特許第5866250号(P5866250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5866250
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20160204BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B65D41/04 Z
   B65D47/08 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-102522(P2012-102522)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230824(P2013-230824A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 博
【審査官】 佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−527865(JP,A)
【文献】 実開昭50−112546(JP,U)
【文献】 特開2002−002747(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3167601(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/153297(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/048039(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器体の口部に外嵌されるリング体と、
該リング体に連結部を介して連結されるとともに前記容器体の口部に着脱自在に螺着されるキャップ本体と、を備えるキャップであって、
前記連結部は、前記リング体およびキャップ本体のうちの何れか一方に設けられた係合フック部と、他方に設けられるとともに前記係合フック部が係合される係合孔部と、を備え、
前記キャップ本体の前記容器体に対するキャップ軸回りの開栓方向への回転操作時に、前記キャップ本体が前記リング体に対してキャップ軸回りに相対回転して、前記係合フック部が前記係合孔部に係合し、
前記キャップ本体は、前記係合フック部が前記係合孔部に係合した状態で、前記係合フック部および係合孔部回りに回動自在となり、前記容器体の口部に対して進退することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記係合フック部は、前記係合孔部内にキャップ軸方向で移動自在に係合されることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記係合フック部は、前記容器体の口部に対して前記キャップ本体を進退させるように、前記係合孔部内に回動自在に係合されることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体の口部に装着されるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャップを開封した後、該キャップを容器体から離脱して紛失することがないように、例えば下記特許文献1に示されるように、容器体の口部に外嵌されたリング部と、口部に装着されて該口部を封止するキャップ本体と、を連結部で連結したキャップが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−307006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のキャップでは、キャップ本体とリング体とが連結部を介して連結されて一体となっているので、例えばキャップを作製してから容器体の口部に組み付けるまでの間に、連結部に応力が作用する等して不正変形等を引き起こすおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、リング体およびキャップ本体を連結して容器体の口部に装着されるキャップにおいて、リング体およびキャップ本体間の連結部の不正変形等を抑止して良好な使い勝手を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は、内容物が収容される容器体の口部に外嵌されるリング体と、該リング体に連結部を介して連結されるとともに前