の油を含む乾燥ホモジェネートとして提供される。バイオマスのホモジェネートはまた、スラリーとしても提供され得る。乾燥材料(及び、もし利用するなら、バイオマスのホモジェネートスラリー)と混ぜ合わせた後、水等の液体を加えることもできる。一部の食品においては、必要な液体の量は、バイオマスの非油成分のため、及び/又は、卵等の他の成分では水が供給されないため、従来の食品においては幾分高めとなる。しかし、従来の調理法においてそうであるように、水の量は容易に決定され得る。
【0220】
一つの態様では、本発明は、乾燥重量で少なくとも10%の藻類油を含有する、少なくとも0.5%w/wの藻類バイオマス又は藻類粉末を含み、液体を加えることにより、変換し、再構成される食品原料の組成物に関する。一つの実施形態において、液体は水である。
【0221】
均質化又は微細化された高油脂バイオマスは、液体及び/又は、ソース、スープ、飲料、サラダドレッシング、バター、スプレッド等、バイオマスによる油が他の液体と共に乳濁液を形成する乳化食品(油中の水及び水性乳濁液中の油)において特に有利である。ドレッシング、ソース及びスプレッド等のレオロジーを改良することで有利となる製品については、以下の実施例に記載されている。均質化されたバイオマスを利用して、従来の油を使用した従来製品の場合よりも低量の油(重量又は体積により、製品全体として)で、所望のテクスチャ(例えば、食感)、味及び外観(例えば、不透明さ)を形成することは可能であり、よって脂肪増量剤として使用することができる。そのようなものであれば、低カロリー(すなわち、ダイエット)食品に有益である。精製された藻類油はまた、液体及び/又は乳化製品にとっても有利である。均質化又は微細化された高油脂バイオマス及び精製された藻類油の双方とも、従来の油、脂肪、又は卵で作っても類似のものはできるが、栄養特性が改良されている(例えば、より高い一価飽和脂肪油含有量及び/又は、より高いタンパク質含有量若しくはより高品質なタンパク質、及び/又はより高い繊維含有量、及び/又はその他の栄養素)類似製品と似通った又はそれよりも良い味、外観及びテクスチャを達成する焼き製品中の食用原料との組合せはよい。
【0222】
主としてインタクトなバイオマスは、食品の栄養特性(例えば、より高い油含有量、異なる油含有量(例えば、一価不飽和脂肪油)、より高いタンパク質含有量、より高カロリー含有量、より高い含有量の栄養素等)を変化又は向上させるのに望ましい状況において特に有益である。係る食品は、例えば、運動選手又は栄養失調症を患う患者にとって有益となり得る。主として、インタクトなバイオマスは、充填剤として使用され得る。例えば、より高価な食品の量を増加させる(例えば、ミートヘルパー等)ため、又はベジタリアン用肉代替品等の疑似食品又は模造食品に使用することができる。疑似食品又は模造食品は、風味や容積に関しては通常、異なる資源により提供されているという点で天然食品とは異なる。例えば、、肉等の天然の食品の風味は、風味を有する充填剤に添加することができる。主として、インタクトなバイオマスは、係る食品の充填剤として使用され得る。主として、インタクトなバイオマスはまた、良好な水結合特性を有し、よってそのような食品の脱水を促進するため、パスタ等の乾燥食品にとって特に有益である。主として、インタクトなバイオマスはまた、例えば、焼き製品中の保存料として有益である。主として、インタクトなバイオマスは、保水力を改善し、よって賞味期間も改善される。
【0223】
壊れた又は微少化された藻類バイオマス又は藻類粉末はまた、結合剤若しくは充填剤として、又は食品の栄養特性の変化若しくは向上のために有益である。
壊れた藻類バイオマス又は藻類粉末は、肉、大豆タンパク質、ホエイタンパク質、小麦タンパク質、豆タンパク質、米タンパク質、エンドウタンパク質、乳タンパク質等の別のタンパク質資源と組み合わせることができ、その点においては、藻類バイオマス又は藻類粉末が、結合剤及び/又は充填剤として機能する。粉砕され又は微少化された藻類バイオマス又は藻類粉末はまた、保水力が改善され、よって賞味期間も改善され得る。水分保水力が向上することは、特に、無グルテン焼き製品等、無グルテン食品に望ましい。粉砕された藻類バイオマス又は藻類粉末を利用した無グルテンクッキーの作り方に関する詳細な調理法及び賞味期間に関する研究は、下記の実施例に記載されている。
【0224】
いくつかの場合においては、藻類バイオマス又は藻類粉末は、卵の調整物に使用され得る。いくつかの実施形態では、よりクリーミーなスクランブルドエッグを作るために従来の乾燥粉末卵の調整物に添加される藻類バイオマス又は藻類粉末(例えば、藻類粉末)は、藻類バイオマス又は藻類粉末無しで調整された乾燥粉末卵よりも水分を含み、よりよいテクスチャを有する。他の実施形態では、藻類バイオマス又は藻類粉末は、調整される卵のテクスチャ及び水分量を総体的に改善するために、液体卵全体に加えられ、その後スチームテーブルにのせられる。このような調整物の具体的定例として、以下の実施例に記載されている。
【0225】
藻類バイオマス又は藻類粉末(主として、インタクト及び/又は均質化若しくは微細化された)及び/又は藻類油は、事実上、任意の食品組成物に組み入れることが可能である。いくつかの例として、ケーキ、ブラウニー、イエローケーキ、ブリオッシュを含むパン、シュガークッキー、ビスケット、及びパイを含むクッキー等の焼き製品が含まれる。他の例として、パスタ又は粉末ドレッシング、乾燥クリーマー、粉砕肉及び肉代替品等、しばしば乾燥状態で提供される製品が含まれる。主として、インタクトなバイオマスを結合剤及び/又は充填剤として係る製品の中に取り込むことで、主としてインタクトなバイオマスの水結合能のため脱水が改善され、収量を向上させることができる。乾燥粉末卵から作られたスクランブルドエッグ等、再脱水した食品のテクスチャ及び栄養特性もまた改善されている可能性がある。他の例として、ソース、スープ、ドレッシング(すぐ食べられる状態の)、熊谷委員リーマ、ミルクドレッシング、ジュース飲料、スムージー、クリーマー等の液体食品が含まれる。その他の液体食品として、食事の代替となる栄養ドリンク、又は藻類ミルクが含まれる。その他の食品として、ショートニング、マーガリン/スプレッド、ナッツバター、及びナチョソース等のチーズ製品を含む、バター又はチーズ等が含まれる。その他の食品として、栄養補助剤、チョコレート菓子−レシチン代替品、食事代替品、グラノーラバータイプの製品が含まれる。別種の食品として、バター及びコーティングがある。食品の周辺に油で層を作ることにより、主として、インタクトなバイオマス又はホモジネートは、調理媒体からの追加の油が食品に浸透させないようにする。よって、食品は、より望ましくない油(例えば、トランス脂肪、飽和脂肪、及び調理用油由来の産物による)を取り込むことなく、高含有量の一価不飽和脂肪油によりコーティングするという利点を保持することができる。バイオマスのコーティングはまた望ましいテクスチャ(例えば、パリパリ感)を食品にもたらし、調理用油及びその副産物の吸収がより少なくなるため、風味が混ざることがより少なくなる。
【0226】
未調理食品において、バイオマス中の藻類細胞の多くはインタクトなままである。これは、藻類油の酸化を防ぐのには有利であり、それにより、賞味期間が延長され、他の原料との有害な相互反応を最小化することとなる。食品の特性次第では、細胞が保護することで、冷蔵、真空パック等の必要性が低減されたり、又は回避されたりする可能性がある。細胞インタクトを保持することでまた、油が直接消費者の口に当たるのを防ぐことにもなり、望ましくないと思われる油っぽい食感又はべたつく食感を防ぐこととなる。どちらかと言えば栄養補助として油が使用されている食品においては、そのようなことは、製品の感覚受容特性を改善するのに有利となる。よって、主として、インタクトなバイオマスは、そのような製品における利用に適している。しかし、サラダドレッシング等の未調理製品において、油が所望の食感をもたらす場合(例えば、ビネガー等の水溶液の乳濁液)、精製された藻類油又は微少化されたバイオマスの利用が好ましい。調理済み食品において、オリジナルのインタクトなバイオマスの藻類細胞の一部は溶解するが、他の藻類細胞はインタクトのままであるかもしれない。溶解細胞のインタクト細胞に対する比は、調理過程の温度及び時間に依る。油が均一に他の成分と共に分散していることが、風味、テクスチャ及び/又は外観上好ましい調理済み食品においては(例えば、焼き製品)、微少化されたバイオマス又は精製された藻類油を利用することが好ましい。油及び/又はタンパク質及びその他の栄養素を供給するために藻類バイオマス又は藻類粉末が使用されている調理済み食品においては、それは、テクスチャのためというよりも、主に、栄養価又はカロリー価のためである。
【0227】
藻類バイオマス又は藻類粉末はまた、藻類バイオマス又は藻類粉末を使用すれば似通っているが、それらを使用せずに作る従来の製品と関連する食品(例えば、食事代替用飲料又はスムージー)の満腹指数を増加させるのに有益である。満腹指数は、同カロリーの異なる食品が食欲を満足させる度合いを測定するものである。係る指数は、試験食品を与え、その後、定められた間隔で他の食品に対する食欲を測定して計測することができる。その後の他の食品への食欲が少なければ少ないほど、満腹指数は高くなる。満腹指数の値は、白いパンを100としたスケールで表される。高い満腹指数を有する食品は、ダイエットに有益である。メカニズムの理解に依らないが、藻類バイオマス又は藻類粉末は、所定量のカロリーの食品のタンパク質量及び/又は食物繊維量を増やすことにより、満腹指数を増加させると信じられている。
【0228】
藻類バイオマス又は藻類粉末(主として、インタクトかつ均質化又は微細化された) 及び/又は藻類油はまた、栄養補助剤又はダイエット食品に製造することもできる。例えば、藻類油は、魚油に類似の方法で消化可能なカプセルに包むこともできる。そのようなカプセルを瓶詰めにし、毎日摂取する(例えば、1日あたり1〜4個のカプセル又は錠剤として)ことは可能である。カプセルには、単一量の藻類バイオマス又は藻類粉末又は藻類油が含まれる。同様に、バイオマスを、医薬賦形剤又はその他の賦形剤と共に任意選択的に圧縮して錠剤にすることもできる。錠剤は、例えば、瓶又はプラスチックの包みに入れ、例えば、1日あたり1〜4個の錠剤を用量として毎日摂取することもできる。いくつかの場合においては、錠剤又はその他の剤形には、単一用量のバイオマス又は藻類油が含まれる。カプセル及び錠剤及びその他のサプリメントの製造は、米国連邦規則集第21編第111条、又は外国法により確立された相当規則に定められた、栄養補助剤に適切なGMP状況下で行われることが好ましい。藻類バイオマス又は藻類粉末は、その他の粉末と混ぜ、(例えば、水、ジュース、ミルク又はその他の液体と)混合するための粉末として袋に小分けすることもできる。藻類バイオマス又は藻類粉末はまた、ヨーグルト等の製品と混ぜ合わせることもできる。
【0229】
