(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5865911
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 61/08 20060101AFI20160204BHJP
F02M 61/12 20060101ALI20160204BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20160204BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
F02M61/08 M
F02M61/12
F02M61/16 K
F02M61/16 P
F02M61/16 G
F02M61/08 C
F02M51/06 N
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-533141(P2013-533141)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2013-539838(P2013-539838A)
(43)【公表日】2013年10月28日
(86)【国際出願番号】EP2011066446
(87)【国際公開番号】WO2012048999
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2013年4月12日
(31)【優先権主張番号】102010042476.5
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ミュラー
【審査官】
赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】
特表平05−503977(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01731754(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01724464(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01079158(EP,A2)
【文献】
特表2007−537391(JP,A)
【文献】
特開2004−225687(JP,A)
【文献】
特開2010−101256(JP,A)
【文献】
特開昭64−066466(JP,A)
【文献】
特開2007−263015(JP,A)
【文献】
実開昭61−144399(JP,U)
【文献】
実開平04−049660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00〜71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射装置であって:
−外側に向かって開く弁ニードル(3)を備え、
−該弁ニードル(3)に結合されたピエゾアクチュエータ(2)を備え、
−第1の貫通開口(40)を備えた弁ボディ(4)を備え、
−該弁ボディ(4)に結合された、第2の貫通開口(50)を備えた保持ボディ(5)を備え、
−前記弁ボディ(4)は弁座(13)と、前記弁ニードル(3)を案内する第1の案内範囲(11)とを有し、
−前記弁ニードル(3)は前記弁ボディ(4)および前記保持ボディ(5)の内部に配置されており、
−前記弁ボディ(4)に設けられた前記第1の貫通開口(40)はアンダカット部なしに形成されており、
−前記弁ボディ(4)は第1の接触面(41)を有し、前記保持ボディ(5)は第2の接触面(51)を有し、前記両接触面(41,51)は互いに接触して、当該燃料噴射装置の中心軸線(X−X)に対して直角に配置されており、前記弁ボディ(4)にセンタリングつば(42)が設けられていると同時に、前記保持ボディ(5)にも、センタリングつば(52)が設けられており、前記保持ボディ(5)に設けられた半径方向外側のセンタリングつば(52)は、前記弁ボディ(4)に設けられた半径方向内側のセンタリングつば(42)に比べて肉薄に形成されており、
−前記弁ボディ(4)と前記保持ボディ(5)との結合が、溶接結合部(18)により形成されており、
−前記保持ボディ(5)に設けられた半径方向外側のセンタリングつば(52)の厚さが、前記弁ボディ(4)の第1の接触面(41)と前記保持ボディ(5)の第2の接触面(51)とが位置する半径方向の平面と、前記溶接結合部(18)との間での軸方向の間隔の2分の1よりも小さく形成されている、
ことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
第2の案内範囲(12)が設けられており、該第2の案内範囲(12)に前記弁ニードル(3)が案内されており、前記第2の案内範囲(12)は、前記保持ボディ(5)内に配置されたブッシュ(6)に形成されている、請求項1記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
さらに、燃料で充填された範囲(20)を、燃料不含の範囲(21)からシールする波形ベローズ(9)を備え、該波形ベローズ(9)の第1の端部(9a)が、直接に前記弁ニードル(3)に固定されている、請求項2記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記波形ベローズ(9)は、単層の金属材料から製造されている、請求項3記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記波形ベローズ(9)の第2の端部(9b)が、前記保持ボディ(5)内に配置された前記ブッシュ(6)に固定されている、請求項3または4記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
さらに戻しエレメント(7)を備え、該戻しエレメント(7)の一方の端部が、前記保持ボディ(5)に支持されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の燃料噴射装置。
【請求項7】
さらに、金属薄板から成る皿形エレメント(8)を備え、該皿形エレメント(8)は、直接に前記弁ニードル(3)に固定されていて、該皿形エレメント(8)に前記戻しエレメント(7)が支持されている、請求項6記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
前記弁ボディ(4)は、前記保持ボディ(5)の長さ(L2)よりも小さく形成された長さ(L1)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の燃料噴射装置。
【請求項9】
前記弁ボディ(4)は、前記保持ボディ(5)の長さ(L2)の半分よりも大きな長さに相当する分だけ該保持ボディ(5)よりも小さく形成された長さ(L1)を有する、請求項8記載の燃料噴射装置。
【請求項10】
前記弁ニードル(3)は第3の案内区分(34)を有し、該第3の案内区分(34)は第1の案内区分(31)に隣接して配置されており、前記第1の案内区分(31)と前記第3の案内区分(34)とは、1つの共通の案内範囲(11)に沿って案内されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料噴射装置。
【請求項11】
さらに円筒環状の流れ範囲(62)を備え、該円筒環状の流れ範囲(62)は前記第1の案内範囲(11)と前記弁座(13)との間に配置されており、前記円筒環状の流れ範囲(62)の面(C)は、前記弁ニードル(3)が完全に開弁された状態において、前記弁座(13)に設けられた円筒環状の流出面(D)の約2倍の大きさに形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の燃料噴射装置。
【請求項12】
前記円筒環状の流れ範囲(62)は、前記円筒環状の流れ範囲(62)の幅の約2〜5倍の長さに形成された長さ(L)を有する、請求項11記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、改善された、より廉価な構造を有する燃料噴射装置に関する。
【0002】
燃料直接噴射の領域では、外側に向かって開くタイプの弁ニードルを備えたピエゾインジェクタがますます多く使用される傾向にある。この場合、一方では弁ニードルの正確な案内が確保されなければならず、他方ではインジェクタの、燃料で充填された範囲と、乾いた(燃料不含の)範囲(乾範囲)との間での確実でかつ長期耐用のシールが確保されなければならないことが判った。
【0003】
発明の開示
