特許第5866097号(P5866097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5866097
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】吸着具およびピッキング装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20160204BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B25J15/06 G
   B25J15/08 C
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-51056(P2012-51056)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-184251(P2013-184251A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】渡 研司
(72)【発明者】
【氏名】吉松 直志
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−172706(JP,U)
【文献】 特開平02−062316(JP,A)
【文献】 特開2004−090205(JP,A)
【文献】 実開昭57−134205(JP,U)
【文献】 実開平06−080610(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0130884(US,A1)
【文献】 特開昭60−180796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引圧力を付与する吸引管路と、
前記吸引管路からの吸引圧力によって、吸着対象物と対向して、前記吸着対象物を吸着する吸着面と、
前記吸着面の吸着対象物側に突出して設けられる接触部と、を備え、
前記接触部は、前記吸引管路からの吸引圧力の付与方向において、前記吸着面の一部の領域である重複領域において重なり、
前記重複領域の少なくとも一部は、前記吸引圧力の付与方向と略垂直方向に凹状である空隙を有し、
前記空隙は、その体積を可変である、吸着具。
【請求項2】
前記接触部の先端は、前記吸着面よりも前記吸着対象物に近接する、請求項1記載の吸着具。
【請求項3】
前記重複領域は、前記吸着面の外周に沿っている、請求項1又は2記載の吸着具。
【請求項4】
前記吸着面は、略円形もしくは略楕円形であり、
前記接触部は、前記円形もしくは楕円形の円周部分に沿った前記重複領域において、前記吸着面と、吸引圧力の付与方向において重複する、請求項3記載の吸着具。
【請求項5】
前記接触部は、前記吸着面と連通する開口部を有し、
前記吸着面は、前記開口部において、前記吸着対象物を吸着する、請求項1から4のいずれか記載の吸着具。
【請求項6】
前記接触部は、前記開口部以外において、前記吸着対象物の表面と接触する、請求項1から5のいずれか記載の吸着具。
【請求項7】
前記空隙は、前記吸着面および前記接触部で吸着している吸着対象物の変形部分を収容する、請求項1から6のいずれか記載の吸着具。
【請求項8】
前記吸引圧力の付与方向に沿って、吸着対象物に近接する側から、前記接触部、前記空隙、前記吸着面の順番となる、請求項1から7のいずれか記載の吸着具。
【請求項9】
前記開口部は、その面積を可変である、請求項5から8のいずれか記載の吸着具。
【請求項10】
前記吸着面は、格子状の開口部を有する、請求項1からのいずれか記載の吸着具。
【請求項11】
吸引圧力を付与する吸引管路と、
前記吸引管路からの吸引圧力によって、吸着対象物と対向して、前記吸着対象物を吸着する吸着面と、
前記吸着面の外周に沿って設けられるリング状の接触部と、を備え、
前記吸着面は、格子状の開口部を有し、
前記接触部は、前記吸着対象物に対して、前記吸着面より突出し、
前記接触部は、リング状に沿った凹部を、前記吸着面と前記接触部との間に形成し、
前記凹部は、その体積を可変である、吸着具。
【請求項12】
前記吸着対象物は、袋物である、請求項1から11のいずれか記載の吸着具。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか記載の吸着具と、
前記吸引管路に接続する吸引装置と、をそなえる、ピッキング装置。
【請求項14】
前記吸着対象物の側面を挟持する把持部を更に備える、請求項13記載のピッキング装置。
【請求項15】
前記吸着対象物に隣接する物品を下方向に抑える抑え部を更に備える、請求項13又は14記載のピッキング装置。
【請求項16】
前記吸着具が備える前記吸引管路と、前記吸引装置とを接続する管路を更に備え、
前記吸引管路は、前記管路と上下移動可能に嵌合し、
前記吸着具は、前記吸引装置による吸引圧力によって、前記管路に対して上下移動する、請求項13記載のピッキング装置。
【請求項17】
前記管路は、前記吸着具を下降させて、前記吸着面を前記吸着対象物に接触させ、
次いで、前記吸引装置は、吸引圧力を前記吸着面に付与し、前記吸着具は、前記吸着対象物を吸着し、
次いで、前記吸引装置は、吸引圧力によって前記吸引管路を前記管路に対して上昇させることで、前記吸着具を上昇させる、請求項16記載のピッキング装置。
【請求項18】
請求項16記載のピッキング装置を用いる吸着対象物のピッキング方法であって、
前記吸着具を下降させて、前記吸着面を前記吸着対象物に接触させるステップと、
前記吸引装置が、吸引圧力を前記吸着面に付与して、前記吸着具に前記吸着対象物を吸着させるステップと、
前記吸引装置が、吸引圧力によって吸引管路を前記管路に対して上昇させるステップと、
前記吸引管路の上昇に合わせて、前記吸着対象物を上昇させて移動させるステップと、を備える、吸着対象物のピッキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や流通センターなどにおける製品や商品の運搬や分類において、製品や商品をピッキングする際に商品へ吸着する吸着具およびピッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な事業分野、商品分野においては、それぞれに対応した工場において、種々の製品や商品が製造される。半完成状態の製品や商品は、製造工程における次の工程に運搬される必要がある。完成状態の製品や商品は、最終的にダンボールや専用のケースに詰められて出荷される。このため、工場や流通センターは、製造ライン以外に、製品や商品の分類や詰め込みを行って製品や商品を移動させる運搬ラインを必要とする。運搬ラインは、半完成の製品や商品を次の工程に移動させたり、完成した製品や商品を出荷状態に移動させたりする。