藻類バイオマス又は藻類粉末及び/又は藻類油は、栄養補助剤に取り込むことができるが、上記の機能性食品は、錠剤、カプセル又は粉末の典型的な栄養補助剤とは明確に異なる。そのような食品の提供サイズは、典型的には、重量及び供給されるカロリー双方に関して、栄養補助剤よりははるかに大きい。例えば、1回分の梱包又は消費分において、食品の重量は100g超及び/又は少なくとも100カロリーを供給するものであることが多い。典型的には、食品には、タンパク質、炭水化物、又は液体のいずれかである少なくとも1つの原料を含有し、その他にもそのような原料を2つ又は3つ含有することも多い。食品中のタンパク質又は炭水化物は、しばしば、食品カロリーの少なくとも30%、50%、又は60%を供給する。
【0230】
上記の藻類バイオマス又は藻類粉末は、製造業者により製造され、レストラン又は個人等の消費者に、商業上又は家庭での利用のために販売される。そのような藻類バイオマス又は藻類粉末は、食品用の優良製造規範(GMP)の条件下で製造されることが好ましい。主として、インタクトな状態又は、粉末として均質化若しくは微細化された状態の藻類バイオマス又は藻類粉末は、密封バッグ等の気密容器に梱包された乾燥状態であることが多い。スラリー様式の、均質化又は微細化されたバイオマスは、他の容器の中でもチューブに梱包されるのが便利であり得る。任意選択的に、藻類バイオマス又は藻類粉末は、賞味期間を延長するために真空パッケージすることができる。梱包された藻類バイオマス又は藻類粉末の冷蔵は必要ない。梱包された藻類バイオマス又は藻類粉末には、上記にある通り、従来の調理法における所定量の油、脂肪又は卵の代替として使用するために、どのくらいの量の藻類バイオマス又は藻類粉末を使うべきかを含む使い方説明書が含まれている。簡単に言うと、使い方によると、油又は脂肪は、バイオマスの質量比又は体積比2:1で置き換えられ、卵については、卵1個につきバイオマス11g又は小さじ1さじ分の藻類油の割合で置き換えられる得る。上記の通り、他の割合でも可能である。例えば、従来の調理法における油及び/又は脂肪及び/又は卵の質量又は体積に対して、バイオマスの質量又は体積で10〜175%の割合でもできる。使い方説明書によると、密封パッケージ開封後は、広く市販されている(例えば、グラッド社製)ような気密容器で、任意選択的に冷蔵して、藻類バイオマス又は藻類粉末を保存するように指示されている。
【0231】
藻類バイオマス又は藻類粉末(主として、インタクト又は均質化若しくは微細化された粉末)はまた、他の乾燥材料(例えば、砂糖、小麦粉、乾燥果物、着香料)と混ぜ合わされた状態で梱包され得、最終食品の同一性を保つよう小分けして梱包される。その後、混合物は、消費者又は食品サービス会社により、水又は牛乳等の液体を加え、任意選択的に、油又は脂肪を加えることなく混ぜ合わせ及び/又は調理することにより、一つの食品に変換され得る。いくつかの場合においては、乾燥藻類バイオマス又は藻類粉末組成物を再構成するために液体を加える。任意選択的に、電子レンジ、対流式オーブン、従来のオーブン、又はレンジ台を使って調理を行うことができる。そのような混合物を使用して、ケーキ、パン、パンケーキ、ワッフル、飲料、ソース等を作ることができる。そのような混合物は、消費者にとって便利であり、冷蔵保存することなく長期保存できるという利点を有する。そのような混合物は、典型的には、それを食品に変換するための液体を加えるよう使い方の説明書きのついた密封容器に梱包されている。
【0232】
食品原料として利用するための藻類油は、同様に、食品用のGMP状況下で製造され、梱包されることが好ましい。藻類油は、典型的に、従来使用されている油と類似の方法で、瓶又はその他の容器に梱包される。容器には、食品中の従来の油、脂肪、又は卵の代わりに使用するための使い方説明書付きの貼付ラベルが含まれる。密封容器に梱包されると、油の賞味期間は長くなる(少なくとも1年)が、品質が特に劣化することはない。開封後は、主に一価不飽和脂肪油から成る藻類油が急激に酸化に晒されることはないが、未使用の油については、冷暗所に保存することにより(例えば、食器棚等の閉じられた空間)、酸化も少なく長く保存できる。油に含まれる使い方の指示には、好ましい保存に関する情報も含まれている。
【0233】
任意選択的に、藻類バイオマス又は藻類粉末及び/又は藻類油には、カロテノイド(例えば、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、α-カロテン、β-カロテン及びリコピン)、リン脂質(例えば、N−アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール及びリゾホスファチジルコリン)、トコフェロール(例えば、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、及びδトコフェロール)、トコトリエノール(例えば、αトコトリエノール、βトコトリエノール、γトコロリエノール及びδトコトリエノール)、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ポリフェノール、ロスマリン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、安息香酸、メチルパラベン、レブリン酸、アニス酸、酢酸、クエン酸、及びバイオフラボノイドを含むが、これらに限定されない、賞味期間を最大化するための、食用に承認された保存料/抗酸化剤を含有してもよい。
【0234】
ヒトための栄養素として、主としてインタクトなバイオマス、均質化又は微細化されたバイオマス(スラリー、画分、粉末、若しくは細紛)又は藻類油を食品に取り込む記載は、一般に、非ヒト動物のための食品にも適用され得る。
【0235】
バイオマスは、高品質な油脂又は高タンパク質又はその両方を、そのような食品に与える。藻類油含有量は、藻類タンパク質含有量と同様に、少なくとも10又は20重量%であることが好ましい。主としてインタクトなバイオマス由来の藻類油及び/又はタンパク質の少なくとも一部を獲得することは、時に、競争犬又は競争馬等、競技で高いパフォーマンスを求められる動物の飼料として有利となる。主としてインタクトなバイオマスはまた、保存料としても有益である。藻類バイオマス又は藻類粉末又は藻類油は、動物用飼料に典型的に使用されている他の材料(例えば、肉、肉風味、脂肪酸、野菜、果物、スターチ、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、プロバイオティック)及びそれらの任意の組み合わせと混ぜ合わされる。そのような食物はまた、ペット動物、特に活動的なライフスタイルのペット動物に適している。キャットフードにはタウリンを混入することが推奨される。従来の動物用飼料と同様、提供対象動物に適した一口サイズの粒で提供され得る。
【0236】
脱脂食品は、特に藻類バイオマス又は藻類粉末を含有する高タンパク質由来の脱脂食品は、藻類タンパク質濃縮物及び/又は単離物用のフィードストックとして有益である。藻類タンパク質濃縮物及び/又は単離物は、大豆タンパク質濃縮物/単離物を産生するために使用される標準過程を利用して産生され得る。藻類タンパク質濃縮物は、脱脂藻類バイオマス又は藻類粉末又はミール由来の可溶性糖を除去することにより調整されるだろう。残りの成分は、主に、タンパク質及び不溶性多糖類であろう。脱脂ミール由来の可溶性糖を除去することにより。タンパク質含有量が増加し、よって藻類タンパク質濃縮物を作ることとなる。藻類タンパク質濃縮物は、乾燥重量で少なくとも45%のタンパク質を含有する。好ましくは、藻類タンパク質濃縮物は、乾燥重量で少なくとも50%〜75%のタンパク質を含有する。藻類タンパク質単離物もまた、大豆タンパク質単離物を産生するのに使用される標準過程を使用して調整され得る。この過程には通常、温度とNaOHを使用した基本pH抽出工程が含まれる。抽出工程後、脂質と固体は分離され、タンパク質はHClを利用して液体画分から沈殿させる。固体画分を再抽出し、残りの液体画分をHClによる沈殿の前に貯めることができる。その後、タンパク質を中和し、乾燥噴霧して、タンパク質単離物を産生する。藻類タンパク質単離物は、典型的に、乾燥重量で少なくとも90%のタンパク質を含有する。
【0237】
脱脂ミールは、反芻動物、家禽、豚、及び水産養殖等の農場や漁場の生物の飼料に有益である。脱脂ミールは、食物用又はその他の目的のいずれかのために精製された藻類油を調整する過程の副産物である。得られたミールは、油脂含有量は低いが、生物の飼料に適した、高品質のタンパク質、炭水化物、食物繊維、粗灰及びその他の栄養素は依然として含まれている。細胞はほとんど溶解しているため、脱脂ミールはそのような動物にとって容易に消化され得る。脱脂ミールは、任意選択的に、動物用飼料で穀物等の他の材料と組み合わせることができる。脱脂ミールは均一な粉末で、市販の押し出し機や拡大機を使ってペレットに圧縮され得る。
【0238】
A.含気食品
含気食品とは、通常デザートに利用される言葉であるが、同じ原則で作られる非デザート食物にも応用される。空気混入デザートは、ムース、アイスクリーム、ホイップ状トッピング、シャーベット等のことを指している。含気食品は、連続相及び不連続相2つの相から成る。不連続相は、フードアイテム中に空気細胞又は空気泡として封入されている空気である。連続相は、水、溶解した固体(ミルク等)、コロイド状固体、タンパク質等を含む水で作られ得る。含気食品は、非連続空気層から成るため、食物内の空気細胞に空気を保つことができるかどうかは、含気食品をうまく形成するのに重要となる。乳化剤は、不連続相に空気細胞を形成するのに役立ち、安定剤は、食物内に空気細胞をそのまま保有するのに役立つ。含気食品の調整中に藻類バイオマス又は藻類粉末(特に、脂質が豊富な微細藻類粉末)を添加することでもたらされる驚くべきかつ予想外の効果は、バイオマスの空気保有能である。藻類バイオマス又は藻類粉末は、特に、脂質が豊富な微細藻類粉末は、優れた空気保有能又は安定能を有する。本発明の微細藻類粉末又は藻類バイオマスまた優れた乳化能を有し、よって、含気食品の利用に適している。
【0239】
ケーキ等の焼き製品では、脂質が豊富な微細藻類粉末又は藻類バイオマスによる脂質を含む脂肪は、いくつかの重要な役割を果たす。例えば(1)ケーキ中の膨張剤により形成される小さな気泡を保有し、又は安定化させることで、軽く、ふわふわしたテクスチャが得られるのは、脂肪が一部関係している(パンでも同様である)、(2)脂肪は、細粉タンパク質でコーティングし、グルテンの形成を防ぐことにより、「口の中でとろける」テクスチャ、及びその他の感覚受容特性を作り出す、(3)(高度飽和の)固体脂肪は通常、液体脂肪よりも高い空気保有能又は安定能を有し、その結果、より軽いテクスチャをもたらす、及び(4)乳化剤(モノグリセリド及びジグリセリド)は、バッター(batter)中の脂肪分布を支援し、その結果バッター中の空気泡分布がより良くなり、ケーキ又は焼き製品の軽く、ふわふわしたテクスチャをもたらすこととなる。脂質豊富な藻類粉末又は藻類バイオマスには、モノグリセリド及びジグリセリドが含有されるが、(バター/ラード等の固体脂肪と異なり)飽和脂肪は含有されない。よって、脂質豊富な藻類粉末又は藻類バイオマスが、そのような優れた空気保有能/安定能を有し、バター及び/又はエッグヨークの代わりに藻類粉末又は藻類バイオマスのみを使用したときに、焼き製品に同じふわふわ感/軽いテクスチャをもたらすとは期待されない。