記容器体の口部に着脱自在に螺着されるキャップ本体と、を備えるキャップであって、前記連結部は、前記リング体およびキャップ本体のうちの何れか一方に設けられた係合フック部と、他方に設けられるとともに前記係合フック部が係合される係合孔部と、を備え、前記キャップ本体の前記容器体に対するキャップ軸回りの開栓方向への回転操作時に、前記キャップ本体が前記リング体に対してキャップ軸回りに相対回転して、前記係合フック部が前記係合孔部に係合し、前記キャップ本体は、前記係合フック部が前記係合孔部に係合した状態で、前記係合フック部および係合孔部回りに回動自在となり、前記容器体の口部に対して進退することを特徴とする。

【0007】
この構成によれば、連結部の係合フック部と係合孔部とを互いに別体にしてキャップ本体およびリング体に振り分けて設けることで、容器体に対するキャップの組み付け時に連結部に負荷が加わる等による連結部の不正変形等を抑止して良好な使い勝手を維持するとともに、係合フック部および係合孔部の大きさ等を容易に適宜調整することが可能となり、取り扱い性に優れるキャップを確実に得ることができる。
【0008】
本発明において、前記係合フック部が、前記係合孔部内にキャップ軸方向で移動自在に係合される構成であれば、容器体からキャップ本体を離脱させる際にリング体に対するキャップ本体のキャップ軸方向の移動を許容でき、連結部に生じる負荷を軽減できる。
本発明において、前記係合フック部が、前記容器体の口部に対して前記キャップ本体を進退させるように、前記係合孔部内に回動自在に係合される構成であれば、キャップ本体を係合フック部および係合孔回りに回動させる際に生じる係合フック部および係合孔への負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リング体およびキャップ本体を連結して容器体の口部に装着されるキャップにおいて、リング体およびキャップ本体間の連結部の不正変形等を抑止して良好な使い勝手を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態におけるキャップの未開栓状態の要部のキャップ軸方向に沿う断面図である。
図2図1に示すキャップの上面図である。
図3】上記キャップが開栓方向に回転した状態の図2に相当する上面図である。
図4】上記キャップのキャップ本体が容器体から離脱した状態の図1に相当する断面図である。
図5】上記容器体から離脱したキャップ本体が連結部回りに回動した状態の図1に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
図1に示すように、本実施形態のキャップ1は、内容物が収容される容器体35の口部に回転可能に外嵌されるリング体2と、該リング体2に連結部3を介して連結されるとともに容器体35の口部に螺着されるキャップ本体4とを備える。以下、図1に示すキャップ1の未開栓状態(閉栓状態)を参照してキャップ1の構成を説明する。
【0012】
本実施形態では、容器体35の一例として、容器36に中栓部材37が装着された構成を例に説明する。本実施形態における容器体35の口部とは、中栓部材37の全体を指す。容器36および中栓部材37は、ともに別個に一体形成された樹脂成形品である。
【0013】
中栓部材37、リング体2およびキャップ本体4のそれぞれの中心軸線は、共通軸上に位置する。本実施形態では、前記共通軸をキャップ軸Oとして鎖線で示す。以下、キャップ軸Oに沿う方向をキャップ軸方向、キャップ軸Oに直交する方向をキャップ径方向、キャップ軸O回りに周回する方向をキャップ周方向とする。また、キャップ軸Oに沿って中栓部材37からキャップ本体4に向かう方向を上方、その反対方向を下方とする。
【0014】
中栓部材37は、容器36の口部36aに装着される筒体20と、筒体20のキャップ径方向内側に配設された栓体30とを備える。
筒体20は、下端部が容器36の口部36a内に嵌合されるとともに上端部が容器36の口部36aよりも上方に突出するシール筒部21と、シール筒部21のキャップ径方向外側に位置して容器36の口部36aに嵌合(図示の例ではアンダーカット嵌合)する外筒部22と、シール筒部21と外筒部22の上端部とを連結して容器36の口部36aの開口端に上方から当接する環状のフランジ部23と、シール筒部21のキャップ径方向内側に位置してシール筒部21の上端部に連結される注出筒部24とを備える。
【0015】