【0003】
運搬ラインが、製品や商品を次の工程や出荷状態に移動させる際には、製品や商品の分類を行ったり、所定数の製品や商品を段ボール箱やケースに詰め込んだりする必要がある。このため、運搬ラインは、複数の製品や商品から、一つ一つの製品や商品をピッキングする必要を有している。
【0004】
ここで、製品や商品は、様々である。運搬ラインは、製品や商品の配送先、アイテム数、品種などのパラメータに基づいて、様々な製品や商品を効率的に分類する必要がある。一つのダンボール箱やケースには、異なる品種の製品や商品が詰め込まれる必要があることもあるからである。このような様々なパラメータに対応して、複数の製品や商品を正確に分類するには、人的作業が適しているが、人件費や効率の問題がある。
【0005】
ここで、製品や商品の出荷のための運搬ラインの場合は、個々の製品や商品の分類、分類後の製品や商品の運搬、分類された製品や商品の箱詰め、箱の集積、パレットへの積載などの工程を含む。これらそれぞれの工程は、他の工程と独立しているが、運搬ラインの前半工程である製品や商品の分類においては、取り扱うべき製品や商品の個数が多い。これに対して、運搬ラインの後半工程である、製品や商品の箱詰めやパレットへの積載においては、取り扱うダンボール箱の個数は、前半工程で取り扱う製品や商品の個数より相対的に少なくなる。
【0006】
運搬ラインでの全ての工程を含む流れ作業を、自動化して効率よく進めるためには、前半工程で取り扱う製品や商品の個数に対応した、分類や運搬作業が必要となる。すなわち、個々の製品や商品を、高速かつ高精度にピッキングする必要がある。前半工程でのピッキング作業が遅かったり、作業エラーが生じたりすると、運搬ラインの後半工程での作業速度を遅くしたり作業を止めたりする必要が生じるからである。
【0007】
このように、製造工程の途中や、製造工程後の出荷前作業において必要となる運搬ラインでは、個々の製品や商品を、正確かつ高速にピッキングすることが求められる。個々の製品や商品が正確かつ高速にピッキングされることで、製造および出荷作業が高速化され、様々な製造現場や流通現場での生産性が向上する。
【0008】
ここで、運搬ラインにおいては、ピッキング装置が、ケースに入った製品や商品、コンベアを流れる製品や商品のそれぞれを、ピッキングする。例えば、ピッキング装置は、あるケースに入った複数の製品や商品の中から一つをピッキングして、次の工程に移動させる。あるいは、ピッキング装置は、コンベアを流れる複数の製品や商品の中から一つをピッキングして、ケースや箱に詰め込む。
【0009】
このように、ピッキング装置は、複数の製品や商品の中から、対象となる一つを選択して、確実かつ高速にピッキングする必要を有している。特に、ピッキング装置が掴む商品や製品は、形状、内容、外装物が様々であるので、掴みにくいことも多い。このため、ピッキング装置は、吸引圧力を用いる吸着具を用いて、製品や商品を吸着してピッキングすることが多い。製品や商品の外周に吸着具を押し当てて、吸着具に付与される吸引圧力によって、ピッキング装置は、製品や商品を取り出し可能とする。吸着具には、製品や商品を確実に吸着する能力が求められている。
【0010】
このようなピッキング装置やピッキング装置に用いられる吸着具の技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−16378号公報
【特許文献2】特開2000−296489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1は、空気吸引孔1を有する吸着具本体2の下部に、硬質弾性材料製環状体3を固定し、その硬質弾性材料製環状体3よりも下方に突出する軟質弾性材料製環状体4を、硬質弾性材料製環状体3の外側において吸着具本体2に直接または間接的に固定する吊上運搬用真空吸着具を開示する。
【0013】
特許文献1は、硬質部材と軟質部材とをあわせた吸着部分によって、対象物を吸着する吸着具を開示する。このような吸着具によって、表面に凸凹がある対象物であっても、確実に吸着できることを目的としている。
【0014】
しかしながら、硬質部材と軟質部材とをあわせた吸着部分を有しているとしても、対象物が袋物である場合には、特許文献1に開示される吸着具は、袋物の対象物を確実に吸着できない問題を有している。菓子、パン、食品、袋入り部品などは、その外形は袋である。袋は、内部に空気や不活性ガスを収容しているので、外圧によって容易に変形する。
【0015】
このため、吸着具によって袋の表面が吸着される場合でも、袋表面にしわや折れ曲がりが生じてしまう。しわや折れ曲がりが、吸着具の吸着面から吸着具の外側にまで連通していると、吸着面の一部が、外気と連通してしまうことになる。吸着面の一部が、吸着対象物である袋物で覆われていない状態であると、吸引面積が減少したり、吸引方向に外気が入ったりして、吸着力が弱まる。吸着力が弱まった状態であると、何らかの要因で、吸着具は、吸着対象物を落下させてしまうこともある。吸着具が、吸着対象物を吸着した後で吸着対象物を装置の一部に衝突させたり、吸着対象物を移動させる勢いを与えたりすることで、吸着具は、吸着対象物を落下させてしまう。
【0016】
特許文献1に開示される吊上運搬用真空吸着具は、硬質部材と軟質部材との組み合わせによる吸着具に過ぎないので、吸着対象物が袋物である場合には、吸着面と外気を連通させるしわや折れ曲がりを生じさせることを防止できない。このため、特許文献1に開示される吊上運搬用真空吸着具は、一定形状を維持できる吸着対象物以外を、確実に吸着して吊上げることは困難である。
【0017】
特許文献2は、工作物を吸着するための真空グリッパー10は、負圧ポート14と弾性的な吸盤20と吸盤ホルダー12とを備え、吸盤20は工作物寄りの側に、吸引室26を画成するリップシール22を備え、吸引室26は負圧ポート14に流体接続されている。吸引室26はその中に突出するリブ36,38を備え、リブおよびまたはリップシール22は吸引室26寄りのその面30に、少なくとも1つの溝28を有する真空グリッパーを開示する。
【0018】
特許文献2に開示される真空グリッパーは、リブや溝によって、滑り止め機能を発揮し、対象物を吸着する際のすべりを防止する。
【0019】
しかしながら、一定形状を維持できる吸着対象物ではなく、袋物である場合には、リブや溝による滑り止めがあったとしても、特許文献1の場合と同様の問題を有する。すなわち、特許文献2に開示される真空グリッパーは、袋物を吸着する際に、表面にしわや折れ曲がりを生じさせて、吸着対象物を落下させてしまう可能性を有する。
【0020】