【0240】
含気食品の別の例として、アイスクリーム(又は、シャーベット及びジェラート)が挙げられる。アイスクリームは、部分的に凍った泡であると定義され、通常は20%超の空気含有量を有する(不連続相)。連続相には、溶解した及びコロイド状の固体、すなわち、乳状の砂糖、タンパク質、安定剤、脂肪相等が含まれる。電子顕微鏡下では、アイスクリームは、連続相を構成している氷血症の中で脂肪小球によりコーティングされた空気細胞から成るように見える。藻類粉末又は藻類バイオマスの乳化能及び脂質含有量は、アイスクリーム作製の利用に適している。含気食品の非限定的例として他に、(風味がよく甘い)ムース、ホイップトッピング/ムース、及びメレンゲが挙げられる。一部のケーキ、クッキー、パン又はソースに見られる軽さ(例えば、エンジェルフードケーキ)もまた、空気混入による。
【0241】
B.粉砕肉及び成型肉
粉砕肉は、本質的に固体及び液体の分散物から成る2相システムであり、固体は非混和性である。液体は、塩の水溶液であると同時に、肉(固体)の筋肉繊維、脂肪、及び結合組織の不溶性タンパク質(及びその他の成分)が分散し、マトリックスを形成している媒体でもある。この2相システムは、厳密な意味では乳濁液ではないが、構成的にも構造的にも肉の「乳濁液」となる。この肉乳濁液の安定状態は、粉砕肉及び成型肉の統一性に依る。粉砕肉の固相は、細切り又は挽くことにより詰め肉に認められる均一な状態にされた加工肉(他の成分の中に、筋肉繊維、結合組織及び脂肪を含む)から成る。固相は、その後、液相に入れられ、肉乳濁液を形成する。粉砕肉に一般的な例として、ソーセージ、フランクフルト、ボローニャ、肉パティ(例えば、ハンバーガーパティ)及び缶詰肉が挙げられる。
【0242】
成型肉とは、機械的に分離され、その後、成型された肉のことを指している。「成型され」ているため、肉製品は、細かく粉砕した肉を加えたり又は加えなかったりして細切り肉を「転がす」ことにより成型され、そのため細切り肉の可溶性タンパク質が小片同士を結合する、粉砕肉のカット、スライス、又はポーションという人工的な外観を呈する。肉を機械的に分離することには、肉を切り刻み、挽き、又はその他の方法でより細片に加工し、よって、筋肉繊維を短くすることが含まれる。オリジナルの肉繊維は破壊されているため、成型された肉製品を一つにまとめるのに、部分肉乳濁液(粉砕肉に類似)の形成が必要である。成型肉製品の非限定的例として、チキンナゲッツ、コールドカット詰め(例えば、ハム、ターキー等)及び魚スティックが挙げられる。
【0243】
本発明の藻類バイオマス又は藻類粉末は、粉砕肉及び成型肉において成分として加えることができる。藻類バイオマス又は藻類粉末は、そのような肉製品において多機能的機能を有する。一つの態様は、藻類バイオマス又は藻類粉末を、充填剤又は増量剤となり得る。別の態様は、藻類バイオマス又は藻類粉末由来の脂質、炭水化物及びタンパク質は、粉砕肉/成型肉の他の成分に対して結合剤の働きをする。まったく驚くべきかつ予想外となる別の利点は、藻類バイオマス又は藻類粉末(特に、脂質豊富な藻類粉末)は、特に、低脂肪肉で作られた肉製品の場合、粉砕肉製品及び/又は成型肉製品のテクスチャ及び風味を改善する。低脂肪の牛挽肉(4%脂肪)及び七面鳥挽肉(3%脂肪)は、しっかりとした厚みで、噛み応えがよく、乾燥食感を有し、レバーの様な「非特徴的」肉風味を有する。脂質が豊富な藻類粉末又は藻類バイオマスを加えると、その結果、粉砕肉及び/又は成型肉のテクスチャ及び風味の双方が改善される。そのような場合、低脂肪肉製品は、脂質豊富な藻類粉末又は藻類バイオマスを加えない場合よりも、水分を含んで柔らかいテクスチャを有し、味も豊かでより肉に近い風味を有し、低脂肪肉製品であっても、高脂肪牛挽肉(20%脂肪)又は高脂肪七面鳥挽肉(15%脂肪)に類似のテクスチャをもたらす。藻類バイオマス又は藻類粉末を粉砕肉及び/又は成型肉に加えることで、高脂肪肉製品のテクスチャ及び風味を維持しつつ、より健康的な肉製品(低脂肪)を作り出すことができる。
【0244】
C.乳製品の模倣品
藻類粉末又は藻類バイオマスを、乳製品の模倣品又は乳製品の代替品(例として、バターの代わりに藻類粉末を使用することが含まれる)として使用することができる。藻類粉末又は藻類バイオマスはまた、酵素修飾チーズ(チーズ風味又はチーズソースにおいて)と混ぜ合わせるときの増量剤として使用され得る。さらに、藻類粉末又は藻類バイオマスはまた、藻類ミルク等、飲料の製造にも利用され得る。藻類粉末又は藻類バイオマスはまた、マカロニ・アンド・チーズ、大豆ミルク、米ミルク、アーモンドミルク、アイスクリーム、ホイップクリーム等の食品(乳製品を加えることで、クリーミーなテクスチャがもたらされる食物)の滑らかさを向上させることができる。
【0245】
脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスはまた、乳製品の模倣品として使用され得る。脱脂肪又は脱脂質の藻類粉末又は藻類バイオマスには、抽出後、実質上、油含有量はない。加工法次第では、脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスには、藻類バイオマス又は藻類粉末の成分であるリン脂質が含まれる。脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスは非乳製品であり、かつ可能性としては超低脂肪である(現在、非乳製品クリーマーに使用されている硬化油含有トランス脂肪と比較して)。コーヒーに加えると、脱脂藻類粉末又は藻類バイオマスは、コーヒーの苦みを低減し、クリーミーな食感(口全体に)を加える。前記製品は、クリーマーとして、又はモカ、ホットチョコレート、フラッペ及びその他のコーヒーベース飲料の利用に適している。
【0246】
以下の実施例は、本発明の請求内容をわかりやすく示すためのものであって、これらに限定されない。
【実施例1】
【0247】
高油含有量を達成するための微細藻類の培養
乾燥細胞重量ベースで20%超の油を達成するという目標で、微細藻類の株を振とうフラスコで培養した。使用されたフラスコ培地は以下のとおりであった。K
2HPO
4:4.2g/L、NaH
2PO
4:3.1g/L、MgSO
4・7H
2O:0.24g/L、クエン酸一水和物:0.25g/L、CaCl
2 2H
2O:0.025g/L、イースト抽出物:2g/L、及び2%グルコース。凍結保存された細胞を、室温で解かし、500ulの細胞を4.5mlの培養液に加え、6ウェルプレートに入れて、7日間28℃で攪拌した(200rpm)。乾燥細胞重量は、事前に重さを測ったエッペンチューブ(Eppendorf tube)に入れて、1mlの培養液を14,000rpmで5分間、遠心分離して決定した。培養液の上清を廃棄し、結果として得られた細胞ペレットを1mlの脱イオン水で洗浄した。培養液を再び遠心分離し、上清を廃棄し、細胞ペレットを−80℃に置いて凍らせた。それから、サンプルを24時間凍結乾燥させ、乾燥細胞重量を計算した。培養液中の脂質総量を決定するのに、3mlの培養液を取り、アンコムシステム(Ankom system)(アンコム社(Ankom Inc.)、ニューヨーク州マセドン)を用い、製造業者のプロトコールに従って解析にかけた。サンプルを、Amkom XT10抽出器を用いて、製造業者のプロトコールに従って、溶剤抽出を行った。脂質総量は、酸加水分解し乾燥させたサンプルと溶剤抽出し乾燥させたサンプルとの間の質量の差として決定した。乾燥細胞重量による油の割合の測定を表1に示した。
【0248】
【表1】
【0249】
クロレラ・プロトセコイデスの株を追加で、上記の状況下で生育し、標準的なガスクロマトグラフィ法(GC/FID)を用いてこれらクロレラ・プロトセコイデス株のそれぞれの脂質プロフィールを決定した。脂質プロフィールの概要は、以下に含まれる。値は、脂質全体の領域割合を示す。UTEX付きのコレクション番号は、テキサス大学オースチン校(1 University Station A6700、オースチン、テキサス州、78712−0183)のUTEX藻類コレクション由来の藻類株である。CCAP付きのコレクション番号は、藻類原生動物コレクション(SAMS Research Services、Ltd. Scottish Marine Institute、OBAN、Argull PA37 1QA、スコットランド、英国)由来の藻類株である。SAG付きのコレクション番号は、ゲッチンゲン大学藻類培養コレクション(Nikolausberger Weg 18、37073、ゲッチンゲン、ドイツ)由来の藻類株である。
【表2】
【0250】
これらのデータによると、上記の株はすべてクロレラ・プロトセコイデスであるが、一部の株には脂質プロフィールが異なるものが存在することが分かる。
【実施例2】
【0251】
高い油含有量の藻類バイオマスを精製することを目標に、3つの異なる培地処方で3つの発酵工程が行われた。第1の処方(培地1)は、Wuら(1994、Science in China、vol.37、No.3、pp.326−335)に基づき、1リットルあたり、KH
2PO
4、0.7g;K
2HPO
4、0.3g;MgSO
4−7H
2O、0.3g;FeSO
4−7H
2O、3mg;塩酸チアミン、10μg;グルコース、20g;グリシン、0.1g;H
3BO
3、2.9mg;MnCl
2−4H
2O、1.8mg;ZnSO
4−7H
2O、220μg;CuSO
4−5H
2O、80μg;及びNaMoO
4−2H
2O、22.9mgから成る。第2の培地(培地2)は、実施例1に記載のフラスコ培地由来で、1リットルあたり、K
2HPO
4、4.2g;NaH
2PO
4、3.1g;MgSO
4−7H
2O、0.24g;クエン酸一水和物、0.25g;脱水塩化カルシウム、25mg;グルコース、20g;イースト抽出物、2gから成る。第3の培地(培地3)はハイブリッドで、1リットルあたり、K
2HPO
4、4.2g;NaH
2PO
4、3.1g;MgSO
4−7H
2O、0.24g;クエン酸一水和物、0.25g;脱水塩化カルシウム、25mg;グルコース、20g;イースト抽出物、2g;H
3BO
3、2.9mg;MnCl
2−4H
2O、1.8mg;ZnSO
4−7H
2O、220μg;CuSO
4−5H
2O、80μg;及びNaMoO
4−2H
2O、22.9mgから成る。これら3つすべての培地処方を調整し、研究ラボ用の発酵槽で30分間、121℃でオートクレーブ殺菌した。オートクレーブ殺菌後の冷却に続き、各槽に無菌グルコースを加えた。
【0252】