シール筒部21のうち、容器36の口部36aよりも上方に突出している部分の外周面には、キャップ本体4を螺着させる雄ねじ部25が形成される。なお、雄ねじ部25を多条ねじとし、キャップ周方向への僅かな回転操作だけでキャップ本体4を螺脱可能としてもよい。
注出筒部24は、上端部がシール筒部21の上端部よりも上方に突出し、下端部がシール筒部21の下端部よりも上方に位置した状態で、シール筒部21に連結される。
【0016】
栓体30は、注出筒部24を閉塞する閉塞板31と、閉塞板31に立設されて例えば指先を引っ掛け可能なリング部32とを備え、注出筒部24内に納まるように配置される。閉塞板31は、例えば平面視円形状に形成され、その外周縁部が全周にわたって注出筒部24に連結される。閉塞板31の外周縁部には、全周にわたって薄肉とされた弱化部33が形成され、この弱化部33を介して閉塞板31が注出筒部24に連結される。
【0017】
キャップ1は、中栓部材37の外筒部22のキャップ径方向外側に位置して該外筒部22にキャップ軸方向で所定量だけ移動可能かつキャップ軸O回りで回転自在に外嵌される環状のリング体2と、リング体2に連結部3を介して連結されるとともに中栓部材37のシール筒部21の雄ねじ部25に螺着される有頂円筒状のキャップ本体4とを備える。リング体2およびキャップ本体4は相互に一体形成された樹脂成形品である。
【0018】
リング体2は円筒状をなし、その内周面にキャップ径方向内側へ突設された被係止突部5を有する。被係止突部5は、例えばリング体2の外周面におけるキャップ軸方向中間部にその全周にわたって形成される。
【0019】
中栓部材37の外筒部22は、その外周面にキャップ径方向外側へ突設された係止突部6を有する。係止突部6は、キャップ軸方向に間隔を空けて二つ形成されるとともに、外筒部22の下部外周面にその全周にわたって形成される。中栓部材37の外筒部22において、これら二つの係止突部6間に位置する部分に、リング体2の被係止突部5がキャップ軸方向で移動自在に配置される。
【0020】
キャップ本体4は、中栓部材37の注出筒部24の上端開口を閉塞するように配設された円板状の天壁部7と、天壁部7の外周縁部から下方に延設された円筒状の周壁部8と、周壁部8の下端部で段差状に拡径して下端縁をリング体2の上端縁に近接させた拡径部9とを有する。拡径部9の下端縁には、薄肉とされた弱化部10が例えば全周にわたって断続的に形成され、この弱化部10を介して拡径部9の下端縁とリング体2の上端縁とが連結される。天壁部7の下面には、注出筒部24の上端開口内に密接するシール壁部7aが形成される。
【0021】
図1,2に示すように、連結部3は、リング体2の外周面に突設された係合孔部11と、キャップ本体4の外周面に突設された係合フック部15とを備える。以下、図2中矢印Sで示す方向をキャップ1のキャップ周方向に沿う開栓方向Sとする。
係合フック部15は、キャップ本体4の外周面であって、係合孔部11から前記開栓方向Sと反対方向(閉栓方向)へ離間した位置に形成される。係合フック部15は、キャップ本体4の容器体35に対するキャップ軸O回りの開栓方向Sへの回転操作時に、キャップ本体4がリング体2に対してキャップ軸O回りに開栓方向Sへ相対回転することで、係合孔部11に係合する。
【0022】
係合孔部11は、キャップ径方向に沿う断面視(図1参照)で上下に長い係合孔12を形成する。係合孔部11は、拡径部9の外周面に沿う内壁部11aと、内壁部11aの外周側に離間して配置される外壁部11bと、内外壁部11a,11bの上下端をそれぞれ連結する上下壁部11c,11dとを有する。
【0023】
内壁部11aのうち、その上端部よりも下方に位置する部分は、係合孔12内に係合フック部15の係止部17を進入し易くするために、係合孔12のキャップ径方向の大きさが閉栓方向に向かうにしたがい漸次大きくなるように傾斜している。内壁部11aの上端部は、キャップ周方向の全長にわたってキャップ径方向の大きさが同等になっている。
【0024】
外壁部11bは、係合孔12内に突出する中間突部13を有する。以下、係合孔12の中間突部13よりも下方の部位を下空間部12a、中間突部13よりも上方の部位を上空間部12bという。
【0025】
係合フック部15は、拡径部9の上端部からキャップ径方向外側に延びた後に下方に屈曲して延びるアーム部16と、アーム部16の下端部からキャップ径方向と直交するように(またはキャップ周方向に沿うように)延びる係止部17とを有する。係止部17は、係合孔12の下空間部12aと同等の上下高さに位置する。係止部17は、開栓方向Sに向けて延在している。
【0026】