特許文献1、特許文献2のような従来技術は、袋物のように吸着時に容易に変形する吸着対象物を確実に吸着することが難しい問題を有していた。もし、吸着具が、吸着対象物を落下させてしまうと、運搬ラインを停止させる必要が生じ、製造工程や出荷工程での生産性を低下させる問題も生じてしまう。
【0021】
特許文献1、特許文献2に代表される従来技術は、内容物を収容した袋物の吸着が難しかった。このような袋物は、内容物によって全体の厚みが異なることがある。このため、吸着具の高さ(製品や商品が流れるラインからの高さ)が固定されると、袋物の内容物が割れたり袋そのものが破れたりする問題が生じる。特に内容物を外気から遮断された状態に保つために気密性を高めた袋物は、内容物が柔らかくても硬くても上述のように内容物が割れたり袋そのものが破れたりしやすい。
【0022】
すなわち、吸着具には次の3点が要求されている。
(要求1)対象物の高さ・厚みが統一されていなくても、柔軟に対応して拾い上げること。
(要求2)対象物に、変形や亀裂などを起こさないこと。
(要求3)対象物をピッキングした後、移動するための加減速が有っても吸着した物を落とさないこと。
【0023】
このような要求に鑑み、袋物のように外圧で容易に変形してしまう吸着対象物であっても、落としたり破損したりすること無く、確実に吸着できる吸着具およびピッキング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題に鑑み、本発明の吸着具は、吸引圧力を付与する吸引管路と、吸引管路からの吸引圧力によって、吸着対象物と対向して、吸着対象物を吸着する吸着面と、吸着面の吸着対象物側に突出して設けられる接触部と、を備え、接触部は、吸引管路からの吸引圧力の付与方向において、吸着面の一部の領域である重複領域において重なり、重複領域の少なくとも一部は、吸引圧力の付与方向と略垂直方向に凹状である空隙を有し、空隙は、その体積を可変である
【発明の効果】
【0025】
本発明の吸着具は、吸着対象物を吸引圧力によって吸着する際に、袋の一部を接触部の一部に食い込ませることで、袋表面に生じるしわや折れ曲がりを、吸着面にまで到達させない。これにより、吸着具は、袋物のように外圧で容易に変形する吸着対象物を、確実に吸着できる。
【0026】
この確実な吸着の結果、吸着具がピッキング装置に用いられる際に、落下やピッキングミスが生じなくなり、製造工程や出荷工程での生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態1における吸着具の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1における吸着具の正面図である。
図3】本発明の実施の形態1における吸着具の側面図である。
図4】本発明の実施の形態1における吸着対象物を吸着した吸着具の側面図である。
図5】本発明の実施の形態1における吸着対象物が吸着された吸着具の側面図である。
図6】本発明の実施の形態2におけるピッキング装置の模式図である。
図7】本発明の実施の形態2におけるピッキング装置による吸着対象物のピッキングの状態を示す側面図である。
図8】本発明の実施の形態2におけるピッキング装置による吸着対象物のピッキングの状態を示す側面図である。
図9】本発明の実施の形態2におけるピッキング装置による吸着対象物のピッキングの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の発明に係る吸着具は、吸引圧力を付与する吸引管路と、吸引管路からの吸引圧力によって、吸着対象物と対向して、吸着対象物を吸着する吸着面と、吸着面の吸着対象物側に突出して設けられる接触部と、を備え、接触部は、吸引管路からの吸引圧力の付与方向において、吸着面の一部の領域である重複領域において重なり、重複領域の少なくとも一部は、吸引圧力の付与方向と略垂直方向に凹状である空隙を有し、空隙は、その体積を可変である
【0029】
この構成により、吸着具は、吸着面、空隙および接触部によって、袋物などの変形容易な吸着対象物を立体的に吸着する。この構成により、吸着具は、大きさの異なる様々な吸着対象物に、フレキシブルに対応できる。
【0030】
本発明の第2の発明に係る吸着具では、第1の発明に加えて、接触部の先端は、吸着面よりも吸着対象物に近接する。
【0031】
この構成により、吸着具は、接触部と吸着面との間に空隙を形成できる。
【0032】
本発明の第3の発明に係る吸着具では、第1又は第2の発明に加えて、重複領域は、吸着面の外周に沿っている。
【0033】
この構成により、吸着面の外周に沿って、空隙が形成される。
【0034】
本発明の第4の発明に係る吸着具では、第3の発明に加えて、吸着面は、略円形もしくは略楕円形であり、接触部は、円形もしくは楕円形の円周部分に沿った重複領域において、吸着面と、吸引圧力の付与方向において重複する。
【0035】
この構成により、吸着具は、吸着対象物を効率的に吸着できる。
【0036】
本発明の第5の発明に係る吸着具では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、接触部は、吸着面と連通する開口部を有し、吸着面は、開口部において、吸着対象物を吸着する。
【0037】
この構成により、吸着具は、開口部から吸着対象物の変形部分を取り込んで、吸着面での吸い付けと空隙への収容によって、確実に吸着対象物を吸着できる。
【0038】
本発明の第6の発明に係る吸着具では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、接触部は、開口部以外において、吸着対象物の表面と接触する。
【0039】
この構成により、吸着具は、接触部と吸着面との前後の二段階での吸着を行える。
【0040】
本発明の第7の発明に係る吸着具では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、空隙は、吸着面および接触部で吸着している吸着対象物の変形部分を収容する。
【0041】
この構成により、吸着具は、吸着対象物の落下を防止できる。
【0042】
本発明の第8の発明に係る吸着具では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、吸引圧力の付与方向に沿って、吸着対象物に近接する側から、接触部、空隙、吸着面の順番となる。
【0043】
この構成により、吸着具は、立体的な吸着によって、吸着した吸着対象物の落下を防止できる。
【0044】
本発明の第9の発明に係る吸着具では、第5から第8のいずれかの発明に加えて、開口部は、その面積を可変である。
【0045】
この構成により、吸着具は、大きさの異なる様々な吸着対象物に、フレキシブルに対応できる。
【0048】
本発明の第10の発明に係る吸着具では、第1から第のいずれかの発明に加えて、吸着面は、格子状の開口部を有する。