各発酵装置の種菌はクロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)で、種菌を播種した発酵装置の培地及び温度状況を利用して、2つのフラスコ段階で調整した。各発酵装置に、10%(v/v)の対数増殖期中期の培養物で播種した。3つの研究ラボ用発酵装置は、実験中28℃で維持した。培地1における微細藻類細胞の生育も、温度23℃で評価された。すべての発酵評価のため、pH6.6〜6.8に維持し、500rpmで攪拌し、気流を1vvmに保った。発酵培養菌は、11日間培養された。バイオマスの蓄積は、750nmにおける光学密度により、乾燥細胞重量で測定した。
【0253】
脂質/油濃度は、標準的なガスクロマトグラフィ法による直接エステル転移反応を用いて決定した。簡潔に、バイオマスを有する発酵ブロスのサンプルを吸い取り紙に滲ませ、遠心分離チューブに送り、65〜70℃で1時間、真空オーブン中で乾燥した。サンプルを乾燥したとき、メタノール中に2mLの5%H
2SO
4をチューブに加えた。その後、ボルテックスと超音波処理を断続的に行いつつ、チューブを熱ブロック上で、温度65℃〜70℃で3.5時間加熱した。その後、2mlのへプタンを加え、チューブを激しく振った。2mlの6%K
2CO
3を追加し、チューブを激しく振って混ぜ合わせ、その後800rpmで2時間遠心分離器にかけた。それから、上清を、Na
2SO
4乾燥剤を含むGCバイアルに移し、標準的なガスクロマトグラフィ法で操作した。油/脂質の割合は、乾燥細胞重量ベースであった。生育した細胞の乾燥細胞重量は、培地1、23℃で9.4g/L;培地1、28°Cで1.0g/L、培地2、28°C21.2g/L;及び、培地328°Cで21.5g/Lであった。生育した細胞の脂質/油濃度は、培地1、23°Cで3g/L;培地1、28°Cで0.4g/L;培地2、28°Cで、18g/L;及び、培地3、28°Cで19g/Lであった。生育した細胞の乾燥細胞重量ベースの油の割合は、培地1、23°Cで32%;培地1、28°Cで40%;培地2、28°Cで85%;及び、培地3、28°Cで88%であった。28℃で、異なる培地処方により産生された藻類バイオマスの脂質プロフィール(内部標準に正規化後の領域%において)は、以下の表2にまとめた。
【0254】
【表3】
【実施例3】
【0255】
食品用バイオマス調整
微細藻類バイオマスを、実施例1〜2のいずれか1つに記載の微細藻類培養により産生した。微細藻類バイオマスは、発酵装置、フラスコ、又はその他のバイオ反応器から収穫した。
【0256】
GMP手順に従って行われた。健康診断又は上司の観察により、疾患、吹き出物、爛れ、若しくは感染性創傷等の体表の病変、又は、微生物を汚染する資源であって、それにより食物、食物が接触した表面、若しくは食物の梱包材を汚染する合理的な可能性のある、その他の任意な異常な資源を有する、又は有するようである者は誰であれ、状況が改善されるまで、そのような汚染をもたらすと予想され得る任意の作業から除外されるべきである。作業員は、そのような健康状態にある場合、上司に報告するべきである。微細藻類バイオマス、バイオマス接触表面、及びバイオマス梱包材と直接接触する作業員は全員、勤務中は、微細藻類バイオマス汚染を防御するのに必要な程度の衛生規範を遵守する。清浄度を維持する方法には以下が含まれるが、これに限定されない。すなわち、(1)バイオマス、バイオマス接触表面、又はバイオマス梱包剤の汚染を防御するよう、作業に適した防護服を着用する;(2)作業員の清浄さを適切に維持する;(3)作業開始前、作業現場を離れる度に、及び、その他に、手の汚れ又は汚染の可能性のある場合はいかなる時も、適切な手洗い施設で徹底して手を洗浄する(望ましくない微生物による汚染から身を守るため、必要ならば消毒する);(4)バイオマス、装置、又は容器の中へ落ちる可能性のある、不安定な宝石類やその他の物はすべて取り除き、かつ、手でバイオマスを扱う間、衛生管理が適切に行えない手にはめた宝石も取り除く。もし、手にはめた宝石を取り除くことができない場合は、インタクトで、クリーンかつ衛生的な状態で維持されることが可能であり、かつ、これらの物によりバイオマス、バイオマス接触表面、又はバイオマス梱包材が汚染されるのを効果的に防御する材料で、宝石を覆うのでもよい;(5)バイオマス処理で手袋を使用する場合、手袋をインタクトで、クリーンかつ衛生的な状態で保つこと。手袋は不浸透性の材料で作られたものでなければならない;(6)必要ならば、ヘアネット、ヘッドバンド、帽子、髭を覆うもの、又はそのほか、効果的に毛を隠すものを、効果的に身につける;(7)着衣やその他の作業員の私物は、バイオマスへの暴露の可能性がある場所、又は装置若しくは器具を洗浄する場所以外に保管する;(8)以下について、バイオマスへの暴露の可能性がある場所、又は装置若しくは器具を洗浄する場所以外で行うよう制限する。すなわち、バイオマスを食べる、ガムを噛む、又はたばこを吸うことである;(9)バイオマス、バイオマス接触表面、バイオマス梱包剤が、微生物又は、汗、毛、化粧品、たばこ、化学物質及び皮膚に塗った医薬品等を含むがこれに限定されない異物で汚染されるのを防御するために、その他に必要な任意の予防策を講じる。微細藻類バイオマスは、任意選択的に、ライセートを生成するために細胞粉砕工程にかけ、及び/又は、任意選択的に乾燥させて微細藻類バイオマス組成物を形成することができる。
【実施例4】
【0257】
乾燥クロレラ・プロトセコイデス バイオマスにおける藻類毒素の非存在
クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)バイオマスのサンプルを、実施例1に記載の方法を利用して生育し、調整した。乾燥バイオマスを、液体クロマトグラフィ−質量分析法(liquid chromatography−mass spectrometry/mass spectrometry)(LC−MS/MS)用いて、藻類毒素及びシアノバクテリア毒素への汚染の存在を解析した。解析では、文献で開示され、国際食品規制で言及されている、あらゆる群の藻類毒素及びシアノバクテリア毒素を網羅した。結果によると、バイオマスサンプルには、試験された藻類毒素及びシアノバクテリア毒素のうち、検出可能な任意のレベルのいかなるものも含まれていなかった。結果の概要を表3にまとめた。
【0258】
【表4】
【実施例5】
【0259】
クロレラ・プロトセコイデスのバイオマスにおけるダイエット食物繊維含有量
実施例1に記載の方法を用いて、ACOCインターナショナル公式メソッド(Official Method of ACOC International)(AOACメソッド991.43)に従って、乾燥クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)バイオマスのサンプルに対し、近似分析を行った。両サンプルに対して総脂肪含有量(脂質/油)の酸性加水分解を行ったが、高脂質藻類バイオマスの脂肪含有量は約50%で、高タンパク質藻類バイオマスの脂肪含有量は15%であった。粗食物繊維含有量は、高脂質藻類バイオマス及び高タンパク質藻類バイオマス双方とも2%であった。水分量(重量測定で決定)については、高脂質藻類バイオマス及び高タンパク質藻類バイオマス双方とも5%であった。灰含有量については、無機灰のるつぼ燃焼及び分析により決定されるが、高脂質藻類バイオマスでは2%、高タンパク質バイオマスでは4%であった。粗タンパク質については、各バイオマスを焼却するときに排出される窒素量により決定されるが、高脂質バイオマスでは5%、高タンパク質バイオマスでは50%であった。炭水化物含有量は引き算により、すなわち、上記の既知の脂肪値、粗食物繊維値、水分値、灰値及び粗タンパク質値の総量を100から引いた値とした。計算によると、高脂質バイオマスの炭水化物含有量は36%、高タンパク質バイオマスの炭水化物含有量は24%であった。
【0260】
両方の藻類バイオマスの炭水化物含有量をさらに解析すると、サンプル中に約4〜8%(w/w)の遊離糖(主として、スクロース)のあることが分かった。遊離糖に関して、複数のロットの高脂質藻類バイオマスを試験した(果糖、グルコース、スクロース、マルトース及びラクトースのアッセイ)が、スクロース量は2.83%〜5.77%の範囲、マルトースは検出不可〜0.6%の範囲、及びグルコースは、検出不可〜0.6%の範囲であった。その他の糖、例えば、果糖、マルトース及びラクトースは、アッセイされた任意のロットにおいて検出不可であった。遊離糖に関して、複数のロットの高タンパク質含有藻類バイオマスを試験したが、スクロースのみ、任意のロットで、6.93%〜7.95%の範囲で検出された。
【0261】
両方の藻類バイオマスの(藻類バイオマスの炭水化物画分内の)乾燥食物繊維含有量全体の解析を、ACOCインターナショナル公式メソッド(AOACメソッド991.43)に従って行った。高脂質バイオマスには、乾燥食物繊維総量29.44%に対し、可溶性食物繊維19.58%及び不可溶性食物繊維9.86%が含まれていた。高タンパク質バイオマスには、乾燥食物繊維総量14.59%に対し、可溶性食物繊維10.31%及び不可溶性食物繊維4.28%が含まれていた。
【0262】
藻類バイオマスの単糖解析
実施例4に記載の方法を用いて生育し、調整した、乾燥細胞重量ベースで約50%の脂質を有する乾燥クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)バイオマスを、酸性メタノリシスによりサンプルから産生された単糖メチルグリコシドの誘導体である、ペル‐O‐トリメチルシリル(TMS)のガスクロマトグラフィと質量分析装置を結合させた装置(GC/MS)を利用して、単糖(グリコシル)組成物を解析した。簡潔に、まず、メチルグリコシドを、80℃で18〜22℃、1M HCl含有メタノール中のメタノリシスにより、乾燥クロレラ・プロトセコイデスサンプルから調整し、次に、メタノール中ピリジン及び無水酢酸で、re−N−アセチル化を行った。次に、サンプルを、Tri−Sil(Pierce社)を用いて、80℃で30分間処理することにより、pre−O−トリメチルシリル化した。これらの手順は、先に、Merkle及びPoppe(1994)、Methods Enzymol. 230:1〜15;及び、Yorkら(1985)、Methods Enzymol.118:3〜40に記載されている。TMSメチルグリコシドのGC/MS解析を、Alltech社のEC−1融合シリカキャピラリーカラム(30m×0.25mm ID)を用いて、5975bMSDにインターフェースしたHP6890GC上で行った。単糖は、標準と比較した保有時間により同定され、これら炭水化物の特性は、質量分析により認証された。クロレラ・プロトセコイデスの単糖(グリコシル)成分は、アラビノース1.2モル%、マノース11.9モル%、ガラクトース25.2モル%、及びグルコース61.7モル%であった。これらの結果は、炭水化物総量のモルパーセントとして表した。
【実施例6】
【0263】
藻類バイオマスのアミノ酸プロフィール