係合フック部15は、キャップ1の未開栓状態では、係合孔部11から閉栓方向へキャップ周方向で離間した位置にある。係止フック部は、キャップ1の未開栓状態からキャップ本体4がリング体2に対して開栓方向Sに相対回転した際には、係止部17を係合孔部11の下空間部12a内に挿入させる。係止部17の先端部には、係合孔部11に差し込まれた際にその開栓方向Sの開口端に係止して係合孔部11からの離脱を制限する係止爪17aが形成される。
【0027】
上記構成において、キャップ1が未開栓状態から開栓される際には、容器体35に対してキャップ本体4が開栓方向Sへ回転する。すると、キャップ本体4が弱化部10を破断させつつリング体2に対して相対回転し、係合フック部15の係止部17が係合孔12の下空間部12aに挿入される。そして、係止部17を係合孔12に挿入しきると、キャップ周方向で係合孔部11の閉栓方向の開口端にアーム部16が当接し、リング体2がキャップ本体4と一体的に回転可能となる。このとき、係止爪17aが係合孔部11の開栓方向Sの開口端に係合し、閉栓方向にもリング体2がキャップ本体4と一体的に回転可能となる。
【0028】
その後、さらにキャップ本体4が開栓方向Sに回転すると、これに伴いキャップ本体4がリング体2に対して上昇する。このとき、係止部17が係合孔12内で移動することで、キャップ1の開栓に伴い係合フック部15および係合孔部11へ生じる負荷が軽減される。
【0029】
キャップ本体4の中栓部材37に対する螺着が解除されてキャップ本体4が中栓部材37から離脱可能になると、係合フック部15の係止部17が前記中間突部13を乗り越えて上空間部12b内へ移動する。このとき、係止部17は、上空間部12bの内面にキャップ径方向で挟み込まれるように保持される。この状態で、キャップ本体4の下降および係止部17を中心にした回動が制限される。
【0030】
この後、キャップ本体4のうちのキャップ軸Oをキャップ径方向で挟んで係合フック部15と反対側に位置する部分を引き上げると、係止部17を中心にキャップ本体4が上方に回動する。このとき、係止部17は、上空間部12bの内側面に摺接しながら係合孔部11を弾性変形させる。そして、キャップ本体4が約180°回動すると、回動前のように係止部17が上空間部12bの内面にキャップ径方向で挟み込まれ、キャップ本体4が前記回動後の状態に保持される。図中矢印Kはキャップ本体4の前記回動の方向を示す。
【0031】
キャップ本体4の閉栓時には、上記手順と逆の手順が行われる。このとき、係合フック部15と係合孔部11とは係合したままで、リング体2およびキャップ本体4の閉栓方向への回転がなされる。
【0032】
以上説明したように、上記実施形態におけるキャップ1は、リング体2とキャップ本体4とを連結する連結部3が、キャップ本体4に設けられた係合フック部15と、リング体2に設けられるとともに係合フック部15を係合させる係合孔部11とを、相互に別体に備え、キャップ本体4の容器体35の口部(中栓部材37)に対するキャップ軸O回りの開栓操作時に、キャップ本体4がリング体2に対してキャップ軸O回りに相対回転し、係合フック部15が係合孔部11に係合した後、キャップ本体4が係合フック部15および係合孔部11回りに回動自在となり、容器体35の口部に対して進退するものである。
この構成によれば、連結部3の係合フック部15と係合孔部11とを互いに別体にしてキャップ本体4およびリング体2に振り分けて設けることで、容器体35に対するキャップ1の組み付け時に連結部3に負荷が加わる等による連結部3の不正変形等を抑止して良好な使い勝手を維持するとともに、係合フック部15および係合孔部11の大きさ等を容易に適宜調整することが可能となり、取り扱い性に優れるキャップ1を確実に得ることができる。
【0033】
また、係合フック部15が係合孔部11内にキャップ軸方向で移動自在に係合されることで、容器体35からキャップ本体4を離脱させる際にリング体2に対するキャップ本体4のキャップ軸方向の移動を許容でき、連結部3に生じる負荷を軽減できる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、リング体2に係合フック部15を設けるとともにキャップ本体4に係合孔部11を設けた構成としてもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 キャップ
2 リング体
3 連結部
4 キャップ本体
11 係合孔部
15 係合フック部
35 容器体
37 中栓部材(口部)
O キャップ軸
図1
図2
図3
図4
図5