請求項1の特徴部に記載の特徴を具備する本発明による燃料噴射装置、すなわち外側に向かって開く弁ニードルを備え、該弁ニードルに結合されたピエゾアクチュエータを備え、第1の貫通開口を備えた弁ボディを備え、該弁ボディに結合された、第2の貫通開口を備えた保持ボディを備え、前記弁ボディは弁座と、前記弁ニードルを案内する第1の案内範囲とを有し、前記弁ニードルは前記弁ボディおよび前記保持ボディの内部に配置されており、前記弁ボディに設けられた前記第1の貫通開口はアンダカット部なしに形成されていることを特徴とする燃料噴射装置には、従来のものに比べて、著しく単純でかつ廉価な構造を有するという利点がある。これにより、大量生産時における極めて大きな節約ポテンシャルが得られる。さらに、より簡単な組付けも可能となる。このことは本発明によれば、当該燃料噴射装置が、ピエゾアクチュエータにより操作される、外側に向かって開く弁ニードルを有することにより達成される。さらに、第1の貫通開口を備えた弁ボディおよびこの弁ボディに結合された、第2の貫通開口を備えた保持ボディが設けられている。弁ニードルはこの場合、これら両貫通開口内に配置されている。弁ボディは弁座の他に、弁ニードルを案内する第1の案内範囲をも備える。この場合、第1の貫通開口は弁ボディに、この第1の貫通開口がアンダカット部を有しないように設けられている。言い換えれば、この第1の貫通開口内に溝状の切欠き等が存在しないように細長い貫通開口が形成されている。これにより、第1の貫通開口は一方の側から、たとえば多段式の穿孔法によって迅速にかつ廉価に製作され得る。さらに、有利には弁座と、弁ニードルの案内範囲も、1回のクランプもしくは1回のチャッキングで第1の貫通開口の片側から研削加工され得る。この場合、特に手間のかかる両側からの研削加工プロセスを回避することができる。
【0004】
請求項2以下には、本発明の有利な改良形が記載されている。
【0005】
さらに有利な構成では、当該燃料噴射装置が、保持ボディ内に配置された、第2の案内範囲を備えたブッシュを備え、この第2の案内範囲に弁ニードルが案内されている。第2の案内範囲は、好ましくは当該燃料噴射装置の乾いた範囲、すなわち乾範囲に配置されているので、このために耐食性の材料が使用されなくて済む。
【0006】
さらに別の有利な構成では、当該燃料噴射装置が、当該燃料噴射装置の、燃料で充填された範囲を、燃料不含の乾範囲からシールする波形ベローズを備える。この場合、波形ベローズの第1の端部は、直接に弁ニードルに配置されている。これにより、構成部分点数を減少させることができる。なぜならば、弁ニードルには、波形ベローズを固定するための付加的なリング等が設けられなくて済むからである。波形ベローズはさらに有利には、単層の金属材料から製造されており、これにより波形ベローズは特に廉価となる。さらに別の有利な構成では、波形ベローズの第2の端部が、前記保持ボディに配置された前記ブッシュに固定されている。したがって、既に構成部分「弁ニードル」、「波形ベローズ」および「ブッシュ」の前組立てを行うことが可能であり、その場合、これらの構成部分を構成アッセンブリとして当該燃料噴射装置内へ組み付けることができる。
【0007】
さらに別の有利な構成では、当該燃料噴射装置が戻しエレメントを備え、該戻しエレメントは前記保持ボディに支持されている。戻しエレメントは好ましくは円筒形ばねである。戻しエレメントはさらに別の有利な構成では、当該燃料噴射装置の乾いた範囲、すなわち乾範囲に配置されている。さらに別の有利な構成では、戻しエレメントが、皿形エレメントに支持されており、この皿形エレメントは弁ニードルに固定されている。皿形エレメントは弁ニードルの噴射側とは反対の側の端部に配置されていると有利である。
【0008】
特に簡単でかつ迅速な組付けのためには、前記弁ボディが第1の接触面を有し、前記保持ボディが第2の接触面を有する。第1、第2の両接触面は互いに接触して、当該燃料噴射装置の中心軸線に対して直角に配置されている。これにより、弁ボディと保持ボディとの間の面状の当付けが達成され、これにより両構成部分の簡単でかつ確実な結合が可能となる。特に有利な構成では、保持ボディおよび/または弁ボディが、組付けを一層簡単にするためにセンタリングつばを有する。
【0009】
本発明のさらに別の有利な構成では、前記弁ボディが、当該燃料噴射装置の軸方向において、前記保持ボディの長さよりも小さく形成された長さを有する。弁ボディの長さはこの場合、保持ボディの長さの1/2よりも大きな長さに相当する分だけ保持ボディの長さよりも小さく形成された長さ、すなわち保持ボディの長さの1/2よりも小さな長さを有すると有利である。すなわち、この場合、弁ボディの長さと保持ボディの長さとの差は、保持ボディの長さの1/2よりも大きいわけである。
【0010】