実施例1に記載の方法を用いて生育し、調整した、乾燥細胞重量ベースで約50%の脂質を有する、乾燥クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)バイオマスのサンプルを、アミノ酸含有量に関して、ACOCインターナショナル公式メソッド(トリプトファン解析:AOACメソッド988.15;メチオニン及びシスチン解析:AOACメソッド985.28;及びその他のアミノ酸:AOACメソッド994.12)に従って行った。乾燥藻類バイオマス由来のアミノ酸プロフィール(総タンパク質量の割合として表示)を、乾燥全卵のアミノ酸プロフィール(Protein Factory社(ニュージャージー州)の全卵用製品仕様書のプロフィール)と比較し、その結果、これら2つソースが類似のタンパク質栄養価を有していることが分かった。クロレラ・プロトセコイデスのサンプルに関連するアミノ酸プロフィールの結果によると、バイオマスには、メチオニン((2.25%)、システイン(1.69%)、リジン(4.87%)、フェニルアラニン(4.31%)、ロイシン(8.43%)、イソロイシン(3.93%)、スレオニン(5.62%)、バリン(6.37%)、ヒスチジン(2.06%)、アルギニン(6.74%)、グリシン(5.99%)、アスパラギン酸(9.55%)、セリン(6.18%)、グルタミン酸(12.73%)、プロリン(4.49%)ヒドロキシプロリン(1.69%)、アラニン(10.11%)、チロシン(1.87%)、及びトリプトファン(1.12%)が含有されることが分かった。
【実施例7】
【0264】
クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)バイオマス、クロレラ・プロトセコイデス藻類粉末、クロレラ・プロトセコイデス色彩突然変異体(株BM1320)及びクロレラ・プロトセコイデス色彩突然変異体(株BM1320)から抽出された油のカロテノイド、リン脂質、トコトリエノール及びトコフェロール成分
実施例4に記載の方法を用いて産生された藻類バイオマスのサンプルを、順相HPLC、AOCSメソッドCe8〜89を利用して、トコトリエノール及びトコフェロール成分含有量に関する解析を行った。バイオマスのトコトリエノール及びトコフェロール含有画分を、ヘキサン又は別の非極性溶剤を利用して抽出した。トコトリエノール及びトコフェロール成分の完全な結果については、表4にその概要を示した。
【0265】
【表5】
【0266】
バイオマスのカロテノイド含有画分を単離し、HPLC法を用いてカロテノイドの分析を行った。(実施例3に記載の方法を用いて産生された)凍結乾燥した藻類バイオマスを、アルミ乳鉢に入れて炭化ケイ素と混ぜ合わせ、乳鉢と乳棒を用いて4回、それぞれ1分間ずつすり砕いて、カロテノイド含有画分を調整した。次に、すり砕いたバイオマス及びケイ素混合物を、テトラヒドロフラン(THF)で濯ぎ、上清を回収した。上清の色がなくなるまでバイオマスの抽出を繰り返し、全抽出のTHF上清を貯めて、標準的なHPLC法を用いて、カロテノイド含有量を解析した。ドラム乾燥器を用いて乾燥させた藻類バイオマスのカロテノイド含有量も、上記の方法を用いて解析した。
【0267】
凍結乾燥された藻類バイオマスのカロテノイド含有量は、ルテイン総量(66.9〜68.9mcg/g;シス−ルテインは12.4〜12.7mcg/gの範囲;及び、トランス−ルテインは、54.5−56.2mcg/gの範囲であった);トランス−ゼアキサンチン(31.427〜33.451mcg/g);シス−ゼアキサンチン(1.201〜1.315mcg/g);t−αクリプトキサンチン(3.092〜3.773mcg/g);t−βクリプトキサンチン(1.061〜1.354mcg/g);15−シス−βカロテン (0.625〜.0675mcg/g);13−シス−βカロテン(.0269〜.0376mcg/g);t−αカロテン(0.269〜.0376mcg/g);c−αカロテン(0.043〜.010mcg/g);t−βカロテン(0.664〜0.741mcg/g);及び9−シス−βカロテン(0.241〜0.263mcg/g)であった。報告されたカロテノイド総量は、105.819mcg/g〜110.815mcg/gの範囲であった。
【0268】
ドラムで乾燥された藻類バイオマスのカロテノイド含有量は、有意に低かった。ルテイン総量(0.709mcg/g:トランス−ルテインは、0.091mcg/g及びシス−ルテインは0.618mcg/g);トランス−ゼアキサンチン(0.252mcg/g);シス−ゼアキサンチン(0.037mcg/g);α−クリプトキサンチン(0.010mcg/g);β−クリプトキサンチン(0.010mcg/g)及びt−β−カロテン(0.008mcg/g)であった。報告されたカロテノイド総量は、1.03mcg/gであった。これらのデータは、藻類バイオマス乾燥のために使用される方法は、カロテノイド含有量に、有意に影響を及ぼすことを示唆している。
【0269】
藻類バイオマスに対して、リン脂質解析も行った。リン脂質含有画分を、Folch抽出法を用いて抽出し(クロロホルム、メタノール、及び水の混合物)、油のサンプルを、AOCS公式メソッドJa 7b−91、加水分解したレシチンのHPLC定量(国際レシチン・リン脂質協会、1999年)、及び、光散乱検出器によるリン脂質のHPLC分析(国際レシチン・リン脂質協会、1995年)を用いて、リン脂質含有量に関して解析した。リン脂質総量は、重量パーセント(w/w)で1.18%であった。藻類油のリン脂質プロフィールは、ホスファチジルコリン(62.7%)、ホスファチジルエタノールアミン(24.5%)、リソホスファチジルコリン(1.7%)及びホスファチジルイノシトール(11%)であった。リン脂質含有画分のヘキサン抽出を用いた類似の解析も行った。リン脂質総量は、重量パーセント(w/w)で0.5%であった。リン脂質プロフィールは、ホスファチジルエタノールアミン(44%)、ホスファチジルコリン(42%)及びホスファチジルイノシトール(14%)であった。
【0270】
クロレラ・プロトセコイデス藻類粉末のサンプルを、上記のリン脂質含有量に関して試験した。このサンプルの全リン脂質の含有量は、0.8%w/wであると判明した。個別のリン脂質の含有量は、重量%ベースで以下の通りである。すなわち、N−アシルホスファチジルエタノールアミン0.01%未満、ホスファチジン酸0.01%未満、ホスファチジルエタノールアミン0.25%、ホスファチジルコリン0.48%、ホスファチジルイノシトール0.07%、及びリソホスファチジルコリン0.01%未満であった。
【0271】
クロレラ・プロトセコイデスの色彩突然変異体(株BM320)から作られた藻類粉末のサンプルを、上記のリン脂質含有量に関して試験した。このサンプルの全リン脂質含有量は、0.62%w/wと判明した。個別のリン脂質含有量は、重量%ベースで以下の通りである。すなわち、N−アシルホスファチジルエタノールアミン0.01%未満、ホスファチジン酸0.21%未満、ホスファチジルエタノールアミン0.36%、ホスファチジルコリン0.05%、ホスファチジルイノシトール0.01%未満、及びリソホスファチジルコリン0.01%未満であった。
【0272】
クロレラ・プロトセコイデスの色彩突然変異体(株BM320)から抽出された油を、多様な成分に関して解析した。油は、溶剤抽出により抽出された(アセトン及び液体CO
2)。油は、精製も、漂白も脱臭もしなかった。油の成分は、重量パーセント(w/w)で、モノグリセリド0.19%及びジグリセリド5.77%であった。また、油100g中に3.24mgのα−トコフェロール及び油100g中に0.95mgのγトコフェロールが含まれていた。また、油100g中に191mgのエルゴステロール、油100g中に5.70mgのカンペステロール、油100g中に10.3mgのスティグマステロール、油100g中に5.71mgのβ−シトステロール、及び油100g中に204mgのその他のステロールが含まれていた。この油の全トコトリエノールは、油100g中に0.25mg(α−トコトリエノール0.22mg、β−トコトリエノール0.01mg未満、及びΔ−トコトリエノール0.03mg)であった。
【実施例8】
【0273】
藻類粉末(高脂質)の産生
実施例1に記載の発酵方法及び状況を利用して生育した、高脂質含有クロレラ・プロトセコイデスを、高脂質藻類粉末に加工した。微細藻類バイオマスを加工して藻類粉末にするには、遠心分離法を用いて、収穫されたクロレラ・プロトセコイデスバイオマスを培養培地から分離した。その結果得られた濃縮バイオマスには、水分40%超が含まれているが、高加圧ホモジェナイザー((GEAモデルNS1001)は、バイオマスの平均粒子サイズが10μm未満となるまで1000〜1200バールの圧力で動作)を用いて微少化した。その後、標準的な方法を用いて、藻類ホモジェネートを噴霧乾燥した。その結果得られた藻類粉末(噴霧乾燥されパウダー状にされた、微少藻類細胞)を梱包し、使用時まで貯蔵した。
【0274】
高脂質粉のサンプルを、粒子サイズに関して解析した。水分散の藻類粉末を作り、藻類粉末粒子サイズを、Hydro2000Sアタッチメントを使用したMalvern(R) Mastersizer2000でのレーザー分化を用いて決定した。優しく混ぜ合わせてコントロール分散物を作り出し、100バール、300バール、600バール及び1000バールの圧力でその他の分散物を作り出した。その結果、藻類粉末の平均粒子サイズは、より高圧状態では小さいことが分かった(優しく混ぜ合わせた状態では3.039μmで、1000バール加圧した状態では、2.484μmであった)。粒子サイズの分布は、高圧状態では変化し、より大きなサイズ(10μm超)の粒子が減少し、より小さな粒子(1μm未満)が増加した。
【実施例9】
【0275】
高脂質(脂質が豊富な)藻類粉末を使用した食品組成物
以下の食品構成には、実施例8に記載の方法を用いて産生され、約50%の脂質が含有される高脂質藻類粉末が含まれる。
【0276】
藻類ミルク/フローズンデザート
藻類ミルクの処方には、高脂質藻類粉末を利用して行われた。藻類ミルクには、以下の材料(重量%で)が含まれる。すなわち、水88.4%、藻類粉末6.0%、ホエイタンパク質濃縮物3.0%、砂糖1.7%、バニラエキス0.6%、塩0.2%及び安定剤0.1%である。これら材料を合わせ、ハンドサイズのホモジェナイザーを用いて低圧で均質化した。得られた藻類ミルクを凍らせて、試食した。口当たりは全乳のそれに相当し、ほど良い白濁色をしていた。使用された藻類粉末の脂質含有率は約50%であり、また、得られた藻類ミルクの脂肪含有率は3%であった。バニラ風味の大豆ミルク(Silk)と比べて、藻類ミルクは同様に口当たりがよく、白濁食で、大豆のような豆の風味はなかった。
【0277】