【0049】
この構成により、吸着面は、吸着対象物に吸引圧力を効果的に付与できる。
【0050】
本発明の第11の発明に係る吸着具は、吸引圧力を付与する吸引管路と、吸引管路からの吸引圧力によって、吸着対象物と対向して、吸着対象物を吸着する吸着面と、吸着面の外周に沿って設けられるリング状の接触部と、を備え、吸着面は、格子状の開口部を有し、接触部は、吸着対象物に対して、吸着面より突出し、接触部は、リング状に沿った凹部を、吸着面と接触部との間に形成し、凹部は、その体積を可変である、
【0051】
この構成により、吸着具は、吸着面、空隙および接触部によって立体的に吸着対象物を吸着できる。この結果、吸着具は、強い吸着力を発揮できる。
【0052】
本発明の第12の発明に係る吸着具は、第1から第11のいずれかの発明に加えて、吸着対象物は、袋物である。
【0053】
この構成により、吸着具は、袋物のように吸着が困難な吸着対象物でも、確実に吸着できる。
【0054】
本発明の第13の発明に係るピッキング装置は、第1から第12のいずれかの吸着具と、吸引管路に接続する吸引装置と、を備える。
【0055】
この構成により、ピッキング装置は、吸着面、空隙、接触部によって、吸着対象物を確実にピッキングできる。
【0056】
本発明の第14の発明に係るピッキング装置では、第13の発明に加えて、吸着対象物の側面を挟持する把持部を更に備える。
【0057】
この構成により、ピッキング装置は、更に確実に吸着対象物をピッキングできる。
【0058】
本発明の第15の発明に係るピッキング装置では、第13又は第14の発明に加えて、吸着対象物に隣接する物品を下方向に抑える抑え部を更に備える。
【0059】
この構成により、ピッキング装置は、吸着対象物に隣接する物品の悪影響を防止できる。
【0060】
本発明の第16の発明に係るピッキング装置では、第13の発明に加えて、吸着具が備える吸引管路と、吸引装置とを接続する管路を更に備え、吸引管路は、管路と上下移動可能に嵌合し、吸着具は、吸引装置による吸引圧力によって、管路に対して上下移動する。
【0061】
この構成により、ピッキング装置は、吸着対象物の高さや厚みにフレキシブルに対応して、吸着対象物を破損することなくピッキングできる。
【0062】
本発明の第17の発明に係るピッキング装置では、第16の発明に加えて、管路は、吸着具を下降させて、吸着面を吸着対象物に接触させ、次いで、吸引装置は、吸引圧力を吸着面に付与し、吸着具は、吸着対象物を吸着し、次いで、吸引装置は、吸引圧力によって吸引管路を管路に対して上昇させることで、吸着具を上昇させる。
【0063】
この構成により、ピッキング装置は、様々な高さや厚みを有する吸着対象物を、破損等させることなく、ピッキングして別の場所に移動させることができる。
【0064】
本発明の第18の発明に係るピッキング方法は、第16の発明のピッキング装置を用いる吸着対象物のピッキング方法であって、吸着具を下降させて、吸着面を吸着対象物に接触させるステップと、吸引装置が、吸引圧力を吸着面に付与して、吸着具に吸着対象物を吸着させるステップと、吸引装置が、吸引圧力によって吸引管路を管路に対して上昇させるステップと、吸引管路の上昇に合わせて、吸着対象物を上昇させて移動させるステップと、を備える、吸着対象物のピッキング方法。
【0065】
この構成により、ピッキング方法は、吸着対象物の高さや厚みに係らず、吸着対象物を破損することなくピッキングして別の場所へ移動させることができる。
【0066】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0067】
(実施の形態1)
【0068】
(全体概要)
まず、本発明の吸着具の全体概要について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における吸着具の斜視図である。吸着具が吸着物を吸着する面を表に見せている。吸着部1は、吸引管路2、吸着面3、接触部4を備える。吸着具1は、図1で表に見せている吸着面3および接触部4の表面において、吸着対象物を吸着する。
【0069】
吸引管路2は、筒状の形状をしており、吸引管路2は、吸着面3を介して、吸着対象物に吸引圧力を付与する。吸引管路2は、例えば吸引空気を吸引管路2の延伸方向に沿って、吸着対象物に付与する。すなわち、吸引管路2は、吸着面3の面方向に交差する方向(特には略垂直方向)に、吸引圧力を付与する。吸引管路2の先端に、吸着面3が設けられる。吸着面3は、吸着物と対向して、吸引管路2からの吸引圧力によって、吸着対象物を吸着する。図1では、吸着面3は、メッシュ状となっており、メッシュ状の開口部から吸引圧力を吸着対象物に付与する。接触部4は、吸着面3において吸着対象物側に突出して設けられ、吸着対象物の一部と接触する。
【0070】
接触部4は、吸引管路2からの吸引圧力の付与方向において、吸着面3の一部の領域である重複領域で重複する。図2は、本発明の実施の形態1における吸着具の正面図である。図2は、吸着具1を吸着面3側から見た状態を示している。吸着対象物は、この吸着面3と接触部4とによって吸着されつつ固定される。図2において、接触部4は、吸着面3の一部と重なる。斜線で示された領域が、重複領域6である。要は、接触部4は、吸着面3の前方(吸着対象物側)で、吸着面3の一部と重なるようにして、吸着面3の一部を隠している。
【0071】
また、この重複領域6の少なくとも一部は、吸引管路2による吸引圧力の付与方向と略垂直方向に、凹状の空隙を有する。図3は、本発明の実施の形態1における吸着具の側面図である。図3は、吸着具1における吸着面3近辺を透視状態として示している。側面図からわかる通り、接触部4は、吸着面3の外周に沿うようにして設けられており、吸着面3の先端に突出している。また、接触部4は、吸着面3の前方に設けられるので、吸着面3の一部である重複領域6で重なっている。この重複領域6の少なくとも一部は、図3に示されるように空隙7を有している。空隙7は、接触部4から吸着面3に至る間に、凹状に凹むことで形成される。このとき、空隙7は、接触部4がえぐれるようにして形成される(すなわち、矢印Aで示される吸引圧力方向に略垂直方向に凹むようにして、空隙7が形成される)。
【0072】
従来技術の吸着具は、この接触部4を有していないか、接触部4を有していても、接触部4は吸着面3の外周に突出して設けられるだけで空隙7は設けられない。本発明の吸着具1は、この接触部4や空隙7を有する。
【0073】