さらに別の有利な構成では、前記弁ニードルが第3の案内区分を有する。この第3の案内区分は第1の案内区分と共に1つの共通の案内範囲に沿って弁ボディに案内される。弁ボディに設けられた案内範囲は、ある程度の軸方向長さにわたって形成されているので、弁ニードルに設けられた両案内区分は前記案内範囲に沿って案内される。
【0011】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該燃料噴射装置が円筒環状の流れ範囲を備え、該円筒環状の流れ範囲は弁ボディに設けられた前記第1の案内範囲と燃料出口との間に配置されている。この場合、前記円筒環状の流れ範囲の横断面は、燃料出口に設けられた円筒環状の流出面の約2倍、好ましくは正確に2倍の大きさに形成されている。本発明における円筒環状の流れ範囲は、弁が開弁された状態において燃料流を安定化させること、つまり連続的な燃料流を形成することを可能にする。なぜならば、第1の案内範囲が設けられることに基づき、燃料流の軽度の渦流形成が発生し得るからである。この渦流形成は円筒環状の流れ範囲において絞られ得る。燃料出口における流出面は、円筒環状の流れ範囲の横断面の約半分の大きさに形成されているので、出口においてさらに絞りが行われ、これにより噴霧の正確に規定された形状が得られる。
【0012】
さらに別の有利な構成では、前記円筒環状の流れ範囲の長さは、前記円筒環状の流れ範囲の幅の約2〜5倍、好ましくは4倍の長さに形成されるように設定されている。この場合、円筒環状の流れ範囲の幅とは、この円筒環状の流れ範囲における弁ボディの貫通開口に対する弁ニードルの半径方向間隔として規定されている。これにより、円筒環状の流れ範囲が、開弁された弁において燃料流の所望の安定化を得るために十分な長さに形成されることが確保され得る。
【0013】
以下に、本発明のさらに別の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態による燃料噴射装置を示す概略的な断面図である。
【
図2】噴射過程時における前記燃料噴射装置の、さらに別の拡大された断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態による燃料噴射装置を示す概略的な断面図である。
【0015】
発明の実施形態
以下に、
図1および
図2につき、本発明の第1実施形態による燃料噴射装置1を詳しく説明する。
【0016】
図1から判るように、燃料噴射装置1はピエゾアクチュエータ2を有する。このピエゾアクチュエータ2は、外側へ向かって開くタイプの弁ニードル3に結合されている。弁ニードル3は一体の構成部分であり、この一体の構成部分は弁ボディ4および保持ボディ5内に配置されている。この場合、弁ボディ4は第1の貫通開口40を有し、保持ボディ5は第2の貫通開口50を有する。弁ボディ4には、弁座13が配置されており、この弁座13には、閉弁された状態で弁ニードル3が接触している。弁座13に隣接して、第1の貫通開口40内には、弁ニードル3を案内する第1の案内範囲11が配置されている。弁ニードル3はさらに、第2の案内範囲12に案内されている。この第2の案内範囲12はブッシュ6の内周面に設けられている。この範囲において、弁ニードル3は第2の案内区分32を有する。念のため付言しておくと、第1の案内区分31および第2の案内区分32ならびに第1の案内範囲11および第2の案内範囲12は精密加工法によって加工されていて、これにより卓越した滑り能力を有している。ブッシュ6は溶接結合部16によって保持ボディ5に結合されていて、部分的に保持ボディ5内に挿入されている。
【0017】
燃料噴射装置1はさらに波形ベローズ9を有する。この波形ベローズ9は単層の金属材料から製造されている。
図1から判るように、波形ベローズ9の第1の端部9aは弁ニードル3に被せられて、溶接結合部14によって直接に弁ニードル3に溶接されている。波形ベローズ9の、反対の側の第2の端部9bは、溶接結合部15によってブッシュ6に溶接されている。この場合、ブッシュ6は、波形ベローズ9の第2の端部9bを確実に取り付けるために、小さな段部を有する。波形ベローズ9はインジェクタを、燃料が収容されている濡れた範囲、すなわち濡れ範囲20と、燃料不含の乾いた範囲、すなわち乾範囲21とに分割している。
【0018】