その後、藻類ミルクにさらに砂糖とバニラエッセンスを加え、2〜4分間、撹拌器で均一になるまで混ぜ合わせた。混合物を予め冷やしたアイスクリームメーカー(クイジナート社製(Cuisinart))に、1〜2時間、所望の均一性に到達するまで寝かせた。比較として、従来の製造法によるアイスクリーム、すなわち、ハーフアンドハーフ325グラム、2%ミルク220グラム、卵黄1個でもアイスクリームを作った。従来の製造法によるアイスクリームは、ソフトアイスクリームと同程度の均一性を有した、芳醇な味とスムーズな食感のアイスクリームであった。藻類ミルクから作ったアイスクリームは、従来の製造法によるアイスクリームと比べて、全体的に、滑らかさや口当たりの良さには欠けるが、均一性及び食感は、芳醇な味のアイスミルクに相当した。全体として、藻類ミルクをフローズンデザートに応用する利用法は、成功であった。製造された藻類ミルクのフローズンデザートは、従来のアイスクリームに対して、低脂肪の代替品となった。
【0278】
藻類粉末のパウンドケーキ
焼いた食品において、藻類粉末又は藻類バイオマスの空気保有能及び気泡安定化能を示すために、焼いた食品の処方の一例として、高脂質藻類粉末を使ってパウンドケーキを作った。藻類粉末パウンドケーキの構成は、バニラエッセンス(6.0g)、パウダーシュガー(122.0g)、全卵(122.0g)、水(16.0g)、中力粉(122g)、塩(1.5g)、キサンタンガム(Keltrol F社)(0.2g)、ベーキングパウダー(4g)、高脂質藻類粉末(45g)であった。卵を、厚く、淡色でクリーミーになるまで泡立てる。それから、バニラエッセンスを加えて混ぜ合わせ、次に藻類粉末を入れ、砂糖/卵の混合物に混ぜ入れる。次に、乾燥材料をよく掻き混ぜ、砂糖/卵の混合物に加え、代替的に水で掻き混ぜる。次に、バッター(batter)を、十分なじむまで混ぜ合わせる。次に、紙を敷いたマフィン型にバッターを注ぎ、325
0Fで8〜9分間焼いた。次に、天板を回転させて、さらに8〜10分焼いた。
【0279】
ケーキは、バターで作ったパウンドケーキとまったく同じように、ふっくら焼き上げたパンの構造を持ち、軽くてふわふわしたテクスチャを有していた。バターの代わりに10%(w/w)の高脂質藻類粉末で作ったパウンドケーキは、焼いた食品内の藻類粉末又は藻類バイオマスの空気保有能又は気泡安定化能を示した。
【0280】
マカロニ・アンド・チーズ
高脂質藻類粉末又は藻類バイオマス及び脱脂藻類粉末(高脂質藻類粉末のCO
2抽出を通じて産生される)が、乳製品(酵素修飾チーズ(EMC)及びバター/ミルク)のチーズ風味と滑らかさを増加する能力があるかどうかを調べるために、マカロニ・アンド・チーズを作った。マカロニ・アンド・チーズの処方は以下の通りである。すなわち、EMCチーズパウダー(6.35%)、水(21.27%)、塩(0.21%)、高脂質藻類粉末(3.81%)、脱脂藻類粉末(0.32%)、調理済みマカロニ(67.95%)、及び50%の酢酸(0.10%)を材料とする(最終製品の重量%で表示)。乾燥材料(マカロニ以外)を混ぜ合わせ、乾燥材料に水を加えた。次に、チーズミクスチャーをマカロニに絡めた。
【0281】
高脂質藻類粉末及び脱脂藻類粉末で作ったマカロニ・アンド・チーズの味は、EMCパウダー(箱入りのマカロニ・アンド・チーズ)で作ったマカロニ・アンド・チーズと類似していた。マカロニ・アンド・チーズを含む高脂質藻類粉末/脱脂藻類粉末は、滑らかなテクスチャ及び食感で、箱に記載の作り方(ミルク及びバターを使って)に従って調理したマカロニ・アンド・チーズに類似していた。この実施例は、高脂質藻類粉末又は藻類バイオマス及び脱脂藻類粉末が、バターとミルクの代替品として、クリーミーかつ強いチーズ風味を与えることを示した成功例である。マカロニ・アンド・チーズを含む藻類粉末の総脂肪含有量は、2%未満であった。
【0282】
高脂質藻類粉末を有する大豆ミルク
大豆ミルクが滑らかな口当たりと芳醇さを増加させるかどうかを、以下の処方で試験した。すなわち、0.5%、1%又は2%の高脂質藻類粉末(最終製品の重量パーセントとして)を含有する大豆ミルクである。また、藻類粉末を大豆ミルクに加えない場合のネガティブコントロールも試験した。藻類粉末を大豆に混ぜ、ハンドブレンダーを使用して、完全に混ざり合うまで攪拌した。藻類粉末を加えた場合は常に、大豆ミルクが芳醇で、「全脂肪」乳に近いテクスチャであった。さらに、藻類粉末を含む大豆ミルクは、(たとえ最低濃度であっても)、「豆のような」味はあまりしなかった。
【0283】
低脂肪肉パティ
高脂質藻類粉末又は藻類バイオマスの牛挽肉パティへの効果を、以下の処方で試験した。すなわち、0、0.5%、1%又は2%の高脂質藻類粉末を含む、96%脂肪フリー牛挽肉パティ(最終製品の重量パーセントとして)である。80%脂肪フリー牛挽肉をポジティブコントロールとして使用した。牛挽肉に藻類粉末を入れて十分混ぜ合わせてから、パティに成型した。他の材料は加えなかった。次に、パティを熱したフライパンで十分に調理した。94%脂肪フリーのネガティブコントロールのパティは水分が少なく、肉/レバーの風味がした。80%脂肪フリーのポジティブコントロールのパティは、水分を含み、柔らかいテクスチャで、肉/レバーの味はあまりしなかった。0.5%、1%及び2%の高脂質藻類粉末を含む96%脂肪フリーの牛挽肉は、ネガティブコントロールのパティよりも水分を含み、柔らかいテクスチャであった。2%の高脂質藻類粉末パティのテクスチャは、ポジティブコントロールのそれと類似しており、肉/レバーの味は同じようにあまりしなかった。
【0284】
0、0.5%、1%又は2%の高脂質藻類粉末(最終製品の重量パーセントとして)を99%脂肪フリーの七面鳥挽肉に入れた七面鳥挽肉パティも試験した。ポジティブコントロールとして、93%脂肪フリー七面鳥挽肉で作られた七面鳥パティも作った。七面鳥挽肉に藻類粉末を入れて十分混ぜ合わせてから、パティに成型した。次に、パティを熱したフライパンで十分に調理した。97%脂肪フリー七面鳥パティは水分が少なく、硬く、噛み応えがあった。93%脂肪フリーのポジティブコントロール七面鳥パティは、よりジューシーで、ローストターキーの味がした。0.5%、1%及び2%の高脂質藻類粉末を含むパティは、ネガティブコントロールのパティよりも水分を含み、ジューシーなテクスチャであった。さらに。2%の高脂質藻類粉末パティは、ポジティブコントロールと類似したローストターキーの味がした。
【実施例10】
【0285】
食品利用に適したその他の微細藻類株を同定する遺伝子型同定
藻類の遺伝子型同定
以下の通り、藻類バイオマスからゲノムDNAを単離した。細胞(約200mg)を、14,000xgで5分間、液体培養液から遠心分離した。その後、細胞を滅菌蒸留水に再懸濁し、14,000xgで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。直径2mmの単一のガラスビーズをバイオマスに加え、チューブを−80℃で、少なくとも15分間置いた。サンプルを採取し、150μlの摩砕緩衝液(サルコシル1%、蔗糖0.25M、50mMのNaClが、20mMのEDTAが、100mMのトリス−HCl、pH8.0、0.5ug/ulのRナーゼA)を加えた。簡単に掻き混ぜ、その後40μlの5M NaClを加えて、ペレットを再懸濁した。サンプルを簡単に掻き混ぜ、さらに66μlの5%CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)を加え、最後に簡単に掻き混ぜた。次に、サンプルを65℃で10分間インキュベートし、その後、14,000xgで10分間、遠心分離した。上清を新しいチューブに移し、300μlのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールを12:12:1で一度抽出し、その後、14,000xgで5分間遠心分離した。その結果得られた水相を、0.7volのイソプロパノール(〜190μl)を含む新しいチューブに移し、反転によって混合し、室温で30分間又は4℃で一晩インキュベートした。DNAを、14,000xgで10分間遠心分離により回収した。次に、その結果得られたペレットを70%エタノールで2度洗浄し、続いて100%エタノールで最終洗浄を行った。ペレットを室温で20〜30分間空気乾燥させ、続いて、50μlの10mMトリス−Cl、1mM EDTA(pH8.0)で再懸濁した。
【0286】
上記の通り調整された5μl藻類の全DNAを、10mMトリス、pH8.0で、1:50に希釈した。最終体積20μlでPCR反応を以下のように設定した。10μlの2×iProof HFマスターミックス(BIO−RAD社)を、0.4μlのプライマーSZ02613(10mMの貯蔵濃度で、5’−TGTTGAAGAATGAGCCGGCGAC−3’(配列番号24))に加えた。このプライマー配列は、GenBankアクセッション番号L43357のポジション567〜588であり、高等植物及び藻類のプラスチドゲノムに高度に保存されている。その次に、0.4μlのプライマーSZ02615(10mMの貯蔵濃度で、5’−CAGTGAGCTATTACGCACTC−3’(配列番号25))を加えた。このプライマー配列は、GenBankアクセッション番号L43357のポジション1112〜1093に相補的であり、高等植物及び藻類のプラスチドゲノムに高度に保存されている。次に、5μlの希釈された全DNA及び3.2μlのdH
2Oを加えた。以下の通り、PCR反応を行った。すなわち、98°C45秒;98°C8秒;53°C12秒;72°C20秒を35サイクル、続いて、72℃1分及び25℃で維持した。PCR産物の精製のために、20μlの10mMのトリスpH8.0を各反応に加え、続いて、40μlのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールを12:12:1で抽出し、掻き混ぜて、14,000xgで5分間遠心分離した。PCR反応をS−400カラム(GE Healthcare社)に応用し、3,000xgで2分間、遠心分離した。精製されたPCR産物を、その後PCR8/GW/TOPOへTOPOクローニングし、そして、LB/Specプレート上でポジティブクローンを選択した。精製されたプラスミドDNAを、M13フォワード及びリバースプライマーを用いて双方向にシークエンスした。配列アラインメント及び進化系統樹を、ジェニアス(Geneious)DNA解析ソフトウェアを用いて作成した。株1〜23(実施例1で指定)の配列を、添付された配列表中に、それぞれ配列番号1〜23として挙げた(すなわち、株1は配列番号1に相当、株2は配列番号2に相当等)。
【0287】
クロレラ・プロトセコイデスの9個の株由来の23SrRNAのゲノムDNA解析
クロレラ・プロトセコイデス(UTEX25、UTEX249、UTEX250、UTEX256、UTEX264、UTEX411、SAG211 10d、CCAP211/17、及びCCAP211/8d)の8個の株由来のゲノムDNAを単離し、23SrRNAのゲノムDNA解析を上記の方法に従って行った。試験されたクロレラ・プロトセコイデスの全株は、UTEX25以外は、配列において同一であった。8個の株の配列は全て、添付の配列表中に配列番号26及び27として挙げられている。
【0288】
市販のクロレラサンプルの遺伝子型同定解析