図1図3で示される吸着具1は、筒状の吸引管路2の先端が末広がりに広がっている形状を有している。この広がった先端にメッシュ状の吸着面3が設けられ、吸着面3の外周に沿って接触部4が突出している。また、接触部4と吸着面3の間に、接触部4の裏面に隠れるようにして空隙7が備わる。空隙7は、吸引圧力の付与方向に略垂直方向に凹むようにして設けられる。この図1図3で示される吸着具1の形状は一例であり、同様の機能を果たすことができれば、他の形状を有してもよい。
【0074】
吸着具1は、以上のような構成を有する。
【0075】
(吸着具による吸着)
次に、吸着具1による、吸着対象物の吸着を説明する。図4は、本発明の実施の形態1における吸着対象物を吸着した吸着具の側面図である。吸着具1は、その先端で吸着対象物100を吸着する。ここで、吸着対象物100は、内容物を放送した袋物である。まず、吸着具1は、その先端である吸着面3に吸着対象物100をあてがう。例えば、吸着具1がコンベアラインに置かれている吸着対象物100に対向して近づけられ、近づけられた後で吸着面3が吸着対象物100にあてがわれる。
【0076】
吸着管路2は、矢印Aに沿った吸引空気を付与することで、吸着対象物100に吸引圧力を付与できる。吸引空気は、吸着面3に付与されるので、メッシュ状の開口部から外部に対して空気の圧力が付与される。吸着対象物100は、最初に吸着面3に接触するので、このメッシュ状の開口部から吸い上げられる空気によって、吸着対象物100は、吸着面3に吸いつけられる。更に、吸引圧力によって吸着対象物100は、吸着面3全体にすいつけられるようになる。
【0077】
吸着面3との吸着面積が広がるにつれて、吸着対象物100である袋は変形を始める。袋が変形をすると、図5のように、袋の一部が空隙7に入り込むようになる。図5は、本発明の実施の形態1における吸着対象物が吸着された吸着具の側面図である。吸着対象物100の袋が変形をして、変形した袋の一部が空隙7に入り込んだ状態を示している。空隙7に袋の一部が変形して入り込むことで、吸着対象物100の外側の一部は、接触部4に接触するようになる。
【0078】
図5から明らかな通り、吸着対象物100は、吸着面3、空隙7、接触部4の順序で接触しつつ吸着されている。すなわち、吸着対象物100は、吸着面3において平面的に吸着されているだけでなく、空隙7および接触部4と合わせて立体的に吸着されている。吸着具1は、このように、袋物である吸着対象物100が、外側である袋の変形を利用して、吸着対象物100を立体的に吸着できる。
【0079】
空隙7は、変形した吸着対象物100の一部を収容することで、吸着対象物100にとっては、接触部4が引っ掛かりとなる。この結果、次の作用が生じる。
(作用1)吸着対象物100は、吸引圧力方向と略垂直方向に引っ掛かりを生じさせることで、吸引圧力の付与方向に対する固定力を増加させる。
(作用2)吸引圧力方向と略垂直方向に引っ掛かりが生じることで、吸着対象物100は、吸引圧力方向で外れにくくなる。
(作用3)空隙7に吸着対象物100の一部が収容されることで、吸着面3と吸着対象物100との接触面が広がり、吸着対象物100において生じるしわが吸着面3と連通しにくくなる。
(作用4)作用3の結果、吸着面3と吸着対象物100とを連通するしわによる空気漏れが生じなくなり、吸着対象物100に対する吸着面3での吸着力が高まる。
【0080】
ここで説明した作用1〜4によって、吸着対象物100は、吸着具1から外れにくくなり、強い固定力で吸着される。吸着具1は、このように、吸着面3、空隙7、接触部4の三段階での立体的な吸着や接触によって、袋物のように変形しやすい吸着対象物100を、強い固定力で吸着できる。もちろん、袋が内容物を収容する袋物以外であっても、変形しやすい商品や製品であれば、本発明の吸着具1は、好適に吸着できる。また、吸着具1は、内容物を収容する袋を変形させつつ強い吸着を行うので、袋が収容する内容物を変形させたり破壊したりすることもない。
【0081】
吸着具1は、吸引装置と吸引管路2に接続する管路と接続される。このとき、吸引管路2は、管路内部に嵌合されて吸引装置からの吸引圧力によって上下可能である。この上下によって、吸着具1の吸着面3と吸着対象物100との距離が調整される。この距離の調整によって、吸着対象物100の高さや厚みが統一されていなくても、吸着具1を備えるピッキング装置は、吸着対象物100をコンベアに押し付けたりすることなく拾い上げることができる。
【0082】
このような吸着具1あるいは吸着具1が使用されるピッキング装置は、次の要件1〜3を満足できる。
【0083】
(要求1)対象物の高さ・厚みが統一されていなくても、柔軟に対応して拾い上げること。
(要求2)対象物に、変形や亀裂などを起こさないこと。
(要求3)対象物をピッキングした後、移動するための加減速が有っても吸着した物を落とさないこと。
【0084】
これ等の結果、吸着具1は、袋物に代表される変形容易な吸着対象物を、確実に吸着して移動させたり運搬したりできる。
【0085】
次に、各部の詳細について説明する。
【0086】
(吸引管路)
吸引管路2は、吸引圧力を、吸着面3を介して、吸着対象物100に付与する。吸引圧力の例として、吸引空気が付与される。このため、吸引管路2は、バキューム装置や空気吸引装置などに接続されて、吸着面3のメッシュ状の開口部から、空気を吸い込む。この空気の吸い込みによって、吸引管路2は、吸着面3に吸引圧力を付与する。
【0087】
吸引管路2は、バキューム装置や空気吸引装置などと接続されるために、図1などに示す吸引管路2の端部(図1の上方の端部)には、これらの装置と接続する管路が繋がっていてもよい。また、吸引管路2は、金属、合金、樹脂など種々の部材で形成されれば良いが、耐久性や気密性を考慮して、金属や合金で形成されるのが好ましい。
【0088】
吸引管路2は、図1などに示されるように筒状の部材である。また、吸着対象物100に合わせた吸着面3を形成しやすいように、先端は、末広がりに広がっていることも好適である。いわゆる、吸引管路2の先端はスカートを有していることも好適である。もちろん、吸引管路2は、先端まで同一形状を維持して延伸していてもよい。このとき、スカートとなっている部分は、吸引管路2の一部として把握されても良いし、別要素として把握されてもよい。スカートの部分は、筒状の部分と溶接や接着で一体化されてもよいし、予め一体の部材として形成されても良い。
【0089】
吸引管路2は、図4の矢印Aの方向に吸引圧力を付与する。すなわち、吸引管路2は、吸引管路2自身の延伸方向に吸引圧力を付与する。この結果、吸着対象物100は、吸引管路2の延伸方向に沿う圧力によって吸着される。ここで、吸引管路2は、十分な吸引空気を吸着面3に付与するために、側面等の気密性が高いことが好適である。
【0090】