燃料噴射装置1はさらに戻しばね7を有する。この戻しばね7の一方の端部は保持ボディ5に支持されていて、他方の端部は皿形ばね受け8に支持されている。皿形ばね受け8は溶接結合部17によって直接に弁ニードル3に固定されている。これにより、弁ニードル3には、弁座13における噴射側を起点として、まず第1の案内区分31、次いで波形ベローズ9により提供されたシール範囲、そして引き続き第2の案内区分32が形成されている。次いで、第2の案内区分32に続いて、戻しばね7が弁ニードル3に作用している。
【0019】
さらに
図1から判るように、符号10によりフィルタが示されている。このフィルタ10を通じて、燃料は、矢印Aにより示したように供給される。次いで燃料は、波形ベローズ9と弁ニードル3の前側の範囲とに沿って弁座13にまで案内される。この場合、弁ニードル3では、第1の案内区分31の範囲に複数の切欠き33が設けられており、これによって燃料は直接に弁座13に到達する。
【0020】
迅速な組付けのためには、弁ボディ4に、さらにセンタリングつば42が形成されている。
図1から判るように、このセンタリングつば42は、保持ボディ5の第2の貫通開口50内に導入されている。この場合、さらに弁ボディ4には第1の接触面41が、保持ボディ5には第2の接触面51がそれぞれ形成されている。第1、第2の両接触面41,51は、それぞれ軸方向X−Xに対して直角に向けられている。これにより、弁ボディ4と保持ボディ5との間には、平坦な当付け面が得られるので、弁ボディ4と保持ボディ5との間の結合を溶接結合部18によって形成することができる。
【0021】
さらに
図2から判るように、弁ボディ4では第1の案内範囲11と燃料出口61との間に円筒環状の流れ範囲62が配置されている。円筒環状の流れ範囲62はこの場合、弁ニードル3と弁ボディ4に設けられた第1の貫通開口40との間に形成されている。円筒環状の流れ範囲62はこの場合、環状面C(L×半径方向間隔C)を有する。さらに
図2から判るように、弁が完全に開弁された状態において、弁ニードル3と弁座13との間には流れ方向に対して直角な環状面D(弁座13の長さ×間隔D)が存在する。この場合、この環状面Dは環状面Cのほぼ半分の大きさに形成されている。さらに、円筒環状の流れ範囲62の長さLは、この円筒環状の流れ範囲62の幅の約4倍の大きさに形成されている。円筒環状の流れ範囲62の幅とは、弁ニードル3と、この円筒環状の流れ範囲62における第1の貫通開口40の壁面との間の半径方向間隔である。したがって、円筒環状の流れ範囲62を設けることによって、弁が完全に開弁された状態において、低減された渦流形成を有する改善された流れを達成することができるので、
図2において「S」により示した噴霧を、規定された通りに噴射させることができる。弁ニードル3には、さらに円筒環状の流れ範囲62への移行部のところで半径Rが形成されている。
【0022】
本発明によるインジェクタの機能は以下の通りである。噴射を行いたい場合、ピエゾアクチュエータ2が作動させられる。これにより、弁ニードル3は矢印Bの方向に運動させられて、弁座13から持ち上げられる。これによって燃料は開放されたインジェクタによって噴射され得る。弁ニードル3の運動は、弁ニードル3の行程によってプリロード(予荷重)をかけられる戻しばね7のばね力に抗して行われる。噴射を再び終了させたい場合には、ピエゾアクチュエータ2が再び作動停止させられ、インジェクタは、プリロードをかけられた戻しばね7によって自動的に再び、
図1に示した初期位置へ戻され、弁ニードル3は弁座13にしっかりと接触して、公知の形式で弁座13をシールする。
【0023】
したがって、本発明によれば、公知先行技術におけるよりも特に単純化されかつ廉価な構造を有する、外側に向かって開くタイプのインジェクタを提供することができる。さらに
図1から判るように、軸方向X−Xにおける弁ボディ4の長さL1は、軸方向X−Xにおける保持ボディ5の長さL2よりも小さく形成されている。したがって、短くてかつ単純に成形された弁ボディ4を提供することができる。この場合、弁ボディ4に設けられた第1の貫通開口40は、アンダカット部なしに形成されている。これにより、特にこの貫通孔を極めて簡単に製作することができる。さらに、弁ボディ4に設けられたシールシートを形成する弁座13と、第1の案内範囲11とが直接に互いに隣接しているので、これらの面の製作も、1回のクランプもしくは1回のチャッキングで同じ側から行うことができる。したがって、公知先行技術の場合のように弁ボディ4に2つの別個の案内面を加工する必要はないので、弁ボディ4の製作が著しく高価になることはない。本発明によれば、弁ボディ4の、保持ボディ5に向けられた側を、旋削加工によって廉価に製作することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、皿形ばね受け8を、適当な位置で弁ニードル3に固定することにより、戻しばね7の閉鎖力を簡単に調節することができる。さらに