3つの市販のクロレラサンプル、すなわち、クロレラ・レギュラリス(New Chapter社、390mg/軟カプセル)、Whole Foods社の壊れた細胞壁クロレラ(Whole Foods社、500mg/圧縮錠剤)及びNutriBiotic社のCGFクロレラ(NutriBiotic社、500mg/圧縮錠剤)を、本明細書に記載の方法を用いて、遺伝子型を同定した。各市販のクロレラサンプルを約200mgをゲノムDNA単離のために滅菌蒸留水で再懸濁した。
【0289】
得られれたPCR産物を単離し、ベクターへクローニングし、M13フォワード及びリバースプライマーを用いて配列した。配列は、BLASTサーチを用いて、既知の配列と比較した。
【0290】
23srRNA DNA配列により、3つの市販のクロレラサンプルのうち2つに、リングビア・アエスツアリイ(Whole Foods社のBroken Wall Chrollea及びNutriBiotic CGF)と一致するDNA配列が存在することが分かった。リングビア・アエスツアリイは、海洋性シノバクテリアです。結果によると、市販の一部クロレラには、毒を作り出すとして既知のリングビア等の属の生物を含む、その他の汚染微生物種が含まれている。(例えば、Tenevaら、EnvironmentalToxicology、18(1)1、pp.9−20(2003);Matthewら.、J.Nat.Prod.、71(6):pp.1113−6(2008);及びCarmichaelら.、Appl.Environ.Microbiol.、63(8):pp.3104−3110(1997)を参照のこと)。
【実施例11】
【0291】
食品利用に適した微細藻類バイオマスの色彩突然変異体
色彩突然変異体を生成する化学的突然変異誘発
実施例1に記載の方法及び条件に従って、クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)を生育した。N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトログアニジン(NTG)を用いて、藻類株に化学的突然変異誘発を起こした。藻類培養を、突然変異源(NTG)にさらし、その後、2.0%グルコース寒天平板培地で単離をラウンドを通じて選択した。コロニーをスクリーンして色彩突然変異体を調べた。クロレラ・プロトセコイデス(野生型)は、従属栄養的に生育された場合、金色となるようである。スクリーンは寒天平板培地に白色に見える株を1つ作り出した。この色彩突然変異体は、33〜35と名付けられた(2009年10月13日に、American Type Culture Collection(10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110−2209)にて、ブダペスト条約に従って寄託された、特許受託番号PTA−10397)。別のコロニーも単離し、この突然変異が安定的であることを確認するために単離を3回繰り返した。この突然変異体は、寒天平板培地で、色は明るい黄色であり、25〜32と名付けた(2009年10月13日に、American Type Culture Collection(10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110−2209)にて、ブダペスト条約に従って寄託された、特許受託番号PTA−10396)。
【0292】
クロレラ・プロトセコイデス33〜55の脂質プロフィール
実施例1に記載の方法及び条件に従って、クロレラ・プロトセコイデス33〜55及び親クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)を生育した。両株について脂質割合(乾燥細胞重量で)を決定した。すなわち、クロレラ・プロトセコイデス33〜55の脂質は68重量%で、親株の脂質は62重量%であった。両株について脂質プロフィールは以下の通りと判定した(領域%として表示)。クロレラ・プロトセコイデス33〜55については、C14:0(0.81);C16:0(10.35);C16:1(0.20);C18:0(4.09);C18:1(72.16);C18:2(10.60);C18:3(0.10);及びその他(1.69);親株については、C14:0(0.77);C16:0(9.67);C16:1(0.22);C18:0(4.73);C18:1(71.45);C18:2(10.99);C18:3(0.14);及びその他(2.05)。
【実施例12】
【0293】
食品利用に公的な微細藻類バイオマスの培養のためのセルロース系フィードストック
クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)が非食品系炭素源を利用できるかどうかを評価するために、セルロース原料(爆砕したコーンストーバ)を、先の実施例に記載の任意の食品応用での利用に適したクロレラ・プロトセコイデスの従属栄養的培養の炭素源として利用するよう調整した。
【0294】
湿り気のある、爆砕したコーンストーバは、国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory)(コロラド州ゴールデン)により、1.4%の硫酸溶液でコーンストーバを調理し、その結果生じたスラリーを脱水することにより調整された。Mettler Toledo Moisture analyzerにより、湿ったコーンストーバ中の乾燥固体は24%であると判定された。100gの湿ったサンプルを脱イオン水に再懸濁し、最終体積を420mlとし、pHは10N NaOHを使用して4.8とした。Celluclast
TM(Novozymes社)(セルラーゼ)を最終濃度4%に加え、その結果得られたスラリーを50℃で72時間振りながらインキュベートした。次に、この物質のpHをNaOHで7.5とし(無視できるほどの体積変化)、0.22umフィルターを通じてフィルターを殺菌し、−20℃で貯蔵した。下記の通り、シグマ(Sigma)社のヘキソキナーゼベースのキットを使用してグルコース濃度を判定するのに、サンプルを保存した。
【0295】
グルコース濃度の判定に、シグマ社のGlucose Assay Reagent#G3293を用いた。サンプルは、先にその概要を述べたように、400倍に希釈し、40μlを反応物に加えた。コーンストーバのセルロース調整物には、約23g/Lのグルコースが含まれていると判定された。
【0296】
酵素処理及びセルロース、キシロース及びその他の単糖のグルコースへの糖化の後、先に調整された物質を、実施例1に記載の媒体を用いて、クロレラ・プロトセコイデス(UTEX250)の生育をフィードストックとして評価した。純粋なグルコースと混ぜ合わされたセルロース糖の多様な濃度を試験した(0、12.5、25、50及び100%のセルロース糖)。細胞を、暗室の中で、多様な濃度のセルロース糖上で、28℃で振りながら(300rpm)インキュベートした。UV分光光度計で、750nmの光吸収度を測定することにより、生育度を測った。クロレラ・プロトセコイデス培養菌は、発酵性糖100%がセルロース由来である培地条件を含む、セルクラスト(Celluclast)調整によるコーンストーバ上で生育した。セルロース系フィードストックとして、アセレラーゼ処理の甜菜パルプを使用して、類似の実験を行った。コーンストーバ材料で得られた結果同様、クロレラ・プロトセコイデス培養菌はすべて、セルロース由来の糖を炭素源として利用することができた。
【実施例13】
【0297】
藻類粉末が食品組成物の食感を改善し、テクスチャを向上させる
ショートブレッドクッキー
全脂肪含有量が約20%の藻類粉末含有ショートブレッドクッキーを、以下の調理法に従って作った。藻類粉末を含まず、全脂肪含有量が約20%であるショートブレッドクッキーも、以下の調理法を利用して作った(対照として)。藻類粉末で作られたクッキーは、パネルにより、藻類粉末無しで作ったクッキーよりもバターっぽくかつ芳醇な風味であると判定された。
【表6】
クッキーは、対流式オーブンで、325
0Fで7分間焼いた。
【0298】
チョコレートアイスクリーム
全脂肪含有量が約10%の藻類粉末含有チョコレートアイスクリームを、以下の調理法に従って作った。藻類粉末を含まない、全脂肪含有量が約10%であるチョコレートアイスクリームも、以下の調理法に従って作った(対照として)。藻類粉末で作ったチョコレートアイスクリームは、パネルにより、藻類粉末無しで作ったチョコレートアイスクリームよりも芳醇で、滑らかで、クリーミーであると判定された。藻類粉末で作られたアイスクリームは、パネルにより、脂肪がより高いことが認められた。他の材料の痕跡量に関しては、以下に加えた。
【表7】
【0299】
作り方
1.材料をすべて以下のorferに入れた。ペーストリーナイフを用いて、藻類粉末、安定剤及び糖を掻き混ぜた。次にココアを加え、混ぜ合わせた物を脇に置いた。
2.コーンシロップ、スキムミルク及び乳固形分を混ぜ合わせ、上記(1)の乾燥混合物に入れて混ぜ合わせる。最後にクリームを加えた。
3.混ぜ合わせた物を、ガラスボールに入れて蓋をし、電子レンジオーブンで180oFに熱した。2分毎に温度をチェックし、混合物を掻き混ぜた。混合物が180oFに達したら、電子レンジオーブンを消した。代替として、混合物を二重鍋で、温度が150oFになるまで熱することもできる。
4.次に、GEAグループのNiroSoavi社のPanda Homogenizerを用いて、混合物を180/30バールで均質化した。
5.次に、混合物を、一般的には一晩冷蔵し、風味を加え、アイスクリーム器を動作させた。
【表8】
【0300】
作り方
アイスクリームを、上記の通り、藻類粉末を入れずに作った。
【0301】
マヨネーズ
藻類粉末含有マヨネーズを、以下の調理法に従って作った。藻類粉末を含まないマヨネーズも、以下の調理法に従って作った(対照として)。藻類粉末で作ったマヨネーズは、パネルにより、藻類粉末を含まない広く市販されているマヨネーズに類似したクリーミーなテクスチャを有すると判定された。藻類粉末入りマヨネーズのとろける風味及び本体は、むらがなく、藻類粉末無しのマヨネーズよりも長持ちする。
【表9】
【0302】
作り方
1.藻類粉末を水と混ぜて分散物を形成させ、脇に置いた。
2.残りの乾燥材料を混ぜ(砂糖、乾燥マスタード、塩)、脇に置いた。
3.別のボールで、まず卵黄を打ち、上記ステップ2の乾燥材料と混ぜた。
4.ステップ1の藻類粉末の分散物を、ステップ3の混合物に混ぜた。
5.ビネガー及び50%レモンジュースをまず別のボールに合わせ、ステップ4の混合物に入れて泡立てた。
6.ステップ5の混合物を混ぜ合わせ、一度に2,3滴、ゆっくりと油を加え、混合物に厚みが加わるまで繰り返した。
7.いったん乳濁液が形成されると、残りの油(約50%)を加え、さらに乳濁液を混ぜ合わせた。次に、残りのレモン汁を加え、乳濁液をさらに混ぜ合わせた。もし乳濁液が厚すぎる場合は、任意選択的に熱水を加えてもよい。
8.マヨネーズを一晩冷蔵した。
【表10】
【0303】
作り方
マヨネーズを上記のように作ったが、藻類粉末を加えなかった。
【0304】