吸引管路2は、吸着具1の外形を形成する要素であるので、吸着面3や吸着対象物100の形状、大きさに合わせて形成されれば良い。特に、吸引管路2は、図1に示されるように、先端部分だけの部材であって、バキューム装置や空気吸引装置と別の管路で接続されることで、吸引管路2の形状、大きさが様々に用意されることが可能である(言い換えれば、吸着具1の形状、大きさが様々に用意される)。例えば、吸着対象物100が大きければ、吸引管路2やこれに繋がる吸着面3も大きくされればよい。あるいは、吸着対象物100の形状によっては、吸引管路2や吸着面3が円形ではなく、角形であってもよい。
【0091】
吸引管路2は、その先端に設けられる吸着面3の開口を通じて、外部から空気を吸引するので、先端に開口部を有する。この開口部に吸着面3が取り付けられる。
【0092】
(吸着面)
吸着面3は、図2に示されるように、メッシュ状の部材である。吸引管路2の開口している先端に、メッシュ状の部材である吸着面3が取り付けられる。この結果、吸着具1の先端が、吸着面3によるメッシュ状の開口を有するようになる。
【0093】
吸着面3は、金属、合金および樹脂などで形成されれば良い。耐久性や強度を考慮すると金属や合金で形成されることが好ましいが、交換容易のために樹脂で形成されることも好適である。
【0094】
また、吸着面3は、種々の形状を有してもよい。方形であったり、角形であったり、円形であったりなどの形状を有してもよい。但し、吸着面3は、様々な形状や大きさを有する吸着対象物100に対する強い吸着力を生じさせるために、略円形もしくは略楕円形であることも好適である。略円形や略楕円形を有することで、吸着対象物100と吸着面3との間にしわができにくくなり、空隙7への吸着対象物100の一部の収容と相まって、吸着具1は、高い吸着力を生じさせるからである。
【0095】
吸着面3は、メッシュ状を有することが好ましい。吸着面3は、空気を吸引する吸引圧力によって吸着対象物100を吸着する。このため、吸着面3が完全に開口していると、吸着対象物100が管路2の内部深くまで到達してしまい、使い勝手が悪くなるからである。あるいは、吸着面3が全く開口していないと当然ながら空気の吸い込みができないので、吸着面3は、吸着対象物100を吸着できない。このため、開口部と閉鎖部とが混在する形状を、吸着面3は有することが好適である。
【0096】
この一例がメッシュ状(格子状)である。メッシュ状であれば、吸着面3は、空気の吸引と吸着対象物100の固定とを両立しやすいからである。もちろん、メッシュ状に限定されるものではなく、空気を吸引する開口部と、吸着対象物100と接触する閉鎖部とが混在する形状であれば、何でも良い。また、メッシュ状である場合には、縦横のメッシュでも良いし、斜めのメッシュでも良い。
【0097】
(接触部)
接触部4は、吸着面3の前方(すなわち吸着対象物側)に突出している。すなわち、接触部4は、接着面3よりも吸着対象物100に近接している。
【0098】
接触部4は、吸着面3から様々な形態で突出すればよい。例えば、接触部4は、吸着面3の中央やその他の場所から突出しても良い。しかしながら、製造の容易性、吸着面3全体の効率的活用を考慮して、接触部4は、吸着面3の外周に沿って突出するのが好適である。すなわち、接触部4は、吸着面3の外周に沿ってリング状に突出して設けられても良い。図1〜3は、吸着面3の外周に沿ってリング状に接触部4が設けられている状態を示している。
【0099】
もちろん、吸着面3の外周に添っていなくても良く、接触部4が吸着面3の内部において設けられても良い。接触部4は、リング状でなく、途中に切れた部分を有する形状を有してもよい。
【0100】
接触部4は、吸着面3と吸着対象物100との間の距離を形成して、空隙7を作り出すものであるので、接触部4は、吸着対象物100と接触する。また、吸着対象物100は、接触部4および接触部4によって形成される空隙7に対して、変形した部分を接触させる。このため、接触部4は、変形した袋を傷つけにくいように、弾性力や変形力のある素材であることが好ましい。例えば、接触部4は、ゴムやスポンジ素材を有していることが好ましい。
【0101】
このため、接触部4は、例えば略円形の吸着面3に対応するOリングのような部材であることも好適である。
【0102】
接触部4は、吸着面3の一部と重複するように重なる。言い換えれば、接触部4は、吸着面3の一部を隠すように設けられる。重複領域6は、図2に示されるようなものである。この場合には、吸着面3の外周に沿って、重複領域6が形成される。もちろん、重複領域6のさらに外側にまで吸着面3が広がっていても良い(この場合には、吸着面3の外周端部ではなく、吸着面3の内部に接触部4が設けられる)。
【0103】
また、接触部4が、図2に示されるように吸着面3の外周に沿って形成される場合には、吸着面3と重なる場合には、接触部4は、吸引圧力の付与方向においてこの重複領域6と重なる。
【0104】
接触部4は、リング状や切れ目のあるリング状などを有することが多いので、接触部4は、吸着面3と連通する開口部41を有する(図1図2に開口部41が示される)。すなわち、吸引圧力方向にそって、吸着面3と開口部41が空気の吸引を行える。一方、重複領域61においては、吸着面3と外部が連通していない。開口部41が存在することで、接触部4が設けられても、開口部41を通じて、吸着面3に付与される吸引圧力が吸着対象物100に到達する。言い換えると、開口部41は、変形する吸着対象物100を取り込んで、吸着対象物100の表面を吸着面3に接触させる。
【0105】
すなわち、開口部41から入り込んだ吸着対象物100の表面の一部は、吸着面3に接触する。接触する表面は、吸引圧力を受ける。一方、開口部41に入り込んだ吸着対象物100の変形した一部は、空隙7に収容される。更に、吸着対象物100の開口部41からはみ出ている部分は、接触部4に接触する。
【0106】
(接触部の変形例)
接触部4は、開口部41を通じて、吸着対象物100と吸着面3とを連通させる。このため、開口部41の大きさによって吸着対象物100と吸着面3との連通面積が決定される。吸着対象物100が大きい場合にはこの連通面積が大きいほうがよく、吸着対象物100が小さい場合にはこの連通面積が小さいほうよい。この連通面積は、開口部41の面積によって決定されるので、開口部41の面積は、吸着対象物100の大きさによって変更されることが好ましい。
【0107】
このため、開口部41は、その面積を可変であることが好ましい。例えば、開口部41は、その開口面積を可変にできる絞りのような部材を有している。この絞りによって、接触部4は、開口部41の開口面積を変更できる。
【0108】
あるいは、接触部4は、開口部41の開口形状を変更できることも可能である。例えば、吸着対象物100の形状によっては、開口部41が方形や角形であることが好ましい場合もある。接触部4は、開口部41の開口形状を、絞り部材などによって変更可能としてもよい。
【0109】
(空隙)