図1から判るように、波形ベローズ9は完全に保持ボディ5内に配置されている。このような配置により、波形ベローズ9を単層の金属エレメントとして廉価に設けることが可能となる。なぜならば、保持ボディ5内には、波形ベローズ9を配置するための十分なスペースが存在しているからである。特にこれにより、軸方向X−Xにおいて比較的長尺に形成された波形ベローズ9を使用することができる。これにより、この波形ベローズ9は、この波形ベローズ9に作用する曲げ負荷を十分に受け止めるために多数の波形部を有することができる。本発明のさらに別の利点は、本発明によれば、軸方向X−Xにおいて同じく増大された長さを有するブッシュ6を使用することできることにある。これにより、保持ボディ5に対する溶接結合部と、第2の案内区分32との間の間隔を、より大きく設計することができる。これにより、ブッシュ6を熱調質することが可能となる。なぜならば、溶接過程によって案内範囲に硬度低下が生ぜしめられないからである。熱調質されたブッシュはこの場合、特に横方向力が弁ニードル3に作用しても、ほとんど摩耗を受けない。皿形ばね受け8は単純な深絞り加工部品として極めて廉価に製作可能である。この場合、特に皿形ばね受けに設けられるばねセンタリングつばを不要にすることができる。
【0025】
したがって、公知先行技術に比べて、本発明によるインジェクタは多数の改善点を有し、これらの改善点は全体的にインジェクタ製造時における著しいコスト節約を可能にする。特に、アンダカット部を有しない弁ボディ4を設けることにより、製作コストは著しく低下される。
【0026】
以下に、
図3につき、本発明の第2実施形態による燃料噴射装置1を詳しく説明する。この場合、第1実施形態の場合と同一の部分もしくは同一機能を有する部分は、第1実施形態の場合と同じ符号で示されている。
【0027】
第1実施形態とは異なり、第2実施形態の燃料噴射装置は弁ニードル3に第3の案内区分34を有する。
図3から判るように、この第3の案内区分34は第1の案内区分31に隣接して配置されている。第3の案内区分34では、弁ニードル3が第1の案内区分31の場合と同様に弁ボディ4に案内される。このためには、弁ボディ4の第1の貫通開口40に設けられた第1の案内範囲11が軸方向X−Xにおいて延長されている。これにより、たしかに第1の貫通開口40には延長された第1の案内範囲11が設けられなければならないが、しかし弁ニードル3は特に弁座13の近傍で中心軸線に合わせて一層良好に位置調整される。したがって、当該装置の開弁された状態において、弁ニードル3と弁座13との間のシートギャップが全周にわたって一層均一に形成され得るようになり、これにより噴射された燃料噴霧も、全周にわたって一層均一に形成されるようになる。しかも、弁ボディ4に設けられた第1および第3の案内範囲31,33の小さな間隔により、これらの案内範囲は第1実施形態の場合と同様に1回のクランプもしくは1回のチャッキングで弁座側から廉価に研削加工され得る。第1実施形態に対する別の相違点は、弁ボディ4と保持ボディ5との間の結合にある。
図3から判るように、弁ボディ4にセンタリングつば42が設けられていると同時に、保持ボディ5にも、センタリングつば52が設けられている。この場合、センタリングつば42とセンタリングつば52との間には、すき間嵌めまたはプレス嵌めを設けることができる。弁ボディ4と保持ボディ5との間の溶接結合部18の形成時では、特に保持ボディ5のセンタリングつば52の方が、半径方向でさらに内側に位置する弁ボディ4のセンタリングつば42よりも著しく熱くなる。なぜならば、保持ボディ5のセンタリングつば52は、弁ボディ4のセンタリングつば42に比べて肉薄に形成されているからである。したがって、これらの構成部分が冷却されると、保持ボディ5のセンタリングつば52の方が弁ボディ4よりも大きく収縮する。これにより、弁ボディ4は、保持ボディ5に設けられた軸方向の接触面51に引き寄せられ、したがって極めて正確に自動的に位置調整される。溶接個所は両接触面41,51から軸方向X−Xにおいて比較的大きく遠ざけられているので、周面に沿った溶接ひずみ差が生じて、保持ボディ5に対する弁ボディ4の、非軸方向の位置調整に影響を及ぼさないか、またはたとえ影響を及ぼしたとしても極めて僅かな程度であるに過ぎない。