サラダドレッシング
藻類粉末含有サラダドレッシングを、以下の調理法に従って作った。小売りのドレッシング、1%又は3%の藻類粉末を加えた。藻類粉末を含まない小売りのドレッシングを対照ドレッシングとした。藻類粉末で作ったサラダドレッシングは、パネルにより、藻類粉末無しのサラダドレッシングよりも芳醇かつクリーミーで、風味が増したと判定された。藻類粉末含有サラダドレッシングは、藻類粉末無しのサラダドレッシングよりも脂肪が高いことが認められた。
【表11】
【実施例14】
【0305】
ミルクタンパク質との相互作用
ミルクに含まれるタンパク質はカゼインとホエイである。藻類粉末又は藻類バイオマスは、ミルク及びミルクタンパク質と相互作用し、特定の食品の食感を改善する。
【0306】
藻類粉末とホエイを組み合わせて使用すると、実施例9の藻類飲料の口当たりを改善した。実施例9で開示された飲料を以下に記載のとおり修飾した。ホエイを藻類飲料に加えると、飲料の口当たりが改善された。Golden Chlorella High protein(市販品)等、その他のタンパク質もまた、口当たりの改善を示した。それとは対照的に、大豆タンパク質、豆タンパク質を加えても藻類飲料の口当たりは改善されなかった。
【0307】
同様に、藻類粉末又は藻類バイオマスとミルクの相互作用により、ミルク、例えば、クリームベースのスープ、コーヒーや紅茶のクリーマー、乳製品ベース飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、シャーベット(sherbet)、シャーベット(sorbet)等を含む食品の材料の食感を改善する。
【表12】
【0308】
作り方
水を容器に加え、残りの材料をリストの順番に従って、掻き混ぜながら加えた。液体を、Balchのホモジェナイザーで、1回のパスで300〜400バールの圧力で、均質化した。均質化した液体を適切な容器に移し、冷蔵した。
【実施例15】
【0309】
藻類粉末含有食品材料の賞味期限の延長
シュガークッキー
藻類粉末含有シュガークッキーを、以下の調理法に従って作った。藻類粉末を含まないシュガークッキーも、以下の調理法に従って作った。両処方において脂肪総量が同じになるよう、従来のクッキー処方から卵黄を除き、バターの量を減らすことで3%の藻類粉末シュガークッキーの処方を調整した。一定の期間、クッキーをホイル包みで貯蔵し、センサーパネルにより、3日後及び3ヶ月後の評価を行った。藻類粉末を含まないクッキーは、3日後に腐りかけ、粘っこくなっており、3ヶ月後にはまったく食べられない状態になっていた。藻類粉末含有クッキーは、3日後及び3ヶ月後双方とも、もさくさくしたままで、食べられる状態であった。
【表13】
【0310】
作り方
1.乾燥材料の小麦粉、塩、ベーキングソーダ及びベーキングパウダーを混ぜて、脇に置いた。
2.藻類粉末と砂糖を、パドルアタッチメント(paddle attachment)キッチン・エイド・ミキサー(Kitchen Aid mixer)にゆっくり加えて、ショートニングを泡立たせた。
3.ゆっくりとしたスピードでミキサーを回し(1又は2)、水とバニラエッセンをゆっくり加えた。水とバニラエッセンス全て加えたら、ミキサーのスピードを上げて中程度にし、2分間混ぜ合わせた。
4.次に、卵を加え、混合物を中程度のスピードで2分間混ぜ合わせた。
5.ステップ1で混ぜた乾燥材料を、ステップ4の混合物にゆっくりと加え、最初は混合スピードを低にし、その後、6〜8に挙げて約2〜3分間掻き混ぜて生地を作った。
6.ベーキングシートに油を噴霧し、ステップ6の生地を流し込んで8mmの厚さとし、350oFで7〜9分間焼いた。
【0311】
クラッカー
藻類粉末含有クラッカーは、以下の調理法に従って、アメリカ製パン研究所(American Baking Institute)により作られた。藻類粉末を含まないクラッカーも、以下の調理法に従って作られた。藻類粉末含有クラッカーを作るにあたり、クラッカーに加えられる脂肪が、藻類粉末を含まない全脂肪対照処方に比べて、約33%〜50%減少するよう、ショートニングと藻類粉末の利用値を調整した。生地の特性への影響を評価するために、混合手順を試験した。混合過程において、藻類粉末の生地への添加を遅くすると、その結果、生地に加えられる水分総量が経った。手順を修正して、藻類粉末以外の全ての材料をボールに入れて、スピード1で2分間混ぜ合わせ、材料を一緒に混ぜた。その後、混ぜ合わせるスピードを2に代えて、4分間混ぜ合わせた。次に、藻類粉末を加え、さらに8分間混ぜ合わせた。
【0312】
藻類粉末含有クラッカーのテクスチャは、全脂肪の、藻類粉末を含まないクラッカーと同じであった。パネルによると、藻類粉末で作られたクラッカーは、「さくさく感が増し」、藻類粉末無しで作られれたクラッカーよりも好ましい風味とテクスチャであった。
【0313】
一定の期間、クラッカーをホイル包みで貯蔵し、パネルにより、30日後及び4ヶ月後の評価を行った。藻類粉末を含まないクッキーは、30日後に腐りかけ、粘っこくなっており、4ヶ月後にはまったく食べられない状態になっていた。藻類粉末含有クッキーは、4ヶ月後貯蔵後もさくさくしたままで、食べられる状態であった。
【表14】
【0314】
作り方
藻類粉末以外の全ての材料をパドル付きのホバート・フロアー・ミキサー(Hobart floor mixer)に入れて、2分間スピード1で混ぜ合わせ、生地を作った。ミキサーのスピードをスピード2に挙げ、4分間混ぜ合わせた。次に、藻類粉末を生地に加え、スピード2でさらに8分間混ぜ合わせた。オーブンのメッシュバンド、ゾーン1(トップは450℃、ボトムは430℃、ダンパーを閉じる/閉じる)、ゾーン2(トップは425℃、ボトムは400℃、ダンパーを開く/開く)、又はゾーン3(トップは415℃、ボトムは375℃、ダンパーを開く/開く)で、生地が黄金色になるまで焼いた。クラッカーの水分含有量は約3%であった。
【実施例16】
【0315】
藻類粉末を含むスプレッドバター製品及び藻類粉末を含むスプレッドマーガリンを、以下の調理法に従って作った。スプレッドバターは、藻類粉末とバターをミキサーに入れて高速で泡立て、その後で、水をゆっくりと藻類粉末とバターの混合物に、高速で掻き混ぜながら加えた。スプレッドマーガリンを、藻類粉末とヤシ油をミキサーに入れて高速で泡立てた。次に、塩を見ずにとかし、塩水を調整した。その後、塩水をゆっくりと藻類粉末とヤシ油の混合物に、高速で掻き混ぜながら加えた。藻類粉末含有スプレッドのテクスチャ及び風味は、藻類粉末無しの、全脂肪バター及びマーガリンスプレッドと類似していた。
【表15】
【実施例17】
【0316】
藻類油及び脱脂藻類粉末の組み合わせ
以下に示した、藻類粉末を使用した以外のクッキーの処方において、当量の脱脂藻類粉末及び藻類油を使用してクッキーを作った。脱脂藻類粉末及び藻類油で作ったクッキーを藻類粉末で作ったクッキーと比較した。パネルによりクッキーを評価した。藻類粉末で作ったクッキーの方が、味が良く、甘く、噛み応えのある食感で、バター風味が強いことが認められた。さらに、脱脂藻類粉末及び藻類油で作ったクッキーの色は、藻類粉末で作ったクッキーとは異なる色をしていた。非均一な食品においては、脱脂藻類粉末及び藻類油を利用することで、藻類粉末を利用した場合と比べて質の悪い物ができた。
【表16】
【0317】
作り方
1.中力粉、塩、ベーキングソーダ、ベーキングパウダー及びエッグステンド(eggstend)を混ぜ、脇に置いた。
2.砂糖及び藻類粉末を泡立て器付きのキッチン・エイド・ミキサー(Kitchen Aid mixer)で5分間混ぜ合わせた。
3.低スピード(1〜2)のミキサーで、上記2のステップの混合物にゆっくりと水を加えた。
4.低スピード(1〜2)のミキサーで、上記3のステップの混合物にゆっくりとバニラエッセンスを加え、生地を形成した。
5.生地を1時間冷蔵した。代替として、生地をより長い時間冷蔵することもでき、例えば、最大2〜4日冷蔵するか、又は後の利用のために凍らせることもできる。
6.クッキーシートに油を噴霧した。
7.生地をすくって、円盤状に成形し、クッキーシートの上に置いた。各クッキーの重さは約15グラムであった。
8.クッキーを、約6分から9分、325
0Fで焼いた。約6分間焼いたクッキーは、「柔らかい」テクスチャのクッキーとなった。より長い時間焼いたクッキーは、さくさくして、色が濃くなった。
【0318】
実施例9に記載の藻類飲料処方において、藻類粉末を使用する代わりに、当量の脱脂藻類粉末及び藻類油を使用して、均質化した飲料を作った。パネルにより、脱脂藻類粉末及び藻類油で作った飲料は、藻類粉末で作った飲料に相当すると判定された。
【実施例18】
【0319】
非藻類油及び非藻類繊維の組み合わせ
実施例17に記載のクッキー及び飲料を、キャノーラ油及びオート麦繊維を使用して作った。飲料及びクッキー双方とも、キャノーラ油及びオート麦繊維の組合せは、藻類粉末で作った飲料及びクッキーの結果を再現しなかった。キャノーラ油及びオート麦繊維を使用すると、質の悪い飲料及びクッキーが作られた。
【0320】
2009年10月14日に出願された国際出願PCT/US2009/060692号「微細藻類バイオマスの食物組成物」、2010年4月14日に出願された国際出願PCT/US2010/31088号「新規微細藻類食物組成物」、及び、2010年4月14日米国仮出願第61/324,285号「油質酵母の食物組成物」はそれぞれ、あらゆる目的のため、その全てを参照により本明細書に含めるものとする。
【0321】
特許文献、特許出願書類、及び刊行物等、本明細書で引用されるすべての文献は、先に具体的に含めたか否かに関わらず、これによって、その全体を引用により含めるものとする。本明細書で言及される刊行物は、本発明に関連して使用される可能性のある試薬、方法及び概念を記載及び開示する目的で引用される。本明細書に記載の何ものも、これらの引用文献が本明細書に記載の発明に関連する先行文献であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0322】
本発明は、その具体的な実施形態と関連して説明されているが、さらなる一部修正が可能であると理解されるべきであろう。本願は、一般に、本発明の原則に従い、本発明が関連する先行技術内で既知の又は慣習的実践内であるような、かつ、これより先に記載された本質的特徴に応用し得るような本開示からの派生を含む、本発明の任意のバリエーション、利用法、又は適応を網羅することを意図している。本明細書に記載の実施例及び実施形態は、説明のみを目的とするものであり、その観点からの多様な部分的修正又は変更は、当業者に対して提示されるものであり、本願及び添付のクレームの精神及び範囲内に含まれるべきものと理解される。
【0323】
【表17-1】
【0324】
【表17-2】
【0325】
【表17-3】
【0326】
【表17-4】
【0327】
【表17-5】
【0328】
【表17-6】
【0329】
【表17-7】
【0330】
【表17-8】
【0331】
【表17-9】
【0332】
【表17-10】