接触部4は、その裏側であって吸着面3との間に空隙7を形成する。空隙7は、重複領域6の一部において、吸引圧力の付与方向と略垂直方向に凹状に凹んだ部分である。このため、接触部4がリング状であれば、空隙7もリング状になる。もちろん、接触部4がリング状であっても、この接触部4の裏面の一部が充填されており、空隙7がリング状とはならないこともありえる。
【0110】
このように、接触部4は、自身の形状に沿った凹部を、吸着面3と接触部4との間に形成する。この凹部が空隙7である。例えば、接触部4が吸着面3と所定の距離を置いて設けられる場合には、この距離に対応する部分が、空隙7となる。
【0111】
空隙7は、吸着対象物100の変形部分を収容する。吸着対象物100は、袋物などの変形可能な物品である。吸着面3によって吸着される際に、接触部4の構造によって吸着対象物100は、変形する。このとき、吸着対象物100の吸引圧力付与方向と略垂直方向に、空隙7が存在する。一方、空隙7の前方には、接触部4が、吸引圧力方向と略垂直方向に突出している。この結果、空隙7は、吸引圧力方向と略垂直方向にポケットを形成する。このため、吸着対象物100の変形部分は、このポケットに逃げるようにして収容される。
【0112】
このように、空隙7が、吸着対象物100の変形部分を収容することで、吸着具1は、上述の通り吸着面3、空隙7および接触部4によって立体的に、吸着対象物100を吸着する。また、空隙7に吸着対象物100の変形部分が収容されることで、この変形部分と接触部4とが嵌合するようになって、吸着対象物100が外れにくくなる。加えて、吸着対象物100の袋に生じるしわが、この空隙7で解消されて吸着面3まで連通しにくくなる。この結果、吸着面3と、吸着面3に接触している吸着対象物100の表面との間に空気の逃げ道が生じにくくなり、吸着力が弱まることが無くなる。この結果、更に吸着力が高まる。
【0113】
また、空隙7が、吸引圧力方向と略垂直方向に吸着対象物100の変形部分を収容することで、吸着具1は、吸着対象物100に対する略垂直方向での吸着力を高めることもできる。この結果、吸着具1が吸着対象物100を吸着した状態で横方向などに移動させる場合でも、吸着具1は、吸着対象物100を落下させにくくなる。
【0114】
(空隙の変形例)
空隙7は、吸着対象物100の変形部分を収容する。この収容によって、吸着具1は、吸着対象物100に対する吸着力を向上させる。このため、吸着対象物100の大きさや特性によって、空隙7が収容する吸着対象物100の変形部分の体積が異なることが好ましい。例えば、吸着対象物100が大きかったり重かったりする場合には、空隙7が収容する変形部分の体積は大きいほうが好ましい。一方、吸着対象物100が小さかったり軽かったりする場合には、空隙7が収容する変形部分の体積は小さいほうが好ましい。
【0115】
収容される変形部分の体積は、空隙7の体積によって決定される。このため、吸着具1が様々な吸着対象物100を、効率的に吸着できるように、空隙7は、その体積を可変であることも好適である。例えば、接触部4は、形状を可変とする充填部材を有しており、この充填部材が空隙7の体積を変更させても良い。もちろん、充填部材は、空隙7の体積だけでなく、その形状を変更させても良い。形状が変更されることでも、吸着対象物100の様々な特性に対応して、吸着力を向上させることが可能となるからである。
【0116】
このように、接触部4の開口部41と同様に、空隙7も、その形状や大きさを変更可能であることは、吸着具1の昨日バリエーションを広げるのに好適である。結果として、吸着具1は、様々な形状や特性の吸着対象物100を、確実に吸着できる。
【0117】
以上、実施の形態1の吸着具1は、様々な商品や製品を、確実に吸着できる。確実に吸着できることで、吸着具1は、様々な商品や製品を、確実にピッキングして移動させることができる。
【0118】
(実施の形態2)
【0119】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明した吸着具1を用いたピッキング装置について説明する。
【0120】
図6は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置の模式図である。図6のピッキング装置50は、実施の形態1で説明した吸着具1を備える。吸着具1は、管路21を通じて吸引装置30と接続される。吸引装置30は、吸引空気を吸引管路2に、吸引圧力として付与する。吸着具1は、この吸引管路2に付与される吸引圧力によって吸着対象物100を吸着する。ピッキング装置50は、管路21を通じて吸引装置30を吸着具1と接続させて、吸着対象物100を、ピッキングできる。例えば、ピッキング装置50は、コンベアラインを流れる商品や製品などであって、特に袋物である吸着対象物100をピッキングする。
【0121】
このとき、実施の形態1で説明した通り、吸着具1は、吸着対象物100を確実に吸着し、横方向などの移動圧力などにも対応できる吸着力を有している。このため、ピッキング装置50が、吸着対象物100を吸着する際に、吸着対象物100が取りこぼされることがない。加えて、ピッキング装置50が、吸着した吸着対象物100を別の位置に移動させる場合にも、吸着具1は、吸着対象物100を落下させることもほとんどない(吸着面3が接触している吸着対象物100の表面に、しわなどによる外部との空気の連通が生じないことで、横方向の圧力が加わっても、吸着面3は、吸着力を弱めることがないので)。
【0122】
このように、実施の形態2におけるピッキング装置50は、吸着した吸着対象物100を確実に吸着すると共に、落下させること無く別の位置に移動させることができる。
【0123】
また、図6に示されるとおり、吸着具1は、吸引装置30と管路21を介して接続される。吸引管路2は、管路21の内部に嵌合しており、上下移動可能である。管路21を通じて吸引装置30より付与される吸引圧力によって、吸引管路2は、管路21に対して上下することができる。例えば、吸引圧力が付与されると、吸引管路2が、管路21内部に吸い込まれるようにして、吸引管路2の先端である吸着面3が上昇する。この上下移動によって、ピッキング装置50は、吸着具1の高さを、吸着対象物100の高さや厚みに応じて、変化させることができる。この結果、吸着対象物100の高さや厚みがばらばらであっても、ピッキング装置50は、吸着対象物100をコンベアに押し付けて破損させたり、袋を破いてしまったりすることがない。
【0124】
具体的には、まず、ピッキング装置50は、吸着対象物100に対して吸着具1(詳細には吸着面3)を対向させる。例えば、管路21の位置を制御する制御機構(図示せず。ピッキング装置などの搬送機械や工作機械などに用いられる一般的な制御機構が用いられればよい)が、管路21の位置を制御することで、吸着面3は、吸着対象物100と対向する。
【0125】
次いで、管路21は下降を始め吸着面3を吸着対象物100に接触させる。接触すると、吸引装置30が吸引を開始して吸着具1は、吸着対象物100の吸着を開始する。吸着具1は、実施の形態1で説明したように、吸着面3、空隙7、接触4を活用して吸着対象物100を確実に吸着する。更に、管路21には、吸引装置30からの圧力が掛かると、管路21内部で上下移動可能な吸引管路2は、上昇する。この上昇に合わせて、吸着されている吸着対象物100も上昇を開始する。この吸着対象物100の上昇中でも、吸引圧力が付与され続けるので、吸着具1は、更に強く吸着対象物100を吸着する。
【0126】
この吸着具1の上昇と吸着度合いの増加とが相まって、吸着具1に吸着されている吸着対象物100は、上昇を行う。上昇後には、ピッキング装置50は、吸着対象物100を必要な位置に移動させることもできる。このように、吸着対象物100をピッキング装置50がピッキングする際には、吸着具1の上下移動や高さ調整(管路21内部で上下移動可能であることで、上下移動や高さ調整が行われる)によって、吸着対象物100の高さや厚みに応じたピッキングを可能とする。この結果、ピッキング装置50(当然に吸着具1)は、吸着対象物100をコンベア面に強く押し当てることもないので、吸着対象物100を破損させたり、袋を破いたりすることもない。
【0127】
このようなピッキング装置1は、次の要件を満たすことができる。
(要求1)対象物の高さ・厚みが統一されていなくても、柔軟に対応して拾い上げること。
(要求2)対象物に、変形や亀裂などを起こさないこと。
(要求3)対象物をピッキングした後、移動するための加減速が有っても吸着した物を落とさないこと。
【0128】
また、ピッキング装置50は、吸着対象物100の側面を挟持する把持部を有することも好適である。あるいは、ピッキング装置50は、吸着対象物100に隣接する他の物品を下方向に抑える抑え分を更に備えることも好適である。
【0129】
把持部を備えるピッキング装置50による吸着対象物100のピッキングと移動について説明する。図7図9は、本発明の実施の形態2におけるピッキング装置による吸着対象物のピッキングの状態を示す側面図である。図7図9のそれぞれは、ピッキング装置50が、吸着対象物100にあてがわれてから吸着して、別の位置で吸着対象物100を離すまでの一連の動作を示している。
【0130】
ピッキング装置1は、吸着具1の両側面に対応する位置に、一対の把持部51を備えている。把持部51は、吸着対象物100の両側面にあてがわれる。この結果、把持部51は、吸着対象物100の両側面を挟むようになる。この機能を発揮するために、把持部51は、吸着対象物100にあてがわれる部分は、板状部材を有していることも好適である。
【0131】
図7は、ピッキング装置50の側面であって、吸着対象物100をまだピッキングしていない状態を示している。吸着具1および把持部51は、機構部52に接続されており、機構部52が、吸着具1や把持部51を動作させる。
【0132】
まず、ピッキング装置50は、図7に示されるように、吸着対象物100に吸着具1を対向させる。このとき、吸着面3が吸着対象物100に対向するように、機構部52が吸着具1の位置を調整する。吸着具1の吸着面3は、吸着対象物100に対向している状態となる。ピッキング装置50は、コンベアラインなどの上に設置されるので、コンベアラインに置かれていたり収容器具に置かれていたりする吸着対象物100を、ピッキング装置50は、ピッキング対象とする。
【0133】
次に、図8に示されるように、機構部52は、吸着具1を吸着対象物100にあてがう。吸着具1は、吸引管路2を介して、吸引圧力を付与しているので、吸着具1にあてがわれた吸着対象物100は、吸着面3に吸着する。このとき、実施の形態1で説明したように、吸着具1は、吸着面3、空隙7、接触部4によって立体的に吸着対象物100を吸着する。このため、吸着具1は、強い吸着力で吸着対象物100を吸着する。
【0134】
次に、図9に示されるように、機構部52は、一対の把持部51の対向距離を狭めて、吸着対称物100の両側面を挟む。ピッキング装置50は、吸着具1によって、十分な強度で吸着対象物100を吸着している。本来的にはこれでピッキング装置50が吸着対象物100を別の位置に移動させても問題はない。しかしながら、把持部51が吸着対象物100の両側面を把持することで、ピッキング装置50は、より確実に落下を防止できる。
【0135】
ピッキング装置50は、必要に応じて、ピッキングした吸着対象物100を、別の位置に移動させる。例えば、横方向に移動させる。ピッキング装置50は、吸着具1で吸着された吸着対象物100の両側面を、把持部51によって把持することで、落下をより確実に防止しつつピッキングした吸着対象物100を移動させることができる。
【0136】
このように、ピッキング装置50は、把持部51を備えることで、より確実に吸着対象物100をピッキングすると共に、ピッキングした吸着対象物100を、別の位置に移動させたりする。
【0137】
また、図7図9より明らかな通り、吸引管路2は、管路21に吸い上げられることで上昇する。このことで、吸着具1は、吸着対象物100との距離を調整したり、吸着した吸着対象物100を上昇させたりできる。
【0138】
次に、図7図9と逆の動作をすることによって、ピッキング装置50は、ピッキングした吸着対象物100を、離すことができる。例えば、ピッキング装置50は、目的の位置に吸着対象物100を移動させると、まず把持部51を開き、次いで吸着具1への吸引圧力を開放することで、吸着対象物100を離すことができる。離すことによって、例えば、別のコンベアラインや収容器具に、吸着対象物100を置くことができる。
【0139】
なお、図7図9で説明したピッキング装置50は、吸着具1を上下させたり、機構部52を上下させたりすることで、吸着対象物100のピッキングを行う事も好適である。また、吸着対象物100は、袋物であることが好適である。もちろん、ピッキング装置50は、袋物以外の吸着対象物であっても、ピッキングすることを可能であるが、袋物のように外形が変形しやすい物品ほど、その効果を発揮するからである。
【0140】
なお、実施の形態1〜2で説明された吸着具およびピッキング装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0141】
1 吸着具
2 吸引管路
3 吸着面
4 接触部
6 重複領域
7 空隙
21 管路
30 吸引装置
50 ピッキング装置
51 把持部
52 機構部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9